goo blog サービス終了のお知らせ 

安全問題研究会(旧・人生チャレンジ20000km)~鉄道を中心とした公共交通を通じて社会を考える~

公共交通と原発を中心に社会を幅広く考える。連帯を求めて孤立を恐れず、理想に近づくため毎日をより良く生きる。

当ブログのご案内

当サイトは列車の旅と温泉をメインに鉄道・旅行を楽しみ、また社会を考えるサイトです。

「あなたがすることのほとんどは無意味でも、あなたはそれをしなくてはなりません。それは世界を変えるためではなく、あなたが世界によって変えられないようにするためです」(マハトマ・ガンジーの言葉)を活動上の支えにしています。

<利用上のご注意>

当ブログの基本的な運営方針

●当ブログまたは当ブログ付属サイトのコンテンツの利用については、こちらをご覧ください。

●その他、当サイトにおける個人情報保護方針をご覧ください。

●当ブログ管理人に原稿執筆依頼をする場合は、masa710224*goo.jp(*を@に変えて送信してください)までお願いします。

●当ブログに記載している公共交通機関や観光・宿泊施設等のメニュー・料金等は、当ブログ管理人が利用した時点でのものです。ご利用の際は必ず運営事業者のサイト等でご確認ください。当ブログ記載の情報が元で損害を被った場合でも、当ブログはその責を負いかねます。

●当ブログは、ネトウヨから「反日有害左翼ブログ」認定を受けています。ご利用には十分ご注意ください。

●管理人の著作(いずれも共著)
次世代へつなぐ地域の鉄道——国交省検討会提言を批判する(緑風出版)
地域における鉄道の復権─持続可能な社会への展望(緑風出版)
原発を止める55の方法(宝島社)

●管理人の寄稿
規制緩和が生んだJR事故(国鉄闘争共闘会議パンフレット「国鉄分割民営化20年の検証」掲載)
ローカル鉄道に国・自治体・住民はどう向き合うべきか(月刊『住民と自治』 2022年8月号掲載)
核のない未来を願って 松井英介遺稿・追悼集(緑風出版)

●安全問題研究会が、JRグループ再国有化をめざし日本鉄道公団法案を決定!

●安全問題研究会政策ビラ・パンフレット
こんなにおかしい!ニッポンの鉄道政策
私たちは根室線をなくしてはならないと考えます
国は今こそ貨物列車迂回対策を!

【転載記事】関生支部・湯川裕司委員長に完全無罪判決!―懲役10年の求刑を打ち破る

2025-02-27 21:37:28 | 共産趣味/労働問題(公共交通・原発除く)

レイバーネット日本からの転載です。

---------------------------------------------------------------

2月26日 京都3事件 関生支部・湯川裕司委員長に完全無罪判決!―懲役10年の求刑を打ち破る/愛知連帯ユニオン

この日、京都地裁には、ベストライナー・近畿生コン・加茂生コンの京都3事件の判決があり、全国の支援300名、韓国オプティカルハイテクの仲間が駆けつけて早朝より集会を行いました。経営側(大阪生コン広域協組/写真下)も250名が傍聴抽選に並びました。10時に開廷した法廷では、懲役10年の求刑を受けていた湯川裕司委員長に3事件すべてに無罪の判決があり、2時間に渡って判決が読み上げられました。

ベストライナー事件は、2014年からの生コン輸送会社の解散争議で、労働組合が経営者団体である京都生コン協同組合に1億5000万円の解決金を支払わせたことが恐喝とされた事件です。


近畿生コン事件は、近畿生コンの廃業に伴い、協同組合が労働組合に6000万円の清算金を支払ったことが恐喝とされた事件です。
加茂生コン事件は、(1)就労証明書の発行、あるいは(2)廃業に当たってプラントの解体とミキサー車の引き渡しを求めたことの共謀が問われた事件です。
いずれも元々、犯罪等とされる筋合いのない「事件」でした。

ストライキ通告は恐喝には当たらない

判決は、生コン業界では過当競争の抑制が必要とされ、通産省も共販を奨励していて、京都協同組合でもアウト業者による廉売対策が課題であったという背景を認定、他方、関生支部のストライキは、時に就労してない者も動員し、車両の前に立ちはだかる等して出荷を止めるようなこともあったが、事業者側が出荷を自粛する、あるいはアウト対策としてコンプライアンス活動を行う等というものでもあったと認定しました。

そして、京都3事件以前の10年間は直接出荷を止めるようなストライキがない等、生コンの価格維持に共同して取り組んでいた京都協組と関生支部の具体的関係に踏まえ、検察の「関生支部が京都協組を畏怖させ、思いのままに支配していた」という主張を退けて、恐喝行為を認めませんでした。

「争議行為が生産の一定の阻害を想定している」ことからして、労働問題の解決を目的にした関生支部のベストライナー事件におけるストライキの通告を「害悪の告知」による脅迫とすることはできないとしました。また、京都協組側が争議の金銭解決を提案し、関生支部側がそれに加えて7人の組合員の雇用保障を求めたという組合側の主張を信用できるとしました。

近畿生コン事件においては、京都協組内の人事交替で労働組合と協調路線に転換しており、アウト業者に転売されないよう労組がプラントを占拠した費用を京都協組が負担したことに恐喝は存在しないと認定しました。

加茂生コン事件では現場の概要の認識はあっても、現場での詳細なやり取りにまで被告たちが関与したとは言えず、あるいは、プラントの解体要求は労組以上に協組の利益となるものであり、協組の独自の利害から出た言動と考えられるとしました。

15時から弁護士会館で湯川委員長と5人の弁護士による報告集会

報告集会には100名の支援が参加、湯川委員長からは支援へのお礼が述べられ、「弾圧以降は最悪の事態を想定した組織運営をしてきたが、今日は裁判官の顔が穏やかで、もしや、無罪かと解った。2019年に当時大津事件で勾留されていたが、京都事件で京都に移送され、その後、3回逮捕された。それから6年、労働法学者先生の証言が採用され、私たちの産別運動が労働組合活動として認められたのが嬉しい。権力と一体化した使用者側には運動で返していく。今日は仲間と労をねぎらいながら飯を食べるのが楽しみです」と喜びを語りました。その後、事件を担当した5人の弁護士から判決の解説があり、保釈請求の準備をしたこと等のエピソードも語られました。

闘いが報われた日

2018年以来、81名の組合員が逮捕され、湯川委員長(写真左)は644日も勾留された「戦後最大の刑事弾圧」(労働法学者声明)。その中でも最後に最も重い罪に問われた京都事件で無罪判決が出されたことは、関生弾圧が不当弾圧であったことを白日の下に明らかにしました。

関生支部は京都事件について、京都、名古屋、東京、沖縄などでシンポジウムを開催、大手メディアが沈黙する中、良心的なジャーナリストたちの力を借りつつ地道な発信を続けて来ました。これからも困難な闘いの日々が続きますが、この日は大勝利の1日となりました。全国の支援の皆さん、本当にありがとうございました。

---------------------------------------------------------------------------------

恐喝罪など問われた関西生コン幹部ら2人に無罪判決 京都地裁(NHK京都)

関西の生コンクリート業界の労働組合の幹部ら2人が、京都府内の生コンクリート製造販売会社で作る協同組合の理事らを恐喝し1億5000万円を支払わせたなどとされた事件の裁判で、京都地方裁判所は2人に無罪の判決を言い渡しました。

無罪が言い渡されたのは、関西の生コンクリート業界の労働組合、「全日本建設運輸連帯労働組合関西地区生コン支部」の武健一元執行委員長(83)と湯川裕司執行委員長(52)です。

2人は、2013年から2014年にかけて、生コンクリートの輸送会社の倒産をめぐり、製造販売会社で作る協同組合の理事らに対し、組合員の退職金などを名目に解決金の支払いを要求し、出荷を妨害するなどして1億5000万円を支払わせたなどとして、恐喝などの罪に問われていました。

26日の判決で、京都地方裁判所の川上宏裁判長は、「ストライキをはじめとする争議行為はその性質上、労働組合が使用者に一定の圧力をかけ主張を貫徹することを目的とする行為で、業務の正常な運営を阻害することはもともと当然に予定されているものだ」と指摘したうえで、「要求行為が脅迫に該当するとはいえず、犯罪の証明がない」などとして、無罪を言い渡しました。

判決について、京都地方検察庁の石井壮治次席検事は「判決内容を精査し、適切に対応したい」とコメントしています。

 
 
 

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ストライキ決行中の業務スーパー2店舗を取材

2024-07-21 23:49:44 | 共産趣味/労働問題(公共交通・原発除く)
(この記事は、当ブログ管理人がレイバーネット日本に投稿した記事をそのまま掲載しています。)

店舗閉鎖に対抗する形で、昨年決行された西武池袋店のストライキは、小売業界としては実に61年ぶりということで、大きな社会的注目を集めました。「経営者によるどんな理不尽にも、解雇を恐れて黙って耐えなければならないのだ」という、日本人に染みついた奴隷根性を転換する一大事件だったと思います。

そして今回、エス・インターナショナル(「株式会社ケヒコ」)経営陣による会社財産の私的流用や偽装倒産攻撃に対抗して、北海道内の労働者がストライキに決起したという情報を聞き、こんな至近距離でこのような出来事が起きているなら、取材しない手はないと思い、21日、ストライキにより休業中の苫小牧市内2店舗(苫小牧店、苫小牧東店)を見てきました。

両店とも、照明が消された店内は無人で静まりかえっていました。労働者の姿もありませんでした。ただ、店舗裏面に回ってみると、大きな室外機が普段通り大きなうなり声をあげて動いていました。冷蔵品・冷凍品はいつでも営業再開できるように保存しておかなければならないので、考えてみれば当然のことです。

「月間特売」のチラシとスト決行中の張り紙が並んで張り出されていました。ストライキ期間は「7月18日(木)13:00~未定」と書かれており、組合側としても経営側との妥結の見通しは立っていないように見えました。



張り紙にはこのように書かれています。「現在、労働組合と会社側で労働争議が行われております。組合側は、代表取締役である菅井麻貴氏による会社資産の私的流用をやめさせ、経営陣による放漫経営の責任を問い、私たちの労働条件悪化を防ぐこと、雇用の安定を求めて闘っております。また菅井氏によるパワハラや不当労働行為に抗議しています。このまま放置すれば、私たち従業員の労働条件の悪化、さらには雇用も失われかねません。お客様には大変ご迷惑をおかけいたしますが、ご理解とご支援のほどよろしくお願い申し上げます。全国一般東京東部労働組合エス・インターナショナル支部」

市民・顧客の支持を得るため、きちんと自分たちの主張の正当性、経営側の不当性を張り紙で顧客に伝える組合側の姿勢には好感を持ちました。西武百貨店のストにも共通していますが、小売業界のストライキは利用客の支持を得られるかが重要な鍵を握っていると考えるからです。

経営者による会社財産の私的流用で、会社の経営状態は極限まで悪化しており、このまま座して見ていても死を待つだけ。それなら立ち上がって勝負に出るべきだというかなり切羽詰まった状況が今回のストライキの背景にあるように感じました。この点も西武百貨店のストライキと共通しています。市民・顧客からの支持は必ず得られるし、そうなるように訴えていくことも支援者の役割だと思います。

店舗閉鎖となっているのは、「業務スーパーすすきの狸小路店」「業務スーパー苫小牧店」「業務スーパー苫小牧東店」「業務スーパー室蘭店」「業務スーパー岩見沢店」「業務スーパー滝川店」「業務スーパー旭神店」の7店舗です。どの店舗もストライキの影響は大きいと思いますが、その中でも圧倒的に大きな影響を与えているのはすすきの狸小路店でしょう。いうまでもなく、業務スーパーがここに店舗を構えている理由は、日本三大歓楽街の1つといわれるすすきのの飲食店街に、良質な食材を大量に安く提供することです。

札幌一極集中が強まり、北海道中の若者を札幌が飲み込んでいく中、週末ともなると、すすきのは深夜0時を過ぎても若者の列が横断歩道を渡るため、車が右左折もできないほどです。巨大歓楽街の「夜間経済」を陰で支える業務スーパーすすきの狸小路店の閉店が長引けば、歓楽街へもじわじわと影響が及んでくるでしょう。

利潤獲得が目的の民間企業とはいえ、経済活動を担う企業は社会的存在です。そこにはルールがあり、資本主義経済の下では企業は私的に所有されていますが、私的な所有形態であることと経営者の私物であることは必ずしもイコールではありません。会社のカネを自分のカネのように思っている経営陣が退陣し、労働組合と労働者の望む形で早期に争議が収拾されることを、一道民として望みます。

(取材:文責/黒鉄好)

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【転載記事】東京東部労組:「業務スーパー」7店舗で無期限ストライキに突入!

2024-07-19 22:37:00 | 共産趣味/労働問題(公共交通・原発除く)
経営者一族による会社資金の私的流用と、それを覆い隠す目的での「偽装倒産」を狙う会社側に対し、労働組合が無期限ストライキを行っている関係で、「業務スーパー」の北海道内の一部店舗が閉鎖されるという事態になっています。以下、レイバーネット日本からの転載です。

-----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
東京東部労組:「業務スーパー」7店舗で無期限ストライキに突入!(レイバーネット日本)

全国一般東京東部労組の須田です。 以下、エス・インターナショナル支部の無期限ストライキ突入の報告です。

【東部労組エス・インターナショナル支部】「業務スーパー」7店舗で無期限ストライキに突入!

全国一般東京東部労組エス・インターナショナル支部は7月18日午後1時から、菅井麻貴社長らによる会社破産の策動に対抗し労働者の雇用を守らせるための無期限ストライキに突入しました。これによってエス・インターナショナルの子会社(株式会社ケヒコ)が北海道で運営している「業務スーパー」7店舗が臨時休業になりました。

ストライキによって休業になったのは「業務スーパーすすきの狸小路店」「業務スーパー苫小牧店」「業務スーパー苫小牧東店」「業務スーパー室蘭店」「業務スーパー岩見沢店 」「業務スーパー滝川店」「業務スーパー旭神店」の7店舗です。いずれも午前から営業中でしたが、午後1時を期して店舗入口に組合員が「ストライキ決行中」の貼り紙を掲示して休業となりました。

今回の無期限ストライキは前回6月29日に業務スーパー6店舗で決行した時限ストライキに続くものです。菅井社長は時限ストライキ後も自らの会社資産の私的流用などの放漫経営を反省しないどころか、会社弁護士と結託し会社の破産と労働者の解雇を策動しました 。組合側はすべての労働者の雇用継続を前提とする「自主再建」を要求しましたが、これに対しても社長が全面拒否する不誠実な対応を取ったため、組合は敢然と無期限ストライキに突入しました。

お客さまや関係各所の皆さまには大変ご迷惑をおかけしますが、すべての責任は上記のとおり経営陣の不誠実な対応にあることをぜひご理解ください。自らの私腹を肥やすために犯してきた様々な経営ミスを労働者になすりつけ、最後まで労働者の雇用と生活を犠牲にしようとしている菅井社長の策動をわたしたちは断じて許すわけにはいきません。

経営陣が誠意ある態度で解決を図るのであれば、ただちにストライキを解除する用意はありますが、経営陣が不誠実な対応を続けるのであれば、当労組も闘いを断固として継続していく決意です。

みなさんからの菅井社長への抗議ならびに組合へのご支援をよろしくお願いします!

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「東アジア反日武装戦線」とその時代

2024-01-27 20:55:01 | 共産趣味/労働問題(公共交通・原発除く)
指名手配の桐島聡容疑者?神奈川で入院 本人と認め、病院側が通報(毎日)

------------------------------------------------------------------------------------------
 1974~75年の連続企業爆破事件で、爆発物取締罰則違反容疑で指名手配されている過激派「東アジア反日武装戦線『さそり』」メンバー、桐島聡容疑者(70)とみられる人物が神奈川県内の病院で見つかり、警視庁公安部が事情を聴いていることが捜査関係者への取材で判明した。公安部が桐島容疑者かどうか確認している。桐島容疑者は約50年にわたり逃亡を続けており、公安部は身元が確認でき次第、長年にわたる逃亡生活の実態解明を進める。

 捜査関係者によると、桐島容疑者とみられる人物は神奈川県鎌倉市内の病院に入院していた。当初は違う名前を名乗っていたが、25日に桐島容疑者本人と認める話をしたことから、病院関係者の通報を受けた神奈川県警が警視庁に連絡した。病状は重篤だといい、公安部は慎重に対応を進めている。

 公安部は、本人確認をDNA型鑑定などで進める方針だが、新たに親族から試料を採取するなどの対応が必要とみられ、捜査関係者は「時間がかかるのではないか」と話している。

 桐島容疑者は75年4月18日夜、東京都中央区銀座7のビル5階にあった韓国産業経済研究所の入り口ドアに手製爆弾1個を仕掛け、翌19日未明、時限装置で爆発させたとして指名手配されている。

 桐島容疑者の時効は、事件を共謀したとして逮捕・起訴された大道寺あや子容疑者(75)が、日本赤軍がインド上空で日本航空機をハイジャックした「ダッカ事件」(77年9月)で超法規的措置で釈放され、国外逃亡したことから停止している。共犯者の公判中は時効が停止するという刑事訴訟法の規定に基づくもので、公安部が行方を追っていた。

 桐島容疑者は広島県出身。事件当時は明治学院大の4年生だった。【木下翔太郎】

<連続企業爆破事件>

 反帝国主義や反植民地主義を掲げるテロ組織「東アジア反日武装戦線」が1974年8月~75年5月、三菱重工など旧財閥系やゼネコンなど海外進出する日本企業を標的に起こした事件。計12事件で8人が死亡し、多くの重軽傷者が出た。東アジア反日武装戦線には「狼」「大地の牙」「さそり」のグループがあり、桐島聡容疑者は「さそり」に所属していた。
------------------------------------------------------------------------------------------

