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アメリカ大統領選挙 3度目のTV討論会

2016年10月20日 | アメリカアップデート

   第3回目で最終回のTV討論が先ほど終わりました。

   今回の結果報道で最大のポイントは2つ。本質的政策論とは全く関係のない部分でトランプの本質がバレたことでした。

  まずは討論中にトランプがクリントンに向かって言った言葉、「nasty woman」です。

   この言葉の意味を英辞郎のHPで見ると、

『意地悪な人[行為]、悪巧み、卑劣な人、不愉快な人、嫌なやつ、汚い手を使う人』

   最大限の、ののしり言葉です。生放送でなければ、ピーーとなるくらいです。

   全米というより全世界が注目している討論会では相手に対し絶対に使うべきでない言葉なのですが、トランプは面と向かって言ってしまいました。日本のメディアは事の重大さを認識していないらしく、トップ扱いにはしていませんが、これでトランプは何ポイントが失うほどの重大な失態です。彼はフィリピンのドゥアルテとはなかなかいい勝負をしています(笑)。

   二つ目。それと同じ衝撃度を持ってアメリカの報道が取り上げたのは、質問者が「あなたは選挙結果を受け入れるか」と聞かれて、トランプが「その時にならないと答えられない」と言ったことでした。

   それだけだと大したことではなさそうに聞こえるのですが、現場で報道していたアメリカのメディアすべての解説者が「受け入れると言わないとは、なんたることか」と驚いていました。アメリカがよって立つ、「自由・公正な選挙による民主主義を否定することになるから」です。

  彼はすでに2か月ほど前、劣勢に立たされたときから、「大統領選挙は不正操作される」と断言していました。今回クリントンはこれをとらえてすかさず強烈なパンチを見舞いました。

  「トランプは自分が不利になったり負けたりすると、すぐ人のせいにしたり裏工作があったという」。共和党内でのプライマリー選挙中にも、ある州で別の候補が勝つと「不正工作が行あった」と繰り返し主張したことなどの証拠をいくつかあげ、「こうした人間を大統領にしてはいけない」と結びました。

  「自分は絶対に正しい、悪いのはすべて他人だ」という、トランプが典型的サイコパシーであることを、クリントンは的確に示しました。

   その結果、CNN恒例の「どちらが勝ったか」調査では、52対39とクリントンの勝利でした。このポイント差は決定的差ではありません。しかし今回のディベートは、トランプにとり劣勢挽回の最後のチャンスでしたが、かえって差が開き、挽回どころか彼に大統領の資質がないことのダメ押しになりました。

  ついでにもう一つダメを押します。AFPからの引用です。

【10月19日 AFP】アイルランドのブックメーカー(政府公認の賭元業者)、パディー・パワーは18日、米大統領選では民主党候補ヒラリー・クリントン前国務長官の勝利が「確実」として、同氏に賭けていた人々に対して計80万ポンド(約1億200万円)を払い戻したことを明らかにした。

 大統領選まで3週間を切る中、共和党候補ドナルド・トランプ氏の勝利に賭ける人が極端に少なくなったことが原因。

 パディー・パワーによると、トランプ氏の女性に対するわいせつな発言や性的暴行疑惑が明らかになった後、過去1週間でヒラリー氏に賭ける人が急増。「最近の賭けの傾向はヒラリー氏に一方的な様相を呈していて、賭けを行う人々はその傾向が100%正しいとみているようだ」と語った。

 パディー・パワーは、2012年の米大統領選でも、選挙日の2日前にバラク・オバマ氏の勝利に賭けていた人々に計70万ドル(約7300万円)を払い戻している。(c)AFP

   これにてどうやら無事に大統領選挙は終わりました。

  私は最初のころ、「今回の選挙は、良識派が勝つか、非良識派が勝つかの戦いだ」と申し上げました。共和党の重鎮もさすがに良識派はトランプ支持を撤回しました。私はアメリカは良識派がまだ多数の国であることに安心しました。

   今回の選挙やBREXITから得られる教訓は、ポピュリズムの怖さです。アメリカだけでなく世界の多くの国で自国優先のナショナリズムがポピュリズムと結びつき、とんでもない力が渦巻きはじめています。それが世界を非常に危険なところに追い込みつつあるように感じます。

