ストレスフリーの資産運用 by 林敬一(債券投資の専門家)

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円高・デフレのトラップに嵌まり込む日本  36.じゃ、どうしたらいいの  その20

2012年05月14日 | 資産運用 

前回は、「ハヤリもの」には手を出すな、というお話をさし上げました。今回は投資の神様のご託宣です。ご託宣から投資の極意を読みとってみましょう。


5月9日の日経新聞朝刊の「マネー&インベストメント」は全ページで投資家ウォーレン・バッフェットの特集でした。読んだ方も多いと思います。記事の内容で私の興味を引いたのは、彼の会社バークシャー・ハサウェイ社の最近の株主総会での、彼と株主の質疑応答です。以下のようなやりとりがあったそうです。


株主質問;あなたは昨年IBMに投資しましたが、今のアップルやグーグルをどう見ているのか?

バフェットの回答;素晴らしい利益を出している、価値がもっと上がっても驚きません。しかし、将来どこかで道を誤る可能性もあります。その可能性で言えばIBMのほうがまだ低いと思っています

林の解説;IBMは昔からエクセレント・カンパ二―の代表格でした。しかし80年代の終わりころからコンピューターの世界は大型のメインフレームが苦戦し始め、90年代には小型のサーバーがメインフレームを押しのけるほど隆盛となり、IBMは大苦戦しました。IBMはハードからソフト・サービスへの事業転換に成功しました。浮き沈みの激しいハードに頼らないビジネスモデルで高水準のキャッシュフローを安定的に生みだすようになったのです。バフェットはその構造転換を評価し、安値に放置されていたIBMに投資したのです。


株主質問;ゴールドへの投資はどうか?

バフェットの回答;あなたがゴールドを1オンス買ったとして、100年経っても1オンスのままですよ(笑)


林の解説;私が著書でゴールドを「金は金の卵を生まない」と言ったのと同じことをバッフェット氏も返答していますね。キャッシュフローを生まない資産など、投資価値はないのです。相場変動のリスクだけを全面的に取らされ、価格が下がってもいずれは利子などのキャッシュフローがそれを補う、というメカニズムが働きません。


  さて、アップルですが、アップルはこれから出されるスマートTVが成功すれば、株価的にはもうひと山作れるかもしれません。しかしその後の売上の伸び率と利益率の高さの維持は、簡単ではないと私は思っています。きっとバフェット氏もアップル社の業績はヒット商品の連続によって保たれているが、10年単位での継続性は可能性が薄い、と考えているのでしょう。それが「道を誤る可能性」、という言葉になったのだと私は思います。

  私がバフェットに寄せる信頼は、非常に大きいのです。彼の考え方は40年以上全くブレがなく、投資の基礎の基礎、「キャッシュフローの確かさ」に拠っています。そしてキャッシュフローを一番確実にもたらしてくれるのが、実は債券です。債券は英語では「フィクストインカム」、つまり「決まった所得をもたらす」と呼ばれています。それをバフェットは株式投資で実践しているのだと私は考えています。株式ですから成功すれば債券よりプラスアルファのリターンがもたらされます。そのリターン、フィックスはされていませんが。

神様のご託宣から読みとれる投資の極意とは、「キャッシュフローの確かさを求めろ」ということでした。

Q;なそんなに確かなバークシャーの株なら、林さんは投資してるの?

A;いいえ、していません。株式投資はしない主義なんです。

Q;どうして?

A;自分でも株式投資をしている人の話は、多かれ少なかれポジション・トークになるからで、私はそうした肩入れと、特定の株を擁護するため論旨が偏ってしまうのを避けたいのです。

Q;ポジション・トークって?

A;自分の保有する投資対象を推奨して、株価などをサポートすることです。この細々としたブログを運営する私には、相場を動かす力などハナからありませんが(笑)、ポジションを持たないことは、中立性・客観性を守る証にはなると思います。

つづく
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