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トランプのパンデミック

2020年03月13日 | トランプのアメリカ

  ついにWHOがパンデミックを宣言しましたね。中国がおさまりつつあるのに、他国での感染者数は中国を上回ってしまいました。強権発動のしにくい民主的先進国がコロナウイルスにとっては居心地がよいのかもしれません。

  3月11日トランプはコロナウイルスに対するアメリカの政策を発表しました。一番の驚きはイギリスを除くヨーロッパからすべての人の3か月入国禁止と物資の流入禁止でした。ところが側近からの指摘で物資輸入は対象外だと聞かされ、ツイッターで前言を翻し、物資は禁止しないと訂正するというドジな声明発表でした。

  その上肝心な新たな経済政策には大した言及がなかったため、株価は連日大暴落しています。昨日12日は9日についで2度目のサーキットブレーカーが作動しました。サーキットブレーカーとは電気のブレーカーと同じで、7%を超えて下落すると自動的に取引が15分間停止して落ち着くのを待つというシステムです。それでもダウは2,352ドルの大暴落で終わり、日経平均も前場で1,781円の大暴落です。

 

  そもそも3月はじめにトランプは大見えを切って「コロナはウイルスの懸念は民主党のデマで、アメリカでは完全に制圧し、大問題にはならない」と言い切ったのですが、裏目に出たため焦り狂っています。その狂い様を列挙しましょう。

1. コロナウイルスは民主党のデマだ

2. コロナウイルスは奇跡のように消滅する

3. 検査を受けたい人は誰でも受けられる

  これらの発言を報道から見てみます。まず3月3日のコロナ民主党デマ説をエスカイヤ―誌から引用します。

引用

 トランプ大統領は、世界各地で広がる新型コロナウイルスの感染に対する懸念は、民主党のライバルからの「新手のデマ」だと主張した。

 「部下の1人が私のところへ来て、『大統領、彼らはロシア、ロシア、ロシアとあなたを蹴落そうとしましたが、結局上手くいきませんでしたね』と言った」「弾劾のデマを流そうとしたが、彼らはそれができなかった。そしてまた、新しいデマを流そうとしている」 と発言。

  新型コロナウイルスの感染拡大と、自由市場である株式市場の下落に対する懸念は世界規模で暗雲が立ち込めているにも関わらず、トランプ氏は事態の深刻さを軽視し、「これは自分に対する攻撃だ」と言っている。

引用終わり

  ではその後少しは反省し、ウソを言わなくなったかというとそうでもありません。3月10日の日経新聞を引用します。

引用

米国で新型コロナウイルスの感染が広がり、政権の対応が混乱している。トランプ大統領は「希望者は検査を受けられる」と主張するが、政府の態勢が追いつかない。相次ぐ矛盾したメッセージに国民の不信も高まっている。

トランプ氏は8日、ツイッターに「我々は完全に統制のとれた計画を持っている」と書き込んだ。米国が中国やイランに滞在した外国人の入国を制限したことを念頭に「極めて迅速に国境閉鎖に動いた」と強調。政権の混乱を伝える米メディアに怒りの矛先を向けた。

米政府の説明が二転三転しているのがウイルスの検査能力だ。トランプ氏は6日、検査キットを開発する米疾病対策センター(CDC)を訪れた際に「検査を受けたい人は誰でも受けられる。それが結論だ」と指摘した。一方、CDCを管轄するアザー厚生長官は翌7日「医者が必要と認めた場合に限る」と釈明に追われた。

また、CDC幹部が「米国で新型コロナが流行するのは時間の問題」と指摘しても「奇跡のように消滅する」とすぐに否定した。7日には「(今後も)巨大な集会を開く」と数千人が集まる選挙行事を自粛しない方針を示した。

引用終わり

 

  オレ様がやれば奇跡が起こるし、数千人を集めてもコロナウイルスの心配などないと大統領が錯乱状態にあるため、行政府の担当官たちは火消に追われ、本当にお気の毒です。しかも彼自身の主催するラリーにより感染のリスクが増していることに、さすがのトランプ支持者たちもあきれはじめています。今後も本当に数千を集めての選挙演説を続けるのか、しっかりとウオッチしましょう。

  そして株価の下落や経済活動の落ち込みはすべてFRBのパウエル議長が無能だからだと他人のせいにして、市場はそのたびに暴落で応えています。もともと前のイエレン議長を無能だとして首にし、パウエル氏を自分が選んだんだから優秀だとほめたたえていたのに、株価が大暴落すると前言を翻し非難の嵐。昨日のワシントンポスト紙は、ホワイトハウス内でのトランプの怒りの爆発事件を伝えています。

  トランプ氏が怒るのは日常茶飯事だが、きのうFRB議長に対する怒りの爆発はこれまでにないもので、ムニューチン財務長官に「あいつを辞めさせてやる」と怒鳴ったそうです。

  コロナウイルスの脅威を見誤ったくせに、いつものサイコパスブリを発揮してオレ様は悪くない、悪いのは海外からコロナウイルスを運んでくるやつらだと欧州を標的にして国境を封鎖。そして株価が下がるのはパウエルのせいだとわめき散らす。従順なムニューチン長官、ほぼ全閣僚が交代したあと、いったいいつまでトランプのサンドバッグで居続けられるか見ものです。

  一方、民主党の候補者がバイデンに統一される動きが強まると、トランプも尻に火が付きさらに錯乱しかねません。今後のアメリカそして世界にとってコロナウイルスに加えてトランプが最大のリスクになりそうです。

コメント (1)
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