安全問題研究会~鉄道を中心とした公共交通を通じて社会を考える~

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アキタフーズ事件から分かる日本の後進性とアニマルウェルフェアの展望

2021-02-27 11:54:35 | その他社会・時事
農政、募る疑念 鶏卵大手との癒着露呈(時事)

鶏卵業者「アキタフーズ」から農水省幹部らが接待を受けていた問題で、幹部6人が懲戒処分を受けた。この問題に関し、レイバーネット日本に以下のとおり寄稿したので、転載する。

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アキタフーズ事件から分かる日本の後進性とアニマルウェルフェアの展望

アニマルウェルフェアは、日本語では動物福祉と訳されることもありますが、この訳語が適切かどうかの論議もあり、英語がそのまま使われているのが現状です。

日本の厚生労働省の英語表記は"Ministry of Health,Labour and Welfare"で、アニマルウェルフェアのウェルフェアもWelfareです。Ministry of Health,Labour and Welfare は直訳すると「健康労働福祉省」で、英語圏にはそうしたニュアンスで伝わっていると思います。英語表記には福祉と入っているのに日本語でそれを名乗らないのには、何か意図があるのかと勘ぐってしまいます。(労働がLabourとイギリス英語の表記なのが面白いと思います。アメリカ英語ではLaborで、uの文字は入りません。)

アニマルウェルフェアについては、EUではもう20年近く前に委員会指令が出され、加盟国は推進に向け努力しなければならないとの方向性が示されています。EU議会が制定した「法律」ではなくEU委員会「指令」(日本でいう政令に近いです)のため、直接的に加盟国政府を拘束するものではなく、加盟国政府はこの指令が示す方向性に沿って、各国の実情に応じた立法措置を講じるように、という程度のものです。しかし、立法措置を講じる国が増えてくると、自分の国も同じ基準を適用しなければ自国の動物や畜産物を輸出できなくなるので、現実は多くの国が立法措置を講じていると聞きます。

パリに本部を置くOIE(国際獣疫事務局)という国際機関があります。加盟国が家畜伝染病の清浄国(=非汚染国)か非清浄国(=汚染国)かを決定する権限はこの機関が握っています。清浄国は清浄国にも非清浄国にも動物や畜産物を輸出できますが、非清浄国は清浄国に動物や畜産物を輸出できません。だからどの国も清浄国の地位を得ようと一生懸命になります。

どの国がどちらのグループに属するかは、家畜(牛、豚、鶏など)ごと、病気の種類ごとに決められるので一様ではありません。動物の病気が発生し、それが一定規模、一定の期間続けば非清浄国となります。

OIEは、アニマルウェルフェアに関する基準も策定しています。今回、吉川貴盛元農相らに賄賂を渡していたアキタフーズは、この基準を緩和するよう働きかけ、一定の成果を収めたわけですが、今の段階では、OIEの定めるアニマルウェルフェアの基準を守っているかどうかは、清浄国、非清浄国の判定とはリンクしていません。守らなかったからといって、直ちに非清浄国認定となるわけではありません。

しかし、欧米諸国はこうしたことに敏感なので(というより、日本が鈍感すぎるだけといったほうが正確ですが)、いずれこの2つはリンクするようになるでしょう。衛生基準を守れる国=健康な国というのは、ヒトの医療の世界では疑う余地のないほどの常識なので、当然、今後は動物の世界も同じような考え方で臨もう、というのが国際基準になるはずです。アニマルウェルフェアの基準を守れない国は非清浄国として扱われる時代が、遠からず必ず訪れます。賄賂を渡した業界団体もそのことは理解していて、「だからこそ」基準自体のハードルを今のうちに下げておこうという動きに今回、出たのです。


(写真提供:北穂さゆりさん(レイバーネット写真部))


アキタフーズ事件は、森暴言などと同様に、日本の後進性を明らかにするものだといえます。乱暴な言い方かもしれませんが、家畜がどのような飼われ方をしているかは、その国で「人間がどのように飼われているか」すなわち人権状況を現す映し鏡のようなものだと、長年、この世界に身を置いてきて思います。鶏が狭いケージにぎゅうぎゅう詰めにされ、「密」状態が作り出される中で、鳥インフルエンザが拡大しているのと、東京のような大都市に人間がぎゅうぎゅう詰めにされ、「密」状態の中で新型コロナ感染が拡大している状況は表裏一体のものであり、決して偶然などではありません。アキタフーズが、できるだけ狭いケージに多数の鶏を押し込む効率的経営しか考えなかったように、日本政府もできるだけ狭い都市部に多くの人間を押し込んで「効率的に管理」することしか考えていません。その「新自由主義的人間の飼い方」の帰結が新型コロナ拡大なのです。

人間も霊長類ヒト科という動物なので、防疫の基本は他の動物と変わりません。OIEは、豚熱について、発生から2年経っても沈静化できなければ非清浄国に格下げすると定めていますが、日本は豚熱を2年以上沈静化させられなかったため、豚熱については非清浄国に降格されました。動物の病気を沈静化させられない国が人間の病気を沈静化させられるとは私はまったく思いません。残念ですが、自民党政権が変わらなければ新型コロナもあと数年は続き、日本は豚熱がそうであったように、いずれ「後進国」扱いになると思います。

