人生チャレンジ20000km~鉄道を中心とした公共交通を通じて社会を考える~

公共交通と原発を中心に社会を幅広く考える。連帯を求めて孤立を恐れず、理想に近づくため毎日をより良く生きる。

当ブログのご案内

当サイトは列車の旅と温泉をメインに鉄道・旅行を楽しみ、また社会を考えるサイトです。

「あなたがすることのほとんどは無意味でも、あなたはそれをしなくてはなりません。それは世界を変えるためではなく、あなたが世界によって変えられないようにするためです」(マハトマ・ガンジーの言葉)を活動上の支えにしています。

<利用上のご注意>

当ブログの基本的な運営方針

●当ブログまたは当ブログ付属サイトのコンテンツの利用については、こちらをご覧ください。

●その他、当サイトにおける個人情報保護方針をご覧ください。

●当ブログ管理人に原稿執筆依頼をする場合は、masa710224*goo.jp(*を@に変えて送信してください)までお願いします。

●当ブログに記載している公共交通機関や観光・宿泊施設等のメニュー・料金等は、当ブログ管理人が利用した時点でのものです。ご利用の際は必ず運営事業者のサイト等でご確認ください。当ブログ記載の情報が元で損害を被った場合でも、当ブログはその責を負いかねます。

●管理人の著作(いずれも共著)
次世代へつなぐ地域の鉄道——国交省検討会提言を批判する(緑風出版)
地域における鉄道の復権─持続可能な社会への展望(緑風出版)
原発を止める55の方法(宝島社)

●管理人の寄稿
規制緩和が生んだJR事故(国鉄闘争共闘会議パンフレット「国鉄分割民営化20年の検証」掲載)
ローカル鉄道に国・自治体・住民はどう向き合うべきか(月刊『住民と自治』 2022年8月号掲載)
核のない未来を願って 松井英介遺稿・追悼集(緑風出版)

●安全問題研究会が、JRグループ再国有化をめざし日本鉄道公団法案を決定!

●安全問題研究会政策ビラ・パンフレット
こんなにおかしい!ニッポンの鉄道政策
私たちは根室線をなくしてはならないと考えます
国は今こそ貨物列車迂回対策を!

東電刑事訴訟、東京高裁での控訴審開始が11月2日に決定

2021-06-30 21:35:30 | 原発問題/福島原発事故刑事訴訟
東電旧経営陣の強制起訴 2審は11月から(NHK福島ニュース)

-------------------------------------------------------------------------------
福島第一原発の事故をめぐり、強制的に起訴され1審で無罪を言い渡された東京電力の旧経営陣3人の2審の裁判が、ことし11月から始まることになりました。

東京電力の▽勝俣恒久元会長(81)、▽武黒一郎元副社長(75)、▽武藤栄元副社長(71)の3人は、原発事故をめぐって検察審査会の議決によって業務上過失致死の罪で強制的に起訴され、無罪を主張しています。

1審の東京地方裁判所はおととし9月、「巨大な津波の発生を予測できる可能性があったとは認められない」などとして3人全員に無罪を言い渡し、検察官役の指定弁護士が控訴しました。

東京高等裁判所は2審の裁判について、ことし11月2日に1回目の審理を開くことを決めました。

指定弁護士はすでに控訴の理由をまとめた書面を提出していて、「1審判決は、万が一にも事故を起こしてはならないという社会通念にも著しく反する」などと主張しています。

1審判決から2年余りの準備期間を経て、改めて旧経営陣の責任を問う裁判が開かれることになります。
-------------------------------------------------------------------------------
東電強制起訴、11月に控訴審 福島原発事故巡り、旧経営陣3人(共同)

 東京高裁は28日、福島第1原発事故を巡り業務上過失致死傷罪で強制起訴され、一審で無罪となった東京電力の勝俣恒久元会長(81)ら旧経営陣3人の控訴審初公判を11月2日に開くと明らかにした。他の2人は武黒一郎元副社長(75)と武藤栄元副社長(71)。刑事責任の有無が改めて審理される。

 2019年9月の一審東京地裁判決は、国が02年に公表した国の地震予測「長期評価」の信頼性を否定。「津波を具体的に予見し、対策工事終了まで運転停止すべき法律上の義務はなかった」として、3人を無罪とした。

 検察官役の指定弁護士は控訴趣意書で、一審判決の判断は誤りだと主張している。
-------------------------------------------------------------------------------

東京第1検察審査会の起訴相当議決による強制起訴を受け、始まった東京電力旧経営陣3人の刑事訴訟は、2019年9月、東京地裁が全員無罪の判決。検察官役の指定弁護士が東京高裁に控訴した後はしばらく動きがなかったが、このたび、控訴審(第1回公判)が11月2日に行われることが決まった。

これを受け、福島原発告訴団・福島原発刑事訴訟支援団は7月上旬にも、現場検証を求める署名を第1次集約し、提出する方向とのこと。まだ署名していない人はできる限り早めに行ってほしい。

