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ロシア軍のチェルノブイリ原発制圧に思う

2022-02-25 23:04:38 | 原発問題/一般
ロ軍、チェルノブイリ支配と発表 空挺部隊投入、原発とその周辺(共同)

ロシアによるウクライナ軍事作戦は、昨夜、筆者が予想したとおりの方向に進みつつある。「プーチン大統領の政治的目標がゼレンスキ―大統領の首にあるのではないか」という予測が今日になって一般メディアでも出始めているが、筆者はそれをメディアに先駆け、昨夜の段階で投稿することができた。筆者の専門分野である公共交通や原子力の分野はもちろん、最近はそれほど専門でない分野に関しても、メディア出演している「専門家」より筆者のほうが詳しいことが多く、専門家もたいしたことはないな、と思うことのほうが多い。

全人類を6回全滅させることができるといわれる6千発の核兵器をロシア軍は持つ。そんな超大国と戦いたい国などあるわけがなく、ウクライナは停戦に応じるか旧ソ連時代のようなロシアの衛星国に戻るかの選択を遠からず迫られるだろう。日本政府・岸田首相が「力による現状変更は国際法違反」であるとロシアを厳しく非難するのは当然すぎるほど当然のことなので筆者としてはこれ以上の論評はしないが、1つだけ触れておかなければならないのは20年前のイラク戦争だ。

このときも、米国が行ったことは力による現状変更であり、野蛮さにおいて今回のロシアと大差ないが、日本政府は他のどの国より早く米国の軍事行動を支持し、「大量破壊兵器を隠し持っている」としてイラクを非難した。どちらも「力による現状変更」という同じ国際法違反行為をしているのに、同盟国なら支持を与え、同盟国以外なら非難するという日本政府の二枚舌、ご都合主義、ダブルスタンダードも決して許されるものではない。

前置きが長くなったが、今回の軍事行動をめぐるニュースで筆者が最も強い衝撃を受けたのは、ロシア軍によるチェルノブイリ原発の制圧である。36年前に事故を起こしたチェルノブイリが、まさかこんな形で注目されることになるとは夢にも思っていなかった。世界の国々が集い、NPT(核不拡散条約)体制を構築したのは、まさに今回のような事態を避けるためではなかったのだろうか。

NPT条約が締結され、核保有国には削減義務が、非核保有国には保有禁止が課せられ、違反していないかについてIAEA(国際原子力機関)が核査察を行う。その目的は、核兵器の原料となる放射性物質が政情不安定な国の手に渡り、偶発的な事態、不測の事態によって放射能汚染が広がるのを防止するためだった。非核保有国は、「早い者勝ち」で核保有国だけが特権を認められる体制は不公平だと抗議。実際にイスラエル、パキスタン、インド、朝鮮などいくつかの「政情不安」国がNPTを無視して核保有の道を選んだ。政情が安定し、みずからは強大な軍事力を持っているため誰からの侵略も受けずにすむ国々だけに核兵器を封じ込めるのが目的のNPT体制は、生まれながらにして運命づけられていたその「不公平さ」のゆえに、放射性物質が政情不安国の手に渡ることを阻止できなかった。

ウクライナは政情が安定し、核保有国の一員だった旧ソ連を構成する共和国だった。ウクライナには核兵器が配備されるとともに、いわゆる「平和利用」としての原発も建設された。ソ連を構成する一共和国に過ぎないウクライナに拒否権はなく、モスクワの都合で危険な黒鉛式原子炉がチェルノブイリに建つことになった。

運転開始当時、この原発の正式名称は「ウラジミール・イリイチ・レーニン共産主義記念チェルノブイリ原子力発電所」であった。その名称は「共産主義とはソビエトの権力と全国の電化である」というレーニンの言葉に由来する。ロシア革命指導者の名が冠せられたところに、ソ連におけるこの原発への期待の大きさがうかがえる。1986年4月、運転開始からまだ3年しか経っていなかった「ご自慢の原子炉」--レーニンの名を冠した原発での世界最悪の事故はソ連の威信を決定的に傷つけた。

確たる証拠はないが、事故から5年後の1991年にソ連が解体せざるを得なかったのは、この事故による国力の低下が原因だと信じる人は今なお多い。その解体で思わぬ形でソ連から分離し独立国家となったのがウクライナだった。NPT体制を有効ならしめるための一環として、米国主導でウクライナはソ連が配備した核兵器を放棄した。チェルノブイリ原発をウクライナに建てると決めたのはモスクワの党中央であるにもかかわらず、ソ連解体を奇貨として超大国ロシアは過酷事故の後始末の一切を小国ウクライナに押しつけ、まんまと逃げおおせた。2006年4月15日付け「毎日新聞」は、チェルノブイリ事故の後始末のためだけに、ウクライナ国家予算の実に5%が充てられているという事実を、よく見なければわからないような小さなベタ記事で報じている(サムネイル画像参照)。

2011年の東日本大震災・福島原発事故を契機に、筆者は反原発運動の道に入った。その直後、ある反原発市民団体が発行しているパンフレットに「原発を並べて自衛戦争はできない」というタイトルがあるのを見つけた。そのタイトルを目にするまで、筆者は原発を抱える国が戦争に巻き込まれるという事態をまったく想定していなかった。原発は、みずからは決して侵略を受けない絶対的強国だけが持つことを許されるものだという感覚があったからである。

