安全問題研究会~鉄道を中心とした公共交通を通じて社会を考える~

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私たちは根室線をなくしてはならないと考えます
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7月29日~30日 猛暑の中、京急線完乗達成

2023-07-30 23:29:22 | 鉄道・公共交通/趣味の話題
7月29日は午後から横須賀市内で所用だが、その前に全線完乗活動をさらに進める。午前中、未乗区間となっている京急大師線に全線乗り小島新田へ。京急川崎まで折り返した後は本線に乗車。金沢八景から逗子線を逗子・葉山まで乗り通す。

翌29日、横須賀市で所要を終えた後は、横須賀中央から京急本線で浦賀まで乗り通す。京急本線は堀之内~浦賀が未乗車だったが、これで完全乗車となった。

<完乗達成>京急大師線、逗子線、本線

これで、会社としての京急も全線完乗となった。

なおこの結果、7月の新規完乗達成は、富山地方鉄道不二越・上滝線、立山線、富山ライトレール(富山駅~岩瀬浜、以上7月16日)、富山地鉄本線、黒部峡谷鉄道(7月17日)、相鉄新横浜線、東急新横浜線(7月28日)と合わせて、これで5社10線となった。上半期の1社2線と合わせると6社12線である(参考記録を含めると7社13線)。ここで、今年の新年目標だった「5路線乗車」どころか、10線も軽く越えてしまった。

今年もまだ5ヶ月も残っていること、最近の体調も悪くないことを考えると、まだまだ行けそうだ。そういうわけで、2023年の新年目標(5路線乗車)を大幅に上方修正し、15路線乗車の目標を新たに設定する。残り3線なので、頑張れば達成できない数字ではない。

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7月28日~相鉄・東急新横浜線の完全乗車をあっけなく達成

2023-07-28 23:57:36 | 鉄道・公共交通/趣味の話題
予告通り、7月28日から上京し、7月30日まで都内に滞在している。

7月28日午前、羽田から京急で横浜に向かう。横浜から相鉄に乗り換え西谷へ。ここから今年3月に開業した相鉄・東急新横浜線日吉までの区間を乗り通し、そのまま武蔵小杉へ。今日もうだるような猛暑だが、熱中症対策には有効なうどんを昼食に摂った後、武蔵小杉から横須賀線で都内に出る。

<完乗達成>相鉄新横浜線、東急新横浜線

3度目の挑戦でようやく完乗を達成。相鉄・東急新横浜線が私にとって「第2の只見線」になる事態は、何とか避けられた。

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リニア中央新幹線事業認可取消訴訟(ストップ!リニア訴訟) 請求棄却の不当判決

2023-07-24 21:29:30 | 鉄道・公共交通/交通政策
(この記事は、当ブログ管理人が「レイバーネット日本」に寄稿した内容をそのまま転載したものです。)

 原告らの請求をいずれも棄却する――それだけを言い渡すと、3人の裁判官はそそくさと、逃げるように奥に消えた。判決理由の朗読すらないので、棄却の理由もわからないまま。裁判官が「消えた」法廷内では、何が起きたかわからず、呆然としたまましばらく動けない傍聴人もいた。行政訴訟など、国や自治体を相手にした訴訟ではしばしば見られる光景らしく、噂には聞いていたが、自分自身が体験したのはこれが初めてだ。249名の原告が、国にリニア中央新幹線の事業認可取り消しを求めていた「ストップ!リニア訴訟」の判決言い渡しが行われた2023年7月18日、東京地裁での出来事である。



 もともと、この日は朝から異例ずくめだった。朝10時過ぎにはすでに気温は35度近くに達した。訳あって前日から東京・立川駅前に宿泊していたため、筆者は横浜線で横浜市内に出た後、東京地裁を目指した。

 このルートを選んだのには理由がある。リニアの駅ができる予定の神奈川県・橋本駅の現状を、通過しながらの一瞬でもいいから見たいと思ったからだ。事前情報通り、リニアの駅らしきものは影も形も現れていなかった。用地買収すらまだ完全には終わっていない。こんな状況で「2027年開業」というJR東海の説明は寝言に等しい。何しろ4年後なのだ。公式の説明では大阪延伸が予定されている2045年に、当初予定の品川~名古屋間が開業できれば御の字というのが現状ではないだろうか。

 筆者は時折、大型書店の鉄道関連コーナーを見ているが、最近出版される書籍の中に、無邪気な「リニア礼賛もの」は全くといっていいほどない。代わりに並んでいるのは、リニアに疑問を呈するものばかりになっている。大手メディアがリニアについて全く報道しない現状でも、こうした書店の動向からは、大型事業の先行きを探ることができるのである。

 ●「飛行機の速度で地下鉄を走らせる非常識」

 判決に先立つ午後1時から、裁判所前で集会が行われた。





 川村晃生(あきお)原告団長は「2016年の提訴から、コロナによる中断を挟んで7年、ついに判決の日が来た。JR東海は私たちの主張に全く反論できず、法廷内では私たちが圧倒していた。しかし、裁判所もまた国の機関だ。日本では国を訴える行政訴訟に独特の難しさがあるが、裁判所が私たちを相手に真摯に耳を傾けてくれるなら、私たちの勝利は間違いないと確信している」とあいさつした。

 続いて関島保雄弁護団共同代表が発言した。「通常、この手の訴訟では、原告は事業が行われる周辺数キロの狭い範囲にとどまることが多い。しかしこの訴訟は、東京から名古屋まで、約300kmもの長い範囲に多くの原告を抱えるという意味で珍しい大型訴訟だと思っている」と訴訟の概要を説明。続いて「リニアは全区間の86%がトンネルだ。いわば、飛行機のような速度で地下鉄を走らせようという計画であり、非常識」だと国策事業を斬り捨てた。

 高山浩JR東海労働組合副委員長は「リニアをめぐって、何度も労使交渉を申し入れたが、会社は窓口でお茶を濁すような回答をするだけで応じなかった。労使関係が存在しない中で、会社と正面からぶつかり合う苦しい闘いだった」とこの間を振り返り、「引き続き、皆さんとともに闘っていきたい」と決意表明した。

 労働関係に詳しくない読者のために少し解説する必要があるが、企業と労働組合との間では、いきなり「本番」の労使交渉となることは少なく、その予備段階で「窓口協議」などと呼ばれる準備的打ち合わせが行われた上で労使交渉に進む場合がほとんどである。高山副委員長の「窓口」とはこの段階を指す用語である。広義では窓口協議を含めた全段階を労使交渉と呼ぶケースもあるが、それも「本番」あってのことだ。長年、労働組合役員を経験してきた筆者から見ても、会社の命運を左右するこのような根幹事業に関し、窓口協議で終わらせることはそもそもあり得ない。労働組合から交渉の申し入れがあった場合、会社には応諾義務がある。これにはJR東海労(JR総連系)が、JR東海内では少数派組合であり、労働者の過半数を組織していないという事情も関係している。

 ●ホールを埋めた判決後の報告集会

 判決後の報告集会には約150人が集まり、衆院第一議員会館多目的ホールをほぼ埋めた。本村伸子(共産)、山添拓(共産)、山崎誠(立憲)の各国会議員が連帯あいさつ。山崎議員は「コロナで休眠状態だった党の公共事業再点検を再起動させたいと考えている」と表明した。

 報告集会で配られた判決要旨は6ページで、ここで初めて棄却理由が明らかになった。これほどでたらめばかりの事業ですら認可は国土交通大臣の裁量の範囲内だという。これでは、いったん行政による認可を受けたら最後、どんなでたらめ事業でも司法の場で問うことは不可能になる。司法の事実上の「自殺」である。

 (1)鉄道事業法は、開業後の鉄道が継続的事業運営を行えるよう監督することが目的の法律であり、従って開業前のリニアには適用とならない、(2)認可はあくまで全国新幹線鉄道整備法に従って判断すればよい――という東京地裁の判断も責任逃れに他ならない。建設途中の鉄道に将来性があるかどうかは、周辺人口とその推移、沿線での経済活動の規模等を見れば相当程度わかる。JR東海の当時の社長みずから「採算に乗らない」と表明するような事業を行政が認可し、司法もそれを追認するならば、リニアが計画倒れに終わり、3兆円にも上る財政投融資が不良債権化したあげく、JR「倒壊」となった場合の責任は行政も司法も共に負うことになると警告しておこう。

 原告のひとり、天野捷一(しょういち)さんは、この日、裁判所の前で掲げた「不当判決」の旗のほかに、本来掲げるはずだった「勝利判決」の旗を開いて見せると「本当はこれを掲げたかったのですが、控訴審に向け取っておきます。控訴審ではこちらを使えると期待しています」と発言。事実上の控訴宣言だ。



 会場からは「司法はでたらめばかりで悔しい」という声が相次いだ。筆者もそれらに共感するが、原発訴訟で敗訴したときのような悲壮感はなかった。すでに稼働しているものを司法の場で勝って止めており、「負ければ翌日から即、再稼働」となる原発訴訟と異なり、まだ影も形も現していないものの建設工事の法的根拠を予防的に失わせることを目的としたリニア裁判の場合、負けたからといって、故障したままの工事用シールドが突然復旧し、明日から破竹の勢いで地下を掘り進めるようになるなどという事態は、およそあり得ないからである。

 この日、ストップ!リニア訴訟原告団、ストップ!リニア訴訟弁護団、同訴訟サポーター一同の3者連名で声明が発表された。「本判決は、国及びJR東海の主張を丸写しにしたものであり、現実に生じている実験線での環境被害を無視したもので、責任ある判断を放棄したに過ぎない。原告団・弁護団はこの不当な、詐取された認可処分を維持させることは、リニア中央新幹線という負の遺産を後世に残すことになると考え、上訴審で最後まで戦い続ける所存である」と結ばれている。

 安全問題研究会もこの訴訟を最後まで支援し続ける。リニア中央新幹線問題は、全国で同時進行するローカル線問題の深刻化と併せてJR体制を蝕み、揺るがさずにはいない。地域公共交通活性化再生法の小手先の見直し程度ですむほどJRの現状は甘くなく、民営JR7社体制が遠からず再編を迫られるという当研究会のかねてからの見通しを修正する必要は全くない。むしろその時期は予想より早く訪れると見越して、関係者は準備に入るべきだと当研究会は考えている。

<参考資料>
1.ストップ!リニア訴訟 判決要旨
2.ストップ!リニア訴訟原告団、ストップ!リニア訴訟弁護団、同訴訟サポーター3者連名の声明

<映像>ストップ!リニア訴訟 判決前集会/東京地裁前

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真夏の北陸の旅(第3~4日目)~長年の悲願だった黒部峡谷鉄道に!

2023-07-18 23:25:59 | 鉄道・公共交通/趣味の話題
あいの風とやま鉄道・黒部駅前「ホテルアクア黒部」で朝6時に目覚める。今朝も電鉄黒部を7:14発の富山地鉄本線・宇奈月温泉行きに乗らなければならない。普段の仕事の時でもこんなに早く起きないのに、因果なものだ。

電鉄黒部駅は、あいの風とやま鉄道・黒部駅から少し離れており、徒歩で10分程度かかる。遅くとも7時にはホテルをチェックアウトしなければならない。・・・が、朝食開始は平日は6時だが、土日祝は7時で、とても間に合わない。せっかく朝食付きプランを予約したのに、ついてないな……と昨夜のチェックイン時にフロントでぼやいたら、「6:45に食堂に来てください。せっかく朝食付きの代金を支払ってくれているのですから、何とかします」と取りはからってくれた。食堂従業員は準備のため6:30頃には出社しており、1~2人分なら対応できるという。ホテル側の取り計らいに謝意を伝え、約束通り6:45分に朝食を摂る。胃の手術を受けて以来、早食いは厳禁なのだが、こんな時は仕方ない。最近は早食いもけっこうできるようになってきた。

7時ちょうどに、改めてフロントに謝意を伝え、チェックアウト。通常、当ブログでは宿泊した旅館・ホテルの名前は紹介しないルールにしているが、このような特別な取り計らいやサービスを受けた場合には、感謝の意を込めて紹介することがある。

朝から汗だくの猛暑の中を歩いて電鉄黒部に到着。7:14発、宇奈月温泉行きに乗る。宇奈月温泉に7:46に到着。いよいよ長年の悲願だった黒部峡谷鉄道に乗る。宇奈月温泉駅から、黒部峡谷鉄道・宇奈月駅までは大人の足なら徒歩5分だ。予約している宇奈月8:17発のトロッコ列車に乗る。

もともと交通の便の悪い地域の上、冬季運休という壁もあり、黒部峡谷鉄道の乗車は望んでもなかなかかなわず、長年の悲願だった。東京方面からは、北陸新幹線・黒部宇奈月温泉駅ができて多少は訪れやすくなったかもしれないが、それも気持ち程度だろう。



定刻通り、トロッコ列車は宇奈月駅をゆっくりと滑り出す。曲がりくねった762mmのナローゲージを、2両編成の電気機関車の牽引するトロッコ車両が40km/h程度の速度で走るが、観光列車にはこのくらいの速度がちょうどいい。地元出身のタレント室井滋さんの観光案内が、リズムがあって乗客を和ませる。9:33、欅平に到着。

<動画>2023.7.17 黒部峡谷鉄道 宇奈月~欅平(全区間ノーカット)


欅平に、ガイドブックに載っていない思わぬ見所があるかもしれないと考え、帰りは11:04欅平発まで1時間半を確保している。駅屋上の展望台などを見るが、とにかくこのうだるような猛暑には参った。まだ昼食には早いと思ったが、朝6時に起きて動き回っているため空腹を感じる。欅平駅2階のレストランで早めの昼にする。

11:04、欅平発の黒部峡谷鉄道の列車は、雨天など悪天候の場合に備えて「リラックス車両」を事前予約していた。窓が閉まる箱形の一般車両で、トロッコと乗り比べてみようと思い、運賃の他、わざわざ500円の料金まで払ったが、いざ乗り込んでみると冷房がない。窓は全開になっているが、停車中など風が吹き抜けないときは車内が暑い。

天気がどうなるかわからないための「賭け」の要素が大きかったが、抜けるような青空の下、この猛暑ではどう見てもトロッコが正解だった。改札通過後、車内改札が行われていないこと、トロッコ車両も座席に余裕を持たせる運用になっていることは往路でわかっていたので、こっそりトロッコ車両に乗り込む手もあったかもしれない。

欅平を定刻通り発車した列車は、宇奈月に12:23着。富山地鉄・宇奈月温泉発の列車は12:45発で、少し時間がある。外はうだるような猛暑なので、駅前に関西電力が設置している発電所記念館(入場無料)を見る。富山地鉄本線に乗り、今度は新黒部で下車(13:09着)。黒部宇奈月13:34発北陸新幹線「はくたか564号」で大宮まで行き、南浦和から武蔵野線に乗る。

武蔵野線に乗るのは本当に久しぶりだ。記憶に間違いがなければ、横浜勤務時代の1998年か99年を最後に乗っていない。実に四半世紀ぶりだ。そのまま立川へ向かい、知人と落ち合う。この日は立川市内のホテルに泊まる。夜になっても30度を超える異様な猛暑の中、飲食店を歩いて探すのも面倒になり、コンビニで食材を買い込んでホテルに戻った。

翌18日朝。立川のホテルを出て八王子に向かう。八王子から横浜線で新横浜に出る。いよいよここから3月に開業したばかりの相鉄・東急新横浜線の乗車をめざしたが、ここで思わぬ事態が起きた。東急線内での「車両故障」のため、ダイヤが大幅に乱れている。次の日吉方面の発車は30分後の午前11時過ぎで、あまりに遅すぎる。ここにこだわっていたら、この日、年休を取ってまで遠征を続けた最大目的である「ストップ!リニア訴訟」東京地裁判決(13:00から傍聴抽選)に間に合わなくなる。

なんてことだ……と無念の思いがするが、やむを得ない。相鉄・東急新横浜線乗車は断念し、そのまま東海道線で東京に向かう。

<完乗達成>富山地鉄本線、黒部峡谷鉄道

結局、今回の北陸の旅の3~4日目で完乗達成したのはこの2社2路線のみ。2日目の2社3路線と合わせ、2社5路線(この他、参考記録1社1路線)にとどまった。北陸鉄道を落としたのも痛かったが、簡単に乗れると思っていた相鉄・東急新横浜線まで落とすとは思っていなかった。

北陸鉄道は、いずれ北陸新幹線敦賀開業(2024年春に予定)後のいずれかの段階で、乗りに行くチャンスはあると思う。相鉄・東急新横浜線は、6月3日にも挑戦したが、よもやの台風襲来で失敗している。2度続けての失敗とは……。

鉄道乗車に限らず、私のルールでは、3度続けて失敗したことからは、しばらく「冷却期間」を置くと決めている。今後、7月末と10月下旬に上京予定があるが、もしもう1回失敗した場合は、3度目となるので、相鉄・東急新横浜線の乗車はしばらく(数年スパンで)延期することになると思う。悪い流れも数年置けば、変わる可能性があるからだ。

完乗に3回挑戦したが、台風、地震発生、大雨により3度とも失敗した只見線は「冷却期間」を3年置くことに決めた。実際には、その間に大雨による不通期間があり、結局、4度目の挑戦までに4年もの間を置くことになった。4度目の挑戦では、「俺の行くところ、晴れなかったことがない」というファン仲間でも屈指の晴れ男、J・S氏に全区間、同行を求めてようやく達成したことがある。

全線完乗には時に困難が伴う。相鉄・東急新横浜線は、もしかすると私にとって「第2の只見線」になるかもしれない。

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真夏の北陸の旅(第2日目)~富山地鉄に乗る

2023-07-16 20:59:20 | 鉄道・公共交通/趣味の話題
2日目となる7月16日早朝、ホテルを午前6時に出て、地下鉄で大阪駅へ。「サンダーバード1号」に金沢までの全区間乗る。経営悪化で上下分離の動きが出ている北陸鉄道には「乗れたら乗りたい」くらいの気持ちだったが、朝から35度近い猛暑に加え、北鉄金沢駅の場所がなかなかわからないため、結局乗れずじまいになってしまった。北鉄に乗れなかったために生まれた中途半端な空き時間は、金沢屈指の観光名所である近江町市場や兼六園に行くには短すぎるし、ちょっとした用事を済ますには長すぎる。結局、金沢駅の散策で終わった。

当初計画では金沢10:58発、北陸新幹線「はくたか560号」に乗る予定だった。北鉄浅野川線を往復してから乗り継ぐには最速でもこの列車になるはずだったが、北鉄に乗り損ねたため、予定を早め金沢10:34発「つるぎ706号」(富山行き)に全区間乗り通す。はっきり言えば新幹線に乗るような距離ではないが、新幹線と在来線の乗継割引が多くの区間で廃止となる中、同じJR西日本エリア内ということもあってか北陸本線特急と北陸新幹線とはいまだに乗継割引が適用される。トータルで見るとあまり変わらない。

10:57、富山駅着。昼食を摂るにはまだ早すぎるので、手荷物預かり所にキャリーバッグを預け、電鉄富山駅に向かう。北陸新幹線を1本早めたのだから、富山地鉄も1本速い列車に乗れることを期待したが、……結局、乗り継ぎできるのは当初計画と同じ列車だった。

富山地鉄には初めて乗る。はるか昔は国鉄からの乗り入れや連絡運輸(乗車券類の通し販売)も行われていたが、だいぶ前に姿を消した。駅窓口で聞くと、1日フリーパスがあるという。買おうとしたが、富山地鉄のような営業キロの長い私鉄では、ひょっとすると2日間フリーパスがあるかもしれないと思い、聞けばそれもあるという。おおざっぱな計算でも、今後、当初の計画通りに乗り進められれば確実に元が取れるので、購入する。2日間で4,600円だが、地方私鉄とは思えない富山地鉄の路線の長さを思えば安いものだ。





11:45に電鉄富山駅を出て、まずは不二越・上滝線を岩峅寺(いわくらじ)まで乗り通す。12:20、岩峅寺着。すぐに12:26発の立山線・立山行きに乗り換える。12:54、立山着。

立山駅からは、立山ケーブルで美女平をめざす。ケーブルカーは鉄道事業法適用であるものの、索道に分類され、私の全線乗車ルールでは対象外。乗車しても参考記録扱いだが、多くの登山客やスキー客が訪れる「立山黒部アルペンルート」の一部をなすこのケーブルカーに、ここまで来て乗らない手はない。それに、もし将来「ケーブルカーも乗車対象」とルールを変更するようなことがあったときに、「やっぱりあのとき乗っておけばよかった」とは思いたくない。乗れるものには乗っておけ、と自分を奮い立たせ、駅に並ぶ。

正直なところ、ごった返す登山客でケーブルカーは臨時便を運転しなければならないほどの大混雑。長蛇の列ができていたが、1本待つことで乗れた。何しろ新型コロナの5類移行後としては初の3連休なのだ。

観光地なのだから昼食を摂れる場所は美女平にあるだろうと思ったが、考えが少々甘かった。数軒ある飲食店はどこも満員で、すぐに入れそうな様子には見えない。やむを得ず、帰りのケーブルカーに乗り、再び立山駅に下りる。駅構内に登山客向けの軽食店があったので、うどんを食す。塩分・水分ともに豊富なうどんは、熱中症対策としてはとても適したメニューといえる。

<動画>2023.7.16 立山ケーブル 立山~美女平


立山からは、岩峅寺まで立山線を折り返した後、寺田まで立山線を走り、本線に直通する14:00発電鉄富山行きに乗る。予定通り、15:10電鉄富山駅着。

ここで、地域公共交通活性化再生「優良事例」とされるライトレールをめざす。JR西日本・富山港線時代に一度乗っているが、一部区間は道路上に付け替えられるなどして、旧富山港線とまったく同じではない。少なくとも、ルートが変わった区間には乗っておかなければならない。

富山駅は、もともと駅南側を走っている市内電車と、北側を岩瀬浜まで走っていた旧富山港線転換ライトレールを直通運転できるようにするため、富山駅をぶち抜き、線路を駅構内でつなげるという大胆なもの。市内電車からやってきたLRT車両に乗る。途中、単線区間があるためLRTはなかなか富山駅を発車できなかったが、対向列車が富山駅に入線するとようやく道路信号が青になった。

道路信号に従いしばらく路面区間を走る。「奥田中学校前」電停付近で、LRTは大きく左折して道路を外れると、旧富山港線のレールに乗る。ここで右側を見ると、道路の向かいに遊歩道のような細い道があり、これが旧富山港線の跡地だとすぐにわかった。長年、鉄道ファンをやっていると、廃線跡は何となくわかるようになる。

旧富山港線区間に入ると、LRT車両は急にスピードアップする。60~80km/hくらいは出していることが速度計からわかる。停留所の数は旧富山港線時代より大幅に増えた。国鉄系気動車から床面の低いLRTに変わったため、JR時代のプラットホームは廃棄され、新たに電停が作られている。

岩瀬浜に到着すると、駅前のロータリー付近で待機していた「フィーダーバス」がロータリー内に進入してくる。列車とバスの乗り換え待ち時間をなくすためで、全駅ではないものの、主要駅では行われている。正直、「ここまでやるのか!」と驚かされるが、冷静に考えれば、列車の到着に合わせてバスを運行するというのは、乗客目線で考えれば当たり前のことだ。この「当たり前」が日本ではなかなか実現せず、近年ではできなくて当たり前というある種のあきらめムードが支配的だった。富山港線時代は乗れば必ず座れるほど空いていたのが、いまや始発駅でも座れないのが当たり前なほど車内は混んでおり、しかも休日のせいか、明らかに中高生とわかる若年層が多いことも特筆すべきだろう。



なるほど、国が地域公共交通活性化再生「優良事例」に挙げたくなるのもわかる。「当たり前」のことを、当たり前にやることが実は最も難しいのだ。その当たり前のことを、当たり前に実現した富山市の努力を多としたい。

同時に、指摘しておかなければならないのは、日本中、どこでも富山市のようにできるわけではないということである。もともと、富山地鉄という地元に広く定着した有力な私鉄が長大な路線網を持っており、その会社にJRのローカル線を引き受けてもらうことができた。市内電車と旧富山港線転換ライトレールがうまく接続できたのも、両者が富山地鉄という1事業者の中で完結しているという背景を抜きにすることはできない。複数の公共交通事業者の枠を超えた連携という、国がめざす本来の活性化再生の域にはまだ達していない。それに、富山のような好条件が重なっている場所はほとんどない。地元に根ざした有力な私鉄も市内電車も持たない他都市が同じようにしたくても、できないのが実情だろう。

国が、地域公共交通活性化再生の旗を振ることに反対はしないが、他のすべての地域にこれと同じことを求めるのは、「みんなに大谷翔平になれ」と求めるようなものだ。所与の条件が揃っているのかどうかを見極めてからでないと、単なる公共交通のコンパクト化、縮小だけに終わりかねない。そんな危惧も同時に感じた。

富山駅に戻ってきた私は、午前中、預けたキャリーバッグを手荷物預かり所で回収。富山地鉄本線を、電鉄黒部まで乗る。あいの風とやま鉄道・黒部駅にほど近い「ホテルアクア黒部」に投宿。明日も早朝の出発になるため、早めに就寝、猛暑下の遠征による疲れの回復に努める。

<完乗達成>〔新規乗車〕富山地方鉄道不二越・上滝線、立山線、〔奪還〕富山ライトレール(富山駅~岩瀬浜)、〔参考記録〕立山ケーブル

※立山ケーブルは索道のため参考記録。また、富山ライトレールは旧富山港線時代に一度全線完乗しているが、富山駅~奥田中学校前電停付近までは旧富山港線時代の場所から、道路上にルートが変わっている。このため、富山駅~奥田中学校前までの区間を新規乗車区間とみなし、富山ライトレールの富山駅~岩瀬浜を「奪還」(完全乗車達成後、線路付け替えにより再び未乗車区間が発生した場合において、当該未乗車区間の全部に再度乗車し、全線乗車状態を取り戻すこと)として整理した。

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真夏の北陸の旅(第1日目)~「ノーモア尼崎事故!生命と安全を守る7.15集会」に参加、報告

2023-07-15 22:02:29 | 鉄道・公共交通/交通政策
JR福知山線脱線事故の翌年から、JR西日本の労働組合や関係者を中心に始まり、毎年4月に尼崎で開催されている「ノーモア尼崎事故!生命と安全を守る集会」は、統一地方選の年だけは4月を避けるという暗黙の合意がある。統一地方選の年は6月頃に開催されることが多いが、今年は諸事情で7月15日にずれ込んだ。

また、「ストップ!リニア訴訟」の判決が7月18日に東京地裁で言い渡されることはかなり早い段階でわかっていた。この両方に行くとなると、どうするのがいいのか考えていた。北海道から7月15日に大阪に行き、一度戻ってすぐにまた18日に上京なんてことをしていたら身体が持たないし、せっかく帰っても自宅でゆっくりできるのはほんのわずかな時間しかない。いろいろ考えた結果、15日の尼崎から18日の東京地裁まで遠征を続けることにした。

そうすると、7月16~17日の2日間が丸々空く。この2日間をどうすべきか。大阪から東京までサプライズで「サンライズ出雲・瀬戸」に乗り(サンライズは上り列車のみ、日付が変わってから大阪に停車するので乗車可能)、国立国会図書館(東京本館)で資料・文献の調査をすることも考えたが、あいにく3連休中は休館とわかった。

結局、以前から行ってみたいと思っていた富山地鉄、黒部峡谷鉄道に加え、今年4月に成立した「地域公共交通の活性化及び再生に関する法律」改正案の国会審議で、活性化再生の「優良事例」とされた富山ライトレールにまとめて乗るなら、2日間をフルに使えるここしかチャンスはない。ここを逃せば、おそらく次のチャンスは十数年後になるかもしれない――そう考え、思い切って行くことにした。なお、遠征自体は今日から始まっているので、便宜上、本日を遠征初日として扱う。初日は集会終了後、大阪市内中心部のホテルに投宿。

なお、この日、「ノーモア尼崎事故!生命と安全を守る7.15集会」における安全問題研究会の報告レジュメ「地域公共交通活性化再生法の一部改定について」 をアップしている。また、併せて集会資料も安全問題研究会サイトに掲載した。

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【週刊 本の発見】『超電導リニアの不都合な真実』

2023-07-06 23:21:14 | 書評・本の紹介
(この記事は、当ブログ管理人が「レイバーネット日本」の書評コーナー「週刊 本の発見」に寄稿した内容をそのまま転載したものです。)

「不可能なものは不可能。中止一択」とわかる画期的な1冊~『超電導リニアの不都合な真実』(川辺謙一・著、草思社、1,700円+税、2020年12月)評者:黒鉄好

 2020年12月の発売直後に買っていたが、今回、レイバーネットTVでリニア中央新幹線を特集するにあたり、予備知識を持っておかねば、と慌ただしく読んだ。本書を読破すれば、問われているのは世間一般で思われているような建設の「是非」ではないとわかる。そもそも技術的に不可能なのだ。

 本書が明らかにした事実は多岐にわたるが、さしあたり、最も深刻なのはリニアにとって致命的な「クエンチ現象」を克服できないまま今なお建設が続いていることだ。リニアは、電気抵抗がゼロになる「超伝導状態」を維持することで車体を地上10cmの高さに浮上させ、高速走行することができる。クエンチとは、この超伝導状態を維持できなくなる現象であり、完全に防止できる技術的めどは立っていないという。超電導技術自体はMRIなど医療現場で使われる機械にも導入されているが、クエンチはここでも起きている。ただし、固定した建物内で関係者が常時監視しながら対処できる医療機器と異なり、監視要員のいない場所を走るリニアでクエンチが発生しても対処する方法がない。クエンチ状態が長く続けばコイルが発熱し火災の恐れもある。山梨実験線ではクエンチは発生していないとするJR東海の「公式見解」に反し、実際には1999年に発生していたことは、地元紙「山梨日日新聞」でひっそりと伝えられた。

 川辺氏は、JR東海が実施している山梨実験線での試乗体験もしている。「揺れすぎて気分が悪くなった」「思ったほど揺れなかった」と試乗体験者の評価は二分している。揺れに関しての評価は主観的にならざるを得ず、私からこれ以上のコメントは避けるが、気圧の変化で耳がツンとなる現象が酷く、同乗した川辺氏の連れ合いは「二度と乗らない」と宣言した。浮上走行から減速し、ゴムタイヤで軌道に「着陸」する際に生じる飛行機のような「ドスン」という衝撃も、浮上式走行である以上完全には除去できない。利用者に優しいことが公共交通機関の最低限クリアすべき基準だとするなら、先入観のない体験試乗者がそのような判断を下すものは公共交通にふさわしくない。

 山梨実験線の延伸区間が単線で現在まですれ違い走行試験をしていないこと、磁気浮上式走行には不要なはずの電柱が同区間に建てられており、架線柱に転用可能なことから、JR東海はとっくにリニア方式をあきらめ、通常の新幹線方式に転換するつもりではないかと川辺氏は疑う。それが可能であることも、JR東海関係者の過去の証言を丹念に調べ確認している。

 最終章で川辺氏は(1)あくまでリニア方式で開業を目指す (2)通常新幹線方式に転換 (3)事業中止――の3つの選択肢を示した上で、事業中止が最も適切と結論づける。リニア方式は技術的に無理であり、通常新幹線方式への転換では政府が目指す3大都市圏連結(スーパー・メガリージョン)構想を達成できないため、消去法で事業中止しか残らなかった。技術的に不可能なものを不可能と言う――そんな当たり前のことがなぜこんなに難しいのか。そこに日本社会の病理を感じるが、リニアに限らず、屁理屈を並べて事業続行を目指す推進側に忖度なく中止を打ち出した著者の姿勢こそ私は高く評価したい。

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レイバーネットTV第187号 : どうする? どうなる? 今世紀最悪の国策事業「リニア」を斬る

2023-07-01 16:10:39 | 鉄道・公共交通/交通政策
管理人よりお知らせです。

安全問題研究会代表・黒鉄好が出演した「レイバーネットTV第187号 : どうする? どうなる? 今世紀最悪の国策事業「リニア」を斬る」が、6月28日に放送されました。以下、アーカイブで見ることができます。

放送終了後の速報記事はこちら。また、「レイバーネットTV「リニア特集」(6/28)を見て~公共交通とはどうあるべきものなのか」と題した、JR東日本輸送サービス労働組合・関昭生さんからの感想が寄せられました。

レイバーネットTV第187号 : どうする? どうなる? 今世紀最悪の国策事業「リニア」を斬る


なお、安全問題研究会代表も、放送終了後、この番組の企画に至る裏話や、時間切れで話せなかったことなどをレイバーネット日本に投稿しました。以下、全文をご紹介します。
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レイバーネットTV「リニア特集」を企画して思ったこと

自分で企画を立てたレイバーネットTVでしたが、無事終えてホッとしています。

この番組の準備も兼ねて、6月3~4日の週末、レイバーネットフィールドワーククラブで大鹿村現地交流を行う予定でしたが、思ってもみなかった台風接近による大雨のため中止になってしまいました。気象庁ホームページによれば、関東甲信の今年の梅雨入りは6月8日(速報値)。梅雨入りもしないうちから台風が来るなんてまったく予想もしておらず、こんなところにも最近の気候変動の深刻さを感じます。

それでも、レイバーネットメンバーの何名かは6/24に現地取材に入り、撮影や現地の反対運動関係者の聞き取りを行うことができました。ただ、私は北海道に住んでいるため、6/24に上京して大鹿村取材をした後、いったん戻って6/28にまた放送本番のため北海道から上京・・・なんてことをしていてはとても身体が持ちません。断腸の思いで6/24の取材参加は見合わせました。このため、結局、大鹿村現地を見ることができないまま放送本番に臨まざるを得ませんでした。自然相手なので仕方がないとはいえ、画面に映ったメインキャスト4人の中で、現地を一度も見ないまま放送本番に臨んだのは私だけです。

そんな経緯があったせいか、自分にコーディネーターの資格があるのか? 現地も見ず、本で読んだ付け焼き刃の知識で事が足りるなら、この役割は自分でなくてもいいのでは? という葛藤は、結局、直前まで消えることはありませんでした。「悩んでも仕方ない。リニア問題に関しては第一人者である樫田さん、天野さんに出演してもらうことができた時点でこの番組の成功は約束されたも同然なのだから、自分は大船に乗ったつもりで、2人の持ち味や知識を最大限、引き出す役割に徹しよう」と決心が固まったのは、東京入りした放送前夜のことです。インターネットTVに限ったことではありませんが、物事を成功させるにはやはり人選が大事だと再認識しました。貴重なお話をいただいた樫田さん、天野さんには、私からもこの場をお借りしてお礼申し上げます。

放送終了後、「本当はもっと話したかったんじゃないの?」と松原さんから本心を言い当てられ、付き合いが長い人はごまかせないな、と思いました。しかし、今回は「自分ひとりだけ現地を見ていない」という葛藤もあり、中途半端な自己主張は控えることにしました。若い頃の自分ならあたり構わず、ゲストそっちのけで話しまくっていたはずです。この変化を成長と呼んでもいいのか、それとも単に歳を取っただけか。判断は視聴者のみなさんに委ねます。

「無理無謀リニアやがて宙に浮き」という乱鬼龍さんの川柳のうまさには相変わらず脱帽です。鉄道も人間と同じで、地に足がついていなければ意味がありません。リニアは暗礁に乗り上げており、地に足を付けて走る日は来そうにありません。それ以前に、地に足がついてたらリニアじゃありませんが。

番組中でも放送後の懇親会でも時間が足りず、話せなかったことを何点か書いておきます。

懇親会では、こんな不合理だらけの事業がなぜ止まらないのだろう? という話になり「やっぱりゼネコンの利権のためだろう」という、ある意味日本的で無難(?)な結論に落ち着きました。しかし、ゼネコンの利権目的で税金垂れ流し、自然大破壊プロジェクトが強権的に推進されるのは、おそらくリニアが最後になると思います。番組中でも樫田さんからお話があったように、リニア自体、基本構想は1980年代後期で、「バブルの置き土産」的色彩が強いのです。

それよりもさらに大きな理由として、日本の土木・建築業界の弱体化がこのところはっきりしてきたことも見逃せません。国土交通省資料「建設業及び建設工事従事者の現状」によれば、日本の建設業従事者数は平成28(2016)年には492万人と、ピーク時(1992年、619万人)と比べて28.12%も減っています。一方、ローカル線の存廃(「地域公共交通活性化再生法「改正」案)が審議された先の通常国会で、日本の観光業従事者数が900万人にも上ることが明らかにされました。

もっとも、この900万人という数字は、東京23区内のコンビニ従業員まで「観光業従事者数」に含めるなど、かなり「盛った」ものだといえます。単なる販売店などは含まず、純粋に観光目的で事業を行っている人々の数だけを抽出した「673万人」(観光庁資料)が観光業従事者数の実態と見るべきでしょう。それでも建設業従事者数を大幅に上回っています。今や自民党にとって「ゼネコン利権公共事業」をやるよりも「GO TO キャンペーン」をやった方が多くの票が出る。そんな時代になっているのです。

コロナの流行は止まっていないものの、人々の意識の中ではコロナはとっくに後景に退き、ホテルも交通機関も今や政府のキャンペーンなど必要もないほど観光客でごった返しています。それにもかかわらず今も「全国旅行支援」がだらだらと続いているのは、誤解を恐れず言うと「観光業のみなさん、次の選挙も自民党をよろしく」という意味です。

地域公共交通活性化再生法「改正」は悪法ではあるものの、それでもいくつか前進面も持っています。国鉄分割民営化を決定的にした国鉄再建監理委員会答申(1985年)で、今後発足する新事業体は国に一切の財政支援を求めない、と決められました。答申に基づく国鉄解体(1987年)からちょうど20年後の2007年、この法律の制定で初めてJRローカル線への補助金投入の道が開かれました。さらに今回の改正で、まちづくり予算「社会資本整備総合交付金」まで鉄道に使えるようになります。

こんな法律を作って大丈夫なんだろうか、おらが町の「社会資本整備総合交付金」をJRに使うなんてけしからん、と自民党議員が青筋立てて怒りまくるのではないかと思い、はらはらしながら国会審議を見届けましたが、自民党議員から反発する声は上がりませんでした。それどころか、2011年の新潟・福島豪雨で不通になったJR只見線を復旧させるため、黒字会社には補助をしてはならないと決められていた鉄道軌道整備法を議員立法で改正してまで復旧に道筋を付けたのは、福島選出の自民党議員でした。そのときの「手柄話」を衆院国土交通委員会で延々、続ける自民党議員を見たとき「ああ、ゼネコンの時代、本当に終わったんだな」と思いました。

ゼネコン自身にも昔のプライドがなくなりました。税金垂れ流し、環境大破壊公共事業絶対反対の人がいることは昔も今も同じです。しかし昔のゼネコン(とその技術者)にはもっとプライドがあったように思います。「反対している人がいるからこそ、いいものを造って見返したい」「今は反対している人たちだって、完成すれば使うんだろ?」という、賛成反対は別として技術者にあるべき健全な職業的プライドです。

しかし今はどうでしょうか。沖縄・辺野古新基地、リニアは完成の気配すらありません。昨年10月に開業した西九州新幹線(旧「九州新幹線長崎ルート」)に至っては60kmの区間(武雄温泉~長崎)が完成しただけで、武雄温泉から新鳥栖(佐賀県)までは佐賀県の反対でまだルートすら決まっていません。60kmといえば、東京~平塚間とほぼ同じ。お正月の風物詩、箱根駅伝(1区が約20km)のランナーなら3人いれば走れる距離です。「始発駅を発車したら、15分後には終点で全員下車」という笑えない漫才のような状態が、この先何十年、場合によっては半永久的に続くことになるかもしれません。5000億円もの巨費を投じたあげくにこの結果です。

こんな馬鹿げたことを何十年も続けたあげく、国民に1000兆円もの借金を残した政府の下で、為替市場が円安になるのは当たり前です。私は、そう遠くない時期に日本円は紙屑になると考えています。すでにネット上ではいろんな「噂」が飛び交っています。2024年、つまり来年に迫った新紙幣発行のタイミングで「旧紙幣」(つまり現行紙幣)は使えなくなるのではないか……等々。1000兆円の借金を返す当てもなく、日銀総裁のなり手探しが難航する現状を見ていると、単なる「噂」と笑い飛ばす気になれません。それほど日本経済が深刻な状況になっていることも、この機会に知っておいていただきたいです。

そろそろこのあたりにしておきましょう。今後、リニア問題のパート2を企画する機会があるかもしれません。JRローカル線問題も取り上げたいと考えています。もう一度、番組枠を与えていただけるなら、今度は私から、こんな「ヤバい話」を思う存分、したいと思います。

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