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航空管制官、増員へ 安全問題研究会の問題提起実る

2024-06-25 21:03:13 | 鉄道・公共交通/安全問題
羽田空港衝突事故、再発防止策を正式公表 滑走路誤進入に警報音(毎日)

 東京・羽田空港で今年1月に日本航空(JAL)と海上保安庁の航空機が衝突した事故を巡り、国土交通省の対策検討委員会は24日、再発防止策の中間まとめを正式に公表した。滑走路への誤進入を知らせる警報音の導入や、管制官の増員など、ハードとソフトの両面から対策を進め、総合的に事故の防止を図る。

 航空安全の専門家らで作る検討委は中間まとめで、滑走路での衝突事故の多くは管制官やパイロットの思い込みや言い間違いなどに起因する誤進入によって起きていると指摘。ヒューマンエラー(人的ミス)が事故につながらないよう多重の対策を求めた。

 事故では1月2日夜、離陸のためC滑走路に進入した海保機に、着陸してきたJAL機が衝突。JALの乗員乗客は全員脱出したが、海保機では機長を除く5人が死亡した。

 海保機は管制の許可を得ず滑走路へ進んでいたが、管制官は気付かなかったとみられている。現在のシステムでは、管制官の手元のモニター画面に誤進入が表示されるが、検討委は警報音も追加するよう求めた。

 また、滑走路担当の管制官が監視業務に専念できるよう、主要空港には離着陸の調整を担当する管制官を新たに配置。管制官の中途採用を進め、欠員の解消を図る。

 航空機が離着陸する際に、滑走路へ入ろうとする別の機体に警告する「滑走路状態表示灯(RWSL)」についても、拡大する方針。現在は伊丹や羽田など5空港(代替設備を含む)で、滑走路を航空機が横切る場所を中心に整備しているが、今後は全国主要8空港へ広げる。

 一方、羽田の事故では、管制官が離陸順1番目であることを意味する「ナンバーワン」という言葉を伝え、海保機側が離陸許可を得たと勘違いした可能性が指摘されている。国交省は事故後、離陸順を伝えないようにしていたが、パイロット側から要望があるため、伝達の再開を検討する。

 国交省は運輸安全委員会による調査結果が出た後、最終まとめを出す方針。斉藤鉄夫国交相は24日、記者団に対し、岸田文雄首相から管制官増員などの対策を指示されたと明かし、「夏の繁忙期前までにしっかりとした体制を組みたい」と述べた。【原田啓之、安部志帆子】
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航空管制官の増員の可能性が出てきた。安全問題研究会がすでに徹底追及してきたとおり、国交省はこれまで航空機の発着回数が増えているにもかかわらず、一貫して航空管制官を減員してきた。それが事故の直接的原因ではないとしても、背景要因の1つであることは明らかだった。

特に、事故直後に相次いで掲載した記事「羽田衝突事故は羽田空港の強引な過密化による人災だ」(当ブログ2024.1.5レイバーネット2024.1.8)及び、「【羽田衝突事故 続報】航空機数は右肩上がり、管制官数は右肩下がり 日本の空を危険にさらした国交省の責任を追及せよ」(当ブログ2024.1.8レイバーネット2024.1.9)には強烈な反応があった。

安全問題研究会がレイバーネットに記事を連載してから、一般メディアが遅れてこの問題を報道し始めた。東京上空の過密化を指摘した記事「羽田事故背景に「過密ダイヤ」指摘も 世界3位の発着1分に1・5機」を産経ニュースが配信したのは1月9日。管制官不足問題を伝える記事「羽田で5人死亡の航空機事故、国交労組「人手不足で安全保てない」...遠因の指摘も」を「弁護士JPニュース」が配信したのは1月18日。「「ミスに気づいても指摘する余裕ない」…羽田事故の再発危機!現役管制官が激白「人員不足でもう限界」」を「フライデー」が配信したのは2月29日。いずれも当ブログ・安全問題研究会のほうが圧倒的に早く、初期の報道合戦は内容、スピードともに当研究会の圧勝だった。羽田事故後、管制官問題を世界で最初に報じたのは当ブログ・安全問題研究会だという自負を今でも持っている。

この間、2月6日には、国交省職員で作る労働組合、国土交通労働組合が記者会見し、航空管制官増員を求める声明を発表するなどの動きもあった(参考:当ブログ2月7日記事)。

一方、国交省は、航空局に「羽田空港航空機衝突事故対策検討委員会」を設置して対策案を検討してきたが、今回、5回にわたる審議の結果、中間とりまとめが公表された。(概要版本文)。

中間とりまとめでは、航空管制官増員の必要性について、以下の通り述べている(「羽田空港航空機衝突事故対策検討委員会中間取りまとめ」15ページより)。

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3.管制業務の実施体制の強化

 飛行場管制では、現在、航空機の離着陸等に関する管制指示等を管制官が発出することで、高密度な運航を実現しているが、今後、航空需要の増加により離着陸回数が更に増加すれば、ヒューマンエラーによる滑走路誤進入のリスクが増大することも考えられる。

 このため、管制業務の実施体制に関して、以下の対策を講じる必要がある。

(1)管制官の人的体制の強化・拡充

 飛行場管制担当は、外部監視、パイロット等との交信、システム操作・入力に加え、関係管制官との調整業務も行うなど、常にマルチタスクの状態にある。このため、飛行場管制担当の基本業務である外部監視等への更なる注力が可能となるよう、管制業務を詳細に分析し、管制官の業務分担を見直した上で、関係管制官との調整業務を専属で行う「離着陸調整担当」を、主要空港に新設することを検討すべきである。

