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ベルリーヴ・カントリークラブの思い出

2018年08月12日 | エッセイ

  どこそれ?

  と思う方がほとんどだと思います。木曜日から始まった今年のプロゴルフ・メジャー最終戦、全米プロゴルフ選手権の開催コースです。昨年の全米プロでは日本の松山選手が最終日前半でトップに立ったのですが、アメリカの同世代のトーマス選手に抜き去られて苦杯をなめ、試合後のインタビューで初めて泣いていたのが印象に残っています。

  このコースの名前はほとんどの方はご存じありませんよね。でも実は全米シニアプロ選手権で井戸木鴻樹選手がシニアとはいえ日本人初のメジャー・チャンピオンとなったのがこのコースです。セントルイスの名門コースで、かつて全米オープンも開催され、全米プロは今年で2度目です。私はセントルイスにあるこのコースで1989年にプレーをしました。コースの印象は、ひたすら長くて、ひたすらきれいで、ひたすら難しかった。


 なんでそんなところでプレーできたの?

 

  かつてアメリカに駐在していた時、セントルイスの旅行代理店のオーナーがメンバーで、招待してくれたんです。本来なら担当のセールス・マネージャーが招待されるのですが、ゴルフをやらないためプロモーション・マネージャーだった私にお鉢が回ってきました。ラッキー! 

  旅行代理店と言っても日本にはないインセンティブ・ツアー専門の大手代理店で、当時のJALにとってアメリカでは最大の顧客の一社でした。インセンティブ・ツアーとは、例えばトヨタやホンダが全米の販売店社長を夫人同伴で日本に丸抱えで招待し、東京から京都や奈良を巡り、トヨタの本社工場などを見学する。要するに成績のよい販売会社に対する報償ツアーです。このようなツアー会社は年間千人単位で日本に送り込む力を持つため、キャリアーやホテルにとっては超優良顧客なのです。私を招待してくれたのはMaritz Travelという会社で、当時は全米トップで今もそうかもしれません。トヨタやホンダばかりでなく、アメリカでは例えばアムウェーなど、ちょっと危ない商法の企業も販売代理店向けに頻繁にツアーを行います。日本では普通の大手代理店がインセンティブ・ツアーも企画・催行しますが、アメリカはこの市場が1兆円を超える巨大市場であるため、専門代理店が多数存在しているのです。

 

  実はラスベガスという観光地はこうした巨大インセンティブ・ツアーとエグジビション・ツアーのメッカなのです。例えば全米から数千人の単位で巨大チェーンの店主を夫婦で招待するとなると、1千室を超える巨大ホテルを一棟丸借りする必要があり、大きなコンベンションセンターも必要になりますし、コンサートなどのエンターテインメントも必要です。そのための交通手段として、同じタイミングで全米各地から到着するフライトを押さえる必要もあります。Maritzはそうした力を有しています。

 

  今日本では政府の肝いりでカジノリゾートを作ろうとしていますが、ラスベガスはカジノの街などではなく、その昔からインセンティブ・ツアーの受け入れをメインの商売にしているので需要は問題なく確保され、大成功しています。

 

  ラスベガスと違いアジアのカジノのほとんどが失敗しつつあるのはみなさんもご存知でしょう。アメリカでさえトランプが力を入れて大失敗し個人破産までしたニュージャージー州のアトランティックシティーは、すでにゴーストタウンと化しています。この法案を無理やり通過させた安倍首相、勝算は本当にあるのでしょうか。もともと砂漠や小さな島など、ほかに何もないところがカジノで旅行客を誘致しようとしますが、日本には観光資源が無限にあるのに、何故カジノなのか、私には理解できません。

 

ベルリーヴというゴルフコースから始まりインセンティブ・ツアー市場、そしてラスベガスのカジノと、とりとめのないお話でした。


  フォントや行間の幅がいつもと違っています。このブログ、こういったことがときどき起こり、修正ができません。お許しください。

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