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ストレスフリーの資産運用 by 林敬一(債券投資の専門家)

新刊「投資は米国債が一番」幻冬舎刊
「証券会社が売りたがらない米国債を買え」ダイヤモンド社刊
電子版も販売中

逆イールドとは、短期債投資のチャンスだ

2019年03月26日 | 米国債への投資

 トランプ大統領にとって良い結論が出ましたね。トランプは大喜びです。私はがっかりです(笑)。モラー特別検察官は結論を出さず、すべてを司法長官に委ねました。バー司法長官が出したコメントのポイントは2つ、

 

1.  ロシア疑惑についてトランプ氏と陣営を含め共謀の事実は見当たらない

2.  司法妨害については、特別検察官の捜査から得られた証拠は、大統領が司法妨害の罪を犯したことを立証するに充分ではない。(つまり推定無罪だ)

 

これに対して反トランプの旗幟鮮明なNTタイムズは、こう噛みつきました。

 「バー氏が報告書を受け取って48時間で結論を出したのは軽率だ。トランプ氏が先月選んだばかりの司法長官なので、トランプ氏の望み通りの結論を出した。モラー氏の捜査を正当に評価していない。」

   今後も報告書の公表や内容などを巡り様々な動きはあるでしょうが、私はこれで一区切りついたと見ています。早々と結論を出すようですが、その理由は本当にヤバイものがあれば、ここで出るはずだから「無駄な抵抗はやめておけ」ということです。

  今後世界にとって、そしてアメリカにとって最も大事なことは、トランプを再選させないことです。そのためには弾劾の長いプロセスは逆効果だと思っているのです。

  司法長官の結論が出される2週間も前に、民主党の下院議長であるナンシー・ペロシ氏のインタビューにそのヒントを得ました。彼女はワシントン・ポスト紙のインタビューに答えて、こう言っていました。

 「ドナルド・トランプ大統領の弾劾を追求することについて、米国の分断をあおることになるとして、支持しない考えを示した。また、民主党はそれよりも2020年に政権を奪還することに注力すべきだと述べた。」

  民主党のリーダーが何故?といぶかる向きもあるかもしれませんが、彼女はよく先を見ていると思います。私の勝手な解釈は、以下の通りです。

   不十分な証拠を元に弾劾のプロセスに入り、下院は過半数を占める民主党の賛成により弾劾すべきと結論を出せるかもしれません。しかし上院は共和党が過半数を得ているし、弾劾には3分の2が必要で簡単に弾劾とはならないでしょう。長い弾劾プロセスの最中、あるいは弾劾否決という結論が出た後に大統領選挙のタイミングが来ると、逆効果でトランプの勝利に貢献してしまう可能性が大きいと思うのです。ペロシ氏はきっとそうしたことを読んだ上での発言なのではないか、それが私の解釈です。


   さて今回の本題です。先週金曜日、22日のNYダウは460ドルの暴落。それを受けて月曜日の東京市場も650円暴落しました。その一番の原因として挙げられたのは、米国債のイールドカーブが逆イールドになったということでした。

  イールドカーブをおさらいしますと、国債の金利を年限別に短期金利から長期金利にむかってプロットし、それを線でつなげたものがイールドカーブで、通常は短期金利は低く、長期になればなるほど金利は高くなるので右肩上がりのカーブになります。それが今、短期のほうが長期金利より高くなっていますが、それが逆イールドと言われるものです。実際の年限別イールドを並べて見ておきましょう。

       3か月 6か月 12か月  2年  5年 10年  30年

金利%    2.43   2.45   2.40    2.26   2.20   2.42    2.88

 

   この状況についてロイターの記事を引用します。

 「22日の米債券市場で3カ月物財務省短期証券(Tビル)と10年債の利回りが2007年以来約12年ぶりに逆転した。製造業統計が予想を下回る中、景気の減速が意識されている。長短金利の逆転は景気後退(リセッション)入りの兆候ともみられる」。

   特徴的なのは3か月物と10年物です。なぜこの二つかと申しますと、短期金利の代表選手が3か月物、長期金利の代表選手が10年だからで、短期といっただけで3か月物を指すことが多いし、長期といっただけで10年を指すからです。

   長期の米国債投資を考えていらっしゃる方にとっては、金利動向が気になることと思います。今後リセッション入りするとすれば、しばらくは投資を控えざるを得ませんね。

   ではいったいどれくらいの間、長期債の投資を控えることになりそうなのでしょう。これはとりもなおさず今後のアメリカ経済の見通しはどうかということにつながります。私個人が的確に見通すことなどできないので、いつも世界を俯瞰している国際通貨基金IMFを頼ってみます。年初に出された2年後までの見通しは以下の通りです。アメリカ以外も参考までにつけておきます。

         18年  19年  20年   

アメリカ     2.9   2.5   1.8

先進国      2.3   2.0   1.7 

世界         3.7   3.5   3.6

中国       6.6         6.2        6.2

日本       0.9    1.1   0.5

   どうやら2020年までは昨年今年よりかなり下向きになっていて、それはアメリカもその他の国も同じ傾向ですが、直近で欧州の見通しがより悪化していることから考えると、もう少し下も見ておく必要があるかもしれません。IMFは2年後までしか発表していません。それに対して世銀ワールドバンクは一応3年後の見通しを出しているのですが、ほとんどの国と地域の見通しは20年と同じような数字が並んでいます。どうやら1年あるいは2年先までリセッションには入らずとも、スローな景気が続きそうです。

  ではこうした見通しを受け、今後の投資はどうすべきでしょうか。私は黙って2年以上先まで現金で置いておくのは得策ではないと思います。現状で取る手立てがあるかといえば、それは短期債を買って様子を見ることです。「逆イールドとは、短期の金利は高い」ということでもあるからです。

    21年の見通しはよくわかりませんが、20年まではどうやらアメリカをはじめとして経済見通しが上向くことはなさそうです。であれば、それまで現金のままにしておくのではなく、2~3年の短期債券を買ってすこしでも稼いでおく。よしんば20年中に経済が回復し金利の上昇があったとしたら、乗り換えればいい。もちろん保有している債券は値下がりしますが、残存期間が非常に短い債券の値下がり幅はたいしたことはないからです。例えば20年の年央に長期の10年物が3%に乗るようなことがあれば、喜んで短期債を損切りして長期債に乗り換えましょう。それぞれの年限の金利を厳密に想定するのは難しいので避けますが、半年を残して値下がりした債券の損失は、3%の長期債が買えれば、1年もすれば取り戻せる可能性が高いのです。

   ここでの注意点は、為替変動です。現在のドル円レートは110円程度です。ドルを保有していれば問題はありません。それがたとえば円から2年物米国債を買って2年で合計5%弱の金利を得たとしても、その分以上の為替変動で2年後に損失を出す可能性はあります。しかし、償還時のドルをそのまま再投資に向かわせるのであれば、損失を確定することにはなりません。為替の損得は買い替えた長期債が償還を迎える時で、それまでにはたっぷりと金利を稼げますので、跳ね返せる可能性が高いのです。

     以上逆イールドの現在、米国債投資はどうすべきかについてでした。

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ガンドラック氏の予言、米国債金利6%は当たるか?

2018年12月01日 | 米国債への投資

早期退職希望者さんからコメント欄に以下のご質問がありました。みなさんも回答には興味を持たれるとおもいますので、本文にて回答することにしました。

>現在3%台で推移する米長期金利が6%になるのなら待とうか、という気になりますが、

林先生のご見解はいかがでしょうか?

