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JR北海道の安全崩壊を受けて-保線職員の「魂」伝える映画

2013-10-31 21:35:00 | 鉄道・公共交通/安全問題
以下にご紹介するのは、太平洋戦争直前の1941(昭和16)年3月、十字屋文化映画部(その後の日本映画社)によって配給された記録映画「鉄道保線区 第1部“礎”」である。

軍国主義・精神主義的な描写が見られること、機械化が進んでおらず人海戦術に頼っていることなど、現在とはあまりに時代が違いすぎ、参考にならないかもしれないが、保線職員がどのようにして鉄道線路の保守を行っていたかの一端を知ることができる。鉄道員の「魂」に触れるという、いささか趣味的動機での紹介だが、興味のある人はご覧いただきたい。

この映画を見れば、現在のJR北海道が、この当時のレベルの保線すら行えていないということが容易にわかると思う。

なお、この映画の冒頭で歌われている、「轟け、鉄輪…」で始まる歌は、国鉄の事実上の社歌として使われていた「鉄道精神の歌」である。

鉄道保線区 第1部“礎”(1/2)


鉄道保線区 第1部“礎”(2/2)

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【転載記事】国連科学委員会の国連総会への2013年10月フクシマ報告書についての注釈付き論評

2013-10-30 23:44:24 | 原発問題/一般
以下にご紹介する記事は、核戦争防止国際医師会議(IPPNW)など世界の9団体が連名で発表した、国連科学委員会(UNSCEAR)への批判文書であり、反対文書である。国連科学委員会は、今年5月、「福島第一原子力発電所事故後の放射線被ばくは、即時に健康に影響を及ぼさなかった。一般市民と作業員のほとんどにおいて、将来、いかなる健康影響でも起こるとは考えにくい」とするプレスリリースを発表したが、事実上これに反論する内容となっている。長文であり、全文のテキストでの掲載は困難だが、以下のサイト(PDF)から全文を読むことができる。

原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)の国連総会への2013年10月フクシマ報告書についての注釈付き論評

なお、この文章の発表を行ったのは、以下の8カ国8団体と1つの国際組織である。日本ではあまり知られていないが、国際社会(特にヨーロッパ)ではいずれも一定の社会的影響力を持つ組織である。

<発表団体>
社会的責任を果たすための医師団(PSR)、米国
核戦争防止国際医師会議(IPPNW)、ドイツ
社会的責任を果たすための医師団/核戦争防止国際会議、スイス
核戦争防止医師協会、フランス
核戦争防止医師協会、イタリア
人類の福祉のためのナイジェリア医師会、ナイジェリア
社会的責任を果たすための医師団、マレーシア
オランダ医学戦争学協会、オランダ
Independent WHO-原子力と健康への影響

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JR北海道の事故多発の原因は国鉄分割民営化だ!~闘いのうねりで今こそ再国有化を!~

2013-10-27 23:16:01 | 鉄道・公共交通/安全問題
(当エントリは、当ブログ管理人が月刊誌「地域と労働運動」2013年11月号に発表した原稿をそのまま掲載しています。)

 2013年9月19日、函館本線で起きた貨物列車の脱線事故以降、JR北海道の事故、トラブル、検査・保守作業の手抜きは底なしの様相を見せている。2007年に相次いだレール破断から危険が表面化し、2011年には石勝線を走行中の特急列車がトンネル内で火災を起こし、乗客が避難する事態になった。今年になっても車両からの出火、燃料漏れ、脱線事故が続発している。

 線路が歪んだまま放置されている場所は260ヶ所にのぼることがわかっている。JR北海道の内規では、線路が本来の幅(1067ミリ)より19ミリ以上広がっている場合、15日以内に補修を行わなければならないが、行われていなかったのだ。線路の歪みの放置は、列車が時速130キロメートルの高速で走行している路線でも見つかった。

 すでに、2011年度の会計検査院の検査により、自社で決めた保守点検マニュアルすら守られていない実態や、点検記録そのものの不備が指摘されていた。にもかかわらず、JR北海道は放置し続け今日の事態につながった。現場では、線路が4センチ近くも広がりながら、人員や予算に余裕がなく、1年も修理されない場所もあった。予算もなく人員も減らされた現場は疲弊。ついには運転士の覚せい剤使用や、ミスを起こした運転士が発覚を恐れてATS(自動列車停止装置)をハンマーで破壊する事件まで起きた。こうした事故の背景に何があるのか。

 ●人減らしと労働強化

 表1は、JR北海道の民営化当時と現在を比較したものである。JR北海道の社員数は、国鉄分割民営化による会社発足の時点では1万3千人だったが、11年の石勝線列車火災事故の時点では7千百人。現在はさらに減り6千8百人とほぼ半分に減った。その一方で、特急列車の運転本数は民営化当時の1日当たり78本から140本へとほぼ倍増した。札幌~釧路間では高速化により所要時間を約50分も短縮している。



 表2は、2012年度末におけるJR各社の概要を示したものである。営業キロ1km当たり社員数はJR北海道が際だって少なく、以下、少ないほうから四国、九州、西日本、東日本、東海の順となる。経営状態の悪い会社ほど人減らしが進行していることは一目瞭然だ。



 JR北海道は2.72人であり、最多のJR東海の9.18人と比べると約3分の1だ。同じように経営的自立が不可能として「経営安定基金」の措置を受けたJR九州・四国と比べても少ないことが見て取れる。そもそも営業キロではJR東海よりも長いJR北海道が、この労働者数で安全な鉄道を維持できる方がおかしいといえる。

 北海道に限らず、JR各社では分割民営化前後の極端な採用抑制と人員削減の結果、会社の中核を担うべき40歳代の社員が全体の1割しかいないという、歪な年齢構成も明らかになっている。人員削減と強引な列車増発によって労働者が極限まで追い詰められていることが、重大事故続発の背景にある。

 ●外注化で技術が崩壊

JR北海道では車両整備の外注化が進む。パーツの分解など、車両整備の最も基本となる作業は現在、すべて下請業者だ。JR社員は下請労働者が準備したパーツを点検、組み立てるだけ。部品に直接触れ、確認することのないJR社員は問題があっても発見することができない。

保線の外注化も進んでいる。09年、函館本線で、赤が表示されるべき信号機が黄を表示したため、後続列車が先行する列車に追突しそうになる事故があったが、この事故も下請労働者による配線ミスが原因だった。現場で技術の伝承が途絶えていることを象徴した事故だ。国鉄分割民営化で、優れた技術を持っていた国鉄職員が、国労・全動労(現在の建交労)に所属しているという理由で大量解雇され下請労働者に置き換えられたことが背景にある。

 JR北海道以外に目を向けても、例えばJR西日本では下請労働者の偽名による登録がまん延している。その理由について、ある労働者は次のように指摘する。「実際に現場に送り込まれているのは、昨日今日、来たばかりの未熟練労働者なのに、協力企業(下請け)の経営者は自分たちを熟練労働者の名前で登録させようとする。送り込んでいるのが熟練労働者であれば、JRからは高い請負契約料が支払われるので、協力企業の経営者にとってはうまみが大きいのです」。

 現場で熟練労働者が作業に当たっているとJRが認識しているつもりでも、実際に送り込まれているのは未熟練労働者…。安全を守るべき鉄道の現場で、安全・モラルの崩壊はいまや極限に達している。

 ●広がる混乱

 JR北海道の現場では、修繕・交換のための資材を本社に要求しても、要望通りに投入されることはまずないという。現場には、「どうせ要求しても資材は来ない」という諦めムードも広がっている。あるベテラン保線社員は、「だましだまし補修しても、その後“予定通り”にレールが破断したこともあった。ベテランの経験や技術でしのいできたが限界もある」と話す。