年明け早々、日本共産党で史上初の女性委員長が誕生したと思ったら、今度は「東アジア反日武装戦線」メンバーの桐島聡容疑者とみられる人物が末期がんを患い、神奈川県内の病院に重篤な状態で搬送されてきたことが判明したという。

「趣味者」の世界も、定期的にネタが投下され、唯一元気な「朝鮮クラスタ」(北朝鮮中心にウォッチしている趣味者)以外はネタにも乏しく、休業か廃業している人がほとんどだが、なぜかここに来て「趣味者」の本能を刺激する出来事が国内で相次いでいる。やはり時代は平穏から激動への転機なのか。

私が、東アジア反日武装戦線と聞いて最初に思い浮かべたのは「腹腹時計」(はらはらとけい)である。この言葉を知っているのは、当事者でなければ趣味者くらいだろう。普通の健全な人たちは知らなくて当然だし、世の中には知らないほうが幸せなこともある。たぶんこれもそのひとつに違いない。東アジア反日武装戦線のうち「狼」に属している人物、具体的には記事中に登場する大道寺あや子容疑者の夫、大道寺将司容疑者によって書かれたとされる爆弾製造法解説書である。単なる爆弾製造法の解説にとどまらず、都市におけるゲリラ戦術についても記載しているとされ、おそらく戦後日本で「球根栽培法」などと並ぶ「最危険文書」だといえる。

警察施設には桐島容疑者の指名手配写真が必ずと言っていいほど貼られているので、これまでも運転免許の更新などの際に何度も見てきた。他の指名手配容疑者は人相も悪く「いかにも」な感じを受けるが、桐島容疑者だけは学生時代の指名手配ということもあり「好青年」に映っている。こんな過激な左翼運動に身を投じず一般社会で普通に生きていれば、たぶん私なんかよりよほど女性にもモテていたんじゃないかと思うこともある。

東アジア反日武装戦線のことを歌ったと思われる曲がある。「おちめタンゴ2(ふたたび)」という曲である。検索した限り、リンク先のニコ動以外にはアップされていないようだ。Youtubeと違って当ブログへの埋め込み方がわからないので、気になる方はリンク先に飛んでほしい。

『腹腹時計に惑わされ ゲバ棒メットを投げ捨てて 模範市民を装って 爆弾仕掛けたこともある 目覚まし時計で足がつき/服毒自殺もできかねて 今じゃ時計の修理工』という一節は間違いなく、爆弾闘争に走った左翼を笑うものだ。「爆弾仕掛けた」の部分が聴き取れないように音声にボカシを入れたバージョンもある。

この曲を発表したのは「まりちゃんズ」という謎のグループである。1974~1976年の3年間しか活動期間がないが、世間に挑戦するような曲を次々発表したあげく、そのほとんどが要注意歌謡曲(いわゆる「放送禁止歌」)指定を受けた。そもそもデビュー曲のタイトルが「ブスにはブスの生き方がある」だから凄い。「戦後日本で最も強くなったのは靴下と女性」だといわれ、ウーマンリブ(女性解放)運動が最も華やかに展開されている時代にこれを発表したのだから、どれだけ命知らずなグループかわかるというものだろう。本人たちはパンクバンドと称しているが、コミックバンドに分類され、徹頭徹尾、悪ふざけを演じきったグループだった。

今の若い人には想像ができないかもしれないが、「ひろゆきや日本維新の会がバンドを組んだらこんな感じになるんじゃないか」といえばイメージできるかもしれない。ただ、まりちゃんズに比べたら、ひろゆきも維新も弱い者いじめが過ぎて少しも面白くない。悪ふざけという意味では同じだが、「理想実現」のためなら無差別に一般市民を巻き込むテロリストを笑うという意味では、まりちゃんズのほうがはるかに健全だ。

まりちゃんズは、1990年代に入って再結成され、「尾崎家の祖母(おざきんちのばばあ)」という曲がプチヒットした。私が彼らを知ったのもこの曲を通じてである。「KaraGen~湘南 から元気倶楽部 Cafe」というサイトの「スーパーパンクバンド ”まりちゃんズ”」というコーナーでこのバンドのことが紹介されている。あまりに詳しすぎる内容で驚かされるが、このサイトの管理人「静炉巌(せいろがん)」氏が「まりちゃんズ」のかつてのメンバー、尾崎純也氏ではないかというのが私の推測である(このサイトを詳しく見ていけば行くほど、そうとしか思えなくなってくる)。もし私のこの推測が正しいなら、「尾崎家の祖母」は尾崎純也氏の実在の祖母を歌った曲かもしれない。

最後はあらぬ方向に話が逸れてしまったが、桐島容疑者は半世紀近く、神奈川県内の土木会社で偽名を使って働いていたと報道されている。まりちゃんズが歌ったとおり「模範市民を装って」いたことになる。警察の任意の事情聴取に対し、「最期は本当の名前で迎えたい」との意向を示しているとされる。それならば、桐島容疑者には命あるうちにお願いしたいことがある。自分が若き青春時代を懸けた爆弾闘争について、ひとことでいいので謝罪してほしいのだ。

「東アジア反日武装戦線」が暴れ、「まりちゃんズ」がそれを腐していた時代まで、日本では左翼にもそれなりの支持があった。だが、連合赤軍による一連の事件や東アジア反日武装戦線に代表される爆弾闘争以降、左翼は坂道を転がり落ちるように支持を失っていった。それから半世紀経った今なお、左翼退潮は止まることなく続いている。

もちろん、過激なテロ・ゲリラ闘争のなかった諸外国でも左翼はおしなべて退潮しており、彼らだけにその原因すべてを求めるのも無理があろう。だが、海外で社会主義に復権の兆しが見えてきている中、日本でだけその兆しが見えない原因にこれらテロ・ゲリラ闘争を挙げたとしてもそれほど外れていないと思う。あの時代、爆破された企業ビルの中で働いていたのは、労働力を資本家に売る以外に生活のすべを持たないという意味で間違いなく「労働者」だった。「理想社会」が実現したあかつきには、ともに労働者として汗を流す「仲間」になるべき人だったはずである。それら罪のない労働者を無差別に巻き込むことは、いかなる理由があろうとも正当化することはできない。たとえあの頃が「そういう時代」だったとしても。

今、昭和の時代さながらの古い価値観から脱却できず、性加害・セクハラ・パワハラを続けてきた人物が、新しい時代の新しいルールに従って次々に告発されている。今を生きる人たちにとっては、「500年後の人類にも胸を張って正しいといえるかどうか」を確認してからでないと行動に移せない難しい時代になった。当然、社会変革も新しい時代にふさわしい形にリニューアルしていく必要がある。だが、そのために努力している多くの人たちが一般市民の支持を取り付ける上で「あの時代」が邪魔をしている。だからこそ、無差別に一般市民を巻き込むという取り返しのつかない過ちを犯した「桐島さん」(ここではあえてこう呼びたい)にとって「謝罪すること」が残された最後の役目だと私は思うのだ。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

共産趣味者の目で見た日本共産党の現在と「これから」(3)~初の女性委員長体制、船出

2024-01-21 23:29:13 | 共産趣味/労働問題(公共交通・原発除く)
共産、女性初の委員長誕生 問われる独自色 イメージ刷新なるか(毎日)

------------------------------------------------------------------------------------------------------
 共産党の志位和夫委員長(69)が18日退任し、後任に田村智子政策委員長(58)が就いた。共産は約23年ぶりの党首交代と「女性初の委員長」の誕生で党のイメージ刷新を狙う。党勢回復に向け、独自色を打ち出せるのか手腕が問われる。

 「10年先、20年先を展望し、未来に責任を果たせる条件を整えた」。志位氏は18日、党大会閉会のあいさつで新指導部の若返りを図ったことを説明すると、会場は万雷の拍手に包まれた。

 志位氏の後任候補として田村氏に対する党内外の注目が高まったのは、岸田文雄首相が衆院解散を見送った2023年通常国会の閉会直後だった。小池晃書記局長(63)は6月23日の記者会見で、参院議員の田村氏が次期衆院選でくら替えし、比例代表東京ブロックから立候補すると発表。穀田恵二国対委員長(77)と笠井亮衆院議員(71)の今期限りの政界引退も明らかにした。翌年の党大会をにらんだ準備と受け止められた。

 田村氏は19年11月の参院予算委員会で、首相主催の「桜を見る会」を巡り、安倍晋三首相(当時)を追及し「次世代のエース」(党関係者)と目されてきた。翌20年1月の党大会で女性初の政策委員長に起用され、23年11月の第10回中央委員会総会では、今回の党大会決議案を報告した。これは従来、主に志位氏が担ってきた役割で「次期委員長候補」を強くアピールする形となった。

 歴代委員長は党ナンバー2の書記局長(旧書記長)を10年以上務めた後に就任したケースが多いが、田村氏は書記局長の経験がない。女性が起用されたのも政策委員長の時に続いて初めてで、女性の登用に積極的な姿勢を前面に押し出した格好だ。

 共産党が思い切った人事に踏み切った背景には国政選挙で退潮が続いていることがある。直近の22年参院選まで4回連続で議席を減らし、次第に党員の不満の矛先は在任期間が長期化する志位氏に向けられた。23年、党政策委員会の安保外交部長を務めた松竹伸幸氏が記者会見し、党員の直接投票で党首を選ぶ「党首公選制」の導入を訴えたのは象徴的な出来事だった。

 党のイメージ刷新を期待される田村氏だが、党運営の経験不足の面は否めず、言動には不安も残る。

 ロシアのウクライナ侵攻が始まって間もない22年3月の記者会見では、ウクライナに自衛隊の防弾チョッキなどを提供する政府方針を巡り「人道支援としてできることは全てやるべきだ」と容認。翌日、緊急会見を開いて訂正する事態に追い込まれ「防衛装備品の供与は党が反対してきた武器輸出にあたる。我が党として賛成できない」と党見解を読み上げた。

 志位氏が就任した「議長」は、委員長と同じ「党首」という位置付けだ。小池氏も書記局長を続投するため、両氏が引き続き党運営の主導権を握る可能性もある。田村氏が新たな党のイメージを確立できるかまだ見通せない状況だ。【加藤明子】
------------------------------------------------------------------------------------------------------

日本共産党は、1月15日から18日まで4日間、静岡県熱海市の「党伊豆学習会館」で党大会を開催。注目の党役員人事については、最終日の18日に承認された。私が昨年11月23日付記事「共産趣味者の目で見た日本共産党の現在と「これから」(1)」及び翌24日付記事「共産趣味者の目で見た日本共産党の現在と「これから」(2)」で予想したとおり、田村智子副委員長兼政策委員長が委員長(幹部会委員長)に昇格した。デイリー新潮の記事を元に、私が書記局長就任を予測した山添拓氏は田村氏の後任の政策委員長となり、こちらの予測は外れた。予測は「半分だけ的中」したことになる。

だが、改めて考えてみると絶妙な人事だと思う。かなり前から周到な準備を進めてきたことは間違いない。それがよく現れているのが小池晃書記局長の留任だ。

日本共産党の書記局長は、党務全般を日常的に点検しながら取り仕切る。ある意味ではトップの委員長より重要な役職で、他党でいうところの幹事長に当たる。かつては社民党の前身・日本社会党にも「書記長」のポストがあり、公明党・民社党も委員長・書記長制を採るなど、「書記」の名称は割と一般的だった。それが変わっていったのは、1989~91年にかけて相次いだ東欧社会主義諸国やソ連の解体が大きい。社会主義国のイメージや威信の低下で、社会主義をイメージさせる委員長、書記長などの役職名が党首、代表、幹事長など、どちらかというと保守政党をイメージさせるものに相次いで変わった。国会に議席を有する主要政党の中では、社会主義を放棄していない日本共産党だけいまだに委員長、書記局長の役職が残っている。

日本共産党でわかりにくいのは幹部会、常任幹部会という組織があることだろう。今回、田村氏が就任したのは幹部会委員長で、常任幹部会はその直属機関として党大会や中央委員会総会での決定事項を実施する「執行機関」に当たる。企業でいうところの取締役会に当たるといえばわかりやすいかもしれない。幹部会は、かつては政治局と呼ばれていたが1958年に改称された。「趣味者」である私から見れば、この改称は疑問であり、政治局のほうが共産主義政党らしくていいのに、と思ってしまう。

日本共産党では、従来は書記局長経験者が幹部会委員長へ、順当に昇任してきた。書記局長として党務全般に通じてから幹部会委員長を務めるというのは、組織のトップには実務経験が必要という意味では当たり前のことだろう。田村氏は、今回、この慣例に従わない異例の委員長選出となった。政策には通じているが党務全般を取り仕切る経験をしないまま委員長に就任したのだから、党務を補佐するには最低限、経験豊富な人物が必要になる。小池氏を留任させる必要性はここから説明できる。

一方で、小池書記局長は、政策委員長時代の田村氏に対する言動がパワハラだとして党から処分を受けている。その責任は取らなくてよいのかと思わなくもないが、自分の部下だった田村氏が自分を飛び越えて「上司」となったのだから、ある意味では書記局長を外されるよりも「見せしめ」効果はあるかもしれない。部下が上司を飛び越える「逆転人事」--そんな民間企業のようなことを、官僚主義の権化であるこの党がよもや実際にするとは夢にも思わなかった。

新人事案を承認し、党大会が閉幕した18日。午後7時のNHKニュースは日本共産党大会閉幕のニュースを、能登半島地震に次いで2番目で扱った。一度も政権を担当したことのない政党の大会としては異例の取り扱いだと思う人もいるかもしれない。だがそこは日本で唯一、戦前から102年続く党の歴史がそれだけ重いものであると同時に、政権を担当することだけが政党の役割ではないということを改めて認識させてくれる。政府与党を徹底的に批判・追及し、不正を暴き、窮地に追い込んで、自分たちの政策を政府与党が採用せざるを得ない状況を作り出せば、野党でも望む政策を実現させられること、「政権交代できない」と「自分たちの望む政策が実現できない」は必ずしもイコールでないことを、揺れ動く政局の中で何度も証明してきたのが日本共産党だった。

だからこそ私は、「日本だけなぜ政権交代できないのか」と嘆いている人たちに伝えたい--「自分たちの望む政策を政治段階で実現する上では、政権交代だけが選択肢ではない」と。ただ、それを実現する上で、現在の自公政権の議席はあまりに多すぎる。与野党逆転か、せめて伯仲状態を作り出すことさえできれば、誰が首班のどんな政権に対しても、自分たちの要求・政策を突きつけ、呑ませることが可能になるのである。

商業メディアは、日本共産党人事について「相変わらずの密室決定」だと批判している。一方で日本共産党自身は「民主集中制原則を今後も変えるつもりはない」と表明している。この民主集中制は民主主義的なのかそうでないのか。私が見る限り、事実は「その中間」にある。

日本共産党では、一般党員「○人につき代議員○人」という形で大会代議員が選ばれる。その代議員が党大会で中央委員会総会メンバーを選出する。党大会を一時休憩して第1回中央委員会を開催し、中央委員会メンバーが幹部会を選出。ここで幹部会委員長も選ばれる。幹部会は最高指導部に当たる常任幹部会を選出する。ここで決定された人事案を、再開した党大会に提案し、承認を経る--人事はこのようなプロセスで進む。

党員の中から選ばれた代議員が中央委員会総会メンバーを選び、その人たちが幹部会メンバーを選ぶのだから、確かに反共勢力が宣伝するように直接選挙ではないが、間接選挙は実現している。反共宣伝をしている人たちの中には自民党支持者も多いだろうが、では自民党は共産党を「密室」と批判できるほど公平で透明な選挙をしているのか? 断じて否である。自民党の党則では、一般党員・党友が参加する総裁選挙をできることになっているが、最近はご無沙汰であり、ほとんどが国会議員総会で総裁を選ぶ流れが定着している。これにしても、国民・有権者が選んだ自民党国会議員が総裁を選ぶのだから、直接選挙か間接選挙かでいえば間接選挙であり、結局は共産党と変わらない。

それでも、直接選挙を「ルール上できるようになっているけれど、諸般の事情でしない」(自民党)のと、「ルール上できない」(共産党)のとでは大きな違いがあり、やろうと思えばできる分だけマシだと、おそらく保守派は自民党を擁護するのだろう。しかし、直接選挙のルールがあっても発動されないなら、それは実質的にないのと同じなのではないか? 一般党員・党友が参加した自民党総裁選は、安倍政権として自民党が政権復帰後、もう10年以上一度も行われていないが、それで共産党を批判できる資格があるのか? 政党交付金を1円も受け取らず、党員・支持者からの寄付と事業収入だけで党運営をしている日本共産党を批判する資格が、「全派閥裏金まみれ」の自民党にあるとでも思っているのか? 自民党支持者は反共宣伝などする暇があったらよくよく考えるべきだろう。

日本共産党として「初の女性委員長」人事に対しては「所詮は看板を掛け替えただけ。民主集中制原則が変わらない限り、何も期待できない」という批判が早速出されている。私の活動仲間の中でもそのように考える人がいる一方で、「組織は人間が作るもの。党員の活動のあり方次第で、それなりの刷新感くらいは出せる場合もあり得る」と肯定的に評価する向きもある。私は若干の期待も込めて後者の立場を取る。

「所詮何も変わらない」という人は、田村新体制が発足してまだ1日なのに、何を期待しているのだろうか。「朕は国家なり。太陽を西から昇らせること以外、朕に不可能なことなどない」と我が世の春を謳歌していた皇帝が、翌日にはギロチンで首を落とされるような激変に期待でもしているのだろうか。だとしたらあまりに社会というものに対して無知すぎるし、おめでたいというしかない。社会の変革は、何より下部構造である生産様式、生活様式が資本主義的なスタイルからそれ以外のスタイルに変わることなしには実現しない。社会はずっと複雑であり、変化は長い歴史の変革過程を経ながら進む。日本共産党の新体制は、そのような社会変革の最初の1日を刻んだに過ぎないのである。

これまでも、これからも、日本共産党に限らずあらゆる組織は人間が作り動かすものであり、その活動のあり方次第の部分は大きい。実際、私自身は党員ではないが、「下級は上級に従う」という鉄の規律を持ちながらも、党内での大激論を経て、下級が上級の決定を覆した例がいくつもあることを知り合いの党員から聞いている。幹部が誰であろうとも、日本共産党はひとりひとりの党員が参加し、作る党である。小選挙区制という害悪に行く手を遮られ、国会では少数勢力であっても、日本共産党が102年の歴史の重みを胸に、国会外での闘いとも結合させながら、他の野党にない持ち味を発揮して党勢を衰退から立ち直らせ、再び盛り返してくれることに期待する。生活苦にあえぐ民衆を代表する党は、日本では今ここ以外にないのだ。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

共産趣味者の目で見た日本共産党の現在と「これから」(2)

2023-11-24 23:05:29 | 共産趣味/労働問題(公共交通・原発除く)
昨日、「共産趣味者の目で見た日本共産党の現在と「これから」」を書いたら思わぬ反響があった。そこで、昨日書き忘れたことを少し追加で述べておきたい。急遽、昨日の記事を(1)、この記事を同じタイトルで(2)としている。

私は志位氏を評価していないわけではない。むしろ高く評価している。志位氏が初めて書記局長に選出されたのは35歳の時である。だから、現在38歳の山添拓氏が来年1月の党大会で書記局長に選出されても違和感はない。

志位氏が書記局長に選出された1990年は、日本共産党的には大逆風の年だった。この前年、1989年に相次いで東ヨーロッパの社会主義体制が倒れ、中国でも天安門事件が起きた。日本共産党は、東欧諸国の共産党や中国共産党と名称が同じというだけで「一党独裁」「自由、民主主義弾圧」のレッテルを貼られ、暗いイメージを払拭する必要に迫られていた。

西側諸国で最大規模の共産党だったイタリア共産党が、左翼民主党に党名変更して再出発を始めた時期のことだ。記者会見で、メディアから志位氏に「日本共産党もイタリア左翼民主党のように党名変更するお考えはありませんか」という質問が飛んだ。それに対して若き書記局長はこう答えたのである--「党名変更したって、あなた方マスコミは『旧共産党』と呼ぶんでしょう? それなら私たちは、歴史的に誇りある日本共産党の名前のままで活動を続けます」。記者からの「茶化し質問」を一蹴する志位氏の姿に若々しさ、清新さ、まばゆさを覚えたあの日の会見を私は今も忘れない。

それから早くも30年--結果的に、このときの志位氏の「読み」は正しかった。信じられないと思う人は、悪いイメージを刷新するために名称変更した組織--最近の例でいえば「世界平和統一家庭連合」「SMILE-UP.」「X」が世間でどう呼ばれているか思い出してみるといい。「旧統一教会」「旧ジャニーズ」「旧ツイッター」といまだに呼ばれている。一度ついてしまった悪いイメージの払拭はそんなに簡単ではないのである。

イタリア左翼民主党は今、存在していない。旧統一教会にはこの先、解散命令が下るかもしれない。ジャニーズも退所者が相次ぎ、存続は見通せない。ツイッターも混乱続きで往時のあの勢いはどこに行ったのだろうか。結局、名称変更した組織はどこも成功していない。もし日本共産党がイタリア共産党のように党名変更していたら、おそらく今ごろ存在していなかっただろう。当時の最大のピンチを乗り越えたのはやはり志位氏の手腕があったからだ。

だが、その志位氏もさすがに耐用年数が切れたように思える。特に、筆坂秀世氏のような女性問題であれば除名も致し方ないと世間も納得するが、「自分と意見が違う」ことを理由に除名したのは決定的な悪手だった。日本共産党の「幹部除名史」を振り返ると、筆坂秀世氏の前の大物除名は野坂参三。党名誉議長まで上り詰め、党員にとって神のような存在だったが、ソ連時代に同志をスターリンに密告し、処刑という運命に陥れていたことが晩年に判明し、除名となった。これも党にとって重大な裏切りに他ならず、世間が納得する除名だった。

「中央と意見が違う」ことによる大物除名は、党として反対を決めた部分的核実験禁止条約に国会で賛成票を投じたために除名された志賀義雄や、彼に同調した中野重治(1963年)あたりまでさかのぼらなければならないかもしれない(ちなみに中野重治は有名なプロレタリア作家で、私たちが子どもの頃は教科書にも作品が載っていた)。今回、松竹伸幸氏らに対して志位氏が取ったのはそれほどの悪手だったのだ。

長く「共産趣味者」を続けてきた当ブログから見て、次に除名処分を受けそうな党員の目星はついている。共産趣味界隈では有名なブログ「紙屋研究所」の管理人、紙屋高雪氏である。2018年に行われた福岡市長選に出馬したこともある地方幹部だったが、松竹問題発生後の今年5月以降、全役職を停止され自宅待機の憂き目に遭っている。「休み明けの日は一応決まっているけども、本当にその日に休みが明けるのかどうかはよくわからない。これまでの人生では、そんなことはなかった」とご本人は述べている(「長い休み」)。この人物に対する処分を日本共産党が決定できないでいるのも、おそらく「田村新体制発足」が近いからだろう。場合によっては新執行部が判断することになるかもしれない。

昨日のブログでも書いたが、日本共産党にはもっと開かれた組織になってほしい。岸田政権の評判がこんなに悪く、自民党支持者でさえ見放しているのに、それでも倒れないのは野党がだらしないからである。付き合いのある新聞記者から聞いたことがあるが、「日本で次に政権交代が起きるとすれば、自民党が割れるときか、共産党が変わるときしかない」が政治記者の間での共通認識になっているという。

自民党が割れない以上、日本の政治の変革はひとえに日本共産党が変われるかどうかにかかっている。党名は今のままでもいいから、今よりも民主主義的な衣を身にまとい、無党派層が投票してもいいと思えるような党に変わったら、そのときこそ日本政治の夜明けが来る。だからこそ、2024年1月の日本共産党大会はかつてない重大な大会になるし、目が離せないのである。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

共産趣味者の目で見た日本共産党の現在と「これから」(1)

2023-11-23 22:25:49 | 共産趣味/労働問題(公共交通・原発除く)
以前から当ブログでは何度か言及しているが、私には「共産趣味者」という一面がある。平たく言えば社会主義国(「元社会主義国」を含む)や世界各国の共産主義諸政党の動向を観察することを趣味とする人たちのことである。その共産趣味者としての一面で見ていると、最近の日本共産党には大いなる憂慮を感じざるを得ない。

日本共産党が組織的に大きく動揺するきっかけとなったのは、いうまでもなく今年1月、古参党員の松竹伸幸氏が自著の中で公然と党首公選制を要求し、党を除名されたことだ。民主集中制を原則とし「下級は上級に従う」という鉄の規律を持つ日本共産党とはいえ、党員、それも幹部や古参党員の除名といった話は、女性問題を起こした筆坂秀世氏以来、20年近く絶えて久しく、このご時世にあり得ないことだと私も思っていた。それだけに、松竹氏らの除名処分は驚きをもって迎えられた。

21世紀も5分の1が過ぎた2020年代である。日本共産党が不倶戴天の敵としている自民党でさえ、(最近はご無沙汰のようだが)一般党員・党友が参加してのオープンな総裁選を「やるときはやる」のに、ブルジョア階級支配を乗り越えて共産主義社会を目指す党が、労働者階級で構成される一般党員を党首選に参加させないでどうする、と私などは思ってしまう。私の周辺にいる人々もおおむね同じ意見であり、日本共産党がもっと開かれた組織になってほしいと願う人々は広範に存在する。

これまでも日本共産党は京都で異常に強かったが、それは「保守層にも顔が利き、対話もできる」松竹氏のような柔軟な党員が多く存在し、地元での党活動を通じて中間層のみならず、広く保守層の一部からの支持までも取り付けてきたからだと私は思っている。その多くが日本共産党系出版社で、京都に本社を置く「かもがわ出版」を拠点としてきた。かもがわ出版は、当ブログが「打倒対象」としている開沼博らを起用し、放射能被曝による健康影響を真っ向から否定する「しあわせになるための福島差別論」を出版するなど、決して許されない政治的過ちも多数犯してきた。外国からの「急迫不正の侵害」があった場合、国民合意があれば自衛隊を活用してもよい、とする自衛隊活用論を松竹氏らが唱えたことも、私は政治的過ちだと思っている。

それはともかく、現代民主主義社会では人々の意見は多様であり、その多様性を尊重することが組織運営の原則でなくてはならない。自衛隊活用論、放射線被曝の否定、そして一部党員による「性表現の自由を保障すべき」という意見も、私自身は日本のジェンダー不平等状態を見るととても容認する気になれない。ただ、日本共産党の中にそうした意見を唱える党員がいること自体は否定できない事実だし、彼らを幹部に登用するのは困難だとしても、党内民主主義を保障する手段として、そうした党員や意見の存在そのものは黙認しておく、という大人の対応もとり得たはずである。

そうした中、今年6月30日付けで「デイリー新潮」が「共産党で22年居座る「志位委員長」後釜の本命候補は女性議員 順調に行けば来年1月にもトップへ」という記事を配信したときは率直に驚いた。2024年1月に予定されている党大会で、日本共産党が田村智子副委員長兼政策委員長を委員長に昇格させ、山添拓氏を書記局長に据えるというものだ。しかも会員制月刊誌「FACTA」も2023年8月号で「共産党初の女性委員長「田村智子」の超インパクト」と題する記事で追随している。

さすがに、いくらなんでもそれはあるまいと私自身もつい最近まで懐疑的だった。第一あまりに大胆すぎる。だが、最近の各メディアの報道を見ていると、この人事の信憑性は高まってきたように思う。特に、NHKの共産党をめぐる最近の報道ぶりには非常に興味深いものがある。

---------------------------------------------------------------------------------------------
共産党 党大会の決議案示す“衆院選 野党共闘の再構築へ努力”(2023年11月13日)

共産党の中央委員会総会が開かれ、来年1月に予定される党大会の決議案が示されました。次の衆議院選挙に向けて野党共闘の再構築のため努力を続けるなどとしています。

共産党の中央委員会総会は13日、党本部で開かれ、志位委員長があいさつし、今の政治情勢について「岸田政権への国民の批判と不信の声が日増しに高まり、政権末期に近い様相を呈している」と指摘しました。

そのうえで「日本の政治を変える道は『市民と野党の共闘』しかないという立場に変わりはない。総選挙では、共産党の躍進の実現を最優先の課題とし、最大の力を集中する」と述べました。

そして田村政策委員長が、来年1月に4年ぶりに開かれる党大会で提案する決議案を示しました。

決議案では、次の衆議院選挙について、比例代表で躍進することを軸に据えて議席の増加を目指すとともに、野党共闘の再構築のため可能な努力を行うとしています。

また、党内で女性の議員や候補者を増やし、女性幹部を抜てきすることも含めジェンダー平等などを実現し、国民の多数から信頼される党に成長していくため、あらゆる努力を重ねていくとしています。

決議案は、党の活動方針となるもので、これまで通常、志位委員長が説明していましたが、13日は決議案を作成した責任者として田村政策委員長が説明しました。
---------------------------------------------------------------------------------------------

私が特に注目したのは最後の一文である。

日本共産党のように規律を重んじ、「下級は上級に従う」が原則の組織で、通常、委員長が行うべき職務を下位の役職の者が代行するなどということはあり得ない。旧ソ連や中国の共産党を見ても、こうしたことが行われるのは、本来その職務を行うべき者が病気などの重大事態で職務を執れない場合に限られる。旧ソ連では、共産党書記長の仕事を誰か他の人物が代行しようものなら、すぐさま「書記長重病説/死亡説」が流され、西側諸国のメディアは「書記長死去」予定稿の作成を始めるのが常だった。トップが健在であるときにそうしたことを行えば、それはトップの威信を傷つけレームダック(死に体)化を加速させるだけで、事実上政治的メリットはまったくないのである。

日本共産党は「通常、志位委員長が説明していましたが、13日は決議案を作成した責任者として田村政策委員長が説明しました」などともっともらしい説明をしているが、決議案を書いた本人だからといって誰もが決議案の説明者になれるわけではない。これが仮に、決議案を書いたのが末端のヒラ党員だったとして、その党員に対し、幹部会が「お前が書いたんだからお前が読め」なんてことがあるだろうか。官僚的な体質の組織ほど、あるわけがないのだ。

このように考えると、合理的な結論は1つに絞られる。「今回は田村政策委員長が決議案を書いたから、書いた本人に提案してもらうという異例の形を取りました。しかしこれは今回限りの措置であり、次の中央委員会からは田村さんが『正式な提案者』となる予定ですから、すべての日本共産党員はそのつもりでいるように」という党中央からのメッセージと考える以外にないのである。

考えてみれば、松竹氏と、それに連なって党首公選制を求めるメディアには猛烈な抗議や訂正要求を繰り返してきたこの党が、デイリー新潮の先の記事には抗議や訂正要求もしたとは聞かない。こうしたことも、私がこの人事の信憑性を高いと判断する根拠になっている。

おそらく、年明け1月に開催予定の党大会では、志位和夫委員長が議長に退き、田村智子委員長、山添拓書記局長とするデイリー新潮見立て通りの人事案が提案され、承認されることになるであろう。この人事がもたらすインパクトは、「FACTA」誌報道の通り大変大きなものになる。山添氏はまだ30代で若すぎるのではないかという人もいるかもしれないが、志位氏も30代で書記局長になったのだから何ら問題はないはずである。

今の野党第1党である立憲民主党には、もはや政局を左右できるほどの力はない。維新は、その力を持てるのではないかとの幻想を有権者に抱かせた時期もあったが、大阪万博をめぐる経費の膨張や税金無駄遣い批判で怪しくなってきている。国民民主党は、玉木雄一郎代表の個人的人気は高いが、自民党擦り寄り路線で成功した保守政党はない。それに引き替え、日本共産党は国会では小勢力でも、野党全体を動かし政局にするだけの力を持っている。新人事で世間をあっと驚かせることができれば、党員除名による暗いイメージは払拭され、新年以降の「野党政局」は日本共産党ペースで進むことになる。野党共闘に向け大きく動く起爆剤になるかもしれない。

こうした情報は、NHKが報じるくらいだから当然、官邸にはもたらされているだろう。だからこそ岸田政権が少しでも長く命脈を維持したいなら、日本共産党の新体制が軌道に乗る前に解散総選挙を仕掛けなければならないのに、岸田首相はみずから年内解散を封じてしまった。このまま年明けの通常国会召集までに解散総選挙を打てなければ、岸田政権は日本共産党の劇的復活によりのたれ死にすることになるかもしれない。

2024年は、新年早々日本共産党から目が離せない。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【転載記事】晴れやかで、凜々しいストライキ!/「そごう・西武労組」が雇用維持を求めて立ち上がる(レイバーネット日本より)

2023-08-31 21:59:25 | 共産趣味/労働問題(公共交通・原発除く)
以下の記事はレイバーネット日本より転載しています。写真を見たいときはリンク先に飛んでください。

------------------------------------------------------------------------------------------------
晴れやかで、凜々しいストライキ!/「そごう・西武労組」が雇用維持を求めて立ち上がる

 晴れやか、凜々しい。たたかう「そごう・西武労組」の人々の顔は光っていた。8月31日、「雇用維持と事業継続」を求めて、そごう・西武労働組合はストライキに立ち上がった。大手百貨店では61年ぶりというストライキに、マスコミの取材が殺到した。

 午前9時には支援の労働者や個人が池袋の西武本店前に集まってきた。午前10時、本来ならお店が開く時間である。マスコミは一斉にカメラを入口に向けた。撮影対象は定刻に開店しないデパート入口のシャッターだった。

 午前11時からは「そごう・西武」労組は池袋本店近くの公園に集結し、そこから東口の繁華街を一周するデモ行進を行った。出発集会で寺岡泰博委員長(写真上)は、「きょう一日お客さまにはご迷惑をおかけして心苦しいが、このまま永遠にシャッターが閉まったら元も子もない」と呼びかけた。

 デモ行進の参加者は組合員ら300人以上。若い人が多い。「西武池袋本店を守ろう!」「池袋の地に百貨店をのこそう!」のシュプレヒコールをしながら、東口の繁華街を練り歩いた。ひときわ目立ったのは「ストライキ決行中!!」の赤いプラカードだった。

 デモのマイクアピールでは、「私たちは労働組合だ。だから全国10店舗4000人の雇用を守りたい。そのためには会社の存続が必要だ。社員の心情、地域への影響などが考慮されず、協議がつくされてないまま会社譲渡を決めていいのか」と丁寧に訴えていた。

 またデモの先頭に立つのは、「そごう・西武」の寺岡委員長ら執行部だけでなく、ライバルのはずの高島屋など百貨店組合幹部たちで、「あすは我が身」と顔をそろえた。この問題が一企業をこえて百貨店業界の問題にもなっているのだ。

 この日は気温がぐんぐん上がり炎天下のデモで参加者は汗だらけだった。慣れないデモで、最初はシュプレヒコールの声も小さかった。ところが本店ビルが見えてくるあたりから声のトーンが上がった。そしてコールにあわせてこぶしを突き出すようになっていた。なにか吹っ切れたようだった。ふだんはデパートの販売職だった人がプラカードを手にした。晴れやかで、凜々しいストライキになった。

 デモ後の囲み会見で、61年ぶりのストライキの意義を問われた寺岡委員長はこう答えた。「組合員の全員投票をストを決め、組合の総意として会社に意見をぶつけることができた。そして今回もう一つ大きなステップとして、世論に訴えることができたことだ。競合の百貨店の仲間も加わった。そういう意味で歴史的役割を果たすことができたと思っている」と。