   もしそれが実現すれば、私の著書の中で最初に例として取り上げたR氏のように、みなさんも金利生活者として幸せな未来が待つことになります。でも私は残念ながらそこまで高金利が実現するとは思いません。おもしろい記事ですので、以下に記事の内容を引用しながら、私のコメントを述べていきます。

 

>米国市場で「新債券王」と呼ばれる著名投資家のジェフリー・ガンドラック氏は日本経済新聞のインタビューに応じ、米連邦準備理事会(FRB)が利上げを進める中で財政悪化が続く状況について「非常に危険」と警鐘を鳴らした。現在3%台で推移する米長期金利は「2021年までに6%に達する」と予想した。

ずいぶん大胆な予測ですね。あと2年ちょっとで投資の世界が様変わりするという予想です。

>「中間選挙の結果、財政赤字の拡大がより早く進むだろう」。米中間選挙の結果、上下院で過半数を握る政党が異なる「ねじれ」が生じた。市場では新しい法案は通りにくく、政策は停滞するとの見方が多い。一方、ガンドラック氏は「下院の民主党がトランプ氏の選挙公約である中間層向けの10%減税に賛成し導入される」とみる。民主党は従来の税制改革では富裕層や企業に恩恵が偏っていると主張していたからだ。中間層向けの減税実現に向けた財源確保は難しい。下院の民主党は現行の減税策見直しを提案しそうだが、トランプ大統領や共和党が反対するのは確実だ。結局、財政赤字の拡大を容認する形で中間層向け減税が導入されるというのが同氏の見立てだ。

  ここまでの内容は、一見理屈は通っていそうに見えますが、実は無理があるようです。共和・民主が共同で財政のひどい赤字拡大を本当に容認するでしょうか。

>「FRBが利上げを進める中で政府債務が膨らみ続ける状況は非常に危険。5年以内に問題になりうる」

これはその通りですね。でも問題化することが予測できるのに、議会は黙ってそれを通しますか?私はそうは思いません。

  アメリカには行政から独立した「議会予算局」という党派を超えた中立的な機関があって、財政の10年先までの将来予測を毎年出して放漫財政を警告します。今年も春先に、トランプ減税による今後の強烈な赤字を警告しています。この組織は実に重要な組織で、政権が代わっても財政の見守り機能は影響されないという特徴を持ちます。

>ガンドラック氏はトランプ政権と共和党が景気サイクル後期にもかかわらず、減税策や財政支出の拡大を進めていることに批判的だ。今後、政府の利払い負担が急速に増えかねないからだ。将来、景気後退期に入っても財政上の制約で十分な対策を打てなくなる可能性も出てくる。

もちろんこれはそのとおりだと思います。

>同氏によれば今後5年間で総額約7兆ドルの米国債が償還を迎える。一方、FRBは金融政策正常化の一環で利上げを進め、米国債の再投資は減らしていく。米国債の保有シェア最大の海外勢も為替ヘッジのコスト上昇で購入を減らしている。国内投資家がその穴を埋めるには、インフレ率を上回る魅力的な利回りが必要だ。従来は年2%程度の利払いで済んでいたが、ガンドラック氏は今後は3~4%に上昇するとみる。

そうでしょうか?まあ、3-4%ならありえなくはないでしょうが、最近のFRBはむしろ来年の利上げ回数を減らす方向ですよね。理由はもちろんインフレが高進しない、つまり景気のスローダウンを見ているからです。だとすると、長期金利が一方的に上昇するとは思えません。その中でもし長期金利が供給サイドの事情だけで上昇を始めたら、FRBはまた国債を買って金利を下げますよ。長期金利の上昇は住宅投資や自動車購入に冷や水をかけ、不況に突入してしまうからです。

>ガンドラック氏は16年夏、市場関係者の中でいち早く長期金利の底入れを主張し、予想通りの展開となった。18年10月に10年債利回りは約7年ぶりに3.2%台に上昇した。足元は3.0%台まで低下したが、同氏はまだピークは打っていないとみる。金利の上昇予想を曲げない裏には、米国の財政悪化が止まらないとの見立てがある。

  実は彼はこの大胆な見立てをどう理屈づけるか困っているのではありませんか。なので最初に私が指摘したように確固たる理由もなく財政赤字が無制限に拡大する、しかも矛盾したようなことを述べざるを得なくなっている。それが彼の見通しへの私のコメントです。

