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「泊原発を再稼働させるな! 核ごみを北海道に持ち込ませるな!北海道大行進」に200人が参加 札幌中心部をデモ行進

2025-05-06 21:07:10 | 原発問題/一般

(この記事は、筆者が「レイバーネット日本」に投稿した原稿をそのまま転載しています。)

「泊原発を再稼働させるな! 核ごみを北海道に持ち込ませるな!北海道大行進」が5月5日、札幌市内で開催され、約200人が参加。五月晴れの青空の下、元気にデモ行進した。

この大行進は、道内約70の市民団体でつくる「泊原発を再稼働させない・核ゴミを持ち込ませない北海道連絡会」(札幌)が主催し、毎年、こどもの日に合わせて5月5日に行われている。福島第1原発事故翌年の2012年5月5日、最後まで稼働を続けていた泊原発3号機が「定期点検」を理由に停止し、画期的な原発ゼロが実現した。将来を担う子どもたちに「原発のない日本」という最高のプレゼントができた13年前、上京していた私は、会津に伝わる庶民の踊り「かんしょ踊り」を参加者一同で踊り、経産省を包囲した。あのときの感動は今なお忘れない。

この日の集会では、連絡会の井上敦子事務局長があいさつ。「13年前の今日、泊原発が止まるとともに、原発ゼロが実現した。それから13年、政府はあろう事か、原発の最大限活用まで口にするようになった。泊原発を再稼働させない、北海道に核のごみを持ち込ませないことは、将来世代に対する私たちの責任だ」と泊原発再稼働や核ごみ持ち込みの阻止に向けた決意を表明した。

原子力規制委員会は、大型連休さなかの4月30日、泊原発が審査基準に「適合」しているとする「審査書」案を了承。道内メディアは「事実上の合格」と報道したが、「行動する市民科学者の会」の小野有五・北海道大学名誉教授(地質学)は「私たちから見れば事実上の不合格だ」とスピーチ。原発付近を走る海底活断層の実態を見ようともしないまま「合格」させた規制委を批判した。

北海道電力に対し、海底活断層が12万年前より最近に活動した実績がないことを証明するデータを出せなければ審査はしないと通告し、一時は敦賀原発2号機(日本原子力発電:福井県。昨年不合格が確定)のように不合格も辞さない構えだったのに、あっさり姿勢を転換し、最近は合格に前のめりになっていた。「核燃料を運び込む大型船舶が防潮堤に衝突した場合、機能を果たせなくなる」ことを理由として、北電に対し原発敷地内の港の使用を禁止したのは規制委自身だ。それが今ごろになって、北電が泊村に核燃料運搬用道路を建設することを提案すると、一転「核燃料運搬道路が原発の敷地外」であることを理由に規制委の管轄ではないとして、審査書案を了承したのだ。支離滅裂にもほどがある。

例えは悪いが「落第寸前の学生を無理やり合格させるため、苦手な問題をすべて外し、得意な問題だけを集めて問題用紙を作る」に等しい。このような合格ありきのふざけた審査を繰り返す規制委は、今や原発「再稼働手引委員会」に成り下がった。今回の審査書案に対するパブリック・コメント手続が、5月1日~5月31日まで行われている。この報告を読んでいる市民のみなさんも、規制委に対し徹底的な批判を加えてほしい。

北海道電力株式会社泊発電所の発電用原子炉設置変更許可申請書(3号発電用原子炉施設)に関する審査書案に対する科学的・技術的意見の募集について

(文責:黒鉄好)


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【訃報】佐藤栄佐久元福島知事 プルサーマルに反対し国・東電と闘った信念の人

2025-03-22 23:28:23 | 原発問題/一般

佐藤栄佐久元福島知事が死去、85歳 5期18年…分権、原子力で国と対峙(福島民友)

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 福島県知事を5期18年務め、地方分権の推進や本県の均衡ある発展に尽力した佐藤栄佐久(さとう・えいさく)さんが19日午前3時1分、老衰のため郡山市の高齢者施設で死去した。85歳。自宅は郡山市。通夜は27日午後5時、葬儀・告別式は28日午後2時から郡山市方八町の郡山斎場で。喪主は長男栄祐(えいゆう)さん。

 佐藤さんは郡山市出身。安積高、東京大法学部卒。日本青年会議所副会頭を経て1983年の参院選で初当選し、大蔵政務次官を務めた。参院議員を辞職して立候補した88年の知事選で初当選。以降、連続5回当選した。全国知事会副会長、北海道東北知事会長などを歴任した。

 知事時代は一貫して地方分権の確立を掲げ、小中学校の少人数学級制や森林環境税の導入など独自施策を展開、地方の自立を目指して積極的に声を上げた。

 2002年に東京電力のトラブル隠し問題が発覚した際には、福島第1原発でのプルサーマル計画受け入れを白紙撤回。原子力政策への問題提起を通じ国とも対峙(たいじ)するなど、「物言う知事」としても知られた。

 任期中は、ふくしま国体やうつくしま未来博の開催のほか、福島空港の開港と国際化、会津大開学、あぶくま高原道路の整備、アクアマリンふくしまの開館など大規模な事業を次々手がけた。東京一極集中に異議を唱え、本県への首都機能移転も推進。1997年に発覚した県の公費支出問題では大きな批判も浴びた。

 収賄で有罪

 5期目の06年9月、県発注工事を巡る談合、汚職事件に絡み、実弟が東京地検特捜部に逮捕されると知事を辞職。翌月には自身も収賄容疑で逮捕された。裁判では無罪を主張。一審東京地裁と二審東京高裁の有罪判決を不服として上告したが、12年10月に最高裁で懲役2年、執行猶予4年の刑が確定した。

 東日本大震災と東京電力福島第1原発事故後は、講演などで反原発の発信を続けた。

 次女美樹子さんの夫は玄葉光一郎衆院副議長。

 内堀知事、哀悼の意

 佐藤栄佐久さんの訃報を受け、内堀雅雄知事は19日、コメントを発表した。佐藤さんが知事在任中に掲げた県民運動のスローガン「うつくしま、ふくしま。」は策定から30年以上が経過した今もなお、多くの県民の心に息づいているとし「これからも福島県が復興していく姿を見守っていただきたかっただけに、本当に残念でなりません」と哀悼の意を示した。

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佐藤栄佐久元福島県知事が死去した。ご紹介した福島民友の記事にあるように、福島原発へのプルサーマル導入計画と闘った。在任中から逮捕、起訴に至る過程では、政策・人物のどちらにも賛否両論ある人だったが、東日本大震災・福島第1原発事故後は、原発のずさんな管理運営を続けてきた東京電力から県民を守るため、果敢に闘った知事として評価が急上昇した。

あぶくま高原道路の整備など、個別の政策の中には疑問を感じるものもあったが、福島第1原発事故の直後、親しい福島県民の前で不用意にそれを口にしたら、「栄佐久さんこそ先見の明を持って東電と闘ってくれた恩人。福島県で今後もうまくやっていきたいと思うなら、栄佐久さんを悪く言わないほうがいい」と「忠告」を受けたこともある。

福島県民には他県以上に佐藤姓が多いため、県民同士では、それほど親しい間柄でなくても、佐藤姓の人を、他の佐藤さんと区別するためファーストネームで呼ぶ習慣がある。「栄佐久さん」も、特に3.11後は県民に慕われていた。「栄佐久さんが知事のままで2011年までいてくれたら、あの事故は起きなかった」と多くの県民が今も言う。その県民の言葉に、私は全面的に同意する。

