列車あわや追突 信号故障か 250メートル前停止 JR函館線(北海道新聞)
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JR北海道は十五日、函館線上り線の江部乙駅-滝川駅間で、普通列車が走行中、前方に停車中の貨物列車を発見、約二百五十メートル手前で停止するトラブルがあったと発表した。普通列車の乗客四十四人にけがはなかった。同社は信号が故障した可能性があるとみて原因を調べる一方、事故につながる恐れのある重大インシデント(事案)として国土交通省に報告。同省運輸安全委員会は十六日に鉄道事故調査官二人を派遣する。
JR北海道で重大インシデントは初めて。
同社によると、十五日午後二時三十六分ごろ、旭川駅発岩見沢駅行きの普通列車(三両編成)が滝川駅から約一・四キロ北の地点で、黄色の注意信号を確認。徐行運転したところ、前方に北旭川駅発札幌貨物ターミナル駅行きの貨物列車(十二両編成)が停止しているのを発見し、急ブレーキをかけた。
当時、普通列車は時速十キロで走行、貨物列車は滝川駅構内が除雪作業中だったため、停止して待機していたという。その後、貨物列車は滝川駅構内に入り、普通列車は約二十分の遅れが出た。
通常、列車の前方に別の車両がある場合、赤信号が表示されるが、JR北海道が今回の事故後に現場の信号を確認し、後続の列車が同じ区間を通行した際も黄色のままで、赤に変わらなかったといい、同社は原因を詳しく調べている。
同社広報部は「非常に重大な事象を発生させ、深くおわび申し上げます。国の調査に協力するとともに、信頼回復に向けて再発防止に取り組みます」としている。
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JR函館線ニアミス 原因は信号誤配線 2年前交換、点検でも見落とす(北海道新聞)
JR函館線の江部乙駅-滝川駅間で十五日、普通列車が前方の貨物列車の約二百五十メートル手前で停止したトラブルで、JR北海道は十六日、記者会見を行い、現場の信号機の配線にミスがあり、赤信号が点灯しなかったことが原因と発表した。この信号機は二年前に交換されており、この際に誤って配線した可能性が高いという。当時の点検記録では特に異常はなく、同社は検査方法にも問題があったとみて調べている。
同社はこの信号機を交換し、道内の約二千九百カ所の信号の緊急点検を行ったが、異常はなかった。
同社によると、普通列車がブレーキをかける前に黄色だった信号機を確認したところ、内部に四つある端子板のうち、二つの端子板で配線の誤りを発見。信号機は黄色のままで、赤が点灯できない状態だった。
信号機本体は二〇〇七年一月下旬、外注の民間業者が交換しJRが点検を行ったが、記録上は異常がなかった。その後も年一回の定期点検を行っていたが、点検項目には赤信号の点灯の確認は入っておらず、二年間も信号の異常が続いていたとみられる。JRは今回のように二つの列車が接近する事態はまれなため、異常をつかめなかったとみている。
トラブルが起きた当時、JRの指令センターでは信号の異常を確認できず、普通列車の男性運転士(23)が貨物列車の約四百メートル手前で障害物らしきものがあるのを発見して時速四十キロから十キロに減速し、直後に貨物列車と確認、ブレーキで衝突を回避していた。
また、トラブルの発表は発生から約八時間も後だった。幅口堅二工務部長は「お客さまの信頼を損ね、申し訳ない」と陳謝した。
一方、国土交通省運輸安全委員会の鉄道事故調査官二人は十六日午後、現地入りした。
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記事の中の『通常、列車の前方に別の車両がある場合、赤信号が表示される』というのは非常におおざっぱな表現だ。実際には直前の閉塞区間に列車がいる場合には赤、2つ先の閉塞区間に列車がいる場合には黄が表示されるというのが大原則である。
JR線のほとんどは閉塞区間が600m以上である。記事では、後続の列車が先行する貨物列車を400m手前で発見したとしており、これが事実であれば、やはり赤信号が表示されていなければならない区間だったということができる。
さて、この事故を報じた北海道新聞が、1月17日付紙面で、この重大インシデントに関する社説を掲げ、JR北海道の姿勢を批判している。この社説が、私の言いたいことをほとんど主張してくれているので、今回はこの社説をご紹介して終わりにする。
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社説 JR函館線 赤信号が点灯せずとは(1月17日)
JR函館線で、普通列車が先行の列車に追突しそうになるトラブルがあった。
信号機の配線に誤りがあり、正常に点灯しない状態になっていた。
けが人はなかったとはいえ、国土交通省運輸安全委員会は「重大事故につながりかねない事案」とみて、現地調査に乗り出した。
安全設備の不備は、人命をあずかる鉄道事業者としてあってはならないことだ。
JR北海道は、信号機の不具合の原因を洗い出し、早急に再発防止策を取らねばならない。
トラブルは、旭川駅発岩見沢駅行きの普通列車が、滝川駅まで一・四キロ北の地点で起こった。
駅構内が除雪作業中のため、先行の貨物列車が停車して待機していた。そこに、普通列車が接近した。
通常ならば、赤信号が自動的にともり、後続列車に停止を指示する仕組みになっている。
ところが、信号は注意を促す黄色のままだった。普通列車の運転士が危険を察知し、手動ブレーキで緊急停止した。列車間の距離は約二百五十メートルしかなかった。
問題の信号機は二〇〇七年一月、外注先の民間業者が設置した。JR北海道によると、内部にある四つの端子板のうち、二つの端子板で配線が誤っていたという。
なぜ、JRは配線の誤りに気付かなかったのか。
信号機はコンピューターで制御されているが、正常に作動しているように記録されていた。JRによる年一回の定期点検でも、配線の誤りが見過ごされてきた。
信号の異常が、二年間も続いていたことに驚く。JRの確認作業が不十分だったことは否めない。
JRは、今回のように二つの列車が接近することはなく、異常をつかめなかったと説明している。
事故が起こらなかったのは、偶然にすぎないということだろう。
JRは、道内にある約二千九百カ所の信号の緊急点検を行った。誤作動の有無について、入念なチェックがさらに必要だ。信号機の不具合の改善策も示してもらいたい。
民営化後のJR北海道は、コストダウンのために保安要員を減らしてきた。信号機などの安全管理を、外注先に任せがちになっていないか。検証を急ぐべきだ。
二〇〇七年十二月には、JR千歳線でレールの破断が見つかり列車が全面停止している。防護無線の不具合から、札幌圏の全列車が停止するトラブルもあった。
基本的な安全対策で費用や人員の投入をおろそかにしてはならない。大事故が起こってからでは遅い。