>「もし20年までに景気後退に陥れば、トランプ氏は次期大統領選に出馬しないだろう」。トランプ大統領はすでに2期目に意欲をみせている。ただ景気後退で株価が下落すれば、選挙戦で自身の経済政策を成果として誇れなくなる。最終的に「経済失速」の責任をFRBに転嫁し、次の大統領選からは撤退する――。ガンドラック氏はトランプ氏の性格を踏まえてこう予想する。

トランプが撤退だなんて、そんな世界の期待に応えるほど彼は甘くありません。再選を目指すから責任を転嫁するのでしょう。しかも共和党はすべての議員が中間選挙で彼に忠誠を誓って当選しています。誰がトランプを裏切れるでしょう。それが今の共和党のはまってしまった罠だと私は見ています。そしてトランプ支持こそ将来の共和党の命取りになるというのが私の見立てです。

>同氏が次の大統領選の争点になるとみているのは、所得格差問題と社会保障政策だ。景気後退に陥れば、国民皆保険などセーフティーネット(安全網)の拡充を主張する民主党の急進左派の勢いが増し、次の大統領がこの一派から誕生すると予想する。新政権の政策は財政拡張的になるだろう。ガンドラック氏はそこまで読んだうえで、今後の金利上昇シナリオを描いている。

誰でもいいからトランプ以外が大統領になってくれ、それが私の願い、世界の願いです(笑)。

  ということで、きちんと整理してかかれば、6%の金利はありえないことがわかると思いますが、みなさんのご意見はいかがでしょう。

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米国債投資のお勧め

2018年10月08日 | 米国債への投資

  アメリカ国債10年物の利回りが3.23%と、かなりのレベルに達しています。このレベル、実は私が著書「証券会社が売りたがらない米国債を買え」を2011年に出版した当時の金利を若干上回っています。出版して以来初めてのレベルで、7年ぶりのことです。

  著書にある年限別の金利と為替を現時点と比較します。

    11年7月   18年10月(%)

10年   3.12           3.23

30年   4.37    3.40

ドル円   83           113

B/E10年  61     83

B/E30年  24     42

 

  両時点の比較で特徴的なことは、10年物は当時を若干上回りましたが、30年物はまだ約1%も下回っているということです。また、為替レートは83円対114円と4割り近く円安になっています。

  上の比較の最後にあるB/Eとは、ブレーク・イーブンの省略で、将来為替がもし償還時点で円高に振れた場合、いくらまでなら金利の取り分で耐えられるか、つまり損をしないブレーク・イーブンはいくらかを計算したものです。11年時点では10年物で61円、30年物だとなんと24円というレベルでした。間違いなく損することなどありえないレベルです。それが現時点のブレーク・イーブンは10年物で83円、30年物で42円とかなり上昇してしまいました。それでも私はそこまでの円高はありえないと思っています。

  なお、著書では厳密を期すために、ブレーク・イーブンレートの計算は米国債金利だけを考慮しているのではなく、11年時点で米国債の代わりに為替リスクのない日本国債に投資すると少ないながらも金利を得られたので、その金利を計算に入れて比較しています。つまり米国債金利の利益を少し割り引いているということです。現時点だと円の金利はないも同然なので、考慮に入れていません。

 

  このところの米国債金利上昇はいったいどういう理由によるのでしょうか。私なりの解説をします。私は従来から繰り返し、金利を左右するのは理論通りに「物価と雇用」だと言い続けてきました。アメリカの9月の雇用統計がちょうど先週末に発表されましたが、失業率はなんとわずか3.7%と、ありえないような低さになっています。これが賃金を少しずつ押し上げ、前年比では2.8%の上昇となりました。物価も賃金上昇などを受け、8月の前年比で2.7%の上昇ですが、このところの原油価格の上昇により9月の統計はさらに上昇し、7月並みの2.9%程度になるとエコノミストは予想しています。

  ではこの先もこうした傾向は続き、長期金利はさらに上昇していくのでしょうか。私はそうは思っていません。FRBは政策金利をすでに8回も連続して上げ、ゼロ近辺だったものが現在2.0%-2.25%になっています。そして今後のFRB理事たちの利上げ予想回数は来年が3回、再来年は1回で、それが実行されると3%に乗り、そのあたりが天井だと見ています。しかしそれらはすでに既知のことで、長期金利には織り込み済みなので、私はこれ以上ぐいぐいと上昇するのは難しいとみています。

