ストレスフリーの資産運用 by 林敬一(債券投資の専門家)

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その5 成長と円高

2011年11月08日 | 資産運用 
 
 飛び石連休に淡路島に旅行をしていたため、記事のアップが空いてしまいました。海流の激しい場所で育つ海の幸を堪能することができました。


 前回は、円の自由化以来40年間と言う長いスパンでみた場合のドル円レートと日本の成長率を、バブル崩壊前の20年間と崩壊後の20年間で比較してみました。前半の円高スピードは後半の倍も速かったのですが成長率は高く、円高のハンディを乗り越えたようだ、というお話をしました。

 それはきっと日本が発展途上にあったため、円高下にあっても勢いが止まらなかったからなのかもしれません。国によって発展のスピードに差はあっても、一人当たりのGDPが1万ドルあたりまでは超ハイスピードで成長し、2-3万ドルくらいになるとそこそこのスピードになり、3万ドルを超える先進国のレベルになるとスローダウンするというのが、一般的なパターンです。日本の場合、名目GDPが3万ドルを超えたのは92年頃で、およそこのパターンにあてはまります。そこからのさらなる成長にとって、円高は重くのしかかっているようです。
 
 今一度、「働いて、円高にして首を絞め」ということの本当の意味を私なりに考えてみます。円高で本当に困るのはどのような状況でしょうか。私は国内で雇用が守れなくなる状況だと思っています。消費者が物の消費や旅行でエンジョイできたとしても、多数の人が失業したのでは国として「円高で大ハッピー」とはいきません。

 この数年の企業の海外流失の勢いは相当なものがあります。タイの洪水で、それに気付いた方が多いと思います。しかし一方東北の津波被害で、多くの大企業・中小企業が、国内でもコストの安いと思われる地方に展開をしていたという事実にも気付かされました。
 日本の失業率自体は現時点でも、他の先進国に比べて依然として低い状況が続いています。どうやら日本企業は地方展開と海外展開のハザマにいるようです。地方に展開するだけでは円高の対応に限界をきたしつつあり、海外への本格展開も行い、企業の存続を目指しつつある。従来は大企業と系列企業が主に海外に進出していましたが、遂に一般の中小企業まで海外に出てゆく段階になったようです。すると今後はいよいよ失業率が高くなるかもしれません。

 これまでは円高が昂進するたびに、「もう耐えられない」と言いながらも日本企業は頑張りを見せてきました。海外への直接投資は証券投資などと違い、ある日突然日本での投資が止まり海外投資が主流になる、というものではないと思いますが、私はそろそろ本格的限界に近づいているのではないかと思っています。

その理由は?

貿易収支が赤字に転じたことです。

つづく
コメント
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