安全問題研究会~鉄道を中心とした公共交通を通じて社会を考える~

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労働組合と安全問題

2009-10-31 22:09:39 | 鉄道・公共交通/安全問題
JR西労組、自浄作用の役割どこへ(産経新聞)

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 平成17年4月25日に兵庫県尼崎市で発生し、乗客106人が犠牲になったJR福知山線脱線事故は、様々な問題を社会に突きつけた。ひとつは安全を軽視したJR西日本の企業体質。現在は、事故原因を調査した国土交通省航空・鉄道事故調査委員会(現・運輸安全委員会)の報告書漏洩(ろうえい)が問題化している。

 労働組合(労組)は事故を、また様々な問題を防ぐことはできなかったか。

 組合員数約2万4500人で、JR西日本最大の労組「西日本旅客鉄道労働組合」(JR西労組)の書記長、杉原清道(46)は「事故を起こしたいと思う人は誰一人いない。ただ、事故前に一人一人が本当に安全の意味を考えて行動していたかと聞かれると自信がない」と言う。

 事故後、JR西労組を含む5労組のうち3つが合同で、事故前に年4度程度だった経営側との労使安全会議を何度も開いた。現場の声を伝えるためだが、違う結果を示す数字もある。

 まず、JR西労組が19年3月に実施した職場アンケート。労組が職場の実態などを把握し、会社へのチェック、提言機能を発揮しているかについて「あまりできていない」との回答がいずれも4割を占めた。

 漏洩問題に関するJR西の社員調査では、公表前の報告書の非公式入手を26人が知り、不適切な行為だと24人が知っていたと回答した。働く側が労組に信頼を置いていれば、不正や不適切なことを知った人は、労組に伝えることで社内の「自浄作用」の役割を果たせた。事故も、いくつかの問題も防げたかもしれない。

     ◇

 《労働運動の重要な課題の一つは、働く者の社会的公正労働基準をいかにして確立するかにあります。このことは産業社会における労働価値を正しく評価させ、働く者の人権を守り、社会正義を確固たるものとして定着させ、安心して働くことのできる社会づくりをめざすことを意味しています》

 11年9月、金属機械の2つの労組が統合してできた新組織「JAM」結成前の4年に統合に伴う話し合いの中で掲げられた理念のひとつだ。

 雇用環境が悪化するいま、「安心して働ける社会」は働く者がもっとも必要とすることだろう。

 今月26日の第173臨時国会召集に対し、連合は27日に発表した談話の中で雇用問題に触れ、「安全と安心の社会を取り戻すためのあらゆる施策に積極的に協力する」などとした。

 脱線事故後にJR西が設置した外部有識者会議で委員を務めた関大教授の安部誠治(57)は「経営陣は経済性を重視したがるが、公共交通機関として安全性は欠かせない。事故前のJR西は明らかに前者に傾いていた」と指摘。「だからこそ労組は企業内唯一のチェック者という自覚を持ち、安全への提言を続けなければならない」という。

 17年前に掲げられた労組統合の理念と、安部の指摘は、内容も、置かれた状況も異なるが、共通点がある。それは「安全」や「安心」をすべての基本に置く、という考え方だ。

     ◇

 JRの労使関係には特殊な事情がある。杉原が「国民からノーを突きつけられた」と言い、安部が「とげとげしい」と表現する国鉄時代の労使関係で、社会を揺さぶった事件も多い。

 経営者側が、荒れた職場を改め、生産性を向上させようとした1960年代のマル生運動、70年代のスト権スト、そして80年代の国鉄民営化。中には「働かないことが労働運動だ」と主張するグループさえあった。

 昭和63年入社の杉原は、前年の国鉄改革後に入社したJR世代で、平成6年から組合専従となった。「国鉄末期のヤミ超勤やカラ出張、ストライキ。一人の国民として理解ができなかった」。これらの過程で労組への過激な印象が国民に根付き、国鉄改革による「労組潰し」につながり、結果として「(JRの)労使間にいい緊張感ができなかった」(安部)とされる。

 「社会の側から、労組は既得権益の集団にみえる。それを変えるには、例えば働く者がおかしいことはおかしいと自由に言える企業になることだ。そのために労組側も新たな形を提示するべきだ」と安部はいう。

 変化の兆しはある。今年1月末、杉原らは会社側との労使協議の前に初めて「雇用を守る」という議題をはかった。脱線事故や、厳しい雇用環境を踏まえたものだ。働く者の雇用を守れば、その生活を守るだけでなく、鉄道技術が継承でき、安全が生まれる、という思いがあったからだ。

 安心して働ける社会-。安全や安心を労使ともに求め、互いの関係が変われば…。JR西の企業体質が変化したとき、その道筋が見えてくるかもしれない。

(敬称略)
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右派メディアとして過去、国労バッシングを繰り返して国鉄分割民営化の地ならしをし、その後も労働組合を目の敵にしてきた産経。お前にだけは言われたくないとの思いは正直に言って、ある。だがこれは、今まで労働組合が内部で検証を避けてきた問題でもある。こんなことを言ってはなんだが、「敵側」のメディアだからこそ検証ができたという側面はあるかもしれない。当ブログのスタンスからは踏み込み不足の感もあるが、右派メディアの産経としてはこのあたりが精一杯だろう。

鉄道業務の特性と技術、安全も含めた職場状況を最もよく知った上で、内部から危険を告発したり抑止したりできるのが労働組合しかないことは事実である。国土交通省がいかに鉄道会社を指導しても、経営陣だけがいかに頑張っても、鉄道を動かすのは現場なのだから、現場を束ねる労働組合がしっかり監視しなければ安全には結びつかない。

ところが、今JRの労働組合はどこも、国鉄時代に国民を敵に回したことがトラウマになり、萎縮しきって正しい活動さえもできなくなってしまっている。しかし、食の安全問題への国民の高い関心に示されるように、安全への関心はきわめて高いものがある。この分野に関しては、JR社員と労働組合はもっと自信を持つべきだ。

2007年2月に開かれた国土交通省主催の意見聴取会(今回、JR西日本が旧事故調から報告書を事前入手しようと考えたきっかけでもある)の際、出席したJRの3組合(記事にもあるJR西労組の他、建交労、国労)はどこも安全問題にひとことも触れず、遺族から批判された。残念ながら、安全問題への意識では家族を殺された遺族のほうが労働組合よりずっと先を行っている。先の総選挙で自公政権が下野に追い込まれたのは、格差社会に対する批判に加え、公共交通や食の安全を崩壊させたことへの批判も含んでいると当ブログは考える。

こういう状況だから、今、安全問題への関心はかつてなく高まっており、事故が起きれば真っ先に自分が犠牲になるJR社員と、巻き込まれるかもしれない国民の利害も完全に一致している。恐れることは全くないわけだ。JRの各労働組合は今こそ積極的に外に出て遺族・国民と対話し、みんなが納得できる安全への取り組みを強めてもらいたい。

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帰りました

2009-10-29 21:27:02 | 鉄道・公共交通/趣味の話題
ようやく3泊4日の出張から帰った。それにしても長かった。

結局、中途半端な空き時間を利用して山陽電鉄の未乗区間(飾磨~山陽網干)に乗車することができたのは、大きな収穫だった。

【完乗達成】山陽電鉄

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JR西日本幹部、相次ぎ辞任

2009-10-28 23:32:06 | 鉄道・公共交通/安全問題
山崎前社長と土屋副社長の辞任発表…報告書漏えい(毎日新聞)

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 JR西日本は23日、JR福知山線脱線事故(05年4月)の最終報告書案の漏えい問題で、報告書を公表前に入手した前社長の山崎正夫取締役(66)と、情報収集を部下に指示した土屋隆一郎副社長(59)が同日付で辞任する人事を発表した。JR西は今月2日に外部有識者でつくるコンプライアンス特別委員会を設けて事実関係の調査を進めてきた。2人は進退伺を佐々木社長に既に提出しており、漏えい問題の責任を明確にするための事実上の解任となる。

 山崎前社長は06年、航空・鉄道事故調査委員会(現運輸安全委員会)の委員に接触を始めた。土屋副社長は事故対策審議室の室長として、部下に情報収集を命じ、別の委員への接触を図った。事故調意見聴取会の公述人への応募を国鉄OBらに依頼し経費や謝礼として現金を渡したり、捜査当局の事情聴取に臨む社員に他の社員の供述内容を見せるなどの不適切な対応も明らかになっていた。

 山崎前社長は66年、旧国鉄に入社。鉄道本部長などを経て子会社に出向。事故後の06年2月に社長に就任、安全性向上と企業風土改革、遺族対応に取り組んだが、09年7月に業務上過失致死傷罪で神戸地検に在宅起訴され、8月末で社長を辞任したが、取締役にとどまった。土屋副社長は74年に旧国鉄入社。大阪支社長などを経て、06年6月に福知山線列車事故対策審議室長と被害者対応本部長、09年8月に副社長に就任した。【久木田照子】
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東京副本部長を更迭=報告書漏えいで(時事通信)

 JR福知山線脱線事故の報告書漏えい問題で、JR西日本は28日、国土交通省航空・鉄道事故調査委員会(当時)の委員に接触していた鈴木喜也東京本部副本部長を、同日付で鉄道本部技術部担当に異動させると発表した。記者会見で真鍋精志副社長は「事実上の処分。関係者の全体的な処分は(社内調査の)最終報告書が出た時に対応する」と述べた。
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尼崎事故に関する調査報告書漏洩問題で中心的役割を果たした山崎、土屋、鈴木の各氏が辞任することになった。今回の問題の悪質さから考えて辞任は当然である。むしろ、遅きに失したと言えよう。

これほどまでに進退の判断が遅れたのは、結局はJR西日本の各幹部らが地位に恋々としていたからである。地位をなげうち、職を賭して安全向上と事故原因究明に取り組むのが真の鉄道人のはずである。しかし、JR西日本幹部からは、ついに最後までそのような真摯な姿勢は見られなかった。彼らが安全対策に取り組んでいないとはいわないが、最後まで自分たちの地位が脅かされることがないような範囲内での安全対策、被害者対策に終始していたように思う。

関係者の全体的な処分については、最終報告を見た上での判断となる模様だが、尼崎事故、信楽高原鉄道事故を生んだ安全軽視・利益最優先の企業風土の中でみずからの社内における地位を固めてきた現経営陣に、そうしたしがらみを断ち切るような改革など不可能なのではないだろうか。企業風土の抜本的改革は、新体制のもとで行うべきであり、社内調査の最終結果がどうであれ、現経営陣は総退陣すべきだと当ブログは考える。

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事故調報告書、「全般的検証」へ

2009-10-27 23:54:26 | 鉄道・公共交通/安全問題
漏えい報告書「全般を検証」=運輸安全委が遺族に回答-福知山線事故(時事通信)

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 JR福知山線脱線事故の報告書漏えい問題で、国土交通省運輸安全委員会は27日までに、報告書の見直しを求めた遺族らに対し、「元委員への働き掛けの影響のみならず、報告書全般の検証を進めたい」と文書回答した。
 遺族らでつくる「4・25ネットワーク」が16日に申入書を送っていた。
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旧事故調以来、組織にたまった膿を出すいい機会だと思う。報告書についても、編集の経過そのものが疑念を持たれているわけだから、全般的な検証をするのはいいことだと思う。検証の結果、記述を変更するにしてもしないにしても、再検証は不可避だと思う。その上で、運輸安全委員会は検証の結果についても遺族・被害者と連絡を密にし、納得の得られる説明をして欲しい。

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今日から出張します

2009-10-26 23:52:22 | 日記
今日から3泊4日の日程で、鳥取県と兵庫県を回る出張に来ている。本部勤務の私には、1年に1回、大きな出張がある。

今日は鳥取県への移動のみ。飛行機利用も検討したが、諸事情により結局JR利用となる。新白河から東北~東海道・山陽新幹線を乗り継ぎ、姫路からはスーパーはくと9号に乗り継いで鳥取へ。そこから普通列車で目的地近くのホテルへ投宿だ。このホテルには明日も連泊する。

鳥取県にやってきたのは3年半ぶりだ。前回の訪問は、確か2006年2月、廃止される寝台特急「出雲」を追って訪れて以来である。当時婚約者だった妻との初の旅行だった。

スーパーはくと乗車となるといつ以来だろうか。もしかしたら智頭急行開業時に乗って以来かもしれないが、列車はあのときと同じように軽快に飛ばした。ただ、今年8月、水害で犠牲者を出した作用町の中心、作用駅を少し過ぎた場所には崖崩れの跡が残っており、列車がそこを通過する時徐行運転をしていた。豪雨の爪痕はいまだ深く残っていた。

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井手氏らJR西歴代3社長「起訴相当」議決

2009-10-22 20:11:12 | 鉄道・公共交通/安全問題
JR西歴代3社長「起訴相当」議決 検察審、異例の早さ(朝日新聞) - goo ニュース

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 107人が死亡した05年4月のJR宝塚線(福知山線)脱線事故で、神戸第一検察審査会は22日、神戸地検が業務上過失致死傷容疑での告訴を受けて不起訴処分(嫌疑不十分)としたJR西日本の歴代社長3人について「起訴相当」と議決したと公表した。議決書は「3人は安全対策の最高責任者として自動列車停止装置(ATS)の整備を指示すべきだった」としている。地検は今後、3人の過失の有無について再捜査することになる。

 3人は、井手正敬(まさたか)氏(74)=社長在任は92年6月~97年3月=、南谷(なんや)昌二郎氏(68)=同97年4月~03年3月=、垣内剛(たけし)氏(65)=同03年4月~06年1月。

 議決は7日付で、8月21日の遺族側による審査申し立てから1カ月半という異例の早さで判断した。地検が再捜査を経て再び不起訴とするか、3カ月以内に判断を示さなければ、審査会は自動的に「第2段階の審査」に入る。ここで再び11人のうち8人以上が3人の起訴に賛成する「起訴議決」が出れば、裁判所が指定する弁護士が強制的に起訴することになる。

 事故は、運転士(死亡)が現場カーブに制限速度を超えて進入したことが直接的な原因とされる。地検は7月、96年12月の現場カーブつけ替え時にATSの設置を怠ったとして、当時鉄道本部長だった山崎正夫前社長(66)だけを業務上過失致死傷罪で在宅起訴し、当時社長だった井手氏ら3人については「山崎氏に安全対策の執行権限を委ねており、3人にカーブの危険性やATSの必要性に関する情報は伝わっていなかった」として不起訴とした。

 これに対して議決書は、事故発生時までに社長を務めた3人が、社長就任時に社内の総合安全対策委員会の委員長を兼務し、安全対策を実行する最高責任者だったと指摘。JR西が96年12月に現場カーブを半径600メートルから同304メートルにつけ替えた▽時速約120キロで走る新型車両が大幅に増えた▽余裕のないダイヤ改定を繰り返した――などの状況から、3人が脱線転覆の危険性が格段に高まったことを認識できたと判断した。

 また、ATSが整備されていれば防ぐことができた事例として、総合安全対策委で96年12月の函館線脱線事故が挙げられていたと指摘。現場カーブの付け替えにより、「半径450メートル未満のカーブにATSを整備する」という社内基準の対象になったことを認識し、人為的ミスを回避するためにATSを整備するよう部下に指示すべき注意義務があったとしている。

 議決書は最後に、3人を不起訴とした地検に対し「安全対策の基本方針を実行すべき最高責任者の刑事責任を問わないのは、到底賛同できない」と批判した。神戸地検の山根英嗣次席検事は「議決内容を検討の上、適切に判断する」との談話を出した。(根岸拓朗)
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朝日新聞の報道によると、起訴相当の議決は審査会委員11人のうち8人以上が賛成しなければならないらしい。その高いハードルを乗り越えての「起訴相当」議決だ。起訴は神戸第一検察審査会の意思であると同時に犠牲者・遺族・国民の意思である。当ブログは議決を歓迎すると同時に、神戸第一検察審査会委員の決意に敬意を表する。

何はともあれ、井手氏はじめ歴代3社長起訴がこれで一気に実現に近づいた。最高幹部は現場と遠いから安全対策について知らなくても仕方ないなどという理由で3氏が責任を逃れるようなことはあってはならない。

今の日本の法制度は驚くほど経営者に甘く、労働者に厳しいと思う。そのような「己に甘く、他人に厳しい」企業体質の最たるものがJRだ。自分は不正取水をしながら社員にだけ「就業規則違反」で処分を下すJR東日本、自分は幹部として特権を享受しながら社員にだけ日勤教育を課すJR西日本。「堕落し腐敗した幹部にそんなことをする権利があるのか」と、1万回でも10万回でも私は問おう。

107名の犠牲者と遺族、500名を超える負傷者たちが闘っている相手は「利益のため、儲けるためなら何をやってもいい」という企業である。耐震偽装、食品偽装などの事件を起こした企業の多くは解散し、経営者は責任を問われた。JRだけがいつまでも例外ということはあり得ない。

今、目的のためなら手段を選ばないJRに対する社会的包囲網は確実に狭まっている。「反省だけならサルでもできる」というが、反省さえ満足にできないサル以下の経営陣に、利用者・国民をいつまでも舐め続けると痛い目に遭うということを理解させなければならない。今回、井手氏ら歴代3社長を法廷に引きずり出すことができれば、そのための大きな一歩になるに違いない。

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佐藤泰生・運輸安全委員長は何を語ったか

2009-10-19 19:44:06 | 鉄道・公共交通/安全問題
JR西情報漏洩、事故調元委員が遺族らに謝罪(朝日新聞) - goo ニュース

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 JR宝塚線(福知山線)脱線事故をめぐる調査情報漏洩(ろうえい)問題で、JR西日本幹部と非公式に接触していた国土交通省航空・鉄道事故調査委員会(現・運輸安全委員会)の佐藤泰生元委員(70)が18日、兵庫県尼崎市内のホテルで、初めて遺族や負傷者に直接経緯を説明し、謝罪した。佐藤氏の申し入れに対して、遺族らでつくる「4・25ネットワーク」などが機会を設けた。

 佐藤氏は、JR西の土屋隆一郎副社長の指示を受けた鈴木喜也東京本部副本部長と、06年夏ごろから約10回にわたり東京都内の飲食店で会い、調査内容の一部を漏らしたり調査報告書を公表前に渡したりしたことを改めて認めた。

 佐藤氏は旧国鉄職員だった自身の経験から、「(JRは)事故の証拠を隠すこともあり、裏を知っている人から話を聞くしかないと考えた」と述べ、事故原因と関係が深いと感じていた日勤教育の実態を探るために旧知の鈴木氏に接触したと説明。「認識が甘く、申し訳ありません」と謝罪した。

 一方、報告書の修正を求めていた山崎正夫前社長と、同じ旧国鉄OBの山口浩一元委員については、「彼らのやり方は犯罪行為だ」と指摘。JR西が96年12月の函館線脱線事故に関する資料を事故調や兵庫県警に提出していなかった問題にも触れ、「裏切り行為だと言われても仕方がない」と批判した。

 しかし、被害者側からの質問には、守秘義務を理由に回答をあいまいにする場面が目立った。集会後、長男を亡くした兵庫県三田市の木下広史さん(51)は「結局、どんな情報の漏洩があったのか判断できず、お茶を濁された感じだ。情報を公開した方が、調査の中立性や公平性は高められるのではないか」と話した。
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当ブログでも事前告知した「JR福知山線脱線事故 元事故調鉄道部会長 佐藤泰生氏“情報漏えい問題を語る”~その思いと真相~」の内容が報道により明らかになった。

とりあえず、佐藤委員長が誰に強制されたわけでもなく、自分から遺族の前に出て話したいと考え、それを実行したことは評価できる。遺族が今、最も求めているのが事故原因の究明と今後の再発防止であるからだ。

報告書の修正を持ちかけた山崎前社長と、それを事故調内で提案した山口元委員の行為を批判したことも、佐藤氏にその資格があるかどうかという点を別にすれば妥当なところだと思う。

一方で、遺族からの質問の多くに対し、守秘義務を盾に回答しなかった態度を私は許すことができない。JR西日本に対しては守秘義務違反を犯して報告書の発表前に内容を漏らしていた運輸安全委員会が、遺族からの質問には守秘義務を盾に回答を拒むのではまったく筋が通らないし、何のための守秘義務かわからない。自分たちに不利な証言を拒むために都合良く使い分けられるような「守秘義務」なら、そんなものはないほうがましだということになる。

佐藤氏のこういう態度を見ていると、守秘義務を自分たちにいいように使い分ける「役人」に組織改革などできるのか、はなはだ疑問だ。前原国交相は尼崎事故報告書の再検証チームを立ち上げるようだが、この再検証チームに旧事故調や運輸安全委員会メンバーは加えるべきではないと当ブログは考える。

同時に、身勝手な官僚たちの情報操作のため、都合良く使い分けられるようになった「守秘義務」の扱いを再検討すべきだ。守秘義務違反に対する罰則を強化する一方、守秘義務を報告書の発表までに限定し、その後は自由な発言を認める、あるいは捜査機関や事故被害者・遺族との間に限って守秘義務の適用を免除するなどの方向で運輸安全委員会設置法の改正を考えるべき時期に来ていると思う。