 北海道では、一連の事故によって利用者のJR離れも広がっており、今年の乗客数は対前年比2割減少したとの報道もある(一方で、航空の道内路線は乗客が5割増え、高速バスも増便が追いつかないほどになっている)。予算不足が事故を招き、利用者のJR離れがさらに会社の経営を悪化させる負のスパイラルに陥っている。経営安定基金も列車を走らせることによって生じた赤字を補てんするだけで消えていく現状で、JR北海道は民営化以来28年間、弥縫策を採り続けてきた。今回の事態は、そうした弥縫策の最終的破たんを意味する。

 「列車がまともに運転されている日を数えた方が早い」JR北海道の事故は、北海道経済にも悪影響を及ぼしている。特に函館線は、本州と北海道とを結ぶ輸送の大動脈であり、運休の影響は大きいが、この夏、函館線がたびたび寸断されたことにより、北海道から本州に運ばれる農産物の荷傷みを招いたり、本州から北海道に輸送される雑誌など定期刊行物の発売が大幅に遅れたりするなどの被害が出ている。函館市では主要産業の観光にも大きな影響が出ており、地元で水揚げされた新鮮な魚介類が並ぶため観光客の人気が高い函館朝市も客はまばら。函館駅前のビジネスホテル経営者は「JRの運休は痛い。いつになったら正常化するかもわからず手の打ちようもない」と頭を抱える。

 ●エンジンだけで25形式

 JR北海道は、札幌近郊の一部地域を除けば気動車(ディーゼル車)による運転だ。青函トンネルが開通するまで本州と線路がつながっておらず、本州と車両・設備の規格を統一する必要がなかったことも電化が遅れた背景にある。当然ながら、JR北海道で主力となるのは気動車だが、そのエンジンだけで現在、実に25形式もあるのが現状だ。

 25形式もエンジンがあれば、そのエンジンを保守するためのノウハウも25通り必要になる。非効率この上なく、保守を効率化する上では、車両もエンジンもできる限り形式を統一する方が望ましい。なぜこんな事態になったのか。

 国鉄時代は「1目的1形式」が原則だった。例えば特急用電車は交流、直流、交直両用で1形式。同様に急行型、近郊型、通勤型もそれぞれ1形式ずつ。機関車も日本全国で用途や路線の実情に応じて概ね10形式程度だった。気動車に至っては、特急型、急行型、一般型で1形式ずつ。北海道では寒冷地対策が必要なため別形式だったが、青森から鹿児島まで原則3形式、地域による特殊事情を考慮しても5~6形式だけで列車を運行していた時期もあった。全国を旅する鉄道ファンからは「どこに行っても同じ形式の車両で地域性がなく、旅行に行った気がしない」などという声もあったが、車両の運用はきわめて効率的だった。列車が減った線区から増えた線区へ、車両の「全国転勤」もあちこちで行われていた。どこに行っても同じ車両を保守するのだから、国鉄職員は転勤しても「即戦力」であり仕事に不安もなかった。廃車になった車両から、まだ使える部品を大量に取り出し保存しておけば、別の車両で部品が破損してもすぐに取り替えることができた。

 こうした現場の事情を、本社幹部などもある程度理解しており、新形式の車両を開発するときも、すぐに現場に投入はしなかった。じっくり時間をかけ、慎重に安全を確認した後、全国でいっせいに古い車両を新しい車両に置き換えた。一部で置き換えの間に合わない地域もあったが、「同じ目的に使われる車両は1形式、多くても2形式」という姿が維持されたから、現場での保守作業もきわめて楽だった。

 安全性を落とすことなく、現場での保守作業を統一化し、効率化して生産性を上げるこうした国鉄のやり方が、国鉄末期、「技術開発が停滞している」として国鉄「改革派」(分割民営推進派)からやり玉に挙げられたことがあった。こうした政治的攻撃を恐れたためか、JR化以降、新車が出たらとにかくすぐ現場に投入しなければならないかのような雰囲気が生まれた。モデルチェンジといえば聞こえはいいが、次から次へと未知の形式の車両が送り込まれた結果、JRの現場は多形式の車両を抱えて混乱を極めていった。エンジンだけで25形式も存在するJR北海道は、こうした民営化以降の混迷の象徴に見える。

 歴史をひもといてみると、日本の鉄道は民営で始まり、全国各地で民間企業が出資金を集めて路線を建設した。1906年に鉄道国有法が成立、主要幹線を経営する17私鉄を政府が買収して国鉄の基礎が築かれた。ただし現場は惨たんたるもので、買収前の各私鉄がそれぞれバラバラに海外から機関車を輸入していたため、国有化の時点で機関車だけで190形式もあった。私鉄買収後の国有鉄道幹部は、効率的な輸送を確保するため、多すぎる車両形式の整理に努めたが、最終的な終了まで数十年かかったという。

 はるか昔、100年も前に解決したはずの問題が、21世紀にもなってJRの現場を再び苦しめているのは皮肉というほかないが、こうした事態は、鉄道100年の計を考えず、儲けのために国鉄を分割したことによる必然の結果である。

 ●28年前と同じ「労働者悪玉論」がまた始まった

 JR北海道の安全問題が国鉄分割民営化失敗論に波及することを恐れたのか、28年前、国鉄を葬った者たちは、再び労働者に責任を転嫁しようとしている。メディアではJR北海道に「4つの労働組合があって対立しており、別組合の社員は冠婚葬祭にも呼ばれない」「業務の伝達もできず意思疎通に支障を来している」などと報じている。東日本大震災などの混乱の中でしばらくなりを潜めていた「JR総連に革マル浸透」説もここに来て再び宣伝され始めた。

 もちろん、JR総連に革マル派が浸透していることは、この組合が旧動労(国鉄動力車労働組合)を母体としていることから、多くの識者にとって周知の事実である。彼らが国労組合員のJR採用を妨害してきたこと、1990年代にJR不採用問題の政治解決の気運が盛り上がった際に、彼らがスト権提起までして国労組合員のJR復帰に反対したことを、本稿筆者はおそらく死ぬまで忘れないだろう。彼らのように、左翼の仮面をかぶりながら反労働者的行動を繰り返してきた者たちがJRの労働組合から淘汰されることに筆者は全く異存がない。

 だが、JRの労働者一般にメディアから攻撃が仕掛けられているとすれば見過ごすことはできない。鉄道ファンでさえ国鉄時代を知らない人が多くなった今、改めて繰り返しておく必要があるが、当時も今も労働者に責任はない。当時、国鉄解体を控えた混乱の中でも、1日に10万本を超える列車が整然と、時刻通りに動いていたのだ。

 ●JR北海道社員に「ぬるま湯」というNHKの大罪

 とりわけ、メディアの中でも許し難いのがNHKだ。JR北海道の安全問題を取り上げた10月4日(金)の「北海道クローズアップ 安全はどこへ~JR北海道 最新報告~」は見るべきもののない酷い番組だった。JRで事故が続発する原因を「JR北海道社員の“ぬるま湯”体質」に求め、経営改善のために「さらなる経営効率化と不採算路線の整理」を求めるばかげた内容だ。JR北海道の黒字路線は札幌近郊の一部のみ。採算を基準にすれば北海道から鉄道はすべて消えかねない。札幌市営地下鉄と札幌市電があれば、道民の生活の足は消えてもいいというのか。道東地域では、冬になると暴風雪で視界がゼロになり、車に乗っている人にさえ死者が出ているというのに…。

 しかし、NHKの「企業体質」を見れば、こうしたばかげた結論になるのも無理がないと思う。NHK現会長の松本正之氏はJR東海の元社長だ。JR民営体制への批判は、人事の面で完全に封じ込められている。

 その上、驚くべきことに、安倍政権が松本氏の後任のNHK会長に、あの葛西敬之・JR東海会長を起用する方針を固めたと一部で報じられている。葛西会長こそ、旧国鉄職員局長として、国労組合員らの大量解雇を主導したA級戦犯である。JR東海が進めようとしているリニア中央新幹線計画に対する批判を封じ込めるための人事とも読めるが、いずれにせよこのような人事を許せば、ますますNHKは「暗黒報道機関」と化するだろう。

 ●命よりカネの民営化から、再国有化を!

