安全問題研究会~鉄道を中心とした公共交通を通じて社会を考える~

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精神論から科学への転換は評価するが…

2009-06-29 22:07:04 | 鉄道・公共交通/安全問題
事故は気合じゃ防げない JR西の「人為ミス研究」脚光(産経新聞)

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 「人はミスを犯すもの」。こんな前提に立ったJR西日本安全研究所の研究成果が注目を集めている。研究所は平成17年の福知山線脱線事故を機に3年前、立ち上げられた。信号機の点呼確認はすべて必要か、上司が部下をほめる効果はあるのか。成果は、従来の「事故は気合で防ぐもの」という鉄道界の体質を変え、自衛隊や病院、航空会社など畑違いの分野でも職員教育に取り入れられている。(森本充)

 ■どこでも起きうる

 福知山線脱線事故後、JR西は、ヒューマンエラー(人為的ミス)への取り組み不足の反省から研究所を設立し、体質改善に取り組んだ。

 運転や保線、事務など各部門から約25人を選び、「何がわが社に欠けているのか」探った。半年で冊子「事例でわかるヒューマンファクター」を発行した。

 疲れるとどうなるか▽なぜマニュアルはあるのか▽多人数の中だと手を抜いていないか-。冊子は32のテーマを設定し、事例と解説、対策を紹介した。

 社内教育向けに作られた冊子だったが、口コミで評判が広まり、建設会社や銀行、医療機関などから問い合わせが殺到。実費(1冊300円)で配布し、現在までの社外配布は4万6千冊にのぼる。

 安全研究所の白取健治所長は「ヒューマンエラーは鉄道に限らず、どこでも起きうる。分かりやすく分析した本がなく、受け入れられたのでは」と話す。

 ■まずは人間関係を

 研究成果はJR西の改革に取り入れられた。

 福知山線の事故は運転士の速度超過が直接原因だったが、国土交通省鉄道事故調査委員会(現・運輸安全委員会)は懲罰的な運転士管理法「日勤教育」の影響もあったと指摘。このため、研究では上司と部下の関係調査を実施した。

 上司役が積極的にコミュニケーションを図り、良好な人間関係を形成したグループと、上司役が人の話を無視し、悪い関係を形成したグループを作成。簡単な作業をさせ、両グループとも上司がほめたところ、人間関係が良好なグループは、ほめるとどんどん作業を工夫するのに対し、悪いグループはほめると工夫度合いが減退した。

 白取所長は「事故後、社内にはほめることが最良の策という風潮が生まれたが、人間関係ができていなければだめだと分かった」と話す。

 また、信号機の確認規定にも研究が生かされた。これまで信号機は、指さし確認の上、声を出してのチェックも必要だった。ただ都市部では、確認が20秒に1回にのぼり、「疲れる」という声があがった。

 研究の結果、「指さしと声出し」を両方行った場合と「声出しだけ」でエラー率はほとんど変わらなかった。昨年11月、規定は「重要個所以外は声出しだけでいい」と改訂された。

 「安全の追求に終わりはない」と白取所長。現在、研究所では運転士の眠気の研究に着手し、今秋には眠気防止ガイドラインを出す方針だ。
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過去ログでご紹介した尼崎事故4周年遺族アンケートでは、JR西日本の安全対策を評価しないと答えた人が過半数に上った。そのような中、責任を取ろうとしていないJR西日本上層部の方針によって出版された事故防止マニュアルを評価することが適切だとは思わない。まずは会社上層部が責任を取るほうが先だと思うし、いろいろと工夫はしても、結局企業体質が変わらなければ成果に結びつかないからだ。

信号機の指差唱呼については、以前、ある元国鉄機関士の人から「指差し確認なんてしてもしなくても安全にはほとんど影響がない」と言われたことがある。今回のJR西日本の研究は、はからずも彼の考え方の正しさを立証する結果となった。

地上信号方式では、信号機はほぼ600メートルおきに設置されているので、指差唱呼は1分間に1~2回程度だろう。20秒に1回というのは、主にATC(自動列車制御装置)導入区間ではないか。ATCでは、速度制限区間にかかるごとに速度指示が刻々と変わるから、20秒より短い間隔での指差唱呼ということもあり得ると考えられる(ただ、首都圏と異なり、関西のJR在来線でATC導入線区はないから、ATC区間だとすれば山陽新幹線しかあり得ないが…)。

問題なのは、まだ信号機が地上信号だけだった時代に生み出された指差唱呼の慣行が、科学的検証もされずにATC時代に引き継がれ、現場運転士の負担感にもかかわらず改善されなかったことだ。このあたりにも、旧国鉄の生み出した精神主義を見ることができる。

ただ、国鉄時代の精神主義は必ずしも悪い面ばかりでなく、功罪両面があった。「功」は鉄道職員の高い職業意識や倫理感、責任感がこれによりもたらされたこと。「罪」はいうまでもなく、産経新聞の見出しにもあるような「事故は気合いで防げ」的な科学否定につながってしまったことだ。だから、JR西日本の今回の研究が精神的安全論から科学的安全論への転換につながるのであれば、そのこと自体は評価できるが、一方で精神主義をすべて否定することも間違っている。鉄道職員としての高い職業意識や倫理観、責任感といった良い意味での精神主義は残しながら、労働安全衛生管理に関しては、産業界が長年にわたって培ってきた科学的手法へと転換していくことが理想的な姿だと当ブログは考える。