栄佐久さんの政治家人生を暗転させた「収賄罪」の刑事裁判では、記事にもあるように懲役2年、執行猶予4年の有罪判決を下しながら、裁判所が認定した収賄額は「0円」だった。それならなぜ有罪なのか、意味がわからない。「東京電力にとって目障りだった栄佐久さんを陥れ、抹殺するために検察が仕組んだ国策捜査だった」とする説は福島県民の間でコンセンサスとまでは言えなくとも、かなり広く信じられている。ご自身が「知事抹殺」という本を上梓。最近では「知事抹殺の真実」(我孫子亘監督)という映画も制作されている。私も、あの原発事故への怒りを忘れないために、その説を信じる県民の列に加わりたいと思う。

これだけの功績を残した「福島県民の恩人」栄佐久さんを「0円の収賄」で起訴した検察は、あれほどの事故を起こした東京電力旧経営陣を不起訴にした。検察の主張を鵜呑みにし、栄佐久さんに有罪判決を下した最高裁は、検察審査会の議決で強制起訴された東京電力の旧経営陣には無罪判決を下した。裁判所も検察もどこを見て仕事をしているのか。今、東京では毎週のように財務省解体デモが行われているが、役立たずどころか有害な裁判所も検察もこの際、一緒に解体したらどうだろうか。

福島原発をめぐって、東電によるトラブル隠しが発覚したのは2002年2月だった。激怒した栄佐久さんは東電管内の原発稼働を拒否。2003年4月から2006年7月まで3年以上にわたって東電管内全原発が止まった。だがこのとき、東電管内で停電はおろか、電力不足も起こらなかった。3.11後、私たちが反原発運動を進める中で、「原発が動かないと電力が不足する」と市民を脅す原発推進派に対し、「原発が止まっても電力不足は起きない」と胸を張って堂々と主張できたのは、栄佐久さんがこのときに「証明」してくれていたからである。原子力ムラ挙げての「電力不足」キャンペーンに打ち勝つことができたのは、栄佐久さんのおかげである。

このような経緯があり、福島原発告訴団・福島原発刑事訴訟支援団の集会に、ゲストとして招請しようという話が持ち上がったのも一度二度ではなかった。だが、ここ5年ほどは栄佐久さんのご体調が優れず、その目標はかなわないままとなった。私たちの闘いを支えてくれた栄佐久さんに、改めてお礼申し上げたいと思う。全原発廃止までもう少し時間はかかると思うが、いずれ栄佐久さんの墓前に「原発全滅」の報告ができるよう頑張りたいと思う。


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3.11 全交関電前プロジェクト 関電前行動へのメッセージ

2025-03-09 20:16:48 | 原発問題/一般

管理人よりお知らせです。

3月11日、関西電力本店前で「老朽原発うごかすな!上関に使用済み核燃料を押しつけるな!311関電本店抗議行動」が行われますので、お知らせします。この集会に向け、私から以下のとおりメッセージを出しましたのでご紹介します。

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 関電前行動に参加のみなさん、こんにちは。3.11福島原発事故当時、福島県西郷村に住んでいた元県民の1人としてメッセージを送ります。

 国が、2月に正式決定した新しいエネルギー基本計画で、「原発依存度をできる限り低減」するとの文言が削られ、原発「最大限活用」の方針に転換したことは、今なお続く原発被害も、事故の教訓そのものもなかったことにするものであり許すことはできません。国が何度口先だけの「反省」を基本計画に書き込んでも、心の痛みは消えることがありません。

 東京電力旧経営陣が強制起訴された「東電刑事裁判」で、3月5日、最高裁は武藤栄、武黒一郎の2人の元副社長を無罪とする決定をしました。日本の歴史上最大最悪となった原発事故でさえ、刑事責任を誰ひとり問われないことが確定したのです。もはや日本で企業犯罪の責任は、社会が滅亡してからでないと問えないとでもいうのでしょうか。苦痛の中で14年を過ごしてきた元福島県民として、認めることはできません。

 原発でいったん巨大な事故が起きると、国も原子力ムラも誰ひとり責任を取ることができないし、取る気もないという事実が改めて突きつけられています。刑事裁判の1審、東京地裁判決も旧経営陣を無罪にしましたが、一方で裁判長は「原発事故の安全対策に完全はない。事故を防止したいなら、その方法は原発停止しかない」とわざわざ判決文で言及しているのです。だったらみなさんの力で止めようではありませんか!

 福島原発告訴団を2012年6月に結成し、旧経営陣を刑事告発しました。強制起訴が決まったのが2015年7月。そこから10年近くにわたる長い刑事裁判は、多くの成果を残しました。(1)政府、国会、東電、民間の4つの事故調査委員会がまとめた報告書をすべて合わせたよりも多くの事実、証拠を明らかにできたこと、(2)「賠償金目当て」などとバッシングされることを恐れて、民事訴訟に踏み切れなかった多くの福島県民の共感も得て、政治的立場の違いを超えた大きな闘いとなったこと、(3)他の民事訴訟との共同を作り出す中から、最高裁の堕落・腐敗の実態を明らかにできたこと――などです。

 多くの最高裁判事が東京電力と密接な関係にあることが暴露され、最高裁の権威は完全に失墜しました。昨年の最高裁裁判官国民審査では、有権者から10%を超える罷免賛成率を突きつけられる裁判官が20年ぶりに出るなど、裁判所は市民の大きな不信を招いています。一方で、私たちが何も悪いことをしていないという事実は無罪判決であっても変わりません。旧経営陣を有罪にすることはできなかったため、勝利と評価するのは控えたいと思いますが、相対的には勝利と見ることもできるかもしれません。

 この3月、私の地元の「北海道新聞」は初めて原発事故と甲状腺がんの関係に言及する記事を掲載しました。歩みは遅くても、時代を進歩させるのは私たち市民の力です。それを信じて、脱原発社会の実現のために進んでいきましょう。


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【訃報】竹田とし子さん(「大間原発訴訟の会」代表)津軽海峡の「対岸」から大間原発反対運動を率いる

2025-03-08 23:56:03 | 原発問題/一般

青森・大間原発建設差し止め訴訟原告の竹田とし子さん死去 76歳(朝日)

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 建設中の大間原発(青森県大間町)の建設差し止めなどを求める訴訟を起こした北海道函館市の市民団体「大間原発訴訟の会」代表の竹田とし子さんが死去した。76歳だった。2011年の東京電力福島第一原発事故の前から「命を守れ」と声を上げ続けた半生だった。

 訴訟の会事務局長の中森司さん(76)によると、竹田さんは2月28日朝、市内の自宅で倒れ、くも膜下出血で亡くなった。

 北海道旭川市で生まれ、キリスト教を基盤に女性の社会参画、人権や健康や環境が守られる世界の実現を目指す国際NGO「YWCA」の活動に参加した。結婚して函館で暮らしはじめ、夫と食料品店を営んだ。1986年のチェルノブイリ事故を機に原発問題に取り組み、大間原発建設地の30キロ圏内にある函館で2006年に発足した訴訟の会の代表に推された。

