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アメリカの強さ

2022年04月04日 | 米国債への投資

ウクライナでは本当に悲惨な状況が続いていて、心が痛みます。

前々回の投稿の最後に私は以下のように書きました。

>今回のウクライナ紛争で私が感じかつ確信したことは、長期の視点で見たアメリカの強さです。

遅くなりましたが、今回はアメリカの強さについてです。

ウクライナ紛争に直接関与はしないと宣言したアメリカに対して一般的に言われるのは、「国力が弱体化したため、世界の警察官をやめた」というような言葉です。警察官をやめたのはそのとおりですね。しかしアメリカの国力は弱体化したのでしょうか。

私は逆に「海外に直接介入をしないアメリカは国力を温存できるので、今後も強い経済力を保てる」と思います。

アメリカの強さの源泉は「経済力と成長の持続性」です。その上今回の戦争で誰もが改めて思い知らされた点は「エネルギーと食料の自給、そして戦力の大切さ」でした。

ということはアメリカとは、「世界一の経済力を持ち、成長が持続し、エネルギー、食糧を自給でき、世界一の戦力を保有する」。これらすべてを揃えているのはアメリカだけです。

 

中国はどうか。いくらGDPがアメリカに追い付いてきたと言っても、それはしょせん人口の多さによるもので、一人当たりの国民所得をみれば小国にすぎない中身がスカスカな大国です。

一人当たりGDPランキングをIMFの公表数値から見てみましょう。20年のドル換算値です。代表国だけ取り上げます。

1位 ルクセンブルグ 116千ドル

5位 アメリカ     63千ドル

17位 ドイツ     46千ドル

24位 日本      40千ドル

64位 中国        10.5千ドル

66位 ロシア     10.1千ドル

120位 ウクライナ    3.7千ドル

これが数字で見た世界の現実です。中国の一人当たり国民所得はアメリカの6分の1にすぎず、同じレベルにあるロシアは、今後ルーブルの減価と輸出の減少によるGDPの低下でこの半分近くの貧乏国になりそうです。

 

アメリカから見れば中国やロシアなどものの数ではないのです。中国はいずれGDPでアメリカを抜くと試算されていますが、一時的にアメリカを逆転しても、その後は高齢化と人口減少により転落し、アメリカが再逆転するという超長期の試算がなされています。もちろん一人当たりでは中国はものの数ではありません。

 

わが日本はどうか。すでに成長力を失っていますが、今後さらに高齢化が進展して人口は減少し、愚かなアベノミクスを転換することができないまま崩れ去るに違いない。このところ円安が進行してきました。これまで「有事の円買い」などという根拠の疑わしい論調もありましたが、それはすでに影を潜めています。

今回の円安の最大の原因は、日米の金利差と言われています。アメリカはインフレに対処するために金利を引き上げることができる国であり、日本は金利を抑えるしかない国だからです。ドルレートが125円前後になった3月、アメリカではFRBによる利上げが行われ、日本では日銀が無制限の買いオペにより金利を上昇させない正反対の措置を取りました。正反対の措置を取れば、円安は当たり前です。しかもその数日前に黒田総裁は会見で「円安は日本にとってよいことだ」とまで言っていました。インフレへの対処ができる国とできない国の差は歴然です。

ここでちょっと私が著書で書いたことを繰り返します。「金利とはコストと見られがちですが、投資家にとってはリターンだ」ということです。

金利上昇は投資家に高いリターンをもたらすことができます。私の著書が出た2011年当時、世界の株式時価総額と債券の発行残高を見ると、債券が株式の2倍もありました。しかし現在は債券も当時に比べ増大していますが、株式の価格が大きく上昇したため、市場の大きさは同じくらいのサイズになっています。金利上昇は今後債券投資にも大きなリターンをもたらすことになります。

 

日本は成長しないため株式の時価総額はさほど伸びず、国債発行だけが増大する債券による借金大国になっています。しかしその債券への投資ではほとんどリターンは得られません。しかも最大の国債投資家は政府と一体になった日銀ですから、国が金利を払って投資家へ回すはずのリターンを自分がもらってしまいます。なんというイビツな国でしょうか。

アベノミクスというドーピングで何とか経済規模は保っていますが、インフレと円安に対抗するために利上げという手段は持ち得ません。

2023年に黒田総裁が退任する予定ですが、後任の総裁が就任しても、超緩和政策は転換できません。方針転換すると言った途端株式は暴落します。利上げに転じれば金利上昇もその株価下落に寄与しますし、日銀が買いだめした株式も放出される可能性があるからです。日銀は50兆円強を保有する最大の株主です。

 

そして今後資源価格の高止まりが続くと経常赤字が定着し、それでも政策転換のできないことを見越した円安が進行するでしょう。

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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (Unknown)
2022-04-05 17:51:38
ご無沙汰しています。2年前に個人相談をさせて頂いた森田です。その節は大変お世話になりました。最近の米国の利上げの件など、ブログを大変興味深く拝読しました。今後の米国債購入に関する質問です。直近の円安傾向は今後1~2年間は変わりそうにもないように思えますが、今後のドル転のタイミングをどのような考え方を目安にしていけば良いでしょうか。一時あった1ドル105円は今後期待できそうもなく(当時、私は少額ドル転するに止めてしまいました・・・)、今となっては110円の水準でも十分あり、と考えてしまいます。ご教示下さい。
為替は本当に難しいと痛感している今日この頃です。
返信する
森田さんへ (林 敬一)
2022-04-06 09:10:38
お久しぶりです。

ご相談をいただいてから2年ですね。
実は過去に相談をいただいた方へはその後およそ順番にフォローアップのメールを差し上げています。

内容的にはその後のポートフォリオの確認と、今後の運用相談です。

森田さんのご質問は為替に関してですが、為替のアドバイスもその方のポートフォリオに応じてアドバイスは変わります。
外貨比率が十分に高い方とほとんどゼロに近い方では、当然ですが内容は異なります。

森田さんのポートフォリオや外貨比率、保有現金比率などをここで開示するわけにはいきません。
従ってアドバイスは直接メールでやりとりをさせていただきたいと思います。

何度か申し上げていますが、フォローアップに関してはすべて無料で対応させていただきますので、ご安心ください。

以上、どうぞご理解ください。
返信する
Unknown (Unknown)
2022-04-06 21:16:03
森田です。
有難う御座います。
それでは数日内に改めましてご相談させて頂きます。
どうぞ宜しくお願い致します。
返信する
Unknown (京おんな)
2022-04-07 10:11:31
アメリカは、スタグフレーションに。
返信する

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