 今回の事態の根底にあるのは、日本での新自由主義改革の先駆けである国鉄分割民営化にある。10万人もの労働者を新会社から締め出した国家的不当労働行為はあらゆる企業に波及し、「首切り自由」社会、経営者やりたい放題社会の入口になった。

安倍政権は、「日本を世界で一番企業が活動しやすい国にする」と公言し、「首切り特区」導入などグローバル資本の無法の公認さえ狙う。労働者を全くの無権利状態に突き落とし、カネのために市民の命を脅かす「アベノミクス―成長戦略」に退場を宣告するときだ。

 英国では、鉄道民営化後、線路の傷みが放置された結果、4人が死亡する脱線事故(ハットフィールド事故)が起き、政府が民営化の失敗を宣言。鉄道施設の保有と維持管理が非営利企業(レールトラック社)に移され、事実上再公有化された。日本でも、JRの責任追及を徹底し市民の厳しい監視と規制で再国有化を求める運動のうねりを作り出さなければならない。その際、再国有化される企業体は独立採算制を原則としないこと、国費による運営費の補てんを行うこと、利用者・国民の声が経営に反映する民主的な意思決定の制度が確保されること、等が最低限必要であろう。

(2013.10.20 黒鉄好)

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今日未明の福島県沖の地震について

2013-10-26 23:26:22 | 気象・地震
「平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震」について(第71報)~平成25年10月26日02時10分頃の福島県沖の地震~(気象庁報道発表)

今日未明の地震には驚いた方も多いだろう。東日本の太平洋沿岸に津波注意報が出され、実際に50cmの津波を観測した。

地震の規模はM7.1で阪神・淡路大震災とほぼ同じ。発震機構(地震のメカニズム)は東西方向に張力軸を持つ正断層型。プレート境界より東側の太平洋プレート内で発生した、いわゆるアウターライズ地震と呼ばれるものだ。

実は、2012年12月7日に三陸沖を震源として起きたM7.3、最大震度5強の地震が、今回の地震とあらゆる意味でそっくりである。このときもアウターライズ地震と言われ、やはり1mの津波を観測している。震源はこのときのほうがやや遠かったが、最大震度、津波ともこのときのほうが大きかった。一般に、津波は正断層型のほうが逆断層型よりも大きい。

気象庁は、今回の地震を東日本大震災の余震としているが、正直なところ違和感がある。広い意味で東日本大震災に誘発されて起きた関連地震ではあろうが、アウターライズ地震までを余震とみなすような考え方では、遠くない将来起きると言われるアウターライズ地震でまた対応が後手に回るのではないかとの思いを禁じ得ない。

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【管理人よりお知らせ】「いのちとくらしを守る 10・27団結まつり」にご参加ください!

2013-10-24 23:07:01 | 鉄道・公共交通/安全問題
管理人よりお知らせです。

10月27日、「いのちとくらしを守る 10・27団結まつり」が東京・亀戸中央公園で開催されます。従来は、国鉄分割民営化の際に解雇された国鉄労働者の解雇撤回、職場復帰のための各地の闘いが集まるまつりとして開催されていましたが、JR不採用問題が「政治和解」により解決した後は、各地の争議を中心に、脱原発の闘いなどとも結合して開催されています。

今回のまつりでは、JR北海道の安全問題について、安全問題研究会が報告を行うことになっていますので、ぜひ会場までお越しください。詳細は、団結まつりホームページをご覧ください。

なお、台風27号の接近により中止となる可能性もあります。その場合は、当ブログでもお伝えします。

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【管理人よりお知らせ】本日、福島原発告訴団が東京検察審査会に審査申し立てを行いました

2013-10-16 22:06:24 | 原発問題/一般
管理人よりお知らせです。

福島原発告訴団は、さきに検察当局が行った不起訴処分を不服として、本日、東京検察審査会に審査申し立てを行いました。

東京検察審査会に審査申し立て(福島原発告訴団サイト)