ネット署名……東電元会長らの強制起訴事件「福島原発刑事裁判」で 東京高裁の裁判官に現場検証を求めます。

しかし、当ブログ管理人が疑問に思うのは、福島県地元紙・福島民報、福島民友がこの控訴審決定をまったく報じていないことだ。自分の県で起こった事故なのに、東京の裁判所で行われる東京の企業の裁判だから関係ないと思っているとしたら、地元紙としての役割を放棄しているといわざるを得ない。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

戦没者の遺骨を埋め立てに使って新基地を作る「暴挙」が沖縄で進行中

2021-06-27 17:53:06 | その他社会・時事
沖縄県・名護市辺野古沖合で、普天間基地の「移設」として新基地建設が進められている。その実態は「移設」などではなく新基地建設そのものだが、あろう事か、その新基地建設のための沖合の埋め立てに、沖縄戦で亡くなった人の遺骨が混じった土砂を使うという、今までにない「暴挙」が行われている。そのことを取り上げたTBS「報道特集」(6/19放送)の動画がYoutubeのTBS公式チャンネルにアップされたので、ご紹介する。

番組に登場する具志堅隆松さんは、沖縄で戦没者の遺骨収集活動を続けてきた。当ブログ管理人は、その具志堅さんの話を先日、Zoomで聞く機会があったが、「世の中に、絶対に間違っていると言い切れる話というのは滅多にないが、これは人として絶対に間違っていると言い切っていい」という具志堅さんのお話が強く印象に残った。今、具志堅さんは、終戦記念日に靖国神社前に立ち、戦没者遺族の人々に向かって直接、この不当性を訴える活動をすることも検討中という。これは左右のイデオロギーの問題ではなく、人道上の問題として、いわゆる保守的な立場の人たちにも共感を得られる活動になると思う。

まもなく沖縄慰霊の日 戦没者の遺骨守る闘い【報道特集】

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

日本の後進性を余すところなく暴露した東京五輪「万歳」! 強行開催すれば「先進国・日本」の墓場だ

2021-06-25 21:12:15 | その他社会・時事
(この記事は、当ブログ管理人が月刊誌「地域と労働運動」2021年6月号に発表した原稿をそのまま掲載しています。)

 ●暴かれた後進性

 冗談だと思っていた東京五輪の強行開催が現実のものになってきた。世論調査で8割の国民が反対し、海外メディア、それも日頃は同盟国の立場である英米メディアからも再三にわたって中止勧告を受けながら、それらをすべて無視しての開催だ。菅義偉首相は先のG7(先進7カ国首脳会議)で「すべての首脳から開催支持を取り付けた」と主張するが、各国首脳が表明したのは日本の「開催に向けた努力」への支持であり、開催そのものへの支持ではないことは何度でも強調しておかなければならないだろう。

 もっとも、こうなるかもしれないという予感はなかったわけではない。1936年ベルリン五輪はナチスドイツ支配下で開催され、開会宣言はアドルフ・ヒトラーが行った。一部の超優秀なユダヤ人選手が国威発揚のためドイツ選手団に加えられる一方、「その他大勢のユダヤ人」が毎日大量にガス室送りとなっているすぐ隣で、五輪旗がスタジアムに平然と翻り続けた歴史を持つ。そんな悪魔の祭典としての五輪が「たかがコロナごとき」で止まる合理的な理由が思いつかないからである。加えて、日本と日本人の底流を支配する、一度決めたことからは何があろうと撤退できない心性は、退却ができないまま各地で「玉砕」を続けた旧日本軍以来変わっていないからだ。

 東京五輪に1つだけ評価すべき点があるとすれば、日本の後進性を世界に向けて徹底的に暴露したことだろう。2020年1月に始まった新型コロナ感染拡大と五輪をめぐる一連の騒動で、もはや日本を先進国だと思っている市民はほとんどいなくなったように思える。仮にも世界3位の経済大国が自国でワクチン生産もできず、接種率は5月18日時点で3.8%。OECD(経済協力開発機構)加盟国で最低レベルであり、OECD外に広げても、インド(10.4%)やインドネシア(5.1%)にも及ばない。世界では110位前後であり、ミャンマーやマレーシア、ナミビアなどアジア・アフリカの途上国と同水準である。

 五輪準備過程では森喜朗・前東京五輪組織委会長の「女性が会議室にいると会議が長い」という差別発言があった。お笑い芸人・渡辺直美さんを豚に見立てて「オリンピッグ」などと侮蔑する演出案を、演出担当者が冗談半分とはいえグループ通信用スマホアプリ「LINE」に残る形で発言し、辞任に追い込まれたことも記憶に新しい。

