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日本の年金を取り返す!

2014年05月03日 | ニュース・コメント
 みなさん、連休はいかがお過ごしでしょうか。うちでは家内の実家に行く程度で、混雑を避けたいので旅行の予定はたてていません。天気がいいので、運動のため1時間で20kmほどのサイクリングを毎日しています。普段は世田谷区内の仙川沿いか多摩川沿いのサイクリング・ロードを走りますが、連休中はトラックやバスの排気があまりないので、普段は走らない道も走るつもりです。

 さて今回は中国問題をお休みし、このところ安倍政権になって議論が激しく戦わされている公的年金の運用方針についてコメントします。誰もが強制的に積立をさせられ、本当に予定通りもらえるかについて関心が高いと思います。
 厚生年金も国民年金も運用はGPIFという運用機関が行っているのですが、そのGPIFの運用方針に対してアベチャン一派が株式を強制的に買わせようと様々な試みをしているのです。端的に言えばアベノミクス成功の象徴である円安・株高を何としても維持したいがための工作です。今年に入っての株価はNISAの導入にもかかわらず、外人売りにより値を崩しているので、公的年金で支えようという魂胆です。

 PKOを覚えていらっしゃる方も多いと思います。Price Keepinng Operationの略で、バブル崩壊後今と同じ様に公的年金で株価を支えようと大量に買い、結局見事に打ち砕かれ、我々の大事な年金を減らしてしまいました。その後公的年金は比較的保守的に運用されていたのですが、ここにきて再度政治利用されようとしています。アベチャンの使う手は2つ。集団的自衛権の実現と同じで、以下の2つです。

①人事権を乱用しGPIFトップをタカ派に変える

②アベノミクスのサポーターを集た有識者会議で、株にシフトする運用方針を作らせる


 ここでは人事は話題にしませんが、遅かれ早かれ今のトップはやめさせられることになるでしょう。では運用方針を作る工作をしている有識者会議の結論の「お粗末な一席」をご覧にいれます。

 会議の名称は「公的・準公的年金の運用・リスク管理などの高度化等に関する有識者会議」というたいそうなお名前で、座長は伊藤隆敏政策研究大学院大学教授です。写真を見ればみなさんも「みたことある」人でしょう。彼は4月24日の日経新聞経済教室に、突っ込みどころ満載の有識者会議の結論論文を掲載してくれていますので、それをコメントします。まず概要をそのまま記しますと、

タイトル; 債券減らし分散投資急げ
ポイント;   
① 2%インフレなら金利上昇で国債に評価損
② 株式は長期保有で国債を上回る収益が可能
③ GPIFの国債売却は日銀の緩和で吸収を


 このブログをお読みのみなさんならこの議論がいかにナンセンスか、一目遼然ですよね。上記を説明するための本文をそのまま引用しますと①評価損の説明では以下のようにごもっともなことを述べています。

「日銀が予測するようにインフレ率が目標の2%に近付き、期待インフレ率が2%近辺で安定すれば、長期金利は3%以上に上昇するであろう(価格は下落)。」

指摘その1.
彼は③でGPIFの売却は日銀の緩和で吸収する、と言っているのだから価格は下落しないはずで、骨子の議論に大きな矛盾があります。もっとも彼に言われなくとも日銀は大量に買いまくっています。

さらに説明文を引用しますと、指摘その2になります。

「GPIFが長期国債を大量に市場に売却し、日銀が買い入れることはむしろ国債市場の流動性を高めることから望ましい」

 えっ、エっ、えっ?

 この人大丈夫?

 最近の国債市場で最も大きな話題は「国債市場で取引成立せず!」だったのをご存知ない???

4月14日の日経を引用します。(伊藤氏の経済教室はその後の24日です、念のため)

14日の債券市場で、長期金利の指標となる新発10年物国債の取引が成立しなかった。1日を通して取引が成立しなかったのは、2000年12月26日以来 約13年ぶりという異例な事態だ。日銀が量的・質的金融緩和の一環として市場から大量に国債を買い入れる結果、市場参加者同士の売買が細る流動性の低下を 反映している。

10年物国債という指標銘柄の取引が成立しないというのは、株で言えば日経平均構成銘柄の225種取引が一日中成立しなかったに等しい事態です。とにかく13年に一回の流動性枯渇の異常事態です。それなのに「流動性が高まる」とはこれいかに?

 私は「黒田日銀による国債の大量買い付けはにより、日本は金利と言う経済の大事な体温計をなくしてしまった」と批判していましたが、それどころか彼は体温計を叩き壊せと言っているのです。

 この記事をここまで書いていた私は、この有識者会議座長にあきれはて、ちょっと頭を冷やしてから、続きを書くことにしました。

 日本の年金を取り戻せ!(大粒の涙・涙・涙)


コメント (9)
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