安全問題研究会~鉄道を中心とした公共交通を通じて社会を考える~

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【金曜恒例】反原発北海道庁前行動(通算343回目)でのスピーチ/映画「おだやかな革命」を見て

2019-06-30 14:32:27 | 原発問題/一般
 皆さんお疲れさまです。この1ヶ月間、JR北海道の運賃値上げ問題で忙しく、1ヶ月ぶりの参加になってしまいました。

 先週土曜、22日に江別市の「えべつ環境広場2019」という環境問題関係のイベントがあり、その中で「おだやかな革命」という映画の上映会がありました。2018年2月の公開からすでに1年4ヶ月も経っていますが、首都圏などでは市民による自主上映が息長く続けられている作品です。北海道での上映会は、江別がおそらく初めてだと思います。環境問題ジャーナリストの木村麻紀さんという方が「変革はローカルから始まっている ~映画「おだやかな革命」に見る、「幸せな経済」のつくり方~」というネットニュースの記事で紹介をされていて、それ以来ずっと見たいと思っていた映画です。

 この作品は、再生エネルギーを中心に自立循環型経済を目指している地域とそこに暮らす人々の意欲的な取り組みを描いたものです。初めに福島県の会津電力が登場します。会津電力は、喜多方市で江戸時代から続く老舗の酒蔵「大和川酒造店」の9代目経営者、佐藤彌右衛門さんを中心に、地元金融機関や有志が資金を出し合って設立した太陽光発電の会社です。会社設立に当たり、佐藤さんは「東京に電力を送ることが晴れがましかった時代もあった。会津の電気が山手線も東京タワーも動かしている。若者はこぞって東京を目指した。そうやって地方はヒト、モノ、カネのすべてを東京に吸いとられてきた。これからは会津の自然を利用したエネルギーの自給を目指す。東京電力が持っている猪苗代湖などの水利権もいずれ買い戻す。会津はエネルギーで自立するんです」と熱く語っています。太陽光発電事業はすでに始まっており、私はこれを原発事故で取り返しのつかない被害を受けた福島からの、電力の「植民地解放」運動だと思っています。

 佐藤さんに刺激を受けて、飯舘村でも「飯舘電力」が設立され、電力事業が始まりました。設立の中心的役割を果たしたのは全村避難で一時、宮城に避難していた小林稔(みのる)さんです。小林さんは、避難住民が戻ってきた後の飯舘村では当分、農産物を売ることは難しいため、太陽光発電を村の主力産業に育てたいと思いを語ります。

 岐阜県郡上(ぐじょう)市石徹白(いとしろ)集落では、地元で出資を募って小水力発電所の会社を設立しました。都会からの移住者が再生エネルギーで動いたのをきっかけに、地元の特産物を生かしたカフェができ、休眠状態だった農産物加工所が復活するなどの変化が生まれています。子育て世代の移住が進み、このままでは廃校といわれていた小学校の存続も見え始めたといいます。懐かしさを感じさせる木造の用品店もオープンしました。

 秋田県にかほ市では、生活クラブ生協と提携し風力発電事業を始めています。交流事業でトマト栽培も始まり、ここで採れたトマトは生活クラブが全量買い上げることになっています。

 岡山県英田(あいだ)郡西粟倉(にしあわくら)村は鳥取県との県境にある典型的な辺境の村ですが、木質が悪いためCランクとして二束三文にしかならない木材を売るのをやめ、その木材を燃やして温泉を湧かしたことで、観光客が訪れるようになり村が活性化しました。

 この映画に登場する地域の関係者が揃って口にするのは「大きなシステム依存からの脱却」であり「食料とエネルギーを自前で持つこと」です。当たり前の話ですが、この2つを外部に依存するのと自分たちで持つのとでは全く違います。西粟倉村の関係者が「貨幣経済の力が落ちているときこそこのような自立循環型経済に踏み出すチャンス」と述べていたのが印象に残っています。まさかこの映画の登場人物から脱貨幣経済というキーワードが飛び出すとは思っていませんでした。「おだやかな革命」は、その意味ではまさに反資本主義映画であり、革命映画だと思います。