 市民ら168人で訴訟を函館地裁に起こしたのは10年7月。原告総数は第9次訴訟までに1168人に上った。地裁は18年3月、住民側の請求を棄却。住民側が札幌高裁に控訴し、審理が続く。

 竹田さんは一審の第1回口頭弁論で意見陳述してから、昨年7月の控訴審第12回口頭弁論までに計6回、陳述に立ったという。

 4日夕、函館市内の寺で通夜・告別式が営まれた。大間原発の用地買収を拒み続けた故・熊谷あさ子さんの娘で原告の1人でもある厚子さん(70、大間町)は「とし子さんは母と一緒で、信念を持って原発をなんとかしようとがんばってきた。勝訴する前に亡くなったのが残念でならない」と声を詰まらせた。

 中森さんは「温厚で人の話をよく聞く人だった。危険な原発を造らせないという遺志を引き継ぎ、大間原発を建設中止に追い込みたい」と語った。

 訴訟の会は今後、お別れの会を開くという。

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すでに10日ほど経っているが、「大間原発訴訟の会」代表・武田とし子さんが2月末に急逝された。2月26日に開かれた青森県・東北電力大間原発差し止め訴訟の意見陳述に立つなど精力的に活動されていた。私は直接、面識はなかったが、連れ合いは札幌高裁での裁判傍聴の際、何度かお会いしたという。

大間原発は、青森県・下北半島に電源開発が建設中で、完成後は東北電力に引き渡される。本来なら青森県の地元住民が頑張らなければならないが、六ヶ所村に使用済み核燃料再処理施設を受け入れてしまっていることもあり、青森県内の原発反対運動は抑え込まれ、孤立させられている。代わって、津軽海峡の対岸にある函館が闘いを担ってきた。

函館市も、電源開発を相手に2014年に訴訟を起こしたが(参考:大間原発の建設凍結のための提訴について/函館市)、これには先行する「大間原発訴訟の会」の訴訟の存在も大きかったとされる。工藤寿樹・前函館市長が自民党を含む市議会全会派を説得して提訴にこぎ着けた。

行政、民間がそれぞれ大間原発建設の凍結を求めて提訴した背景には、函館市が対岸の大間原発から30km圏内にあるという事情が大きい。福島原発事故後、原発から半径30km圏内自治体は避難計画の策定を義務づけられたが、青森県外であるため原発の運転に対する同意権限も持たない函館市が、事故が起きれば甚大な被害を受けることに対する強烈な危機感があった。

函館市の危機感が単なる絵空事ではないことは、以下の写真を示せばご理解いただけるだろう。いずれも私が2016年4月9日~10日にかけて現地を訪問した際に撮影したものだ。

<写真1>大間フェリーターミナルから望遠(300mm)レンズを使って撮影した大間原発。目と鼻の先にある

<写真2>出港直前の船内客室から。青森県側の大間港に停泊中なのに、対岸・函館のテレビ放送がクリアに映る。電波が何ものにも遮られずに飛んでくるということは、いざというとき、放射線も飛んでくるということを意味する

<写真3>大間出港直後の青函フェリー船内から。すでに対岸の函館市街地がくっきり見える

このような状態で、福島の惨事を見せつけられた函館市の行政も市民も「次は自分たちの番かもしれない」と思うのは当然だろう。

大間原発訴訟の会で竹田さんは中心的存在だった。「竹田さんがいたから会がまとまってこられた」と話す関係者もいるほどだ。裁判そのものは会の他のメンバーが引き継ぐが、新しい幹部が竹田さんほどの求心力を持てるかどうかはわからない。

竹田さんを失ったことは、函館の反原発運動にとって痛手であることに間違いない。だが、対岸にあり地元である青森県内の運動が孤立させられている以上、引き続き函館での闘いが重要であることも事実だ。私も引き続き、この闘いを支援していきたい。


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北方領土に核のごみを埋めるよう求める声に「魅力的な提案」と答えた経産省。「国境地帯」でばかり核ごみ問題が勃発する本当の理由は?

2025-02-06 22:06:09 | 原発問題/一般

NUMO幹部の不適切発言、首相「話にならない」と謝罪 予算委(朝日)

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 石破茂首相は3日、原発の運転で生じる高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場選びをめぐって、資源エネルギー庁や原子力発電環境整備機構(NUMO)が説明会で不適切な発言をした問題について、「大変申し訳ない。絶対にあってはならないこと」と述べ、衆院予算委員会で謝罪した。

 最終処分場選びを巡っては、東京都内で1月23日にあった説明会で、参加者から「最終処分場を北方領土に建設しては」との意見が出た。これに対し、NUMO幹部が「一石三鳥四鳥」と答えていたことが明らかになっている。

 予算委では、立憲民主党の神谷裕議員がこのやりとりを踏まえ、「北方領土の関係の皆さんにとって、本当に看過できない発言だ」と追及。認識を問われた石破首相は「話にならない。発言がいかなる意図であったかわからないが、やはりゆるみとか、おごりとか、思いあがりとか、そういうものがあったと思っている。政府の責任者として深くおわびを申し上げる」と謝罪した。

 武藤容治経済産業相は「職員やNUMO幹部の発言については本当にまったく配慮に欠ける軽率な発言であった」と説明した。

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1月23日、都内で開催されたNUMO主催の説明会で、会場参加者が「最終処分場を北方領土に建設しては」と発言したことに対し、経産省幹部が「魅力的な提案」、NUMO幹部も「一石三鳥四鳥」などと返答していたことが報道された。2月3日の衆院予算委では、神谷裕議員(立憲・北海道10区)の批判に対し、石破首相が「お話にならない。(関係者に)緩み、おごりがあった」と陳謝した。

しかし、これを単なる経産省やNUMOの「緩み、おごり」ですませると事態の本質を見誤る。これらの動きは、「国境の島に核のごみを埋めれば、怖がって外国人か近づかなくなり、日本の領土が守られる」などと主張する右翼レイシスト集団による差別排外主義策動の一環と見る必要がある。

日本最東端の南鳥島に核ごみ処分地を作るよう求める主張が、松浦祥次郎・原子力安全推進協会顧問によって、電力業界紙「電気新聞」紙上で行われている(参考:2020年5月7日付け「電気新聞」時評 ウエーブ「南の島に目をむけると」)

市議会が突如、核ごみの最終処分場候補地への応募を求める請願を採択した長崎県対馬市では、2023年秋、比田勝尚喜市長が「採決結果が賛成10:反対8」の僅差であることを理由に受け入れを拒否した。これに対し、翌2024年3月の対馬市長選に「核ごみ受け入れ」を公約として、比田勝市長(自公推薦)の対抗馬として立候補したのが荒巻靖彦なる人物である。結果は惨敗だったが、そもそも関西在住の荒巻がなぜ対馬市長選なのか。

実は、荒巻は「在特会」関西支部長を務め、過去にはヘイトスピーチなどが原因で3度も逮捕歴があるレイシスト犯罪者である。活動仲間には川東大了もいる。川東も、大阪市「ヘイトスピーチ禁止条例」成立後、この条例による「氏名公表第1号」となったレイシストである。