 また、羽田空港等においては、これまでも発着容量の拡大等に合わせて、管制官の増員等の体制強化が行われてきている。しかし、近年、中途退職、育児休業等の増加により多数の欠員が発生しており、また、現在の管制官の人員では、将来的な航空需要の増大に対応しつつ、滑走路上の安全確保に必要な体制の維持・充実を図ることは困難と考えられる。そのため、管制官の人的体制を計画的に強化・拡充する必要性があることから、航空保安大学校の採用枠拡大や中途採用の促進などを通じて、欠員の解消と増員等に係る対策を可及的速やかに講じるべきである。
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増加する一方の航空機発着回数と業務量に対し、航空管制官の必要数が満たされていないことを、報告書が正式に認めた形だ。安全問題研究会の粘り強い問題提起が実を結んだと言える。この間、多くのご支援をいただいた皆さんに感謝するとともに、現場から声を上げた国土交通労働組合の闘いにも敬意を表する。

安全問題研究会としては、今後とも粘り強くこの問題を訴えるとともに、国交省がこの報告をきちんと実行するよう、引き続きしっかり監視していきたいと考えている。

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レイバーネットTV : 日本の空は大丈夫か?−羽田衝突事故とJAL解雇争議

2024-05-18 18:42:46 | 鉄道・公共交通/安全問題
安全問題研究会代表・黒鉄好が、2024年5月15日放送のレイバーネットTV 「日本の空は大丈夫か?−羽田衝突事故とJAL解雇争議」に出演しました。

レイバーネットTV : 日本の空は大丈夫か?−羽田衝突事故とJAL解雇争議



なお、出演後、番組を振り返る記事「レイバーネットTV 第200回放送を終えて」をレイバーネット日本に寄稿しました。リンク先に飛べば全文を見ることができますが、以下、当ブログにも転載します。

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黒鉄好@安全問題研究会です。

レイバーネット第200回特集「日本の空は大丈夫か?-羽田衝突事故とJAL解雇争議」の放送を無事終えホッとしています。私にとっては第187回「どうする?どうなる?今世紀最悪の国策事業「リニア」を斬る」(2023.6.28放送)以来、約11か月ぶりの出演でした。司会もそのとき以来ですが、1度や2度の経験で慣れるほど司会業は簡単ではありません。放送後のスタジオは熱気に包まれ、全身に汗をかいていたのも前回と同じでした。

司会に当たって心がけたのは主に以下の3点でした。

1.ゲストに自分より専門の方をお招きしている関係上、自分が出過ぎないようにする
2.いまだ謎の多い日航123便事故の話題が出た場合は事実ベースの解説に留め、憶測による発言は避ける
3.争議終結の道を選んだ2労組(日本航空乗員組合・日本航空キャビンクルーユニオン(CCU))に対する批判は避ける

3については私も最後まで悩みました。「争議が解決していないのに中途半端な和解案に応じた2労組は批判すべき」「労働者同士の分断を招けば喜ぶのは政府・自民党・財界だけ」という2つの考え方が労働運動内部にあることを感じたからです。ただ、ネットの文字媒体と異なりレイバーネットTVには「尺」(放送時間枠)という物理的制約があります。その制約の中で、何に重点を絞って打ち出すべきか。労働組合や労働者の立場、考え方の違いを超え、連帯していける「安全問題」を前面に打ち出すことに関しては、ゲスト・司会・スタッフの考えは一致しており迷いはありませんでした。

視聴者から「司会の方の博学にびっくり」したという身に余るご感想をいただいたことに関しては、この放送をやった甲斐があり疲れも吹き飛びました。ゲストから番組のテーマに沿った有益なコメントを引き出すためには、司会者自身が問題に精通まではしていなくても、要点をつかむ程度には知っていなければなりません。司会者が問題を知らない単なる聞き役、進行役では糸の切れた凧のように話がどこに行ってしまうかわからないからです。私自身は前回のリニア、今回いずれに関しても、安全含む公共交通問題に四半世紀近く取り組んできており、単なる司会者を超えた「3人目のコメンテーター」としても番組を進められるよう準備を進めてきました。とはいえ、本業含め非常に忙しく、放送前に「絶対に観ておくべき」だと言われたJAL青空チャンネル第21回「羽田衝突事故を考える」(2024.2.1放送)を観ることができたのは、放送出演のため北海道から羽田に向かう飛行機の中というギリギリの状態でした。

機長・山口宏弥さん(彼ら彼女らが職場復帰できる日が必ず来ると信じているので、あえて「元」はつけません)の発言内容は以前「あるくラジオ」第19回放送「たたかいなくして安全なし~山口宏弥さんに聞く」(2021.12.5)でお話しいただいた内容と重複する部分もありましたが、何度聞いても面白く、飽きることがありません。生きた牛を固定せず貨物室に乗せていたため、牛が暴れてバランスを崩し、墜落に至ったアンカレジ事故の話もそのひとつです。生体動物が輸出国から輸入国へ無事に送り届けられるのが当たり前のようであっても、それが当たり前でない時代があり、山口さんたちの闘いでその「当たり前」が作り上げられてきたことを次の世代に継承していかなければならないと感じました。

ちなみに、私は農業関係の仕事をしています。動物(特に牛)を生きたまま輸入する例は今でもありますが以前ほどではなくなりました。番組中でもお話ししましたが、外国で肥育された牛でも、生きたまま輸入し、国内で屠殺・解体した場合は国産牛として販売できるルールのため、畜産業界では生きたまま牛を輸入するのが主流の時代がありました。もちろん、パッケージに「輸入牛」より「国産牛」と書いた方が高く売れることが背景にありますが、ここ最近は急激に進む円安・ドル高のため米国産牛肉が急激に値上がりし、すでに一部小売店では国産のほうが米国産より安くなる「逆転現象」も起き始めていると聞いています。

JALは昔も今も、ベテランの安全運行への貢献を評価せず、ベテランから順に解雇するという宝地戸百合子さんのお話を聞き、JALは改めて怖い会社だと思いました。極端に言えば「物言う労働者を排除するか抑え込むことで労務対策が成功すれば、乗客が何人死のうが知ったことではない」と考えているかのようです。JALの社長は歴代、労務畑で「功績」をあげた人が就任してきました。今回、初めて労務畑でなくJAL生え抜きでもない(旧JAS~日本エアシステム出身)元客室乗務員の鳥取三津子さんが社長に就任しましたが、役員時代の「客室乗務員削減」の功績を買われての就任という報道も一部にあります。今回の事故を契機に、現場経験をいい意味で活かす方向に舵を切ることで「目先の刷新感を出すための女性起用」という声を跳ね返していただくことを望みます。

JAL123便事故の話題は、避けることはできないだろうと思ったらやはり話題に上りました。これに関しては上の2で書いたとおり、憶測に基づく発言は避けるという方針で臨みました。この事故から来年で40年になりますが、私は今も運輸省航空事故調査委員会(事故調、現在の運輸安全委員会)が公表した「圧力隔壁崩壊説」にはまったく納得していません。事実ベースで言えば、ドーンという大きな破裂音がして圧力隔壁に穴が空いたとされる1985年8月12日午後6時25分35秒以降に死亡した乗客が撮影していたとされる機内の写真が遺族によって公開されていますが、その写真ではほとんどの乗客が下りてきた酸素マスクを着用していないどころか、客室内で立ち歩く人もいたことが示されています。

これに対して、運輸安全委員会は「日本航空123便の御巣鷹山墜落事故に係る航空事故調査報告書についての解説」を2011年7月に公表しています。日本中が東日本大震災と福島第1原発事故で混乱の極致にあったこの時期に公表すること自体にも疑問を感じますが、それ以上に疑問なのはその内容です。「解説」は『「急減圧があったならばパイロットは酸素マスクを付けるように訓練されているのに付けていないのはなぜか」等の疑問が寄せられています』(解説i「はじめに」)とみずから認めつつ、その疑問に答えることを目的とした公表であるとしていますが、その内容は自己矛盾、支離滅裂そのものです。『酸素マスクの着用についての教育訓練を受けている運航乗務員が酸素マスクを着用しなかった理由を明らかにすることはできなかったとしながらも、同機に生じた程度の減圧では操縦操作を優先したものと考えられる』(解説P.13)と事故調報告を引用してその内容が正しいと強弁するだけです。「酸素マスクを着用するより他に優先すべきことがある」と操縦席が判断していたとすれば、これこそ「生死に直結するような大規模な減圧は起きていなかった」と運輸安全委員会みずから「告白」するに等しいものです。

総じて、この事故に関しては、国土交通省、運輸安全委員会が何か説明しようとすればするほど、ますます矛盾が露わになり、謎がかえって深まるということが繰り返されています。当研究会は改めて運輸安全委員会に聞きます。「ドーンという破裂音がしてからしばらくの間、123便は7000m近い高度で飛行しています。エベレストの山頂より少し低いくらいの高度です。こんな高度で機体に穴が空いているのに、乗務員はもちろん乗客ですら酸素マスクをつけていないなら、大規模な減圧はなかったのではないか?」と。国交省、運輸安全委はいつまでもくだらない言い訳ばかりしていないで質問に答えろ!

すみません、ついヒートアップしてしまいました。123便御巣鷹事故は私が飛行機に興味を持つようになった最初の出来事でした。この記事を読んでいる方でご存じの方がいるなら情報提供を求めたいことがひとつあります。1985年8月の事故直後、ある雑誌にこんな記事が掲載されていた記憶があります。「運輸省からJALに天下っていた社長か副社長(?)が、犠牲者の棺が何百人分も安置されていた群馬県・藤岡市立体育館を事故直後に訪問したとき、最初に発したひとことが犠牲者へのお悔やみでも反省でも再発防止への誓いでもなく『暑いな。ここにクーラーはないのか』だった」ーーというものです。「こんな会社に自分のひとつしかない命は預けられない。大人になってもJALなんて絶対に乗るか!」と当時、中学生だった私に固い決意を抱かせる出来事でした。

残念ながら当時は週刊誌を買う金がなく、立ち読みで済ませてしまったため、どの雑誌の何月号だったか思い出せません。国立国会図書館などで探し続けていますが、掲載誌名もタイトルも不明の状態ではお手上げで、行き詰まっています。この件に触れた当時の雑誌を「手元に持っている」「知っている」等の情報をお持ちの方がいましたら、私まで提供をお願いします。

今回は、レイバーネットTVとして200回の記念放送でした。この回に私の出演が決まったのはスケジュール上の偶然で、狙って出てきたわけではありません。普段は19:30~20:40の放送枠が19:30~21:00に20分(ダイジェスト映像を除けば実質、10分)延長されましたが、これでも羽田事故、御巣鷹事故に関して言いたいことの半分も言えませんでした。その多くをここで述べさせていただきました。

冒頭に流された200回記念ダイジェスト映像は好評で、200時間を優に超える映像の中から10分に編集した堀切さとみさんには改めて謝意を表します。ダイジェストに反映される映像は全体から見ればほんのわずかで、どれを選ぶかは苦悩の連続だったと想像します。

200回の放送で原発関係が33回あったとのことでこれには納得でした。大手メディアが政治や利権や数多の理由でこの問題に再び沈黙する中、レイバーネットが果敢に取り上げることで明らかにできた問題は多くあります。私自身、2011年3月には福島県に住んでいて、あの世紀末としか表現しようのない混乱ぶりをつぶさに見てきました。

私たちが生きている間にこの問題が終わることはありません。原発事故に人生を狂わされた元福島県民のひとりとして、今後も原発問題は徹底的に追及していきます。私の現在の人生目標は「自分の葬式が出る前に、原発の葬式を出すこと」です。ダイジェスト映像にも出てきた益永スミコさんの言葉を借りるなら、私に「死んどるヒマはない」のです。死んだ後はいくらでも休息を取れるので、生きている間は自分に悔いのないように走り続けたいと思います。

(文責:黒鉄好)

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【管理人よりお知らせ】安全問題研究会代表が「レイバーネットTV」(5/15放送)に出演します

2024-05-11 12:40:52 | 鉄道・公共交通/安全問題
管理人よりお知らせです。

5/15(水)放送のレイバーネットTVに、管理人(安全問題研究会代表)が出演します。内容は、「日本の空は大丈夫か?-羽田衝突事故とJAL解雇争議」です。詳細は番組予告(レイバーネット日本)をご覧下さい。レイバーネット・サブチャンネルにも同じ内容が掲載されていますが、以下、転載します。

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レイバーネットTV(5/15)放送 : 日本の空は大丈夫か?-羽田衝突事故とJAL解雇争議

■レイバーネットTV・第200号放送
 みんなでつくる!みんなで変える!レイバーネットTV
  〜アクティブ、ラジカル、現場から〜

・放送日 2024年5月15日(水)19:30〜21:00(第200号/拡大放送)
・視聴サイト https://www.labornetjp2.org/labornet-tv/200/
<YouTube配信サイト> https://youtube.com/live/tsTPRUdUFzw?feature=share
・配信場所 郵政共同センター特設スタジオ(東京・末広町)

<テーマ 日本の空は大丈夫か?-羽田衝突事故とJAL解雇争議>

 ことし1月2日に起きた「羽田衝突事故」は衝撃的でした。海保機の5人は亡くなりましたが、JAL機は衝突後に激しい火災を起こしたものの、乗務員の誘導により搭乗者全員379人が脱出しました。「羽田の奇跡」とも言われました。

 では衝突事故の本当の原因・問題点は何だったのでしょうか? 「羽田の奇跡」を実現できたのはなぜだったのでしょうか?

 番組では、元機長の山口宏弥さんと元客室乗務員の宝地戸百合子さんが、「羽田衝突事故」について現場の眼から迫ります。また、国交省の航空行政をウォッチしてきた黒鉄好さんが、事故の背景を語ります。

 今回の「羽田衝突事故」は氷山の一角と言われています。以前から日本の空は、米軍や自衛隊がわがもの顔で飛び回っていましたが、近年では「民間空港の軍事利用」など軍事色がいっそう強まっています。2020年からは羽田新飛行ルートが始まりましたが、山口さんは「航空事故のほとんどは離着陸の11分間に起きていて、魔の11分と言われている。その時間帯がすっぽり都心に入っている。とても危ない」と警告しています。

 ベテラン乗務員のお二人は組合活動家で、安全よりも利潤を優先するJAL経営にしっかりものを言ってきました。チェック機能を果たしてきたのです。だからこそ嫌われ、2010年の「JAL165人整理解雇」でクビを切られました。この長期争議では、一部メンバーが2022年に闘争終結をしましたが、納得いかない33名がJAL被解雇者労働組合(JHU)に結集して、14年目のたたかいに挑んでいます。公共交通はどうあるべきなのか? そして労働組合の役割はどこにあるのか? 一緒に考えてみませんか。

 今号は記念すべき200号放送です。番組の冒頭で10分のダイジェスト映像を流します。お見逃しなく。

・企画 松原明
・出演 山口宏弥(元機長・JAL被解雇者労働組合委員長)
    宝地戸百合子(元客室乗務員・JAL被解雇者労働組合副委員長)
    黒鉄好(司会/安全問題研究会)   
・200号記念映像(解説/堀切さとみ)
*ジョニーと乱の5ミニッツあり

■ギャラリーは5名限定(要申込み)。ツイッターコメント歓迎。ハッシュタグは #labornettv。
 お問い合わせ=レイバーネットTV 070-5545-8662
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2024年は、物流業界の残業「年960時間上限」が適用される「2024年問題」に当たり、もともと公共交通と貨物輸送に焦点が当たる年になることは予測されていました。しかし、1月2日に起きた羽田空港事故や、リニア、北海道新幹線札幌延伸の相次ぐ「延期」がこれに加わり、年明け早々から安全問題研究会は多忙を極めています。

4月以降、「リニアの通る村」大鹿村での報告(4/13)、「ノーモア尼崎事故・生命と安全を守る4.27集会」での記念講演(4/27)と続いており、ほぼ半月に1度のペースで著述活動をするという状況になっています。これほどの多忙は、JR福知山線脱線事故が起きた2005年以来だと思います。

安全問題研究会のレイバーネットTV出演は、2023年6月28日放送の第187号「どうする? どうなる? 今世紀最悪の国策事業「リニア」を斬る」以来、約1年ぶりです。レイバーネットTVとしても通算200回の記念放送となります。ぜひご覧ください。

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【管理人よりお知らせ】「客室乗務員を航空従事者に位置付け、全ての脱出扉に乗務員の配置を義務化する請願」にご協力下さい!

2024-05-05 21:06:11 | 鉄道・公共交通/安全問題
管理人よりお知らせです。

2024年1月2日、羽田空港でJAL機と海上保安庁機が衝突し、海上保安庁機の乗務員5名が死亡した事故は国内外に大きな衝撃を与えました。この事故では、JALの乗客・乗員は全員が炎上する機体からの脱出に成功しましたが、その背景として、旅客機のドア数と同じ人数の客室乗務員(CA)が配置されていたことが指摘されています。旅客機のどのドアを脱出に使用できるかを判断する際、1つのドアに1人の乗務員がついていれば、当該乗務員は自分が担当するドアの使用可否のみを判断すれば良いからです。

しかし、日本の現在の法制度では、ドア数以上の乗務員を客室内に配置することは運航上の絶対条件とはされていません。そのため、実際にはドア数に満たない客室乗務員数で運航されている航空便も多く見られるのが現状です。もしそのような状況の旅客機で同じような事故が起きた場合、今回のような“奇跡”はあり得ません。

これに加え、日本では客室乗務員は国家資格とはされておらず、一般の接客業従事者と法制度上は同じ扱いです。諸外国では客室乗務員を航空安全従事者に位置付け、国家資格の取得を就業条件としている国も多く見られます。この意味でも日本の航空行政は大きく立ち後れています。

この請願署名は、こうした現状を抜本的に改め、客室乗務員を航空従事者に位置付けること、全ての脱出扉に乗務員の配置を義務づけることを国に求めています。安全問題研究会でも、請願の趣旨は大いに理解できるとともに、正当なものであるため、協力することとしました。2024年1月2日の再来を避けるため、1人でも多くの方の署名をお願いします。

署名用紙ダウンロード
・第1次集約 2024年8月31日
・連絡先 ジャパンキャビンクルーユニオン jcuhonbu2018@gmail.com
・送付先 〒144-0043 東京都大田区羽田5丁目11-4 フェニックスビル 航空連気付 ジャパンキャビンクルーユニオン

 なお、上記の他、安全問題研究会宛てに連絡いただいてもかまいません。

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JR福知山線脱線事故遺族・藤崎光子さんに関する報道

2024-04-26 20:39:53 | 鉄道・公共交通/安全問題
JR福知山線脱線事故から19年を迎える中、遺族のお一人で安全問題研究会とも長年にわたって交流のある藤崎光子さんに関する報道があったので、紹介する。

1人娘を失って19年 脳梗塞になり...今年は介護施設のベッドで『脱線事故発生時刻』を迎えた母「現場に行けず残念。娘はいつも一緒にいる気持ちではいる」【JR福知山線脱線事故】(2024年4月25日)

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レイバーネットTV : パワハラ横行!バス業界の闇

2024-03-01 22:28:47 | 鉄道・公共交通/安全問題
2月28日、レイバーネットTVで「パワハラ横行!バス業界の闇」が葬送された。現役のバス運転士が主演し、生々しいパワハラの実態を語った。

長時間労働とそれに見合わない低賃金、乗客らの理不尽なクレーム(カスタマーハラスメント)に加え、会社からのパワハラまで行われては、普通に勤務を続けられるほうがおかしいだろう。

レイバーネットTV : パワハラ横行!バス業界の闇


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<地方交通に未来を⑮>安全問題と物流問題~公共交通激動の2024年

2024-02-11 19:18:39 | 鉄道・公共交通/安全問題
(この記事は、当ブログ管理人が長野県大鹿村のリニア建設反対住民団体「大鹿の十年先を変える会」会報「越路」に発表した原稿をそのまま掲載しています。)

 2024年は大変な年明けになった。元日の能登地震と1月2日に起きた羽田での日航機・海上保安庁機の衝突事故だ。羽田空港の事故は、いわば公共交通をめぐって今まで覆い隠されてきた問題が噴出した形で、私はいずれこんな事態になるだろうともう10年くらい前からずっと思っていた。ここまで極端な形は予想していなかったが。

 事故直後、「レイバーネット日本」に分析記事を書いた。特に、2004~2019年の15年間で全国の航空機数が1.5倍に増えているのに、航空管制官が逆に15%も減らされていること、結果として航空管制官1人が扱う航空機数が1.8倍に増えていることを指摘したら大きな反響があった。多くの東京都民の反対を押し切る形で、東京五輪のために強行された羽田新ルート(2020年4月から実施)によって1割近く飛行機の発着回数が増えたことを指摘した回もそれに劣らぬ反響があった。アフターコロナで2019年以前に近いところまで航空機の便数が戻った上に羽田新ルートによる増便を加えた形での航空管制業務は過去に経験のないもので、事故は起こるべくして起きたというべきだろう。

 国交省職員で構成する「国土交通労働組合」(国交労)はずっと以前から職員の定員削減をやめ要員を増やすよう求める署名運動を行ってきたが、関係者やそれに近い人に呼びかける程度であまり知られていなかった。ところが、私がレイバーネットで紹介したこともあって事故直後からメディア取材が殺到。2月6日、国交労はとうとう航空管制官の増員を求める声明を発表し記者会見まで開いた。安全確保のために必要な人員まで機械的に減らし続ける国交行政のあり方を問い直すとともに、国交労の闘いに一般市民・公共交通利用者からの支持があると伝えることが今のこの局面では重要である。

 航空業界は今、問題山積の状態だ。新千歳空港では、機材もパイロットも客室乗務員も足りているにもかかわらず、乗客の手荷物の積み卸しなどを扱う地上職(グランドハンドリング職)の人手が足りないため増便ができないという事態になっている。コロナ禍による大減便で離職したグランドハンドリング職員が他職種に転職したままアフターコロナになっても戻らず、残された労働者に負担が集中。激務に耐えられず辞職者が相次いでいるが、その補充もできず、「このままでは過労で死者が出てしまう」としてとうとう昨年末にはグランドハンドリング職の労働組合が2023年末限りでの36協定(労働基準法36条による残業協定)の破棄を会社側に通告した。2024年の年明け以降は残業をしないという意味であり、航空業界はますます人手不足に追い詰められている。

 公共交通は基本的に労働集約型産業で、シーズンとオフシーズンとで需要に極端な繁閑があるため人員調整に苦労してきた。それでも非正規労働者を雇用の調整弁に使うことで何とか持ちこたえてきたが、若年人口の減少でそうした綱渡りも次第に難しくなってきている。シルバー労働人口は増え続けているが、公共交通の現場は体力勝負の要素が強く、シルバー労働人口がいくら増えても若年労働者の代わりにはならないからだ。

 2024年、航空業界以上に追い詰められそうなのはバス・トラック業界だ。2019年に「働き方改革関連法」が成立し、残業規制(年960時間まで)が導入されたが建設・物流業界に限り「5年後に施行」と猶予期間が置かれた。その猶予期間がいよいよ終わる今年、運転手も年960時間を超えて残業ができなくなるため人手不足に拍車がかかるというわけだ。

 「残業制限などされたら手取り賃金が減り、食べていけなくなる」という規制反対の声が運転手の間から上がっていると聞くが本末転倒だ。年960時間といっても1か月に80時間で、これさえ厚労省が過労死ラインに指定する水準に当たる。声を上げるなら「死ぬまで働いても食べていけないような低賃金を何とかしろ!」であるべきで、過労死するまで働かせろという要求を、労働者の側からは口が裂けても言うべきではない。

 「働き方改革」に対しては、最低賃金引き上げなど実質的な内容の伴うことは何も行われていないという労働側からの批判はある。だが、ともかくも「残業=悪」というムードを日本社会に作り出したことは評価してもいい。問題は「労働時間を半分にするなら、2倍効率的に働こう」というのが安倍流「働き方改革」だったにもかかわらず、効率よく働く議論が置き去りにされたことだ。結局は残業時間を減らした分だけ仕事が積み残しになり、その不利益の押しつけ先を「今までと違う誰か」に変えるだけに終わる気配が濃厚になっている。端的にいえば、今までは「低賃金で死ぬまで働く労働者」が全犠牲を負っていたのが、今後は「いつまで経っても荷物が届かず途方に暮れる利用者」が全犠牲を負う形に変わるだけという結果がここに来てはっきりと見え始めているのである。かつて近江商人の間では「三方良し」(取引先、顧客、自分たちのすべてにとって良い結果であること)が商売の秘訣といわれたが、今は「泣く人の順番を定期的に変える」だけ。21世紀も5分の1が過ぎた2020年代とは思えず、近江商人に笑われるだろう。

 再配達の削減策やスマホアプリ活用による輸送効率化など、確かにやらないよりはマシだとは思う。だが物流危機は若年労働人口の減少という構造的要因が理由だ。物流そのもののあり方を変えるという抜本的な策なしには解決しないが、政府の動きは鈍く、打ち出される策も小手先のものばかりだ。

 一方、政府の対応を待っていられないと、自治体・民間レベルで「抜本的な動き」が出てきた。そのひとつがJR貨物による「レールゲート」構想だ。多くの物流企業が倉庫機能や荷役機能の拠点として使えるよう貨物ターミナルに併設されるもので「駅チカ倉庫」「駅ナカ倉庫」などと自称、東京・札幌では先行利用が始まっている。

 先進的な試み……と言いたいところだが私には「既視感」がある。これは結局、国鉄時代の「ヤード」の現代版なのではないか。かつて国鉄の貨物駅には広大なヤードがあり、トラックが直接乗り付け鉄道貨車に荷物を積み替えていた。ペリカン便事業も手がけていた日本通運は、もともとはこの目的のために旧鉄道省が設立した特殊会社で、終戦まで「日本通運株式会社法」という法律があった。日通が国鉄に委託されトラックで運んできた荷物を貨物駅の広大なヤードで貨車に積み替えていた。貨物の種類ごとに専用貨車を仕立てていた昔に対し、レールゲートはコンテナを使う点が違うだけだ。

 こうしてみると、国鉄のヤード系輸送を全廃し、コンテナと石油、セメント、石灰石の拠点間直行輸送だけに再編縮小した1984年の貨物ダイヤ改正を再検証しなければならない。日本の人口が若年中心でトラック運転手を集め放題だった当時と高齢化が進む今では社会状況が異なり単純比較はできないものの、「JR体制の見直しが始まるなら、それは貨物部門からになる」との、かねてからの私の予言通りに事態は動き始めたようだ。

(2024年2月10日)

<参考動画>運転士1人でドライバー65人分 トラック運転手不足で「鉄道貨物」復権へ 2024年問題で注目(2023/12/19 TNCテレビ西日本)

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【転載】羽田空港事故を受け、国土交通労働組合が航空管制官増員求める声明発表

2024-02-07 18:42:58 | 鉄道・公共交通/安全問題
羽田空港で1月2日に起きたJAL機と海上保安庁機の衝突事故を受け、国土交通省職員で作る「国土交通労働組合」が2月6日、航空管制官の増員を求める声明を発表しました。

以下、国土交通労働組合ホームページに掲載されている声明全文を転載します。同ホームページには、印刷用PDF版も掲載されています。

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2024年1月2日に発生した航空機同士の衝突事故を受けて (声明)

 2024年1月2日に東京国際空港で発生した日本航空516便と海上保安庁機の衝突事故で犠牲になられた海上保安庁職員5名の方々とそのご遺族の方々に対し、深い哀悼の意を表します。また、この事故で負傷された方々に心よりお見舞いを申し上げます。

 今回の事故を受けて、一部の報道各社やSNSにおいて、断片的な情報や憶測による事故原因を推測する記事が多々見受けられます。なかでも、責任の所在につながるような論調は、この事故に直接関わった航空管制官のみならず、全国で日々懸命に奮闘する航空管制官やパイロットなど、多くの航空従事者に心理的負担を強いるものであり、彼らの業務遂行に多大な影響を及ぼしかねないことを強く懸念しています。今回のような痛ましい事故を繰り返さないためには、すべての真実を明らかにすることで、真の原因究明につなげることが重要なことから、事実にもとづく情報のみの発信を望みます。

 国土交通省は、今回の事故を受けて、1月6日から羽田空港において、航空管制官による監視体制の強化として、滑走路への誤進入を常時レーダー監視する人員を配置しました。同様のレーダーが設置されているほかの6空港(成田、中部、関西、大阪、福岡、那覇)においても順次配置するとしています。しかしながら、この人員は新規増員によらず、内部の役割分担の調整により捻出するとされており、国土交通労働組合は、航空管制官の疲労管理の側面から問題視しています。

 政府は、2014年に「国家公務員の総人件費に関する基本方針」および「国の行政機関の機構・定員管理に関する方針」を定めており、これにより、新規増員が厳しく査定されていることにくわえて、一律機械的な定員削減を各府省に求めた結果、航空管制の現場では、管制取扱機数が急増する一方で、航空管制官の人数は2,000人前後から増加しておらず、その結果、一人当たりの業務負担が著しく増加しています。そのため、国土交通労働組合は、かねてから、「安全体制強化のための飛行監視席」の新規要員を要求してきました。しかし、2018年度からごく一部で新規定員が認められたものの、真の安全を構築するには全く足りていません。そのような要員事情において、今回の一時的措置は、当面の間とはいえ、現場が益々疲弊することは想像に難くなく、早急に航空管制官の大幅な増員の実現を強く求めます。

 くわえて、私たち国土交通労働組合は、2001年に発生した日本航空907便事故以降、「個人責任の追及を許さない」との立場で、強くとりくみをすすめてきました。航空事故は、その産業構造の複雑さから、明らかに犯罪性が認められるものを除き、様々な要因が重なった結果、発生に至る性質のものです。事故の再発防止のためには、すべての真実を明らかにすることで、真の原因究明につなげることが、悲劇を繰り返さないための必要条件です。しかし、我が国においては、多くの諸外国と違って、事故の当事者個人に業務上過失の疑いがかけられ、司法による捜査を受けており、これはICAO Annex13(国際民間航空条約第13章)に抵触するものです。司法の捜査が介入することで、当事者が黙秘権を行使し、真実が闇に埋もれてしまえば、悲惨な事故が繰り返されかねません。

 これらのことから、私たち、国土交通労働組合は、利用者のより高度な安全確保の体制を構築するためにも、共闘組織はもとより、国民のみなさまとともに、個人責任の追及を許さず、事故の真の原因究明と再発防止にむけたとりくみを今後よりいっそう、強化することを表明します。

 2024年2月6日
 国土交通労働組合 中央執行委員長
 山﨑 正人

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【羽田空港衝突事故 第4弾】羽田新ルートを強行した「黒幕」と国交省、JAL、ANAの果てしない腐敗

2024-02-06 20:43:49 | 鉄道・公共交通/安全問題
(この記事は、当ブログ管理人が「レイバーネット日本」に寄稿した内容をそのまま転載したものです。)

 「それでは、次の議案である取締役選任についての採決結果を報告いたします。候補者番号1番、乗田俊明君の取締役選任に賛成79,315票。反対249,434票。よって、乗田君の取締役選任案は、否決されました」

 会場内にいた株主の誰もが無風のまま終わると思っていた東証プライム上場企業の株主総会。予想外の事態に、会場を埋めた株主からどよめきが起きた--(以上、事実に一部想像を加えた再現)。

 ●「1・2羽田事故」から思わぬ展開へ

 元日を襲った能登半島地震とともに全国の正月気分を引き裂いた「1・2羽田事故」。安全問題研究会は、第1報記事「羽田衝突事故は羽田空港の強引な過密化による人災だ」(1月8日付け)、第2報記事「航空機数は右肩上がり、管制官数は右肩下がり~日本の空を危険にさらした国交省の責任を追及せよ!」(1月9日付け)、第3報記事「過密化の裏にある「羽田新ルート」問題を追う」(1月29日付け)と相次いで本欄で報じてきた。

 このシリーズは本来なら第3回までで終わる予定だった。だが、羽田新ルート問題の取材・情報収集を続けるにつれ、事態は思わぬ方向に展開する。昨年、大手メディアが報じながら、追及が尻すぼみのまま終わった「ある事件」と羽田新ルート、そして「1・2羽田事故」。ばらばらの点に過ぎないと思われていた3つの出来事が、1本の線で結ばれたのだ--。

<写真=羽田空港のJAL機 JALは空港施設株の21%を保有する(2023.7.7付け「東洋経済オンライン」より)>


 ●国交省OBの「圧力」

 時は2022年の年末に遡る。全国各地の空港に拠点を置き、施設運営などを手がける「空港施設(株)」の社長に国交省OBを就任させるよう、別の国交省OBが働きかけていたことが発覚した。働きかけたのは、航空行政を一手に取り仕切る航空局長も経験した本田勝・元国交省事務次官。2022年12月13日、本田氏は同社を訪問し、乗田俊明社長らと面会。同じく国交省OBで同社副社長の山口勝弘氏を、2023年6月人事で社長に昇格させるよう求めたのだ。本田氏は、みずから「別の有力OBの名代」を名乗り、「国交省出身者を社長にさせていただきたい。(山口氏が社長に就任すれば)国交省としてあらゆる形でサポートする」として、空港施設に対し多くの許認可権を持つ監督官庁・国交省の「威光」をちらつかせながら山口氏の社長昇格を迫った。

 実は、山口氏も国交省航空局長を務めたOBで、元々は空港施設の取締役だったが「国交省出身者が代表権のある副社長に就くべきだ」と主張しみずから副社長ポストを要求、狙い通りに就任していた。本田氏による山口氏の社長昇格要求はそれに次ぐ二度目の圧力だった。

 空港施設が管理する建物の多くは羽田など各空港の敷地内にある。空港敷地はほとんどが国交省管理の国有地であり、空港施設は国に賃料を払ってそれらを借りる立場だ。とりわけ民間企業への国有地の貸付・払い下げには、以前、森友学園問題でも明らかになったように厳しい審査基準がある。形の上ではお願いであっても、国交省事務次官経験者の直接訪問による依頼を空港施設側が圧力と受け取るのは当然だろう。

 空港施設は東証プライム上場企業であり、取締役人事は指名委員会で決める手順になっている。乗田社長ら空港施設側は「上場企業なので、しっかりした手続きを踏まないとお答えが難しい」と難色を示した。「しっかりした手続き」が指名委員会での指名を意味することは言うまでもない。

 国家公務員OBによるこのような人事上のあっせん行為は違法ではないのか。かつて官僚による天下り問題が表面化した際、現役公務員がOBからの就職あっせんを受けることや、所属省庁が現役公務員の再就職をあっせんすることは禁じられた。しかし、退職したOBが別のOBの就職や人事上のあっせんをすることは民間企業同士の人事交流として規制対象になっていない。大手メディアの取材に対し、国交省は「関与しておらず、退職した者の言動についてコメントする立場にない」と回答している。

 ●大手航空2社を使い「報復」に出た国交省と本田氏

 露骨な圧力を使っての「人事介入」は空港施設側に拒まれた。これに加え、2023年3月にはこの件が大手メディアに報じられる。2023年4月3日付けで、山口氏も副社長辞任に追い込まれる。国交省の不当な人事介入を跳ね返した空港施設の「完全勝利」と思われた。

 だが、国交省は2023年6月、思わぬ形で「報復」に出る。その場面が、事実に一部想像を交えて再現したこの記事の冒頭部分だ(取締役番号1番が乗田氏であることや、賛成、反対の票数は当研究会の情報収集に基づく事実であり、株主総会議長の台詞などを想像で補った)。2期目続投が盤石と思われていた乗田氏に反旗を翻し、大量の反対票で取締役再任「否決」に追い込んだ株主は誰なのか。

 乗田氏の取締役選任(再任)議案に関し、総投票数328,749票のうち、反対票は249,434票で75.8%を占める。空港施設の株式のうち、ANAHDとJALの大手航空2社がそれぞれ21%、日本政策投資銀行が13.8%を保有している(議決権ベース)。この3社以外にも反対の株主がいたことがわかるものの、合計で55.8%と過半数を占める前述の3社の意向が事実上、議案成否の鍵を握っていることになる。関係者の話を総合すると、ANAHDが反対、日本政策投資銀行は賛成したという。JALは議案への賛否を明らかにしていないが、この票数から考えると反対したことは間違いない。

 驚かされるのは、乗田氏がJAL出身であることだ。事実上、自身の「古巣」によって解任(再任拒否)されたことになる。航空行政を一手に取り仕切る国交省航空局は、国内各空港における発着枠の配分などを通じて航空会社にも大きな影響力を持つ。空港施設にメンツを潰された形の国交省に「恩を売る」ため、大手航空2社が国交省と本田氏の書いたシナリオに沿って乗田氏解任に動いたというのが「事情通」による見立てである。

 ●本田氏と羽田新ルート~国交省、大手航空2社の腐敗こそ「1・2羽田事故」の元凶

 2009年、国交省の外郭団体研究員らによって原案が作成されながら、長く「非現実的」として放置されてきた羽田新ルートが、2014年に「官邸案件」化して以降、一気に動き始めたことは第3回記事ですでに述べた。本田氏は2014年7月8日付けで国交省事務次官に就任しており、時期的にぴたりと符合している。官邸の意を汲み、羽田新ルート推進体制を持ち前の「剛腕」で省内に構築する本田氏の姿が目に浮かぶ。

 新ルートで発着回数が年3.9万回(羽田空港発着数全体の約9%)も増えれば、大半の発着枠を割り当てられる大手航空2社もまた大きな利益を上げられる。騒音・振動被害だけでなく、落下物の危険も招き寄せる新ルートに多くの都民が反対する中、それらの事実を知りながら、新ルートの恩恵にあずかろうとした大手航空2社の姿も透けて見える。国交省も大手航空2社も利益優先、安全軽視でまさに腐敗の極致というしかない。こうした極限の腐敗こそが「1・2羽田事故」を引き起こしたのだ。

   ◇   ◇   ◇

 過去3回、多数の「おすすめ」をいただき好評の羽田空港事故追跡シリーズ、今回で終わらせる予定だったが、さらに続ける。まだ私の手元には重要な事実が残っており、これを書かずして終わらせることはできないからだ。次回、第5回では、本田氏にまつわる「書き切れなかった重要な事実」をさらに掘り下げる。彼の官僚人生こそ、過去半世紀にわたって旧運輸省~国土交通省が続けてきた日本の「新自由主義的交通行政」を象徴するものだという私の自信は、今、確信に変わりつつある。(第5回に続く)

<参考記事>
国交省元次官、「OBを社長に」要求 空港関連会社の人事に介入か(2023.3.30「朝日新聞」)

国交省OBが副社長ポスト要求 国有地賃貸にふれ「協力の証し」(2023.4.2「朝日新聞」)

空港施設の「社長解任劇」、JALがつけた落とし前 国交省OB天下り介入で、古巣がまさかの「ノー」(2023.6.30「東洋経済オンライン」)

空港施設を「闇討ちしたJAL」、社長解任劇の舞台裏 事前通知なしに反対票、理由を語らない大株主(2023.7.7「東洋経済オンライン」)

<シリーズ過去記事>
第1回「羽田衝突事故は羽田空港の強引な過密化による人災だ」(1月8日付け)

第2回「航空機数は右肩上がり、管制官数は右肩下がり~日本の空を危険にさらした国交省の責任を追及せよ!」(1月9日付け)

第3回「過密化の裏にある「羽田新ルート」問題を追う」(1月29日付け)

(取材・文責:黒鉄好/安全問題研究会)

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【JHU(JAL被解雇者労働組合)Youtubeチャンネル】JAL青空チャンネル第21回「羽田衝突事故を考える」(2024.2.1放送)

2024-02-01 22:59:53 | 鉄道・公共交通/安全問題
2010年の年末にJALを解雇された165人の労働者のうち、会社との和解を拒否して原職復帰をめざす32名で作るJHU(JAL被解雇者労働組合)。そのJHUが開設したYoutubeチャンネル「JAL青空チャンネル」第21回は「羽田衝突事故を考える」(2024.2.1放送)。テレビでおなじみの元機長の航空評論家・杉江弘氏も緊急出演! 羽田事故の真相に迫ります。必見!


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