  長期金利と一言で言う時、一般的には現在3.23%である10年物を指します。最も代表的な長期金利だからです。しかし超長期の30年物金利は10年物とほとんど変わらない3.40%でしかありません。この意味するところは先行きさらに長期金利は大きく上昇はないだろうということです。つまり雇用情勢も物価も、そろそろいいレベルだ。裏を返せば、今の好景気は高原状態の横ばいではあっても、その後は頭を打って反転する可能性が高いと債券市場は見ているのです。そのためFRBも20年は1回の利上げしか見込んでいないのです。

  では、米国債10年物は今買い時か?

  為替がたとえ今の113円近辺であっても買い時だと私は思っています。ブレーク・イーブンは83円でしかありません。もちろん過去に円高時点でドルを仕込んでいた一部の方にとってはとてもオイシイ買い時が来ていると思います。


  最後に、もし私が著書を出版した時点でその気になって米国債を仕込んでいるとどうなったか。10年物は金利がほぼ当時のままなのでキャピタルゲイン・ロスは計算ずに金利と為替だけを計算しますと、

  単純に金利は、 3.12% X 7年 = +22%

  為替は、    83円 → 113円 = +36%

  100万円を投資したとすると、

100万円 X 金利分1.22 X 為替分1.36 = 165万円

  債券と言う超安全な投資にも関わらず、たった7年で両者の合計は65%の儲けとなっています。多くの方にはトラタヌでしょうが、少数の方はタヌキをしこたま獲って、ニンマリとされていることを申し添えます。

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証券会社の提示する米国債金利について 2  アメリカの実例

2018年02月20日 | 米国債への投資

「証券会社の提示する米国債金利について」という2月18日の記事に関して、昨日Puffinさんからアメリカの証券会社の具体例を使い、詳細なコメントが寄せられました。

  みなさまにも参考になると思われますので、そのままこちらの本文に転載させていただきます。

Puffinさん

いつもこうした具体例に関して詳細かつ有意義なコメントをお寄せいただき、誠にありがとうございます。このブログの有力サポーターに、感謝させていただきます。

ブログの読者のみなさんにお願いです。

このブログはみなさんからのご質問はいつでも大歓迎ですし、回答の投稿も大歓迎です。

お願いとは、Puffinさんの今回のコメントのように、とても手間暇がかかり、かつ有意義な情報をいただいた場合、是非ともお礼の言葉を寄せていただきたいのです。Puffinさんも一読者の方で、貴重なお時間を使って書いていただいています。

Puffinさんに限らず、こうした善意で寄せていただいた情報に対して、返礼はどうか忘れずにお願いいたします。


では、実例の転載です。今回は「訂正と捕捉」を加え2つの投稿がありますので、その点にご注意ください。

 

米国債券市場における債券価格 (Puffin)

2018-02-18 22:45:59

こんばんは。

米国債券市場での債券価格の推移についてです。
米国証券会社の口座で板・チャート情報を見られるのですが、株式と同様に売り・買いが膨大な数量交錯するので、日々大きな変動があります。
例えば、2018年2月16日(金)は、2029年2月15日償還のPrincipal(ゼロクーポン)の場合、始値72.7090、高値72.8925、安値72.7040、終値72.7080、となり、どのタイミングで買いを入れているかでかなり利回りが変わります。これが更に日々全く違った値動きになる(15日の場合は、始値72.2505、高値72.5990、安値72.2505、終値72.4625)為に、日本の証券会社がいつの時点でその債券を仕入れているかや仕入れ全体の平均値などで、償還日が短い方が一時的に最終利回りが高くなる逆転現象が生じる事もあります。

