ストレスフリーの資産運用 by 林敬一(債券投資の専門家)

新刊「投資は米国債が一番」幻冬舎刊
「証券会社が売りたがらない米国債を買え」ダイヤモンド社刊
電子版も販売中

「安全資産の円買い」について

2014年05月19日 | 2014年の資産運用
 Owlsさんから「「安全資産の円買い」というフレーズが間違った印象を与えていると思います」というコメントをいただきました。最近よく聞く言葉ですが、私も強い違和感を持っています。それについて、私の見解です。

 まず「安全資産の円買い」という言葉そのものについてです。この言葉は特に根拠をもって使われたり、意図を持って使われたりしてはいないと思います。使っているのは主にアナリストとそれを引用するマスコミです。円高の説明がつかない時に使う言葉だと私は思います。

 2・3年ほど前のギリシャに端を発するユーロ危機の際に使われた言葉は「安全資産のドル・円買い」でした。当時は「リスク・オフの円ドル買い」とも使われました。その時はドルと円はセット動きくことが多かったからそう言われていました。今回のように円がドルに対して高くなるとそれでは説明がつかなくなり、彼らは次の言葉として「安全資産の円買い」を考え出しました。

 いい加減な理由として言っているだけなので、「何故近頃は円が単独で「安全資産の円買い」になってしまったのか?」と聞いても、適切に説明できるアナリストはきっといないでしょう。もちろんマスコミも説明できないので、アナリストの尻馬に乗るわけです。

 為替は毎日様々な要素で変動します。アナリストは変動の理由を毎日解説することを求められますが今日の変動要因は「わからん」とは言えません。そこで様々な言葉を編み出すわけです。今年になって円ドルレートの膠着状態が続いている中で、微々たる変動しかありません。そのたびに今日は世の中がきな臭いので「安全資産の円買い」、今日は臭わないので「安全資産の円売り」などと言うこと自体ナンセンスです(笑)。世界の情勢が毎日毎時安全から危険に大きく振幅するなどということはありえないからです。

 そして「安全資産の円売り」とは決して言いません。円高の時だけ言うのです。何故か?

 その理由は円高の説明がつかないからです。経常収支が悪化し、政府・日銀が一体となって円安を推進している中だと円安は理由を見出しやすい、しかし何故円高になるのかは説明できないので「安全資産の円買い」と言ってごまかすのです。

 では本当にドルに対して「円は安全通貨か」に関してですが、私は円がもちろん安全通貨などとは思っていません。Owlsさんと同様、非常にミスリードな言葉だと思います。

 これまでも述べてきましたが、どの数値をもってしても円は将来的に大いなる危険通貨で、安全通貨などではないと思っています。FSXさん、ただの投資家さんも共通の意見を持たれているようです。経常収支が悪化し財政赤字が放置されている国の通貨が安全通貨だとはとても思えません。
 
 みなさんも毎日解説を義務づけられているアナリストさんを、私と一緒に「お気の毒さま」と慰めてあげましょう(笑)

コメント (14)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする