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白紙革命の勃発

2022年11月29日 | 中国問題

   先日「オレ様独裁者たちのたそがれ」のタイトルで、10月の共産党大会が習近平の絶頂だと投稿しました。今回の若者を中心とする反乱は、党大会直後の習近平にとってはまさかの反乱だったでしょう。

  直接的にはウルムチの火災による死亡事故から始まり、その原因とされるゼロコロナ政策への反対運動でしたが、それはあくまでマッチを擦った小火でしかなく、都市部ではすでに「習近平は退陣しろ」、「共産党は退陣しろ」から、「自由が欲しい」という大火に変質しています。これまでに積み上がった若者の憤まんのはけ口になっているようです。しかも週末だけと思いきや、週明け月曜日も収まらず、地方の大都市や多くの大学に飛び火しました。今日、11月29日はさすがに若干収まっているようです。

  折角なのでこの大きな動きを彼らの掲げるA4の白紙にちなみ「白紙革命」と命名してあげましょう。と書きながら「白紙革命」をネットで検索してみたら、すでに今回の革命的な運動の名前として認知され始めていました。なお、白色革命という言葉もありえますが、それは60年代すでにイランのパーレビ国王による西欧化の運動で使われていますので、却下。

 

  果たしてこの動きがどれほど拡大するのか、独裁政権を倒すほどになるのか、勝手に想像してみましょう。すでに大きなうねりとなりつつある運動ですが、政権側による完全制圧はけっこう難しいものがありそうです。

  というのは、89年6月の天安門広場での騒動であれば、参加者の学生たちを特定の場所に追い詰め殲滅すれば済みましたが、今回はそうはいきません。全国に分散しており、多くの大学などでも散発的に発生。しかも通信手段のない89年と違い、通信手段は格段に発達しています。もちろん当局はSNSでの連絡網は徹底的に弾圧するでしょう。

 

  中国はそもそも94年のインターネット開通から 2 年ほどでサイトや発言を検閲し取り締まる法律が作られ、さらに 2 年後の 1998 年には「金盾(じゅん)工程」と呼ばれるシステムが公安部によって発案され、2000年代にはほぼ実施に移されています。

  もちろん我々が使用しているようなアメリカを主な発信地とするSNSはすべて禁止され、中国に入っていたグーグルも撤退。中国国内から海外のSNSにアクセスすることもできません。国内にはそれらに相当するSNSが多数ありますが、すべて監視下に置かれていますので、危険とみなされる発言はすべて排除されます。

  その上、金盾工程はさらに精緻になり、公安当局だけでなくあらゆる公的機関が検閲し、最近は人海戦術からAIによる検閲へと自動化が進んでいます。

 

  それでも人々は個人のメールや音声電話などを通じて交信は可能で、活動家側も89年とは格段に優れた通信手段を持っています。しかしそうした個人間の交信すら傍受され監視されているため、安全かつ自由な情報交換はできないのが現実です。それをかいくぐるのに中国のSNSを使用した仲間同志の符牒や暗号による交信手段もあり、活発に使用されているようです。

  今回の白色革命は共産党と習近平に表立って反対をするという、いままでにないレベルに達しているため、党内部は緊迫し混乱しているに違いないと思われます。昨日、政府の広報担当官が会見で質問への回答に詰まり、3分プラス2分も黙ってしまったことがそれを象徴しています。一度こうした主張を表立って叫び始めた若者は、簡単に引っ込むことはないでしょう。

 

  89年6月4日の天安門事件のわずか4か月後、東ドイツでも同じような運動が起こりました。もちろんその時ドイツでもシュタージによる統制は厳しく、個人は通信手段など全く持っていませんでした。若者たちは毎週同じ曜日に集合場所を決めて自由を叫び始め、それが大きなうねりになり、同年11月9日遂にベルリンの壁の崩壊に至ったのです。

 

  やればできる。本当に大きなうねりを止めるのはどんな強権政府であっても難しく、いったん人心が離れれば、習近平でもお手上げ状態になる可能性はあると私は見ています。

 

  以上、勝手なシナリオを描いてみました。

 

 

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