安全問題研究会~鉄道を中心とした公共交通を通じて社会を考える~

公共交通と原発を中心に社会を幅広く考える。連帯を求めて孤立を恐れず、理想に近づくため毎日をより良く生きる。

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●管理人の寄稿
月刊『住民と自治』 2022年8月号 住民の足を守ろう―権利としての地域公共交通
核のない未来を願って 松井英介遺稿・追悼集(緑風出版)

●安全問題研究会が、JRグループ再国有化をめざし日本鉄道公団法案を決定!

●安全問題研究会政策ビラ・パンフレット
こんなにおかしい!ニッポンの鉄道政策
私たちは根室線をなくしてはならないと考えます
国は今こそ貨物列車迂回対策を!

2020年 安全問題研究会10大ニュース

2020-12-30 18:37:33 | その他社会・時事
さて、2020年も残すところあとわずかとなった。例年通り今年も「安全問題研究会 2020年10大ニュース」を発表する。

ただし、今年は新型コロナという100年に1度級の異常事態が発生したため、新型コロナ関係を別枠にしないと、トップ10がすべて新型コロナ関係で埋まってしまう。そのため、新型コロナ関係は別枠とし、順位は付けないこととする。それ以外のニュースは従来通りとする。

選考基準は、2020年中に起きた出来事であること。当ブログで取り上げていないニュースも含むが、「原稿アーカイブ」「書評・本の紹介」「インターネット小説」「日記」「福島原発事故に伴う放射能測定値」「運営方針・お知らせ」カテゴリからは原則として選定しないものとする。

<新型コロナ関係(順位なし)>
・中国・武漢で発生した新型コロナ、全世界に広がる 各地で都市封鎖、一斉休校実施
・クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」で次々と感染拡大
・安倍政権、新型コロナで「緊急事態宣言」
・開催予定だった東京五輪、1年「延期」決定、プロ野球、Jリーグなど日程延期、短縮相次ぐ
・海外と日本との間の出入国全面停止 観光客「消滅」で観光・飲食・イベント産業に大打撃
・マスク、トイレットペーパーなど生活必需品の買い占め騒動発生 石油危機以来約半世紀ぶりの「国民生活安定緊急措置法」発動によりマスク転売が一時禁止に
・新型コロナで「密」避ける動き。観光客と通勤客の「ダブル消滅」で鉄道・航空業界に大打撃
・医療従事者・医療機関に十分な支援なく、続々窮地に

<新型コロナ以外の通常ニュース>
1位 安倍政権が退陣、菅政権発足<社会・時事>

2位 米大統領選でバイデン民主党候補勝利、現職トランプ氏敗北<社会・時事>

3位 北海道寿都町、神恵内村が「核のごみ」最終処分地へ応募、初の文献調査開始<原発問題>

4位 福島原発「生業を返せ!」訴訟控訴審で仙台高裁、国の責任認定し賠償大幅増額の画期的判決<原発問題>

5位 JR日高本線の廃線が決定。一方、政府は2021年度からJR北海道に3年間で1300億円を支援へ<鉄道・公共交通/交通政策>

6位 英国が初のEU「離脱」~国民投票以来4年越しで<社会・時事>

7位 大阪「都構想」住民投票で反対多数、大阪市存続が決定<社会・時事>

8位 リニア新幹線、水問題でJR東海と静岡県の対立激化。長崎ルートは佐賀県の抵抗で、北海道新幹線札幌延伸工事は残土問題でストップ。北陸新幹線工事でもトンネル亀裂が見つかり、鉄道・運輸機構理事長、副理事長が辞意表明<鉄道・公共交通/交通政策>

9位 北神急行が神戸市交通局に編入。戦後鉄道史上、純粋私鉄の公営化は初<鉄道・公共交通/交通政策>

10位 大阪地裁が大飯原発3号機の設置許可取り消し判決<原発問題>
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【番外編】
・種苗法「改悪」法案成立 主要種苗の海外流出防止へ「育成者権」強化も「自家増殖」経費膨張の恐れ<農業・農政>
・三浦春馬さん、竹内結子さん……コロナ禍で芸能人の自死相次ぐ<芸能・スポーツ>
・水樹奈々さん、入籍&妊娠発表<芸能・スポーツ>

2020年を振り返ってみると、前半は新型コロナ、後半は核のごみ問題に振り回され、それ以外のことは何もできず終わってしまった。特に、自分が関われないでいるうちに日高本線の廃線が決まってしまったことは、近年で最も手痛い敗北だと思っている。

来年は、これらの問題にも引き続き取り組むが、新型コロナ問題では、少なくともこれにより自分の望む方向に世界が変わる希望はまったく持てなくなった。むしろ変化は自分の望んでいなかった悪い方向(格差拡大など)ばかりが目立っている。新型コロナ問題はこれまで取り組んできた日常の戦線の延長線上の問題として、来年は取り組む。

JR問題では新年早々、大勝負に出る。今はまだ内容を明らかにできないが、確定次第、当ブログでお知らせしていきたい。

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今年1年を振り返って・・・

2020-12-29 17:19:57 | 日記
年の瀬を迎え、例年であればここで鉄道全線完乗達成状況を含めた目標達成度を皆さんにお伝えするのが恒例になっていた。だが、今年はそもそも新年早々から精神状態が良くなかったため、目標そのものを掲げなかった。極めて異例のことではあるが、目標自体、掲げなかったのだから達成状況も当然ながらお伝えすることはできない。異例の年末である。

だが、新型コロナ禍という異常事態が発生し、目標を掲げても達成が困難であったであろうことを考えると、無理せず目標設定を見送った年初の私の判断は、結果的に正しかったのかもしれない。

昨年秋から、何か凶事の発生を予兆するかのようなテレパシー性の強い夢を5回続けて見た直後に、新型コロナ禍が発生した。今にして思えば、あれは予知夢だったと言うほかない。

幸い、「車をなくし、探し回る夢」はこの記事で紹介した今年1月10日が最後で、それ以降、見ていない。新型コロナという異常事態がずっと続いてきたので皆さんにはお伝えできずじまいだったが、当ブログ管理人は結局、「詰んでしまった」札幌の職場から、千歳市内の別の職場へ4月1日付で異動となった。2007年から続いてきた出向がついに解除になり、「古巣」へ実に13年ぶりの里帰りだ。慣れた職場で「ホーム感」もあり、懐かしい気がした。かつての仲間も温かく迎えてくれた。コロナ禍という異常事態を乗り切れたのは、この環境変化を抜きにしては考えられない。

6月には職場から近い千歳市内に転居もした。悪い流れを振り払いたい気持ちもあったが、最大の理由は、コロナ禍が長期化しそうな予感もする中で、毎日、札幌から千歳まで30分以上も電車に乗り続ける通勤スタイルを避けたかったからである。

コロナ禍で、テレワークなどのリモートワーク化が進み、一時は過密化しすぎた東京から地方への人口流出の流れが起きるのではないかと言われたが、大きな流れにはならなかった。いわゆる「現場系」の仕事(最近はあまり聞かなくなったが少し前までは「ガテン系」という言い方もされた)、最も打撃を受けた接客・飲食・観光などの仕事は「その場所にいてナンボ」の世界なのでそもそもリモートワークなど不可能だ。リモートワークでいい思いをしているのは結局、エッセンシャル・ワーク(生活必需産業における労働)という単語とともに、その反対語として使われるようになったブルシット・ジョブ(クソどうでもいい仕事)に従事している特権的階級だけで、エッセンシャル・ワーカーたちはリモートワークの恩恵など受けられないのである。

それだけに、長時間の電車通勤を避ける動きとしての「東京脱出」を実現できたのはブルシット・ジョブに従事している人だけで、エッセンシャル・ワーカーたちの間では、逆に職場に近い場所に転居することで長時間通勤を避ける動きが強まった。結果として東京から離れる動きが顕在化した一方、都心近くに転居する動きもまた顕在化したのである。今思えば、当ブログ管理人が長時間通勤を避けるために職場近くに転居したのも自然の成り行きであり、逆に言えばエッセンシャル・ワーカーとしての自分の立ち位置をはっきりさせる出来事だったような気がする。

そんなこんなで、異例ずくめだった2020年もまもなく終わる。こんな年、回顧するどころか2020年自体をなかったことにしたい人のほうが圧倒的だろう。だが今年のような異常時にこそ人としての真価が問われる。危機管理の下手さにおいては世界でも他の追随を許さない日本人だから、コロナ禍は来年も(そして、おそらくは再来年も)続くだろう。個人的利益より社会全体の利益を優先して行動できるかどうかが問われている。

国や自治体からの自粛要請に従わず、観光だ宴会だと騒いでいる連中に「警告」しておかなければならないが、経済学の世界では公衆衛生は防衛、警察、消防、道路などと同じく「純粋公共財」とされる。自分が使っても他の人の取り分が減るわけではない代わりに、維持コストを負担しなければ全体が劣化していき、崩壊する。例えば、10軒の家のうち9軒がきちんと火の始末をしていても、残り1軒が火の管理に無頓着であれば、そこから出火し、10軒全体が焼けてしまうのと同じだ。このような性質を「共同消費性」と呼び、共同消費性を持つ財を経済学では公共財と呼ぶ。そして、公共財は消費財と違い、劣化が「使えば減る」という形で明確に目に見えないため、どうしても「維持コストは払いたくない、しかし恩恵だけは受けたい」というフリーライダー(いわゆる「ただ乗り者」)を生んでしまう。そして、フリーライダーが使用することによる劣化分を、他の人が負担する維持コストでまかなうことができなくなったとき、公共財は一気に全体が崩壊するのである。

公衆衛生も公共財だからこの理論が当てはまる。医療・介護従事者、自粛に応じている人が、休日の行楽やレジャーも、やりたいことも、感染拡大を防止するために我慢して必死に耐えることで「公衆衛生」という公共財の維持コストを払っている。その横では「自粛なんてクソ食らえ、自分だけは大丈夫」と考え、遊びまくる愚か者たちがコストを負担せず公衆衛生という公共財に「フリーライド」している。フリーライダーたちを抑え、彼らにも公衆衛生のコストを支払わせるべきだ。

当ブログは、損得勘定だけで物事を判断し自分のことしか考えない「新自由主義者」が右翼よりも大嫌いである(少なくとも、「国家」「天皇」など自分を犠牲にしてまで忠誠を誓う対象を持っているだけ新自由主義者よりは右翼のほうがマシだと考えている)。この期に及んでも自粛要請の持つ意味を理解せず、「自分だけは大丈夫」とばかりに観光だ宴会だと遊び呆ける連中に対して、当ブログは今年途中から掲げているスローガン「新自由主義に死を!」に従って行動することになるので、覚悟してもらいたい。

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鉄道・運輸機構理事長が年明け辞任を表明 工事「総崩れ」状況を見ると当然では?

2020-12-27 23:13:46 | 鉄道・公共交通/交通政策
北陸新幹線開業遅れ、改善命令 国交省、鉄道・運輸機構に(共同)

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 国土交通省は22日、北陸新幹線金沢―敦賀(福井県)の開業遅れと建設費増加は管理体制に問題があったとして、建設主体の鉄道建設・運輸施設整備支援機構(横浜市)に業務改善命令を出した。国交省が機構に改善命令を出すのは初めて。機構の北村隆志理事長は記者団の取材に「代表者としての責任を明確にする」として、年明けに辞任すると表明した。

 上原淳鉄道局長が22日午後、北村氏を国交省に呼び、命令文書を手渡した。来年1月29日までに改善内容を報告するよう求めている。

 機構は03年、日本鉄道建設公団と運輸施設整備事業団が統合して発足した独立行政法人。
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鉄道機構理事長が辞任表明 初の改善命令受け 北陸新幹線工事遅れ(時事)

 工事の遅延で北陸新幹線金沢―敦賀間の開業が2023年春から1年遅れる問題で、国土交通省は22日、建設主体の鉄道建設・運輸施設整備支援機構に対し、独立行政法人通則法に基づく業務改善命令を初めて出した。

 これを受け、機構の北村隆志理事長は、年明けにも引責辞任すると表明した。

 国交省は命令で、施工管理体制や沿線自治体との情報共有を強化するよう要請。来年1月29日までに改善策を報告することも求めた。

 北村理事長は記者団の取材に「このような事態に至ったことを重く受け止める。機構の代表者として責任を明確化する」と説明。機構が改善策をまとめる前に辞任する考えを示した。小島滋副理事長も退任する。
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独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構(鉄道・運輸機構)に対し、「北陸新幹線工事の遅れ」を理由に国交省が業務改善命令を出した。業務改善命令は、正面衝突事故を2度も起こした京福電鉄(福井県、現えちぜん鉄道)やJR北海道などに出された例はあるが、鉄道・運輸機構への発出は記事にもあるように初。機構は理事長、副理事長の「2トップ」が年明けに辞任することになった。これも異例中の異例である。

しかし、今や鉄道・運輸機構が手掛けた工事は総崩れ状態にある。この間ずっと整備新幹線問題、リニア問題を追ってきた当研究会の目で見れば、これだけの事態を招いた機構の責任は問われて当然であり、辞任はむしろ遅きに失した感さえある。

北陸新幹線金沢~敦賀間は、2023年の敦賀開業を目指して工事が続いているが、貫通済みのトンネルから亀裂が見つかったことを11月初旬、各メディアがいっせいに報じた(参考記事:北陸新幹線工事、地盤が膨張し割れ目…1400本の固定ボルトが必要 加賀トンネル、完了2割程度(「福井新聞」2020年11月4日付))。さらに重大なのは、機構がこの亀裂の発生を9月段階で把握していたにもかかわらず、11月まで2ヶ月近くも隠蔽していたことである。この亀裂は大規模なもので、1400本ものボルトを追加で打ち込む必要があることから、2023年の敦賀開業は絶望視されている。

このところ、機構が手掛ける工事はあちこちで頓挫している。北海道新幹線札幌延伸工事は、北斗市内で有害物質を含んだ残土置場が満杯になったまま「次」の置場が決まらず、9月から工事中断となっている(参考記事:新幹線工事中断、来年2月末まで 渡島トンネルの一部(「北海道新聞」2020年11月26日付))。九州新幹線西九州ルートについても、フリーゲージトレイン頓挫によって、当初計画になかった武雄温泉~鳥栖間のフル規格格上げに佐賀県が反発し、工事が事実上暗礁に乗り上げている。実態は当ブログ2018年7月25日付記事「フリーゲージトレイン試験とん挫で混迷深める長崎新幹線~規格も決まらない路線に1兆円もの資金投入目指す「世紀の愚策」~」でお伝えしたとおりである。

そして、機構が国からの財政投融資3兆円を受け入れ、JR東海に「又貸し」する形で支援しているリニア新幹線も、大井川の流量減少問題をめぐる静岡県の抵抗で、静岡県内では工事にまったく入れていない実情がある。このように、今や機構が手掛ける現在進行形の新幹線工事(リニア工事含む)は「全滅」状態となっている。

これが古き良き「昭和」の時代なら、札ビラで地元の頬を叩き、デマとねつ造で事業の「有益性」を強調、最後は強制収用など力ずくで押し切れば新幹線は造れたであろうし、いざ造ってしまえば地元は万歳三唱で迎え、ぶつくさと反対していた連中も便利さに負けて結局は使うんだろう、と推進側は高を括っていればよかった。

しかし、従来の国のやり方では今や地元住民はおろか自治体すら納得しない。「こんなに便利に(あるいは速く)なるのに、なぜそんなに反対するのか」と昔のまま思っているなら、推進側はいずれ高い代償を払うことになるだろう。人々の価値観は多様化し、便利にさえなればいい、スピードアップさえすればいいという人ばかりではない。変わっていないのは事業を推進する政治家と官僚だけで、市民意識という意味では時代は変わっていないように見えても着実に変わっている。いつもと違うコロナ禍の年の瀬の風景からは、そんな日本社会の「底流」の変化も透けて見えてくる。

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原子力規制委、敦賀原発データ書き換え問題めぐって日本原子力発電に立ち入り調査

2020-12-16 23:45:04 | 原発問題/一般
規制委、原電に立ち入り検査 原発審査資料の書き換え(朝日)

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 日本原子力発電が敦賀原発2号機(福井県)の審査資料を書き換えていた問題で、原子力規制委員会は14日、原電本店(東京都台東区)の立ち入り検査を始めた。書き換えの経緯や背景について、社内文書の確認や関係者の聞き取りを進める。

 午前9時過ぎ、規制委の職員7人が本店に入り、会議室で剱田裕史副社長らから関係資料の提供を受けた。規制委の古金谷敏之・検査監督総括課長は「誠実な対応をお願いしたい。結果によって、どうするかは改めて考える」と語った。立ち入りは15日まで。

 書き換えられたのは、原子炉建屋直下の断層が活断層かどうかの判断に関わる地層の観察記録。審査を中断して全容解明を求めていた規制委は10月に審査の再開を決めたが、書き換えの背景については社内調査になお不明確な点が多いとして、審査とは別の検査チームで引き続き調べている。
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来年3月で福島第1原発の事故から丸10年となるせいか、このところ原発再稼働や核のごみ応募推進など原子力ムラの強烈な巻き返し策動が伝えられることが多くなってきているが、一方で今回の報道のように、「反省なき再稼働」に一定の歯止めをかけようとする政府内部の活発な動きも伝えられるようになった。政府内部で原発再稼働派と「再稼働反対~再エネ派」との間の攻防が激しさを増していると、当ブログは判断している。

今回の規制委による日本原子力発電(原電)への立ち入り調査は寝耳に水だった。もともとこの問題は、今年2月7日に行われた規制委の審査会合で規制委側が指摘したことに端を発する(関連記事:敦賀原発の断層「生データ」無断で書き換え 日本原電(「朝日」2020.2.7)及び原電 敦賀2号機の「活断層」データを削除 20年審査会資料、規制委に無断で(「毎日」2020.2.12))。原電によるデータの書き換えは、敦賀原発直下を走っている活断層の中に含まれる柔らかい「粘土層」の存在を隠すため、粘土層の存在をうかがわせる生データを丸ごと削除したもので、まさに敦賀原発が福島原発事故後に策定された新規制基準に適合するかどうかの審査(適合審査)をめぐる核心部分で行われたことになる。

なぜこのデータ書き換えが審査の核心になるのか。福島原発事故後に策定された新規制基準では、原子炉建屋や重要免震棟など、原発を安全に運転する上で絶対不可欠な「重要施設」は活断層(最近40万年以内に動いた実績のあるもの。参考資料:「設計・建設段階の安全規制 設置許可」原子力規制委員会)の上に建ててはならないこととされた。既存の原発にも新規制基準は適用されることになっており、「重要施設」の真下にある断層が活断層と認定された場合、その原発は自動的に廃炉となる運命にある。

そして、敦賀原発2号機に関しては、2014年11月19日に行われた規制委の審査会合で、原子炉建屋の真下を走る「K断層」が「13万~12万年前以降」に活動した実績を持っているとして、これを「活断層」とする評価書がすでに決定されている(参考記事:敦賀原発、再び「活断層」 運転困難に 規制委追加評価書案決定(「産経」2014.11.19)及び敦賀原発2号機に「活断層」 規制委が評価書受理 (「日経」2015.3.25))。規制委は「新しい知見が得られた場合、見直すこともあり得る」としており、原電は敦賀原発2号機を再稼働したければ、「新しい知見」を示して2014年の評価書の決定を覆さなければならない立場にある。

しかも、原電が他の電力会社と異なるのは、日本で唯一の「原発専門会社」であることだ。他の電力会社は原発専業ではないため、原発が再稼働できなくなっても(コスト高にはなるが)直ちに事業が行き詰まることはない。しかし原電はそうではない。原発専門のこの会社にとって、敦賀1号機はすでに老朽化で廃炉を決めており、東海第2原発(茨城県)も再稼働に必要な地元自治体の同意が得られない状態になっている。この上、「命綱」である敦賀2号機に関する評価書の決定を覆せないまま廃炉が決定した場合、原電の全原発が再稼働できないという原子力推進側にとって「恐るべき事態」となる。経営破綻~会社清算という事態さえ現実となりかねないのだ。

そんな会社がなぜ倒産せずに生き延びているのか。東京電力など他の電力会社が資金援助しているからだ。電力会社からの資金援助でなんとか倒産を免れている原電は「ゾンビ会社」状態にある。原子力損害賠償・廃炉等支援機構を通じて過半数の株式を握られ、国有化された状態で福島原発事故被害者への賠償を行っている東電が、原電のようなゾンビ会社に資金援助を続けていることに対しては、「そんなことに使うカネがあるなら福島県民に賠償せよ」との批判がそうでなくても出されている。東電がこうした批判に抗しきれずに支援を打ち切れば、原電は明日倒産しても不思議ではないのだ。

このような原電の焦りが、データ書き換えを生んだことは間違いない。そして、今回の立ち入り調査は、新規制基準への適合審査というまさに1丁目1番地で「コケにされた」規制委による原電へのけじめという一面も持っている。規制委は当然、原電に厳しい姿勢で臨むであろうし、またそうであってくれなくては困る。

当ブログは、東海第2も敦賀も廃炉にし、原電を破綻させた上で、政府出資の国策企業「日本原子力施設廃炉整理株式会社」へ改組するよう以前から訴え続けている。原発廃炉を専門に手がける国策企業がこれからの時代には必要だと思うからだ。データを改ざんしなければ生き延びられないような原発なら潔く廃炉にし、原電も廃炉会社として一から出直しすればいい。

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今明かされる極秘避難計画 子ども6千人、原発事故直後

2020-12-13 23:31:40 | 原発問題/一般
今明かされる極秘避難計画 子ども6千人、原発事故直後(朝日)

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 2011年3月中旬、東京電力の福島第一原発で事故が起きた直後、60キロほどの福島県郡山市で、子ども6千人を避難させる計画が急きょ練られた。市民にも議会にも極秘にされた。

 当時市長だった原正夫氏(77)、教育長だった木村孝雄氏(74)とともに、ことし11月半ば、猪苗代湖畔の廃校を訪れ、記憶をたどってもらった。

 「原発がさらに爆発したら、ここへ避難させる計画でした」と原氏。「せめて温かい食事を出せるよう、調理室にプロパンガスを運びました」と木村氏。校庭に残る雪を職員らと払い、雑草を刈った。

 原発事故を想定した避難計画はなかった。計画づくりを政府から義務づけられていたのは、原発8〜10キロ圏だけだった。

 郡山市内は切迫していた。大震災で約2万4千戸が全半壊。3月15日にかけ、1、3、4号機の原子炉建屋が爆発し、毎時8・6マイクロシーベルトの放射線量を市内で記録した。国が追って避難指示の目安とした値の2倍超。派遣されてきた自衛隊員は防護服を着ていた。

 原発の周辺から避難者が押し寄せた一方、5千人超の市民がマイカーなどで市外に避難し始めた。動くに動けない市民から、怒り、戸惑う声が殺到した。

 原氏は16日、地元の参院議員、増子輝彦氏の訪問を受けた。「問題なのは(爆発していない)2号機なんですよね」

 半年ほど前まで経済産業副大臣だった人物の言葉に原氏は驚いた。爆発がさらに続くリスクは、想定していなかった。被曝(ひばく)の影響を強く受ける子どもたちの避難は「国からの正式な情報を待っていては手遅れになりかねない」と判断した。

 避難先に決めた湖南地区は西に二十数キロ。奥羽山脈で隔てられ、放射線量が低かった。旧月形小学校など五つの廃校に電気や水道を通した。子どもを運ぶバス約60台を手配した。2週間ほどの急ごしらえだった。

 市内の児童は1〜4年生だけで1万3千人ほど。廃校に収容できるのは、うち6千人。「市にできる限界だった」
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12/11付け朝日新聞に「今明かされる極秘避難計画 子ども6千人、原発事故直後」という見出しで上のような記事が掲載されている。原正夫・前郡山市長が現職時代、子ども6千人を避難させる計画を実際に策定していた、という。

朝日新聞は見出しの前に「独自」と付けており、初出記事であるかのように謳っているが、福島県内限定で発売されている月刊誌「政経東北」は2015年2月号ですでに報じている(見出しのみ、バックナンバーページで見ることができる。「原前郡山市長が明かす震災対応秘話 市長選「逃げた」「逃げない」騒動にも言及」という見出しの記事が該当する)。この記事もネタ元は同じ原前郡山市長だ。

こうした報道が、品川萬里(まさと)市長の3選出馬表明の直後という微妙な時期に全国紙の紙面で出てきた背景に、品川派と原派の抗争という一面もあることは見ておく必要がある。原氏は市長時代、公園など市民の生活空間に平気で除染土を埋めたり、市内の小中学校の教室に冷房設置を求めた保護者の請願を無視したりするなど市民不在の市政を続けた。このような強引で市民不在の政策を強行したせいもあり、2013年4月の市長選で品川現市長に敗れた。

ただ、このときの選挙に関して言えば、原氏に同情すべき点もある。「多くの市民が本当は放射線量の高い郡山市内から避難したいと思いながら現実にはできないでいるのを尻目に、自分だけ家族を県外に避難させた」というネガティブ・キャンペーンを品川陣営に張られたからだ。

結論から言えば、原氏の娘と孫がこの選挙戦の時期に福島県内から離れていたのは事実だった。「政経東北」同様に、県内限定で発売されている経済誌「財界ふくしま」2013年1月号が「ざいかい短信~動き出した郡山市長選」という記事の中で、原氏の評価に関する「郡山市内のある有識者」の声を次のように紹介している。

「娘さんと孫が治療のためとはいえ宇都宮に移るなど、『なぜ自分の身内だけ移転させるのか』という批判もいまだに根強い・・・(中略)・・・そうした批判は今後、ボディーブローのように効いてきますよ」

原氏の名誉のために言っておくと、それは当時噂されたような「放射能からの自主避難」ではなく、福島県内では対応が困難な難病の治療を受けるためにやむを得ず宇都宮市内の病院を受診していたものだ。だが、品川陣営は、あたかも原氏が公職者でありながら放射能を恐れて家族を県外避難させた卑怯者であるかのように印象づけるため、「逃げない」と書かれたポスターを市内あらゆる場所の公営掲示板に貼って選挙戦に臨んだのである。


原氏に当てつけるような「逃げない」のポスターが貼られた公営掲示板=2013年4月の郡山市長選


品川陣営は「どんなに困難な市政課題にも逃げずに取り組む姿勢をアピールしたかっただけだ」として“噂”を否定した。だが、多くの郡山市民が国からの避難指示も東京電力からの補償もない中で将来の健康被害へのはっきりした危機感を抱き、実際に自主避難という道を選ぶ人も多くいた。そんな中の選挙戦でこのような言葉をポスターに盛り込めば、それが市民にどう受け止められるかは想像に難くなく、品川陣営ははっきりと狙っていたと今でも当ブログは思っている。

結果的に原氏が敗れたところを見ると、この作戦は成功したといえる。「ある有識者」の指摘通り、「ボディーブローのように」効いたのだ。

その敗北から早くも7年。原氏が5年前、地元誌の取材ですでに明かしている内容を、わざわざこのタイミングで再度、朝日に書かせたところを見ると、このときの「遺恨」はまだ原陣営に根強く残っているのだろう。

こうした裏事情まできちんと知った上で朝日はこの記事を書いたのだろうか。政経東北の取材に応じた時点で原氏は71歳、今年は77歳でさすがに原氏自身の返り咲きはないだろう。だが、もしこの記事が原因で品川氏が落選、原氏またはその後継者が「復権」することにでもなれば、朝日が選挙に「介入」したということになりかねない。そんな危険もはらんだ記事だと思う。

とはいえ、県内誌「政経東北」だけしか報じていなかった60km圏内自治体の「極秘避難計画」が全国紙によって明かされたことの意義は大きく、今後、様々な反響を呼ぶと思う。当ブログも避難を否定せず、むしろこの間ずっと推奨する姿勢を貫いてきただけに、このような自治体がひとつでも現実に存在していたと示されたことは、避難を選択した住民に対し明確に励みになると考えている。原氏に政治的過ちがあったとすれば、それはこの計画を作ったことではなく、実行に移さなかったことだ。

ちなみに、「原さんが市長時代、子どもの避難計画を極秘裏に作っていたらしい」という噂は、福島時代に当ブログ管理人も何回か聞いた。当時は極限の混乱状態だったので、発言の主は覚えていないが、異なる情報源から、それも複数回。郡山市民の間にこの噂は相当広まっていた。当時、地元に根を下ろして生活していた関係者だけの知られざる秘話だと思う。朝日も書けなかった裏話として、ここに書き残しておきたい。

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【訃報】有馬朗人・元東大総長死去 原発推進の「A級戦犯」

2020-12-08 22:51:04 | 原発問題/一般
元文相・有馬朗人さんが死去 「ゆとり教育」導入求める(共同)

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 原子核物理学者で文相兼科学技術庁長官を務めた元東京大学長の有馬朗人(ありま・あきと)さんが死去したことが7日、分かった。関係者によると、東京都内の自宅で亡くなっているのが同日午前、見つかった。90歳。大阪府出身。

 1953年、東大理学部卒。東大助手、助教授を経て75年に教授。89~93年に学長を務めた。93~98年に理化学研究所理事長。2010年から静岡文化芸術大理事長。

 中央教育審議会会長だった96年、学校週5日制など「ゆとり教育」の導入を求める答申をまとめた。98年の参院選で自民党比例代表名簿1位で当選、直後に発足した小渕恵三内閣で文相に就任した。
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有馬朗人・元東大総長が死去した。死去を知らせるニュース記事には、文部相在任中に手がけたゆとり教育導入を「失敗」と批判するものや、国立大学の法人化を日本の研究体制の弱体化を招いたとして批判するものなどが目立つ。総じて、手がけた政策への評価は低いが、自身の「専門分野」であった原子力分野で果たしてきた「負」の役割ーーすなわち原発推進の罪について触れているニュース記事にはほとんどお目にかからない。とすれば、やはりそこは当ブログこそが触れなければならないだろう。

福島原発事故のあの惨状を目の当たりにしても、有馬元総長は原発推進の旗を降ろすことはなかった。事故からわずか2ヶ月後、2011年5月6日付け毎日新聞の連載記事「巨大地震の衝撃 日本よ」に登場し、こう述べている。「スマトラ沖大地震や阪神大震災などがあっても、わたしが浜岡原発を視察したとき、10メートルの砂丘があるから、大丈夫と言われて、これなら大丈夫だろうと思った」。あの事故の惨状を目の当たりにして、なぜここまで根拠なく楽観的でいられるのか。理解不能としか言いようがない。

「国策に反対する少数意見を排除する動きはなかったのか」という質問に対して、有馬氏は「それはなかったと思います」と続ける。ふざけるのもいい加減にしろと言いたい。原発推進の立場で研究をしていた学者は多くが教授になっているが、原発反対の立場で研究を続けてきた京大原子炉実験所(和歌山県熊取町)に所属していた6人の学者たち(俗に「熊取6人衆」と呼ばれる)はどうか。海老澤徹さんは助教授、小林圭二さんは講師、瀬尾健さんは助手、川野眞治さんは助教授。小出裕章さんはは助教で退官し、今中哲二さんも助教で大学人生を終えた。教授になれた者は1人もいない。ここまであからさまな反対派差別、少数意見封殺が行われているにもかかわらず、のうのうと「ない」と言い切る鈍感さ、無神経さはさすが原子力ムラ住民である。その無神経さこそが福島の悲劇を生んだのだ。

同じ「毎日」のインタビューで有馬氏はこうも言う。「私が心配しているのは『地球温暖化』です。日本中の家の屋根に太陽光発電をつけてもまかなえる電力は日本全体の消費量の7%である。二酸化炭素を出す火力発電所が60%、原発が30%、合わせて、90%でこれを風力や水力で代替できますか。~安全で安心な原発を作るしかない。また日本のエネルギー自給率はわずか4%なので、その面でも今ある原発は必要です」。

何度でも繰り返すが、このインタビュー掲載は2011年5月6日。関東や東北のあちこちで、水道水や食料品から基準値を大幅に超える放射性ヨウ素やセシウムが検出され、「子どもに水道水を飲ませないように」という自治体からの通知を受けた保護者が途方に暮れている時期のこと。事故の影響による電力不足で首都圏は計画停電が続いていた。それでも多くの都市住民が「原発はもうこりごり」と思い、原発を動かすよりは不便を受け入れてでも節電に踏み出そうとしていた時期でもあった。福島県内に目を転じれば、我が子の鼻血がいつまでも止まらないため、多くの親たちが、自主避難先を探して走り回っていた。そのような時期、国民のほとんどが拒否の意思を明確にしていた原発に対し、メディアで堂々と「必要」と言ってのけたのがこの御仁である。

その後も有馬氏の「原発中毒」は止まらなかった。原発推進派の中核組織「原子力国民会議」の共同代表として、政府に繰り返し原発再稼働を要請するなど、原子力ムラの手先として策動を続けた(参考記事:原発再稼働など政府に要望提出 原子力国民会議(2014年6月6日付「産経」)。2019年、日本原子力学会誌上で氏が唱えた「改めて問う―「もんじゅ」は活用すべき!―有馬朗人氏に聞く」に至っては、開いた口がふさがらない。原発ゴリゴリ推進の自民党ですら将来性がないとして廃炉を決めていた高速増殖炉「もんじゅ」を活用せよと主張しているのだ。ちなみに、インタビュアーの沢田哲生もまた、当ブログにとっては反吐が出るほどの原発中毒患者である。原子力学会誌を舞台とした2人の「じゃれ合い」は、良識ある一般国民にはまったく通用しない原子力ムラ「村民」によるチンケな「村祭り」に過ぎない。

このような人物が、ほんの一時期とはいえ、日本の最高学府である東京大学の総長を務めていたという事実には戦慄を覚えざるを得ない。都合の悪い事実(反対派差別など)はなかったことにし、黒を白と言いくるめて原発を推進。挙げ句の果てに、自民党も投げ出すほどの金食い虫「もんじゅ」にしがみつき続けた原発中毒患者。ゆとり教育や大学法人化も確かに氏の犯した罪には違いないが、それすらもちっぽけな出来事に思えてしまうほど、原発推進「A級戦犯」として、有馬元総長の罪は万死に値する。

この記事を読んだ原発容認派は「死者に鞭打つのか」と思うだろう。だが、今もあの事故のため住み慣れたふるさとを追われ、戻れない人がいる。好きだった農業ができなくなり、ふさぎ込んだままの人がいる。補償もなく「勝手に逃げた卑怯者」の烙印を押されたまま自主避難し、避難先で一から生活を作り直さなければならなかった人がいる。福島県民は今なお毎日、原子力ムラに「鞭打たれ」続けている。その塗炭の苦しみを、同じ釜の飯を食べながらともに味わってきた事故当時の一福島県民として、原子力ムラ住民の過去の罪状を記録する責務が、当ブログにはある。

これだけ多くの人が苦しみを味わいながら、信じられないことに、2019年の刑事裁判では東京電力の3被告は全員が無罪となった。「私が責任を取ります」という人が原子力ムラの中から現れる気配は、まったくない。

福島原発事故からまもなく10年。「日本を先進国の座から転落させたきっかけはあの事故だった」ーー後世の歴史家がいずれこのように評価するときが必ず来るだろう。忘れっぽい日本人が、あの事故を忘却の彼方に追いやることができないように、せめて当ブログだけでもその名を「A級戦犯リスト」の中に書き留めておこう。当ブログは決して忘れない。許さない。そして「死者に鞭打ってはならない」などという空虚な「支配者のための道徳」など蹴飛ばしながら、当ブログはこれからも迷うことなく「反原発道」を邁進する。

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【速報】大飯原発3・4号機 大阪地裁が設置許可を取り消す判決

2020-12-04 22:46:18 | 原発問題/一般
大飯原発の設置許可取り消し 住民ら原告側勝訴 大阪地裁が初判断(毎日)

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 福井県や近畿地方の住民ら127人が、関西電力大飯原発3、4号機(福井県おおい町)について国の設置許可を取り消すよう求めた行政訴訟の判決で、大阪地裁は4日、許可を取り消した。森鍵一(もりかぎはじめ)裁判長は、原発が想定する地震の最大の揺れを示す「基準地震動」について、「原子力規制委員会の判断に看過しがたい過誤、欠落があり、設置許可は違法」と述べた。2011年の東京電力福島第1原発事故後、国の設置許可を否定する司法判断は初めて。

【大飯原発の設置許可取り消し 住民ら原告側勝訴】

 国は関電などと協議し、控訴する方向で検討している。判決が確定しなければ許可取り消しの効力は発生しない。国による安全審査の妥当性が否定されたことで、他の原発にも影響を与える可能性がある。

 耐震設計の目安となる「基準地震動」の妥当性が最大の争点だった。関電は原発周辺の地層の調査や過去の地震データなどから、基準地震動を856ガル(ガルは加速度の単位)と算定。規制委は17年5月、福島事故後に厳格化された新規制基準に適合するとして、設置許可を出していた。

 判決は、関電が算定に使った計算式は過去の地震データの平均値に基づいており、実際に発生する地震は平均値からかけ離れて大きくなる可能性があったと指摘。耐震性を判断する際、想定する地震規模を上乗せして計算する必要があったのに、関電や規制委が「何ら検討しなかった」と批判。規制委の判断に「不合理な点がある」として設置許可を取り消した。

 住民側は大飯原発3、4号機の基準地震動について、少なくとも現行の1・34倍の1150ガルになるとして、現在の原子炉では耐震性を満たしていないと主張していた。

 住民側の弁護団は「全ての原発の基準地震動の設定に関する重大な問題。ただちに策定をやり直すべきだ」との声明を出した。

 原子力規制庁は「裁判所の十分な理解が得られなかった。今後、関係省庁と協議の上、適切に対応する」とのコメントを出した。関電は「極めて遺憾で到底承服できない。国と協議の上、適切に対応する」としている。

 原発の設置許可を巡る訴訟では、福井県敦賀市の高速増殖原型炉もんじゅ(廃炉)について、名古屋高裁金沢支部が03年、原子力安全委員会(当時)による審査に重大な誤りがあるとして設置許可を無効とする判決を出したが、05年の最高裁判決で覆された。【藤河匠】

 ◇大阪地裁判決(骨子)

・関西電力は大飯原発3、4号機の耐震性判断に必要な地震(基準地震動)を想定する際、過去の地震規模の平均値をそのまま使い、実際に発生する地震が平均より大きくなる可能性を考慮していない。

・原子力規制委員会の審議や判断には看過しがたい過誤や欠落があり、不合理。

・規制委が2017年5月に出した設置許可は違法で取り消す。

 ◇関西電力大飯原発3、4号機

 1991年に3号機、93年に4号機が営業運転を開始。出力はともに118万キロワット。2011年の福島第1原発事故後に停止したが、12年7月、夏の電力需給安定のため、当時の民主党政権の判断で全国で唯一再稼働した。定期検査で13年9月に停止。新規制基準への適合が認められ、18年3月に3号機、同5月に4号機が再稼働した。現在は2基とも定期検査で停止中。
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原発訴訟は日本に原子力の灯が初めて点ってから絶えることなく続いているが、福島第1原発事故が起きるまで、住民側勝訴の裁判例が半世紀でわずか2例しかなかったことはよく知られている。福島第1原発事故後、裁判の「勝率」は大幅に上がったとはいえ、まだまだ住民側にとって勝つのが最も難しい裁判であることは言うまでもない。

過去、賠償訴訟や原発運転差し止め訴訟での住民側勝訴の例はあり、住民側勝訴の仮処分決定で稼働中の原発が止まったり、定期検査中の原発がそのまま稼働できなくなる例も出てきている。だが原発稼働の法的根拠となる設置許可そのものの取り消しを住民側が求め、それを認めたという判決は今回が初めてである。

今回の裁判は確定しなくても直ちに効力が発生する仮処分決定ではなく本判決であるため、確定しない限り拘束力は生じない。国が控訴して「係争状態」が続く限り、関西電力は大飯3・4号機の運転を続けられる。しかし、あくまでも「単発」的な運転差し止め訴訟と異なり、設置許可そのものが違法とされた今回のような判決がもし確定すれば、未来に渡って永久に原発運転が不可能となるため、電力会社、原発推進勢力に与える打撃は差し止め訴訟とは比較にならない。

判決要旨(脱原発弁護団全国連絡会ホームページ)はわずか4ページの短いもので、すぐ読めるのでぜひ読んでほしい。設置許可の根拠となる「基準地震動」を決めるに当たり、原子力規制委員会は電力会社が平均値さえ守れればよいものとして、平均値より大きな地震が来ることの想定自体をしていなかった。このような適当でずさんな規制基準には「看過し難い過誤、欠落」があった、と断じている。平均にそれより大きい数値があり得ることくらい、小中学生でも知っている。要するに規制委員会は仕事をしていないのである。

当ブログ管理人は、11月28日、札幌市内で開催された核のごみ反対集会で、樋口英明元裁判長の講演を聴く機会があった。樋口さんは、2014年5月、同じ大飯原発の運転差し止めを命じる画期的な判決を書いた。原発の燃料である天然ウランがほとんど輸入であるという事実から意図的に目を逸らし、石油火力発電に依存し続けることが「海外への国富の流出」などと寝言を続ける原発推進派に対し「たとえ本件原発の運転停止によって多額の貿易赤字が出るとしても、これを国富の流出や喪失というべきではなく、豊かな国土とそこに国民が根を下ろして生活していることが国富であり、これを取り戻すことができなくなることが国富の喪失である」との判決で痛打を浴びせた。

樋口さんは、この日の札幌での講演でも、700ガルという大飯原発の耐震基準が三井ホームのマンションの耐震基準よりも低いという驚くべき実態を訴えた。一度の事故で破局的な事態をもたらしかねない原発の耐震基準が民間マンションより低いという事実には、怒りを通り越して呆れるほかない。「再生エネルギーは不安定で実現不可能」と思い込んでいる人たちにこそこのずさんな実態を知ってほしいと当ブログは考える。風がやんだら発電が止まってしまうリスクは確かに自然エネルギーにはつきものだろう。しかし、それで日本全体が滅ぶようなことは起こり得ない。一方で、民間マンションが倒れないですむような軽微な地震(樋口さんは700ガルの揺れは震度6弱でもあり得る、とした)でも倒れるようなずさんな基準のまま運転を続ける原発を放置すれば、次の大地震で確実に日本は滅ぶだろう。それだけに、そうしたずさんな前提自体を「過誤、欠落」と断じた今回の判決は、確定に至らなくても大きな意義を持つのである。

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