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コロナウイルス渦中の北海道とニセコの不動産に異変

2020年03月02日 | ニュース・コメント

  今年最後のスキーツアーでニセコに行っていたのですが、その間の北海道は緊急事態宣言も出て、コロナのニュースでもちきりでした。いち早く小中学校の閉鎖を決定した若い知事に対する批判はあまりなく、むしろ妥当との報道が多かったと感じました。

  今回私はいつもの仲間数人とスキーツアーに行ったのですが、そのうち最高齢の友人が高熱を発して救急搬送されるというハプニングがありました。初めは、すわコロナウイルスかと心配しました。それでも私は志願して彼に付き添って病院まで救急車に同乗しました。救急隊員4名も緊張していましたし、ニセコから近い俱知安の病院も、受け入れを決めるまでに時間がかかりました。到着すると結構緊迫した空気が流れていました。検査の間約2時間、誰もいなくなった夜の待合室でやきもきしていたのですが、結果はコロナとは関係がなく、疲労による持病の悪化と判明しました。

  濃厚接触をしていた我々よりも、肝を冷やしたのはホテルでした。深夜にホテルに帰ってくると、部屋のドアの下に総支配人からレターが入っていて、明日の朝一番で事情を伺いたいとのこと。高熱での搬送なのでさぞ驚いたのでしょう。朝になってすぐ支配人と合い、状況の説明をしました。コロナとは全く関係のない持病の悪化であったと説明すると、支配人はかなり安心した様子でした。

  かくいう私も検診結果が出るまでは若干の不安を感じていました。家族に病院への付き添いのことを知らせると、もし友人が感染していたら家には帰ってこないでね、と釘を刺されていました。そうであればもちろんバスや飛行機にも乗れないし、ホテルにも戻れないで病院に収容される以外ないところでした。そのため私自身も入院に必要と思われる物をバックパックに入れ、覚悟を持って付き添ったのです。

  友人はその後平熱と微熱を繰り返し、依然として北海道の病院にいるのですが、食欲も出てきたようで一応安心できる状況になりました。友人の奥様は東京にいてかなり心配されていましたが、結果を連絡するとすっかり安心された様子でした。

 

  一方ホテル側はグループ本部からの指示で、コロナ感染と思われる事例が発生した場合の対応をすでに従業員に徹底しているとのこと。とにかくホテルは即刻すべての営業を停止し、徹底的に除菌清掃を行う。そして従業員全員が検診を受け、家族との接触もしないようにするということでした。それをせずに済んだことで安心したようです。それでなくともこの冬ニセコはスキー客の減少にかなり困惑しています。このホテルでも2月の客数は半減以下で、もし感染者が出たとなれば壊滅的なことになりかねない。これまではオーストラリア人と中国人を中心に海外客に頼ってきたニセコのスキーリゾートですが、今年は異変が起きていました。

  原因の一つはもちろんコロナウイルスにあるのですが、それ以上にオーストラリア人自身にあります。志賀高原のことを書いたときに触れたように、ニセコにオーストラリア人が増えすぎて、彼らがそれに嫌気がさしているのです。その上自分たちが招いたもう一つの災いはホテル代、食事代などニセコの物価高騰です。値上り率連続日本一という不動産価格は言うまでもなく、ホテルではない一般賃貸物件の賃料が2倍に高騰しているというのです。原因は海外資本によるホテルとレジデンシャルホテルの乱立です。レジデンシャルホテルとは、長期滞在型のホテルで、多くは分譲マンションにホテルサービスを付加したものです。そうした物件が我々の行くヒラフ地区に数多くできた上、もともと海外資本による大規模な整備が進んでいるハナゾノ地区にもさらに林立したため、そこで働くサービス要員の確保が非常に困難になっているし、賃貸物件がそうした人たちの社宅として借り上げられ、賃料が倍になってしまったとのこと。レストランや不動産価格の上昇が、原因を作り出したオーストラリア人に跳ね返ってきているのです。

  特に後からニセコに進出してきたのは超一流のパーク・ハイアットやリッツカールトンです。それらが今シーズンから来シーズンにかけて続々オープンするのですが、そこに今回のコロナウイルスが冷や水を掛けました。地元の観光業者の話では、雪不足とコロナ騒ぎでスキー客は半減。それ以上にスキーをしない中国人の雪見ツアー客はほとんどキャンセルされてしまったそうです。

  こうした話はニセコに限らず野沢温泉でも同様だし、白馬八方尾根に至ってはスキー客が雪不足でほぼゼロになっています。果たしてこれが今シーズンだけの話で終わるのでしょうか。雪不足は来年しっかり降れば回復するのは間違いないでしょうが、温暖化がすぐに収まるとは思えません。そして開発しすぎて供給過剰になった不動産は簡単に回復しません。日本全体が不動産バブルの崩壊に見舞われた90年代をほうふつとさせられます。

  コロナウイルス騒ぎの緊迫した中に身を置いてみると、本当に蔓延は早く収まって欲しいと思います。それが収まったとしても、ニセコで見た過剰投資の問題は後に尾を引きそうです。それがリゾートだけでなく、現在進行している東京をはじめとする大都市での不動産への過剰な投資が崩壊へとつながることが心配されます。

 

  これまでもそうだし今後も、不動産投資はいつでもその渦中にいると、決して過剰投資ではないし採算性は確保できると勝手に計算するのですが、投資家のマインドが微妙にずれ始めると、すべてが一気に逆回転を始めるものです。

 

  今我々が注意すべきは、不動産への過剰投資は世界中で起こっているということです。ニセコや東京だけではありません。GAFAのふるさとシリコンバレーとサンフランシスコ周辺、彼らの引っ越しで沸き立つ最近のニューヨークや中国の中核都市、アジアの中核都市のすべてが沸き立っていることを忘れないようにしましょう。

コメント (2)
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