 通行人や街頭の人々の声も組合を支持するものばかり。「池袋はやっぱり西武と東武。池袋には電気屋はもういらない。いろいろあっても西武を残してほしい」という声が聞かれた。しかしこの日午後、親会社「セブン&アイ」が「そごう・西武」を米投資会社に売却することが決定した。「そごう・西武」労組のたたかいは新たな段階に入るが、この日の61年ぶりのストライキは、各界に波紋を広げることは間違いない。(M)

<動画>そごう・西武労働組合のストライキ・デモ/レイバーネット日本


西武池袋本店「ストライキ」で全館休業 親会社セブン&アイ社長「収束に努める」(TBS)


西武池袋本店 スト決行も売却へ 「街の顔」臨時休業で景色一変(ANN)

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

たった1人の反乱が揺るがした「24時間営業問題」 半世紀迎え、曲がり角に来たコンビニ業界

2019-03-25 22:24:42 | 共産趣味/労働問題(公共交通・原発除く)
(この記事は、当ブログ管理人が月刊誌「地域と労働運動」2019年4月号に発表した原稿をそのまま掲載しています。)

 東大阪市のコンビニエンス・ストア、セブン・イレブンの店主が、人手不足を理由に2月1日から24時間営業の休止に踏み切ったところ、セブンイレブン・ジャパン本部から契約解除に加え1700万円の“違約金”を請求された、として各メディアが一斉に報道。最近の“働き方改革”の風潮にも乗る形で一気に社会問題化した。

 日本全体の人手不足化が進む中で、低賃金・長時間労働の象徴的存在であるコンビニには学生バイトはおろか、一時期主流を占めた外国人労働者ですら集まらなくなり、オーナーが身体を壊す極限まで働き続けなければならないという実態の一端が明るみに出たといえるが、一方、半世紀近くの間、24時間営業が当たり前と思われてきたコンビニ業界がその慣行を見直す千載一遇のチャンスが到来したといえよう。背景には約半世紀にわたって日本社会が見て見ぬふりを続けてきた構造的問題もちらつく。今回は、便利さと引き替えに日本社会のあらゆる矛盾も一手に引き受けることになったコンビニ問題の一端に迫ってみたいと思う。

 ●日本初のコンビニは営業時間も「セブン・イレブン」

 今から半世紀近く前の1970年代、日本初のコンビニエンス・ストアは朝7時に開店、夜11時に閉店する形態で営業を始めた。若い方はご存じないかもしれないが、今なお「セブン・イレブン」と呼ばれるのは開業当初のこの営業時間に由来している。当時、毎週土曜日夜8時から放送されていたTBSテレビの伝説の人気番組「8時だヨ!全員集合!!」(ドリフターズ主演)で、教師役のいかりや長介さんが「英語で1から10まで数えてみろ」と出題。志村けんさんなど生徒役のメンバーが「ワン、ツー、スリー、……」と数え始め、「セブン、イレブン、いい気分、開いててよかったー」と数えたところで、いかりや長介さんが机に激しく頭を打ち付けるギャグをご記憶の方も多いだろう。スーパーや酒屋などの個人商店のほとんどが夜7~8時頃までには閉店する時代だったから、当時はこの営業時間でも画期的だったのである。

 その後、福島県郡山市のセブン・イレブンで初の24時間営業が開始。その結果が好調だったことから、24時間営業は他店にも徐々に拡大。少なくとも筆者が学生だった1990年代までには24時間営業はコンビニの代名詞になった。かつての配給制や専売制度の名残で営業に免許や許可が必要だった酒屋などの個人商店の店主が相次いでコンビニに業態転換していったのもこの頃である。世はバブル経済真っ盛り。日本の平均年齢も大幅に若かったから、24時間営業体制のコンビニが人手に困る時代でもなかった。コンビニエンス・ストア(直訳すると「便利な店」)の名の通り、圧倒的な便利さで日本社会に急速に根付いていった。

 ●新自由主義の時代に

 コンビニが24時間営業体制の下、拡大の一途をたどった2000年代はまた新自由主義の猛威が吹き荒れた時代でもあった。それでもまだ日本の平均年齢が若く、量的拡大の余地が残されていたコンビニは拡大スピードを鈍らせながらも、既存店の売り上げ減を新規出店でカバーしながら拡大を続けた。新自由主義的「構造改革」路線の下で、労働者の大量解雇が起こった際には、非正規労働者の雇用の受け皿としてコンビニが大きな役割を果たしたことも事実である。低賃金・長時間労働というきわめて低質な雇用ではあったが、首切りで急場をしのがなければならない大量の労働者の存在によって、24時間営業の維持自体は可能だった。

 団塊世代の大量退職によって、2010年代に入ると日本経済は一気に人手不足に転じた。それでもコンビニは、労働力を若者から高齢者、次いで外国人に求めながらなんとか24時間営業を維持してきた。しかしそれも不可能になり、ついに現場から悲鳴が上がり始めたというのが最近の事態なのである。

 バブル経済のちょうど入口にあたる時代(1980年代末)の国鉄分割民営化から始まった新自由主義の猛威の中、公務員バッシングが横行。公務員削減と並行して行政サービスはどんどん切り縮められ、民間委託されていった。そのような行政サービスの受け皿になったのもコンビニだった。郵便局が担っていた小包サービスもコンビニが拠点になり、やがて住民票の発行など、自治体の基幹業務さえコンビニが担うようになった。コンビニが「重要な社会的インフラ」と認識されるようになったのもこの頃である。もし筆者が「コンビニにとって24時間営業が後戻りできなくなったのはいつ頃だと認識するか」と聞かれたら、この頃だと答えるだろう。

 深刻なトラックドライバー不足で「物流崩壊」「宅配危機」が叫ばれ始めた1~2年ほど前、日本の宅配物流量の約2割を不在再配達が占めるという状況が明らかになった際には、識者と呼ばれる人々までが「コンビニは24時間開いているのだから、そこで受け取れるようにすればいい」と安易なコンビニ物流拠点化を主張するという出来事もあった。さすがにこの主張に対しては「コンビニは物流センターではない」「商品の在庫を置くスペース以外に宅配便の荷物を一時保管するスペースまで設けなければならず、現実的でない」との反対論が出て立ち消えになった。実際、「不在再配達」は独身・単身世帯の集中する都市部で多く、そのような地域ほど用地も不足しているから、不在世帯の宅配便荷物を保管するためだけにコンビニが新たな場所を確保することは無理な相談だった。

 ●夜の治安維持までコンビニにやらせるニッポン

 コンビニが日本で営業を始めた当時と比べて大きく社会情勢が変わった面もある。約半世紀前、夜勤をするのは主に交代制の工場労働者など男性がメインで、女性はそもそも深夜労働が原則として禁止されていたから、深夜に街を歩くのは深夜労働禁止の例外である医療関係者や、繁華街のいわゆる「夜の仕事」の従事者などごく一部の職種の人に限られていた。だが製造業が衰退する一方で、医療や福祉などの対人サービス業が拡大。それに合わせて女性の深夜労働禁止の原則が撤廃された結果、多くの女性労働者が福祉施設等で夜勤などの変則勤務をするようになったという日本の産業構造、雇用構造の変化も見逃せない。本人の意思とは無関係に、仕事上、どうしても夜の街を歩かなければならない女性の数は飛躍的に増えたのである。

 半世紀前であれば、少し大きな駅に行けば、国鉄が貨物や小荷物を扱っていて、そうした仕事は旅客列車の走らない時間帯がメインだったから、多くの国鉄職員が深夜でも仕事をしていた。駅には鉄道公安官もいて、深夜に身の危険を感じても、駅に駆け込めば警察官代わりになってくれることもあった。郵便局でも「特定集配局」は深夜まで仕事をしていた。電電公社(若い読者のために「NTTの前身」と注釈を付けなければならない時代になった)でも深夜の通信トラブルに備えて電話局には職員がいることが多かった。さすがに市町村役場の窓口は閉まっているが、多くの公務員が深夜の街を見守っていた。

 だが、半世紀後の現在、夜行列車がなくなり、貨物列車も大幅に削減されたJRの駅は夜になると閉まってしまう。ここ数年は大都市周辺の駅でも無人化が進んでいて深夜はおろか日中でも無人ということが珍しくない。郵便局も集約が進んだ。警察でさえ本部、本庁中心の組織に再編され現場が軽視されるようになった結果、地域の交番は次第に無人の時間帯が拡大している。その結果、夜道を歩いていて身の危険を感じても駆け込む先が「民間企業」のコンビニしかないという状況が、すでに日本のほとんどの地域で当たり前になっているのである。

 訳知り顔で「コンビニは重要な社会インフラ」として24時間営業継続を主張する自称「識者」たちは、住民票の発行や夜の治安維持までコンビニという「民間企業」に負わせる社会が健全といえるかどうか、寝ぼけているなら顔を洗って再考すべきだ。公務員削減と引き替えに、諸外国なら国や自治体が担って当然とされてきた業務の多くがコンビニに押しつけられてきた結果がこの事態を招いたのである。

