株式市場は昨日も先月末に引き続き大きく上昇しました。クロちゃんのバズーカ発射に加えて、我々の年金を運用するGPIFが運用先を国内株式にシフトするというニュースに大きく反応しています。株を買っている方には、さぞ喜ばしい援護射撃でしたね。
そして為替相場も昨日分だけで2円近く円安に振れました。これもGPIFの運用が外貨資産にシフトするという決定が貢献していると思われます。
まず数字で簡単に捉えられるGPIFインパクトを把握してみましょう。最初に国内株式ですが、GPIFのこれまでの運用方針は全体の12%でしたが、今後は25%に増やすのでプラス13%と思われますが、実はすでに6月末実績で17%になっているので、プラス8%です。金額では全体が127兆円の運用ですから8%は10兆円です。この10兆円は、外人が1年に買い越す分程度のインパクトになりますからけっこうな額で、これにさらに日銀がETFを買い増す分がプラス1兆円です。
と言っても実は25%は標準で、プラスマイナス8%のバッファーがあるので、17%はすでにバッファーの下限数値を達成しているとも言えます。株価は先取りして実際にすでに上がってしまったので、これから買ったらアホかと言われるだけでしょう。
外貨建ての債券と株はこれまでの方針がそれぞれ11%と12%、計23%が、今後は15%と25%で計40%となり、株の比ではありません。これも実績ではすでに計27%になっていたので、新たなプラス分は13%、金額は17兆円分のインパクトです。バッファーは両者とも5%ありますから、買い余地は大いにあります。
では外貨建てにシフトする13兆円のインパクトはどの程度のものか。これは経常収支と比較します。直近の1年、つまり14年上期と13年下期の1年間の経常収支は3兆円の黒字でした。それよりはずっと大きい数字です。17兆円は日本の経常収支がかなり大きな黒字だった時期の額に匹敵します。赤黒逆ですが、インパクトとしては今後の円安が見込まれて当然の額です。もっとも為替市場の取引高の巨大さからは、大したことはないと言えないこともありません。
これらの投資の分、GPIFは日本国債を売却することで対応することにしています。額にして10兆円プラス17兆円の27兆円にもなります。しかしこれはすべて国債に飢えている日銀が吸収するので問題はないというのが政府・日銀のシナリオです。
さて今回のテーマは、クロちゃんのご託宣の検証です。私は9月の中旬にクロちゃんの通信簿で、「今の円安は日本経済にマイナスではない」と言い放ったクロちゃんを、「円安、物価高は不幸の連鎖をもたらす」として批判しています。
今回円安が昂進する中でクロちゃんは異次元緩和をさらに追加しています。そして円安については前回の発言から一歩踏み込み、「円安は日本全体にとってはプラスだ」と言い放ちました。本当にそうなのか検証します。
円安が貿易収支でプラスの効果をもたらすのは日本が輸出超過国だった時のことです。日本はすでに輸入が輸出を上回っていますから、日本全体でみれば円安が貿易収支をさらに悪化せせることになります。あのソニーですら先週の決算発表で「円安は当社の収支を悪化させる」と言っています。グローバルにビジネスを展開し終えた日本企業の収益体質は大きく変化し、円安に頼らなくなっているのです。この点では×。
経常収支の中で海外からの収支は黒字なので、円安はプラスに働きます。この点は〇。
しかし円安が本当に絶大な威力を発揮するのは、円資産の実質目減りです。9月にお知らせした「クロちゃんの通信簿2」で私は、自分の自宅マンションを始め円資産がすでにピークに比べて43%目減りしたと述べました。その時の数字を確認しましょう。
9月中旬時点では、
●円の最高値75円から107円への下落率は、
107円 ÷ 75円 = 1.43 ・・・43%安
●長く80円程度だったので、それに比べると、
107円 ÷ 80円 = 1.34 ・・・34%安
では現在のドルレート113円で再度計算します。
●円の最高値75円から107円への下落率は、
113円 ÷ 75円 = 1.51 ・・・51%安
●長く80円程度だったので、それに比べても、
113円 ÷ 80円 = 1.41 ・・・41%安
みなさんの資産はピークから5割も目減りし、80円と比較しても4割も目減りしています。海外旅行も行く気がしなくなるほどの円安です。
大企業を中心とする一部の輸出型企業収益など、日本中の円資産に比べればものの数ではないのです。みなさんの家も、株式も、預金も、将来に渡る給料や年金もすべて円資産です。それがドルを標準に考えると大きく目減りしています。
クロちゃん、それでもあなたは「円安は日本全体にとってはプラスだ」などと言えますか?
結局日本を基準にしかものを見られない視野狭窄がこうした発言につながるのです。それがまさしくこの国を一貫してダメにしてきましたが、今回もしかりです。
つづく
そして為替相場も昨日分だけで2円近く円安に振れました。これもGPIFの運用が外貨資産にシフトするという決定が貢献していると思われます。
まず数字で簡単に捉えられるGPIFインパクトを把握してみましょう。最初に国内株式ですが、GPIFのこれまでの運用方針は全体の12%でしたが、今後は25%に増やすのでプラス13%と思われますが、実はすでに6月末実績で17%になっているので、プラス8%です。金額では全体が127兆円の運用ですから8%は10兆円です。この10兆円は、外人が1年に買い越す分程度のインパクトになりますからけっこうな額で、これにさらに日銀がETFを買い増す分がプラス1兆円です。
と言っても実は25%は標準で、プラスマイナス8%のバッファーがあるので、17%はすでにバッファーの下限数値を達成しているとも言えます。株価は先取りして実際にすでに上がってしまったので、これから買ったらアホかと言われるだけでしょう。
外貨建ての債券と株はこれまでの方針がそれぞれ11%と12%、計23%が、今後は15%と25%で計40%となり、株の比ではありません。これも実績ではすでに計27%になっていたので、新たなプラス分は13%、金額は17兆円分のインパクトです。バッファーは両者とも5%ありますから、買い余地は大いにあります。
では外貨建てにシフトする13兆円のインパクトはどの程度のものか。これは経常収支と比較します。直近の1年、つまり14年上期と13年下期の1年間の経常収支は3兆円の黒字でした。それよりはずっと大きい数字です。17兆円は日本の経常収支がかなり大きな黒字だった時期の額に匹敵します。赤黒逆ですが、インパクトとしては今後の円安が見込まれて当然の額です。もっとも為替市場の取引高の巨大さからは、大したことはないと言えないこともありません。
これらの投資の分、GPIFは日本国債を売却することで対応することにしています。額にして10兆円プラス17兆円の27兆円にもなります。しかしこれはすべて国債に飢えている日銀が吸収するので問題はないというのが政府・日銀のシナリオです。
さて今回のテーマは、クロちゃんのご託宣の検証です。私は9月の中旬にクロちゃんの通信簿で、「今の円安は日本経済にマイナスではない」と言い放ったクロちゃんを、「円安、物価高は不幸の連鎖をもたらす」として批判しています。
今回円安が昂進する中でクロちゃんは異次元緩和をさらに追加しています。そして円安については前回の発言から一歩踏み込み、「円安は日本全体にとってはプラスだ」と言い放ちました。本当にそうなのか検証します。
円安が貿易収支でプラスの効果をもたらすのは日本が輸出超過国だった時のことです。日本はすでに輸入が輸出を上回っていますから、日本全体でみれば円安が貿易収支をさらに悪化せせることになります。あのソニーですら先週の決算発表で「円安は当社の収支を悪化させる」と言っています。グローバルにビジネスを展開し終えた日本企業の収益体質は大きく変化し、円安に頼らなくなっているのです。この点では×。
経常収支の中で海外からの収支は黒字なので、円安はプラスに働きます。この点は〇。
しかし円安が本当に絶大な威力を発揮するのは、円資産の実質目減りです。9月にお知らせした「クロちゃんの通信簿2」で私は、自分の自宅マンションを始め円資産がすでにピークに比べて43%目減りしたと述べました。その時の数字を確認しましょう。
9月中旬時点では、
●円の最高値75円から107円への下落率は、
107円 ÷ 75円 = 1.43 ・・・43%安
●長く80円程度だったので、それに比べると、
107円 ÷ 80円 = 1.34 ・・・34%安
では現在のドルレート113円で再度計算します。
●円の最高値75円から107円への下落率は、
113円 ÷ 75円 = 1.51 ・・・51%安
●長く80円程度だったので、それに比べても、
113円 ÷ 80円 = 1.41 ・・・41%安
みなさんの資産はピークから5割も目減りし、80円と比較しても4割も目減りしています。海外旅行も行く気がしなくなるほどの円安です。
大企業を中心とする一部の輸出型企業収益など、日本中の円資産に比べればものの数ではないのです。みなさんの家も、株式も、預金も、将来に渡る給料や年金もすべて円資産です。それがドルを標準に考えると大きく目減りしています。
クロちゃん、それでもあなたは「円安は日本全体にとってはプラスだ」などと言えますか?
結局日本を基準にしかものを見られない視野狭窄がこうした発言につながるのです。それがまさしくこの国を一貫してダメにしてきましたが、今回もしかりです。
つづく