日本の証券会社での購入の場合は、直近営業日の米国市場での債券価格やその債券を仕入れた時の債券価格、為替の動き、会社の利益・手数料などのマージンを取って一本値で債券価格を提示するため、どうしてもパフォーマンスは悪くなります。
米国証券会社で最安のIB証券の場合手数料は、1注文当たりの購入額の0.02%で、最低手数料額が5.00ドルと公表されているので明朗会計です。2月16日の終値で1単元の償還価格1,000ドル分を購入した場合は、手数料5ドルが加わって債券価格は73.2080になります。100単元100,000ドル分購入ならば、手数料14.5416ドルが加わり債券価格は72.7225となり、大口取引ほど一単元当たりの手数料が安くなって購入債券価格の低下→利回り上昇、となります。
因みに、日本の証券会社の一本値の提示価格は一日遅れとなる為、同一条件での大和での債券価格は、金額の大小にかかわらず、73.83でした。

ご参考までに。

 

訂正 と 補足 (Puffin)

2018-02-19 00:18:06

米国のIB証券と日本の大和証券の比較ですが、1日delayがある為、IB証券の債券価格は15日(木)の債券価格を用いて16日(金)の大和証券の提示価格と比較すべきでしたので、訂正します。

IB証券で2月15日の終値で1単元の償還価格1,000ドル分を購入した場合は、手数料5ドルが加わって債券購入価格は72.9625になります。100単元100,000ドル分購入ならば、手数料14.4925ドルが加わり債券価格は、72.4769になり、大口取引ほど一単元当たりの手数料が安くなって購入債券価格の低下→利回り上昇、となります。
因みに、同一条件での大和証券での債券価格は、金額の大小にかかわらず、73.83でした。

あと、補足ですが、日本からIB証券への送金も裏技があって、IB証券は、個人のリテール部門からは既に日本から撤退している Citi Bank の法人部門口座を日本国内に保有しているため、三菱UFJと三井住友の都銀からならば、高い手数料の国際送金システムのコルレス銀行システムを使うことなく、送金金額に関わらずに送金手数料800円だけで日本円のまま送金可能です。そして、IB証券口座内で円からドル転を行う場合は、FXレートでの為替交換となり、1ドルあたり3銭ほどのスプレッドで交換できます。但し、デフォルト設定のままでは交換した米ドルはキャッシュではなくFX証拠金となってしまう点に注意が必要です。詳細設定で、「日本円を担保に米ドルのFXポジション(IDEALPRO)」ではなく、「日本円を米ドルに両替をする(FXCONV)」を選択する必要があります。米国人の一般投資家は、世界の基軸通貨である米ドルを敢えて他国通貨に交換する必要が無いので、外国人である日本人にはちょっとわかりにくいかもしれません。
こうして手に入れた米ドルのキャッシュは、ACHシステムを設定しておけば、保有する米国内銀行口座を介することで、別の証券会社にも無料で自由に資金移動が可能になる為、私は資金移動の国際トンネルとしても利用しています。

 コメント欄からの転載は以上です。

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証券会社の提示する米国債金利について・・・Takeさんの疑問への回答

2018年02月18日 | 米国債への投資

  羽生結弦選手、そして宇野昌磨選手、やりましたね、オメデトウ!

私もかたずをのんで中継を見守りましたが、日本人として本当にうれしい限りです。

  そしてもう一人、国民栄誉賞の羽生さんを破った藤井君、さらに一勝して6段に昇格。本当に驚きの快挙ですね。羽生さんには失礼ながら、うれしいニュースが続きます。


  さて、Takeさんの疑問への回答です。Takeさんの疑問は、以下のとおりです。

>大和証券で20292月償還債(以下、大和の米国債)が利回り2.719%で販売されております。残11年の債券ですが、残期間がより短いはずの現在の10年債の2.857%より低い利回りとなっています。

一応確認ですが、「現在の10年債の金利」とは、毎日公表されている市場金利のことですよね。そうだとして議論を進めます。

  証券会社の売値、あるいは同じことですが、販売時の利回りは、市場金利とは一致しません。その理由をまず簡単に述べます。

回答その1.初級編

a.  証券会社が提示する時点と市場の金利公示の時点には時差がある。証券会社の提示金利は、刻一刻動く市場金利には追い付けない。提示後に10年物の市場金利が上昇してしまった可能性がある。

b. 証券会社は自分の販売手数料を稼ぐため価格を高くする。価格を高くするということは、利回りは低くなります。

    債券の場合、株式のように手数料は販売総額の0.1%というように、あたかも外税方式のようにはなっていません。内税として売値に上乗せして手数料を稼いでいます。価格を上乗せする結果、提示する金利は市場金利より低くなるのです。

  手数料の考え方は、為替の場合も同様ですね。例えばドル円市場の中値が107円と仮定します。すると銀行はドルの売値は108円、買値は106円と提示して、もし同時に売買が成立すれば2円の儲けになります。

  それを債券に当てはめると、やはり証券会社は市場の中値より売値を高く設定し、買値を安く設定してその間のスプレッドを手数料相当の儲けとして確保します。

  それにしても、市場の10年物の標準金利より11年物の提示利回りが低いと、あれっという印象を持ちますよね。高く買わされるのですから。

  それにはさらに深い理由があります。

回答その2.中級編

証券会社の在庫である保有債券の価格も日々変動するが、それをある程度ヘッジするため、余裕をもった価格を提示する。

  特に現在のように金利が日々大きく変動する局面では、提示金利と市場金利との乖離はより大きくなりがちです。そうしないと日々の価格変動についていけず、在庫で損失を出すおそれがあるからです。

   10年物の指標金利はあくまで目安ですから、販売用の債券は常に手数料分金利が低くなるのはしかたありません。

   それにしてもTakeさんの見つけている11年物は、指標金利よりだいぶ低いという印象を私も持ちます。金利全般が高くなっていて買い意欲が強いので、売り手は強気の価格設定をしているのでしょう。

 

  オマケ、ちょっと上級編・・・わからんという方は、以下の解説は無視してください

  債券を取り扱っている証券会社は非常に多額の在庫を抱えています。例えば私のいたかつてのソロモンブラザーズは債券では世界最大の取り扱いをしている投資銀行でしたが、常時10兆円以上の在庫を抱えていました。日々の金利変動による在庫価格の変動は莫大です。価格が1%変動すると1千億円の損得が出ます。その変動から自己のポジションを守るためにはヘッジを行う必要があります。以下は非常に単純化した解説です。

  在庫が単純な保有、つまりロングのポジションだと仮定すると、同額の先物を売り建てる、つまりショートすることでヘッジができます。

  しかし10兆円ものポートフォリオは数百本~数千本もの多様な年限の債券が混在しています。するとその一本一本の債券をそれぞれ先物でヘッジすることは不可能です。そこでポートフォリオ全体を何本かの債券グループで近似させ、その何本かの近似債券を先物でヘッジするという手段を取ります。

  近似させると説明すると平均値を出すという単純作業に思われますが、実はそうではなく、ポートフォリオのデュレーションを計算するという非常に複雑なものです。これは難しすぎるので省略します。

  日本の証券会社の在庫はそこまで膨大ではないものの、価格変動に対してヘッジするということは必ず必要です。例えばTakeさんの買おうとした11年物債券の在庫は、同年限のヘッジ手段はありません。先物のある10年の標準物でヘッジするよりしかたないのですが、そこには年限が異なるというわずかなリスクがあります。すると完全にヘッジできないため、そのリスクの分売値を高く設定するということもありえるのです。

  ちょっと話が複雑になりすぎました。要するにこうした様々な事情から債券価格は市場の標準物からは推し量れない乖離がありうるということを説明しました。

 「それじゃ、証券会社の思うつぼじゃないの?」

という疑問が当然わきます。大丈夫、そこは競争原理が働くため、一つの証券会社の思うつぼにはなりません。それでも我々の投資環境は、日本という狭い国の小さな市場であるという不利さは否めません。Takeさんの買おうとした11年物の米国債をアメリカの証券会社に直に買いに行くと、よりリーズナブルな価格で買えるかもしれません。わたしはそこまでは確認していませんので、あしからず。

  私の解説は以上ですが、ご理解いただけましたでしょうか。

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