   私は11月中旬に「日本のゆくえ」と題する講演会でそうしたリスクについて述べることにしています。それが各国の経済にも跳ね返る危険性があるからです。講演会はサイバーサロンというプライベートなサロンの主催で、どなたでも参加できるものではないため、次回は講演会の趣旨を簡単にみなさんにご披露させていただきます。


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アメリカ大統領選挙 2度目のTV討論 クリントン優勢

2016年10月10日 | アメリカアップデート

  今回のディベートはタウン・ミーティングの形式で行われました。簡単にコメントさせていただきます。

  2人の候補者と2人の司会者に加えて、一般の質問者が30人ほど参加して行われました。30人は世論調査会社であるギャラップ社が選び、候補者には質問内容はあらかじめ知らされていませんので、当意即妙さもチェクされます。

  第2回目の注目点は第1回目に破れ支持率が低下したトランプが、どれだけ挽回できるかでした。ところがその寸前に全米の注目がトランプのスキャンダラスなテープに集ってしまい、事前に勝負がついてしまった中で行われることになりました。起死回生の満塁ホームランが連発でもしない限り、逆転は難しい状況となっています。

   今回は一般の参加者から二人に対して同じ質問がなされ、それぞれ2分の持ち時間で回答する形式です。それにネット経由での質問が、司会者を通じて出されます。質問の内容はどちらと言えばトランプの過激な言動への確認が多く、たとえば以下のような項目でした。

・モスレムの入国禁止発言

・女性に対する差別発言(暴露テープを含む)

・所得税回避行為

・対シリア政策

・エネルギー政策

・オバマケア(国民皆保険)

・アメリカ人の多様性確認

   こうした質問に2人が返答するのですが、トランプにとってほとんどが回答に窮する質問のため、彼は正面切って答えるより相変わらずはぐらかしていました。司会者がそれを戻そうとしますが、ほとんど戻りませんでした。

   二人の回答ぶりで目立ったのは、クリントンは着席している質問者に面と向き合って回答をしますが、トランプは質問への回答とは違う発言をするため質問者にそっぽを向き、クリントンを非難するためにクリントンに向かって発言を繰り返す。それがもっとも目立ったのは、彼の課税回避行為や女性蔑視問題に対し、回答が全くお門違いのISIS問題に逸れていくことで、全く回答になっていないものでした。

   それでも彼の回答ぶりやお行儀は前回よりましだったため、私の採点は6対4でヒラリーの勝ち。前回の9対1よりずっとましだったということです。

  CNNによる討論会直後の聞き取り調査では、57:34でクリントンの勝ちと出たので、私の見方と視聴者の見方は今回は近かったといえます。

   総括的に言えば、「トランプは予想より穏やかでいい子になっていた。そのためクリントンはノックアウトできなかった」というところです。

   トランプは逆転満塁ホームランを狙いましたが1発も打てず、凋落の流れを変えることはできませんでした。ディベートはあと1回残されてはいますが、流れを変えることはできないでしょう。

   トランプからもう一つ気になる発言が複数回ありましたのでお伝えします。それは、「オレ様が大統領になったら、ヒラリーをブタ箱にぶち込んでやる」というもので、彼女のメール削除問題に関しての発言です。しかも彼は自分の息のかかった判事を任命して彼女を刑務所に入れると示唆しています。

   これこそが私が忌み嫌う「トランプの独裁者への道」を示唆するもので、CNNのコメンテーターも同様に、ヒトラーやアフリカの独裁者的発言だと批判していました。

   最後にリアル・クリアー・ポリティックスの予想選挙人獲得数をアップデートしておきます。もちろん2回目の討論会前の予想ですが、過半数270人に対して、

   クリントン 260人  トランプ165人  未定113人

   クリントンがあとたった10人に迫っています。

 

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アメリカ大統領選挙 オクトーバー・サプライズ連発

2016年10月08日 | アメリカアップデート

   11月の本選挙を前に、お互いに強烈なパンチを繰り出す最終ラウンドで、とんでもないことが飛び出るのを「オクトーバー・サプライズ」と言われます。

   2回目のTV討論を2日後にひかえるこのタイミングで、それがトランプに出ました。実に効果的なタイミングなので、きっと時限爆弾の仕掛けがピタリと炸裂したのでしょう。全米はハリケーンのニュースとこの報道でもちきりです。

   2005年、ビリー・ブッシュ・ショーというラジオ番組の収録のためトランプが移動中の中継バスの中で、ビリー・ブッシュと話した内容が問題になっています。彼が襟にマイクをつけたままひわいなことをビリー・ブッシュに言い続けたテープが出てしまいました。先日、トランプを大統領にしてはいけないと社説で主張したワシントン・ポストのスクープです。テープと一部の録画が同調しているもので、証拠としては完全無欠です。

   話の内容はこのブログで取り上げるのもはばかるような低俗ひわいもので、トランプが3度目の結婚半年後に、結婚している女性を口説いた様子を司会者に面白おかしく自慢しているものです。放送禁止用語がいくつもでるため、CNNでも「ピー」音が連続し、アナウンサーの女性がどう説明するか、言葉を詰まらせるほどでした。

   さすがのトランプも遂にこれを突き付けられ、「SORRY」という言葉を使って謝罪しました。言い訳は「あれはロッカールーム・トークだ」というのです。

  しかも「ゴルフ場でビル・クリントが話したことよりましだよ」と言ったので、きっとただではすまされないでしょう。ロッカールーム・トークとは、若者たちがロッカールーム内なら何でも言いあえるというほどの意味で、その場限りのたわいないものだと言い逃れようとしています。しかし内容はとんでもない話です。

   もう一つのオクトーバー・サプライズは、トランプが10数年所得税を払っていないという例の問題です。「オレ様はそれほど頭がいいんだ」と逆に自慢していますが、反対側から見ればトランプは国民に向かって「お前らはバカだから払っているんだ」ということになり、大ヒンシュクなのです。しかも税務申告書を隠し続けた理由が租税回避行為の隠蔽だったので、よけい火に油を注いでいます。

   このサプライズで、せっかくの副大統領候補ペンス校長先生の出来栄えも、すべて吹っ飛んでしまいました。

   トランプの支持率が落ち始めています。リアル・クリアー・ポリティックスの数字を見てみましょう。URLはこちらです。

http://www.realclearpolitics.com/epolls/2016/president/us/general_election_trump_vs_clinton-5491.html

   現在の支持率の平均値はクリントン47.6 対 トランプ42.9で、クリントンの4.7ポイントリードです。トランプ支持率の低下が差を拡げている原因です。

   各世論調査結果は平均値のすぐ下に出ていますが、もっともっと下の方に、過去の調査結果一覧が出ていて、赤字表示のLAタイムズが異常値を何度も出して平均を捻じ曲げている様子が読み取れますので、興味ある方は是非ご覧ください。

   しかし何度か申し上げているように、大事なのは支持率などではなく、各州別の選挙人獲得数です。先ほどのページを下に見ていくと、アメリカ地図と選挙人の推定獲得数が出てきます。それが急変しているのです。

  270の過半数に対し、クリントン247と迫り、トランプ165、未決125です。9月末には188対165だったと私は書きました。それから2つのTV討論を行った結果、トランプは1人も増えずに、クリントンはプラス59人。推定値であっても過半数にあと23人です。しかもこの結果は、トランプの本質的人間性が出てしまう前の数値です。

「オクトーバー・サプライズで、勝負あった」

 それが私の結論です。

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大統領候補TV討論 その3 副大統領候補のTV討論

2016年10月05日 | アメリカアップデート

  クリントン=ケイン 対 トランプ=ペンス 、今日は二人の副大統領候補の最初で最後のTV討論でした。先ほど終ったばかりですが、簡単にコメントします。

   あまりにも噛み合わない、ディベートとは言えないディベートでした。なぜディベートといえないかの理由は、トランプ側のペンスが肝心な質問への回答をせずに、すべてはぐらかしたからです。

   そもそも副大統領までがディベートを行う理由は、もし大統領が死んだりしたときには、副大統領が自動的に大統領に昇格するからで、将来の大統領候補としてどちらがふさわしいか、有権者が判断するための機会と位置付けられています。

   それを踏まえて二人の全体的印象はどうだったかと言いますと、クリントン側のケインは不適格、トランプ側のペンスはトランプに代わった方がよい(笑)、でした。クリントン対トランプのディベートでの二人の印象とは正反対の結果でした。

   CNNに出ていたコメンテーターがうまいことを言っていたので引用しますと、「ケインはエネルギッシュな高校生、ペンスは校長先生だった」。全くその通りです。

  なぜそこまで言われるほど差が出るのか。ケインはペンスが話をしているときうるさくしゃしゃり出て、司会者にたしなめられる。その回数はトランプがたしなめられたのとおなじくらいあって、トランプ同様ただの「うるせーガキ」だったのです。

   逆に司会者の質問に対しては、ケインは比較的まともに答え、ペンスは都合が悪い質問には一切答えない。司会者が「質問はこれですよ」と何べん言っても答えず、「トランプの不始末など俺は知らん」の一点張りでした。

   そしてディベートからわずか1時間後に出たCNNのクイックサーベイの結果は、ケイン対ペンスは42対48でトランプ陣営の勝ち。

 

  もしディベートが論理と論理の勝負でないなら、私も9:1でペンスの勝ちと判断します。ガキと校長先生では勝負にならないし、ガキが大統領になるなど想像もできませんから。しかしディベートは論理と論理、それをサポートする事実と事実のぶつけ合いで勝負を決めるものです。だとすれば、都合の悪い質問に一切回答をしない者はあきらかに負けなのです。

   にもかかわらずペンスの勝ちとする人が多少ですが多かったのはなぜか。ペンスに好意的に判断すれば、「はぐらかしも技のうちというトランプ方式が、論理での負けを上回った」、のです。

 

  しかし私にはもう一つ別の面が見えました。それは、

 

  「ペンスはカバーしようもないトランプなど最初からあきらめていて、徹頭徹尾校長先生として立派に振る舞い、次の2020年選挙を見据えている。彼は自分を売り込む絶好のチャンスとしてトランプを利用しているにちがいない。」

   一方クリントン陣営は、人選を間違えた。それが今日の私の結論です。

  もっともその芽は、民主党大会でのケインのスピーチで、すでに見えていました。これが支持率に大きな変化をもたらさないことを、私は祈ります。

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大統領候補TV討論会 その2 報道による評価

2016年09月30日 | アメリカアップデート

  クリントン対トランプのTV討論の結果について、内容の分析がだいぶ進んでいます。政策のどの中身をとっても、トランプの政策が勝っているという判定はありません。というより、一言で言えば「彼は口先だけで中身はない」ということがバレてしまった、ということです。

   私はクリントンの支持者ではなく、トランプでさえなければだれでもいいくらいに「反トランプ」です。TV討論の私の勝手な判定は9:1でクリントン勝利と申し上げました。直後のCNNの調査は62:27と出ていました。TV討論前の二人の候補者の平均支持率は46:44程度だったので、その数字を前提に私なりのラフな計算をしますと、

  クリントンは 62-46=16  16ポイント支持率が増加

 トランプは 44-27=17 17ポイント支持率が低下

   つまりトランプ支持者のうち16-17ポイント程度は、ヒラリーに軍配を上げたとなります。

   TV討論前の両者の支持率を足し上げると、

   クリントン46+トランプ44=90   

10%の未決定者がいるため、上記の16-17ポイントの変化はそのまま移動したとは言えません。未決定者を計算に入れていない数字だし、調査は同じ人に行っているわけではないので、私の推定は割り引く必要があります。それでも、トランプ支持者の多くがクリント勝利としたと推定できます。

   さらに今回の勝敗を決定づけたニュースは二つ。

その1.「トランプ陣営の有力者が負けを認めたことに、彼が怒りまくった」というニュースが出た。

彼はこれまでも自分が不利になるたびに「俺は悪くない。悪いのはキャンペーン・マネージャーだ」と言ってキャンペーン・マネジャーを交代させています。今回もまた反省することなく、当たり散らすだけでしょう。

その2.「マイクの調子が悪かったので俺の声がよく聞こえなかったし、司会者の仕切りが悪かった」、と当たり散らしている。

当たり散らす行為そのものが負けを認めたからなのですが、そう取られることすら彼は理解していません。

  TV討論後も彼に不利な過去の事実が続々と噴出していて、CNNはニュージャージーの電車事故そっちのけでそうした新たな事実を続々と報道し続けています。

  ではアメリカの新聞のうち、質の高い、いわゆるクオリティペイパーの判定報道を見てみましょう。

   ニューヨーク・タイムズはトランプを「現代史上最悪の候補だ」と酷評しています。「口を開けばウソと暴言と放言ばかりで、女性差別主義者、人種差別主義者、ナショナリスト。政策の比較など無駄だ。ディベートも意味がない」、とまで言い切るほどです。ニューヨーク・タイムズ紙は初めからクリントン支持ではありますが、クオリティー・ペーパーがタブロイド紙のような言葉を使用して大統領候補を批判するのは、本当に珍しいことです。

   ワシントンポストは、「この討論はクリントン候補のみが大統領としてふさわしい候補であると証明するものだった」、と言い切りました。

  またウォール・ストリート・ジャーナルはまず、「討論中は終始クリントの攻勢にトランプは守勢に立たされ続けた。彼は雇用が海外に奪われていることと、クリントンがいわゆる従来型ワシントンの政治家で、自分はそうではないということを印象付けた」と論評。そして冷静に両者の政策を比較しつつ、「両者とも政策提言には欠けている。この低金利を利用して財政政策を活用してインフラを整備し、教育問題にもっとカネを使うべきだ」、と示唆しています。

   世界の他地域の報道でもBBCやフィナンシャルタイムズ紙をはじめ、ほとんどが初戦はクリントン勝利だったと論評しています。

   ところがおひざ元日本のNHKだけは別でした。当日夜9時の看板ニュースキャスターが現地まで出向き、第一報をこう伝えました。

 「第一回戦は互角で勝負なし」

   えっ?

   私はそれを聞いて耳を疑いました。彼は普段からインタビューなどで英語をきちんと話すので、討論内容を理解できないはずはありません。なのにいったどうしたと言うのでしょう。

  ニュースはその後政治アナリストへのインタビューが放映され、それで謎が解けました。インタビューされたのはアメリカの若手のアナリストで、その第一声が「今回の勝負は互角だった」と言ったのです。たった一人のアナリストの論評をそのまま報道してしまうとは、なんとずさんな取材でしょう。きっと今頃反省しているでしょう。

   アメリカのメディアやアナリストは中立の立場でものを言うと思ったら大間違い。先ほどのクリントン支持のニューヨーク・タイムズや、反対に徹底したトランプ支持のロスアンゼルス・タイムズのような新聞がたくさんあります。また新聞だけでなくアナリストですら、一方的にどちらかを支持するのは当たり前なのがアメリカです。NHKのキャスターはそれを知ってか知らずか、他への取材もせずに大見出しとして使ったのでしょう。なんともお粗末の一席でした。

   ロスアンゼルス・タイムズは世論調査で常にトランプの支持率がクリントンを7-8%も上回っているという結果を何度も何度も出し続けています。私には異様に見えます。

   日本や各国の報道で使う支持率は「リアル・クリアー・ポリティックス」というところのHPに出ている結果を使っていると先日申し上げました。そこが各世論調査結果をいくつも集計し平均値を算出していて、便利だからです。各調査結果もすべて出ているのですが、よく見ると一番頻繁に出るのがロスアンゼルス・タイムズの調査結果です。いつも突出してトランプがリードしているという異様な結果を示しています。

   ということは数字ヲタクの私に言わせれば、「平均値がクリントン46対トランプ44だと言っても、実は調査頻度の多い非常に偏ったLAタイムズが、平均値を捻じ曲げている」のです。

  日本や世界の報道も、ここの統計を使うときには、そのくらい中身を知って使うべきです。

  ということで、私のトランプ嫌いのバイアスを別として、TV討論の第1ラウンドでクリントンが勝利したことと、トランプだけはアメリカの大統領にふさわしくないことが明らかになりました。

  トランプは「俺はTV討論の予習なんかしない」と大見得を切っていたのですが、尻に火がついてしまったため予習をすることにしました。その家庭教師は現ニュージャージー州知事のクリス・クリスティだと発表がありました。クリスティはキャンペーン中、いつもトランプの背後霊のように付き従い、名前と顔を全米に売り込んでいたのですが、共和党のプライマリーで早々に撤退した今回の負け組の一人です。それを聞いてきっとクリントンはほくそ笑んでいるにちがいありません。

以上

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