悲観的な話ばかり続きましたが、逆転の目はあります。実は、北海道・十勝地方では、アニマルウェルフェアに目覚めた一部の先進的農家が、独自にアニマルウェルフェアの基準を策定し、満たした農家に認証マークを交付する試みが始まっています。少しくらい価格が高くても、家畜に苦しみを与えない形できちんと経営している農家のものを買いたいという「エシカル消費」的ニーズは消費者の間に確実に存在しています。そこに商機、ビジネスチャンスがあるとにらんだ先進的農家が取り組みを始めています。今後は、そのようなエシカル消費路線と「アキタフーズ的安かろう悪かろう」路線に二極化していくだろうと私は予測しています。OIEがアニマルウェルフェアの基準を清浄国認定要件とした場合、後者はいずれ海外への輸出はできなくなると思いますが、国内で貧困層だけを相手に商売をする限りはそれでいいと居直る業者も出てくるかもしれません。

人間も動物も、特効薬はワクチンではなくソーシャルディスタンスです。北海道・十勝の先進事例が日本でも標準になるような畜産のあり方を目指すべきだと思います。

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失われた30年、変われなかった日本に迫る「無条件降伏」 第2の敗戦後の新時代に私たちのなすべきこと

2021-02-25 23:50:00 | その他社会・時事
(この記事は、当ブログ管理人が月刊誌「地域と労働運動」2021年3月号に発表した原稿をそのまま掲載しています。)

 今、私には奇妙な時代感覚がある。太平洋戦争末期の時代をリアルタイムで生き、経験しているわけではないにもかかわらず、今の日本社会が抱える絶望的な閉塞状況を通じて大戦末期を疑似体験しているような感覚だ。歴史の中の遠い時代であるはずなのに、「あの時」の社会的雰囲気も今と同じだったに違いないという絶対的確信に近い気持ちが私の中にあるのだ。

 社会全体を覆う絶望的ムードの中、人々が怒りと諦念を同時に抱きながらこの苦しい「今」との決別を待ち焦がれている。みずからの女性蔑視発言に対する内外からの批判の高まりの中で辞任を余儀なくされた森喜朗・東京五輪組織委前会長の、ほとんど唯一の「功績」を挙げるならば、バブル崩壊以降の日本の「失われた30年」、そして女性や若者に「正体不明の忍従」を強いてきた原因のほとんどすべてが「昭和のオヤジ支配」にあることを国内のみならず、全地球人類に知らしめたことだ。

 ●森辞任要求は国際社会からの「ポツダム宣言」だ

 ここ10年近く、国内問題にかかり切りで日本に関わる余裕のなかった国際社会も、この日本の惨状を目の当たりにして「再介入」へ舵を切ったように思える。「森発言」に対する国際世論からの批判は想像以上で、「黙殺すれば日本を待つものは完全なる壊滅のみ」としたポツダム宣言のようだ。

 ポツダム宣言が発表されても、昭和日本の指導部はなんとか「国体護持」したままソフトランディングができないか、「男たちだけの密室会議」が繰り広げられた。すでに日本に逆転の要素はなく敗戦は明らかな情勢だったが、陸海軍指導部はその現実を受け入れられず、右往左往したまま時間だけが過ぎていった。そうした姿勢が連合国側には宣言「黙殺」と受け止められ、原爆投下への準備が進められていくことになった。当時も日本の意思決定層は高年齢男性だけで占められており、会議をいくら繰り返してもいいアイデアなど出るわけがない。国民に向けては「日本は神国。いずれ神風が吹く」と精神論をあおりながら、本土決戦を呼びかけ続けた。やがて原爆投下、ソ連参戦という決定的破局を招き、日本は無条件降伏に追い込まれた。

 最近の日本の惨状を見ると、大戦末期の無為無策の歴史が繰り返されているようにしか私には思えない。国民には多様な意見があるのに受け入れられない。誰もがこのままではいずれ破局を迎えると分かっているのに改革の気運は盛り上がらず、国民の8割が支持している脱原発、受動喫煙防止、選択的夫婦別姓導入などの改革が提起されるたびに、1~2割に過ぎない「正体不明の頑強な抵抗勢力」のためにいつも決まって潰される。東京五輪など無理と分かっているのに、「開会式までに必ず神風は吹く。いや、俺が吹かせてみせる」と「本土決戦」に突き進もうとする。

 国民の大多数には可視化されず巧妙に隠されているが、この「正体不明の頑強な抵抗勢力」の大部分は昭和のオヤジたちであり、その昭和のオヤジが総結集しているのが自民党というカビだらけの組織である。新型コロナウィルスの感染拡大という危機を前にして、「密室・密談・密約」のいわば「3密」(注)で政治・経済・社会のあらゆる領域を支配していた昭和オヤジ支配が揺らぎつつある。「3密」と会食は切っても切れない関係にあり、だからこそ自民党だけがいつまでも自粛破りの会食を続けなければならないのである。初めに述べたように、「宮廷内の密事」として周到かつ巧妙に隠されてきたこの支配構造を、不用意な発言で天下に知らしめてしまったことこそ森前会長のほとんど「唯一」の功績である。自民党は、いっそ自由民主党から「ジジイ飲酒党」に党名変更してはどうか。

 当コラム筆者から提案がある。新型コロナウィルス感染拡大に伴って、補償も十分受けられないのに営業自粛で損害を受けている飲食店向けに、どこかの酒造会社が新酒「自由飲酒党」でも売り出したら案外、売れるかもしれない。旧ソ連で、アルコール依存症の蔓延に危機感を抱いたアンドロポフ共産党書記長が飲酒規制を打ち出したら、党への皮肉を込めて「アンドロポフカ」(アンドロポフ印)の通称で酒を販売した商店があると聞いた(その後、買いに来た顧客ともども検挙されたそうだ。1980年代初頭の話である)。日本でも、国民に自粛を強いながら自分たちだけ特権とばかりに会食を繰り返す「ジジイ飲酒党」への当てつけとしてちょうどいいのではないか。言論・表現の自由がある日本では与党を揶揄する名称の酒を販売しても、旧ソ連と異なり検挙されることはない。

注)頭の良さより「共感力」で人生が決まる納得理由~「無能なナルシスト」は、もう成功しません」(東洋経済オンライン)。記事著者の岡本純子さんは、日本の政財界リーダーは「コミュニケーションは「密談・密室・密約」という3密が基本だと思っている」と厳しく批判している。

 ●過去の失敗などどうでもいいではないか! 総選挙で政権交代を

 民主党政権の無残な失敗以来、日本の市民のほとんどは「自分の生きているうちに二度と政権交代なんて起こり得ないだろう」という諦念にも似た気持ちを抱いて、安倍政権以降の10年近くを生きてきた。その証拠に、安倍政権があれだけのでたらめを続けたのに、安倍政権打倒を求める声はあっても、政権交代を求める声はまったくといっていいほどどこからも聞こえてこなかったからだ。日本では成立の余地などないと証明された「保守二大政党制」という幻想を抱き、政権交代の夢を追い続けてきたのは、私たちのような反自民派よりもむしろ「自民党的なるもの」に飽き足りなかった保守層だったように思える。

 自民党政権の終わりの予感は、菅首相が国民に自粛を強いておきながら、緊急事態宣言下、自分たちだけ連日ステーキ屋で会食をしていた年明け早々から徐々に出始めていたが、そんなことくらいで壊れてしまうほど自民党政権がもろい構造ではないことは、私たち反自民派こそ最もよく知っている。まさか、とずっと思っていた。
ところが、である。「女がいると会議が長い」という無根拠で極めて差別的な森喜朗・東京五輪組織委会長の「暴言」で、ひょっとしたら五輪のみならず、自民党政権の息の根まで止まるかもしれない。そんなムードが急速に出てきたように思える。

 安倍政権以降のここ数年、ネット上の攻撃は弱者にばかり向かっていて、不毛で腹が立つことしかなかった。この間、何度「ネットを辞めよう」と思ったかわからないほどだ。それが今回、批判、攻撃が強者、それも森会長のような「本来向かうべき相手」にきちんと向かったという意味では、久しぶりの「祭り」だと思う。瞬発力の強さという意味では昨年の黒川検事長問題をも大きく超えていて、ネットとしては2012年の「大飯原発再稼働反対官邸前20万人デモ」以来の盛大な祭りだ。

 先日も、買い物に出かけたスーパーで、普段は政治の話をしようとすると遮るようなノンポリの人たちが「私たちが選挙に行かなかったからかしら。自民党以外に入れたらいいの?」と立ち話をしているのを聞いた。ネットでも「どんなに自民党政権がひどくても悪夢の民主党政権よりはマシ」と言っていた人たちが「とにかく自民はダメ。政権交代可能な野党がなくても、国民には自粛しろと言いながら自分は毎日ステーキ食べてるような奴らは一度下野させないと」「俺たち下級国民は重症でも入院できないのに、自民党関係者だけPCRをいつでも受けられ、陽性だったら無症状でも即入院できるなんて許せない」と言い始めている。安保法や黒川検事長問題の時ですらまったく政治に興味がなかった一般の人たちの間に、自民党に対する久しぶりの「懲罰感情」が芽生えているのだ。

 このような状況下で、衆院議員の任期がまもなく切れる。この秋の総選挙は、政府与党が望まない不利なタイミングでの実施を強いられる珍しい形でのものとなる。今後起き得る事態を考えてみよう。

 東京に住んでいると見えないかもしれないが、地方では、熱心に自民党候補者のポスターを貼っているのはたいてい土建業者か、ホテル・飲食店・土産品店などの観光関係の自営業者らである。こうした人たちが営業自粛を強いられているのに、補償は十分もらえていない。意気消沈して「今まで熱心に応援したのに、自民に裏切られた」と感じ、彼らの中から5%くらい棄権が増える。一方で「野党に政権を取らせるところまでは望んでいないけれど、自民党を少し懲らしめたい」と、眠っていた無党派層が10%くらい決起し、安倍政権下で行われた過去6回の選挙で55%前後だった投票率が、60%くらいに少し上がる。

 無党派層、普段はノンポリの人たちの「懲罰感情」ほど怖いものはない。野党側に政権担当準備があってもなくても、勝手に政権が転がり込んでくる、という可能性があるのは実はこんなときだ。直近で言うと、1989年や2009年の政治情勢に似ている。1989年も「女性は政治家の講演会に来てもネクタイの柄を見ているだけで、話の内容なんて聞いていない」という中曽根康弘首相の女性差別発言が出た。ちょうど同じタイミングで、社会党が女性として初めて土井たか子さんを委員長に据えたら、ブームが起きて自民党が参院で過半数割れを起こした。反乱が女性から始まった、という点でも当時とムードが似てきている。

 1月31日に投開票された北九州市議選(定数57)で自民が6議席減の大敗北を喫したが、57議席中の6議席といえば1割強なので、これを定数465(過半数233)の衆院に当てはめると、ちょうど自民が50議席くらい減らす計算になる。現在の279議席から50減らせば229議席で、単独では過半数に達しない。公明党と合わせてようやく政権維持、維新の力まで借りてようやく政権を安定させられるくらいになる。これだけでかなり政治は面白くなると思う。

 地方議会は中選挙区制なので、選挙区によっては3~4位でも当選可能だが、北九州市議選では自民がトップ当選をあまりできていない。小選挙区制はトップ以外当選できない制度なので、北九州市議選よりもっと極端な変動が起きる可能性もある。ただ立憲民主党は、2009年の民主党に比べてもあまりに非力すぎる。自民党に単独で取って代われる強力な野党が存在していない現在、当時のような劇的な形での政権交代という事態はあり得ないだろう。

 だが、1993年のような「熱量の低い形での政権交代」ならば考えられる。有権者としては「自民党を懲らしめる」程度のつもりだったが、小選挙区制であるために思ってもみなかった大規模な与党の議席減少が起き、自民が70~100議席くらい減らす。その結果、自民、公明、維新以外の議席を全部足してみたら、自公維に勝っていた。「もう一度、自公維以外の政党が力を合わせて、政権を作ってみようか」--そんな事態なら、野党第1党が非力な現状でも十分あり得るのである。

 失言で辞任した森前会長が、かつて「無党派層は寝ていてくれるのがいい」という発言をしたことを思い出してほしい。この間、選挙に行かなかった人たちはいつまで民主党政権の失敗にこだわり続けているのか。このような事態を生み出した責任は選挙に行かなかった人々にもある。「国民には自粛しろと言いながら自分は毎日ステーキ食べている自民党」「俺たち下級国民は重症でも入院できないのに、自分たちだけPCRをいつでも受けられ、陽性だったら無症状でも即入院できる自民党」を許せないと思うなら、次はぜひ投票所に足を運び、野党第1党、野党統一の候補が非力でもそこに票を集中させてほしい。5~10%程度の投票率上昇でも上記のような事態を引き起こすことは可能なのである。

 「会社が仕事をもらわなければならないから仕方ないんだ」「商工会長にはお世話になっているから」など、過去のしがらみや人間関係などの情けない理由で自民党に投票しようとしている人を見たら、すべての女性(心ある男性も)は力を合わせて止めてほしい。「それで、その自民党があなたに何をしてくれたの?」「自民党に投票しようとしているということは、あなたも森さんみたいに女がいると会議の邪魔だと思っているの?」と問うてほしいのだ。「自民党のような女性、マイノリティ差別政党に投票するならあなたとは離婚する」と勇気を出してパートナーに告げてほしい。もちろん自分も絶対に自民党にだけは投票してはならない。

 国民の8割が望む政策の実行を妨げているほとんどの原因は昭和オヤジ組織の自民党にある。この党を政権から排除するだけで、「何をしても変わらない」とあきらめかけていた政策の9割以上は実現に向かうだろう。選択のときは半年以内に迫っている。

(2021年2月20日)

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【緊急告知】福島第1原発の格納容器、地震で大きく損傷か

2021-02-23 23:43:50 | 原発問題/一般
福島第一原発の格納容器、周囲の気圧と同程度まで圧力が低下


TBSでこんなことが報道されている。本来であれば、もっと大きく報道されるべき話である。この事態をどう評価すべきかは難しいが、当ブログ管理人の信頼できる区域外避難者の方が、以下の通りつぶやいている。



当ブログ管理人もこの見解に同意する。先日も述べたとおり、1号機では燃料の取り出しはまだ始まってもいない。そこで格納容器の「底抜け」という事態が起きた場合、放射線量の急激な上昇、汚染水の急激な増加といった不測の事態が起きかねない。

実際、すでに福島・新地沖クロソイから基準超セシウム 流通停止(毎日)という、汚染水増加をうかがわせるような事態も起きている。こんなときに、福島第1原発3号機に設置された地震計の故障を東京電力が放置していて、2月13日の震度6強を観測できなかったという(参考記事:福島第1原発3号機、地震計の故障放置 13日の6強観測できず(毎日))。

10年前の記憶がフラッシュバックするような事態がここのところ続いている。そして、またもや見えてきたのは10年経っても東電に学習能力も当事者能力もないということだ。

福島県民が、もう一度「自主的避難」を検討せざるを得ないような最悪の事態が、再び視野に入りつつある。

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【緊急告知】福島第1原発1、3号機で格納容器の水位低下 念のためご注意を!

2021-02-19 23:02:42 | 原発問題/一般
福島第1原発、原子炉格納容器で水位が低下傾向=東京電力(ロイター)

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[東京 19日 ロイター] - 東京電力は19日、福島第1原子力発電所1、3号機の原子炉格納容器の水位が低下傾向にあると発表した。

18日に1号機の原子炉格納容器の水位が低下したことから、他のパラメーターを確認したところ、1号機で15日以降、3号機で17日以降、原子炉格納容器温度計の一部に低下傾向がみられたという。

東電では、原子炉圧力容器底部温度や格納容器ガス管理システムの放射能、敷地境界のモニタリングポストなどに有意な変動はなく、外部への影響はないと判断している。

水位低下の要因としては、福島県沖で13日に発生した地震の影響による格納容器損傷部の状況変化も考えられるため、今後もパラメータを注視して監視していくとしている。
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この事態を引き起こしたのは、紛れもなく13日の激しい地震だろう。福島時代の関係者から「地震の揺れだけの比較なら、10年前の3.11より今回のほうが激しかった」という声すら聞こえてくる。10年前と比べ、震源が福島県寄りだったことも、そう感じる理由だろう。

10年前の3.11と異なり、わずか数時間で格納容器の水分が抜けて空になるというような事態は、今後よほど大きな余震などがない限りは想定しにくい。しかし、今後、東京電力がこの事態を収拾できず、水位低下が長く続くようであれば、注意は必要だろう。福島第1原発の3号機は燃料の取り出しがまだ完全には終わっておらず、1号機に至っては、まだ開始すらしていないからだ。

以下、東京電力公式ホームページから

使用済燃料プールからの燃料取り出しの状況

1号機使用済燃料プールからの燃料取り出し
3号機使用済燃料プールからの燃料取り出し

東京電力公表資料「福島第一原子力発電所 1号機および3号機原子炉格納容器における水位低下について」によれば、水位低下は18日段階で確認されていたが、東電お得意芸「隠蔽」により19日午後になって公表された。どう見ても、電力関連株価への悪影響を与えないよう、金曜日の証券取引所が取引を終える午後3時を待ったとしか思えない。

まもなく3.11から10年を迎えるが、この時期に起きた巨大な余震、東北新幹線の長引く不通と交通の混乱、東電の後手後手かつ隠蔽を疑わせるような対応ぶりを見ていると、すべてが10年前の「あの日」の記憶をフラッシュバックさせる方向へと向かっていることがわかる。今すぐ破局的事態というわけではないものの、壊れたままになっている原発のこんな重大事態が、国内のメディアではほとんど報じられず、最も詳しく伝えているのが外国通信社のロイターというのも10年前と同じであまりに情けない。「水位低下」はメディアも東電と大して変わらない。

いずれにしても、福島県民をはじめ原発周辺地域の人たちは万一に備えてほしい。

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2月13日23時08分頃の福島県沖の地震について

2021-02-14 10:21:29 | 気象・地震
令和3年2月13日23時08分頃の福島県沖の地震について-「平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震」について(第89報)-(気象庁報道発表)

衝撃的地震から一夜が明け、被害状況が次第に明らかになってきている。確認しておきたいのは、この地域での震度6強かつM7超えの地震は2011年4月8日に起きたもの(M7.4)以来、10年ぶりの規模であるという点だ。

気象庁報道発表を見ると、発震機構(地震のメカニズム)は西南西ー東北東方向に圧力軸を持つ逆断層型で、方向まで含め、東日本大震災と同じである。地震の規模はM7.3で、1995年の阪神・淡路大震災とほぼ同じ。東日本大震災はM9.0である。マグニチュードが1大きくなると、地震の規模は約32倍になるので、今回の地震の持つエネルギーは、東日本大震災のほぼ1000分の1だったことになる。巨大津波が10年前は発生し、今回はしなかったのは、このエネルギーの差にあるとみてよいだろう。

気象庁は、今回の地震について、東日本大震災の余震との見解を示している。同じ震源域でもあるし、そうしておきたいという思惑のようなものも見えるが、当ブログはこの点に関してはやや見解を異にする。

今年1月、政府の地震調査研究推進本部(地震本部)が「長期評価による地震発生確率値の更新について」という資料を公表している。添付資料(PDF版)には日本周辺で発生の可能性がある海溝型地震、活断層型地震の発生予測が示されている。A4で34ページにも及ぶ膨大なものだが、この資料の32ページに注目すべき見解が示されている。大半の読者にとって探すのが面倒な資料だと思うので、当ブログが抜き出して示すと、以下の部分である。



M7.0~7.5クラスの「IIIランク」の地震について、宮城県沖では発生周期が「12.6~14.7年」、発生確率は10年以内に50%、30年以内に90%、50年以内では「90%以上」と示されている(赤囲み部分)。東北の太平洋沖は地震の巣であり、発生確実とされる地震の中にはこのような周期の短いものもある。東日本大震災からまもなく10年ということを考えると、発生周期が10年程度の短い地震の中から、そろそろ「次」が来てもおかしくない状況になっているのである。

気象庁の報道発表資料に戻ると、昨夜発生した地震の震央は、日本海溝(プレート境界)よりかなり西側になっていて、北米プレート内部で発生した地震と評価せざるを得ないようにも思える。海溝型地震とするには、震央が海溝から遠いようにも思われるからだ。だが、観測網の整っている直下型地震と異なり、観測網の脆弱な海底を震源とする地震では後日の調査・研究の進展の結果、震源の位置を含めて見直されることもある。後の調査・研究の結果、昨夜の地震が長期評価に示された「宮城県沖IIIランク地震に該当する」として、データが見直される可能性もあるのだ。

この意味で、当ブログは気象庁の昨夜の発表にある「東日本大震災の余震」との評価には直ちに同意できない。別の新しい地震の可能性もあるということは見ておかなければならないと思う。新たな別の地震の場合、昨夜の地震が前震で、この後に本震が来る、という可能性は捨てきれない。大きな揺れに見舞われた地域では、避難所や避難経路、非常持ち出し品、避難する場合は避難先でのコロナ対策も含め再確認をするなどして備えてほしい。

最後に、地震本部が地震の発生確率をどのような手法で予測しているのかについて、この際、少し述べておこう。簡単に言うと、震源域ごとに過去の地震を調査して、発生の周期性を割り出した上で、前回の地震発生から現在まで何年経過しているかによって今後の発生確率を予測するのである。

子どもの頃、縁日や祭りなどに出かけた際、露店で回転式のおみくじを回した経験は誰しも持っているだろう。白玉ならハズレ、赤玉が出たら当たりで景品がもらえる、というものだ。このおみくじで、例えば10個あたり赤玉が1個(白9、赤1)の割合で玉が入れられており、一度誰かが引いた玉はおみくじ機には戻さない、と仮定しよう。最初の段階では赤玉が出る確率は10%だが、5人引いた段階でいずれも白玉だった場合、その後くじを引く5人の間で赤玉が出る確率は20%に上昇する。8人まで引いても赤が出なかった場合、最後の2人の間では赤玉を引ける確率は50%まで上がる。地震本部の発生予測はこれと同じシンプルな考え方である。平均100年周期の地震が50年起きなかった場合、残り50年間で発生する確率はそれまでの2倍--という形で予測しているのである。それだけに、地震本部の発生予測は比較的よく当たっている。

地震本部がこうした予測確実な手法を用いているにもかかわらず、原発運転差し止めや福島原発事故の賠償を求めた訴訟で半分近い裁判所がそれを「信頼性がない」として採用しないのは謎である。おそらく、運転容認の結論があらかじめ決まっていて、地震本部の予測はその結論と矛盾するため採用できないのであろう。こうした非科学的な判決が続いているのは残念としかいいようがない。3.11からまもなく10年を迎える今、当ブログは、改めて原発は不要であり、全国全原発は廃炉にすべきと強く訴えたい。

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【管理人より】福島県沖震源、震度6弱の地震。とりあえずご注意を

2021-02-13 23:41:41 | 気象・地震
管理人よりお知らせです。

今夜11時過ぎ、福島県沖を震源とする震度6弱の地震が発生し、福島県の太平洋側のほとんどの地域で震度6強~6弱を記録しました。これだけの規模の地震は、2011年4月8日、東日本大震災の余震としてM7.4の地震が起きて以降では初めてだと思います。

気象庁は、この後、深夜1時過ぎに記者会見し、今回の地震の発震機構(地震のメカニズム)等について見解を示す予定です。当ブログでは、ここしばらくの間、地震の解説記事を書いていませんでしたが、今回の地震は影響が一定程度続きそうなこと、3.11から10年という節目が近づいていること等の理由から、明日、久しぶりに当ブログとしての見解を示すことにします。

これだけの規模の地震です。強い揺れのあった地域では、夜間、むやみに動き回ることはせず、夜が明けるのを待ってください。夜間に大きな余震が来る恐れがあるので、これから就寝される方は、倒れてくる恐れのある家具等のある部屋で寝るのは避け、できるだけ動いたり倒れたりするものがない場所を選んでお休みになることをお勧めします。

気象庁では、津波の心配はないものの「若干の海面変動」に半日程度気をつけるよう呼びかけています。気象庁では、20cmを超えない海面変動は津波と呼ばないルールになっていますが、海面変動の恐れがあることに変わりありません。20cm程度の海面変動でも、成人男性が踏ん張っていられないほどの水圧となる場合があり危険です。ふざけて海に入る等の行為は絶対にしないでください。

なお、当ブログでは、原子力施設での被害を想定し、今夜は久しぶりに線量計の電源を入れたまま一晩、モニタリングを行うことにします。当ブログがこのような措置を執るのは、2013年4月に北海道に転居してからは初めてです。今回の地震がそれほど大きな規模のものだということについて、ご理解いただくようお願いします。

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森喜朗の「女性蔑視暴言」が東京五輪だけでなく、自民党政権の息の根まで止めるかもしれない

2021-02-07 23:05:35 | その他社会・時事
民主党政権の無残な失敗以来、日本の市民のほとんどは「自分の生きているうちに二度と政権交代なんて起こり得ないだろう」という諦念にも似た気持ちを抱いて、安倍政権以降の10年近くを生きてきた。その証拠に、安倍政権があれだけのでたらめを続けたのに、安倍政権打倒を求める声はあっても、政権交代を求める声はまったくといっていいほどどこからも聞こえてこなかったからだ。

日本では成立の余地などないと証明された「保守二大政党制」という幻想を抱き、政権交代の夢を追い続けてきたのは、私たちのような反自民派よりもむしろ「自民党的なるもの」に飽き足りなかった保守層だったように思える。

自民党政権の終わりの予感は、菅首相が国民に自粛を強いておきながら、緊急事態宣言下、自分たちだけ連日ステーキ屋で会食をしていた年明け早々から徐々に出始めていたが、そんなことくらいで壊れてしまうほど自民党政権がもろい構造ではないことは、私たち反自民派こそ最もよく知っている。まさか、とずっと思っていた。

ところが、である。「女がいると会議が長い」という無根拠で極めて差別的な森喜朗・東京五輪組織委会長の「暴言」で、ひょっとしたら五輪のみならず、自民党政権の息の根まで止まるかもしれない。そんなムードが急速に出てきたように思える。

安倍政権以降のここ数年、ネット上の攻撃は弱者にばかり向かっていて、不毛で腹が立つことしかなかった。この間、何度「ネットを辞めよう」と思ったかわからないほどだ。それが今回、批判、攻撃が強者、それも森会長のような「本来向かうべき相手」にきちんと向かった、という意味では、久しぶりの「祭り」だと思う。瞬発力の強さという意味では昨年の黒川検事長問題をも大きく超えていて、ネットとしては2012年の「大飯原発再稼働反対官邸前20万人デモ」以来の盛大な祭りだ。