 世界経済フォーラムが毎年公表しているジェンダーギャップ指数は、最近は日本国内でも一般報道される機会が増え、認知されてきたが、今年3月に公表された2021年版によれば、日本は世界156カ国中120位。とりわけ「政治」部門は惨憺たるもので、147位とついにワースト10入りした。当然、日本より下は9カ国だけ。限られた本誌の紙幅の中でも列挙できるので並べておくことにしよう。カタール、ナイジェリア、オマーン、イラン、ブルネイ、クウェート、イエメン、パプアニューギニア、バヌアツ。ほぼすべてが中東・アフリカのイスラム圏か、部族主義政治体制が続く南太平洋諸国である(注1)。

 この間、一律10万円の給付金をめぐって自治体窓口に長蛇の列ができたり、ワクチン接種のためのスマホアプリが機能せず混乱が続いたりするなど、日本のIT後進国ぶりも浮き彫りになった。ジェンダーもITもワクチンも後進国となる一方で、日本が先進国と呼べる分野がどこかにあるだろうか。少なくとも筆者にはまったく思い当たらない。

 ●海外メディアから「独裁国家」認定された日本

 そもそも日本はなぜこんな惨状に陥ってしまったのか。スウェーデン・ルンド大学のある日本研究者は「仮に私がオリンピック選手だったらまだトレーニングをやめることは絶対にないだろう。なぜなら、大会を中止するか続行するかの判断は、感染率という単純な問題ではないからだ。ここで疑問に思うのは、世論が本当に重要なのかということだ」と前置きした上で、次のように指摘する(注2)。「日本は投票率が極めて低い国だ。選挙制度の特殊性もあり、自民党は政権を維持するのに有権者の過半数に近い数字を獲得する必要がない。前回の総選挙では、わずか25%の有権者しか自民党に投票しなかったにもかかわらず、自民党は60%の議席を獲得した。つまり、世論は重要だが、決定的なものではないということだ。一部の野党リーダーはオリンピックに反対しているが、全体的に野党は弱く、分裂している。自民党は過去65年間のうち61年間政権を維持しており、国内の主要な問題について世論を無視しても再選を果たしてきた長い歴史がある。菅首相の視点では、国内の世論というのは複雑な方程式の中の1つの要素に過ぎない」。特殊な選挙制度のために国民の4分の1の支持だけで1党優位を維持できる自民党にとっては、民主主義国家なら本来最も重視されるべき「民意」もせいぜいチェスの駒の1つに過ぎないということである。

 東京五輪が日本社会の抱える危機を象徴しているという、もっと端的な指摘は日本国内からも出ている。近現代史研究家の辻田真佐憲さんは「五輪開催に固執すればするほど、日本は先進国としての威厳を失い、世界に恥部をさらし続けています。こうした状況の国を、先進国と呼んでいいのか疑問です。日本は五輪という名前の「先進国としてのお葬式」を執り行う段階にまで突き進んだのです」として、五輪が「先進国としての日本」のお葬式になると痛烈に批判する(注3)。確かに、新型コロナ感染拡大以降の日本には「終末感」「絶望感」「閉塞感」が漂っていて、打開の道もなかなか見えてこない。

 東京五輪の開催強行がどうしても避けられないなら、辻田さんの指摘を受け、筆者からひとつだけ提案がある。開会式の演出を「先進国・日本の葬儀」に変更してほしいのだ。「先進国・日本」と書いたシャツを着た日本人とおぼしき人形をみんなで納棺し、僧侶が読経する。その後は彼(彼女かもしれない)をみんなで荼毘に付す。BGMはもちろん「葬送行進曲」にして、厳かに執り行う。そして、「この大会の閉会後、日本は先進国ではなくなるので、先進国としての経済援助や政治的立ち振る舞いを我が国に期待しないでほしい」と宣言するのだ。

 1964年の東京五輪が、戦災から「復興」した日本が先進国の仲間入りをする歴史的地点に立っていたとするならば、今回の東京五輪はそれとは逆に日本が先進国としての終わりを告げる歴史的地点に立っていることの象徴として開催されるべきである。東京五輪に反対していた人たちを含め、開催強行を前提とするなら国民の「総意」を得られるほとんど唯一の方法だろう。

 ●独裁国家と五輪をめぐる奇妙な「法則」

 自民党が全有権者のわずか25%の票で議席の6割を独占する「特殊な選挙制度」を持つ日本を半独裁国家であるとする海外メディアの論評が出ていることはすでに述べたが、独裁国家と五輪をめぐっては奇妙な「法則」がある。1党独裁国家が五輪を開くと、少なくない確率でその国家と独裁政党は概ね10年後に崩壊、消滅しているのだ。

 冒頭に紹介したナチスドイツは開催から9年後の1945年に敗戦で滅亡した。ソ連によるアフガニスタン侵攻に抗議する西側諸国のボイコットの中でモスクワ五輪が開催されたのは1980年だが、国力を衰退させたソ連は11年後の1991年に解体する。1984年、ユーゴスラビアは、連邦を構成する6共和国の1つであるボスニア・ヘルツェゴビナ共和国の首都サラエボで冬季五輪を開催したが、その後、国家は民族主義の台頭で激しく動揺。血で血を洗う凄惨な内戦の末、1995年までに解体。独裁政党・ユーゴスラビア共産主義者同盟も運命を共にした。ナチスドイツに占領されながらも、外国勢力の手を借りず、独力で対独パルチザンを組織し国土を解放、戦後はソ連による乱暴な政治的干渉をはねのけ、コミンフォルム(欧州共産党・労働者党会議)からの除名という処分を受けながらも、第3世界の旗手として存在感を発揮したチトー大統領に率いられたユーゴスラビア共産主義者同盟ですら、五輪による国力衰退に屈したのである。

