8月10日付の「グローバリゼーションの行きつく先」シリーズの3回目で私は、世界に吹く怪しい隙間風としてトランプ政権の動きやイランの海上封鎖、そして欧州の右傾化などを取り上げましたが、すでに巷間では取り上げられていたトルコの危機問題には触れませんでした。ある方から何故取り上げないのという質問が入りましたので、簡単に回答します。
要は世界の金融情勢に重大な影響を及ぼすほどの大ごとではないと判断したからで、その証拠に先週の株式市場は一時トルコ問題で下げましたが、あっと言う間に切り返しています。例えばトルコのエルドアンが一言「牧師を釈放する」と言えば終わってしまいますが、エルドアンはトランプ同様、オレ様が世界で一番偉く、オレ様が言うことはすべて正しいというサイコパス的人間なので、簡単には引き下がらないでしょう。もちろん長期的にはトランプのやり口は大きな間違いではあります。
それはトルコが欧州とイスラム世界の間にある様々な問題の解決窓口の一つなのにそれを閉ざすから。たとえばシリア問題です。そしてトルコはNATOの一員であることから、欧州と敵対しつつあるロシアとの窓口の一つでもあるからです。もしNATOがトランプのせいでトルコを失ったら、世界のパワーバランスは大きく変化し、怪しい隙間風どころではなくなります。でもそのような風はいまのところ吹いていません。
一方、本日取り上げるのは、トルコ投信の問題で、これは保有者にとっては大ごとです。私のブログの5月18日の流動性に関する警鐘記事で私はこう申し上げました。それはたまちさんからの「ドル一辺倒ではなく、台頭著しい中国ものなどにシフトするのはどうか」、という質問への回答の一環でした。私の次のように書きました。
>日本の証券会社は高金利通貨としていまだに南アランドやブラジルレアル、トルコリラ建ての投信を薦めていますが、リスクがありすぎて問題外です。
わずか3か月でそれが現実になりました。8月17日の日経新聞はこう言っています。
見出し;「トルコ投信大幅値下がり」。
記事の中の表では投信価格が平均40%下落、中には53%下落などとなっていました。そして一番重要な一文は、「一部の投信は8月15日から月末まで購入・解約を認めていない」という部分です。トルコの休日もあって保有者は売りたくても解約すらできないという最悪の事態になっています。これはこうした新興国のジャンク債は一兆事が起こると、売買が成立しなくなるからで、まさに私が指摘する「流動性の枯渇」という事態なのです。その上昨日は格付け会社がトルコ債券の格付けをジャンクの中でもさらに下げています。
著書ではまえがきでまず初めに私はこう述べています。
「資産運用にとって最も大切なのは流動性だ」
これが簡単なのにもっとも理解しづらいことなのかもしれません。このように売りたくても売ることができなくなって初めて、「流動性がすべてなのだ」ということが理解できますが、ときすでに遅し。
投資の基本中の基本すら理解できずにジャンク投信を薦める日本の証券会社には、最大限の非難をしておきましょう。
最後にあらためて申し上げておきますが、
「世界の金融資産でもっとも高い流動性を持っているのはアメリカ国債です。」
以上、流動性喪失の悲劇でした。