静岡知事選、川勝氏が4選 リニア着工は引き続き困難に(朝日)
20日投開票された静岡県知事選で、現職・川勝平太氏が4選を決めた。2014年10月に事業認可を受けて以来、早くも6年半。大井川からの水問題をめぐって事実上膠着状態にある中央リニア新幹線事業の先行きはますます不透明になった。
大きな貯水用ダムのない静岡県にとって、大井川から流れる水は生命線だ。リニア新幹線「南アルプストンネル」が現状の実施計画のまま着工された場合、静岡県民の水がめである大井川からの流量は毎秒2tも減少するとしたデータがある。1分間当たり120t、1時間に7200t。1日にすると17万2800t。一昨年夏の大水害の際に話題を呼んだ群馬県・八ッ場ダムの貯水量が1億750万m3(=1億750万t)だから、満水状態の八ッ場ダムの水が1年9か月で涸れてしまうほどの水量減少に当たる。「たかが2t、されど2t」であり、静岡県民の怒りももっともだ。
JR東海の静岡県に対する姿勢は不誠実で、静岡県民のみならず、当ブログ・安全問題研究会の我慢の限度をも超えている。当初、JR東海は水は涸れないと主張した。水涸れの恐れが明らかになってくると、今度は工事を実施して減った分の水を全量戻すと主張を変える。それも難しいとわかると、やっぱり全量は戻せないと言い出した。約束が違うと静岡県が指摘すると、今度は山梨県側に水は戻っているので約束違反ではないと言い繕う。東京電力、原子力ムラも真っ青の虚言集団、それがJR東海だ。こんなウソにウソを重ねておいて、今さら信じてくれなどとは馬鹿にするのもいい加減にしろと言いたい。JR東海は、寝ぼけているなら工事予定地の冷たい湧き水で顔でも洗って出直すべきだろう。
リニアをめぐって、先日、当ブログ管理人はJR東海の内部関係者から重大情報を入手した。取材源は明かせないが、きわめて信頼できる消息筋である。まだ工事に着手してもいない名古屋~大阪間について、その人物がJR東海のある経営幹部に「どうするつもりですか」と尋ねたところ、「会社としては、まだ白紙」との回答があったというのだ。
葛西敬之・JR東海名誉会長の個人的野望に過ぎないリニアに付き合わされるのは御免だ、というムードがJR東海の現役経営陣の間にも出てきているように感じられる。昨年末に出版された「
超電導リニアの不都合な真実」(川辺謙一・著、草思社)では、リニアが試験走行中に突然、電磁石の磁気が抜ける「クエンチ」という現象が起き、これに対する抜本的な対策方法もないままJR東海が隠しているのではないか、という疑惑が指摘されている。本来ならその程度の技術的課題は事業認可前に解決しておくべきことだ。事業認可から6年半過ぎ、一部区間では工事も始まっているこの段階になって、リニアが「技術的に実現可能なのか」などという「そもそも論」が提起されること自体がおかしい。JR東海は事業の実施主体としてこの疑問に答える義務があるし、ましてや、こんな状況で3兆円もの巨額資金を、法律改正までして国がJR東海に貸し付けるのは、誤解を恐れず言えば官民合作の詐欺に等しい。
財務省のホームページには、一般市民が財務省の政策について自由に質問できるメールフォームがある。今年1月3日、当ブログ管理人は、JR東海に対する3兆円の財政投融資について、以下の通り質した。
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※ ご意見・ご要望の分野
財政投融資
※ 件名
リニア新幹線事業における財政投融資資金の使い方について
※ ご意見・ご要望
JR東海が進めているリニア中央新幹線事業において、鉄道・運輸機構を財政投融資資金の受入可能団体にできるよう法改正が行われ、鉄道・運輸機構を通じて3兆円の資金がJR東海に貸し付けられています。
JR東海は、もともと自己資金で東京~名古屋間を建設し、自己資金が回復してから名古屋~大阪間を建設する計画でしたが、名古屋~新大阪間の建設を前倒ししてほしいとの要望が関西地方から出たために、今回の財投貸付になったと報道されています。
こうした経緯から、財投資金は名古屋~大阪間の工事のために使われるものと理解していたのですが、
2018(平成30)年版のJR東海のアナリスト向け決算説明資料によれば、「中央新幹線の建設に係る費用は財投資金から先に充当」と説明されています(このリンク先資料のPDF14ページ中、13ページにそのことが記載されています)。
このような財投資金の使い方ができるのであれば、JRのような公共性の強い会社は、自己資金=内部留保を温存しておくことで、財投資金の貸し付けを受けなかった場合に比べて、株主に高い配当を実施することができるようになります。このような財投資金の使い方が、貸付目的に照らして正当といえるのかどうかについて、見解をお聞かせください。
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これに対する財務省からのメール回答(今年1月14日付)は、以下の通りだ。
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財務省ホームページへのアクセスありがとうございます。
1月3日にお寄せいただきましたご質問にお答えいたします。
リニア中央新幹線に対して、財政投融資を用いて行った貸付は、品川—名古屋間の工事について必要となる金額(3兆円)を融資するものであり、品川—名古屋間開業後、名古屋—大阪間の工事にJR東海が速やかに着手することが可能となることで、全線開業の前倒しを図るものです。
今後とも、財務行政につきまして、ご理解とご協力を賜りますよう宜しくお願いいたします。
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要するに、「名古屋~大阪間の工事を前倒しするには、品川~名古屋間の工事を早めることが必要であり、そのために貸すのだから目的違反ではない」というもので、典型的官僚答弁だと思っている。こんな屁理屈がまかり通るなら、誰にでも、どんな目的でも財投資金を貸し出せることになる。
リニアをめぐっては、無理が通れば道理引っ込むのことわざ通り、もはやでたらめしか存在していないと言ってよい。長年、ウソ、ごまかし、はぐらかし、隠蔽、改ざんの見本市のような電力会社と原発問題をめぐって対峙してきた当ブログにとって、JRグループ各社はそれに匹敵するウルトラペテン師集団である。こんなでたらめが大手を振ってまかり通るのも、葛西「不名誉会長」が安倍前首相とズブズブのオトモダチだからである。葛西名誉会長をめぐる人間関係については、
月刊誌「ZAITEN」2020年2月号が詳しく報じているので、期間限定でアップする。この実態を多くの人に知っていただきたいと思う(「ZAITEN」は以前、「財界展望」と呼ばれていた。古い読者にはこの名前のほうが通りがいいかもしれない)。驚くことに、今回4選を果たした川勝知事もかつては葛西名誉会長の取り巻きの1人だったのである。
葛西名誉会長といえば、当ブログ・安全問題研究会を古くから知る人にとっては改めて説明するまでもなかろう。東大生時代、葛西氏は、自分が落とした定期券が届けられていた国鉄の駅で「東大生なら、国鉄は出世が早いですよ」と言われて就職先を国鉄に決める。そんなエピソードがあるほど志の低い出世主義者だ。国鉄分割民営化の暴風が吹き荒れる中で、職員局長として国鉄職員10万人の「人員整理」(=首切り)と「労務対策」(=国労潰し)に直接関わった。その「功績」を認められ、全国の警察をコントロールする国家公安委員会の委員在任中、2010年9月2日に開催された定例会では、ヘイト集団「在特会」を「このグループについては、
『極右』と呼ぶべきものではないと思う。事前に、よく実態を知り、適正に評価することが大事なのではないかと思う」として持ち上げる発言までしている。
これで、葛西名誉会長がどんな人物か、ほとんどの読者のみなさんにもご理解いただけたと思う。志の低いブルジョア的出世主義者にして、国鉄労働者の大量解雇と労働運動潰しを行った労働者階級人民の敵。ヘイト集団を天まで持ち上げ賞賛する右翼ファシスト。静岡県民に多大な犠牲を強いてまでリニアを強行しているのは、つまるところこういう人物である。このことだけでも、リニアは直ちに中止されるべきである。