ストレスフリーの資産運用 by 林敬一(債券投資の専門家)

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今後の株価をどう見るか、ヒントその1

2013年08月09日 | 2013年からの資産運用
 前々回8月7日の記事で私は、

>株式市場を見ても、クロちゃんの言う異次元緩和の効果は5月22日までの1ヶ月半で賞味期限を迎えました。 

  同じ日の記事で私は日銀の賭けに警鐘を鳴らし、こうも述べています。

>私が警鐘をならすと、どうもろくなことはないようです。REITに続いて豪ドルへの警鐘がまた当たってしまいましたね。なので警鐘を鳴らすのが、実はちょっと心配です。

  この舌の根も乾かないうちに8月7日と8日の両日で日経平均は800円ほど下げてしまいました。

  日銀の異次元緩和にハシャイダ株式相場は、5月末から6月に大きな下げを演じ、今回また同じ様な展開を始めているように見えます。しかし前回とは大きな違いもあります。それは相場をリードしてきた外人の動向です。2週連続で売り越しました。前回は実は目立った売り越しはなかったのです。

  毎週木曜日の株式市場の引け後に、東証は部門別(投資家別)株式売買動向を発表します。それによれば、昨年11月以来外人は一貫して買い続け、日本人は売り向かっていました。外人の買い越し額は10兆円にも上っていて、それが相場のけん引役であることは確かです。
  先週の木曜日8月1日に7月22日(月)から26日(金)までの数字が発表され、外人が500億円売り越していました。そして昨日、先週(7月29日から8月2日)までの数字が発表され、さらに200億円の売り越しになっています。

  10兆円の買い越しに比べると700億円の売り越しはかなり小さい額ですが、2週連続の売り越しはこれまでほとんどなかったため、注目に値します。

  本当に注意を要するのは、8月7日・8日と2日間で800円の下げとなった今週の動向です。そこでもさらに外人が売り越しているとなると、その後の展開も悲観的にならざるを得ません。理由は、今週の下げはこれまで以上に円高としっかりとカップリングしているからです。説明します。
  
  今回のシリーズを開始して以来、私が「アベチャン指数」と勝手に呼んでいる「株価とドル円レートの推移」をみなさんと一緒に注目してきました。2つを並べるのは、外人の買いが本当に腰の入った長期投資か、ヘッジファンドを中心とした足の短い投資かを見極めようとしているからです。
  ドル建てで投資効果を計る外人にとって、株価が上昇しても円安で相殺されてはなにもなりません。にもかかわらず長期投資であれば為替ヘッジをせずに投資をするし、短期投資ですと為替のヘッジをしっかりとすることが多いのです。

  何故日本株への長期投資ではあまり為替ヘッジをしないのか?

  今回もそうですが、日本株の上昇をリードするのは圧倒的に輸出産業です。円安の恩恵を受け輸出産業は業績を向上させ、それが株価を上昇させます。しかし輸出産業がしっかりと業績を伸ばしていくと必然的に貿易収支が改善され、いずれ円高に戻るはずです。外人の長期投資家の理想的ストーリーは、円安で株価が上昇し、将来円高で為替が戻ることです。

  そこまで長期のスタンスを持てないヘッジファンドの連中は為替をヘッジしながら(円の空売りポジションを取る)日本株に投資し、株価が上昇したところで株を売却すると同時に為替のヘッジをはずす(円の空売りを買い戻す)ことで為替のリスクを避けるのです。

  もちろん外人のすべてがヘッジファンドなどの短期投資ではないし、逆に長期投資ばかりでもありません。どちらがより優勢なのかを見極めると、今後の展開が読みやすくなるということなのです。

  ということで今後の株式相場の展開のヒントその1は、外人の動向です。

つづく
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国内報道 ()
2013-08-10 09:01:39
 国内の新聞やテレビには、繰り返して使われている言葉があります。「本当かしら」と、眉に唾をつけたくなるようなものもあります。「円は安定資産で、不安が高まると、円に資金が集中する。」海外の経済紙・経済誌は、どう言っているのでしょうか。もしこれが本当なら、円は基本的には強いということになるはずで、現下の円安は、一時的になるはずです。
 少し前まで、盛んに日経で報じられた、「日本株を買いたい」という外国資本の言い分。日経がそれを言葉通りに信じていたのかどうか。本当なら、今の外人売りは、一時的のことのはずです。
 そもそも外人から見て、日本企業や日本経済は、魅力的なのでしょうか。今の相場がアベノミクスと称して始まったばかりのころ報じられた外人投資家の言い分は、「日本株は割安」ということでした。私には、将来的に魅力がある、というふうには、とれませんでした。国内投資家の在り方は、20年以上前のバブルの崩壊と、崩壊と気が付かずに、「いずれ上がる」と思って買い続けた結果、すっかりと意気消沈してしまったようで、本気になって買い向かっているようには思えません。新聞というか、日経だけが強気だっただけのようで。
 外人投資家は、林さんの説明を伺う限り、大幅に買い越し分を抱えていることになりますが、では、先物ではどうなのか、信用取引ではどうなのか、ダミーを使っての売買はどうなのか。もしも抱えたまま、日本人が相場に買い向かってこないことを理解したら、これが今後の需給のしこりになるわけで、株式相場の崩れだけではなく、為替の崩れになっていく可能性が大きいわけですね。
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山さんへ (林 敬一)
2013-08-10 11:09:39
いつもブログをお読みいただいている、「山ちゃん」でしょうか、それとも別の山さん?

一応、山さんへ

私のブログをお読みいただき、ありがとうございます。

ご質問の件に、私なりの回答をさせていただきます。

>「円は安全資産で、不安が高まると、円に資金が集中する。」海外の経済紙・経済誌は、どう言っているのでしょう か。

以前、このブログで為替のことを長々とお話したことがありました。その時にも同様な議論がありました。

日銀出身の為替アナリストが、「弱い日本の強い円」という本を書きました。そこでは「リスクオンで円とドルは売られ、リスクオフで円とドルが買われる」という説明をしていました。

このリスクオフが山さんのおっしゃる「不安が高まると円に資金が集中する」と同じ説明でしょう。

私から見ると、新聞やアナリスト達は、説明に困るとリスクオン・オフというわかったようでわからない理屈をつけているな、と思えます。

山さんが納得できないのは、日本にリスクがないと言えるのか、海外ではどうみているのか?ということですね。それからお答えします。

海外の論調も一色ではありません。しかし言えることは、世界の経済をしっかりと分析する力のある例えばIMFやOECDのエコノミスト、大学の経済学者などは、おおむね日本の財政に関して大きな不安を抱いている。経済の長期的成長も楽観はしていない。ただ極めて政治的発言をする必要のあるIMFのラガルド専務理事などは、アベノミクスを表だって批判はできませんので応援します。

それに対して相場に左右される度合いの大きな金融系アナリスト、ファンド関係者、そしてマスコミ関係者は当然何に対しても強気が多い。しかしこうした連中は激震が走り始めると、せっそうなく一気に反対に振れます。

それとファンド関係者の一部はポジション・トークが入るため、日本国債の売りを仕掛ける連中は当然弱気です。

このように一様ではありませんが、日米ともマスコミ関係は説明がつかなくなるとリスクオン・オフなどと言って、長期の日本の成長力などいちいち問題にしません。

日本株が魅力的かどうか?

これは今後テーマですので、株の見通しの中でお答えしていきます。


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