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CDS、クレジット・デフォルト・スワップの保険料が動いた

2011年09月18日 | 資産運用 
  このところギリシャ問題を巡って、欧州の債券市場が騒がしくなっています。その余波は欧州内だけでなく、日本を含む財政問題を抱える国々に波及しています。余波を一番冷静に映す指標はCDSのスプレッドです。今日は、ちょっと本題から離れて、今注目を集めているCDSの解説をします。

 クレジット・デフォルト・スワップは、債券の保有者がその債券の信用に不安を感じたときに、ヘッジをする手段です。ちょうど保険の仕組みと同じで、保有する債券の大きさに比例した何%かの保険料を払うと、いざデフォルトしたときには、まるまる保険金が支払われるという仕組みです。

 債券市場は別名をクレジット市場と言われますが、発行している国や企業の信用力に陰りが出ると、その債券の市場価格が変動するため、クレジット市場と言われます。例えば日本国債の投資家は、投資開始時点では安全だと思って投資を開始しますが、何年か経るうちに財政状況が悪化してくると不安を感じます。そこで将来デフォルトした場合に備えて、CDS市場で保険料を払って保険金をもらう契約をします。特に大口の投資家で数百億円も投資をしていると、デフォルトした時の損失は甚大で、回復のしようがありません。そこで保険をかけるのです。
 保険の引き受け手は実際の保険会社かといいますと、そうとは限りません。AIGのように、サブプライムのCDSの引受手になっていた実際の保険会社もありますが、単に保険料目当てに勝負をする投資家もいます。保険料はデフォルトさえしなければ、もらい得だからです。
  このCDS市場は買いにいけば売ってもらえるというものではなく、プロ同士が相対のスワップ契約を結ぶ市場です。一定の条件を満たすプロの投資家や、投資銀行、保険会社などしか参加できません。

  さて、日本国債を例にとって、実際の保険料(CDSスプレッド)がいくらになっているのか、見てみましょう。
  我々がネットで簡単に見られるCDSスプレッドは、Markitという会社のサイトにあります。
URLは;http://www.markit.com/en/about/news/commentary/cds/cds.page

 ここで見られるのは期間5年間のスプレッドです。それだけ毎年支払えば、保険がかけられます。
では日本国債の保険料をアメリカと比較しながらみてみましょう。表示されている単位は0.0001ですので、100が1%にあたります。

               
9月15日 日本 126   アメリカ  50
9月9日 日本 110   アメリカ 51
      
日本の保険料は9月9日と比較すると、若干上昇しました。3月11日の震災直後につけた116を上回っています。日本に大きなインパクトをもたらすイベントがない中での上昇はちょっと気になる動きです。日本のレベルは、どういう意味をもっているか説明しますと、5年物国債を買うと年率0.35%の金利をもらえますが、その国債のデフォルトリスクに保険を掛けると、1.26%もコストがかかり、投資しても意味がないということになります。ですので、投資家は保険抜きでリスクを丸取りする以外ありません。
一方、アメリカはダウングレード騒ぎのときにピクリとしたくらいで、この半年ほとんど動いていません。米国債の金利は5年物で0.91%ですので、保険をかけてもリターンは残るレベルです。

今後もこのCDSの動きは、株や単なる債券市場の動きと違い、プロ同士の冷静な判断に基づく動きですので、常に注意をしておく必要があります。これが跳ね上がった時、日本国債の終わりの始まりかもしれませんので、このブログでは今後も定期的に動きを追っていきます。
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