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オレ様独裁者たちのたそがれ、再掲

2020年08月28日 | ニュース・コメント

  安倍首相が辞任の意向を固めたというニュースが、本日8月28日2時ころに流れました。健康問題が直接の原因であることはまちがいありません。一国の首相として仕事を全うすることがかなわないとの判断なのでしょう。お気の毒であると思うと同時に、さぞ無念のことと思います。ただ一方で私はコロナへの対応ミスなどによる支持率の低下も辞任決断に影響を与えているように思えます。

 

  6月11日に私は「オレ様独裁者たちのたそがれ」という記事を書いています。その中で私はコロナ感染の拡がりが、トランプ、プーチン、安倍首相の支持率低下につながっているという指摘をしています。

  今回はその記事の再掲です。

再掲

   トランプの支持率対不支持率の差が節目の10ポイントを越えました。支持42%対不支持55%とその差約13ポイントと大きく拡がったのです。私が見ている統計はいつものとおりReal Clear Politicsというアメリカのサイトで、全米をカバーする世論調査と、その2週間分の平均値が算出されています。これはトランプの差別的発言に対する反対運動が、単に人種問題のデモにとどまらず、反トランプ運動に変質しつつあることを示しています。ついでに大統領選挙での支持率も、およそトランプ40対バイデン50とかなりバイデンがリードを拡げています。

 

  死亡した黒人フロイド氏に対するトランプ大統領のツイッター攻撃内容があまりにひどく、さすがに岩盤支持にひび割れが生じてきたようです。それに加えて警官によるデモ参加者への突き飛ばし行為に対しても、トランプが余計なことをツイートし、墓穴を掘っています。

  ひび割れは岩盤支持層だけでなく、共和党内にも生じています。ブッシュ・ジュニア大統領時代に国務長官だった保守党の重鎮コリン・パウエル氏「トランプは嘘ばかりつき、憲法をないがしろにし、国を混乱に陥れている」と最大限の非難声明を出しました。またトランプ政権の元国防長官であったマティス氏も、「トランプは私が出会った大統領で初めて国を分断しようとした大統領だ。大統領は国をまとめるのが仕事なのに」と語っています。

  本当はトランプ当選からずっと苦々しく思っていた共和党員が全米のデモに乗じ、遂に耐えかねて本音を語り始めたのでしょう。今後は現役の共和党議員にも同様の動きが拡がる可能性があると私は見ています。つまり大統領選と同時に行われる下院・上院の選挙でトランプ支持を表明すると落選の憂き目に遭うので、トランプ支持の意思表示をしなくなる。そこまで行くと、一気に雪崩を打つ可能性すらありそうです。

 

  人種差別反対の動きはデモ隊や政治家などにとどまらず、セレブの間でも起こっていて、自分のツイッターなどを真っ黒にする「ブラックアウト・チューズデー」運動が起こりました。最初はアメリカの音楽業界の大企業がこぞって参加したのですが、その動きに同調したハイテク業界や、個人では歌手、俳優、スポーツ選手などが参加しています。アメリカで活躍する日本人選手でも、八村塁、大谷翔平、大阪なおみ、錦織圭、ダルビッシュなども参加し、みずからのツイッターなどのアカウントを真っ黒にしました。

 

  私は前回の投稿で、オレ様独裁者に率いられている国であればあるほど経済優先のためコロナ感染者は多くなる傾向があると指摘しました。オレ様たちはみんな「コロナなんて恐くない。インフルエンザと同じだ。マスクなんかするもんか」と同じ強がりを言っていて、その結果感染者数はオレ様独裁者のいない国が収まりつつあるのに、いぜん拡大しています。感染者数世界一のアメリカに、遂にボルソナロのブラジルが追い付いてきました。そしてロシアも追随してきています。

 

  どのオレ様たちも高い支持率を誇っていたのですが、コロナに負けたのかここにきて異変が起きています。トランプと限らずどのオレ様も支持率を落としていて、反政府デモが渦巻くようになっているのです。ロシアのように言論封殺がひどい国でも、反プーチンデモが起こっています。もちろんその矛先はコロナ制圧の失敗だけではなく、プーチンを終身皇帝ともいえる大統領にしようとするインチキな憲法改正にも向けられています。反ボルソナロのデモは最大都市サンパウロを中心に行われ、市長が大統領に反旗を翻し、市民がそれを支持しています。自分の地位安定のために経済を優先するボルソナロの姿勢に対し、命の危険を感じている市民が立ち上がっています。

 

 「オレ様独裁者たちが跋扈し始めた世界をコロナが変えた!」と言える日が近づいているのかもしれません。  

 

  ひるがえって日本はどうか。コロナ感染者数が少ないにもかかわらず、感染対策や経済支援の遅れ、黒川問題などから安倍政権がやはり大きくつまずいています。世論調査の支持率はおおむね3割台に下がり、調査によっては3割を切るところまで出てきました。5月26日の時事通信ニュースを引用します。

「毎日新聞の23日の調査によると、支持率は前回から13ポイント急落して27%。朝日新聞の23、24両日の調査は29%で、第2次安倍政権発足以来最低を記録した。安倍首相は25日の記者会見で「日々の支持率に一喜一憂することなく、与えられた使命に全力を尽くしていきたい」と述べるにとどめた。
 自民党の閣僚経験者は「黒川氏問題が響いた。想定外だ」とため息を漏らす。10万円の一律給付をめぐる迷走などが相次ぎ、党内からは「政権運営の歯車が狂いだしたのではないか」(ベテラン)との声も出ている。」

 

  ついに世界のオレ様独裁者たちにたそがれが来たと見ておくべきでしょう。

 

  

 

 

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