先週アメリカのFRBはFOMC連邦公開市場委員会を開催し、長く続いたゼロ金利政策を転換し、遂に利上げに踏み切りました。そもそもゼロ金利政策は世界的コロナの大流行による打撃を緩和すべく継続していました。しかしコロナ感染が拡大基調から脱し収束基調に入り、それにともない経済が拡大し世界的にインフレが予想を超えるスピードで上昇。逆に成長への脅威になりつつあるため連続利上げを行うという政策への転換を果たしました。
しかも利上げは7回プラス3回程度、つまり10回も行う可能性ありとFRBは示唆しています。1回につき0.25を10回となるとゼロだった短期の政策金利が2.5%になる可能性があります。すると当然10年物長期金利はそれ以上になる確率が高くなると思われます。
この政策転換は長期的にどういう意味を持つのでしょうか。私の見立ては、「金利の長期低落傾向は終わりを告げる」というものです。では長期金利の代表格である10年物がどのようなレベルで推移したかを簡単にレビューしましょう。チャートをご覧になりたい方は、次のURLでご覧ください。54年間に渡る推移を見ることができます。https://www.macrotrends.net/2016/10-year-treasury-bond-rate-yield-chart
ただしこの超長期チャートは3月第一週目くらいまでです。
戦後長らく4%程度で推移した10年物金利は、73年の第一次オイルショック、そして79年の第二次オイルショックにより高インフレ時代になり、80年に15%台に上昇してピークを打ちました。その後は時のFRBボルカ―議長による大幅な政策金利上げをきっかけに落ち着き始め、長期下落トレンドに入りました。そして2020年には1%を下回りボトムを打ったと見られます。このところの2%台への上昇は、こうした長期変動の大転換である可能性が出てきています。
前回金利に関して書いたのは1月31日ですが、その時私はまだこうした歴史的大転換は先だろうと見ていました。理由はインフレがそろそろ急上昇を終え、たとえそのレベルが保たれていても1年経てば前年比であるインフレ数値自体は落ち着くのではないかと見ていたからです。この見方が誤っているとは思っていませんが、このところのアメリカの高インフレ率を目にすると、インフレレベルの落ち着きどころの見方はまだ甘かったと考えざるを得ません。
FRBは声明で今のアメリカ経済を以下のように見ています。
- 経済の基調は非常に強い
- 雇用は失業率が低くひっ迫状態が続く
- インフレは厳しい状況が続きそうだ
こうした見方を持ってFRBは合計10回もの利上げ見通しを出しました。もちろん政策金利と並行して長期金利が上昇するとは限りませんが、可能性は高いと見るべきです。
では、米国債の買い時についてどう見ているか、私の見方をお伝えします。ドル資金をすでに保有されている方には絶好の買い場が訪れつつあります。
今後長期の金利トレンドが転換しつつあると見た場合、今全力で買い進めるのは早いと思います。せっかくここまで待たれていた方は、徐々に買い進めることをお勧めします。現在の年限別の金利を見てみましょう。次のブルームバーグのサイトで見ることができます。
https://www.bloomberg.com/markets/rates-bonds/government-bonds/us
すると以下のとおりかなりいびつな状況がみてとれます。
2年物 1.94%
5年物 2.14%
10年物 2.15%
30年物 2.42%
いびつの意味は、2年と5年がわずか0.2%しか差がなく、5年と10年との差も0.01%しかありません。30年物も10年と比較すると0.27%しか差がありません。これを実際の投資に適用すると以下のように解釈することができます。
「短期の2年は買いだが、それ以上の中期長期はまだ早い」。
何年か前に私は10年物金利のレベルが低かった時、「ドルを遊ばせているくらいであれば、5年以下の債券を買って、時を待つべし」と示唆しました。何人かの方は実際にそうした戦略を取って、最近満期にちかいところで長い年限へのタイミングを見はかっていると思われます。短期物は償還期限までが短いため、価格の変動が少ないのです。ですから金利上昇時に売却しても、損失は限定的です。
この戦略は今も通用します。たとえば2年物を買っておき、10年以上の長期物への待機をし、FRBの利上げに長期金利がどう反応するかを見るのです。10回の利上げ示唆の終わりはいまのところ23年頃です。
もちろんみなさんが実際に証券会社の在庫から買おうとすると、上記のブルームバーグ数字どおりにはいきませんし、狙った年限どおりのものはないかもしれません。それでもそれに近いものを探してみてください。今すぐ購入したいという方には5年以上にならない債券を買うようアドバイスいたします。
米国債はドル建てですから為替のタイミングを見る必要がありますね。ここまでのお話はすでにドルを保有している方に向けた米国債の買い方でした。では円から買う方はどうすべきでしょうか。いまどんどんドル高が高進しています。何度もお知らせしている原則論ですが、「金利が高いとドルへの投資も同時進行しますので、当然ドル高になります。」
現在のドル高は日米の中央銀行の政策差を反映しているとともに、日本の経常赤字化の反映でもあると思います。従って今後大きな円高への反転は見込みにくいと思いますので、少しでも円高になるたびにドル転を重ねていく以外に方策は思い当たりません。
一方、今回のウクライナ紛争で私が感じかつ確信したことは、超長期の視点で見たアメリカの強さです。次回はそれについて書きます。