第3回目で最終回のTV討論が先ほど終わりました。
今回の結果報道で最大のポイントは2つ。本質的政策論とは全く関係のない部分でトランプの本質がバレたことでした。
まずは討論中にトランプがクリントンに向かって言った言葉、「nasty woman」です。
この言葉の意味を英辞郎のHPで見ると、
『意地悪な人[行為]、悪巧み、卑劣な人、不愉快な人、嫌なやつ、汚い手を使う人』
最大限の、ののしり言葉です。生放送でなければ、ピーーとなるくらいです。
全米というより全世界が注目している討論会では相手に対し絶対に使うべきでない言葉なのですが、トランプは面と向かって言ってしまいました。日本のメディアは事の重大さを認識していないらしく、トップ扱いにはしていませんが、これでトランプは何ポイントが失うほどの重大な失態です。彼はフィリピンのドゥアルテとはなかなかいい勝負をしています(笑)。
二つ目。それと同じ衝撃度を持ってアメリカの報道が取り上げたのは、質問者が「あなたは選挙結果を受け入れるか」と聞かれて、トランプが「その時にならないと答えられない」と言ったことでした。
それだけだと大したことではなさそうに聞こえるのですが、現場で報道していたアメリカのメディアすべての解説者が「受け入れると言わないとは、なんたることか」と驚いていました。アメリカがよって立つ、「自由・公正な選挙による民主主義を否定することになるから」です。
彼はすでに2か月ほど前、劣勢に立たされたときから、「大統領選挙は不正操作される」と断言していました。今回クリントンはこれをとらえてすかさず強烈なパンチを見舞いました。
「トランプは自分が不利になったり負けたりすると、すぐ人のせいにしたり裏工作があったという」。共和党内でのプライマリー選挙中にも、ある州で別の候補が勝つと「不正工作が行あった」と繰り返し主張したことなどの証拠をいくつかあげ、「こうした人間を大統領にしてはいけない」と結びました。
「自分は絶対に正しい、悪いのはすべて他人だ」という、トランプが典型的サイコパシーであることを、クリントンは的確に示しました。
その結果、CNN恒例の「どちらが勝ったか」調査では、52対39とクリントンの勝利でした。このポイント差は決定的差ではありません。しかし今回のディベートは、トランプにとり劣勢挽回の最後のチャンスでしたが、かえって差が開き、挽回どころか彼に大統領の資質がないことのダメ押しになりました。
ついでにもう一つダメを押します。AFPからの引用です。
【10月19日 AFP】アイルランドのブックメーカー(政府公認の賭元業者)、パディー・パワーは18日、米大統領選では民主党候補ヒラリー・クリントン前国務長官の勝利が「確実」として、同氏に賭けていた人々に対して計80万ポンド(約1億200万円)を払い戻したことを明らかにした。
大統領選まで3週間を切る中、共和党候補ドナルド・トランプ氏の勝利に賭ける人が極端に少なくなったことが原因。
パディー・パワーによると、トランプ氏の女性に対するわいせつな発言や性的暴行疑惑が明らかになった後、過去1週間でヒラリー氏に賭ける人が急増。「最近の賭けの傾向はヒラリー氏に一方的な様相を呈していて、賭けを行う人々はその傾向が100%正しいとみているようだ」と語った。
パディー・パワーは、2012年の米大統領選でも、選挙日の2日前にバラク・オバマ氏の勝利に賭けていた人々に計70万ドル(約7300万円)を払い戻している。(c)AFP
これにてどうやら無事に大統領選挙は終わりました。
私は最初のころ、「今回の選挙は、良識派が勝つか、非良識派が勝つかの戦いだ」と申し上げました。共和党の重鎮もさすがに良識派はトランプ支持を撤回しました。私はアメリカは良識派がまだ多数の国であることに安心しました。
今回の選挙やBREXITから得られる教訓は、ポピュリズムの怖さです。アメリカだけでなく世界の多くの国で自国優先のナショナリズムがポピュリズムと結びつき、とんでもない力が渦巻きはじめています。それが世界を非常に危険なところに追い込みつつあるように感じます。
私は11月中旬に「日本のゆくえ」と題する講演会でそうしたリスクについて述べることにしています。それが各国の経済にも跳ね返る危険性があるからです。講演会はサイバーサロンというプライベートなサロンの主催で、どなたでも参加できるものではないため、次回は講演会の趣旨を簡単にみなさんにご披露させていただきます。