なお、これまでの経過と今後の方針については、福島原発告訴団が本日発表した声明のなかで明らかにされています。以下、声明をご紹介しますので、こちらをご覧ください。

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【福島原発告訴団声明】
本日、検察審査会に審査申し立て
~市民の力で原発事故の責任を~

福島原発告訴団は、さきに行った告訴・告発に対し、検察当局が不起訴処分としたことを不服として、本日、東京検察審査会に審査申し立てを行った。

検察当局が、1万5千人近い告訴人と、適正捜査、起訴を求める10万筆を超える署名に込められた市民の思いを無視して、国と東京電力関係者からなる被告訴人全員を不起訴としたことは、福島原発事故という史上最悪の企業犯罪を引き起こした加害者を免罪することを意味する。また、処分決定当日に、事件を福島地検から東京地検に「移送」したことは、私たちが求めていた、多くの被害者のいる福島県での検察審査会で審理を受ける権利を奪う暴挙である。検察審査会への審査申し立てに当たり、私たちは改めて強く抗議する。

裁判に市民感覚を吹き込むことを目的とした2009年の改正検察審査会法の施行により、検察審査会には、二度の起訴相当議決を通じて被告訴人を強制起訴できる権限が与えられた。先行する強制起訴事件としては、JR福知山線脱線事故などの例がある。強制起訴が行われれば、被告訴人を裁判に出廷させることができ、事故の責任追及・真相解明の両面で大きく前進させることができる。

検察審査会で審査申し立てを行う以上、私たちは、原発事故に憤っているすべての東京都民に願いを託し、強制起訴を目指してあらゆる行動を強化する。

私たちは、政府や企業の犯罪に苦しんでいるすべての人たちとつながり、ともに闘っていくこと、ひとりひとりが尊敬され、大切にされる新しい時代を作ることが、未来を切り開く唯一の方法であると考える。ひとりでも多くの人がこの決意を共有し、ともに行動するよう、私たちは呼びかける。

私たちは、どんな困難に見舞われても、未来に対する責任と勇気をもって、この新しい時代の扉を果敢に開く決意である。

 2013年10月16日
 福島原発告訴団

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JR北海道の事故多発と国鉄分割民営化

2013-10-15 07:03:46 | 鉄道・公共交通/安全問題
(この記事は、当ブログ管理人が「週刊新社会」2013年10月15日号向けに執筆した原稿をそのまま掲載したものです。)

 9月19日、函館本線で起きた貨物列車の脱線事故以降、JR北海道の事故、トラブル、検査・保守作業の手抜きは底なしの様相を見せている。2007年に相次いだレール破断から危険が表面化し、2011年には石勝線を走行中の特急列車がトンネル内で火災を起こし、乗客が避難。今年になって、車両からの出火、燃料漏れ、脱線事故が続発している。

 すでに、2011年度の会計検査院の検査により、自社で決めた保守点検マニュアルすら守られていない実態や、点検記録そのものの不備が指摘されていた。にもかかわらず、JR北海道は放置し続け今日の事態につながった。現場では、線路が4センチ近くも広がりながら、人員や予算に余裕がなく、1年も修理されない場所もあった。本社に資材の更新を要求しても予算はつかず、人員も減らされた現場は疲弊。ついには運転士の覚せい剤使用や、ミスを起こした運転士が発覚を恐れてATS(自動列車停止装置)をハンマーで破壊する事件まで起きた。

 JR北海道は、会社発足時点と比較して、社員数を半分(民営化時14000人を現在、6800人)に削減したにもかかわらず、特急列車の運転本数は2倍(民営化時78本から現在、140本)に増やした上、スピードアップ(札幌~釧路間で45分短縮)も行っている。民営化前後の極端な採用抑制と人員削減の結果、会社の中核を担うべき40歳代の社員が全体の1割しかいないという、歪な年齢構成も明らかになっている。人員削減と強引な列車増発によって労働者が極限まで追い詰められていることが、重大な事故・トラブル続発の背景にある。保線作業の外注化、下請化も進行しており、経験のない未熟練労働者が現場に送り込まれていることも安全確保を困難にしている。