厳しい言い方になるが、尼崎事故以前のJR西日本はこの理想と正反対の状態だった。事故防止は職員の「気合い」に依拠する一方、事故現場に居合わせた職員が救出活動に当たらずに出勤したことに見られるように、精神主義がよい意味で発揮されなければならない職業意識の面では、職員に責任感や矜持のかけらもなかったのだ。

ちなみに、大手私鉄では信号機を確認する際、指差を行っているところはほとんどなく、またほとんどの私鉄が発声だけで信号機の確認をしながら、事故率はJRと大差がない。そうした実態を鉄道ファンは広く知っているだけに、JR西日本の今回の研究は興味深いものがある。責任論とは別に、当ブログとして、この冊子「事例でわかるヒューマンファクター」を取り寄せてみようかと思っている。

それにしても、ヒューマンエラーについて分かりやすく分析した本さえ整備されていない日本の現状はお寒いばかりだ。本当は、こういったパンフレットは厚労省や経済界が率先して整備すべきものである。経済界は利益ばかり追求し過ぎて、ボケてしまったのではないか。

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マイケル・ジャクソンさん死去

2009-06-27 17:05:58 | 芸能・スポーツ
マイケルさん急死、心不全…早すぎる50歳(日刊スポーツ) - goo ニュース

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 【ロサンゼルス25日(日本時間26日)=千歳香奈子通信員】「スリラー」「BAD」など多くの世界的ヒット曲で知られ、キング・オブ・ポップと呼ばれた米歌手マイケル・ジャクソンさんが午後2時26分、市内の病院で死去した。50歳だった。マイケルさんは同日、市内の自宅で心不全の症状で倒れ病院に搬送されたが、帰らぬ人となった。事件性はないが詳しい死因が不明で、26日に検死局で解剖が行われる。晩年はスキャンダルが話題に上ることが多かったが、7月の復活コンサートで再び歌い踊る姿を、多くのファンが待っていた。

 マイケルさんは昼すぎに心不全とみられる症状で倒れた。弟ランディが救急車を呼び、心肺停止、呼吸ができない状態だったため、その場で42分間、蘇生(そせい)措置が施された。自発呼吸、意識を取り戻すことはないまま午後1時14分、カリフォルニア大ロサンゼルス校(UCLA)付属病院に搬送され、さらに蘇生措置が行われたが、同2時26分に死亡確認された。

 病院では、マイケルさんがデビューした兄弟5人のユニット、ジャクソン・ファイブのメンバーでもある兄ジャーメインが会見した。声を震わせ「弟であるキング・オブ・ポップのマイケル・ジャクソンは死去しました。つらいです」と絞り出した。

 死因は明らかになっていない。遺体は夕方になってヘリコプターでロサンゼルス郡検視局に搬送された。26日午前にも行政解剖される予定。警察は事件性はないとしているが「死因が特定されていない」として捜査を始めた。

 突然の死に家族も混乱している。姉ラトーヤが泣きながら病院を走っていた。妹ジャネットら兄弟たちは、ロサンゼルス郊外の両親の自宅に集まっており、関係者の出入りはあるものの、静まりかえっている。

 今年初めから体調は思わしくなかった。2月には抗生物質の効かないメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)に感染し、菌が全身に広がっていると報道された。鼻の整形手術の時に感染した可能性が指摘された。ジャクソン家の代理人は「ここ数カ月は特に体調が悪く、家族が付きっきりだった」と話した。

 さらに5月には、皮膚がんを患っているとの報道もあった。元弁護士がマイケルさんの家族に、処方薬を服用しすぎていると指摘したこともあった。感染症や皮膚がんの痛みを抑えるための痛み止めを過剰摂取し、心臓に負担がかかった可能性もある。付き人は病院で「デメロールを注射した後、呼吸が止まった」と説明したという。デメロールは強い痛み止めで、救急医療などで使われている。

 それでも、マイケルさんは7月のロンドン公演に向けて意欲を見せていた。倒れた自宅は、ロサンゼルスでリハーサルを行うために借りた。ステージから落ちて脊椎(せきつい)骨や足を骨折したと話す関係者もいるが、前日は市内のアリーナ「ステープルズセンター」でのリハーサルに参加。当初予定から公演初日は5日延期されたが、医師の検査もパスし、本番に備えていた。

 公の場に姿を見せたのは、3月に行った公演に関する発表会見だった。スキャンダル報道が先行した晩年だったが、こぶしをつくって「僕は歌いたい歌を歌うよ」という言葉をファンは最後まで信じていたが、かなうことはなかった。
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マイケル・ジャクソンさんの突然の訃報に私は衝撃を受けた。謹んでご冥福をお祈りする。

1980年代、一世を風靡したキング・オブ・ポップも最近は低迷しており、本業よりスキャンダルで話題になることのほうが多かった。しかし、ロンドンでの復活公演が予定されており、完全復活なるかな、と期待もしていた。