 岐阜県石徹白集落への移住者が「未来とは懐かしさなのではないだろうか」と述べていたことも強く印象に残りました。思えば私たちは、今までにない、新しいことをするのが未来だと思っていました。AI(人工知能)、自動運転など現在の延長線上に新しいことに取り組んでいくことが未来だと信じ込まされてきたと思います。でも私はこの言葉を聞いて目が覚めた気がしました。人類に幸福をもたらすかどうかもわからない、得体の知れないことに取り組むのが未来なのではなく、近代化、工業化、科学化の中で奪われ、失われていったものを取り戻す営みの中にこそ未来があるのだというメッセージだと思います。

 この映画に登場する人々の、どこか懐かしく、淡々としているけれど、それでいて力強くしなやかな言葉やメッセージを聞いているうちに、旧時代の異物と化した支配装置としての自民党は倒すものではなく溶かすものなのかもしれないと思いました。重工業化、一極集中、大量生産、大量消費から多極分散、自立循環型経済へ下部構造そのものを変える営みの中で生き生きとしている女性や若者たちの笑顔を見ていると、いずれこの笑顔の中で自民党は溶けていくのではないかという気がします。「おだやかな革命」、非常におもしろい映画であり、ぜひ皆さんも見ていただきたいと思います。劇場公開はされていないので、自主上映に取り組むのもいいと思います。

 最後に、この映画では触れられていませんが、ひとつだけ私が気づいたおもしろい点に触れておきます。今回、この映画に登場した地域には1つの共通点があります。福島県喜多方市は磐越西線、秋田県にかほ市は羽越本線、石徹白集落のある岐阜県郡上市は長良川鉄道(旧国鉄越美南線)、そして岡山県西粟倉村は智頭急行と、すべて鉄道が通っていることです。私はこれを決して偶然とは思いません。人口減少時代を迎える中で、移住者、交流人口を増やすためには一定の輸送力を持った交通手段が必要です。地域興しをしたくても、人の出入りもできないような不便な地域では不可能です。日本では、鉄道が道路や空港、港湾のような公共財、社会資本として扱われてきませんでした。それは今も変わらず、鉄道は「残したいと思っている地域住民と民間企業が勝手にやるもの」だという不当な扱いを受けています。しかし、だからこそ鉄道のある地域はそれを宝物として扱い、輸送力が大きい代わりにコストもかかる鉄道をアイデアと行動力で維持してきました。そのアイデアと行動力が、ここに来て一斉に花開いてきているのだと思います。北海道も今、鉄道が非常に苦しい局面を迎えていますが、今ここで地域が一丸となって鉄路を残すことができるなら、10年後、20年後に北海道が勝ち組になり、豊かで明るい未来が訪れることを、これらの事例が示しているように見えます。

 さて、私から最後に皆さんにお知らせがあります。来週月曜、7月1日に国の運輸審議会が行うJR北海道の運賃値上げに関する公聴会で、私は3人の公述人の1人として意見陳述することが決まっています。公述書の内容をお手元にお配りしています。当日は道民代表としてがんばりたいと思います。

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ノーモア尼崎事故集会、JR北海道運賃値上げに反対する市民公聴会相次いで開催 安全問題研究会が報告行う

2019-06-27 00:23:55 | 鉄道・公共交通/交通政策
(この記事は、当ブログ管理人が月刊誌「地域と労働運動」2019年7月号に発表した原稿をそのまま掲載しています。なお、管理人の判断で「鉄道・公共交通/交通政策」カテゴリでの掲載としました。)

 ●JR西日本への怒り相次いだノーモア尼崎事故集会

 「ノーモア尼崎事故 生命と安全を守る6・8集会」が兵庫県尼崎市で開催された。今年は統一地方選との重複を避けるため、事故のあった4月でなく6月開催となった。

 「組織罰とは何か~安全な社会を確立するために」と題し、「組織罰を実現する会」事務局の津久井進弁護士が記念講演。「尼崎事故裁判は無罪となり、同じ強制起訴の刑事裁判として東電の福島原発事故訴訟が進行中だ。企業の刑事責任の追及が困難な予見可能性に固執せず、企業として最低限講じるべき安全対策のラインを設定し、経営陣がそれを果たしているかで企業責任を判断する新しい考え方への転換が必要」と指摘。一方で「疑わしきは白の原則のある刑事訴訟には独特の難しさがあるが、組織内部にグレーの人がたくさんいる場合には、グレーもたくさん重ねれば黒になる。事実と闘いで突破することが有罪獲得に重要」として、福島原発事故刑事訴訟にも一定の配慮を示した。組織罰を実現する会は、国・自治体には500万円を、企業には純資産額を上限とする罰金刑を科せるようにする組織罰法制の実現を目指し活動している。国・自治体に対する罰金刑の上限を500万円に設定した理由について、津久井弁護士からは「国・自治体の財源が納税者の税金であり、罰金を引き上げても納税者の負担が増えるだけ。むしろ罰金刑が科されることにより国や自治体が再発防止策をしっかり取ることを期待してのもの」との説明が行われた。