 外交と治安維持だけが政府の仕事と考えられていた福祉国家登場以前の時代、そうした国家は「夜警国家」と呼ばれたが、新自由主義が貫徹しすぎて治安維持もやらなくなった国家を私たちはなんと呼べばいいのだろうか。安倍政権が米国トランプ政権から最新兵器をいくら「爆買い」したところで、足下がこんな状況では国民の生命も財産も守ることなどできない。

 ●いつまでもコンビニに甘えず、公共サービス再建を

 こうして考えてみると、私たち日本人は、あまりに便利すぎるコンビニに甘えすぎていたのではないか。「彼らなら何とかするだろう」と面倒ごとはすべてコンビニに押しつけられてきた。コンビニは川の河口と同じで、日本社会の上流~中流域から流れてきた歪みや淀みが最後にたどり着く場所として、この半世紀の日本の矛盾をほぼ引き受けてきたのである。

 夜勤労働者など、どうしても生活をコンビニに頼らなければならない人々も一定数いるから、24時間営業をいきなり全面廃止することは困難かもしれないが、現在、コンビニがやっている業務の多くはコンビニでなくてもよいものばかりである。行政サービスとして「公」の分野で行われるべきものも多い。行き過ぎた新自由主義を転換し、現場の破綻を防ぐ意味からも、コンビニに押しつけられた多くの行政サービスを「公」に戻していくことが必要な時期に来ている。住民票の発行や宅配便の受付などの業務はその筆頭であり、こうした業務からは思い切って撤退してもいいのではないか。

 こうしたことを主張すると、「住民票の発行などはコンビニに備え付けの端末ででき、店員の手を煩わせるわけでもないのだから撤退を主張するのは便利さの否定であり行き過ぎだ。深夜にしかコンビニに行けない人々もいる」などと反論してくる自称「識者」が必ずいる。だが、労働者を保護するためは「便利さの否定」が一定程度必要である。それに、安倍政権がわざわざ上からの「働き方改革」(その多くはニセ物だが)を提唱せざるを得ないほど長時間労働是正が進まなかった日本で、深夜にしかコンビニに行けないごく一部の人々のために社会全体が不利益を甘受しなければならないというのもおかしい。毎日深夜にしか帰れない労働者がいるなら帰れるようにするのが企業、労働運動双方にとっての最重要課題なのであって、それにはまず「早く帰れないと買い物もできず生活が成り立たない」という状況を作り出して外堀から埋めるのもひとつの方法である(こうした手法に対しては、順序が逆だという批判が出る恐れもあるが、台風などの自然災害でも全員に出社を強制、どんな状況でも改善が進まなかった日本企業の文化が鉄道会社の「計画運休」導入によって変わり始めたように、「外圧」のほうがむしろ効果的な場合もある)。

 最も重要な論点は、コンビニ店員の手を煩わせる必要がないからといって行政が本来自分たちのやるべき仕事から逃げ、関知しなくてもよいとする主張自体が議論の本質からして間違っていることである。筆者が求めているのは「誰がやると便利か」ではなく「誰がやるべき仕事なのか」というきわめて本質的な議論だ。

 東大阪市のコンビニ店主、松本実敏さんがたったひとりで始めた24時間営業休止の「反乱」は大きな反響を呼び、社会問題としてクローズアップされた。たまたまこの時期に重なった「コンビニ店主に労働者性を認めるかどうか」の審判で、中央労働委員会は労働者性を否定する反動的な判断を示した。だが、マルクスの考えが今なお普遍性を持っているなら、社会のあり方を決めるのは生産様式、生活様式など下部構造としての「経済」である。そこでの「人手不足」、そして、日本国内のコストが高ければ海外移転できる製造業中心から、コストが高くても海外移転ができないサービス業中心への産業構造の転換という流れが変わらない限り、労働力の「売り手」である労働者、店主側が有利という状況は今後も当分の間、続くに違いない。労働者、店主側は有利な状況を最大限利用し、今のうちに24時間営業の全店舗への強制を緩和させる方向へ闘いを続けるべきだろう。

 筆者が現在生活している北海道では、コンビニの最大手は「セイコーマート」だが、セイコーマートは最初から24時間営業の全店舗への強制などしておらず、昨年3月まで生活していた日高管内新ひだか町では24時間営業のセイコーマートを探すほうが難しい状況だった。セブンイレブン・ジャパン本部は「24時間営業をやめれば昼間の売り上げも下がる」などと具体的な根拠やデータさえ示さないまま強弁を続ける。だが24時間営業を強制していないセイコーマートが、本土系コンビニ各社を抑えて北海道でシェア1位という事実をどのように考えるのか。店主たちを締め付ける前に、自分たちのしているサービスが本当に顧客の求めるものと一致しているのか、行政の下請けとなって安易に便利さを強調するだけの商売に堕していないか再検討すべきだろう。

 いずれにしても、コンビニで当たり前とされてきた「全店舗共通24時間営業体制」は明らかな曲がり角に来ている。たったひとりで問題提起に立ち上がった松本さんは「アリと象の闘い。自分ひとりだったら踏みつぶされていたし、相手は踏んだことにすら気がつかなかっただろう」と語る。「アリと象の闘い」という言葉は、これまで労働争議の世界では何度も聞かれてきたし、沖縄でもよく聞かれた。だが、気づかれることなく踏みつぶされるアリにも五分の魂がある。多くのコンビニ店主を勇気づけた松本さんの闘いが実るよう、労働運動業界の片隅に身を置くもののひとりとして、できることは惜しみなくしていきたいと考えている。

(黒鉄好・2019年3月24日)

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

法令違反で書類送検された「ブラック企業」一覧を晒し上げます

2017-05-10 23:47:46 | 共産趣味/労働問題(公共交通・原発除く)
<厚労省>書類送検“ブラック企業”334件 HPに初公表(毎日)

--------------------------------------------------------------------
 厚生労働省は10日、労働基準関係法令に違反したとして最近半年間に書類送検し、社名を公表した全国334件の一覧表を初めて作成し、同省ホームページ(HP)に掲載した。

 昨年末に発表した「過労死等ゼロ」緊急対策の一環で、担当者は「一覧表にすることで社会に警鐘を鳴らす狙いがある」と説明する。従来は47都道府県にある労働局のHPに載せてきたが、報道発表で社名を明らかにしたのにHPでは伏せた事例もあったほか、掲載期間もまちまちで統一基準がなかった。同省は送検を公表した日から約1年間掲載し、毎月更新すると決めた。

 10日に掲載されたのは昨年10月から今年3月までの計334件で、(1)企業・事業所名(2)所在地(3)公表日(4)違反した法律(5)事案概要などを県別に並べた。

 内訳は、企業が安全対策を怠った労働安全衛生法違反209件▽賃金未払いなど最低賃金法違反62件▽違法な長時間労働をさせるなどした労働基準法違反60件▽労働者派遣法違反19件。労基法違反では、女性社員が過労自殺した広告最大手・電通の社名も掲載された。【早川健人】
--------------------------------------------------------------------

上記ニュースに報道されている通り、厚労省が書類送検に踏み切った「悪質法令違反企業」334件のリストを公表した。このような取り組みはどんどん進めるべきだ。

ところで、厚労省のサイトを見ても、このリストがどこに載っているのかわからず、探すのに苦労した。日本の官公庁サイトは、とにかく政府・経済界にとって都合の悪い情報はわかりにくく、発見されにくいように掲載するという姑息な手を使ってくる。

そういうわけで、当ブログが検索でようやく探し当てた「ブラック企業一覧」を、ここに晒し上げておく。この間、報道で盛んに取り上げられた日本屈指のブラック企業、電通は東京労働局のページ(PDFのページ数で15ページ)に記載されている。

労働基準関係法令違反に係る公表事案(厚生労働省労働基準局監督課)・PDF形式

<参考資料>労働基準関係法令違反に係る公表事案のホームページ掲載について(厚労省労働基準局長から都道府県労働局長宛て通知文書)・PDF形式

特に、就活中の若者の皆さんにとっては必見の資料だと思う。就活への思いは人それぞれだと思うが、つい数年前まで「就職氷河期」といわれていた就職戦線はここに来て大きく様変わりした。少子高齢化の進展で労働力人口が減り、労働集約型産業(人海戦術でこなさなければならない産業。運輸、流通、建設、小売、外食、医療・福祉・介護などの産業が典型)からすでに深刻な人手不足が始まっており、企業側から見て「採用氷河期」と評する関係者もいるほどだ。

当ブログ管理人が苦しい就活をしていた頃と比べると隔世の感があるが、ここしばらくの間、学生の皆さんにとっては企業に自分を「高く買ってもらえる」有利な情勢が続く。好きこのんで犠牲を払ってまでこのようなブラック企業に入る必要はないし、このようなブラック企業には「倒産」で市場から退場してもらうか、そうでなければ「脱ブラック」に向け改革を促す絶好の機会といえよう。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする