いまだ先の見えないコロナウイルスとの戦いが続いています。治療薬さえあれば、これほど深刻に受け留めなくても済みますし、緊急事態宣言により多くの方が多大な経済的悪影響を受け続けることもないと思います。
しかし一方、治療薬の開発は日々実用化に向けて進んでいるようです。7日に緊急承認された重症者用と言われるレムデシベルや、日本発として注目されているアビガンについてなど、Puffinさんがサイバーサロンというクローズドなネット上のサロンに投稿されました。その情報を、私のブログで公開すること許可してくださいましたので、早速みなさまにお知らせしたいと思います。ブログでの公開を前提にしたものではなかったため、難しい用語を含む解説ですが、どうぞしっかりとお読みいただき、ご質問などあれば私でなくPuffinさんにお願いしたいと思います(笑)。
新型コロナウイルス治療薬の進展状況
レムデシビル(ベクルリー)が本邦でも承認されました。
最近色々脚光を浴びる形となっている両薬剤について、まとめてみました。
ファビピラビル(アビガン)は、本邦の富山大学医学部の白木公康教授と富士フィルム傘下の富山化学工業が共同研究して開発し、2014年に承認認可を受けた、抗インフルエンザ治療薬です。
体内に投与されると化学変化して作用発現する「プロドラッグ」で、RNAウイルスが生体細胞内で自己のRNAを複製する際に働くRNAポリメラーゼ(RNA複製酵素)作用を阻害させます。
RNAを構成する4種類の核酸のうちのアデノシン及びグアノシンと類似した構造を持つことにより、RNA複製酵素に誤認させて取り込まれますが、紛い物のため、取り込まれた部位以降のRNA鎖の伸長を阻害する伸長阻止薬として作用します。
インフルエンザウイルスのみならず、同じRNAウイルスであるエボラ出血熱やノロウイルス、ウエストナイル熱ウイルス、黄熱ウイルスなどにも効果があると考えられ、今回の新型コロナウイルスに対しても現在治験が行われている。中間報告では、無症状もしくは軽症例への投与では、1例も死への転帰を辿った症例がなく全例完解したとの報告がありました。
インフルエンザ治療薬としては認められていますが、胎児への催奇形性の副作用があることや、他剤での治癒不能例への最終兵器として使いたい、という日本政府の意向により、薬価収録されていないため、市場に出回ることはなく、政府が認めた場合にのみ製造が許可される限定条件が付けられています。更には、中国企業が特許ライセンス契約を締結しておりましたが、2019年に物質特許が失効したのち、まだ残る製造特許には抵触しない形で中国においてジェネリック薬が製造されるようになっています。
レムデシビル(ベクルリー)は、米国にて希少疾患専門の治療薬を開発しているギリアド社がエボラ出血熱治療薬として開発途中の薬剤です。
この薬剤については、ギリアド社はその詳しい作用機序などは開発途中であることを理由に開示しておりません。現在は第3層治験中で、それまでに判明している結果などから、やはりRNA複製酵素の作用を阻害するもの、と推測されています。
4月29日に世界68施設での重症COVID-19患者に対する臨床試験の予備的解析結果が発表され、主要評価項目の回復までの期間はプラセボ群15日に対してレムデシビル群11日、副次的評価項目の患者死亡率はプラセボ群11.6%に対してレムデシビル群8.0%と発表され、一般紙などの報道では注目が集まりました。
しかし、統計学的有意差が認められたのは、回復までの期間のみで、死亡率には有意差は認められておらず、さらに同日「Lanset誌」において発表された中国での重症新型コロナウイルス患者への投与試験結果では、症状改善効果に有意差なし、という結果が出ております。
こうしたRNA複製酵素阻害薬は、ウイルスの「増殖」を抑えるもので、すでに増えてしまったウイルスを破壊する効果はありません。従って、病状が進行した重症例では劇的効果を期待するのは早計です。無生物であるウイルスは生きてはいないので「殺す」こともできず、自己免疫力で一つ一つ破壊していくしか治癒するすべがありません。両剤とも、感染初期や軽症例での効果には十分期待が持てるので、こうした治療の選択肢が増えることを祈念しております。
ここまでがPuffinさんの最初の投稿で、その後にいただいた追加の投稿も以下に転記させていただきます。
特にレムデシビルについてはマスコミでは期待先行ですが、冷静に適応症例を選んでの投与をしないと現場が混乱してしまうと思います。なお、レムデシビルは点滴投与、アビガンは内服投与の薬です。
また、既に30年くらい前から「急性膵炎」や「汎発性血管内血液凝固症(DIC)」の治
療に使われていたナファモスタット(商品名フサン)という蛋白質分解酵素阻害薬がありますが、こちらが、ウイルスが人間の細胞内に侵入する過程の「膜融合」を阻止する効果が報告されており、侵入後のRNA複製を阻害するアビガンと併用する治験も始まったようです。フサンも、日本の鳥居薬品が開発した薬で点滴投与する薬です。既に市場では、備蓄に走った病院が多く、品薄状態となっています。
Puffinさんからの情報は以上です。
コロナウイルスによる影響が果たしてどこまで続くのかとても懸念されます。その中でこうした薬剤がしっかりと効果を発揮し、一般に普及し、コロナ感染がインフルエンザ感染並みになってくれることを期待したいと思います。