予測のできない大統領トランプが、先ほど遂に本領を発揮しましたね。
「オレは本気を出すと恐いんだぞ」ということを、習近平の前で示しました。
しかし私には支持率低迷に直面する起死回生の一撃のようにも見えます。
アメリカのメディアは「今回の一撃は用意周到に準備されていた。それはロシアへの事前通告や、トランプが習近平に会いに行くための大統領専用機内での発言に表れていた」と解説しています。もちろん最近のニュースにあった、あの極右の大統領戦略補佐官、スティーブ・バノンをNSC、国家安全保障会議のメンバーから外したことなども含まれています。
彼は機内で記者団に対して得意満面で「近々シリアで何かあるぞ」と予言していました。かわいいトランプちゃんは、黙っていられないのです。
彼は以前、シリアやアサド大統領に対して言っていた「シリアなんて関心ない」という前言を、いとも簡単に翻しました。ロシアとプーチンに対しても同様で、「プーチンは賢い。いい関係を築けるだろう」という前言も、すでに180度翻しています。もちろん北朝鮮の金正恩に対しても同じ。
私はトランプが世界の独裁者に対して発するラブコールに対し、「英雄並び立たず。きっとすぐ喧嘩が始まる」と申し上げていましたが、全くそのとおりで、サイコパス人間はしょせん敵ばかりを作るが得意なのでしょう。
アベチャン、要注意ですよ!
では今回の一撃が世界の金融市場にどの程度の影響を及ぼすか。私の勝手な見立ては、
「たいしたことはない」です。
理由は、すでにロイターはアメリカ軍の高官が、「今回は1回のみ」と言っていることを伝えているからです。それと彼のやることのほとんどは「ブラッフ」、つまりハッタリだからです。
トランプによる今回の攻撃に関する声明は、ディナーを一緒にした習近平と別れてすぐに発表されましたが、きっと習近平にも会談中、あるいはディナー中にあらかじめ伝えておいたのでしょう。でないと中国人の一番嫌う「メンツをつぶす」ことになるからです。
会談直後トランプは習近平と並んで写真を撮らせているとき、(数時間の会談で)「これまで何一つ合意されていない」と笑いながら得意げに述べていました。ということは結構合意されたものはあるとも取れますし、合意してくれない習近平へのブラッフとも取れます。
さて、アメリカ経済の続きです。
前回私はトランプ政策の実行性について、疑問符がついたと申し上げました。理由は、大統領がやりたいことをいくら大統領令で「やれ」と言っても、実際には議会での承認が必要なことが多く、例えば国境税などは与党の共和党議員も選挙を考えると、簡単には賛成しなからだと申し上げました。
今回は、それでもなおトランプの経済政策がかなりの程度実現されたらどうなるのか。私なりに分析します。
トランプの経済政策の重要ポイントは、以下の3点です。
1. 減税・・・法人税、所得税
2. インフラ投資・・・老朽化したインフラの更新投資や新規建設
3. 保護主義・・・国境税の導入や製造業のアメリカ回帰、バイ・アメリカンなど
1と2は直接的には国内要因です。1の減税が実行されるということは政府収入の減少につながります。2のインフラ投資は政府支出の増加となり、1と2が両建てで政府の債務を増やすことになります。
しかしトランプの政策目標は、もちろん最終的にそれらが実行されることで経済が活性化し、税収を増やすハズという皮算用です。大胆な減税については、過去のレーガン政権時代に実行されたレーガノミックスの踏襲とみなせます。
この皮算用が成功すれば、アメリカは万々歳です。
3の保護主義政策が実行されると世界はどうなるか。アメリカ・ファーストを掲げているのですから、単純に考えればアメリカ経済だけはよくなり、世界はその分悪くなる。
NHK特集でもグローバリゼーションを肯定する学者は、グローバリゼーションこそが資本主義経済の発展を支えていた。トランプ政策はグローバリゼーションの否定であり、世界を危機的な状況におとしいれる。つまりアメリカが保護主義を前面に打ち出せば、当然他国も報復措置をとり、世界経済を破滅させる。そうした貿易戦争が20世紀の世界大戦の原因になったということを強調していました。
そのような極端なところにまで至らないとすると、アメリカの保護主義は短期的にはアメリカ経済を押し上げる方向に働きそうです。しかし将来は世界経済の停滞を通じ、アメリカにもマイナスの影響が及ぶに違いありません。
と、ここまで、「トランプ政策が奏功しなくても、アメリカはびくともしない。奏功したらしたで、短期的にはアメリカにはプラスだ」と申し上げました。もちろんこれは非常に簡略化した見方ではありますが、全くお門違いの議論ではありません。
ちなみにNHK特集では、グローバリゼーションを否定的にとらえている学者に将来の世界経済活性化策のシナリオがあったかと申しますと、こうすべきだというシナリオ提言は全くありませんでした。
では、アメリカ国債への長期的投資をお考えのみなさんへ
・トランプは短命だと4年の任期中に終わりを迎える
・そうでなくとも最悪8年。
米国債への長期投資にとっては、しょせん一場の雑音でしかないと思っていて間違いないのです。もちろんその裏には、グローバリゼーションこそが世界経済を発展させることへの確信があるからです。
では、格差問題はどうするのか。
何度も申し上げますが、それはこれまで以上に格差解消の政策手段、累進税などを強めることで解決すべきであって、グローバリゼーションの否定からは何も生まれないことを理解すべきなのです。