 安全問題研究会からは北海道のローカル線をめぐる状況について報告。この1年間で新たに地元が廃線に同意したのは札沼線(北海道医療大学~新十津川)だけにとどまった。また、道庁や道内経済界によるJR利用促進運動が始まったが、国鉄末期の「乗って残そう運動」が成功しなかった経験から、路線存続には収支でなく鉄道を公共財として維持する政策が必要であることが示された。新幹線「のぞみ」台車亀裂事故(2017年)に関する国の事故調査報告書が公表されたことにも触れ「台車を納入した川崎重工業との取引を漫然と続けるなど、JR西日本には反省が見られない」と指摘した。

 尼崎事故遺族の藤崎光子さんも参加。「なぜ私は死ななければならなかったの、という娘の声が今も聞こえる。国鉄時代の安全綱領をやめ「稼ぐ」を大阪支社長方針のトップに掲げるようなJR西日本の企業体質が事故原因。もうJRは再国有化すべき」と例年よりも踏み込んだ形で思いを語った。

 集会終了後は事故現場までデモ行進。事故で列車が突っ込んだマンションは大部分が解体され、公園の一部として再整備された。だが隣接する道路からは見えないように覆われ、記念碑の記述も事故発生の経過だけ。何よりもJR西日本の加害責任に一切触れないという不当なものだ。公園内の撮影すら禁止するJR西日本の姿勢に、参加者から「事故風化を許さないぞ!」と怒りの声が上がった。

 企業犯罪をできるだけ風化させようと狙う政府・JRと企業の刑事責任追及に向け新たな考え方を提起し闘う市民。今年の集会は例年以上に両者の本質的で根本的な対立を浮き彫りにした。

 ●JR北海道の運賃値上げに関する「市民公聴会」開催 値上げに怒りの声

 一方、JR北海道は今年10月の消費税率改定に合わせて運賃を平均11%(増税分含む)も引き上げる方針を決め、国交省に申請した。その是非を審議する運輸審議会主催の公聴会が7月1日に行われるのを前に、運賃引き上げに反対する集会(市民公聴会)が6月21日、札幌市内で開催。当研究会代表も「市民公述人」として意見を述べた。

 今回の値上げは、JR北海道という企業の息の根を止めることになると思う。何年後になるかわからないが、そう遠くない将来にJR北海道の経営破綻のニュースが流れたときに「今思えば、あのときの大幅な値上げが運命の分かれ道だった」と振り返られることになる歴史的ターニングポイント。そんな値上げだと思っている。旧国鉄が1976年に行った「運賃5割値上げ」が、最終的に国鉄の息の根を止めた先例があるからだ。

 歴史的に見ると、国鉄ではこの前年、1975年にあの「スト権スト」があり、全国で8日間にわたり列車が止まった。このストの影響は大きく、特に貨物で荷主の国鉄離れを決定的にした。この大幅減収局面に慌てふためいた国鉄が、翌年に行ったのがこの5割という大幅値上げだった。

 当時の国鉄も今のJR北海道経営陣と同じで「満員列車で都心の企業に通勤しているサラリーマンたちは、どうせ他の交通機関の選択肢を持たないのだから、大幅に値上げしても結局は今まで通り国鉄に乗るだろう」と考え、高を括っていた。しかし値上げの結果は悲劇的で、競合私鉄、地下鉄にどんどん客を取られていった。値上げする→客が離れる→さらに赤字がひどくなる→また値上げする……という死のスパイラルに入っていった国鉄は、その11年後にJRとなり姿を消した。

 当時の国鉄は赤字と言われながらも、高騰する建設費と不当に高い利払いを除けばそれほど財務状態は悪くなかった。単に国鉄という組織が列車を動かして得た利益で自分たちの生活費をまかなうという部分のみに着目すれば、赤字ではあっても国が救済できないと絶望視するような状況にはなかったのである。それなのに、5割の値上げが打撃となり、国鉄は以後、急坂を転がり落ちるように破局へ向かって突き進んでいった。

 今回、JR北海道の値上げは最大3割にも及ぶもので、これほどの大幅なものはこのときの国鉄以来だろう。このときの5割値上げの大失敗を思えば、JR北海道が同じ道をたどるであろうことは容易に想像できる。JR北海道が出している赤字額の7~10倍も稼いでいる会社が同じJRグループ内にあるのになぜその格差を埋める努力もせずに値上げなのか。首都圏の人たちも北海道産農産物を食べているのに、なぜそれを輸送するための除雪費も保線費用もJR北海道と道民の負担なのか。「鉄道を残したいなら残したいと思っている道民が金を出せ」という意見も目立つが、それなら「北海道産のジャガイモやタマネギを首都圏に輸送するための費用は首都圏の食べたいと思っている者が払え」というのが当研究会の主張である。

 当研究会代表は、7月1日、国の運輸審議会が行うJR値上げに関する公聴会でも公述人として意見を述べることになっている。公述書の内容を全文公開するので、是非皆さんもこの「格差」問題を考えていただきたいと思っている。

(黒鉄好・2019年6月23日)

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【怒りの告発】「自主避難は自己責任。裁判でも何でもすればいい」と放言した今村雅弘元復興相が地元で「5000億円ドブ捨て」のゴミ新幹線を熱烈推進

2019-06-23 15:08:35 | 鉄道・公共交通/交通政策
新幹線長崎ルート 『経済波及効果を強調』 フル規格促進 佐賀でシンポジウム(長崎新聞)

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 九州新幹線長崎ルートを全線フル規格化した場合の佐賀県のメリットや経済波及効果を考えようと、佐賀県フル規格促進議員の会(会長・平原嘉徳佐賀市議)が22日、佐賀市内でシンポジウムを開いた。同ルート与党検討委員会メンバーの古川康衆院議員(比例九州)は「全国の新幹線ネットワークとつながることに意味がある」と述べ、フル規格での整備を訴えた。

 同ルートは新鳥栖-武雄温泉の在来線区間にフリーゲージトレイン(軌間可変電車、FGT)を導入予定だったが、開発の難航などから断念。長崎県とJR九州は時間短縮効果や投資効果が大きいフル規格を求め、佐賀県は反発している。

 基調講演では、元与党検討委メンバーでJR九州出身の今村雅弘衆院議員(比例九州)が「フル規格による佐賀の経済浮揚について」と題して講演。北陸新幹線や鹿児島ルートの開業効果などを解説し、「佐賀県の活性化へプラス思考で取り組もう」と訴えた。

 識者や経済人計4人が登壇したパネル討論で、前佐賀県知事の古川氏は「(FGT断念時は)負担の点で在来線を走るミニ新幹線がいいと思ったが、大雨など災害に強いことはまちづくりの点で大事」と、高架を走るフル規格のメリットを挙げた。リニア新幹線の開業も見据え「関西、北陸の人が佐賀県に来やすくなる」と指摘。建設費の佐賀県負担については「与党検討委全ての議員が重すぎるという議論をしている。それを形にしていかなければならない」と述べた。

 会場には約500人が来場。佐賀県の沿線市長のほか、両県議も参加した。長崎県議会九州新幹線西九州ルート・交通対策特別委員会の八江利春委員長は「前向きな議論だった。県民運動への展開を期待したい。佐賀県議会にも働き掛けたい」と述べた。
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当研究会は忘れもしない。いやおそらくずっと忘れることはできないだろう。記事中に登場する今村雅弘衆院議員と言えば、元復興相として「(東日本大震災の被害が)まだ“あっちの方”だったからよかった」「自主避難は自己責任。裁判でも何でもすればいい」と放言したあげく、質問したフリージャーナリスト西中誠一郎さんに「(会見場から)出て行け」と怒鳴り散らした人物だ。当時、怒りでいきり立った当研究会は抗議のため今村事務所の電話に10回ダイヤルしたが、話し中で出てこなかった。反対意見はハナから聞く気もない、政治家失格の人物と改めて断言する。

その今村議員、あろう事か地元で佐賀県知事が「約束と違う」として反対している九州新幹線西九州ルート(旧長崎ルート)を熱烈推進中のようだ。

この九州新幹線が「旧時代的税金巨大たれ流し公共事業」の歴史の中でも札付きの「筋悪案件」であることを当研究会はすでに何回も指摘している。「地域と労働運動」誌2018年8月号寄稿の記事「フリーゲージトレイン試験とん挫で混迷深める長崎新幹線~規格も決まらない路線に1兆円もの資金投入目指す「世紀の愚策」~」で詳しく紹介しているのでご一読いただきたいが、それから1年経っても状況は全く変わっていないどころかますます悪化している。今まで公共事業で繰り返されてきた「引き返しできないところまで造ってしまえばこっちの勝ち」と言わんばかりの「やり逃げモード」で長崎~武雄温泉間の工事が加速しているのだ。

フリーゲージトレイン(軌間可変式電車)の開発失敗で、当初認可された計画通りでの長崎~博多間直通はすでに不可能になっているのに、長崎~武雄温泉間でフル規格の工事が強行されている。この区間の距離はわずか66km。博多~小倉間とほぼ同じ距離だから、現行新幹線のダイヤを基本に考えるなら到達時間はわずか15分にすぎない。このまま佐賀県の反対で全線フル規格化が実現せず、長崎~武雄温泉間だけが先行開業してしまった場合、長崎ルートの乗客は始発駅・長崎発車後わずか15分で「終着駅」武雄温泉に到着。そこで全員が乗り換えという悪夢であると同時に笑い話のような事態が待ち受けているのだ。時間短縮効果はわずか5分、それも今まで必要のなかった乗り換えが武雄温泉で新たに発生することで帳消しになってしまう。これが税金の無駄遣いでないというなら、戦艦大和も八ッ場ダムもリニア新幹線も無駄遣いに入らなくなってしまうほど、この事業の愚かさは群を抜いている。

にもかかわらず今村議員は「推進」? なるほど、東北犠牲者の痛みも直視せずに「被害があっちで良かった」という、我々凡人には理解もできないご立派な「見識」は今も健在のようだ。

こんな税金の無駄遣い、法的あるいは制度的に不備がなくとも、私は納税者のひとりとして絶対に許さない。こんなくだらないことに使う金があるなら、あなたが「自己責任」と切り捨てた自主避難者救済のために使うべきであり、それができないというなら今すぐ辞表を書くべきだ。ついでにもうひとつ、あなたが千葉鉄道管理局総務部長時代、無慈悲に首を切った国鉄労働者に、生きているうちに詫びに行け、とも言っておく。

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安全問題研究会も参加してJR運賃値上げ「市民公聴会」

2019-06-22 12:46:58 | 鉄道・公共交通/交通政策
JR運賃値上げで意見交換会(NHK北海道)

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 JR北海道が予定している運賃の値上げについて意見を交わす会合が開かれ、出席者からは、高校生の通学定期券など家庭に重い負担となる値上げには配慮が必要だという意見が出されました。

 この会合は、JR北海道がことし10月に計画している運賃の値上げについて意見を交わすため、20日夜、開かれました。

 この中で、出席した有識者は、値上げにあたってJRの経営努力が不十分なことや、新幹線の延伸に多額な投資を行いながら利用者に負担を強いることへの問題点などを指摘しました。

 会場の出席者からは、特に高校生の通学定期券の値上げは家庭に重い負担となるため、配慮が必要だという意見が出されました。

 運賃の値上げは、国土交通省の運輸審議会が認可すべきかどうか審査していて、来月1日には、札幌市で公聴会を開き、JR側やさまざまな立場の人たちから意見を聞く予定です。
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21日に、札幌市内でJR北海道の運賃引き上げに反対する集会が開かれ、当研究会代表も「市民公述人」として意見を述べた。

今回の値上げは、JR北海道という企業の息の根を止めることになると思う。何年後になるかわからないが、そう遠くない将来にJR北海道の経営破綻のニュースが流れたときに「今思えば、あのときの大幅な値上げが運命の分かれ道だった」と振り返られることになる歴史的ターニングポイント。そんな値上げだと思っている。

というのも、旧国鉄が1976年に行った「運賃5割値上げ」が、最終的に国鉄の息の根を止めた先例があるからだ。

歴史的に見ると、国鉄ではこの前年、1975年にあの「スト権スト」があり、全国で8日間にわたり列車が止まった。このストの影響は大きく、特に貨物で荷主の国鉄離れを決定的にした。この大幅減収局面に慌てふためいた国鉄が、翌年に行ったのがこの5割という大幅値上げだった。

当時の国鉄は今のJR北海道経営陣と同じで「満員列車で都心の企業に通勤しているサラリーマンたちは、どうせ他の交通機関の選択肢を持たないのだから、大幅に値上げしても結局は今まで通り国鉄に乗るだろう」と考え、高を括っていた。しかし値上げの結果は悲劇的で、競合私鉄、地下鉄にどんどん客を取られていった。値上げする→客が離れる→さらに赤字がひどくなる→また値上げする……という死のスパイラルに入っていった国鉄は、その11年後にJRとなり、姿を消した。

当時の国鉄は赤字と言われながらも、高騰する建設費と不当に高い利払いを除けばそれほど財務状態は悪くなかった。単に国鉄という組織が列車を動かして得た利益で自分たちの生活費をまかなうという部分のみに着目すれば、赤字ではあっても国が救済できないと絶望視するような状況にはなかったのである。それなのに、5割の値上げが打撃となり、国鉄は以後、急坂を転がり落ちるように破局へ向かって突き進んでいった。

今回、JR北海道の値上げは最大3割にも及ぶもので、これほどの大幅なものはこのときの国鉄以来だろう。76年5割値上げの大失敗を思えば、JR北海道が同じ道をたどるであろうことは容易に想像できる。JR北海道が出している赤字額の7~10倍も稼いでいる会社が同じJRグループ内にあるのに(参考;衆院予算委員会(2017年2月17日)における本村伸子議員の提示資料)、なぜその格差を埋める努力もせずに値上げなのか。首都圏の人たちも北海道産農産物を食べているのに、なぜそれを輸送するための除雪費も保線費用もJR北海道と道民の負担なのか。「鉄道を残したいなら残したいと思っている道民が金を出せ」というコメントがネット上には目立つが、それなら「北海道産のジャガイモやタマネギを首都圏に輸送するための費用は首都圏の食べたいと思っている者が払え」というのが当研究会の主張である。

なお、当研究会代表は、7月1日、国の運輸審議会が行うJR値上げに関する公聴会でも公述人として意見を述べることになっている。以下、公述書の内容を全文公開するので、是非皆さんもこの「格差」問題を考えていただきたいと思っている。

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公 述 書

             
 北海道旅客鉄道株式会社(JR北海道)が申請した鉄道旅客運賃・料金の上限変更認可申請に対し、反対の立場で公述します。

 今回の変更申請が認可されると、JRグループ発足以来、消費税の導入または税率改定を除いた運賃値上げは二度目となります。消費税の導入または税率改定を除くと、JR東日本・東海・西日本の3社は一度も値上げをしておらず、JR四国・九州も1996年に一度値上げを行ったのみで、以降は値上げをしていません。

 旧国鉄では、幹線または地方交通線による格差はあっても地域による格差はない、全国統一の運賃制度を採用していました。旧国鉄の線路を継承させるため、国が政策としてJRグループ各社を発足させた経緯からも、地域間の運賃・料金の格差は最小限度に留めるべきであり、また鉄道をはじめとする公共交通は、ユニバーサルサービスとして全国どこでも同一のサービスなら同一の費用で提供されることが原則でなければなりません。

 JR北海道の経営が苦境に追い込まれた根本原因は、そもそも旧国鉄を地域ごとのJRグループ各社に分割した際の切り分け方にあります。JRグループが発足した初年度、1987年度決算において、JR7社の営業収入全体に占めるJR北海道の割合はわずかに2.5%、JR四国は1%、JR九州も3.6%に過ぎませんでした。グループ発足初年度から、JRグループ7社の営業収入の43.1%をJR東日本だけで占めるほど、JR各社間の格差ははっきりしていました。JR北海道全体の営業収入は919億円で、この数字は当時の東京駅の収入より少なかったというデータもあります(注1)。

 このような大きな経営上の格差は、グループ発足後30年経過した現在も改善されていません。2016年3月期決算において、JR北海道は483億円の損失を計上しているのに対し、JR東日本は3722億円の利益を上げています。JR北海道の赤字額の7.7倍に当たる数字です。JR北海道、四国、九州、貨物4社の赤字額の合計は741億円であるのに対し、本州の3社で最も利益の少ないJR西日本でも1242億円の利益を上げています(注2)。本州3社で最も経営基盤の弱い会社でも赤字4社をまとめて救済できるほど、同じJRグループ内で大きな格差ができていることを示しています。

 国鉄改革に当たって、国は、JR北海道・四国・九州3社に経営安定基金を用意し、金利を赤字補填に充てさせる一方、本州の3社には旧国鉄の債務の一部を返済させる措置を講じました。しかし、その後の低金利・無金利政策により、JR北海道・四国両社は経営安定基金による赤字補填ができなくなる一方、本州の3社は債務負担が軽くなり、さらに利益が増加しました。低金利政策は、ただでさえ大きかったJRグループ会社間の格差をさらに拡大させることにつながったのです。

 今回の上限運賃の変更申請は、JRグループ各社間に元々存在した格差に加え、その後の低金利政策によってさらに拡大した格差を是正するための努力を行うことなく、不利な条件の下に置かれてきた北海道の利用者だけに新たな負担を求めるものであり、また憲法が保障する法の下の平等にも反するものです。

 農林水産省が公表している都道府県別食料自給率(2012年)によれば、北海道の食料自給率(カロリーベース)は200%である一方、東京は1%に過ぎません。北海道は他の地域の食料供給に大きな役割を果たしており、また食料品の多くはJRの貨物列車で道外に輸送されています。北海道経済連合会が公表した資料(注3)によると、道産タマネギは全体の67.6%、豆類50.0%、米類40.3%、馬鈴薯も39.1%がJRの貨物列車で道外に輸送されています。

 2016年夏、北海道に4つの台風が上陸し、函館本線や石勝線などの重要路線が長期にわたって不通となりましたが、この際、首都圏でポテトチップスが姿を消し「ポテチショック」などと騒がれました。北海道に鉄道があることによって首都圏をはじめ日本全国にその恩恵が及んでいます。それにもかかわらず、北海道に貨物列車を走らせるための保線費用も、冬の除雪費も、既に日本一高い運賃を通じて北海道民がそのほとんどを負担させられているのは理不尽というほかありません。全国がその恩恵を受けている以上、北海道の鉄道を維持するための費用は全国であまねく負担すべきものです。

 国鉄末期には貨物列車安楽死論も唱えられる中で、JRグループ発足以来30年間、JR貨物はそうした社会的逆風に耐え、懸命な企業努力を続けてきた結果、ここ数年は毎年100億円程度の経常利益を上げられるまでになりました。しかし、国が定めた指針により、JR貨物は貨物列車が走ることによって新たに必要となる費用(アボイダブルコスト)以外の負担をしなくてよいことになっており(注4)、また線路もほとんど旅客会社から借りることで貨物列車を運行しています。このため、年間483億円の赤字にあえぐJR北海道が、年間100億円の利益を出しているJR貨物を支えなければならないという別の面からの理不尽な状況も生まれています。

 このような事実を総合すると、今、JR北海道の運賃・料金の値上げを通じて北海道民だけに新たな負担を求めることが国として適切な政策であるとは思えません。JRグループ各社の企業努力を超える格差が厳然と存在し、またその拡大が続いているこの間の社会経済情勢の変化を踏まえると、企業努力の範囲を超える格差に関してはその是正のための制度を導入することこそ国として、今行うべき政策であるというのが当研究会の基本的な立場です。新たな負担の導入や地方路線の廃止など利用者に不利益をもたらす措置は、これら最大限の政策的努力が行われた後に初めて検討されるべきものであり、こうした努力が十分に行われているとは考えられない現状での運賃・料金の改定申請に対しては、当研究会として反対を表明せざるを得ません。

 以 上

注1)「JRの光と影」(立山学・著、岩波新書、1989年)P.75~76

注2)衆院予算委員会(2017年2月17日)における本村伸子議員の提示資料

注3)「JR北海道に対する当会のスタンスについて」(北海道経済連合会)P.7「主要農産品等の輸送機関別シェア」より

注4)「新会社がその事業を営むに際し当分の間配慮すべき事項に関する指針」(平成13年国土交通省告示第1622号)II-1-2に規定

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6月18日22時22分頃の山形県沖の地震について

2019-06-20 22:07:15 | 気象・地震
6月18日22時22分頃の山形県沖の地震について(気象庁報道発表)

18日に新潟・山形県境付近で起きた地震について、遅くなったが若干、解説しておきたい。

北米プレートとユーラシアプレートの境界に近いが、今回の地震自体は北米プレート内部で起きている。この付近ではたびたび大地震が起きており驚きはない。大きな被害を出したものとしては2007年の新潟県中越地震が記憶に新しく、この地震からまだ12年しか経っていない中で再び地震が起きたことは意外だと思ったが、今回の地震を起こした断層は2007年とは別だから、プレート境界型地震のように周期で見るのは妥当ではない。その意味では当ブログの認識も甘かったことは事実であり不明を恥じねばならないと思う。

発震機構(地震のメカニズム)は西北西ー東南東方向に圧力軸を持つ逆断層型。北米プレートは太平洋プレート、ユーラシアプレートに東西から挟まれ押されており、東日本を乗せたプレートの境界付近ではこれまでもしばしば大地震が引き起こされた。ここ数日、地震学者がメディアで解説している日本海東縁部の「ひずみ集中帯」という用語に戸惑う人も多いと思うが、大きな地震が起きるとすぐに一般人の聞き慣れない新語を持ち出し、専門家ぶるのは地震学者の悪い癖だ。このような新しい、聞き慣れない用語を持ち出さなくても、従来の北米プレートとユーラシアプレートの境界で説明できる。



解せないのは気象庁報道発表の全16ページ中7ページ目「令和元年6月18日山形県沖の地震(周辺の過去の地震活動)」に2007年の中越地震が記載されていないことだ。あれだけの被害を出し、無名の存在だった旧山古志村(地震直前の2005年に長岡市に編入)の名前を一躍全国区にした地震だったにもかかわらずである。M7.0以上の地震だけを対象にしているのかと思ったら、資料上部にはM6.0以上、深さ60km以内と書いてある。この地震はM6.8で今回の地震より大きく、深さも60km。震央もこの地図内にぎりぎり入る場所だけに、当然対象になるはずだが、あえて入れなかったのには理由があるのか。福島第2原発の再稼働が絶望的で、唯一、再稼働の可能性が残る柏崎刈羽原発を抱える東京電力へ「忖度」しているのだとしたら、そのような忖度は百害あって一利なしだ。リンクを張った河北新報の記事中にある地図にはきちんと中越(沖)地震も掲載されており、気象庁の姿勢には疑問を呈したいと思う。

ユーラシアプレートは近年、活動が活発化しており、他のプレートとの境界周辺でこのところ地震が続いている。今回は北米プレートとの境界付近で起きたが、ユーラシアプレートがフィリピン海プレートとぶつかっている場所が南海トラフだ。今回、山形で起きたことは当然、同じプレートが原因だけに南海トラフ周辺でももちろん起きうる。南海トラフ地震の被害が想定される地域にとっては、被害を最小限に食い止めるための先行例になり得ると思う。同じことが起きると考え、沿岸地域を中心に備えをしてほしい。

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【管理人よりお知らせ】「ノーモア尼崎事故!生命と安全を守る6.8集会」資料をアップしました

2019-06-11 20:32:51 | 鉄道・公共交通/交通政策
管理人よりお知らせです。

「ノーモア尼崎事故!生命と安全を守る6.8集会」資料を安全問題研究会サイトに掲載しました。1年前の集会から道内の「維持困難10路線13線区」をめぐるJRと沿線自治体の協議はほとんど進展しておらず、札沼線一部区間(北海道医療大学~新十津川)のバス転換が2020年5月7日に決まった以外は変化がありません。そこで、今年の資料では、個別の線区をめぐる動きよりも道内全体の動きに重点を置いた資料としました。

また、JR西日本の「のぞみ」台車亀裂事故についても、今年3月に運輸安全委員会の事故調査報告書が公表されたのを受けて、取り上げています。当研究会の報告資料はこちらから見ることができます。

また、この集会で福知山線脱線事故遺族・藤崎光子さんが発言している動画をYoutube「安全問題研究会チャンネル」で公開しました。こちらも合わせてご覧いただけます。

190608ノーモア尼崎集会/藤崎光子さん

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【管理人よりお知らせ】ノーモア尼崎事故!生命と安全を守る6/8集会で当研究会が報告を行います

2019-06-07 23:28:12 | 鉄道・公共交通/安全問題
管理人よりお知らせです。

直前で申し訳ありませんが、明日6月8日、兵庫県尼崎市で行われる表記の集会で、安全問題研究会がJR北海道問題に関する報告を行います。

今年の集会では、メインとして企業に直接、刑事罰を科することのできる「組織罰」制度の導入をめざす立場から、津久井進弁護士が報告を行います。また、例年通りJR福知山線脱線事故遺族や公共交通企業で働く現場労働者からの発言も予定されています。詳しくはチラシをご覧ください(サムネイル表示になっている場合は、クリックで拡大します)。

なお、当研究会の報告内容は、集会終了後、ホームページに掲載予定です。

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