原発という凶器を抱えたまま、ソ連解体によって産み落とされた政情不安の小国・ウクライナ。原発事故が歴史の領域に入りつつある36年後の今になって、NPT体制を構築するために集った人たちが最も恐れ、避けようとしていたことが、最も恐れていた形で現実となった。すべては筆者にとって想定内のはずだった--核保有国の首都・モスクワみずから建設を決定した原発が、同じモスクワの指導者の率いる軍隊によって壊されるという、ただひとつの「想定外」を除いて。

原発は決して戦闘に巻き込まれてはならない。したがって、原発を持つ国は必ず軍事大国でなければならない――今回の事態が明らかにした恐るべき事実である。原発は保有国を必ず軍事大国に導き、軍拡競争を生み、世界をも破滅させる。この面からも原発には廃絶しかないことを、ロシアのウクライナに対する軍事作戦が、思わぬ形で証明したのである。

  *  *  *

最後に、どうしても筆者から、読者のみなさんにお伝えしなければならないことがある。それをお伝えすることで当記事の締めくくりに代えたい。福島勤務時代に出会った、ある数奇な運命を持つ女性のことである。

西郷村でピロシキを中心に、ロシア料理を提供する小さな店「Cafe&Shop テレモック」を発見したのは、福島第1原発事故が起きる直前のことだったと記憶する。この店を切り盛りしているのは、ウクライナ出身の当時30歳代の女性だった。本人申告の年齢に偽りがなければ、少女時代、母国でチェルノブイリ事故に遭遇していることになる。その後は日本人男性と結婚し来日、福島を第2の故郷とした。

東日本大震災・福島第1原発事故が起きたのはその直後のことである。夫の母国であり第2の故郷とした日本で、生涯2度目の原発事故に遭うなどとは本人でさえ予想していなかったに違いない。広島・長崎で二重被爆をした人のことを以前、メディアで耳にしたことがあるが、チェルノブイリと福島での二重被曝者となった人が、果たして彼女以外にいるのだろうか。

彼女の家族・親戚は、今も母国にいるはずである。その母国--ウクライナが今、戦場になっている。ロシアとウクライナ、主権を持つ国家同士のこれほど大規模な戦争は、ヨーロッパを舞台とするものとしては第二次大戦後初めてであろう。内戦にまで対象を広げても、一般市民をこれほど大規模に巻き込む市街戦は、89年のルーマニアにおけるチャウシェスク独裁政権崩壊時の争乱や、仲良く暮らしてきた6つの共和国が血で血を洗う惨劇となったユーゴスラビア内戦以来となる。人口300万人を誇る首都・キエフでもしロシア・ウクライナ両軍が正面衝突すれば、ヨーロッパにおける主権国家同士の戦争としては、第二次大戦当時のソ連軍のベルリン突入に匹敵する悲劇になるかもしれない。それは筆者が身震いするほど恐れる最悪の事態である。

こうした事態を引き起こす寸前にまで至らしめた最低最悪の帝国主義侵略者プーチン、第二次大戦で独ソ戦の舞台となり巨大な犠牲を生んだ自国の歴史、西側とロシアを結ぶ戦略的要衝に位置する自国の微妙な地理的条件を知りながら、バランス感覚を失い、NATO加盟を望むという危険な火遊びをしたあげく、自国民を不幸のどん底に突き落としたゼレンスキ―の2人の指導者に、筆者は平和を愛する諸国の市民の名において退場を勧告する。チェルノブイリと福島で2度の放射能被曝という運命に翻弄されたウクライナ出身の女性の家族が、母国で無事であることを願っている。

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(追記)以下は、チェルノブイリ原発事故について伝えるニュース。NHKでは、毎年大晦日に総合テレビとラジオ第1放送で、その年に起きたニュースをまとめ、○○年ニュースハイライトとして放送していました。

長らく管理人の自宅奥にカセットテープのまま眠っていましたが、ロシアによる対ウクライナ軍事侵攻、チェルノブイリ原発のロシア軍による制圧という事態を受け、急遽、デジタル音声で復元。1986年の大晦日にラジオ第1で放送されたニュースハイライトから、チェルノブイリ原発事故について、現地からの特派員報告を含めて伝えた部分を抜き出しています。

ニュース冒頭の爆発音が本物か合成かはわかりませんが、原子力事故に関しての情報隠蔽ぶりは政治体制を問わず同じようです。

1986.12.31 NHKラジオ第1放送/1986年ニュースハイライト/チェルノブイリ原発事故ニュース

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一方、こちらは2011年3月31日に、ロシア国営放送が伝えた福島原発事故に関するニュース。日本人の多くが事故の真相がわからず、右往左往していた時期に、ロシアはかなり正確に事故の状況を伝えています。

ロシアから見た福島 ロシア国営放送

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ロシア軍、ついにウクライナ侵攻 若干の雑感と解説

2022-02-24 23:30:10 | その他社会・時事
24日、ついにロシア軍がウクライナに侵攻した。来るべき時が来たと当ブログは感じている。自称「専門家」の一部には、ロシア軍は侵攻しないとの甘い見通しを振りまく人もいたが、当ブログは侵攻は必ず起こるし、その時期も北京五輪が終わればすぐにでもあり得ると考えていた。ここでは、その根拠を示すとともに、今後起こりうる展開も含めて述べておきたい。

なお、あらかじめ述べておくが、当ブログ管理人は昨年10月4日付記事で告白したとおり、マルクス主義者であるとともに、いわゆる「共産趣味者」でもある。旧ソ連が失敗したのはソ連の官僚指令型社会主義が「人間の顔」をしていなかったからであり、社会主義のすべてが否定されたわけではない。人間の顔に装いを改めた新しい社会主義は必ず復興するし、またそうあらねばならないと考えている。従って以下の記事は「ロシア視点」で記述しながらも、帝国主義的なプーチン政権のロシアの立場を擁護するものではないことはお断りしておきたい。野蛮な帝国主義は、マルクス主義者としての当ブログ管理人が目指す人間の顔をした社会主義とは対極のものである。

 *   *   *

当ブログ管理人が「侵攻は必ず起こるし、その時期も北京五輪が終わればすぐにでもあり得る」と判断した根拠は主に以下の2点である。

<根拠1>ロシアが2022年の新年早々から10万を超える兵力をウクライナ国境へ集結させていたこと

日本でもこのニュースは報道されている。軍事オタクならともかく、軍事に疎い一般の人々にとって、10万が軍事作戦上どのような意味を持つのかを判断するのは難しいかもしれない。しかし、自衛隊の兵員数が陸15万、海4.5万、空4.7万、計25万(出典:「令和2年版防衛白書」(防衛省・自衛隊ホームページ))という数字を示せばその巨大さがわかるだろう。自衛隊の兵員の約半数をウクライナ戦線に投入するのと同じことが起きているのである。ロシアのような広大な国土面積を持つ国では、兵員を移動させるだけでも莫大な経費がかかる。単なる軍事的威嚇や「こけおどし」のレベルでここまではしないであろう。新年早々、ロシアの本気度を見せつけるには十分な兵員数である。

<根拠2>ウクライナの死活的重要性

第2の根拠は、ロシアにとってのウクライナの死活的重要性である。ウクライナはロシアにとって裏庭というべき存在であり、ロシア革命によるソ連建国後、第2次大戦中の一時期、ナチス・ドイツに奪われたことがあるものの、ソ連が奪還した。以降、ウクライナはソ連内の共和国として存在し、ソ連解体後も現在のゼレンスキーが大統領に就任するまではずっと親露派政権が続いてきた。ウクライナはナチスから奪還後、ロシアにとって敵対的外国勢力には一度も割譲したことがない絶対不可侵の土地である。

ソ連・ロシアでは第2次大戦中の独ソ戦を「大祖国戦争」と呼ぶが、ウクライナ東部ハリコフは、ソ連軍とナチスドイツ軍が激突、死闘が繰り広げられ、多くの犠牲者を出した。世界地図を見ればわかるが、ウクライナ・ベラルーシ両国が親露派の手中にある限り、NATO加盟諸国は陸路で直接ロシア領内に入れない。一方でここを失うなら、ロシアにとってウクライナ領内に展開するNATO軍と国境で直接対峙しなければならない事態に陥る。これはロシアにとって悪夢そのものであり、第2次大戦後、最大の危機と言っても過言ではない。独裁者と呼ばれようが屁とも思わず君臨してきたプーチンにとって、この事態を指をくわえて傍観するなら、それは彼自身にとって「第2次大戦後のロシア史上初めて、敵対的外国勢力にウクライナを売り渡した男」の汚名を着せられることを意味する。それはプーチンにとって耐えがたい屈辱であり、政治的死と同じである。ロシアにとっての死活的利益と、彼自身にとっての名誉を守るためなら、どんなことでもするであろう。

以上の2つの根拠から、当ブログは遅かれ早かれ侵攻はあると考えてきた。ロシアに侵攻を思いとどまらせる唯一の手段は、ウクライナが望むNATO加盟を阻止することである。だがそのための外交努力が失敗した以上、侵攻は時間の問題だった。ただそれでも北京五輪閉幕までは待つだろうと当ブログは考えていた。北京五輪中に軍事行動を起こせば、開催国であり、ネット用語でいうところの「レッドチーム」仲間である準同盟国・中国の支持を失うという大きな政治的損失を伴うからである(レッドチームとは、東西冷戦時代に用いられていた「共産圏」という用語に意味としては近いと思う)。ロシアにとってウクライナはいつでも踏みつぶせる程度の小国であり、2週間やそこら待ったところで大勢に影響はないのである。

大半の日本人にとって初めて聞く話かもしれないが、ウクライナのゼレンスキ―大統領は元コメディアンである。政治経験、行政経験はなく、ポピュリズムと、旧ソ連時代、スターリンに虐げられてきたウクライナ国民の歴史的反ロシア感情をうまくくすぐり、大統領の地位をかすめ取った。

ウクライナ国民は、このようなばかげた人物を国のトップに選んだ政治的代償を、これから最も大きな形で払うことになる。コメディアンを大統領に選んだウクライナ国民の行動について、「吉本興業のお笑い芸人が大阪維新に担がれて首相を射止めるようなもの」だと例えれば日本人にもぐっと理解が容易になるであろう。面白半分に維新所属の犯罪予備軍を選挙で連戦連勝させるようなことをしていては、日本もいずれ戦争を招き寄せることになる。日本人にとっても教訓とすべきであろう。

同時に、忘れてはならないのは、ウクライナが四半世紀前、チェルノブイリ原発事故により国土の大部分を放射能で汚染された国家だということである。今回、ウクライナ軍は、チェルノブイリ事故で住民全員が強制避難させられ、無人となった原発労働者の町、プリピャチでロシア侵攻に備えた軍事訓練を行った。「高層マンションなどの建物が当時のまま残されていて、市街戦を想定した訓練に最適だ」というのがプリピャチを選んだ理由だというが、こんなばかげたことをやらかすこと自体が、コメディアン出身の大統領らしく、政治がテレビのお笑い番組レベルに退化してしまっている。放射能汚染に長期間晒され続けた人間は、この程度の思考力、判断力しか持ち得なくなるという事実を余すところなく示している。

そして、この光景はおそらく、日本でも福島原発事故で汚染された東北・関東を中心に、今後10~20年後どんなことが起こるかを示す先行事例でもある。このまま東京に首都を置いていては、日本は立ちゆかなくなるであろう。今からでも遷都、首都移転を真剣に考えるべきだと思う。

ロシアは今後、どこまで軍事作戦を続けるだろうか。親露派支配地域である「ドネツク人民共和国」「ルガンスク人民共和国」はおそらくロシアに併合され、チェチェン(旧ソ連時代の「チェチェン・イングーシ自治共和国」)のように自治共和国に降格されるかもしれない。ウクライナ全土を併合するには莫大なエネルギーを必要とするため、ロシアといえどもそこまでは難しいと思う。ロシアの目標はウクライナのNATO加盟を阻止することにあり、その目的が達成されれば十分であろう。

さしあたり、ゼレンスキ―大統領をモスクワに連れ去り、「NATO加盟はあきらめろ。それができないなら辞めろ」と脅す可能性はある。何しろ、旧ソ連はいわゆる「プラハの春」当時、市民とともに官僚指令型社会主義を「人間の顔をした社会主義」に改革しようとしていたチェコスロバキア共産党・ドプチェク第1書記をチェコに侵攻して連れ去り、モスクワで「改革路線を放棄」するまで脅した前科があるからだ。

ゼレンスキーを連れ去り、「NATO加盟をあきらめるか、辞めるか」迫り、受け入れるまでモスクワから帰さない。その上で、ゼレンスキーを辞任させ、ロシア国内でしているのと同じように、反ロシア派を殺すか逮捕し立候補できないようにして、親露派候補者だけの大統領「選挙」を実施、ウクライナを再び傀儡政権の下に置く--このあたりがロシアの考える「落としどころ」ではないだろうか。

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北海道内、本日も異常豪雪

2022-02-23 23:27:12 | 気象・地震
全国ニュースでも報道されているようだが、この冬の豪雪はちょっと……どころではなく、かなり異常だ。

連日、横なぐりの暴風雪が続き、さっき除雪作業をしたばかりなのに、半日もするとまた20~30cmも新雪が積もるという状態で、ついにここ千歳市では積雪が120cmを超え、観測史上最高となった。

除雪をしてもすぐにうずたかく新雪が積もるので、駐車場から車も出せず、買い物にすら行けずついに冷蔵庫の食料が底をついた。大地震に備えて備蓄しておいた非常食に手を付けざるを得ないかと話していたところ、今日正午頃、丸2日半続いた暴風雪がようやく収まり、晴れ間が覗いた。この隙に、除雪作業をしたらようやく駐車場から車が出せるようになったので、食料の買い出しに行ってきた。

終日運休となり、案内が消えた新千歳空港の発車表示板(2/21 17:55)




新千歳空港駅で運休を伝える液晶パネル(2/21 17:55)


駅の券売機も販売中止 せっかくの「2022.2.22」の2並び入場券も買えなかった(2/21 17:55)


除雪を終え、3日ぶりに車で出た千歳市街 除雪された雪がうず高く積まれ1階部分はほぼ見えない(2/23 13:30)


千歳駅前も、雪がうず高く積まれ駅名板まで届きそう(2/23 13:30)


雪で看板も見えない(2/23 14:20)


イオン千歳店駐車場にて 雪の壁の向こうのマクドナルドの看板は、かろうじて上の部分が見えるだけ(2/23 14:20)


暴風雪状態が丸2日半も続くというのは、道内でも道北やオホーツク海沿岸、日本海側では珍しくないが、札幌近郊では珍しい。こうした状態を招いたのは強い冬型気圧配置だ。23日21時現在の天気図を確認しておこう。



注目いただきたいのは、ベーリング海に中心を持つ「爆弾低気圧」(960hPa)と中国大陸に中心を持つ高気圧(1036hPa)の気圧差がなんと86hPaもあることだ。天気図では、等圧線は4hPa当たり1本ずつ引くことになっているので、この間に等圧線が21本ある計算になる。風速や暴風雪は気圧差が大きければ大きいほど強くなる。風は気圧の差によって生まれるからである。

気圧の差が風を生み出すということを考えると、今回の暴風雪の原因は、単に爆弾低気圧の威力だけにあるのではない。中国大陸の高気圧が異常に強いことにも原因があるわけだが、12月~2月頃は大陸高気圧も毎年、この規模に発達することを考えると、それほど珍しい現象ではない。

豪雪といえば、今でも語り草になっているのが昭和38(1963)年1月豪雪で、「サンパチ豪雪」と呼ばれている。このときの社会状況を描いた「豪雪とのたたかい」という優れた記録映画があるが、これに近い状況をまさか自分が経験することになるとは思っていなかった。この冬の出来事を、おそらく当ブログ管理人は一生忘れないだろう。

豪雪とのたたかい(昭和38(1963)年1月豪雪(サンパチ豪雪)記録映画)


こちらは鉄道とその周辺の人々に対象を絞っているが、音威子府村を中心に豪雪と闘う鉄道員の姿を描いた名作。

興味深いのは、制作が機関車労働組合(機労)であること。機労はその後、国鉄動力車労働組合(動労)に名称を変える。最も戦闘的な労働組合になった後、一転して国鉄分割民営化賛成に態度を変え、現在はJR北海道の最大労組、JR北労組に続いている。時の社会情勢に合わせて、ヒラヒラと身を翻す「軽さ」こそ彼らがしぶとく生き残ってきた強さの源泉であると同時に、一度決めた方針を貫けない彼らの「限界」でもある。

記録映画「雪と闘う機関車 (昭和32年、機労制作)」

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神恵内村長選告示、36年ぶり選挙戦へ 当ブログは瀬尾英幸候補を支持します

2022-02-22 23:35:35 | 原発問題/一般
「核のごみ」文献調査進む北海道神恵内村 36年ぶり選挙戦スタート(毎日)

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 原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場選定に向けた文献調査が進む北海道神恵内(かもえない)村で22日、任期満了に伴う村長選が告示された。いずれも無所属で、6選を目指す現職の高橋昌幸氏(71)と、新人で元会社社長の瀬尾英幸氏(79)の2人が立候補を届け出た。核のごみ受け入れの是非が争点となる。投開票は27日。

 高橋氏は2020年10月、応募検討を求める請願を採択した村議会の意向を受ける形で文献調査の受け入れを表明。第2段階の概要調査でも村民の意見を重視する考えだ。瀬尾氏は隣接する泊村で脱原発運動を続けてきた立場から、概要調査への反対を打ち出す。

 村長選が選挙戦となるのは1986年以来36年ぶり。過去8回連続で無投票となっており、高橋氏の無投票6選が有力視されていた。瀬尾氏は「無投票だと(村民が原発問題を)考える機会がなくなる」として1月に出馬を表明した。

 高橋氏は事務所前で第一声。文献調査の結果を見守る姿勢を示し、概要調査の実施について「決めるのは私ではない。村民の皆さんです。皆さんの意見を聞き、意思を確認してから決断する」と述べた。

 瀬尾氏は村役場前で出陣式を開き「私の任務は核のごみ問題にくさびを打ち込むこと。概要調査に進むことには反対する」と明言。「泊原発を廃炉とし、北海道を救うための選挙だ」と立候補の意義を強調した。

 神恵内村と同様に文献調査が進む北海道寿都(すっつ)町では21年10月、任期満了に伴う町長選で調査応募を主導した現職候補が新人候補を降している。【高山純二、源馬のぞみ】

 ◇立候補者(届け出順)

高橋 昌幸 71[元]村住民課長 ⑤無現

瀬尾 英幸 79[元]会社社長 無新
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当ブログ管理人は、瀬尾候補とはそれほど親しいわけではないが、面識はある。泊原発反対運動を通じて知り合った。サムネイル画像は、2020年8月30日付北海道新聞の「ひと」欄(人物紹介欄)に登場した瀬尾さんの記事で、ちょうど寿都町、神恵内村で核ごみ応募問題が浮上した直後だった。当ブログ管理人が面識を得たのはこれ以降の話で、まだお付き合いは1年ちょっとである。当ブログは今回の選挙で瀬尾さんを断固、支持する。

以下は、昨年秋から年末にかけて、現地入りを含めた取材を続け、今月に入ってから某媒体で発表した神恵内村のルポである。神恵内村の実情、瀬尾候補の人物像含め、よくわかると思うので再掲しておきたいと思う。瀬尾さんは、裏方も務める能力を持っているが、基本的には自分が前に出るタイプで、いわゆる「突破力」のある人物。神恵内のように閉塞し、淀んだ状況を打ち破るにはもってこいの人と言える。この他、北海道の地元紙である北方ジャーナルの3月号記事も参考になる。

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(以下、転載)

【ルポ 核ごみ最終処分場応募の村 36年ぶり村長選へ 絶対無投票にさせない 北海道・神恵内】

 2020年8月、町長による核ごみ最終処分地応募で寿都(すっつ)町が町を二分する騒動に揺れる中、少し遅れて静かに応募したのが神恵内(かもえない)村だ。筆者は昨年10月、神恵内現地にも入っている。寿都に続き、神恵内の「今」も追った。

<写真>「道の駅かもえない」に掲げられていた神恵内村イメージキャラクター


◎静かな「本命」の村

 核ごみ最終処分地への応募が意外性と驚きをもって受け止められた寿都町に対し、道内でも神恵内村は早くから「本命」視されていた。泊原発をめぐって、北海道電力との間に再稼働事前了解権込みの安全協定を締結するとともに、原発関連の交付金を受ける「地元4自治体」のひとつだからだ。泊が着工した1984年から2019年までの36年間で、神恵内村に56億円もの原発関係交付金が投入されている。

 村内に表立った反対運動がないことも「本命視」された根拠である。寿都の賑やかさと対照的に、神恵内村では核ごみ応募反対のチラシ、ポスターの1枚さえまったく見られなかった。

 昨年10月に現地入りした筆者も、地形を見て呆気にとられた。海岸線ギリギリにまで山がせり出し、その隙間を国道が走る。猫の額のようなわずかな平地に役場が置かれ、村民が肩を寄せ合って暮らす。

<写真>山が海岸線にまでせり出す神恵内村 処分場など造る場所があるのか


<写真>神恵内村役場 人口800余人の村に不釣り合いな4階建て これも原発交付金?


 高レベル放射性廃棄物はガラス固化体に加工しても、輸送中に致死量の放射線が出る。重さも約百トンに上るとされる。当然、普通の道路は走れない。原子力専門家は、核ごみ専用の高規格道路と広大な処分場用地が必要だと話す。そんな場所があるとは思えない。

 加えて、資源エネルギー庁が2017年に公表した核ごみ「科学的特性マップ」でも、神恵内村を含む積丹(しゃこたん)半島全域が不適地とされた。「地下深部の長期安定性等の視点」がその理由だ。

<参考図>核ごみ「特性マップ」と神恵内村 黄色は「不適地」とされる


 そんな中、道内で根強くささやかれているのが「神恵内廃村」説だ。核ごみ誘致と引き替えに全村民が村を去り、村民が住む猫の額ほどの平地を処分地に明け渡すというのだ。神恵内村の人口がわずかに797人(昨年末現在)。道内でも音威子府(おといねっぷ)村(770人)に次いで少ないことを考えるとあり得ない話ではない。

 アイヌ語の「カムイ・ナイ」(険しく人が近づけない神秘的な沢)が神恵内の語源とされる。核ごみが埋められ、その名の通り人の近づけない場所となるしか未来はないのだろうか。

<写真>村の中心集落


◎「過ち二度と」と立つ

 神恵内で最後に村長選が行われたのは1986年。チェルノブイリ原発事故が起きた年だ。それ以降すべて無投票だった。高橋昌幸村長(71)は6期目を目指すが、一度も選挙の審判を受けていない。声を上げようとする村民に対し、村長の後援会長が「村民の半分以上は村長の後援会員だ」と発言し公然と恫喝している。そこに1月、泊村在住の瀬尾英幸さんが立候補表明。36年ぶりの選挙戦だ。

 「無投票が長く続いたことがこの結果を招いた。次は絶対無投票にだけはさせない」との決意は固まっていた。だが昨年末、体調を理由に一度はあきらめかけた。若い立候補者を探したが見つからなかった。捨て身になって再び立つと決めたのは最近だ。

 若い頃は労働運動に生き、ストライキも打った。会社倒産後は労組で資本金を出して事業体に変え、みずから社長就任。ヒット商品を次々に生み出した。才気煥発のアイデアマンと地元誌は評する。1942年生まれ、79歳の戦中派だ。

 記者会見では「77年前、戦争を止められず敗戦を迎えた先輩たちと同じ過ちを犯したくない」と語った。当選したら核ごみ応募は撤回するのかとの質問には「村民みんなで熟議を尽くし、出た結論に従う。村トップになれば撤回するのは簡単だが、自分1人で決めても本当の意味での総意ではないと思っている」。労働運動、経営のリーダーを務める中で培われた「民主主義観」に、筆者は逆に本気度を感じた。

 瀕死の状態にある村の民主主義を立候補で蘇生させることができるか。村長選の結果は2月27日に出る。

<動画>2022.1.16 北海道泊村在住の瀬尾英幸さんが神恵内村長選出馬へ! 本日決意表明


<動画>2022.1.16 瀬尾英幸さん 神恵内村長選出馬記者会見

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「誰にも言えず10年を過ごした」小児甲状腺がん裁判原告6人の声

2022-02-18 23:02:08 | 原発問題/一般
「誰にも言えず10年を過ごした」原告6人の声〜小児甲状腺がん患者が東電提訴


勇気をふるって東京電力の提訴に踏み切った6人の原告の声がyoutubeで配信されている。ぜひこの声を聞くとともに、今まで「がんの多発は過剰診断が原因」だと思っていた人は、考えを改めてほしい。「原発での健康被害の話をする者は風評加害者、福島差別主義者」などとわめき散らしている者たちこそ本当の差別主義者であることがわかるだろう。

人を嘘つき呼ばわりする者が正真正銘の嘘つきだった……などという話は、歴史をひもとけばいくらでも転がっている。デマに惑わされないようにするためには、嘘をつく動機を持たない真の被害者の話を聞くことに尽きる。

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【管理人よりお知らせ】ローカル線存続を訴えるビラ2種を作成、公開しました

2022-02-14 21:36:51 | 鉄道・公共交通/交通政策
根室本線、函館本線(長万部~余市間、通称「山線」)が相次いで寸断の危機にあります。根室本線は災害、函館本線は新幹線札幌延伸が原因ですが、つながっている路線、それも本線と名称を持つ大動脈をわざわざ切断し、直通できなくするというのは発展途上国でもあり得ないような世紀の愚策です。かつて新幹線を生み出し、鉄道先進国と呼ばれたのも今は昔、日本は今や世界最低の鉄道後進国に成り下がりました。こうした背景に、鉄道を国民の公共交通から「民間企業の商売道具」に変えてしまった国鉄分割民営化に原因があります。

当研究会では、取り急ぎ、存続のために何が必要か、今最も有効と考えられる方策を訴えるためのビラ2種を作成しました。「私たちは根室線をなくしてはならないと考えます」と「国は今こそ貨物列車迂回対策を!」です。北海道向けに作成していますが、全国でも豪雨災害の大規模化によって毎年のように鉄道寸断による迂回輸送は発生しており、全国的課題です。全国でこのビラを広げていただくようお願いします。

なお、「当ブログのご案内」からもリンクしていますが、この「ご案内」はスマホ版、タブレット版には表示されません。その場合は、上記リンク先を直接拡散してください。

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【管理人よりお知らせ】2/6開催 Zoomお話会資料を掲載しました

2022-02-12 22:27:33 | 原発問題/一般
管理人よりお知らせです。

2月6日、関西地方への避難者で作る「つながろうフクシマ つながろう避難者の会」主催のZoomお話会で、当ブログ管理人が講師としてお話をさせていただきました。

その際に使用した資料をアップしましたので、お知らせします。

●原発事故からもう(まだ)11年 あの日、福島で経験したこと【スライドPDF版】
●原発事故からもう(まだ)11年 あの日、福島で経験したこと【スライドPDF版(印刷配布用)】

印刷配布版は、文字が小さく、若干、読みにくいかもしれません。

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東電刑事裁判当日の東京高裁前スピーチ

2022-02-11 23:24:56 | 原発問題/福島原発事故刑事訴訟
東電刑事訴訟の当日は、裁判所前で支援者によるリレースピーチを行うのが恒例になっている。今回は新型コロナ再拡大のため前回(昨年11月)のようなヒューマンチェーン(人間の鎖)行動は中止されたが、リレースピーチは行われた。当ブログ管理人のスピーチを紹介する。

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 みなさん、朝早くからお疲れ様です。私は今日、北海道千歳市から参りました。2013年3月まで、原発事故を挟んで6年間、福島県西郷村で過ごしました。

 つい最近ですが、2月6日の日曜日、私は、関西の人たちの主催するZoomお話会に呼んでいただく機会があり、3.11当時のこと、原発事故から10年を過ぎた日本社会で何が最も変わり、また、変わらなかったのかを含め、お話しさせていただきました。

 原発事故以降、最も変わったのは国民世論です。7割の人が原発に反対するようになりました。少し変わるか、または変わる兆しが見えているのが民間企業・団体です。多くの企業が環境を意識し、再生エネルギーなどに取り組むようになってきました。逆に、最も変わっていないのが行政と国会です。行政に至ってはむしろ劣化し、ますます命を軽んじるようになってきたと思います。

 司法・行政・立法の三権のうち、最も変わったのは司法だと思います。原発事故後は原子炉の運転差し止めや、国の責任を認めた賠償判決が次々に出るようになりました。本当に大きな変化です。日本に初めて原子力の灯がともってから3.11原発事故までの40年間で、住民側が勝訴した判決はたった2件しかありませんでした。もんじゅの差し止め判決、そして2006年に北陸電力志賀原発の差し止めを命じた判決の2つだけです。そして、この判決を金沢地裁で書いたのが、当時の井戸謙一裁判官でした。井戸裁判官は、退官後は弁護士となり、今回、勇気をふるって6人の若者が立ち上がった甲状腺がん裁判の弁護団長をお務めになっています。このように、個別の闘いのように見えるものも、大きな流れで見ればつながっているのです。

 6人の若者たちは、11年もの長きにわたって事故と病気の関係を誰にも相談できないまま苦しんできました。原発をカネのために誘致した結果としての事故による苦しみ、病気による苦しみに加え、私たち大人は、未来ある若者たちに抑圧と沈黙を強いるという、3つ目の罪を犯したのです。私は大人の1人として、この罪に胸を締め付けられます。

 今日のこの刑事裁判は現場検証と証人尋問が実現するかどうかが最大の山場です。若者たちが病気で苦しんでいるのに救済されないのは、責任者である東京電力を処罰できていないからです。苦しんでいる人がいるということは、そこに苦しめている人と、苦しめる原因となっている「現場」があるはずです。その現場を裁判所が検証しない、証人の証言も聞かないなどということがあってはなりません。その正義を実現するために私はわざわざ駆け付けています。みなさん、ともに頑張りましょう。

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現場検証も証人尋問も棄却し、次回結審を決定 東電刑事訴訟、東京高裁が不当決定

2022-02-10 22:19:58 | 原発問題/福島原発事故刑事訴訟
2月9日、東京電力旧経営陣3名の刑事訴訟控訴審第2回公判が東京高裁で行われた。東京第1検察審査会が2015年7月、2度目の起訴相当議決を行ったことにより、勝俣恒久元会長、武藤栄元副社長、武黒一郎元副社長の3名が強制起訴された裁判は、2019年11月、1審・東京地裁の無罪判決を受けて検察官役の指定弁護士が控訴。昨年11月2日に控訴審初公判が行われたことに続く公判である。





この日の裁判の争点は、指定弁護士側が求めた現場検証及び島崎邦彦、濱田信生、渡辺敦夫3氏の証人申請が認められるかどうかにあった。島崎邦彦・元原子力規制委員長代理は東京地裁での無罪判決後、「新たな事実が出てきたので、それについて証言したい」と法廷での証言を望んでいたという。濱田氏は元気象庁職員で、政府の地震調査研究推進本部(推本、地震本部などと略される)が2002年に公表した「三陸沖から房総沖にかけての地震活動の長期評価について」(以下「長期評価」)をとりまとめた際、気象庁から推本に出向し、事務局を務めた。

東電刑事裁判の1審では、長期評価の信頼性とともに、長期評価に基づいて東電社内で一度は実施すると決められた津波対策を延期した武藤副社長の判断の是非が最大の争点だった。西暦869年に三陸沖で起きた貞観(じょうがん)地震と同規模の地震が再び発生した場合の福島第1原発における津波の高さを「最大15.7m」とする想定は東電社内で共有されていた。この想定が示された以上、海抜10mの高さに位置していた福島第1原発の津波対策は不可避だった。

東日本大震災では実際、ほぼこの想定通りの高さの津波が原発を襲い、福島第1原発は全電源を喪失、事故に至った。それにもかかわらず、1審は不当にも東日本大震災による津波の襲来を予見できず、結果回避も不可能だったとして3経営陣を無罪とした。

長期評価が、当時の日本で第一人者に位置づけられていた地震学者たちの議論に基づいて、その最大公約数をとりまとめた地震学界のコンセンサスと呼ぶべきものであったことは1審で明らかになっている。長期評価は十分科学的でその信頼性は疑いのないものだった。推本の事務局に気象庁から出向し、事務局を務めた濱田氏は、当時の地震学者たちがどのような議論を闘わせたかを含め、「長期評価の策定から公表までの経緯すべてを知る人物」である。1審を上回る水準の有罪立証のため、指定弁護士が控訴審で濱田氏の証人申請をしたのにはこのような理由がある。

その濱田氏の証人申請を、細田啓介裁判長は棄却。島崎、濱田、渡辺3氏に関しては証人申請ばかりか供述調書も証拠採用されなかった。東電旧経営陣の責任を追及するため、別の法廷で進められている東電株主代表訴訟では裁判官による現場検証が初めて行われ注目された。当然、刑事訴訟でも指定弁護士は現場検証を求めた。細田裁判長はこれも認めないという不当な決定をした。指定弁護士は「憲法は原告、被告いずれにも裁判を受ける権利を保障している。このような決定は裁判を受ける権利の侵害で、将来に禍根を残す」と異議を申し立てたが、この異議も棄却。裁判長は次回、「被害者の心情に関する意見陳述」を2名に限り行った上で、結審する旨を告げ、この日の法廷はわずか30分で終了した。



閉廷後、午後4時から行われた報告集会では、現場検証と3氏の証人申請を棄却した東京高裁の不当な訴訟指揮に対する怒りの声が上がった。一方で、3氏の供述調書以外に指定弁護士側が申請していた書面証拠はすべて採用された。その中には、2021年2月、原発事故に関して国の責任を認め、原告側が逆転勝訴した千葉訴訟の東京高裁判決も含まれる。この判決では長期評価を、津波対策を行う上で電力業界が依拠していた「津波評価技術」(土木学会編)と並ぶ知見としてその信頼性を認めている。津波対策を延期する根拠として、武藤副社長は「身内」の電力関係者も多く所属している土木学会にすがろうとしていたが、その土木学会の評価基準をもってしても、福島第1原発の津波対策が不可避との結論を覆すには至らなかったであろうことも、1審で明らかにされた事実である。

最大の争点であった現場検証と証人申請が棄却され、葬り去られるという不当な訴訟指揮を受け、「この裁判はやはり国策裁判。あらかじめ決められた全員無罪のシナリオに沿って進んでいる」との声も被害者からは聞かれた。この日の裁判を傍聴した筆者も、土俵際に追い詰められたとの感想を持たざるを得なかった。

しかし、まだ土俵を割ったわけではない。指定弁護士側に有利な書面証拠がほとんど採用されたことに筆者はいちるの望みをつなげたいと思う。なにより1審・東京地裁判決は「事故の予見も結果回避も不可能な原発で安全を極限まで追求したいなら止めてしまう以外にない」と断じ、3被告を無罪としている。この判決が確定することは「著しく正義に反する」と、指定弁護士は控訴に当たって表明したが、原発推進側も私たち被害者とは別の意味でこの1審判決がそのまま確定されては困るだろう。「事故リスクを背負い、国民の疑念を浴びながら運転する」か「撤退する」かの二者択一では推進側も困る。いずれにしてもこの矛盾に満ちた判決が何らかの形で修正を迫られることは間違いないと筆者は考えており、その過程で追加採用された証拠がどのような位置づけになるかが高裁判決の行方を左右する。

この裁判も他の訴訟と同じく反原発運動の一環として闘われているものであり、原発を全廃させるという大目標を実現するための手段に過ぎない。どのような判決になったとしても被害者は悪くないという基本が揺らぐことはなく、また原発が廃絶に向かうなら勝利といえる。最後までいちるの希望を捨てることなく、結審までに最大限、有罪判決を求める闘いを続ける決意である。

なお、次回日程はこの日は決まらず、4月21日、5月31日、6月6日の3候補日から関係者のスケジュール調整を経て、後日決定される。

(取材・文責:黒鉄好)

2022.2.9【福島原発事故・東京電力旧経営陣刑事訴訟】福島原発刑事訴訟支援団閉廷後記者会見


2022.2.9 【東京電力旧経営陣刑事訴訟】閉廷後報告集会

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原発事故の健康被害を訴える人に白昼公然とリンチを呼びかける原発推進派テロリスト、石井孝明を粉砕せよ!

2022-02-09 22:52:48 | 原発問題/一般
原発事故による甲状腺がん被害を訴える元腫瘍5人を事実上バックアップする「原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟」公式サイトに以下のような記事が掲載されている。

『Twitterで当団体のアカウントに石井孝明という人物からメンションが貼られ、私たちを誹謗するメッセージがきました。甲状腺がんを甲状腺問題というなどと言い換えるなど、問題を小さく見せようとしているようですが、もっと子どもたちの健康を重視すべきではないでしょうか』

当ブログではすでに何度も指摘しているが、悪辣な人物なのでこの男が社会的に叩き潰されるまで何億回でも指摘しておこう。グルメ漫画「美味しんぼ」で福島での鼻血問題を取り上げた作者・雁屋哲さんに対し、白昼公然とリンチを呼びかけた人物である。

ジャーナリストが「美味しんぼ」原作者の「リンチ」呼びかけ? 石井孝明氏、批判されツイートを削除(「J-CASTニュース」2014年5月8日付記事)

この男、大手メディアなど公の場には姿を見せず、ツイッターなどの場でコソコソと健康被害を訴える弱者を集中的に叩き、沈黙に追い込んできた戦犯の1人である。当ブログはすでにこの男を敵に認定し、何度も打倒を呼びかけているが、改めて石井孝明打倒・粉砕を呼びかける。

これ以上、明白な健康被害を訴えている人がいるのに、抑圧に加担し続けるなら、当ブログは石井に対する法的措置等、断固たる制裁も辞さない構えで望むので、覚悟してもらいたい。

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