安全問題研究会~鉄道を中心とした公共交通を通じて社会を考える~

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こんなにおかしい!ニッポンの鉄道政策
私たちは根室線をなくしてはならないと考えます
国は今こそ貨物列車迂回対策を!

【鉄ちゃんのつぶや記 第23号】犠牲者たちは泣いている

2005-08-13 22:58:44 | 鉄道・公共交通/安全問題
 「御巣鷹の悲劇」といわれた1985年の日航ジャンボ機墜落事故から8月12日でちょうど20年が過ぎた。そのこともあって、祈念日だった12日夜は様々な特別番組が放映されたようだ。

 20年前のむごたらしい夏の光景を私は今でも忘れられない。墜落から一夜明けた翌日、バラバラになって飛び散ったはずの残骸も、なぎ倒された山の木々も完全に燃え尽きどこにも存在していなかった。これでは誰も助かってはいまいと思われたその時、生存者4人発見のニュースに耳を疑ったが、まもなく始まった4人の救出作業によって事実とわかった。4人の生存者を発見したのは地元の上野村消防団。生存者を吊り上げるヘリコプターが、マスコミを追い散らそうと「報道、どけー!」と叫んだあの瞬間は今でも脳裏に浮かんでくる。上野村消防団のメンバーは、墜落現場となった「スゲノ沢」に日常的に出入りしてその事情に精通しており、「スゲノ沢は目をつぶっても歩ける」と豪語する者もいたほどだから、事故現場に行くくらいどうということもなかったのだろう。

 一方、自衛隊などの捜索活動は遅れに遅れた。自衛隊は墜落した12日夜の段階で、すでに航空無線やレーダーなどの情報を通じて墜落現場を割り出していたにもかかわらず現場に入ろうとしなかった。米軍は横田基地が墜落の事実をつかみ、救出のため現場に入ろうとしたが、どういうわけか日本政府から協力を拒まれ、墜落現場の真上まで来た米軍機には最後まで現場への降下命令が出ることなく基地に引き返すという不可解な出来事があったといわれている。当初、自衛隊が現場に入ろうとしなかった原因として、事故機である日航123便が放射性物質を積んでいることが指摘されていた。最近になって、事故機の尾翼の根元にバランサー(機体のバランスを取るための重り)として劣化ウランが使用されていた事実が明らかとなり、自衛隊が現場入りを拒んだ原因が劣化ウランではないかと指摘する識者もいたようだが、劣化ウランの粉じんを乗せた風が毎日のように吹き荒れるイラクに平然と行っている自衛隊が日航機の墜落現場には入れないなどということがあるとは思えず、いずれも根拠薄弱である。日航123便事故に関しては私を最も引きつけた著書…「疑惑」の著者でフリージャーナリストの角田四郎さんは、墜落現場を早い段階から特定していながら、夜が明けて機体が完全に燃え尽きるまで現場に入ろうとしなかった自衛隊の対応を「まるで乗客に生きていられては困る事情でもあったかのようだ」と厳しく批判している。

 この事故に関しては、これ以外にも不可解な点がいくつかあり、それらは未だに解明されていない。この事故の原因究明を卒業論文のテーマに取り上げようとした学生が教授に相談したところ、「気持ちはわかるが、やめておく方があなたの身のためだ」と言われたという話もある。「圧力隔壁が崩壊して事故に至った」とする運輸省航空事故調査委員会(当時。現在の国土交通省航空・鉄道事故調査委員会の前身)の結論に納得していない関係者もたくさんおり、日航の乗員組合は事故直後からボイスレコーダーの公開を求めてきたが、それはついに叶えられなかった。日航乗員組合によれば、これ以外の航空機事故ではむしろ会社側が乗員組合に対し「ボイスレコーダーの解析に協力してほしい」と内容をオープンにすることも多かったそうだ。考えてみれば、パイロットというのは高度な専門家集団だから、航空機については素人である経営幹部が専門家集団の意見を求めるのは当然のことだろう。それが、123便事故についてだけ頑なにボイスレコーダーの公開を拒み続ける会社側の姿勢が乗員組合側には異様なものに映ったことは想像に難くない。

 結局、ボイスレコーダーは何者かの手によって日航から持ち出され、事故から10年以上経ってからテレビ放映されることになる。誰がボイスレコーダーを持ち出したかも今もってわからないままである。「王様の耳はロバの耳」ではないが、隠そうとするから逆に暴かれてしまう典型例かもしれない。いずれにせよ、この事故の真の原因は未だに隠されていると見た方が良さそうだが、事故から20年も経っており、これから真の事故原因に迫る新たな証拠が発見される可能性は限りなく低い。

 それでも日航がこの事故を教訓として安全な航空会社づくりに努力し、その成果が現れているなら520名の犠牲者にとっての供養にもなるだろう。しかし、今の日航はお世辞にも安全とは言えない。今年に入ってから相次いでいる日航のトラブルはその後も減る気配がなく、春にはとうとう羽田空港で日航社長が社員にありがたい訓辞を行おうとしているその目の前で日航機の車輪が脱落するという事故もあった。日航社長にしてみればメンツは丸つぶれだが、自業自得というものだろう。

 安全の根幹に関わるトラブルが相次いでいるこの日航の企業体質に関しては、本来は企業経営者向けの雑誌である「日経ビジネス」誌が今年6月、詳細な特集記事を組んでいる。記事は、トラブルが続く企業体質の背景として、「労務畑出身の者ばかりが重用されて昇進し、それらの経営幹部が労組切り崩しに明け暮れる。そのような、現場を知らない経営幹部と実際の運航現場との絶望的な意思疎通のなさが背景にある」と概略で指摘しており、現在の日航の一番痛いところを見事に突いたものといえるだろう。

 あれから20年…。日航は今年、社長が交代したが、新しい社長が気持ちを引き締めるためと称して8年ぶりに御巣鷹に登ったことは評価してもいい。だが、安全対策は結果が全てであり、どんなに努力しても結果が出なければ何もやっていないのと同じである。その意味では、残念ながら日航という会社は全く進歩していないと言わざるを得ない。昔から1つの大事故の背後には60の小さな事故と300の隠れたミスがあるとよく言われる。トラブルが続く日航は、今また「1つの大事故」に向かって進んでいるのではないだろうか。日航にとって、一連のトラブルでまだ人命が失われていないことが不幸中の幸いである。今ならまだ間に合う。経営幹部が襟を正し、運航現場との意思疎通に努め、労組潰しをやめて彼らと情報や意識、危機感を共有することである。それができなければ、恐ろしい事故がまた起こるだろう。

 事故から20年が経った12日。報道によれば祈念日の御巣鷹には雨が降ったそうだ。角田さんは今でも時々御巣鷹に登るそうだが、何度登っても「この山の鎮まりを感じたことはない」という。12日の雨はきっと、効果的な安全対策を取らず、トラブルが続く日航に対する嘆きと悲しみの涙に違いない。

(2005/8/13・特急たから)

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【鉄ちゃんのつぶや記 臨時号】祝!郵政民営化法案否決

2005-08-08 22:57:15 | その他社会・時事
 郵政民営化法案が圧倒的大差で否決された。その差17票。可決でも否決でもその差はわずかだと見られていたから予想外の大差である。庶民のなけなしの金融資産を取り上げて財界とアメリカに売り渡し、郵政労働者の雇用と労働条件を徹底的に破壊する世紀の悪法、郵政民営化法案は、文字通り「叩き潰された」のである。それも、国鉄職員1047名を路頭に迷わせた中曽根「大勲位」の息子・中曽根弘文参院議員が反対に回るというおまけまで付いたのだ。

 しかし、私にはこの日が来るのではないかという予感があった。5票差で法案が辛うじて可決された7月5日夜のことである。NHKに緊急出演した与謝野馨・自民党政調会長が、番組の中でこんなことを語ったのだ。「この自民党の内紛を単なる権力闘争としてしか見ていないとすればそれは違う。自民党の中で、社民主義とまでは言わないけれども、社民的な考えがベースにあり、市場原理主義的なものに対する反発があった…(この大量の「造反」には)自民党内の思想的対立が反映されている」。

 思えば自民党という政党は、元々、軽武装、経済復興優先主義の「吉田自由党路線」と再軍備、改憲路線の「鳩山民主党」が合同してできた政党であり、吉田路線(ハト派)と鳩山路線(タカ派)とが時として激しく対立しながら政権維持のために寄り合ってきた政党だった。この対立は最近15年くらいはずっと抑え込まれてきたが、小泉「構造改革」路線があまりにも市場原理主義的であり、グローバリズムに忠実でありすぎるために、自民党内からも「脱落」する者が現れ、それが一定の勢力を形成するまでに成長したのが今回の「大量造反」の背景だろう。

 それに加えて昨年頃から、中身の空っぽな「三位一体改革」による地方切り捨てに対し全国知事会が反対の声を上げたり、全国政令都市市長会が政府への非協力を決議するなど、切り捨てられ、踏み付けられる地方の不満は頂点に達していた。そうした不満が、今回の郵政法案採決でついに爆発したのだ。衆議院での採決の際、反対票を投じた自民党議員が中国、九州地方など特に経済状況の悪い地方出身者に集中していたことがそれを物語っている。そうした切実な地方の声を、とうとう自民党議員たちも無視できなくなったのである。同時に、でたらめな民営化政策に対する市民の闘いが自民党内「社民派」の脱落を促したという面も見落とすことができない。

 だが、自民党内反対派の組織「郵政事業懇話会」会長である綿貫民輔・前衆議院議長は、「みんなで靖国神社に参拝する国会議員の会会長」「神道政治連盟国会議員懇談会会長」の肩書きが示すように、決して私たち市民の仲間ではない。その上、自民党は80年代以降、徐々にグローバリズムへ梶を切ってきた勢力であり、国鉄闘争に見られるように反労働者性を持っている。いつまでも彼らが私たちの共闘相手であるとは考えられない。様々な政治的立場が混在し、「同床異夢」状態にある現在の民営化反対運動を、労働者の立場に立った反対運動へと質的に変化させるために、私たちのもう一段の取り組みが必要とされていると言えるだろう。

 さて、最後に小泉くん。郵政民営化法案否決は確かにキミにとって大きな痛手だろう。しかし、市民の反対の声を無視してイラクに自衛隊派兵を強行し、首切り・賃下げを押し進め、貧富の差を拡大させ、社会を不安に陥れたキミのせいで僕ら庶民はもっともっと苦しんでいるのだ。キミにはこれからきっちりツケを払ってもらう。「自民・公明で過半数を取れなかったら退陣」するとキミは言った。そのセリフを僕らは決して忘れない。この手に与えられた清く正しい1票で、必ずキミに引導を渡してやるから首を洗って待っていろ。

 しかし、何はともあれこんなにめでたいことはない。さあ、今夜は祝杯だ!

 (2005/8/8・特急たから)

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