先日も、買い物に出かけたスーパーで、普段は政治の話をしようとすると遮るようなノンポリの人たちが「私たちが選挙に行かなかったからかしら。自民党以外に入れたらいいの?」と立ち話をしているのを聞いた。ネットでも「どんなに自民党政権がひどくても悪夢の民主党政権よりはマシ」と言っていた人たちが「とにかく自民はダメ。政権交代可能な野党がなくても、国民には自粛しろと言いながら自分は毎日ステーキ食ってるような奴らは一度下野させないと」「俺たち下級国民は重症でも入院できないのに、自民党関係者だけPCRをいつでも受けられ、陽性だったら無症状でも即入院できるなんて許せない」と言い始めている。安保法や黒川検事長問題の時ですらまったく政治に興味がなかった一般の人たちの間に、自民党に対する久しぶりの「懲罰感情」が芽生えているのだ。

無党派層、普段はノンポリの人たちの「懲罰感情」ほど怖いものはない。野党側に政権担当準備があってもなくても、勝手に政権が転がり込んでくる、という可能性があるのは実はこんなときだ。直近で言うと、1989年や2009年の政治情勢に似ている。1989年も「女性は政治家の講演会に来てもネクタイの柄を見ているだけで、話の内容なんて聞いていない」という中曽根康弘首相の女性差別発言が出た。ちょうど同じタイミングで、社会党が女性として初めて土井たか子さんを委員長に据えたら、ブームが起きて自民党が参院で過半数割れを起こした。反乱が女性から始まった、という点でも当時とムードが似てきている。

もうひとつ、興味深いデータを示しておきたい。



日本の経済成長率の推移を示す折れ線グラフの上に、自民党から非自民への政権交代が起きた年を入れてみた。あまりに分かりやすくて笑ってしまうほどだ。過去2回、自民→非自民の政権交代は、経済が大崩壊した直後に起きていることが分かる。

安保法や原発のような「イデオロギー色は強いけれど飯の種にはならないイシュー」で当ブログのような反自民勢力がいくら騒いでも、政権交代は結局「飯が食えなくなったとき」に起きる。自民党支持層は利権の分配に期待して支持しているのだから、経済が大崩壊して分配すべき利権が消失したときに崩壊する、という説明で大半の読者には納得していただけるだろう。コロナで経済が大崩壊している今年の総選挙で、もしかすると……と当ブログが判断するひとつの根拠がここにある。

反自民派の中には「過去2回の非自民政権の時は、経済が最悪だったのだから仕方ない」と細川、鳩山政権を変な形で擁護する人が今も時折いるが、こうした擁護論は非自民政権のためにならない。むしろ、このデータからは「経済が悪くなったからこそ非自民に政権が回ってくるのだ」と考えるべきであり、原因と結果が逆である。それだけに、次に非自民政権ができたときに成功するかどうかは「素早く効果的な経済対策を打ち出せるかどうか」こそが鍵を握っているのである。

「とりあえず国民に飯を食わせ、脱原発などのやりたい政策はその後にゆっくり考える」というスタンスで臨めば次は成功できる、と思いたいが、そうとも限らない。上のグラフには描かなかったが、1993年、2009年に政権が転がり込んできて、経済もどん底から脱出し、まさにこれからだと思っていた矢先の1995年、2011年に再び経済が「ポキッ」と腰折れするようなグラフの形になっている。1995年は阪神・淡路大震災、2011年は東日本大震災のためで、本当にツイていないと思う。この「腰折れ」が原因で、結局非自民勢力は2回とも政権を失い、再び自民に政権が戻ることになった。

この「非自民政権になると大震災が起きる」理由はわかっていないが、当ブログはとりあえず「自民党本部の中に人工地震の起爆装置がある」的な陰謀論からは明確に一線を画したいと考えている。それでは「女がいると会議が長い」と無根拠に決めつける森会長と大して変わらないからだ。

いずれにしても、衆院議員の任期は今年秋までには切れる。この秋の総選挙は、政府与党が望まない不利なタイミングでの実施を強いられる珍しい形でのものとなる。今後、どんな事態が起きるのか。自民党に単独で取って代われる強力な野党が存在していないため、2009年のような劇的な形での政権交代という事態はあり得ない。立憲民主党は当時の民主党に比べてあまりに非力すぎるからだ。

1月31日に投開票された北九州市議選(定数57)で自民が6議席減の大敗北を喫したが、6/57といえば1割強なので、これを定数465(過半数233)の衆院に当てはめると、ちょうど自民が50議席くらい減らす計算になる。現在の279議席から50減らせば229議席で、単独では過半数に達しない。公明党と合わせてようやく政権維持、維新の力まで借りてようやく政権を安定させられるくらいになる。かなり政治は面白くなると思う。

地方議会は中選挙区制なので、選挙区によっては3~4位でも当選可能だが、北九州市議選では自民がトップ当選をあまりできていない。小選挙区制はトップ以外は当選できない制度なので、北九州市議選よりもっと極端な変動が起きる可能性もある。自民が70~100議席くらい減らしたら政権を維持できないかもしれない。「野党に政権を取らせるところまでは望んでいないけれど、自民党を少し懲らしめたい」と、眠っていた無党派層が決起し、安倍政権下で行われた過去6回の選挙で55%前後だった投票率が、60%くらいに少し上がる。

東京に住んでいる人には分からないかもしれないが、地方では、熱心に自民党候補者のポスターを貼っているのはたいていは土建業者か、ホテル・飲食店・土産品店などの観光関係の自営業者らである。こうした人たちが営業自粛を強いられているのに、補償は十分もらえていない。意気消沈して「今まで熱心に応援したのに、自民に裏切られた」と感じ、彼らの中から5%くらい棄権が増えるが、それを上回る10%くらいの無党派層が自民以外に投票することで、差し引き5%程度の上昇となる。有権者としては「自民党を懲らしめる」程度のつもりだったが、小選挙区制であるために思ってもみなかった大規模な与党の議席減少が起き、自公、維新以外の議席を全部足してみたら、自公維に勝っていた。「もう一度、自公維以外の政党が力を合わせて、政権を作ってみようか」--そんな事態なら、野党第1党が非力な現状でも十分あり得る。2009年のような劇的な事態はあり得ないが、1993年のような事態ならばあり得るというのは、そういう意味である。

もし、市民のみなさんが「国民には自粛しろと言いながら自分は毎日ステーキ食ってる自民党」「俺たち下級国民は重症でも入院できないのに、自分たちだけPCRをいつでも受けられ、陽性だったら無症状でも即入院できる自民党」を許せないと思うなら、野党第1党が非力でもそこに票を集中させることだ。5~10%程度の投票率の上昇で上記のような事態は十分可能なのである。そして、その選択のときは、半年以内にやってくる。

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JR路線維持 札幌駅前「1の日行動」スピーチ

2021-02-04 23:22:00 | 鉄道・公共交通/交通政策
(当ブログ管理人も参加した2月1日の「1の日行動」の記事が北海道新聞に掲載されました。参考記事:「留萌線減便反対 札幌で署名活動 鉄路存続を求める会」2021.2.2「北海道新聞」)

みなさんこんにちは。2021年最初の、日高線沿線からの訴えです。

今、石狩地方の高教組の先生から「みなさんが通学に使っている列車がある日突然、来なくなったらどうしますか」という問題提起がありました。冗談に聞こえるかもしれませんが、これが本当に起きてしまったのが日高線です。2015年1月、線路の路盤が高波にさらわれ、列車がある日突然来なくなった。沿線住民は災害復旧を求めたのですが、JRが提案してきたのは復旧ではなく廃線でした。5年以上、ずっと私たちは復旧を訴えてきましたがJRはもちろん、地元自治体にも聞く耳を持ってもらえず、日高線は廃線が決まりました。

そんな中、廃線に最後まで反対してきた浦河町長を除く沿線6町長が、バス転換をめぐって「話が違う」「こんなはずじゃなかった」と言っている、という情報が地元の人を通じて入ってきました。この町長たちは今ごろになって一体何を言っているのか。「廃線区間が47.5kmの札沼線(北海道医療大学~新十津川)の沿線4自治体が18億もの転換交付金をJRから確保しているのに、廃線区間の距離がその2倍以上(116.0km)もある日高線のバス転換交付金がたったの25億円でまともな転換バスなんてできると思っているんですか。こんな提案を受け入れたら日高は終わりですよ。まともなバス転換などできず、確実に公共交通空白地帯になります」と私は沿線自治体への申し入れ交渉の際、直接、各町長には申し上げてきました。

そのことをちゃんと申し伝えてきたのに、人の話を聞きもせず、沿線住民にも一切情報を伝えもせず、JRと町長たちだけの密室「ボス交」で非民主主義的にすべてを決めたのは誰ですか! 「話が違う」? 違うわけないじゃないですか! 「何でこんなことになっているんだ」って……それは、あなたたちがそんな内容で合意し、調印したからですよ。あなたたちが合意し、調印したとおりの現実が目の前にある。ただそれだけの話なんです。営業担当者の口車に乗せられて、契約書も見ずに印鑑を押して、後になってからこんなはずじゃなかった、騙されたなどと言い出す。これでは、例えは悪いですがオレオレ詐欺の被害者と同じです。こんな人たちが地元住民の「代表者」の町長かと思うと、涙が出てきます。

今、私のすぐ前に発言された方から、コロナ(で鉄道がひどいことになっている、という内容)の話が出ました。鉄道会社はどこもひどい経営状態になっています。民営化以来一度も赤字になったことがなく、今までボロ儲けに儲けてきた本州3社も、例えばJR東日本ですら4700億円というものすごい赤字を出しています。2020年度の決算では、JR6社全部合計で赤字が1兆円を超えるという事態が起きるかもしれません。

1兆円と聞くと、途方もない額のようにみなさん思われるかもしれません。でも思い出していただきたいのです。旧国鉄は毎年毎年、1兆円の赤字を出していました。それでもローカル線は廃止もされず走っていました。たったひとりの高校生、たったひとりのお年寄りを学校や病院に送り届けるために。そのことに不満を言う人もまったくいなかったわけではないものの、今の時代では考えられないほど少なかった。なぜなら国鉄は公共交通であり、「コモン」(=共有物)だという合意が国民みんなの中にあったからです。

私たちが今、しなければならないのは赤字黒字の議論ではありません。この公共、コモンという考え方、黒字だからではなく公共だから、コモンだからきちんと残していくんだという合意を、国民のみなさんで足下からきちんと議論し、再建していく。そのことなくして鉄道を残し、発展させていくことは決してできないと私は思います。

今日は私からみなさんに報告があります。私企業の利益のために走り、儲からなかったら廃線にする。そうしたJRというあり方を、公共、コモンという新しい形に変えるため、安全問題研究会は今回、JR再国有化法案をみずから作成し公表しました。日本鉄道公団法案という名称で、会のホームページにも載せています。私はこの法案を今の通常国会に提出させるつもりで作りました。このまま国会が無修正で通してくれれば、5年後にはJRの再国有化が成る。利益のために儲からない路線を切り捨てるJRから、公共のために走る日本鉄道公団に、もう一度生まれ変わるための法案です。この法案提出、そして成立に向けて頑張る決意を表明して、私からの訴えを終わります。

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