実際問題、こうした国境地帯に核のごみが持ち込まれる可能性はどの程度あるのか。私は、対馬、寿都、神恵内など国境地帯でも人の居住する地域であればあり得ない話でもないが、南鳥島のような地域に持ち込むのはかなり難しいとみている。本州から数千km離れていても、船による輸送であれば技術的に可能であるものの、最近の燃料費高騰などを考えると、輸送費が高くつきすぎて現実的ではないだろう。

実際、上記リンク先の電気新聞記事で、松浦顧問自身「交通運輸の困難」があることを認めている。輸送費を無尽蔵につぎ込めるなら話は別だが、それはいずれ税金か電気料金となって利用者・国民に転嫁される。物価高に苦しむ日本国民がそれを許容するかどうかはわからない。特に日本人の場合、費用対効果が見えない事業にはシビアになる傾向があるので、1ワットの発電もしない核ごみの地層処分事業に巨額の費用を費やすことに関しては、認めない可能性が高い。

放射能ごみの地方への押しつけや、東京・中央の支配層による地方蔑視という観点でこれらの動きを批判することはもちろん重要だが、それだけでは十分とは言えない。ロシアや中国・北朝鮮国境に近い北海道の寿都町や神恵内村、韓国との国境に近い対馬、日本最東端の南鳥島など、国境地帯でばかり核のごみ問題が勃発している背景に、レイシストによる差別排外主義の動きがあることを重要な論点として指摘しておきたいと思う。


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第7次エネルギー基本計画 原発ありきの電力需要想定 福島事故の反省すべて投げ捨て

2025-01-25 23:10:09 | 原発問題/一般

(この記事は、当ブログ管理人が月刊誌「地域と労働運動」2025年1月号に発表した原稿をそのまま掲載しています。)

 経産省が昨年12月17日に案を公表した第7次エネルギー基本計画(以下「基本計画」)は、福島原発事故の反省を完全に投げ捨て、3・11前に戻ったかのように原発「最大限活用」をうたう最悪のものとなった。

 福島原発事故を受けて盛り込まれていた「原発依存度を可能な限り低減する」の表現は、安倍・菅政権でさえ福島県民・被害者「配慮」を意識せざるをえず、これまでの基本計画では残してきた。それが今回、事故以降、初めて削除された。

 基本計画は、2040年度の電源構成目標を再生可能エネルギー4~5割程度、原子力2割程度、火力3~4割程度とした。福島原発事故直前の2010年における原発比率は25%。3・11前への完全回帰だ。

 ●"反省"すら再稼働理由に

 許しがたいのは福島原発事故に関する記述である。全文84ページの基本計画に「反省」の文字はたった8か所。しかもその「反省」が「今後も原子力を活用し続ける上では、…反省を一時たりとも忘れてはならない」(総論)「(事故の)反省に立って信頼関係を構築するためにも、(原発に関し)幅広い層を対象として理解醸成に向けた取組を強化していく」(「原子力発電・今後の課題と対応」)など、すべて再稼働に強引に結びつけられている。

 「被害者」の文言はわずか2回、「被災者」に至っては1回しか登場しない。ここまで露骨な被害者切り捨て、原発推進の方針表明は3・11以降では初めてだ。

 「福島の事故がなかったかのようにしている。県民の苦しみを何ら顧みないものだ」。福島原発事故被害者5団体が基本計画撤回を求め内堀雅雄福島県知事に提出した要望書だ。この声に応え、原発即時全面廃止を目指さなければならない。

 ●デタラメな想定

 基本計画は、「データセンター需要、平均気温上昇、EV(電気自動車)需要」などにより、今後、電力需要が飛躍的に増大することを原発最大限活用の理由に挙げる。「将来の電力需要については増加する可能性が高い」とするが、「現時点において、将来の電力需要を精緻に予想することは困難」とみずから認める。

 「十分な脱炭素電源が確保できなかったが故に、国内においてデータセンターや半導体工場などの投資機会が失われ、我が国の経済成長や産業競争力強化の機会が失われることは、決してあってはならない」(11ページ)。大企業本位、「命よりカネ」優先の基本計画であることを隠そうともせず、市民を脅して原発への同意を狙う。

 そもそも経産省が主張する電力需要の増加はどこまで本当なのか。原子力市民委員会の明日香寿川(あすかじゅせん)東北大学大学院環境科学研究科教授は「2010年から18年の間に、クラウドを介したコンピューターの仕事量は550%増加したが、世界全体のデータセンターのエネルギー消費量は6%しか増加していない」「AI(人工知能)関連処理を高効率で実行する半導体の開発が進んでおり、演算能力の向上と消費電力の削減に大きな効果を期待できる」と疑問を投げかける。

 第2次ベビーブームのピークだった1973年には、1年間に200万人もの新生児が産まれた。それがここ数年を見ると、1年間の新生児の数は80万人すら割り込んでいる。人口問題研究所が公表している日本の将来推計人口予測は、上位・中位・下位の3パターンに分けて将来の人口推計をしているが、2030年代の到来を待たずに新生児が年間80万人を割り込むのは、下位推計をも下回るペースとなっている。人口問題研究所は、エネルギー基本計画が目標としている2040年の推計人口を1億1000万人程度と見込むが、今の調子で新生児の減少が続くなら、将来人口も当然、この推計を下回ることになろう。1億人を維持できれば御の字というのが実態ではないだろうか。

 加えて、この間、順調に進んできた省エネの実績も経産省は意図的に無視している。福島第1原発事故からの10年間で、日本全体では2割近く電力需要が減っている。特に減少幅が大きいのは産業部門であり、企業の省エネ化が大幅に進んだことが示されている。

 企業の省エネの取り組みは、環境意識の高まりというよりは、最も分かりやすいコスト削減策として実行されてきたという面が大きいが、ここ数年来の電力料金の高止まりが今後も続くなら、産業部門の省エネの取り組みは加速することはあっても停滞・後退することはない。

 予想を超えるハイペースで進む人口減少や、省エネの実績を無視し、現状では実態も明らかでないAI(人工知能)にすがる経産省の「電力需要激増」論は、「電力需要が増えてほしい、いや増えてくれなければ困るのできっと増えるはずだ」という空想に過ぎない。

 ●現実無視の「原発2割」~廃棄物の処分方法は依然決まらず

 基本計画の「原発2割」を達成するには「既存の原発(33基)をすべて再稼働させ、運転期間も60年に延長する必要がある」(原子力資料情報室・松久保肇事務局長)。「2割」自体、非現実的な想定であり、新増設を前提とした数字というのは一致した見方だ。

 新増設もハードルが高い。米国では2023~24年に稼働したジョージア州ボーグル原発3・4号機が1基当たり2兆円の建設費を要した。着工から営業開始までの期間も20年と長い。20年後のために2兆円の巨費を投じるなど大企業でも通常なら考えられない。新増設は、初めから税金や電気料金値上げが前提の計画なのだ。市民生活へのしわ寄せとなり、日本の国家財政も原子力のために破綻することになりかねない。

 高レベル放射性廃棄物(いわゆる「核のごみ」)最終処分場建設に向けた文献調査に史上初めて応募した北海道寿都町、神恵内村の2自治体で、2020年からNUMO(原子力発電環境整備機構)によって行われていた調査報告書が昨年11月に公表された。結論から言えば、資源エネルギー庁が2017年に公表した「核ごみ特性マップ」の内容を外れるものではなく、寿都町の大部分が適地、神恵内村については山岳地帯の一部が適地、村中心部の居住地帯を不適地とするものだった。

 私は、資源エネルギー庁とNUMOが共催し、昨年12月14日に札幌市で開催された報告書説明会に参加したが、説明会を「高レベル放射性廃棄物地層処分事業に対する理解醸成の場」と位置付けながら、会場からの挙手による質問も、一問一答型の対話もせず、質問票に記載する形で提出された疑問のうち、主催者側が抽出したものだけに回答するという非民主的運営だった。

 私ほか10名が提出した「北海道の核ごみ持ち込み禁止条例をどう認識しているのか。守る気があるのか」という質問に対するエネ庁・NUMOの回答は「コメントする立場にない」だった。法治国家を標榜するなら、地方自治体が定めた条例とはいえ、核ごみを拒否する規定がある場所で、処分事業の準備段階に当たる文献調査をすること自体がそもそもおかしい。

 この傲慢なエネ庁・NUMOの態度からは、彼らの希薄な法規範意識が垣間見えた。すなわち、彼ら中央省庁の官僚たちは「自分たちが立案して国会で成立したものだけが守るべき“法律”であり、自分たちがあずかり知らないところで誰かが勝手に作った『法』は、たとえそれが正式な手続を踏んで作られたものであっても守らなくてよい」と考えているらしいことが見えたのである。

 実際、この間、原子力ムラの住人たちは、議員立法で制定された「原発事故子ども・被災者支援法」も、国連特別報告者による勧告などもすべて無視して超法規的に振る舞ってきた。司法もそうした法規範破壊に積極的に手を貸してきた。そうした原子力ムラの法規範無視に、過去さんざん痛めつけられてきた私が「コメントする立場にない」というエネ庁・NUMOの回答を聞いて「条例無視の意思表示」と受け止めたことはいうまでもない。

 ●核燃料サイクル推進に転換の兆し?

 気になったのは、エネ庁・NUMOが口を揃えて「核燃料サイクルから撤退した場合に使用済み核燃料がどうなるか」に言及したことである。過去、エネ庁・NUMOは地層処分に対する「理解醸成」のためとして、手法や場所を変え、説明会を連続開催してきた。私はそのうちのいくつかに出席したが、過去の説明会では、参加者が核燃料サイクルの破綻を指摘し、使用済み核燃料の将来を問うても「法律で定められた地層処分への理解醸成に努める」以外の答弁をしてこなかった。それが今回、初めて「仮に国が核燃料サイクルから撤退することになった場合には、使用済み核燃料は全量が高レベル放射性廃棄物として地層処分の対象になる」と明言したのである。

 国会答弁を見ても、基本的に官僚は仮定の質問には答えない。この姿勢は徹底しており、国会議員からの質問主意書で「仮に○○であった場合、政府はどう対応するのか」と言った類の質問があっても、政府は一貫して「仮定の質問にはお答えできない」と答弁してきた。そうした官僚の習性を知っているだけに、私は一歩踏み込んだとも言えるこのエネ庁・NUMOの回答には重大な関心を抱いた。

 青森県六ヶ所村で、当初計画では20世紀のうちに操業開始しているはずだった使用済み核燃料再処理施設は、もう21世紀も4分の1が終わろうとしているのに操業開始できる気配すらない。明らかな核燃料サイクルの破綻を頑なに認めようとしない国の姿勢に疑問を持ち、核燃料サイクルからの撤退を求める勢力が、無視できない形で政府内部に存在し、影響力を増している――根拠はないが、それが私の推測である。

 国が核燃料サイクルからの撤退を決めるに当たって最大の「難題」は、各電力会社が使用済み核燃料を負債ではなく資産に計上していることである。再処理された使用済み核燃料は燃料として再利用する建前になっているのでそうした会計処理を認めているが、これは電力会社にとって「不良資産」となっており、再処理からの撤退でこれを負債計上しなければならなくなると、電力会社の利益など一夜にして吹き飛んでしまう。一部電力会社は存続が難しくなる事態もあり得よう。

 解決策としては、(1)使用済み核燃料の「減損処理」で吹き出る損金を国が補てんする、(2)電力会社の財務が一気に傷まないよう、減損処理ではなく長期間の減価償却を認めるなどの特例制度を創設する、(3)使用済み核燃料の処理を電力会社から切り離して実施するなどの方法があり得る。③の場合、実施主体としては福島第1原発事故に伴う賠償や廃炉などを支援する原子力損害賠償・廃炉等支援機構や、所有する全原発が再稼働できず、将来の見通しもない日本原子力発電などが考えられる。

 ①~③いずれの手法を採る場合でも、費用は結局、電気料金か税金のいずれかを通じて国民に転嫁されるが、そもそも再処理事業自体、空想に過ぎなかったのだ。遅かれ早かれ核燃料サイクルの「損切り」は行わなければならず、そうした方向への模索が政府内部で始まっているかもしれないことを、「仮定の質問に、あえて答える」経産省・NUMOの姿勢の変化の中から感じ取ったのである。

 ●将来は途上国並みに「停電が当たり前」に?

 最後に、今回のエネルギー基本計画が原案通り政府方針となった場合、目標とする2040年前後、日本のエネルギー事情がどのようになっているかを予想して本稿を締めくくることにしたい。

 結論を先に言えば、日本も発展途上国並みに停電が当たり前の社会になっていると予想する。現在でも、途上国では1日に何度も予告なく停電が起き、市民も「あ、またか」と思う程度で驚きもしないというところは珍しくないが、今回のエネルギー基本計画通りに進むなら、日本も将来はこのような国々の仲間入りをすることになろう。

 それは何よりも、将来最も有望なエネルギー源である再生可能エネルギーを普及させないよう妨害を続け、一方で地球環境の維持の面からもコスト面からも有望でない原発、石油火力といった電源に巨大投資を続けるという、政府自身の「将来への見通しの無さ」が招く電力不足であり、偶然ではなく必然である。私は将来の子どもたち、孫たちの世代に大変申し訳ないと思っている。

 原子力2割が、特にコスト面や廃棄物問題から実現不可能な目標だということは前述したとおりだが、これだけ地球環境保護への国際圧力が強まる中で、火力3~4割などという寝言が通じると政府は本気で思っているのか。国土の狭い日本が再生可能エネルギーに不適だと主張するなら、せめて「2040年までに、現在の電力消費を半減させる」くらいの省エネへの覚悟を示すべきだろう。

 ただ、私はこの点に関しては悲観していない。福島原発事故後の10年間だけで日本が2割もの電力消費削減に成功したことはすでに述べたが、これは年率2%に当たる。この削減ペースを今後も続けるだけで、目標年度である2040年(15年後)までに3割の削減が可能になる。「福島」後の30年間のトータルで見ると、実に6割もの電力需要削減が可能になるのである。

 しかも、この数字は将来の人口減少を見込んでいない(福島第1原発事故後、電力消費の2割削減に成功した10年間に日本の人口がほぼ横ばいだったため、その影響を盛り込めなかったという事情による)。将来の人口減少を加味すると、実際の電力需要はさらに減る可能性すらある。「停電が当たり前のエネルギー途上国」を避ける上で、再生エネルギーよりも省エネに活路があるという私の従来からの主張を変更する必要はないと考えている。

 この数字は、過去の削減幅をベースに計算したものであり、空想に基づいた経産省の「電力需要激増」論よりは説得力を持っていると自負している。むしろ、企業や市民が省エネで電力使用量を減らすたびに、経営努力もせず、値上げで企業や市民の努力を水泡に帰させてきた電力会社の放漫経営と、それを許してきた経産省の責任を追及すべきであろう。

(2025年1月19日)


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2024.12.31 全交関電前プロジェクト 大晦日アクションへのメッセージ

2024-12-29 21:01:13 | 原発問題/一般

福島原発事故以降、関西電力本社前では、毎年、大みそかにも反原発行動が粘り強く続けられている。今年もメッセージの依頼があったので、以下の通りメッセージを出した。

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 関電前にお集まりの皆さん、寒い中、大晦日までお疲れさまです。

 今年11月、被災地として初めて東北電力女川原発2号機が再稼働し、12月には中国電力島根原発2号機も再稼働しました。いずれも東日本大震災後初であり、また事故を起こした福島第1原発と同じ沸騰水型原子炉としても初の稼働となります。

 12月には、エネルギー基本計画が改悪され、政府の原発回帰の姿勢が露骨になる中、辛うじて残っていた「原発依存度を可能な限り低減」の文字が削除されました。「可能な限り削減」も、可能でなければ削減しなくてもいいと読める内容で、事実上、原発回帰に何の支障もない表現でしたが、福島原発事故の反省を踏まえ、福島県民・被害者への配慮のため残っていたこの最後のワンフレーズさえ原発推進派にとっては「邪魔」だということです。能登半島地震の惨事を見ても原発を動かす原発推進派の思い上がりは3.11前以上に酷くなっており、このままでは次の原発事故は2020年代のうちに再び起こると断言します。福島を経験した私には、「次の事故後の光景」までがすでにはっきりと見えています。

 原発裁判も、賠償、差し止めともに全敗でした。司法の腐敗ぶりに対する怒りは、10月に行われた最高裁裁判官国民審査ではっきりと示されました。いわき市民訴訟で住民の被害の訴えを切り捨てた裁判官、東京電力の代理人を務めていた裁判官の「罷免賛成」率が10%を超えたからです。罷免率が10%を超えるのは20年ぶりのことです。この司法への怒りを来年の6.17最高裁共同行動につなげたいと考えています。

 政府・原子力ムラは「AI(人工知能)の拡大で巨大なデータセンターが必要になり、電力需要は急増する」として原発再稼働を煽っています。ICT技術の発展によって省エネが進んできたこれまでの歴史を無視する妄想です。仮にそうだとしても、その電力需要を賄うのがなぜ原発でなければならないのでしょうか。

 米国では、原発1基の新設にすでに2兆円がかかるようになっています。しかも着工から稼働までには20年かかります。1年先も見通せない不安定な世界経済情勢の中で、20年後に稼働できるかもわからない原発のために2兆円もの巨費を投じる民間企業はありません。これからの原発は最初から政府による巨額の資金援助を前提としており、そこには私たちの税金や電気代が使われるのです。事故の危険性もさることながら、強引な原発推進政策は、将来、確実に日本の国家財政を破たんさせ、経済も生活も破壊するでしょう。

 北海道では、この11月、NUMO(原子力発電環境整備機構)が行ってきた寿都町・神恵内村での「核ごみ」最終処分場選定に向けた文献調査報告書が公表されました。北海道はこれからも農業・食料生産と観光で生きなければなりません。そのために核のごみも泊原発の再稼働も受け入れる気はありません。

 日本原電の敦賀原発2号機が規制委による審査で不合格となったことや、日本被団協のノーベル平和賞受賞など、嬉しいニュースもあった2024年でした。長く運動を続けていると良いときも悪いときもありますが、全原発廃炉をめざして2025年も頑張りましょう。


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最高裁裁判官国民審査の結果 福島原発事故裁判に関わった裁判官が1割超える「罷免」票率

2024-10-30 21:23:50 | 原発問題/一般

最高裁裁判官の国民審査、解職なし 長官ら4人が「×」10%超(朝日)

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 27日に行われた最高裁裁判官の国民審査について、総務省が28日、結果を発表した。対象の裁判官6人は全員信任され、解職はなかった。

 約5572万人の投票があり、投票率は53・64%(前回55・69%)だった。×印が有効票の半数を超えると解職され、何も書かなければ信任と扱われる。×印の割合(罷免(ひめん)率)が最も高かったのは最高裁長官の今崎幸彦氏、最も低かったのは9月に就任した中村慎氏だった。2003年以降の国民審査で罷免率が10%に達した裁判官はいなかったが、今回は4人が超えた。国民審査は今回で26回目。罷免率がこれまで最も高かったのは15・17%で、半数を超えて解職された裁判官はいない。

 最高裁裁判官は、任命後初めての総選挙の際に審査を受けると憲法で定められている。今回対象となった6人は、前回衆院選があった21年10月以降に任命された。(遠藤隆史)

「×」印がついた票の数  ※( )内は有効票に占める割合。告示順、敬称略

尾島明(66) 裁判官出身 598万11票(11・00%)

宮川美津子(64) 弁護士出身 571万5535票(10・52%)

今崎幸彦(66) 裁判官出身 622万9691票(11・46%)

④平木正洋(63) 裁判官出身 541万9857票(9・97%)

⑤石兼公博(66) 行政官出身 543万9056票(10・01%)

⑥中村慎(63) 裁判官出身 533万5897票(9・82%)

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10月27日の衆院総選挙と同時に行われた最高裁判所裁判官国民審査の結果が総務省から発表された。

「罷免」を求める「×」票の率が最も高いのは、第3小法廷在籍当時、「国に責任なし」のいわき市民訴訟仙台高裁判決を支持し、原告側の上告を棄却した今崎幸彦長官。福島原発刑事訴訟支援団から「審理回避」を要請されている草野耕一裁判官と同じ第2小法廷に所属する尾島明判事が2位でこれに次ぐ。3位は、TMI法律事務所(原発事故関係の訴訟を多く扱う)に所属歴がある宮川美津子判事だ。今崎、宮川両判事は「ひだんれん」から「×」とするよう呼びかけが行われていた。(参考資料=『東電と密接な関係のある最高裁・草野耕一裁判官に「東電刑事裁判」の審理を回避するよう求める署名』のお願い/福島原発刑事訴訟支援団)

総じて、福島原発事故関係裁判に関連し、または多く扱っている小法廷所属の判事が際立って高い「罷免」票率となっており、原発事故関係裁判に対する国民・有権者の強い不満が示された。

「2003年以降の国民審査で罷免率が10%に達した裁判官はいなかったが、今回は4人が超えた」と上記記事にある。一般市民・有権者の「最高裁不信」は20年ぶりの高い水準に達した。原発事故裁判と関係の深い裁判官ほど高い「罷免」票率を示していることから、この最高裁不信が原発事故関係裁判に起因していることが明らかになったといえよう。


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<2024総選挙>最高裁裁判官国民審査:今崎幸彦裁判官(長官)、宮川美津子裁判官の「不信任」を呼びかけます

2024-10-20 12:00:50 | 原発問題/一般

2024衆院総選挙に関し、当ブログをご覧のみなさんに呼びかけます。

現在、衆院選とともに行われている「最高裁判所裁判官国民審査」において、今崎幸彦裁判官(最高裁判所長官)、宮川美津子裁判官の2名を×(不信任)とするよう、「ひだんれん」(原発事故被害者団体連絡会)が呼びかけています。当ブログとしても、この呼びかけに応え、両裁判官を×(不信任)とするよう、みなさんに呼びかけます。

「ひだんれん」が示した理由は以下の通りですが、原発問題に詳しくない方には若干、わかりにくいため、当ブログから補足説明を加えています。

<今崎幸彦裁判官--ひだんれんが示した不信任理由>

福島原発事故に関して国の賠償責任を問う「いわき市民訴訟」で最高裁上告棄却決定を下しました。

<当ブログから補足>

いわき市民訴訟は、原発事故で被害を受けたいわき市民約1300人が、国と東京電力、双方の責任を問うたものです。2023年、仙台高裁は、「原発の敷地を越える津波を想定することは十分に可能であった」とし、また防潮堤の設置や重要施設の水密化(防水)対策で「重大事故が発生することを避けられた可能性は相当程度高い」と指摘。その上で、国が東電に規制権限を行使しなかったことは「重大な義務違反」としました。その一方で、「津波の防護措置は幅のある可能性があり、重大事故を防ぐことができたとは断言できない」とし、国の責任を否定する不当判決でした。

この判決を不服とし、原告側が国の責任を認めるよう求めて最高裁に上告しました。この裁判は、最高裁第3小法廷(宇賀克也判事、林道晴判事、長嶺安正判事、渡邉恵理子判事、今崎幸彦判事)の担当となりましたが、同小法廷は、2024年4月10日、原告側の上告を棄却する決定をしました。これにより、「国に責任はない」とする仙台高裁判決が確定しています。

参考記事:「門前払いとは」原告ら落胆 原発事故めぐるいわき訴訟、上告退ける(2024.4.12付け「朝日新聞」)

<宮川美津子裁判官--ひだんれんが示した不信任理由>

第一小法廷の判事で、5大法律事務所の一つ、TMI総合法律事務所のパートナー弁護士でした。「だまっちゃおれん原発事故人権侵害訴訟・愛知岐阜」が上告され、最高裁第一小法廷に係属しています。

「だまっちゃおれん」控訴審での東電側弁護人は、TMI総合法律事務所が務めており、東電側の弁護人も担当判事もTMI総合法律事務所ということになります。原告団、弁護団は宮川美津子判事に対し、回避(裁判官自らが、除斥又は忌避の事由があると認め、職務執行を避ける)を求めてきましたが、反応がないとのことです。

<当ブログから補足>

東京電力の代理人弁護士を多く抱えているTMI総合法律事務所に勤務した経歴を持つ人物が、東京電力が起こした福島第1原発事故の裁判に最高裁裁判官として関わることは、スポーツに例えれば「レフェリー(審判)が一方のチームのユニフォームを着てプレーに参加する」のと同じであり、重大な利益相反行為です。公正な裁判は期待できず、宮川裁判官にみずから審理から身を引く意思がないのであれば、不信任に相当する理由があると当ブログは考えます。

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なお、裁判官の国民審査では、投票用紙に「○」を付けると無効になります。不信任にしたい裁判官には「×」を付け、信任する裁判官には何も書かずに投票箱に入れてください。信任する裁判官に「○」を付けるよう訴えているサイトも時折、見かけますが、これらは誤りです。

この投票方式は、「最高裁判所裁判官国民審査法」第15条で定められています。具体的には以下の通りです。

第十五条(投票の方式) 審査人は、投票所において、罷免を可とする裁判官については投票用紙の当該裁判官に対する記載欄に自ら×の記号を記載し、罷免を可としない裁判官については投票用紙の当該裁判官に対する記載欄に何らの記載をしないで、これを投票箱に入れなければならない。

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この投票方式には、少なくとも問題点が2つあります。

1.不信任にしたい裁判官がいる審査人(有権者)だけが投票用紙に「×」を記載する一方、対象裁判官全員を信任したい有権者は投票用紙に何も書かなくてよいというシステムは、一方だけに記載の負担を求め、一方だけが楽をできるという意味で不公平である。

2.対象裁判官を、わざわざ不信任にするほどではないが、積極的に信任する理由も見当たらないという有権者にとって、「どちらでもない」の意思表示をすることができない。

改善には、上記「最高裁判所裁判官国民審査法」第15条の改正が必要ですが、当ブログは、今後もこの投票方式を改めるよう求めていきます。


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【転載記事】<2024衆院総選挙>原発・エネルギーに関する各党の政策・マニフェストについて

2024-10-18 21:52:44 | 原発問題/一般

環境運動団体「FoE Japan」サイトが、2024衆院総選挙における原発・エネルギーに関する各党の政策・マニフェストについて一覧にまとめた上で、解説もしてくれています。以下、ご紹介しますので、投票の参考にしてください。

なお、私は原発を即時または一定の期限までに廃止するとの公約を持つ政党でなければ、投票するつもりはありません。

<衆院選2024>各党マニフェストを比較してみました【原発・エネルギー編】(FoE Japan公式サイト)

投票日を10月27日に控えた衆議院議員選挙。「原発・エネルギー」に関して各党のマニフェストを比較してみました。

自民 再稼働を進める/次世代革新炉の建設/核燃料サイクル推進
立憲 2050年までのできるだけ早い時期に原発ゼロ/新増設は行わない/原発に頼らない地域経済の確立
維新 早期再稼働/審査の効率化/民間の責任を有限化/甲状腺検査の縮小
公明 再稼働を認める/将来的に脱原発 (新増設については記載なし)
共産 2030年度に原発ゼロ/新増設は認めない/核燃料サイクルからは直ちに撤退
国民 早期再稼働/審査の効率化/次世代革新炉の開発・建設
れいわ 即時廃止/「廃炉ニューディール」で立地自治体の「公正な移行」を実現する
社民 2030年までに原発ゼロ/汚染水の海洋放出の中止/被災者・避難者の十分な生活保障
参政 既存原発の活用/次世代原発の推進

自民党

総じて、政府の従来方針の通りで、石破色が打ち出されているわけではないようです。

脱炭素・エネルギーの項目で「徹底した省エネ・再エネの最大限の導入、原子力の活用」をかかげ、脱炭素分野に150兆円の官民投資を引き出すとしていますね。これは政府のGX基本方針と同じです。

原発に関しては「原子力規制委員会により厳しい安全性基準への適合が認められた原子力発電所については、再稼働を進めていく」としています。核燃料サイクル推進、高レベル放射性廃棄物の最終処分地の選定を着実に進めるなども。また、「次世代革新炉の開発・建設に取り組む」としています。

火力については、「次世代化、高効率化、水素・アンモニアの混焼やCCUS、カーボンリサイクル等による脱炭素化に向けた取組みを加速度的に推進」としています。

電源ごとの2030年の数値目標などは見当たりません。

参照先:自民党 令和6年 政権公約 (jimin.jp)

立憲民主党

目標とする年限は明記されていませんが従来の原発ゼロ方針は維持し、省エネ・再エネなどについては、目標値も含め具体的に書き込まれたマニフェストになっています。

「2030年の再生可能エネルギーによる発電割合50%及び2050年100%を目指し、2050年までのできる限り早い時期に化石燃料にも原子力発電にも依存しないカーボンニュートラル(温室効果ガス排出実質ゼロ)達成を目指す」としています。

また、省エネに関しては、2030年に最終エネルギー消費30%削減(2013年比)、2050年には同60%削減を目指す、2030年までに省エネ・再エネに200兆円(公的資金50兆円)を投入し、年間250万人の雇用創出、年間50兆円の経済効果を実現するとしています。

原子力発電所の新設・増設は行わず、全ての原子力発電所の速やかな停止と廃炉決定を目指す」とし、核燃料サイクルの中止に向けた枠組み構築、原発に頼らない地域経済の確立やそのための支援について盛り込んでいます。

「東日本からの復興」の項目に原発事故被害者の支援について盛り込み、「子ども・被災者支援法」の下、福島県外避難者に対して、その生活実態を踏まえ、支援を継続・拡充するなどとしています。

参照先:立憲民主党 政策集2024「エネルギー」 – 立憲民主党 (cdp-japan.jp)

維新

総じて、原発に関しては前のめりの内容で、原子力事業者の利益を代弁するかのような記述が見受けられます。民間の責任の有限化、原発の国有化の検討、福島県の甲状腺検査の縮小、風評被害の解消などを打ち出しています。

「原子力規制委員会の審査の効率性を重視」しつつ規制委の許可を得た原発の「早期再稼働を進める」、「既存原発の運転期間の延長や次世代革新炉への建て替えを行う」、その際には「国・地方自治体・事業者の責任を法的に明確化」するなどとしています。

「民間の責任を有限化」「国有化も含めた国の責任ある対応の検討」などの文言も見受けられます。「民間の責任の有限化」というのは、現在の原子力損害賠償法では、万が一原発事故が起こった場合、たとえ被害額が巨額にのぼったとしても、原子力事業者がすべて賠償責任を負うとした「無限責任」「責任集中」の原則を見直すことを示唆しています。まあ、現在も福島原発事故の賠償や廃炉については、国や他の原子力事業者からの資金、電気代に上乗せされている託送料金の一部などが入っており、実際には原子力事業者の責任は曖昧にされていますが…。

原発事故対策では、被ばく影響の否定が目につきます。たとえば、福島県で事故当時18歳以下であった人たちに対して行われている甲状腺検査を「希望者のみとする」と縮小し、「過剰診断と風評による負の影響を無くす」としています。ちなみに、現在、甲状腺検査は対象者全員に案内は出されているようですが、実際に検査を受けるのは希望者のみです。原発事故と甲状腺がんは関係はないという見解を打ち出していますが、一方で、原発事故後、甲状腺がんが多く発生していることは事実であり、これを「過剰診断」によるものとすることに対しては、さまざまな反論が示されています。こうした点は考慮されているのか疑問です。

参照先:マニフェスト全文 | 衆院選2024 (o-ishin.jp) エネルギーは135以降

公明党

「原子力規制委員会が策定した世界で最も厳しい水準の基準を満たした上で、地元の理解を得た原子炉の再稼働を認めます」とする一方、「可能な限り原発依存度を低減しつつ、将来的に原子力発電に依存しない社会をめざします」という路線を維持しているところが、自民党との違いです。原発の新増設については書いていません。その他はほぼ同じように見えます。

再エネに関しては、「最大限の導入」を打ち出し、ペロブスカイト太陽電池や浮体式洋上風力等の技術開発、全国規模での 系統整備、蓄電池の導入加速化等を盛り込んでいます。2030年の電源構成などについては触れられていません。

参照先:manifesto2024.pdf (komei.or.jp)

共産党

岸田政権のもとで進められた原発回帰政策を批判し、「再稼働させず、新増設も輸出も認めない」としています。また、核燃料サイクルはすでに破綻していると指摘し、「原発・核燃料サイクルからただちに撤退する」としています。

原発事故対応としては、汚染水の海洋放出の中止、広く英知を集めた汚染水対策や廃炉、被害実態に見合った賠償指針の見直しと全面賠償などを訴えています。

また、省エネと再エネの組み合わせで、2030年度に CO2排出50~60%削減(2010年度比)という目標を掲げています。エネルギー消費を4割減らし、再生可能エネルギーで電力の50%をまかなう、2030年度に原発と石炭火力の発電量はゼロとするなどとしています。一方、近年、電力需要拡大の理由の一つとして言われているデータセンターについて、再エネ電力利用、立地をできるだけ寒冷地域に、省エネの徹底などが求められているとしています。

参照先:日本共産党の政策│日本共産党中央委員会 (jcp.or.jp)

国民民主党

原発推進姿勢が鮮明です。

原発はエネルギー安全保障に寄与するとして、地元同意を得た原子力発電所は早期に稼働させる、次世代軽水炉や小型モジュール炉(SMR)、高速炉、浮体式原子力発電など次世代革新炉の開発・建設(リプレース・新増設を含む)を進める、などとしています。

また、原子力施設への武力攻撃を想定し、自衛隊によるミサイル迎撃態勢や部隊の配備などを可能とする法整備を行うとしています。

電力自由化については、「全面自由化が国民や経済・社会にとって真に有益な施策となっているかの検証が必要」としています。2030年代には電源構成比で再エネ比率が40%以上としつつも、再エネ賦課金については、必要な見直しを行うとしています。

参照先:政策各論2. 自分の国は自分で守る | 国民民主党 第50回衆議院議員総選挙 特設サイト (new-kokumin.jp)

れいわ新選組

原発については即時廃止し、「廃炉ニューディール」で立地自治体の「公正な移行」を実現するとしています。福島第一原発の汚染水の海洋投棄の中止、被災者に対する医療費の無償化の継続・拡大を掲げています。

2030年に温室効果ガス排出量を70%以上削減、2050年までのできるだけ早い時期に脱炭素達成を目指す、屋根への太陽光パネル設置、地域の自然と暮らしと調和した分散型の再エネの促進、断熱基準の引き上げなど省エネルギ化と光熱費削減をすすめるなどとしています。

また、「官民合わせて10年間で200兆円をグリーン産業に投資し、250万人の地域分散型グリーン雇用を創出する」としています。

参照先:2024 reiwa election manifesto (reiwa-shinsengumi.com)

社民党

岸田政権のもとで進められた原発回帰政策を批判し、脱原発、老朽原発の稼働に反対、汚染水の海洋放出中止、被災者・避難者の十分な生活保障と被ばく管理などを掲げています

2030年の温室効果ガス削減を2013年比60%減、最終エネルギー消費削減を40%減、2030年の電源構成として、原発ゼロ、石炭火力ゼロ、再エネ50%としています(重点政策p.26)。

参照先:https://sdp.or.jp/2024-50-policy/#04

参政党

公約で「脱炭素政策と行き過ぎた再エネ推進を見直す」としています。

「3つの重点政策」「新しい国づくり10の柱」には、既存原発・化石燃料の活用、安全な次世代原発の推進、再エネよりも脱炭素火力の推進、再エネ賦課金の見直しなどが盛り込まれています。

参照先:公約 | 第50回衆議院選挙-50th House of Representatives Election- 日本をなめるな! (sanseito.jp)

公約は重要ですが、その根拠や背景にある考え方も重要ですね。また、言うまでもなく、選挙終了後、公約実現のために何をしたのかも…。みなさんはどの政党を選びますか?

(満田夏花)


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