 もちろん、2008年に北京五輪を開催した中国共産党は10年後の2018年を過ぎても残存しており、すべての独裁政党がこの法則に当てはまるわけではない。だが、歴史を「総合的、俯瞰的」に眺めると、五輪開催で滅亡した1党独裁政党には共通点があることに気づく。破竹の勢いだったヒトラーに陰りが見え始めた段階で五輪を開催したナチスドイツ、ブレジネフ時代の長い政治的・社会的・経済的低迷の時代を経て国力に陰りが見え始めた状態で五輪を開催したソ連、チトー亡き後の長い混乱と低迷が続いた後で五輪を開催したユーゴスラビア。いずれにも共通しているのは、国力が衰退し始めてから五輪を開催しているという点である。したがって筆者は「衰退に入った1党独裁国家が五輪を開催すると、概ね10年後にその独裁政党は滅亡する」に一部修正の上、この法則が適用できるのではないかと思っている。

 この「法則」は日本と自民党には当てはまるだろうか。「失われた20年」と呼ばれる長い社会的低迷の後の開催であること、過去30年で労働者の賃金が上がっていないほとんど唯一の国であること、老人支配が横行し、若者や女性が希望を失っていることなどを考えると、どうやら適用できそうな気配が濃厚だ。

 本誌読者を初め、日本の市民のみなさんは、東京五輪が強行開催されても「また負けた」「結局いつもと同じ」「何も変わらなかった」と落胆しないでほしい。私の見立てたこの法則通りなら、10年後、自民党もナチスドイツ、ソ連共産党、ユーゴスラビア共産主義者同盟と同じ運命をたどる。今までどんなに歯を食いしばって頑張っても自民党に邪魔されて実現できなかった政策を、そのとき思い切りやろう。だから読者のみなさんもあと10年長生きし、「自民党のない日本」が到来したら実現したいことを、ぜひ政策集にまとめておいてほしい。

注1)日本はいよいよ「後進国」に…世界が驚いた「男女格差の深刻実態」「156ヵ国中120位」を考える(「現代ビジネス」2021年4月9日付記事)

注2)海外メディアが指摘「選挙に負けない自民党は『国民の声』を聞いて、五輪を中止する理由がない」(「クーリエ・ジャポン」2021年5月29日付記事)

注3)辻田真佐憲「日本の『後進国』ぶりが世界中に暴露される五輪になる」(「週刊朝日」2021年3月26日付記事)

(2021年6月20日)

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

静岡県知事選、現職・川勝氏4選 今こそリニアを粉砕せよ

2021-06-22 20:10:24 | 鉄道・公共交通/交通政策
静岡知事選、川勝氏が4選 リニア着工は引き続き困難に(朝日)

20日投開票された静岡県知事選で、現職・川勝平太氏が4選を決めた。2014年10月に事業認可を受けて以来、早くも6年半。大井川からの水問題をめぐって事実上膠着状態にある中央リニア新幹線事業の先行きはますます不透明になった。

大きな貯水用ダムのない静岡県にとって、大井川から流れる水は生命線だ。リニア新幹線「南アルプストンネル」が現状の実施計画のまま着工された場合、静岡県民の水がめである大井川からの流量は毎秒2tも減少するとしたデータがある。1分間当たり120t、1時間に7200t。1日にすると17万2800t。一昨年夏の大水害の際に話題を呼んだ群馬県・八ッ場ダムの貯水量が1億750万m3(=1億750万t)だから、満水状態の八ッ場ダムの水が1年9か月で涸れてしまうほどの水量減少に当たる。「たかが2t、されど2t」であり、静岡県民の怒りももっともだ。

JR東海の静岡県に対する姿勢は不誠実で、静岡県民のみならず、当ブログ・安全問題研究会の我慢の限度をも超えている。当初、JR東海は水は涸れないと主張した。水涸れの恐れが明らかになってくると、今度は工事を実施して減った分の水を全量戻すと主張を変える。それも難しいとわかると、やっぱり全量は戻せないと言い出した。約束が違うと静岡県が指摘すると、今度は山梨県側に水は戻っているので約束違反ではないと言い繕う。東京電力、原子力ムラも真っ青の虚言集団、それがJR東海だ。こんなウソにウソを重ねておいて、今さら信じてくれなどとは馬鹿にするのもいい加減にしろと言いたい。JR東海は、寝ぼけているなら工事予定地の冷たい湧き水で顔でも洗って出直すべきだろう。

