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安全問題研究会(旧・人生チャレンジ20000km)~鉄道を中心とした公共交通を通じて社会を考える~

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【管理人よりお知らせ】「ノーモア尼崎事故!生命と安全を守る4.12集会」における管理人のローカル線問題に関する報告資料を安全問題研究会ホームページに掲載しました

2025-04-13 18:06:17 | 鉄道・公共交通/交通政策

管理人よりお知らせです。

JR福知山線脱線事故の再発防止のため、毎年4月に行われている「ノーモア尼崎事故!生命と安全を守る4.12集会」が今年も行われました。2005年の事故発生から20年の節目ということもあり、今年は、例年行われている地元・兵庫県尼崎市から大阪市に会場を移して実施され、安全問題研究会代表も例年通りローカル線問題の報告を行いました。

報告用スライド資料「ローカル線の現状と全国鉄道再建への具体策」を安全問題研究会サイトで公開したので、お知らせします。紙に印刷しての配布に適した印刷配布版も併せて公開しています。


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【お知らせ】精神障がい者の方へ~4月からJRに「精神障害者割引制度」が導入されました

2025-04-07 22:26:40 | 鉄道・公共交通/交通政策

当ブログは本来、JRグループの広報をするために開設したわけではありませんが、一応、この件は交通政策の範疇に含まれ、また障がい者の方にとっても有益な情報に当たるため、鉄道・公共交通系ブログとしてはお知らせする価値があるものと判断しました。

精神障害者割引制度の導入について(JRグループ)

上記リンク先で告知されているとおり、JRグループ各社で、この4月1日から、精神障害者割引制度が導入されました。これまで、身体障害者の方に対して適用されていたのと同様に、本人及び同行する介護者1名に限り、運賃・料金が半額となります。具体的には、精神障害者保健福祉手帳の交付を受け、その種別が第1種または第2種である方が対象となります。

適用を受けるには、お手持ちの精神障害者保健福祉手帳に「旅客鉄道株式会社旅客運賃減額」欄を作ってもらい、そこに「第1種」または「第2種」の記載を受けることが必要です。詳細は、精神障害者保健福祉手帳の交付を受けた各地方公共団体の窓口にお問い合わせください。

割引率についてもリンク先のJRグループの資料に記載されていますが、特にご注意いただきたいのは以下の2点です。

第2種精神障害者の方については、片道100km以上の長距離区間の乗車券のみが割引対象であること

第1種の方も含め、特急料金は割引対象にならないこと

リンク先資料には、「普通急行券」は5割の割引対象になると記載されています。「普通急行」とはいわゆる急行列車を指しますが、JRグループ各社で現在、定期列車として運転されている急行列車はありません。

特急列車は「特別急行列車」を短縮した表現で、JRグループ各社の切符のルールである「旅客営業規則」では明確に区分されています(例えば、JR東日本旅客営業規則第3条(4)で『「急行列車」とは、特別急行列車及び普通急行列車をいう。』と規定されていることからもわかるように、普通急行列車という表現が用いられているときは、特別急行列車(特急列車)は含まれません)。

障がい者であっても、移動する権利は健常者と同様に保障される必要がありますが、身体障がい者には認められている割引制度は、これまで精神障がい者には認められてきませんでした。今回、乗車券部分だけとはいえ、精神障がい者にも身体障がい者同様の割引制度が設けられたことは長年にわたる障がい者運動の成果だと当ブログは考えます。

一般的に「障害者雇用枠」で働いている人たちの賃金は、健常者の半分~7割くらいのことが多く、公共交通機関を利用して、健常者と同じ形で移動することは困難でした。障がい者が移動困難であることを理由に自宅に引きこもってしまうことで、買い物の機会が失われるなど経済損失がもたらされていることは、すでに様々な調査研究で明らかになっています。

今回の割引制度導入により、精神障がい者の方の移動が促進され、社会参加が進むことが期待されます。


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4月1日、「いちの日」行動におけるスピーチ~国鉄時代に並んだJRの歴史で、私たちが失ったものは?

2025-04-02 23:55:21 | 鉄道・公共交通/交通政策

札幌駅前では、毎月1日に、JRローカル線廃止に反対する「北の鉄路を守る!いちの日行動」が行われています。私もほとんど毎回、リモートで参加してスピーチをしています。

この行動では、私は事前にスピーチ原稿を作らず、その時々の最新の話題を織り交ぜながら自分の言葉で話すことを原則にしているので、話した内容を後日、当ブログに掲載することは、普段はしていませんが、昨日の行動では、かなり重要なことを話した気がするので、忘れないうちにスピーチ内容を以下、ご紹介することにします。

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札幌駅前をご通行中のみなさん、こんにちは。

今日から、JR北海道の運賃値上げが実施されました。今日、切符を、あるいは定期券を買ってみて、改めてその高さ、値上げ幅の大きさに驚いた方も大勢いるのではないかと思います。

私の知人に札幌から新千歳空港まで通勤している方がいます。自宅のある札幌から新千歳空港まで6か月定期券を買ったところ、営業キロ46.6kmでなんと229,260円でした。「あまりに高いので、新幹線定期券かと思っちゃうよ」と言われました。JR北海道の運賃の高さは、もはや常軌を逸したものになりつつあります。

なぜこんな事態になっているのでしょうか。今日は、少し歴史を振り返ってみたいと思います。

JRグループが発足したのは1987年4月1日で、今日でちょうど38年を迎えました。JRグループ発足で分割され、なくなった旧国鉄は、1949年の発足から、分割民営化直前の1987年3月まで38年間の歴史でした。つまり、今年でJRになってからの歴史が旧国鉄時代に並んだのです。私は、こんなにも不公平で持続不可能なJR体制が、国鉄と同じだけ長く続くなんてありえない、続くわけがない、続くことなどあってはならないと思ってきました。

国鉄時代と並んだJR38年の歴史の中で、私たちは何を失ったのでしょうか。北海道では、国鉄末期の特定地方交通線の整理によって、ざっと全体の3分の1の路線が消えたといわれます。残った3分の2の中から、2016年以降の路線整理の中で、またも全体の3分の1ほどが消えました。国鉄末期からの全体で見ると、北海道の鉄道路線の半分が消えたことになります。これほどメチャクチャなことが行われたのが「JRの38年」です。

国鉄分割民営化の過程では、10万人を超える労働者が職場と生活を奪われました。1991年の信楽高原鉄道の事故では、JRから乗り入れてきた急行列車の乗客など42人が亡くなり、2005年のJR福知山線脱線事故では107人が犠牲になりました。150人もの乗客の命が奪われたのです。

今日は、ご通行中のみなさんに問いかけたいと思います。北海道から線路の半分を奪い、新幹線定期かと見間違うほどの桁外れの高い運賃負担を道民に強いたのは誰でしょうか。10万人を超える国鉄労働者から職場と生活を奪ったのは誰でしょうか。150人もの乗客の貴い命を奪ったのは誰でしょうか。すべて政府、自民党、そして民間企業となったJRです。そしてこれこそが「JR38年の決算」です。

北海道では、線路閉鎖をしないままの保線作業が常態化し、安全も崩壊しています。先日、北海道運輸局はJR北海道に改善指示を出しましたが、何度改善指示を繰り返しても、今のJR北海道にはそれを実行できるだけの力はありません。運輸局、そして国交省は、紙切れ1枚の改善指示を出してお茶を濁すのではなく、このような事態を生み出した自分たちの鉄道政策、そして「間違っていた」と明確な結論が出ている国鉄分割民営化について、反省と総括をすべきです。それなくして日本の鉄道の再建はあり得ません。

私たちはJRの次を目指して、進んでいかなければなりません。ともに頑張りましょう。


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<地方交通に未来を(21)>新幹線と原発の怪しい関係

2025-03-16 12:14:27 | 鉄道・公共交通/交通政策

(この記事は、当ブログ管理人が長野県大鹿村のリニア建設反対住民団体「大鹿の十年先を変える会」会報「越路」に発表した原稿をそのまま掲載しています。)

 この話はずっと前から当コラムに書きたくて仕方なかった。それができないでいたのは自分の中で確証が持てなかったからである。だが最近になって確証とは言えないまでも「状況証拠」はかなり揃ってきたように見える。ずばり、原発誘致や再稼働同意と引き替えに新幹線が「返礼品」として贈られているのではないかという「疑惑」についてである。

 整備新幹線は、1997年に開業した北陸新幹線東京~長野を皮切りに、順次延伸開業を続けてきた。だが、延伸した新幹線の路線図を見ていた私はあることに気づいた。延伸した新幹線がことごとく原発や原子力施設のすぐそばを通っているのだ。例えば、2010年に延長開業した八戸~新青森を見ると、七戸十和田駅から30km圏内に六ヶ所村の使用済み核燃料再処理施設がある。20世紀のうちに開業する約束だったのに、27回も完成が延期になり、つぎ込まれる税金は19兆円とされるいわくつきの施設だ。

 北海道新幹線も、現在の始終点である新函館北斗から札幌までは、特急「北斗」や貨物列車がひんぱんに走るメインルートの室蘭回りではなく、かつては急行「ニセコ」が走ったものの、単線で現在はメインルートを外れたはずの余市~小樽を経由する。その沿線にあるのは北海道電力泊原発だ。

 長野から先の北陸新幹線も、金沢開業を経て、2024年3月に現在の福井県・敦賀まで延伸している。ここが日本一の原発銀座であることは本会報読者には説明するまでもなかろう。稼働中のものだけでも関西電力美浜原発1基、高浜4基、大飯2基の計7基が集中する。この先、関西までのルートが決定していないことは、すでに当コラムで何度も述べているが、政府が目指しているのは福井県・小浜から京都を経由して新大阪に至るルート(小浜・京都ルート)だ。このルートになれば美浜原発のみならず、新たに高浜・大飯原発のすぐそばも新幹線が走行することになる。

 鉄道と原子力施設との歴史をひもとくと、1999年に茨城県東海村のJCO東海事業所で起きた臨界事故の際、すぐそばを通るJR常磐線が数日にわたり不通になった。常磐線の車両基地である勝田電車区がJCOから至近距離にあることを理由に、関係者の放射線被ばくを恐れたJR東日本が勝田電車区への社員の出勤を停止したためだ。

 福島第一原発事故でも、常磐線が津波に流された上、避難区域となった区間では復旧作業もできず、長期にわたって不通になった。いざ原子力施設で事故が起きればこのようなリスクがあることは過去の事例からはっきりしているのに、なぜわざわざ原子力施設のそばに新幹線を通す愚行をこの国の政府は繰り返すのか。私にはずっと疑問だった。

 特に、小浜・京都ルートに関しては、古都の水環境や自然を破壊する「千年の愚行」だとして京都仏教会が反対署名に乗り出す事態になっている。これほどの反対があるにもかかわらず、政府がなぜわざわざ7基の原発がある地域を走行するルートに固執し続けるのかという疑問について考える中で、私がたどり着いた推論こそ冒頭に書いた「原発立地地域に対する新幹線『返礼品』説」だった。

 最近、私のこの推論を裏付ける証言・証拠が複数の関係者から出てきている。北海道新幹線と北陸新幹線の延伸が決まったのは2012年6月29日。整備費用は、同時に着工が決まった九州新幹線西九州ルートと合わせて3兆400億円に上った。

 福島原発事故からわずか1年。原発ゼロが続いていた日本で、野田民主党政権が示した大飯原発再稼働方針に反対する首相官邸前の反原発デモが20万人に達した時期だった。野田政権は、このわずか13日前(2012年6月16日)に大飯再稼働を決定している。これを「偶然の時期の一致」と思うほど筆者はお人好しではない。

 2024年12月4日、「北陸新幹線の延伸に関する与党整備委員会」に出席した杉本達治福井県知事はあけすけにこう述べている。「原子力発電所の立地地域ということを申し上げた。50年以上も志を持って電力を供給し、関西・日本の発展のために尽くしてきた。原子力基本法にある『立地地域の振興』というものを、しっかりと国の責務として果たしていただきたい」。国の原子力政策に協力してきたのだから、立地地域振興のため「新幹線という返礼品をさっさとよこせ」というのだ。

 1987~2003年まで4期16年務めた栗田幸雄元福井県知事も重大な証言をしている。「当時の自民党は一層、原子力発電に力を入れていくということで、福井県が原子力発電へ積極的に協力してくれるならば、いわばその見返りとして新幹線を1日でも早く自民党として努力しましょうと言ってくれました」。歴代福井県知事の間で、新幹線=原発協力の見返りは公然の秘密だったのだ。

 1999年、地元選出の辻一彦衆院議員(社会党→民主党)が提出した「北陸新幹線若狭ルート堅持に関する質問主意書」はこう述べている。「福井県、特に若狭の住民は、この三十年近く「いつか新幹線が通る」という悲願で生きてきた。そのために原発銀座を許容するという苦渋の選択を受け入れてきたのである。日本一の原子力発電地域を国土の均衡ある発展から取り残すことのないようにするのは政治の責任である」。新幹線を原発受け入れの返礼品とみなす考え方は、自民党だけではなく、野党にまで広く浸透していたのだ。

 福井以外の地域の話もしておこう。本会報前号でも紹介した九州新幹線西九州ルートである。1973年、田中角栄首相が日本列島改造論を唱え、整備新幹線の根拠法である「全国新幹線鉄道整備法」を制定、5整備区間(北海道、東北、北陸、鹿児島、長崎)を決定した。だが、決定直後に石油危機が起き、5区間すべての計画が凍結される。この凍結は5年後の1978年に解除となるが、その際、5区間の中で最も優先順位が低いとみなされていたのが長崎新幹線だった。

 長崎新幹線が着工されるか危惧した久保勘一長崎県知事は、高田勇副知事を自民党本部に派遣。「長崎新幹線の工事着工は、他の四路線に遅れないこととする」との約束を自民党から取り付ける。当時の党3役――大平正芳幹事長、中曽根康弘総務会長、江崎真澄政調会長が直筆で署名した約束文書は、放射能漏れ事故を起こし、寄港先を失っていた原子力船「むつ」の修理を佐世保で受け入れる見返りとされた。この文書が後に「むつ念書」と呼ばれるようになったゆえんである。

 政府与党が頑ななまでに「小浜・京都ルート」にこだわる理由も、このように考えると見えてくる。同ルートを熱心に推進する西田昌司参院議員(自民党京都府連会長)は今夏の参院選で改選となるが、石破茂総裁のままでは選挙を戦えないとして辞任を要求するらしい。良い噂などひとつとして聞いたことのないあなたこそ、この際、潔く政界から引退されてはいかがだろうか。

(役職はいずれも当時。2025年3月15日)

<参考記事>

北陸新幹線延伸「原発立地地域振興を」早期着工を要望 福井県知事(2024.12.5「朝日」)

「これで長崎は良くなる」 新幹線計画決定・むつ念書 見返りは空手形に 長崎新幹線の軌跡・1(2022.6.15「長崎新聞」)


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【管理人よりお知らせ】京都仏教会「北陸新幹線延伸計画の見直しを求めます」署名にご協力ください!

2025-02-22 16:30:40 | 鉄道・公共交通/交通政策

管理人よりお知らせです。

現在、敦賀(福井県)まで開業している北陸新幹線をめぐっては、現在、敦賀から先のルート選定作業が難航しており、建設のめどがまったく立っていません。政府与党が目指しているのは、敦賀から小浜市、京都市を経由して、新大阪に至るルート(小浜・京都ルート)です。

これに対し、地元、京都を中心に「古都の環境が破壊される」などとして根強い反対論があります。こうした反対論を背景に、かつて、一度検討されながら採用されなかった「米原ルート」への変更を求める声があります。

今回、京都仏教会が、「小浜・京都ルート」の撤回を求めてオンライン署名運動を始めました(オンライン署名:「京都が京都でなくなる」北陸新幹線延伸計画の見直しを求めます/京都仏教会)。また、この署名について朝日新聞が報じています(参考記事:北陸新幹線延伸「京都を台無し」 京都仏教会が撤回求め署名活動開始/2025年2月21日付「朝日新聞」)。

安全問題研究会としても、今回、この署名に協力を呼びかけます。1人でも多くの方にご賛同していただけるよう望みます。京都仏教会ホームページに、同会が京都府知事宛に行った申入書の内容が公開されています。以下、その全文をご紹介します。

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京都府知事
西脇 隆俊 殿

申入書

 現在問題になっております北陸新幹線延伸事業の「小浜・京都ルート」は、丹波山地を貫く長大な山岳トンネルと京都市内および新大阪駅までのやはり長大な大深度地下トンネルで構成される予定であり、北山・東山ならびに西山では水枯れが、市内では地下水位低下や地下水脈の途絶、地盤沈下・陥没が予想されます。また、膨⼤なトンネル残⼟にはヒ素が含まれている可能性があり、地下⽔汚染も大いに危惧されることと存じます。

 全体の80%がトンネルとなる小浜・京都ルート(敦賀-小浜-京都-京田辺-新大阪)は、豊かな水の恵みによって成り立っている京都が京都でなくなる計画であります。トンネルの耐用年数はたかだか数十年。そのトンネルによって京都の1200年の歴史と未来が揺らごうとしていると当会では考えます。

 北陸新幹線は1960 年代に構想されました。当初は米原ルートが想定されていましたが、当時の福井県知事が原発増設許可と引き換えに小浜ルートを国から引き出したと言われています。まさに「我田引鉄」です。その後、米原ルートの再浮上もありましたが、2016年に与党PTの検討委員会はJR西日本が提案した京都市街地を通る「小浜・京都ルート」(小浜ルートの修正案)に決定したと聞き及んでおります。

 しかし、今も工事着工の目処が立っておりません。これは、国土交通省も認めるように、このルートがあまりにも多くの難問を抱えているからであり、遅れの最大の原因は小浜・京都ルート計画そのものにあると言っても過言ではありません。しかも、開通は人口減少がさらに進む30年後と言われています。

 この計画にはいくつもの大きな問題があります。決定権限を与えられた与党PTは、小浜・京都ルートを推す福井県選出議員によって主要ポストが占められ、その決定が国の最終決定になります。これでは「我田引鉄」に対するチェック機能は働かず、地元の府県民や市民の意見は計画に反映されません。そんな意思決定に正当性があるのかという疑問が残ります。

 JR西日本の建設事業費の過小負担と府県民・市民負担の大きさも問題です。事業費は国と地方自治体が負担し、JRは「貸付料」を支払うだけです。JR西日本には、JR東海との路線共有がなく旅客需要の大きい小浜・京都ルートがベストであり、事業費が5兆円超という巨額になろうと、地盤沈下などで補償問題が紛糾しようと、そして地下水や環境への影響が増大しようと、JR西日本は負担が増えるわけでもなく、また責任を負うこともありません。当初予定よりも膨らんだ建設事業費は、結局、国民全体と府県民・市民の税負担や行政サービスの削減などによって賄われます。ある試算によれば、事業費が5兆円の場合、京都府と京都市の実質負担額はそれぞれ6120億円と374億円となっています。これを、子どもを含めた一人当たりに換算すると、それぞれ府民13万円と市民2万5千円となり、京都市民は一人当たり合計15万5千円の大きな負担となります。

 小浜・京都ルートは、大規模災害時の迂回路として重要であり、「国策」事業として絶対に建設が必要であるとの意見もありますが、南海トラフ大地震発生時に小浜・京都ルートの長大トンネルが抱えるリスクは途方もなく大きくなります(停電による車両への乗客の閉じ込め、トンネル火災、津波・洪水による大規模浸水、大地震によるトンネルの破断など)。これでは迂回路として機能しません。現在、東京—大阪間のルートの多重化は高速道路網によってすでに実現しています。

 そして、最も大きな問題が、京都の地下水への悪影響(水位低下、枯渇、汚染・汚濁)です。はじめにも述べたように京都は水の恵みによって生かされている町です。京都の名水は伏見の酒造りや豆腐、和菓子作り、京料理などに活かされています。東京や大阪などの巨大都市の水とは異なり、まさに京都の水は「生かされ生きる水」なのです。

 現在、さまざまな問題を抱える小浜・京都ルートに対して距離、建設期間、事業費などで優位な米原ルートの復活を求める声が大きくなっています。しかし、両者を、さらには舞鶴ルートなどを比較する際に基準とされてきたのは、事業費や費用便益比という経済的視点や乗り換えや乗り入れなどの技術的視点が中心であり、京都の地下水問題、地盤沈下や陥没の危険性、大量のトンネル残土やそのヒ素汚染などといった市民生活を脅かす問題への視点はあまりにも軽視されているといわざるを得ません。

 さらに、京都市内では、京都の名刹の真下を通るルートが設定されており、国宝、重要文化財への影響も大いに危惧され、京都仏教会として到底看過できるものではありません。

 これらのいずれの視点から見ても、長大な山岳トンネルと大深度地下トンネルで構成される小浜・京都ルートは最悪のルートであると言わざるを得ず、ルートの見直しが是が非でも必要です。

 また、技術的視点について言えば、JR各社が運行システムの相違などを理由に相互乗り入れの可能性を否定するならば、それは大災害時に全国を網羅しているはずの新幹線網が実は役に立たないと宣言しているに等しいことになります。

 尊い自然は決して人の支配の対象ではなく、本来は敬いながら共存すべきであるという仏教の教えにも著しく遊離するこの計画は「千年の愚行」であり、京都仏教会は本申入書をもって断固たる決意の下に計画の再考を強く求めるものであります。

令和6年12月19日 

一般財団法人京都仏教会
理事長 有馬 賴底


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<地方交通に未来を(20)>見えてきた新幹線の「未来」

2025-01-18 21:01:54 | 鉄道・公共交通/交通政策

(この記事は、当ブログ管理人が長野県大鹿村のリニア建設反対住民団体「大鹿の十年先を変える会」会報「越路」に発表した原稿をそのまま掲載しています。)

 この正月も、例年通り九州の実家に帰省してきた。帰省中の1月4日、地元の有名鉄道模型店を久しぶりに訪ねてみた。九州の鉄道模型ファンの間では「この店を知らない人はモグリ」といわれるほどの有名店だ。現在の店主は2代目であり、博多駅前の一等地で、先代の時代からもう半世紀以上営業を続けている。訪れる客は当然、濃いマニアばかりで、店主と客、あるいは客同士で鉄道(実車、模型の両方)の情報を交換し合うサロンのように機能している。働き方改革の流れなのか、最近は正月三が日は休業するようになったため、正月に帰省してもなかなか訪問できずにいた。

 十数年ぶりに訪れた店内は、足の踏み場もないほど並べられていた鉄道模型スペースが減ってずいぶん寂しくなった。2025年の営業初日のせいか客は私1人。「お元気ですか」と話しかけると、30年以上昔の学生時代、頻繁に訪れていたせいか「うっすらですが覚えていますよ」と返ってくる。客商売の人は顧客の顔は忘れないというが、本当らしい。

 しばらく鉄道談義をした後「九州の鉄道で私が唯一、心配なのは、西九州新幹線の今後です」とさりげなく切り出す。西九州新幹線は、武雄温泉(佐賀)~長崎間のみ先行開業したものの、鳥栖(佐賀)~武雄温泉間の開業の見通しは立たない。この区間は着工決定(2012年)の段階では、フリーゲージトレイン(軌間可変式電車;新幹線の標準軌(1435mm軌間)と在来線の狭軌(1067mm軌間)の切換区間を走行しながら車輪の幅を変える)を使用することによって在来線をそのまま走行する計画になっていたからである。博多から鳥栖までは九州新幹線(標準軌)、鳥栖から軌間を変えて在来線(狭軌)を武雄温泉まで走った後、再び軌間を変えて武雄温泉から長崎までは西九州新幹線を走る・・・はずだった。

 だが、フリーゲージトレインの技術開発に失敗し計画が頓挫。「鳥栖~長崎の全区間を標準軌新幹線にさせてほしい」と政府・自民党が佐賀県に申し入れたものの「同意する、しない以前にそんな話は聞いてもいない」と佐賀県知事が態度を硬化させ、ルートすら決められないでいる。もしこのままの状態が続けば、始発駅発車後わずか30分で全員が降りて乗換という現状が半永久的に続くことになる。1ミリも開業する見込みがないリニアのほうが、引き返せるだけマシではないかと思える。21世紀日本の出来事とは思えない。これほどの惨劇は探してもそうそう見つかるものではない。

 「西九州新幹線にデビューしたN700S系車両は、結局、博多駅のレールを一度も踏めないまま老朽廃車になるんじゃないか。九州ではみんなそう噂していますよ」。店主からは何事もなかったかのようにそんな答えが返ってくる。鉄道車両の寿命は、国鉄型車両だと40~50年くらいが多いが、路面電車など速度が遅い車両の中には80年、場合によっては100年走るものもある。しかし、新幹線車両は高速走行し、強い空気抵抗や振動が加わるため、20年くらいでほとんどが寿命を迎える。「僕が生きている間は、博多駅にN700Sは来ないんじゃないですかね」。少なくとも地元・九州では、博多~長崎の全通にもっと期待感があるのではないかと考えていただけに、意外な気がした。

 模型店を辞した後は博多南線に乗る。この路線は1990年、博多~博多南駅間8.5kmが開業したが、もともとは山陽新幹線岡山~博多間開業(1975年)に合わせて稼働を始めた博多総合車両所への回送線だった。車両所の敷地の大半が属する福岡県筑紫郡那珂川町(当時。現在の那珂川市)には鉄道がなく、那珂川町民は渋滞する西鉄バスで、福岡市中心部まで1時間かけて通勤通学をしなければならなかった。目の前を走っている新幹線回送車両は博多駅までたったの10分。「あの列車に乗れればいいのに」という町民の願いは国鉄時代からあったが、かなわなかった。

 国鉄分割民営化後「あの新幹線に乗せてほしい」と那珂川町民はJR九州に陳情したが「新幹線は当社の管轄ではない。陳情するならJR西日本に」と言われた。陳情を受けたJR西日本は、新幹線として事業免許申請をしようとしたが、最高時速120kmでしか走行しない博多~博多南間が「その主たる区間を列車が二百キロメートル毎時以上の高速度で走行できる幹線鉄道」(全国新幹線鉄道整備法第2条)の要件を満たさないため、在来線としての免許申請に切り替えるよう運輸省から助言を受ける。ところが今度は、九州内の在来線の営業権はJR九州が持つと定めた国鉄改革法第6条に抵触するため、JR西日本は列車運行ができても営業権は持てないことになった。やむを得ず、JR西日本がJR九州に博多南駅の営業を委託する形でスタートする。那珂川町民の「痛勤痛学」が解消され、博多南線は九州内でも有数の路線に成長した(その後、2010年からは駅もJR西日本の直営に変更されている)。

 新幹線車両所までの回送線を旅客営業線に転用した同様の路線としては、JR東日本・上越新幹線越後湯沢~ガーラ湯沢間がある(こちらも新幹線ではなく在来線として事業免許が与えられ、形式上は在来線である上越線の枝線扱い)。ただ、こちらは越後湯沢~ガーラ湯沢間が新幹線・在来線ともにJR東日本のため、開業に当たって博多南線ほどの紆余曲折はなかった。しかも、越後湯沢~ガーラ湯沢間はガーラ湯沢スキー場が営業する冬季のみの運行のため「新幹線が法律上、在来線として運行される区間」で、通年で乗れるのは博多南線だけ。その意味ではやはり珍しい路線であることに違いはない。新幹線車両を利用するため全列車が特急扱いだが、乗車券200円、特急券130円のわずか330円で新幹線車両に乗れる。子どもたちを「新幹線デビュー」させるための体験乗車向けの隠れた人気路線だという話もある。

 博多南線の地元への定着は結構なことだが、西九州新幹線をJRというより国は今後どうするつもりなのか。「鳥栖~武雄温泉間では在来線をそのまま使うというから同意したのに、今ごろになって新幹線にしてくれなどというのはだまし討ちだ。打診されてもいないものに同意などできるはずがなく、新幹線はタダでも要らない」という佐賀県の怒りが収まる気配はない。たとえ1メートルでも線路が途切れてしまえば、ネットワークとして全体が価値を失ってしまうという鉄道の特性をJR上層部も国交省も誰ひとり理解していないからこんなことになるのだ。乗客が少ないから災害復旧費がもったいないという理由だけで、北海道のど真ん中を走る根室「本線」の一部区間だけ断ち切って平気でいられる国やJRの頭のレベルなどしょせんはその程度ということだろう。

 私は最初、本稿のタイトルを「見えてきた新幹線の『墓場』」にするつもりでいた。2025年の新年早々そんなタイトルでは縁起が悪いため「未来」に変えたが、九州でも北陸でも大鹿村でも、見えているのはまさに新幹線という名の「屍の山」である。

(2025年1月5日)


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倶知安町・文字一志町長への辞任勧告

2024-11-29 22:34:15 | 鉄道・公共交通/交通政策
倶知安町長の最近の態度には腹が立ち、もはや我慢も限界だ。以下の文章は知人に書き送ったものである。以下の2つの理由により、私は倶知安町長に「辞職勧告」する。
 
理由1:函館本線(小樽~余市~長万部)のバス転換が不可能とわかっているのに、倶知安町長だけ頑なに「廃線バス転換」を変えないこと
 
北海道新幹線札幌延伸は、建設主体の鉄道・運輸機構ですら「2030年開業は不可能」と白旗を揚げている。2035年に開業できるかどうかも厳しく「2040年くらいになるんじゃないの?」と冗談のつもりで言っていたのが本当になりそうな状況だ。私の生きているうちに札幌開業を見られるかどうかすら怪しくなっている(ついでに言えば、リニア中央新幹線も、北陸新幹線の敦賀から先=関西までの延伸も総崩れ状態で、下手をすると、新幹線の路線図が現在(2024年)から私の生きているうちはまったく変わらないままの可能性すら出てきた)。
 
バス転換協議会にバス会社を呼ぶという基本的なことすらしないまま勝手に転換を決めた道庁に、北海道中央バスなど転換バスを押しつけられる予定のバス会社が猛反発し「既存の路線を維持するだけでも精一杯。どんどん運転手が辞めているのに函館本線の転換バスなど出せない」という状況だ。こうした状況を知って、沿線自治体はバス転換協議を中断。余市町の斉藤啓輔町長に至っては「このままならバス転換協議からは離脱する」とまで言っている。
 
こうした状況なのに、1人で函館本線の廃線バス転換の旗を下ろさないのが倶知安町の文字町長である。「新幹線倶知安駅を建設するのに既存の在来線駅が邪魔だから」という身勝手きわまりない理由だ。
 
しかも、倶知安町ホームページ「町長室」に、文字氏はこのように書いている。『我が町に「比羅夫」という字名、JRの駅名がありますが、実は阿倍比羅夫の蝦夷遠征伝説に由来するものです。』
 
町内にあるJRの駅名をさんざん観光アピールに使っておきながら、代替交通機関の協議もできない状態なのに廃線を主張する。ご都合主義にもほどがある。
 
理由2:道が2026年度から導入予定の「宿泊税」にも倶知安町だけが反対している
 
道新の最近の報道によると、道は2026年度から「宿泊税」を導入するため、道議会に関連条例を提出するという。ホテルの宿泊料金に課税し、それを予算の穴埋めに使う。宿泊税については賛否両論あると思うが、私は、道民と違って住民税を落としてくれるわけでもなく、北海道に数日間来て「いいとこ取り」だけして帰って行く観光客にも応分の負担を求めることは、道民合意の上であれば、観光地の自治体として1つのアイデアだと考える。
 
倶知安町は、道に先行してすでに宿泊税を導入しているが、定率制(ホテル代×○%という方式)だ。これに対し、道の宿泊税は定額制(一律○円方式)を予定しており、二重課税になる上、定率制と定額制が混在するのは観光施設が混乱するというのが反対理由である。
 
自分たちが道より先に宿泊税を導入した倶知安町としては「時代を読む目があった」との自負もあろう。道が似たような税制を導入するなら、それに一本化するのも1つの手法だと思う。倶知安町は「二重課税になる上、定率制と定額制が混在するのは観光施設が混乱する」を表向きの反対理由にしているが、「先に制度を作った私たちがなぜ後発の道庁ごときに手柄も税収も横取りされなければならないのか」が隠れた本音であることは容易に想像できる。
 
道新の報道によれば、道内ホテル宿泊者の25%(4人に1人)が「宿泊税を道内交通の整備に使ってほしい」と回答している。ホテルや観光施設がピカピカに整備されても「そこに行くまでの足がない」道内の貧弱な交通事情が「よそ者」ゆえに道民よりもよく見えているのだと思う。道外からの観光客がそのように思っているのであれば、それこそJR北海道が白旗を揚げかけている鉄道の維持強化に宿泊税を使えばいい。
 
●「全体の奉仕者」公務員のあるべき姿とは
 
古い話になるが、私は2008年、新潟県十日町市を訪れたことがある。JR東日本は、十日町市内の信濃川に自前のダムを持っており、首都圏の電車を動かすための電力の一部を水力発電で賄っている。そこで2008年頃から、信濃川がほとんど涸れてしまうという出来事が起きた。
 
原因はJR東日本による超過取水だった。国交省から許可されているよりはるかに多くの水を信濃川から取ったため、涸れるはずのない「日本一の大河」が涸れてしまったのだ。しかもJR東日本は、国交省から許可された範囲の量しか取水していないように装うため、水量計が許可された数値を超えないように「改ざん」まで行っていた。このことが発覚し、JR東日本は国交省北陸地方整備局から「取水禁止」の処分を受ける。
 
東京で、「不当解雇の国鉄労働者1047名」の支援をしていた労働組合・市民の間で「JR東日本許すまじ」の声が高まり、JR東日本が不正取水をした現場を見に行こうとツアーが組まれた。十日町市を訪れたのはこれがきっかけだ。訪問当日、十日町市役所幹部との懇談がセッティングされた。
 
東京から「どんな過激な活動家が押しかけてくるのか」と身構えているのではないかと思っていた私たちの心配は杞憂に終わった。応対してくれた十日町市役所総務課課長補佐・G氏の言葉を、私は今も忘れない。
 
「JRがそんなファッショ的な体質だとは思っていませんでした。そのような事実があるなら、正していかなければなりません。私は、十日町市役所で働く公務員ですが、自分の市とその市民だけが幸せになればいいとは思っていません。市内にダムがあることを誇りに思っており、首都圏のみなさんの交通機関のために電力を供給していくこと、それを通じて我が市だけでなく、東京のみなさんに幸せになっていただくことも、十日町市役所職員として当然の責務だと思っています」
 
私は、「国民全体の奉仕者」のひとつの理想をG氏の姿勢の中に見た。公務員かくあるべしと思った。「自分の町さえ良ければそれでいい」「自分に投票してくれる支持者の声さえ聴いていればいい」という首長・役人ばかりのこのご時世にあって、「自分に投票しなかった住民を含め全体を代表し、全体の利益のために行動する」--これこそが国民全体の奉仕者、"Public Servant"でなければならない。
 
●翻って、倶知安町長は……?
 
この高潔なG氏の姿勢と比べて、倶知安町長はどうだろうか。「新幹線の駅を作るのに在来線の駅が邪魔だから函館本線など廃線でいい。他の町やその住民がどうなろうが知ったことではない」「先に宿泊税制度を作ったのは我々なのに、なぜ後発の道庁ごときに手柄も税収も横取りされなければならないのか」--倶知安町長の姿勢からは全体の奉仕者としての姿勢がかけらも感じられない。自分さえ良ければいい、他の町のことなど知ったことではないという態度むき出しで、およそ「公僕」にはふさわしくない。
 
以上の理由から、私は倶知安町長、文字一志氏に対し辞任を求める。

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<地方交通に未来を(19)>有意義だったJR北海道「運賃改定公聴会」

2024-11-16 23:20:25 | 鉄道・公共交通/交通政策

(この記事は、当ブログ管理人が長野県大鹿村のリニア建設反対住民団体「大鹿の十年先を変える会」会報「越路」に発表した原稿をそのまま掲載しています。)

 9月3日、札幌で開かれた「北海道旅客鉄道株式会社からの鉄道の旅客運賃の上限変更認可申請事案に関する公聴会」(運輸審議会主催)に出席して意見公述した。

 運輸審議会は、国土交通大臣の諮問機関として、公共交通をめぐる重要政策について答申を行う権限を持っており、運賃改定などの重要事項は必ず運輸審議会の審議に付さなければならない。厳密に言うと、現在の制度では運賃改定のたびに認可を受ける必要はなく、値上げの「上限額」についてあらかじめ認可を受けておけば、上限の範囲で運賃を改定するときは国交省への届出のみ。改定したい運賃がこの上限を超えるときに限り、新しい運賃の「上限」を決め、認可を受け直す制度になっている。上限運賃制またはプライス・キャップ制と呼ばれるもので、鉄道には1999年から導入されている。

 意見公述したい人はみずから応募し、その中から運輸審議会が公述人を選定する。とはいえ、ふるいにかけられるのは応募者が10人を超えた場合に限られ、それ以下の場合、応募者全員が公述人になれる。今回は私を含め4人が応募。運賃改定に賛成が1人、反対が私を含む3人という構成だった。公述人1人当たりの持ち時間は15分だ。制限時間を超えないようにしてほしいという要請はあるが、広く世間一般の意見を聴くための公聴会という建前上、公述内容について運輸審議会としては一切、制限をしないことになっている。 私は、2019年に運賃改定をしたばかりのJR北海道が、コロナ禍という特殊事情があったとはいえ、わずか5年で再び運賃改定をせざるを得ない事態に疑問と怒りを抱いていたので、早速応募した。

 当日は、(1)通学定期の1割近い値上げは、最も弱い立場の子どもたちに過大な負担を強いる、(2)島田修社長(当時)が5年前の運賃値上げの際の公聴会で「通学定期の割引率(5割)を維持するので運賃改定の認可をお願いしたい」と発言し、これを条件に認可されたにもかかわらず、今回、通学定期の割引率圧縮に踏み切ることは5年前の約束を覆すことになる――として反対を表明した。

 前々号(40号)掲載の本コラム「国鉄末期に似てきたJR~断末魔が聞こえる」でも触れたように、JR北海道はこの間、路線や駅の廃止ばかり進め、道内特急列車の全席指定席化の一方で、みどりの窓口も削減し、使い勝手の悪い「えきねっとトクだ値」サービスへ強引に誘導するなど、急坂を転がり落ちるようにサービスを低下させてきた。

 とりわけ全席指定席化によって、まずまずの乗車率だった特急「すずらん」(札幌~室蘭)はガラガラの「空気輸送」状態に追い込まれた。明らかな失敗であるにもかかわらず、JR北海道はその現実を直視せず、綿貫泰之社長が記者会見で「安くご利用というニーズが強いのであれば、特急でなくてもいい」と不用意に発言した結果、道内メディアを中心に、すずらんの「快速格下げも」と報道されるなど、騒ぎがさらに広がった。

 こうした一連の事態に対し『すべてが行き当たりばったりのその場しのぎです。JR北海道が鉄道会社として、自分たちの鉄道事業をどうしたいのかという将来展望もビジョンもまったく見えず、これでは会社の将来を悲観して多くの社員が辞めていくのももっともだと思います。綿貫社長就任からわずか2年なのに、これだけ短期間に失態が続いているのは、島田会長-綿貫社長体制が経営能力を欠いていることの最も象徴的な現れです。私は、サービス低下と負担を一方的に押しつけられる全道民・利用者を代表して、島田会長と綿貫社長に対し、今すぐこの場で出処進退を明らかにするよう望みます』と公述した。

 運輸審議会主催の公聴会で運賃改定が審議される際には、それを申請した鉄道事業者のトップが申請内容を説明するため出席することになっている。つまり、綿貫社長本人が出席している目の前での「退場宣告」ということになる。この過激なパフォーマンスは、JR北海道問題にマスコミの目を引きつけるために仕組んだ「作戦」だった。

 インパクトは大きかった。ただ、反応は大手マスコミではなく別の所から現れた。運輸審議会ホームページで、公述人決定とともに公述書の内容が公表された直後の8月21日、「JR北海道の島田会長・綿貫社長の辞任要求へ!国交省主催の公聴会で異例の展開へ」という動画がYoutubeで何の前触れもなく公開された。JR北海道問題に特化した内容で最近注目度がアップし、アクセスも稼いでいる「鉄道大好きチャンネル」だった。

 安全問題研究会のホームページ上で意見公述内容を公表するのは公聴会終了後にしようと考えていた私にとって完全な不意打ちだった。事ここに至った以上、事前公表やむなしと判断。公聴会で意見公述することを、安全問題研究会ブログで事前公表した。

 「鉄道大好きチャンネル」の動画に対して書き込まれたコメントを見る限り、公述内容は高い評価を得た。道民生活に大きな影響を与える定期運賃値上げなど、まず身近な話題から入り、共感を得た上で、国鉄分割民営化など「大文字の問題」へ昇っていく――国の政策批判に当たって、これが最も有効な手法であることは、すでに私自身が何度も行ってきた講演などを通じて証明されている。

 大手マスコミで「会長・社長に辞任要求が出された」ことを伝えたところは、地元紙・北海道新聞を含め皆無だった。それでも私たちの主張は大きく報道された。4人の公述人のうち唯一、賛成を表明した人も「えきねっとの改善」「特急すずらんへのテコ入れ」「北海道新幹線札幌延伸に伴って予定されている函館本線(小樽~長万部、通称「山線」)廃止の再検討」を求めるなど、内容は反対の3人とほとんど変わらないほど厳しいものだった。「サービスを低下させておいて値上げは容認できない」と考えるか、「これ以上のサービス低下は到底容認できないので、運賃改定による増収分をサービス改善に充てることを条件に賛成」と考えるかの違いに過ぎず、その差は紙一重だったといえよう。

 運輸審議会は10月4日、JR北海道が申請した運賃上限改定を「申請通り実施すべき」と答申した。公聴会など茶番に過ぎず意味がないという「雑音」も私の耳には聞こえているが、そのような国民の無気力な姿勢こそが自民「長期一党独裁」を招いたのだ。

 有権者がきちんと怒れば政治は変えられることが、図らずも今回の衆院選で証明された。野党が多数となった衆議院で何をすべきか。私は、JR6社分割体制を抜本的に改める法案を2種類用意し、これから政党・議員対策に全力をあげたいと考えている。ただし、本当の意味での勝負は、おそらく来年7月の参院選以降になると思う。

(2024年11月15日)

JR北海道の島田会長・綿貫社長の辞任要求へ!国交省主催の公聴会で異例の展開へ・・・一連のJR北海道の経営姿勢に疑問の声が続々!


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<地方交通に未来を(18)>鶏が先か卵が先か、その答えは能登にある

2024-09-18 21:32:59 | 鉄道・公共交通/交通政策

(この記事は、当ブログ管理人が長野県大鹿村のリニア建設反対住民団体「大鹿の十年先を変える会」会報「越路」に発表した原稿をそのまま掲載しています。)

 鉄道が廃止されると人口が減り、町が寂れるのか。それとも、人口が減って町が寂れ、鉄道利用者も減ったから廃止になるのであって、両者は無関係なのか。ローカル線廃止絶対反対派と、廃止支持派の間でもう半世紀以上も続き、おそらく永久に決着のつくことがない論争である。決着がつかないのは「どちらも正しい」からである。「廃線推進派を相手に、そんな“鶏が先か卵が先か”のような消耗戦をいつまでしていても時間の無駄だ。人口が減って鉄道が廃止されるとさらに人口が減り、ダウンサイズされたバスなどの公共交通がまた廃止になるスパイラルなのだから、私なら『(負の)連関』のひとことで済ませる」。「次世代へつなぐ地域の鉄道」執筆に私とともに加わった桜井徹・日本大学名誉教授は明快だ。私も各地の講演などでこの質問が出たときは「鉄道廃止は、人口減少や町の衰退の原因であるとともに結果でもある」と答えてそれ以上の議論はしない。貴重な講演時間がその論争で終わってしまっては疲れるだけで無意味だからだ。

 元日の能登半島地震から8か月経った。震源地が北陸電力志賀原発の近くにあり、またかつて珠洲原発の計画を阻止した歴史もあるため、原発関連で話題が出ることはあっても、鉄道と絡める形で能登地震の話題が出たことはこの8か月、まったくといっていいほどない。今回はその面からの話をしておきたい。

 能登地震の最も大きな被害を受けた能登半島先端部には、2005年3月まで「のと鉄道」が走っていた。旧国鉄の特定地方交通線・能登線を引き継いだ第三セクター鉄道だ。時刻表の路線図を広げると、今ものと鉄道は残っているが、これはJR西日本から譲渡された旧七尾線区間であり、もともとの区間とは違っている。旧能登線は穴水から蛸島(珠洲市蛸島町)までを走っており、もともと交通不便なこの場所で住民や観光客が効率よく動ける地元の貴重な足だった。

 能登地震から3か月が経過した3月下旬、能登半島先端部では水道が未復旧の地域がいまだに1割もあるとの情報を入手した。全水道(地方自治体の水道事業職員で構成する労働組合)関係者の話であり、情報源としては信頼できる。全国の水道事業の実態を最もよく把握しているのは自治体水道労働者であり、被災水道の復旧も彼らが地元業者と連携して進めているからである。

 水道だけではない。横倒しになった建物も再建どころか撤去もされていない場所が多く残る。過去の大地震被災地である東北や熊本などと比べて、明らかに復旧が遅い。国は復旧が遅れている理由を「半島の先端のため人も車も入れない」などと説明しているが、それならなぜ20年前、のと鉄道を廃止したのか。貴重な地元の移動手段を残していれば、旅客列車を休止させ復旧物資用貨物列車を走らせるなどの非常手段があり得たと思う。

 「大災害が来ればどうせ鉄道も不通になるのだから意味がない」と、廃止支持派は言うだろう。確かに被災した「瞬間」だけを見ればそうかもしれない。だが、廃止以降の20年という長い時間軸にしてみると、見えてくる風景はまったく異なる。 内閣府が6月26日に公表した「令和6年能登半島地震における災害の特徴」によれば、旧のと鉄道の終点駅・蛸島駅のあった珠洲市の高齢化率(全人口に占める65歳以上の比率)は約52%、輪島市が約46%。珠洲市は全人口の半数以上が65歳以上という恐るべき比率だが、それでも2016年熊本地震の主要被災地である益城町が約54%、南阿蘇村でも約43%だったのと比べると同程度で、能登が突出して高いわけではない。

 むしろ私が注目したのは能登被災地の人口減少率の高さである。被災6市町(七尾市、輪島市、珠洲市、志賀町、穴水町、能登町)における人口減少率は、1985年を1として2020年は0.6であり、35年間でなんと4割も減っている。石川県全体では人口は横ばいであり、全国では同じ期間、過去の蓄積もあり1985年の人口をまだ上回っている。

 人口が4割減った被災6市町のうち、志賀町以外は旧のと鉄道の走っていた地域と重なる。ただ、人口減少のペースを見れば1985年から、のと鉄道廃止(2005年)を挟んで2015年までの30年間、一本調子で減っており、鉄道廃止との強い関連性は認められない(同時に、志賀原発建設が始まった1988年以降も減少ペースが鈍っていないことから、原発が来れば地域が栄えるという原発推進派の宣伝もウソであることは指摘しておきたい)。

 「35年間で4割も人口が減るような地域は、あと40~50年も待てば誰もいなくなる。そんなところに巨額の復旧復興予算を投じるのは無駄だ」と国が考えていることは、財政制度等審議会(財務省の諮問機関)が今年4月に公表した提言にも現れている。能登復興に当たっては「維持管理コストを念頭に置き、集約的なまちづくりを」――提言は包み隠さず、財務省の本音をこう述べているのだ。

 国交省が2016年に発行したパンフレット「もしも赤字の地域公共交通が廃止になったら?」には「地域鉄道廃止と地域活力との関係」を示す表が掲載されている。鉄道が廃止された地域の人口が2000年を1として、10年後には0.95と5%減っているのに対し、存続している地域では1と横ばいを維持している。鉄道廃止が地価に与える影響を示す別のグラフでは、2000年を1として、鉄道が廃止された地域の15年後は0.5と半額に下落しているのに対し、鉄道が存続した地域では0.6。下落には違いないが、鉄道が残れば「負け幅」を1割も縮小できることを、この資料は示している。ただ、5%にしても1割にしてもあまりに小さすぎる。この程度なら「誤差の範囲内」であり、地域衰退と鉄道廃止は「無関係」だと信じたい廃線支持派にも一定の根拠を与える結果になっている。

 だが、能登被災地からは、数字では表すことのできないこの国の本当の姿が見える。35年間で4割も人口を減らした町では、かつて「どうせ誰も乗っていないのだから、そんな鉄道などなくなっても誰も困りませんよね?」と主張する行政と鉄道会社に同意し、鉄道を手放した。大災害が襲った20年後、地元住民たちは、単語だけを入れ替え、国に再び問われるのだ。「どうせ誰も住んでいないのだから、そんな地域などなくなっても誰も困りませんよね?」と。災害復旧さえ行われないまま廃止に追い込まれたローカル線と同じことが、地域社会全体に拡大して行われている。地域社会全体の「廃止協議」である。

 ローカル線廃止を支持してきた人たちに私は問いたい。「どうせ誰も住んでいないのだから、そんな地域などなくなっても誰も困りませんよね?」と「廃止協議」が始まる次の場所がもしあなたの町だったとき、それでもあなたは同意するのか。いつまで経っても復旧しない能登被災地を見ていると、そう問われているとしか思えないのだ。 

(2024年9月10日)


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【管理人よりお知らせ】当ブログ管理人に取材した動画が公開されました

2024-09-06 22:41:37 | 鉄道・公共交通/交通政策

9月3日、運輸審議会が札幌市内で開催した公聴会で、無事、意見公述を終えました。

この公聴会で、運輸審議会委員とJR北海道との間で行われた質疑応答の模様を、「鉄道大好きチャンネル」さんが再び動画にしています。私が取材に応じたものです。

以下からご覧いただけます。

え?函館本線山線のバス転換延期?JR北海道の綿貫社長がポロリ•••公聴会でさらっと重大発言!


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