長い低迷期のあと、復活公演を前にして死去という点が尾崎豊と酷似している。私生活の乱れも同じだ。アーティストというのはかくも精神的重圧がかかるものなのか。私などにはとても務まらない。

「スリラー」は全世界で1億枚以上売れたという。私が好きな曲はスリラーのほか、BAD、Beat it(邦題「今夜はビート・イット」)、Man in the Mirror、I Just Can't Stop Loving you、そしてポール・マッカートニーとの共作であるSAY SAY SAYである。今でもこれらの曲を聴くと、中学生~高校生だった青春時代に戻れるような気がする。

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JRおおさか東線延伸7年遅れへ、用地買収まだ3%

2009-06-25 22:33:14 | 鉄道・公共交通/交通政策
JRおおさか東線延伸7年遅れへ、用地買収まだ3%(産経新聞)

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 大阪府東部を南北に走るJRおおさか東線(久宝寺-新大阪、20.3キロ)で未開業となっている放出-新大阪間(11.1キロ)の開通について、当初予定の平成23年度末から30年度末まで大幅に遅れることが25日、確実になった。用地買収が3%しか済んでいないことなどが理由。府やJR西日本が出資する整備主体の第三セクター「大阪外環状鉄道」は同日、国土交通省に工事期限を30年度末まで延長する申請を行った。

 同社は23年度中の全線開通を目標に11年から建設工事に着手。最優先区間として整備していた久宝寺-放出間(9.2キロ)は20年3月に開通したが用地買収などで遅れが生じており、その影響で放出以北の着工は19年度からとなってしまった。このため、放出-新大阪間で必要な土地約1900平方メートルのうち3%しかまだ取得できていないでいる。

 また、当初は西吹田(仮称)-新大阪間は東海道線に沿って新たな線路を敷設する計画だったが、線路予定地にはマンション2棟が建っており、膨大な補償費用の問題が発生。既存の梅田貨物線に直接つないで新大阪に乗り入れするよう計画の変更を余儀なくされた。

 同社は今回、工事期限延長とともにこうした計画変更も申請。今年夏から、乗り入れに向けた新大阪駅の改良工事などに取り組むことにしており、「開業が大幅に遅れてしまい沿線の方々に大変申し訳なく思っている。30年度中には完成させ、利用しやすい鉄道にしたい」としている。
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開業は平成30年度…9年も先なのか。公共事業見直しの気運は年を追うごとに強まっており、ひょっとするとこのまま計画中止ということもあり得るかもしれない。

しかし、ここの開通が遅れるということは、淀川にかかる城東貨物線「赤川橋梁」(動画)も鉄道・歩行者兼用の現行スタイルのまま遅くまで残るわけで、鉄道ファン的にはそれもいいかな、という気がしないでもない。

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「男性専用車両」の設置は否決 西武HD

2009-06-24 22:52:46 | その他社会・時事
「男性専用車両」の設置は否決 西武HD(産経新聞)

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 西武鉄道を傘下に持つ西武ホールディングスは24日、埼玉県所沢市で株主総会を開いた。株主提案として痴漢冤罪(えんざい)を防ぐため「男性専用車両」の設置を求める異例の議案が出されていたが、筆頭株主の米投資ファンドなどの賛同が得られず否決された。

 株主からは乗客の男女比についての質問は出たが、男性専用車両そのものについての質問はなかった。株主提案ではほかに、株主利益を図るため早期上場を定款に盛り込む議案が出された。定款への記載は否決されたが、会社側は「上場を経営の最重要課題として取り組んでいる」と説明した。
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うーむ…男性専用車両か…私は正直、複雑な心境だ。

痴漢問題に関しては、映画「それでもボクはやってない」の公開を機に流れが大きく変わった(逆転した、と断言してもいいと思う)。それまでは、「無抵抗でか弱い女性とその性の尊厳を踏みにじる男性」という構図だったのが、最近では「弱者の立場を利用して男を陥れようとする女性」対「反論権を与えられない男性」という構図に変わった気がする。

少なくとも、男性にとって反論権が与えられないという状況に変化が生じてきたのは人権の面から評価できると思うが、一方で、事実を検証もせず、すべての痴漢事件をどちらか一方の構図にステレオタイプ的に当てはめてしまうという捜査当局の姿勢が変わったとは思えないのだ。この思考停止こそ、事実の検証を怠りえん罪を生み出してきた背景にある。今後、今までと逆の方向に針が振れた結果「男性がえん罪を主張すれば女性は反論の機会も与えられないまま犯罪者にされる」なんて事態が起こらなければいいのだが…。

いずれにせよ、こうした極端な状況がもたらされた背景には、捜査当局がきちんと事実関係を検証しないことがあると見て間違いない。足利事件を見てもそうだが、当局が思い当てた人物を犯人に仕立てるような流れが意図的に作り出されているのだ。周防監督も、そうした捜査のあり方を問うため「それでもボクはやってない」を作ったと、その意図をはっきりと述べている(例えば「キネマ旬報」2007年2月号インタビューなど)。捜査当局がこの点をきちんと反省し、事実をきちんと検証できる態勢を構築しないことには、結局何も変わらないだろう。

こうした捜査当局の怠慢のツケが鉄道会社に回されているのだとすれば、本当に気の毒なことだ。鉄道会社が対応すべき問題ではないと思うし、できるとすれば株主提案があった男性専用車両の設置くらいだろうか。

しかし、自分たちと違うものを排除しようとする「排除の論理」の行き着く果てが差別と偏見と戦争であることは歴史が証明している。その意味では、女性専用車両も永久的措置ではなく過渡的措置であることが必要である。今さらながら思うことだが、痴漢の根本的解決は鉄道からラッシュをなくすことだ。そのために、時差出勤のほか、テレワーク(在宅勤務)の拡大、企業の地方移転の促進などあらゆる政策的努力が望まれる。

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<JR西日本>株主総会 福知山線遺族の社長解任議案否決

2009-06-23 23:25:54 | 鉄道・公共交通/安全問題
<JR西日本>株主総会 福知山線遺族の社長解任議案否決(毎日)

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JR西日本の株主総会が23日、大阪市内のホテルであり、株主のうち福知山線脱線事故(05年4月)の遺族ら110人が山崎正夫社長ら取締役3人の解任議案を出したが、反対多数で否決された。

 総会には株主約1600人が出席。山崎社長が冒頭、事故について改めて謝罪し、「安全を最優先する企業風土の構築に取り組んでおり、ご理解とご支援をお願いしたい」とあいさつした。

 解任議案を出した株主の代表は、山崎社長を「刑事責任の追及を恐れ、事故の原因究明、経営責任の明確化、被害者への説明責任を放棄している」と批判。立石義雄オムロン会長、野村明雄大阪ガス会長の社外取締役2人の解任も求めた。取締役会は「3人とも当社事業の発展に尽力しており、解任理由はない」と反対意見を提出。採決は拍手で行われ、反対が多数を占めた。

 他の株主からは「日勤教育の実施者は陳謝し辞任すべきだ」「運転状況記録装置の電車設置率が54%と他社より低いのはなぜか」などの意見や質問が出た。【鳴海崇、吉川雄策】
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JR東日本では、社長ら役員の解任を求める決議が株主会(国鉄分割民営化で解雇された国労組合員などで構成)によって提案されているが、JR西日本としては社長解任決議は初めてのことだ。私が信頼できる筋から入手している情報では、遺族とJR西労(JR総連系)が提案したものである。

「3人とも当社事業の発展に尽力しており、解任理由はない」との取締役会の説明に、当ブログは全く納得できない。過去ログで明らかにしているように、遺族はJR西日本の安全対策それ自体に疑いと不信を抱いており、JR西日本の安全対策を「何かやっているというポーズ」に過ぎないと見ている。そのような中で、会社にとって役に立つ人物だから留任では遺族・株主の納得は到底得られないだろう。

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コンビニの値引き販売にゴーサインで小売り激変も

2009-06-23 21:27:48 | その他社会・時事
セブンイレブンに排除措置命令=弁当見切り販売で制限-独禁法違反と認定・公取委(時事通信)

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 コンビニ最大手のセブン-イレブン・ジャパン(東京都千代田区)が、フランチャイズ(FC)契約を結んだ加盟店に対し、賞味期限が迫った弁当やおにぎりを値引きして売る「見切り販売」を制限したのは、独禁法違反(優越的地位の乱用)に当たるとして、公正取引委員会は22日、同社に見切り販売を可能にするマニュアル整備などを求める排除措置命令を出した。

 セブン側は「見切り販売は価格競争や売り上げ低下を招く」などと主張していたが、公取委が制限を不当と認定したことで、実質的に値引きを禁じ、定価販売を基本としてきた経営方式にも影響を与えそうだ。

 公取委によると、同社のFC本部は契約書で「商品価格は加盟店が自由に決められる」としているにもかかわらず、見切り販売を行った加盟店に「二度とやるな」と命じたり、従わない店に契約の打ち切りを示唆したりするなど、取引上の地位を利用して、販売方法を制限した。

 同社の契約では、商品の廃棄が出た場合、原価損は加盟店側の負担とされており、公取委は「本部の拘束は加盟店の合理的判断で負担を軽減する機会を失わせた」と判断した。
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コンビニでの「値引き販売禁止」に公取委の排除命令が出された。とはいえ、公取委はなにも恣意的に排除命令を出しているわけではない。

どのような商慣習が独占禁止法に当たるのかについては、「不公正な取引方法」(昭和57年公正取引委員会告示第15号)という基準があり、排除勧告等の措置はこれに基づいて行われている。セブンイレブンの行為は、この告示の14号にある「優越的地位の濫用」に当たるわけだ。

難しい法律論をいちいち持ち出すまでもなく、値引きを禁止する行為は、まだ食べられる食料品を大量廃棄に追い込むものであり、いたずらにゴミを増やすだけだ。かつて「輸入してまで食べ残す不思議な国、ニッポン」というJC(公共広告機構)のCMもあったが、世界で飢餓に瀕している人が5億人ともいわれる中、食糧自給率が4割である日本のコンビニチェーンが毎日毎日、大量の食料を廃棄し続けることは道義的にも許されないと思う。

そうでなくても、コンビニチェーンの本部は加盟店の店長を残業代も払わずにこき使うことによって莫大な利益を上げてきた。その上、値引き販売・見切り販売を禁ずることで消費者・利用客に不利益を押しつけてきた。さらに、大量の食品輸入それ自体が発展途上国で飢餓に瀕する人々の犠牲の上に成り立っていることも考えれば、日本のコンビニはいわば、発展途上国、消費者・利用客、従業員のすべてを犠牲にして本部だけが儲けまくるというビジネスモデルだったわけだ。

こんなビジネスモデルは崩壊して当然だと思うし、自分たちが儲けることしか考えなかった本部は反省すべきだ。従業員も顧客も諸外国の国民も、すべてが共存共栄できるようなモデルを構築すること、それが経営者たるものの責務である。

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日航、政府指導下で再建へ

2009-06-22 23:07:23 | 鉄道・公共交通/交通政策
日航再建支援の指導・監督強化、3閣僚が一致(読売新聞)

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 河村官房長官、与謝野財務・金融・経済財政相、金子国土交通相の3閣僚は22日午前、日本航空の経営再建を巡って協議し、日本政策投資銀行などが実施する1000億円規模の協調融資の一部に政府保証を付ける代わりに政府が再建への指導・監督を強化する方針を確認した。

 金子国交相は閣議後の記者会見で、支援理由について「日本航空は我が国の経済、社会、国民にとって国際的な活動を行う上でも極めて大事な企業だ」と改めて強調した。

 与謝野財務相は、日航の経営について「なかなか大変だ」との認識を示す一方で「政策投資銀行が融資を始めれば一般銀行もついてくる」との見通しを示したうえで、人員削減など日航が取り組むリストラ策の重要性を指摘した。
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一般マスコミはさらりと流す程度にしか報じていないが、このニュースは交通政策上かなり重大な意味を持つ。ぶっちゃけた言い方をすれば「日本航空が事実上経営破綻」と言っているのに限りなく近いからだ。

政府系金融機関である日本政策投資銀行が融資をするということは、わかりやすく言えば民間銀行に引き受け手がいなくなったということを意味する。しかも、その融資に政府保証がつけられるということは、「貸し倒れ必至」ということを意味している。初めから債権放棄を前提に融資せざるを得ないということだ。一般企業なら「経営破綻、再建へ」と書かれるケースだろう。

日本航空は日本の空を担う基幹企業であり、解散整理するわけに行かないが、日本航空の経営陣は過去、何度も再建計画を作りながら失敗を重ねてきた。この際、政府は日航の経営陣を総入れ替えして再建に当たるべきだと当ブログは考える。

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革命以来の転機迎えるイラン

2009-06-20 23:36:27 | その他社会・時事
イラン 数千人がデモ強行し治安部隊と衝突か 自爆テロも(毎日新聞)

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 【テヘラン春日孝之】イラン大統領選の開票を巡る混乱で、政府側は20日夕(日本時間同夜)、テヘラン中心部の革命広場付近に集結しようとした改革派支持者らの強制排除に乗り出した。改革派組織は当初予定した抗議デモを直前に中止したが、一部が強行しようとして当局側と衝突した模様だ。また、テヘラン南部のホメイニ廟(びょう)で自爆とみられる爆発が起き、2人が死亡、8人が負傷したとの情報もあり、事態は緊迫している。

【関連写真特集】緊張のテヘラン すべては大統領選から

 目撃者の話などによると、当局側は革命広場につながる道路などを封鎖。改革派支持者が同広場に至る道路の数カ所で治安部隊と衝突した。支持者はそれぞれ数百~数千人規模とみられる。「独裁者に死を」などと叫んで集まった改革派支持者らを催涙ガスや放水銃で排除しており、数十人が警棒で殴られるなどして病院に担ぎ込まれた模様だ。

 また、再選したアフマディネジャド大統領派と改革派の支持者が衝突し、これを止めようとした治安当局者が上空に向けて威嚇射撃したとも伝えられた。

 最高指導者ハメネイ師は19日、デモを強行すれば武力制圧も辞さないと表明していた。

 大統領選で敗れた改革派、ムサビ元首相とカルビ元国会議長は20日に抗議集会を計画。しかし、ムサビ氏を支持する改革派組織「闘う聖職者たち」は同日、デモ中止を発表した。ムサビ氏は同日、ウェブ上で選挙結果の無効を改めて訴えた。

 ロイター通信はさらに、ムサビ支持者らがアフマディネジャド支持者らが使用していたテヘランのビルに放火したことや、両派の衝突を防ぐ目的で警察が空中に発砲したことを報じた。

 ◇各所で「独裁者に死を!」

 【テヘラン春日孝之】「独裁者に死を!」「アッラー(神)は偉大なり」。目撃者によると、デモ開催予定地の目抜き通りにつながる道路の各所で、大勢の改革派支持者の叫び声が響いた。

 デモ隊は治安部隊に投石。部隊は警棒で殴りかかり、催涙弾を次々に発砲して一面、灰色の煙が立ち上った。

 一部デモ隊は道路にゴミ箱を放り投げ、ゴミに火を放つなど暴徒化。治安部隊はハンドマイクで付近の商店に「すぐに店を閉めて退去するように」と呼び掛けた。

 デモは20日午後4時、革命(エンゲラブ)広場を起点に開催予定だったが、同2時には一帯は裏道も含めて武装した警官や私服の民兵組織バシジのメンバーが埋め尽くすほど配備されていた。手首にムサビ氏支持者を示す緑のリストバンドをした約50人が近づくと、治安部隊は「帰れ!」と追い払い、支持者らは退散した。

 その約2時間後、周辺には合わせて数千人にも達する支持者が、各所に分かれて治安部隊と衝突した。

 ◇社会への不満、根強さ裏付け

 【テヘラン春日孝之】テヘラン南部のイマーム・ホメイニ廟(びょう)は、イスラム革命を成就した革命の指導者ホメイニ師の遺体を納めた体制の象徴でもある。この入り口で20日に起きた自爆テロとみられる事件では10人が死傷。体制へのあからさまな挑戦行為と言えそうだ。

 最高指導者ハメネイ師は19日の演説で、改革派勢力に対し、「極端に走れば、自ら制御できなくなる」と自制を求めた。再選挙を求める抗議行動が暴走し、体制にとって取り返しのつかない事態を招く危険がある、と諭したものだった。

 20日に決行されたデモや爆弾事件は、ハメネイ師が懸念した通り、同師の最後通告も、改革派勢力の「デモ中止」宣言も無視したものだった。治安部隊の武力行使で自らの命が危険にさらされることを顧みずに参加した、「覚悟の決起」とも言える。

 その意味で、20日のデモの規模が数千人にも達したことは、体制への怒りや不満がいかにイラン社会に根強いかを裏付けてもおり、今後、情勢は混迷を深める可能性もある。
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アフマディネジャド大統領の再選に端を発したイランの混乱は流血の事態にまで発展した。1979年のイスラム革命から今年でちょうど30年だが、イスラム革命体制は発足以来の重大な転機を迎えたといえる。

イランの政治体制最大の問題点は、国民の直接選挙で選ばれる大統領のさらに上に最高意思決定機関の聖職者評議会が存在することだ。この評議会を構成する聖職者たちが、誰によって選ばれたわけでもなく、交代させることもできない不可侵の存在になってしまっている。このことが、イラン国民に「民意が通じない」「大統領に誰を選んでも結局聖職者たちが覆してしまう」という不満を抱かせている。そしてこの不満は選挙によっては決して解消されることがないため、イスラム革命の熱狂を知らない若者層を中心に政治体制への不満が鬱積している。シーア派の聖職者が権力を独占し、スンニ派など他派が閉め出されていること、これとの関連で信教の自由などの精神的自由が抑圧されていることも、不満の背景にあると見て間違いない。

私たち日本人の常識をかの国に適用することは危険かもしれない。しかし確実にいえることは、選挙で国民が選んだ指導者の上に「不可侵の権力」が存在する限り、いくら選挙などしてもそれは茶番に過ぎないということだ。

この先、イラン情勢がどういう形で推移するかわからないし、大統領選挙に不正があったかどうかも不明だが、歴史の事実が教えていることは、選挙(における不正)はいつも独裁政権の墓場になってきたということである。1986年、フィリピンのマルコス独裁政権が倒れたのも選挙の不正がきっかけだった。イラン指導層は、選挙と民意の怖さを知らなければならない。

いずれにしても、今回の混乱はイラン・イスラム体制の限界を示している。不可侵の地位をほしいままにしてきた聖職者たちは、一度最高権力を手放すべきであり、話はそれからなのではないか。国民の不満に真摯に耳を傾けようとする姿勢が指導層にない限り、表面的に力で抑え込んだとしても、国民の不満が解消することはあり得ない。むしろ、抑え込まれた不満は後にもっと大きな形で爆発することになるだろう。

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15歳未満認める「A案」衆院で可決…臓器移植改正案

2009-06-18 22:37:03 | その他社会・時事
15歳未満認める「A案」衆院で可決…臓器移植改正案(読売新聞) - goo ニュース

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 臓器移植法改正案は18日午後、衆院本会議で採決され、脳死を「人の死」とすることを前提に、現行では禁止されている15歳未満からの臓器提供を可能とすることを柱としたA案が賛成多数で可決された。

 審議の舞台は参院に移るが、A案の成立に消極的な意見や慎重審議を求める声が出ており、成立までには曲折も予想される。

 採決は記名投票で行われ、投票結果は賛成263、反対167だった。投票総数は430だった。共産党は時期尚早との理由で採決を棄権し、そのほかの政党は個人の死生観や倫理観に基づく問題であるとして、党議拘束をかけず議員個人の判断に委ねた。

 A案は脳死が「人の死」であることを前提として、臓器提供の条件について、書面による生前の意思表示と家族の同意を必要としている現行制度を大幅に緩和した。本人意思が不明でも生前の拒否がない限り家族の同意で臓器提供できるよう改める。現行では臓器提供の意思表示ができる年齢を15歳以上としているが、本人意思が不明でも臓器提供が可能になることで年齢制限は撤廃され、乳幼児からの臓器提供が可能となる。また親族への臓器の優先提供についても本人の意思表示ができると定めている。

 国会に提出された四つの改正案のうち、最も臓器移植の機会を拡大する可能性があり、患者団体や日本移植学会などが支持していた。

 残る3案は、臓器提供可能年齢を現在の「15歳以上」から「12歳以上」に引き下げるB案、脳死の定義を厳格化するC案、15歳未満について家族の同意と第三者による審査を条件に可能とするD案だったが、最初に採決されたA案が過半数の支持を得たため、採決されないまま廃案となった。

 A案は同日中に参院に送付され、参院厚生労働委員会で審議が行われる見通しだ。参院の民主、社民両党の有志議員はC案の考えに近い新案を参院に提出する構えを見せており、西岡武夫・参院議院運営委員長は「参院でまだ何の議論もしていない。この問題は慎重にあらゆるケースを考えないと禍根を残す」として、一定期間の審議が必要との認識を示している。

 現行の臓器移植法は1997年6月に成立した。施行後3年の見直し規定があり、臓器提供条件の緩和や15歳未満の臓器提供を認めるよう、患者団体や日本移植学会が法改正を求めてきた。2006年にA、B両案が与党の有志議員によって国会に提出された。C案は両案の対案として、野党の有志議員によって07年に提出されたが、長らくたなざらしの状態が続いていた。

 昨年5月、国際移植学会が自国外での臓器移植自粛を求めた「イスタンブール宣言」を採択し、世界保健機関(WHO)も臓器移植の自国内完結を促す指針を取りまとめる方向となった。このため、15歳未満の臓器提供が禁止されている日本の小児患者は臓器移植を受ける道が閉ざされる可能性が出てきたことから、にわかに同法の改正論議が活発化した。
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私はA案可決に衝撃を受けている。衆議院に提出された4案のうち、最も「過激」なのがA案だったから、私は、A案以外ならどれでも良しと考えていた。いくらなんでも脳死を人の死の原則にするのは飛躍しすぎだろう。

脳死状態となった子供が、その後も心臓が動いたまま成長を続ける例がいくつか報告されている。脳死状態の子供を毎日風呂に入れ、その身体の成長を見守っているある父親は「私は死体の成長を見届けているのか」と憤ったという。

生物学的に見た場合、脳死状態に陥っても自律神経系が正常に機能していれば、心臓その他の臓器をコントロールし続けることができる。これに対し、心臓が停止すれば、脳は約3分で酸欠状態となり、5~10分で確実に死に至る。

脳が死んでも心臓が生き続けることができる場合があるのに対し、心臓が停止したら脳は絶対に生き延びることはできない。これは、人間の生物学的な死を決定するのが心臓であることを示しているといえる。人間の死は心臓死が原則であるべきで、その原則を覆すA案を、当ブログは認めることはできない。

第2の問題点は、A案が臓器提供を行う側の意思も人権も全く無視していることだ。「本人の拒否がなければ、家族の同意のみで臓器移植が可能」というが、この原則が意思表示のできない乳幼児に適用されたら大変なことになってしまう。A案が成立すれば、極端な場合、家族に同意を強制する医師や、脳死に追い込むため乳幼児の頭に注射をする医師が表れかねないだろう。臓器提供を受ける側の都合ばかりが優先され、提供する側への考慮がみじんもないA案は、バランス感覚に欠けた最悪の案だと当ブログは考える。

臓器提供の現場では、提供する側は脳死患者の命にみずからの意思表示によって幕を下ろすというつらい決断をしなければならないし、提供を受ける側は提供する側へ謝意を示しつつ、みずからのために命を絶たれようとしている人の分まできちんと人生を全うしようと約束することが前提でなければならないと思う。ところがA案が法律となった場合、臓器提供を受ける側の都合だけが優先され、「なにやってんだ、さっさと臓器よこせよ」的なことになりはしないかという危惧が私にはある。臓器移植をめぐる医療が、そのような、命への感謝を忘れた不遜な現場になるくらいなら、そんな法案は通すべきではないと私は思うのだ。

とはいえ、臓器移植を待っている患者の多くが子供であることも事実だ。脳死状態に陥った子供は成長ができるものの、意識の回復は望みがたい。一方、臓器提供を待つ患者は、提供者が現れれば回復し、まっとうな社会生活を送れるようになる場合が多い。意識が回復する見込みのない脳死者から臓器を提供してもらい、救える命を確実に救うということが社会全体の要請であるとともに、公共の利益であることも確かだ。そのための手段を確保することも政治に課せられた使命であると言えよう。

今回の法案採決には、共産党を除いて党議拘束がかからなかったため、議員個人が各自の意思に基づいて態度を決めたとされるが、実際にはA案への賛成は自民党が7割を占めた。その上、「傍聴席で涙ぐみながら可決を喜ぶ、臓器移植を待つ子の母親」の映像だけが繰り返しテレビで流されるなど、マスコミ報道があまりにも一方的過ぎる。その映像を流すなら、脳死の子を持つ母親の声も流すべきだと考えるが、それに触れたメディアは私の知る限り、なかった。こんな状態での法案可決を喜べと言われても無理であり、今後、もっと多角的で広範な議論が必要であることは間違いないだろう。

それにしても、命の尊厳をある意味で無視するこのような非常識な法案が可決される衆議院は、今、民意が全く反映しない場所になってしまっている。やはり、さっさと解散総選挙をすべきではないか。

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首相、鳩山総務相を更迭 西川氏の続投支持

2009-06-12 23:06:12 | その他社会・時事
首相、鳩山総務相を更迭 西川氏の続投支持(産経新聞)

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 日本郵政の西川善文社長の再任問題をめぐり、麻生太郎首相は12日、西川氏の退任を要求してきた鳩山邦夫総務相に辞表を提出させ、更迭した。麻生内閣の閣僚辞任は中山成彬前国土交通相、中川昭一前財務相に続き3人目。首相は後任の総務相を佐藤勉国家公安委員長に兼務させた。

 首相は12日夕、記者団に更迭理由を「政府と郵政会社の間に混乱が生じたような印象を与えたのははなはだ遺憾だ。早急に解決されてしかるべきだった」と説明。西川社長については「日本郵政は特殊会社とはいえ民間会社だ。株主(国)が人事権を使ったり、事業に対し色々なことで介入したりするのは努めて避けるべきだ」と述べ、続投を支持する考えを示した。

 一方、鳩山氏は「正しいことが通用しないならば潔く去る。首相の判断は間違っていると思う。今後は正しい判断で政治をやってほしい」と述べた。
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首相のコメントはすべてが間違っている。いちいち検証するのも面倒なのだが、国民の共有財産であった郵政の施設が「西川一派」によりお手盛り的に格安で払い下げられようとしている今、当ブログとしては黙っているわけにはいかない。沈黙は巨悪を利することになるからだ。

まず、「政府と郵政会社の間に混乱が生じたような印象を与えたのははなはだ遺憾だ。早急に解決されてしかるべきだった」のコメントだが、そもそも早急に解決できなかったのは首相自身の優柔不断、決断力のなさだ。それにもかかわらず他人事のようなコメントには呆れる。

次に、「日本郵政は特殊会社とはいえ民間会社だ。株主(国)が人事権を使ったり、事業に対し色々なことで介入したりするのは努めて避けるべきだ」だが、この論理は、平たく言えば株式会社に対する株主の統制を否定していることになる。国は株式を持っていても特殊会社の経営には介入できないし、またすべきでないと考えているのだったら、さっさと株式を売却して完全民営化するか、さもなければ国営公社に戻すかのどちらかでなければならないはずだ。

政治と結託した一部「政商」に対する国有財産の不当払い下げは、歴史のひもを解いてみれば今回が初めてではなく、古くは明治時代、黒田清隆が自分の設立した会社を受け皿に、北海道開拓使の官有財産を不当に安く払い下げようとした「北海道開拓使官有物払い下げ事件」があった。それは、政府が投資した額1400万円に対して払い下げ額はたったの38万円という乱脈ぶりだった。黒田は責任を問われ、払い下げは頓挫、閑職に追いやられた。

1987年の国鉄民営化もこれと同じような構図だった。特に、汐留貨物駅跡地はバブル最盛期に売却すれば6兆円の値がつくと言われ、国鉄清算事業団が背負った累積債務の返済に充てることが強く期待された。しかし、「汐留を売却すれば地価高騰に拍車を掛ける」という訳のわからない論理で売却は中止された。その後、この土地はバブル崩壊後になって格安で民間に払い下げられた。

よくよく考えてみれば、供給が増えれば価格は下がるのが経済の原則であり、「汐留を売却すれば地価高騰に拍車を掛ける」などと言うことはあり得なかった。実際には、バブル期に汐留を売っておけば良かったものを、民間に安く払い下げるために売却を凍結する措置が取られ、狙い通りバブル崩壊で地価が下がったあと「お手盛り」で一部民間企業が一等地を格安で手に入れた。そして、圧縮されるはずだった旧国鉄債務は圧縮されないまま、国民に請求書が回されたのだ。

公有企業が民営化されるたびにこのようなことが繰り返されてきたのが日本の歴史だった。私たち国民が声を上げなければ、政治家・官僚・財界によって国民の財布が空になるまで同じ愚行が繰り返されるだろう。

その意味で、「かんぽの宿」のお手盛り売却を中止させた鳩山総務相の働きは歴史に光り輝くものであり、西川社長こそ辞任すべきだった。国民は、郵政民営化が一部企業のための「お手盛り」民営化だった事実にすでに気付き始めている。地方では郵便局の削減による弊害も現れ始めており、郵政民営化への支持は今後、減少はしても増加することはないだろう。

その上、「民間企業になったのだから政府が口を出すこともけしからん」というのであれば、もはや郵政は国営公社に戻すしかないのではないか。

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