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「おわびの会」で遺族、JR西幹部に詰め寄る

2009-10-17 23:14:25 | 鉄道・公共交通/安全問題
「もう信用できない」と遺族ら 脱線事故おわびの会(産経新聞)

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「あきれた」「信用できない」。JR福知山線脱線事故の報告書漏洩(ろうえい)問題を受け、JR西日本が17日、兵庫県伊丹市で開いた「おわびの会」。JR西幹部は神妙な表情を浮かべ、ひたすら謝罪と釈明を繰り返したが、新たに捜査当局の事情聴取に対する口裏合わせともいえる行為が明らかになるなど被害者らの憤りと不信感は収まらず、会場には厳しい批判と怒りの声が飛び交った。

 会は非公開で午前、午後の2回に分けて開催。遺族や負傷者ら167人が詰めかけた1回目は午前9時半から約4時間にも及んだ。

 冒頭、佐々木隆之社長に続き、山崎正夫前社長ら漏洩にかかわった幹部2人が「思慮に欠ける愚かな行動をしてしまった」などと頭を下げて謝罪。問題の経緯などを説明した。

 JR西や出席者らによると、質疑応答では、被害者から「あなたの家族が事故車両に乗っていたら(今回の事態を)どう思うか」「誠心誠意と言いながら、裏切るようなことをしていた」などの批判が相次いだ。「JR西は組織と人の命のどちらが大事なのか」と激しい口調で詰め寄られ、幹部全員が「命です」と声を絞り出すように答える場面もあったという。

 また、次々と新たな問題が明るみに出る事態に「情報を小出しにせず、すべてのうみを出し切るべきだ」と指摘する声も上がり、大半の出席者は納得することなく、険しい表情のまま会場を後にした。

 事故で長女を亡くした奥村恒夫さん(62)=兵庫県三田市=は「言い訳だけの会であきれた。事故から4年以上たってもJR西の体質は何も変わっていない。佐々木社長が会社倫理を正すと宣言したが、そんなことが本当にできるのか」と怒りをあらわにし、一時は信頼を寄せかけていたという山崎前社長が進退伺を預けたことも「私としてはJR西を辞めるべきだと思う」と断罪した。

 3両目で重傷を負った女性(68)=伊丹市=も「ここに来て組織の体裁を守り続けているのが信じられない。誠心誠意の対応をするといわれても、もう信用はできない」と落胆を隠せない様子。

 妻が重傷を負った中島正人さん(46)=川西市=は「本来、事故調査は包み隠さず事実を明らかにしていくものだ。被害者支援に関心が高まる中での不祥事は、大きな負になる」と指摘した上で、「これからJR西の体質が変わっていくのか疑問も感じるが、事故被害者や利用者の立場に立ってコンプライアンスを進めてほしい」と悲痛な思いを訴えた。
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「深く反省」と幹部らは表明しているが、本当は彼らは何を反省すべきなのか、それさえ理解していないとしか思えない。

当ブログ管理人は、遺族と実際にお会いし、対話するなどの活動を行ってきた。そうした対話の中から、当ブログが考える反省の姿というのは、「JR西日本を安全な企業に生まれ変わらせる」ことである。遺族の要求もそこにある。

JR西日本が、自社にとって都合の悪い情報をも公開し、「我が社が安全第一の企業になるために、克服すべき問題がこれだけあります。遺族の方とも協力しながら、会社にたまった膿を出し、ひとつひとつ解決していきたいと思いますので、一緒に考えていただけませんか」というのがJR西日本の取るべき基本姿勢である。

ところが、安全第一に生まれ変わるなどと表明しながら、真相に蓋をし、都合の悪い情報は隠蔽、改ざんしようとする。それがどれだけ遺族・被害者を傷つける行為かが理解できていないのである。

残念ながら、国鉄官僚としてただふんぞり返るだけの人生しか知らない現首脳らにそうした姿勢を取れといわれてもおそらく無理だろう。繰り返しになるが、現首脳は総退陣すべきである。その上で、民間出身者など柔軟性を持った人たちを経営陣に登用すべきだと思う。

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報告書検証委メンバーに柳田国男さんら

2009-10-16 21:57:26 | 鉄道・公共交通/安全問題
福知山線報告書の検証、柳田邦男さんら内定(読売新聞)

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 JR福知山線脱線事故で、JR西日本が事故に関する意見聴取会の公述人に発言の一部を変更するよう働きかけた問題で、前原国交相は16日の記者会見で、「許されることではない。大変な憤りを感じる」と強い口調で批判した。

 航空・鉄道事故調査委員会(現・運輸安全委員会)の最終報告書案の漏えい問題についても、同社に対して早急に経過報告を求める考えを示した。

 漏えい問題ではこれまで、JR西の山崎正夫社長(当時)が、報告書案の文言を削除するよう同委員会の元委員に求めていたことなどが明らかになっている。

 また、運輸安全委員会が月内にも発足させる検証チームのメンバーには遺族や負傷者のほか、ノンフィクション作家の柳田邦男さん(73)と、信楽高原鉄道事故の遺族らでつくるNPO「鉄道安全推進会議(TASK)」事務局長の佐藤健宗弁護士(51)が内定した。
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尼崎事故の事故調報告書を再検証する委員会メンバーに柳田さん、佐藤弁護士らが内定した。いずれも妥当な人選だと思う。

柳田さんは、尼崎事故直後から「月刊現代」などに論考を発表し、JR西日本の責任を追及してきた。佐藤健宗さんも、信楽高原鉄道事故の中から生まれたTASKの事務局長を長く務め、被害者のケアなどに当たってきた。当ブログは、これらの人たちを運輸安全委員会の委員として登用したらどうかと以前から思っている。今回の問題を契機にして、運輸安全委員会に利用者・市民代表枠を設け、一般市民の中からある程度事故原因を科学的に検証できる人物を登用したらいいと思う。

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JR西、今度は公述人買収工作が判明

2009-10-15 22:32:01 | 鉄道・公共交通/安全問題
JR西、事故調の公述人候補に現金渡す 発言変更求め「資料作成の慰労金」(産経新聞)

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 JR福知山線脱線事故で、JR西日本が平成19年2月に開かれた国土交通省航空・鉄道事故調査委員会(現・運輸安全委員会)の意見聴取会に際し、見解を説明する「公述人」になるよう有識者ら4人に働きかけていたことが15日わかった。うち選ばれた1人に発言内容の変更を求め、選考から漏れた国鉄OBを含む2人に対して資料作成の慰労金として現金10万円を渡していた。

 JR西によると18年12月ごろ、山崎正夫前社長(66)らがJR西と主張が似ている4人の有識者らを選定。うち1人に対して働きかけを始め、接触したが、すでに事故調から委嘱を受けていることがわかり、その後接触はしなかった。19年1月にはJR西社員が、当時の金沢工業大教授だった永瀬和彦氏と接触。本人はすでに公述人になることを決めていたため、発言内容を確認したうえで、電車の加速度や減速をグラフで表した「運転曲線」を取り上げないよう依頼。しかし、永瀬氏は断ったという。

 国鉄OBを含む残りの2人は、事故調の選定から漏れたが、意見聴取会後JR西から応募の際の資料作成の慰労金などとして現金10万円を支払ったという。

 公述人は、事故調の独自基準による委嘱と、有識者や遺族の応募の中から選ばれる。JR西は「2人はJR西の求めで応募してくれた。事故調に提出する資料の作成などに膨大な時間や経費がかかったので謝礼を支払った。被害者に不信を与えてしまい申し訳ない」と釈明している。
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国土交通省航空・鉄道事故調査委員会(事故調)委員へ報告書の記述変更を求めた接触が明らかになったばかりのJR西日本で、今度は意見聴取会の公述人に対する買収工作が判明した。本当に懲りない会社だ。事故を真摯に反省するのではなく、都合の悪い事実をもみ消すことにばかり汲々としている。報告書の内容を事前に入手して、自社の公述人に予習をさせていた上にこの買収工作だから、遺族・被害者のJR西日本への不信は、これで決定的だろう。

永瀬和彦氏は、国鉄OBながら気骨のある人物で、新人時代から上司への直言を厭わないことで知られていた。現在、日本における鉄道脱線事故の権威ともいうべき人物である。運転曲線とは、走行位置の変化に従い経過時間と速度を継続的に計算してグラフ化したものであり、列車の運転状況が手に取るようにわかる。JR西日本は、これを発表されることにより、定時運転も守れないような無理な過密ダイヤを作成した自社の過失が明らかになることを恐れたのだろう。

JR西日本の現経営陣のまま、会社に対する社会的信用を回復することはもはや不可能になった。当ブログは、JR西日本現首脳の総退陣を要求する。

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