リニアをめぐって、先日、当ブログ管理人はJR東海の内部関係者から重大情報を入手した。取材源は明かせないが、きわめて信頼できる消息筋である。まだ工事に着手してもいない名古屋~大阪間について、その人物がJR東海のある経営幹部に「どうするつもりですか」と尋ねたところ、「会社としては、まだ白紙」との回答があったというのだ。

葛西敬之・JR東海名誉会長の個人的野望に過ぎないリニアに付き合わされるのは御免だ、というムードがJR東海の現役経営陣の間にも出てきているように感じられる。昨年末に出版された「超電導リニアの不都合な真実」(川辺謙一・著、草思社)では、リニアが試験走行中に突然、電磁石の磁気が抜ける「クエンチ」という現象が起き、これに対する抜本的な対策方法もないままJR東海が隠しているのではないか、という疑惑が指摘されている。本来ならその程度の技術的課題は事業認可前に解決しておくべきことだ。事業認可から6年半過ぎ、一部区間では工事も始まっているこの段階になって、リニアが「技術的に実現可能なのか」などという「そもそも論」が提起されること自体がおかしい。JR東海は事業の実施主体としてこの疑問に答える義務があるし、ましてや、こんな状況で3兆円もの巨額資金を、法律改正までして国がJR東海に貸し付けるのは、誤解を恐れず言えば官民合作の詐欺に等しい。

財務省のホームページには、一般市民が財務省の政策について自由に質問できるメールフォームがある。今年1月3日、当ブログ管理人は、JR東海に対する3兆円の財政投融資について、以下の通り質した。

-------------------------------------------------------------------------------
※ ご意見・ご要望の分野
 財政投融資

※ 件名
 リニア新幹線事業における財政投融資資金の使い方について

※ ご意見・ご要望
 JR東海が進めているリニア中央新幹線事業において、鉄道・運輸機構を財政投融資資金の受入可能団体にできるよう法改正が行われ、鉄道・運輸機構を通じて3兆円の資金がJR東海に貸し付けられています。

 JR東海は、もともと自己資金で東京~名古屋間を建設し、自己資金が回復してから名古屋~大阪間を建設する計画でしたが、名古屋~新大阪間の建設を前倒ししてほしいとの要望が関西地方から出たために、今回の財投貸付になったと報道されています。

 こうした経緯から、財投資金は名古屋~大阪間の工事のために使われるものと理解していたのですが、2018(平成30)年版のJR東海のアナリスト向け決算説明資料によれば、「中央新幹線の建設に係る費用は財投資金から先に充当」と説明されています(このリンク先資料のPDF14ページ中、13ページにそのことが記載されています)。

 このような財投資金の使い方ができるのであれば、JRのような公共性の強い会社は、自己資金=内部留保を温存しておくことで、財投資金の貸し付けを受けなかった場合に比べて、株主に高い配当を実施することができるようになります。このような財投資金の使い方が、貸付目的に照らして正当といえるのかどうかについて、見解をお聞かせください。
-------------------------------------------------------------------------------

これに対する財務省からのメール回答(今年1月14日付)は、以下の通りだ。

-------------------------------------------------------------------------------
 財務省ホームページへのアクセスありがとうございます。

 1月3日にお寄せいただきましたご質問にお答えいたします。

 リニア中央新幹線に対して、財政投融資を用いて行った貸付は、品川—名古屋間の工事について必要となる金額(3兆円)を融資するものであり、品川—名古屋間開業後、名古屋—大阪間の工事にJR東海が速やかに着手することが可能となることで、全線開業の前倒しを図るものです。

 今後とも、財務行政につきまして、ご理解とご協力を賜りますよう宜しくお願いいたします。
-------------------------------------------------------------------------------

要するに、「名古屋~大阪間の工事を前倒しするには、品川~名古屋間の工事を早めることが必要であり、そのために貸すのだから目的違反ではない」というもので、典型的官僚答弁だと思っている。こんな屁理屈がまかり通るなら、誰にでも、どんな目的でも財投資金を貸し出せることになる。

リニアをめぐっては、無理が通れば道理引っ込むのことわざ通り、もはやでたらめしか存在していないと言ってよい。長年、ウソ、ごまかし、はぐらかし、隠蔽、改ざんの見本市のような電力会社と原発問題をめぐって対峙してきた当ブログにとって、JRグループ各社はそれに匹敵するウルトラペテン師集団である。こんなでたらめが大手を振ってまかり通るのも、葛西「不名誉会長」が安倍前首相とズブズブのオトモダチだからである。葛西名誉会長をめぐる人間関係については、月刊誌「ZAITEN」2020年2月号が詳しく報じているので、期間限定でアップする。この実態を多くの人に知っていただきたいと思う(「ZAITEN」は以前、「財界展望」と呼ばれていた。古い読者にはこの名前のほうが通りがいいかもしれない)。驚くことに、今回4選を果たした川勝知事もかつては葛西名誉会長の取り巻きの1人だったのである。

葛西名誉会長といえば、当ブログ・安全問題研究会を古くから知る人にとっては改めて説明するまでもなかろう。東大生時代、葛西氏は、自分が落とした定期券が届けられていた国鉄の駅で「東大生なら、国鉄は出世が早いですよ」と言われて就職先を国鉄に決める。そんなエピソードがあるほど志の低い出世主義者だ。国鉄分割民営化の暴風が吹き荒れる中で、職員局長として国鉄職員10万人の「人員整理」(=首切り)と「労務対策」(=国労潰し)に直接関わった。その「功績」を認められ、全国の警察をコントロールする国家公安委員会の委員在任中、2010年9月2日に開催された定例会では、ヘイト集団「在特会」を「このグループについては、『極右』と呼ぶべきものではないと思う。事前に、よく実態を知り、適正に評価することが大事なのではないかと思う」として持ち上げる発言までしている。

これで、葛西名誉会長がどんな人物か、ほとんどの読者のみなさんにもご理解いただけたと思う。志の低いブルジョア的出世主義者にして、国鉄労働者の大量解雇と労働運動潰しを行った労働者階級人民の敵。ヘイト集団を天まで持ち上げ賞賛する右翼ファシスト。静岡県民に多大な犠牲を強いてまでリニアを強行しているのは、つまるところこういう人物である。このことだけでも、リニアは直ちに中止されるべきである。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【管理人よりお知らせ】原発問題資料集に「今後の脱原発、脱炭素に向けて」を掲載しました

2021-06-14 23:09:53 | 原発問題/一般
管理人よりお知らせです。

安全問題研究会サイト内の「原発問題資料集」に「今後の脱原発、脱炭素に向けて」を掲載しました。PDF版のみです。

今年3月、福島原発事故10年に当たって、当サイト管理人を「原発事故からもう(まだ)10年 福島の現状とこれから」講演にお招きいただいた札幌市の市民団体の内部で、今後のエネルギー政策を検討する一助となるよう作成したものです。本来は会議資料として作成したものですが、新型コロナによる緊急事態宣言で公共施設が閉館され、会議が相次いで中止となるなどで公表機会が失われたことから、ここに掲載することにしました。

発電技術が確立していても蓄電と供給に不安が残る再生エネルギーに多くの期待をかけることは危険であり、また外国と陸続きでもないため、ヨーロッパ諸国のような形で外国からの電力供給を受けることも困難な日本で脱原発、脱炭素を同時実現するためには、さらなる省エネルギーが最も効果的と結論づけています。脱原発と脱炭素を同時に実現なんて、そんな困難な課題をどうすれば実現できるのかと途方に暮れている人にとって、この資料は多くの示唆を与えてくれると思います。

東京電力管内に限って言えば、福島原発事故の2012年~2019年までのわずか7年で22%も電力販売量が減少しています。この間、日本の人口は横ばいなので、これだけ大幅な省エネを企業・家庭の節電努力だけで実現したことになります。菅政権が打ち出した脱炭素の目標年度は2050年なので、まだ30年もあります。電力需要削減イコール炭素排出量削減とみなせるのであれば、7年で22%の省エネを実現した東京電力管内と同じペースで省エネを進めた場合、日本は50%の炭素排出量削減を20年弱で達成できることになります。遅くとも2040年までにはこの目標は達成され、石炭火力発電に頼る必要はなくなります。

この省エネには人口減少による影響を考慮していません。今後、日本の人口減少は加速し、2030年には現在の1割減、2050年には最大で23%も減少することが見込まれます。国のエネルギー基本計画では原発の比率を20~22%としていますが、人口が23%減れば、それだけ電力需要も減るので、この原子力分も不要になります。

この時点で、脱原発、脱炭素は両方とも実現できます。この資料は、それを裏付けるデータとしてお読みください。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【管理人よりお知らせ】東京電力刑事訴訟;東京高裁に現場検証を求めるオンライン署名にご協力ください

2021-06-13 09:12:28 | 原発問題/福島原発事故刑事訴訟
管理人よりお知らせです。

福島原発告訴団/福島原発刑事訴訟支援団では、このたび、東京高裁に現場検証を求めるオンライン署名を開始しました。

世界最悪レベルの原発事故を起こした東京電力の事故当時の経営陣(勝俣恒久元会長、武藤栄・元副社長、武黒一郎・元副社長)に対しては、東京第1検察審査会による2度の「起訴相当」議決を受けて強制起訴され、東京地裁で裁判が進められてきました。福島原発告訴団/福島原発刑事訴訟支援団に結集した被害者は、「多くの人が強制避難で故郷を失い、避難できなかった人が死亡し、放射能汚染で生業を失った大事故の責任を、誰一人取らないような日本社会であってはならない」との思いから有罪判決を繰り返し求めてきましたが、2019年9月、東京地裁は全員に無罪という信じがたい判決を下しました。日本の「無責任体質」は、司法をも大きく蝕んでいます。

検察官役の指定弁護士が控訴し、今後、東京高裁で控訴審が始まることになっています。控訴審の日程は現在、決まっていませんが、福島原発告訴団/福島原発刑事訴訟支援団では、東京高裁が福島被災地や福島原発敷地内などを現場検証するよう求めています。東京地裁は、指定弁護士側が行った現場検証の要求を却下しましたが、「事件が会議室で起こっているのではなく現場で起こっている」以上、刑事裁判で裁判官が現場を見ずしてどうして正しい判断が可能になるでしょうか。

東京電力の株主が会社の経営責任を問う「東電株主代表訴訟」では、東京地裁の裁判官らが福島第1原発の敷地内の現場検証を行うことを決めました。帰還困難区域など原発「周辺」の裁判所による現場検証は、避難者が起こした民事訴訟で前例がありますが、原発敷地内まで裁判官が立ち入るのは東電株主代表訴訟が初めてのことで、画期的意義があります。

東京電力の刑事裁判は、被害者への賠償を審理する民事訴訟とは異なり、事故そのものの刑事責任を問うものです。発生原因の精査が必要な刑事裁判でこそ原発敷地内の現場検証が必要と考えます。オンライン署名は、東京高裁にその現場検証を求めるためのものです。ぜひ多くの人の賛同、ご署名をお願いします。

東電元会長らの強制起訴事件「福島原発刑事裁判」で 東京高裁の裁判官に現場検証を求めます。--Change.org

-------------------------------------------------------------------------------------
<参考記事>福島第1原発、裁判長ら視察へ 東電株主代表訴訟(日経)

福島第1原発事故を巡る東京電力の株主代表訴訟で、東京地裁は1日、裁判長らが原発の敷地内を視察すると決めた。事故の責任が争われた刑事、民事の裁判ではこれまで、原発周辺を視察したことはあるが、裁判官が敷地内に入るのは初めて。

原告側によると、視察は10月を予定している。

1日に非公開で開かれた進行協議で、朝倉佳秀裁判長は「東電取締役の過失について判断するため現場を見たい」と理由を説明した。

原告側は訴訟で、福島第1原発の原子炉が海岸に近く、標高も低い場所にあり、立地条件に問題があったと主張。津波を防ぐ水密化の構造にも欠陥があったとして、現地視察を求めた。被告の東電経営陣側は、必要ないと反論していた。

原告側は協議終了後、東京都内で記者会見し「百聞は一見にしかずだ。立地状況や構造的欠陥を直接体感してもらうことは、非常に意味がある」と話した。

東電の旧経営陣3人が強制起訴された刑事裁判では、一審で検察官役の指定弁護士が裁判官による現場検証を求めたが、実現しなかった。〔共同〕

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

大阪メトロ「2020経営計画」に意見を求められたので、返信しました

2021-06-01 20:33:28 | 鉄道・公共交通/交通政策
当ブログ管理人は、先日、「大阪市の大阪メトロ(旧大阪市営地下鉄・バス)は、要員全体の1/5を削減するという大合理化計画を発表しています。ホーム要員(駅勤務)、乗務員の大幅削減を計画しています。アドバイス等いただければ幸いです」と大阪在住の知人から意見を求められた。昨年末に大阪メトログループが公表した「2018-2025年度 中期経営計画(2020年12月改訂版)」のことである。

その人は、大合理化を何とかして止めたいという思いはあるものの、鉄道・公共交通にはまったく詳しくないので、以下の通り返信を送った。ここを読んでいる方にとっては参考になることもあるかもしれないので、私信とはいえ、転載しておきたい。

----------------------------------------------------------------------------------
大阪メトロの経営計画を読んで、いくつか気づいた点など……

1.経営計画全般について

まず、今後成長の見込めない鉄道(地下鉄)事業の赤字を駅ナカ事業で埋める、としていますが、これはコロナ前までは有効なモデルではあっても、今回のコロナで完全に破たんしました。

「密」がダメというのに、駅ナカでどうやって稼ぐつもりなんでしょうか。

人を密集させてボロ儲けしていく、という経営形態自体が「遅れた新自由主義鉄道経営モデル」です。極度の過密を前提とした、コロナ前でも日本でしか成立し得ない歪な経営モデルでした。

その過密前提、「三密」前提、日本でしか成立していなかった新自由主義経営モデルがコロナで最終的に破たんしているのに、今からそこに突っ込んでいこうというのですから、大阪メトロ当局の時代変化への鈍感さには呆れ返ります。

2.駅のバリアフリー問題について

東京メトロにも同じことが言えるのですが、大阪メトロも駅のバリアフリー化はまったく進んでいません。比較的利用客数の多い駅でも階段だけしかない駅が多く、エレベーターはあってもどこにあるのかわからないケースも少なくありません。

先日、私が東三国駅から地下鉄に乗ったときも「駅がこんな状態では、もし自分が車椅子生活になったらどこへも行けないな」と思ったものです。今でさえそんな状況なのに、駅員も車掌も減らす? むしろ両方とも増やすべきです。

(東京メトロに関しても同じ状況です。こんな状況でオリンピックはともかく、パラリンピックを開こうなんて……たとえコロナがなかったとしても、恥ずかしくて普通なら考えられません。)

3.MaaS(マース)について

MaaSについては、これさえ導入すれば公共交通を覆っている暗雲はすべて消え、バラ色の未来が待っているかのような極端な推進論が横行していますが、これ自体は「鉄道、バス、飛行機などバラバラだった公共交通機関の予約や発券、接近・到着案内などのシステムを一元化して、たとえばスマホアプリ等で手軽に利用できるようにしよう」というだけのものです。

推進派が唱える過大な期待はもちろん、一般市民が抱くわずかばかりの期待すら、おそらく裏切られると思います。

MaaSのような施策は、単純に「安上がりでやってる感だけは出せる」というシロモノに近く、最近の政治・行政の空洞化を象徴しています。たとえ鉄道・バス・飛行機の予約がスマホアプリ1つで簡単にできるようになったとしても、駅に行っても車椅子を抱えてくれる駅員もいない、エレベーターもない、ローカル線はどんどん廃止・減便されるという状況でそれが何の意味を持つでしょうか。

行政が出してくる(いかにも新自由主義者お好みの)安っぽいデジタル化の裏に利用者、安全切り捨てがある、ということを指摘しておきたいと思います。

今、大阪メトロがやるべきことは、エレベーターひとつ満足に整備されていない駅を改修し、交通弱者が弱者にならないですむような「中身の伴った公共交通」にすることです。

MaaSは今、一部学者や自称「交通評論家」「交通ライター」等を巻き込んで推進の動きですが、本質が伴わず無内容であることはいずれ一般市民にも発覚するでしょう。維新としては、それまでに何とかごまかし、逃げ切れればいい、ということなのかもしれません。

4.オンデマンドバスについて

経営計画24ページに大阪シティバスのオンデマンドバス化を示唆するような記述があります。オンデマンドバスもMaaSと並んで新自由主義者が大好きな公共交通形態で、彼らは「呼べばいつでも来てくれるので待ち時間がなくなります」などと吹聴します。しかし、彼らのその宣伝を信じると、とんでもない目に遭います。デマンドバスは「一番来てほしいときには呼んでも来ないバス」なのです。

公共交通は文字通り公共財なので、最大需要に合わせて供給体制を整えなければなりません。たとえば、始発から終点まで1時間かかる路線で、バスの最大定員が50人であるときに、朝夕のラッシュアワーに最大500人の需要が発生するとなると、バスは最低でも1時間に10台必要です。

しかし、ラッシュが終わった昼間に50人の需要しかない場合、10台のうち9台は車庫で遊んでいることになりますが、新自由主義者はこれに「無駄」だと難癖を付けます。「大半の時間、遊んでいるバスの維持費がもったいない」と言い出します。

バス会社はこれに抗しきれず、バスの所有台数を減らします。そのうち「乗客がいないのに空気だけ乗せて走らせるのは無駄。乗客がいるときだけ運行すればいい」と言い出します。そこで「呼べばいつでも来るバス」としてデマンドバス化が始まります。

察しの良い方はここで気づくと思いますが、「乗客がいるときだけ運行するバス」にするためには、いつどこに乗客がいるかを事業者側に知らせるシステムが必要になります。これがMaaSの正体です。つまりMaaSは「スマホアプリ1つで公共交通の予約が全部できます」という宣伝とは裏腹に、事業者が乗客のいる場所を把握するために絶対必要なシステムであり、これが導入されることは公共交通切り捨てへの入口なのです。

呼べばいつでも来てくれるバスなどという夢のようなものは存在しません。無駄を省き、乗客がいるときだけ運行して経費を節減するため、特に過疎化が進む地方や都市周辺部では、減っていく乗客数に合わせて車両所有台数を減らす施策とほとんどの場合、一体になっています。車両台数を減らすと、突発的な需要に合わせた増発は次第に不可能になっていきます。

特に、雨の予報だったのが外れ、出かける予定がなかった人が「天気も良いし、ちょっとバスで出かけようか」となったような場合、「呼べば来てくれる」はずだったデマンドバスは、必要最小限まで車両所有台数を減らしているため増発できず「予約はしてありますか」「いいえ」「では○時までお待ちいただけますか」となるのが容易に想像できます。この段階になってから「呼べばいつでも来ると言っていたくせに騙された!」と言っても手遅れであり、そうなる前に反対すべきです。

デマンドバスとMaaSという「魔法」はいずれ解けるときが来ます。新自由主義者のペテンを信じていると、公共交通はなくなり、地域が丸ごと死にます。今、医療をめぐって大阪で起きているのと同じことが、明日は公共交通でも起きるでしょう。使いたいときにいつでも誰でも使えるのでなければ、それは「公共」の名に値しません。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする