ストレスフリーの資産運用 by 林敬一(債券投資の専門家)

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大きなキャピタルゲインをどうすべきか、質問への回答

2020年03月18日 | 初歩の投資教室

初心者さんのご質問への回答

金利の急低下により大きな利益が出ている債券を売却するか、保有継続か、悩ましいことと思います。

このご質問がたいへん多くなっていますので、すべての方々に的確な回答をコメント欄でお示しするのは難しい状況です。そのかわりこの本文にて「保有継続」という事例と「一部売るべきだ」という事例を並べヒントをお出ししますので、ご自分はどちらの例に近いのかを判断し、結論をご自分なりに出してみてください。

初心者さんからついた質問への回答のヒントにしていただくため、いまいちどこれまでに私が差し上げたアドバイスの事例を反復させていただきます。ちょっと長いですが、参考にしてください。

 

まずは保有継続の例から。

 

以下は2月13日の記事に対し、救われた投資家さんから付いたコメントへのやりとりです。

 

2月13日の発言に対する質問コメント

Unknown (救われた投資家)

2020-02-14 14:31:07

林様 お久しぶりです。

ストレスフリーの生活に入って久しいですが、最近悩みが生じております。
それは購入したゼロクーポン債の含み益が直近の債券高で償還額面100万ドルに対して、現時点で800万円というとんでもない金額になっております。
為替が120円前後、金利が1.9%程度のお恥ずかしい数字での参入でしたので大変な驚きです。一刻も早くのストレスフリーの生活に憧れておりましたので、為替、金利はあまり考えずに一気に購入し、償還迄は一喜一憂しないと誓い、ストレスフリーを享受しておりました。
最近の米国の株高と債券高が同時という違和感も気持ちが落ち着きません。
この為、長期のゼロクーポン債を売却したいという誘惑に惑わされております。
林様のご趣旨とは全く異なりますが、一旦売却し、MMFに置いておき、金利上昇時に再度同じゼロクーポン債を購入を考えております。

 

救われた投資家さんへ (林 敬一)

2020-02-14 21:07:24

ほんとにお久しぶりですね。

早い時期にストレスフリーに入られてよかったと思っていました。
逆にそのための嬉しい悲鳴かもしれませんが、ちょっと以下の数字を見直してください。

>購入したゼロクーポン債の含み益が直近の債券高で償還額面100万ドルに対して、現時点で800万円というとんでもない金額になっております。

ご質問に答えるには、正しい数字と償還年限を教えてください。現時点での800万円が100万ドルになるのでしたら、保有継続以外ありませんが・・・。

 

 

Unknown (救われた投資家)

2020-02-14 23:53:01

林様

私の説明不足で大変申し訳ありません。

購入した米国債は下記の通りです。

2020年 60,000ドル ゼロクーポン
2021年 120,000ドル ゼロクーポン
2023年 120,000ドル ゼロクーポン
2025年 60,000ドル ゼロクーポン
2026年 120,000ドル ゼロクーポン
2028年 120,000ドル ゼロクーポン
2028年 127,000ドル クーポン債 ※
2030年 160,000ドル ゼロクーポン
2031年 80,000ドル ゼロクーポン

補足説明として、償還金額合計は967,000ドルが正確な金額でした。 2019年2月に自分年金の第1回目として60,000ドルの償還を既に受けており、100万ドルを切っておりました。
800万円という金額は現時点での評価損益合計の金額で、評価合計金額は96,886,114円です。益金が800万円で、取得金額は約8800万円ということになります。
2028年償還の127,000ドルのみクーポン債で利率は5.25パーセントです。

  

救われた投資家さんへ (林 敬一)

2020-02-15 10:09:17

回答ありがとうございます。

単純に現在の評価益から利回りの合計を計算しますと、

評価益800万円÷投資額8,800万円=9%

為替の評価損は、現在の為替レートを109円と仮定すると、

109円÷120円=90.8%・・・・評価損9%程度

両者をまとめてざっくり言いますと、「為替で10%程度の損があっても、債券の評価益が2割あるので、投資額に対して9%の利益がある」となります。

しかしこれは投資期間との兼ね合いで年率を算出しないと本来の利回りではありません。例えば平均で5年間の保有だと年率では2%程度ですね。3年なら3%程度です。

800万円の評価益が出ているという中身を分解すると以上のようになります。

これをもって救われた投資家さんはどう思われますでしょうか。

私なら「せっかく積み上げたラダー、つまり階段状に償還が来る自分年金を年率2%の評価益に目がくらんで手放すべきではない」となります。

思惑通りに今後金利が上昇すれば、してやったりとなりますが、今後何年か金利が変わらない、もしくは低下してしまうと、その間に生じる逸失利益の大きさを考えストレスを溜めることになります。
特にハイクーポンの債券では毎年70万程度のおこずかいまでもらえますよね。売るのは惜しいです。

以上ですが、救われた投資家さんの感想を聞かせてください。

  

救われた投資家さんからの感想

林様

正確な分析とアドバイス有難うございました。
証券会社の取引明細書を確認すると、2015年の3月の購入でした。もうすぐ5年になります。利率が1.9から2.1で、為替は121円52銭というのもありました。
5年保有なら2%という分析結果はご名答というしかありません。直近の債券高に惑わされておりましたが、5年間のストレスフリーの保有で当然に積み上がってしまうものだと十分理解出来る分析結果でした。

私よりも為替、利率で好条件な方が林様のブログの中では多いはずです。2018年の秋頃の利率3%越えの際に米国債購入の好機と林様がコメントされていたからです。ですから私の様な条件の芳しくない者が評価益に驚いている場合ではなく、他の皆様は更なる評価益にも一喜一憂していない現実を直視するべきだと反省しております。

最後にストレスフリーの米国債投資は恐るべしという感想と共に昨日に証券会社に売却の意向を打診しましたが、全ての売却でも問題ないとの回答に米国債の流動性の高さに感心したことをお知らせ致します。

来週以降に予定していた売却は止めることに致します。
林様、有難うございました。

 

以上が保有継続の例です。

 

  次は3月5日の記事にたいへん多くの質問があり、回答をさしあげましたが、その中で「運用下手」さんに対して私が示した「一部売却すべし」の事例です。

 

Unknown (運用下手)

2020-03-05 22:31:36

林様

ご無沙汰しております。
書籍の発行を待ちながらブログも引き続き拝見しております。
ありがとうございます。

先日、救われた投資家様から、米国債価格上昇を受けて売却是非の
ご相談がございまして、似たようなお話かも知れませんがご容赦下さい。

10年米国債金利が1%を割る状況を迎え、所持している28年償還の
米国債を売却して米ドルMMF待機するのが良い気がしていますが
決めあぐねています。

林様でしたらどうお考えになるか、ご見解伺えましたら幸甚です。


■目標
2036年以降、毎年10,000ドル以上ずつ償還するように、ゼロクーポン米国債の購入を進める。

■現状
・2018年5月に28年5月償還のゼロクーポン債を額面40,000ドル購入
 (10年債と30年等長期債の利回り差が少なかったため10年債を選択)
・2018年10-12月に、2036-2048年償還のゼロクーポン債を額面4,000ドル/年×13本購入
・2018年12月以降の金利低下で購入を一旦中断。購入原資の残り米ドルはMMFで待機中。
・すべて日本国内証券会社での買いつけ

■考えていること
・2028年5月償還のゼロクーポン債価格が75→93まで上昇したため、
 残存期間の利回りが0.85%/年位まで低下しました。購入後1.8年間で円高が多少進んでいますが、それを加味しても約11%/年の利回りになっています。
 一方、今のMMF金利は1%前後で、20%の源泉徴収税を考慮しても残存期間の利回り(0.85%)と大差ありません。今後の金利変動は誰にも読めませんが、
 1)このまま保有して、残存8.5年で93→100のリターンを確保
 2)一旦売却して上昇益を享受し、ゼロクーポン債購入原資として米ドルMMF待機。更なる金利低下で今後93→100未満のリターンになる恐れもあるが、反対に金利上昇すればゼロクーポン債を買戻して金利上昇リターンを享受できる可能性もある
を比べると、8.5年間における更なる金利低下による損失幅の方が限定的で、2)の方が合理的に思えている次第です。

 

運用下手さんへ

お久しぶりです。

極端な金利低下ですね。取り急ぎの返答です。

こんな事態は長期間続くものではないと思われますので、基本的には運用下手さんの2)の戦略に賛成です。つまり

>1)このまま保有して、残存8.5年で93→100のリターンを確保

 

これはたしかに低いリターンしかありません。

 

>2)一旦売却して上昇益を享受し、ゼロクーポン債購入原資として米ドルMMF待機。更なる金利低下で今後93→100未満のリターンになる恐れもあるが、反対に金利上昇すればゼロクーポン債を買戻して金利上昇リターンを享受できる可能性もある。比べると、8.5年間における更なる金利低下による損失幅の方が限定的で、2)の方が合理的に思えている次第です。

 

私もそう思います。

ただMMFはそもそも債券のようなフィックスとインカム商品ではなく、リターンの変動する投信です。従って今回の利下げをうけてリターンが低下する可能性は大いにあることはご注意を。

なお、救われた投資家さんのケースとはかなり事情は異なると思います。

 

以上が「一部売却」を勧めた事例です。

 

2つの事例は、売却か継続かという2つの選択肢だけをお示したわけではなく、それぞれの方のポートフォリオ全体と投資の長期的目標がどこにあるかを勘案して出した私の結論です。

保有継続のアドバイスは、せっかく構築したストレスフリーのゼロクーポン・ポートフォリオを継続保有することで、しっかりと自己年金を毎年のように享受できる体制になっていています。今では大変貴重な高クーポンものの長期債まで保有されています。それらを崩すと、いつまた構築できるかわかりません。それを気にしてストレスを溜めるくらいなら、一時的に出たキャピタルゲインはあきらめましょう、という戦略です。

逆に継続保有をお勧めしたのは、特定の債券の損得勘定をした結果、売却に分があると判断したものです。

みなさんの保有されている債券はどちらに近いものか、是非考えてみてください。

 

そして最後に私は別のコメント欄でこうも申し上げています。

「申し訳ありませんが、ご自宅の購入をすべきか否かに的確な回答はしかねます。用心棒さんへの回答に書きましたが、その方の置かれている様々な状況、家族構成からすべての資産状況、今後の生活に対する考え方、ご家族のご意見などを勘案して慎重にアドバイスをいたします。コメント欄だけで多数の方々を対象にはできかねること、ご理解ください。

個人的相談の窓口ですが、出版を待たずに早急に開設するようにいたしますので、どうかしばしお待ちを。」

相談窓口は私のフェースブック「ストレスフリーの資産運用」上に開設いたしましたので、どうぞご利用ください。ただし個別の相談は有料です。一両日中にブログ上で相談料などを含め案内はお出しするつもりです。

どうかそちらをご利用ください。

よろしくお願いします。

 

 

 

 

コメント
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