私は22年9月に「日本には世界に冠たる製造業がある」ってか?というタイトルで、おちょくった内容の投稿をしました。それは同9月に日本の自動車産業をめぐる不正問題が発覚したのを受けてのことでした。
その時にお示ししたのは、我々がその名をよく知る大企業の不正リストでした。お忘れの方も多いと思いますので、その一部を引用します。
主に単独企業の事件
- 2022年 日野自動車エンジン不正問題 - 燃費並びに排ガス規制値改竄
- 2018年 SUBARU - データ書き換え
- 2017年 神戸製鋼所 - 品質検査データ改竄
- 2016年 スズキ - 燃費詐称
- 2016年 三菱自動車 - カタログ燃費詐称及び不正計測発覚後の再測定における燃費詐称
- 2015年 東芝 - 長期に及ぶ不適切会計
この中で東芝は上場廃止にまで追い込まれています。
そして今回はまたしても世界に冠たるハズの自動車業界の不正です。しかもつい年初にトヨタの子会社であるダイハツ工業が不正をして操業停止に追い込まれた直後のことです。このため24年1-3月期の日本のGDPはマイナス1.8%という結果に終わりました。もちろん能登半島の震災などの影響もありますので、ダイハツだけがマイナスの原因ではありませんが原因の一つだと分析されています。
ダイハツ工業認証試験不正問題とは、23年4月にダイハツ工業が内部通報によって国内向け及び海外向けの車両で衝突試験や排出ガスや燃費の不正が発覚した問題のことです。
今回はそのダイハツの親会社であるトヨタを含む自動車大手による同様な不正問題の発覚です。トヨタはダイハツの不正を親会社としてどう見ていたのでしょうか?「対岸の火事」としてしか見ていなかったとしか思えません。
トヨタの経営者であれば少なくとも同じ問題が自社内にないかを23年から調査してしかるべきです。しかもトヨタだけでなく今回はホンダ、マツダ、ヤマハ、スズキまで、5社もが一度に挙げられました。
かつてトヨタはいち早くコーポレートガバナンス体制を変革し、取締役10人中4人も社外取締役を置きました。彼らは高い報酬をもらいながら、いったい何を取り締まっていたのでしょうか。私が株主なら当然「役員報酬を返還せよ」との株主代表訴訟を起こします。アメリカであればその上、「株価下落分の損失補償をせよ」となるでしょう。
私は2021年に「ファンド資本主義が日本を救う」というシリーズを投稿していました。最近になってやっとモノ言う株主の提案を積極的に受け入れることで本格的に経営を改革しようという動きがでてきていますが、いまだ十分にワークしているとは言えないようです。現在、自動車産業は日本の輸出産業の唯一と言っていいほどの存在ですが、それがこの体たらくでは、いったい日本はどうなるのか本当に心配です。
日本の貿易構造は実に単純ですので、ここでちょっと振り返ってみましょう。90年代までは自動車輸出が毎年7~8兆円前後、家電を中心とする電気機器も同じ額程度輸出をしていました。両者で15兆円前後の輸出額で、石油などエネルギー輸入額の7~8兆円を凌駕して貿易収支はその分が黒字となっていました。
しかしその後2000年代には電気機器は競争力を失い輸出額はほぼゼロとなり、現在の輸出は自動車の一本足打法になっています。そのため2010年台になってエネルギー価格が2倍にも上昇し石油などの輸入額が20兆円近くにも及び、自動車輸出が15兆円程度あるにもかかわらず、貿易赤字が定着してしまっているのが現在の姿です。その他の輸出額は取るに足らない額です。
その一本足打法の自動車が不祥事にまみれてしまっている。そもそも世界は日本製品の品質の良さと安全性を評価し、多少高くとも日本ブランドを買ってきました。その信頼が裏切られたのが今回の不祥事です。
しかも現在の政府の産業支援は自動車産業、中でもEV化に向けられているのですが、EV(電気自動車)は300社にも及ぶ中国メーカーが作り過ぎていて、野ざらしの新車在庫が何百万台も朽ち果てているのが実態なのです。
日本全体の自動車製造台数は23年年間でおよそ900万台。中国は3,000万台ですが、能力的には4,000万台と推定されています。新興メーカーのほとんどはEV車を作っていますので、高コスト体質の日本がEVにより輸出振興を図るのは現実的ではありません。
さてどうする日本の製造業?
私には残念ながら答えが見つかりません。