 表は、2012年度末におけるJR各社の概要である。営業キロ1km当たり社員数は、JR北海道が際だって少なく、以下、四国、九州、西日本、東日本、東海の順。経営状態の悪い会社ほど人減らしが進行していることは一目瞭然だ。

 一連の事故によって利用者のJR離れも広がっており、今年の乗客数は対前年比2割減少したとの報道もある。予算不足が事故を招き、利用者のJR離れがさらに会社の経営を悪化させる負のスパイラルに陥っている。国鉄分割民営化28年を経て、JR体制の破たんは明らかである。

 根本的原因は、日本での新自由主義改革の先駆けである国鉄分割民営化にある。10万人もの労働者を新会社から締め出した国家的不当労働行為はあらゆる企業に波及し、「首切り自由」社会、経営者やりたい放題社会の入口になった。

安倍政権は、「日本を世界で一番企業が活動しやすい国にする」と公言し、「首切り特区」導入などグローバル資本の無法の公認さえ狙う。労働者を全くの無権利状態に突き落とし、カネのために市民の命を脅かす「アベノミクス―成長戦略」に退場を宣告するときだ。

 英国では、鉄道民営化後、線路の傷みが放置された結果、4人が死亡する脱線事故(ハットフィールド事故)が起き、政府が民営化の失敗を宣言。鉄道施設の保有と維持管理が非営利企業(レールトラック社)に移され、事実上再公有化された。日本でも、JRの責任追及を徹底し市民の厳しい監視と規制で再国有化を求める運動のうねりを作り出さなければならない。

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破たんするJR体制、再国有化目指す闘いを

2013-10-12 14:08:08 | 鉄道・公共交通/安全問題
(この記事は、当ブログ管理人が「労働情報」第873号(2013年10月15日号)向けに執筆した原稿をそのまま掲載したものです。)

●JR西日本免罪の不当判決

 2005年、カーブで列車が脱線、乗客・運転士あわせて107人が死亡したJR福知山線脱線事故の裁判で、神戸地裁は9月27日、「事故を予見できなかった」として、JR西日本歴代3社長(井手正敬、南谷昌二郎、垣内剛の各被告)全員を無罪とする判決を言い渡した。労働者いじめの「日勤教育」など事故を生み出した企業体質、列車が所定時刻通りに走れない過密ダイヤ、人減らしなどの問題にいっさい触れないままだ。国鉄分割民営化で生まれた巨大国策企業・JR西日本におもねり、企業犯罪をことごとく免罪にしてきたこれまでの流れに沿った不当判決である。

 この裁判は、神戸地検が不起訴とした3社長について、遺族・被害者が神戸第1検察審査会に不服申し立てをした後、同審査会による2度の「起訴相当」議決を受けて強制起訴されていたものだ。

 閉廷後、神戸地裁正門前で行われた会見では、遺族側が「検察官役の指定弁護士の主張はすべて退けられ、弁護側の主張のみが丸ごと聞き入れられた。全く理解できない」などと判決を強く批判。井手被告はJR西日本主催の慰霊式をはじめ、2009年に発覚した航空・鉄道事故調査委員会(現・運輸安全委員会)の調査報告書漏えい事件を受けた説明会など、あらゆる場に欠席して逃げ回り、事故発生から裁判開始まで一度も遺族・被害者の前に姿を見せなかった。同被告の裁判での「謝罪」に関して、遺族のひとり、藤崎光子さんは「裁判所の心証をよくするためだけのものにしか見えず、信用できない」と怒りを表明した。企業犯罪の責任を問うために、組織罰を導入する新法の制定を求める声も相次いだ。

 JR西日本の「天皇」と呼ばれ、強権的な企業体質を作った張本人の井手正敬・元社長は、法廷でニヤニヤ笑いながら上を向く傲慢な態度だった。その姿にある遺族は「ナイフでも手元にあったら投げつけてやりたい」と怒りを爆発させた。

 遺族の意向を受け、検察官役の指定弁護士は控訴する見込み。JR史上最悪の列車事故の刑事責任を問うJR西日本歴代3社長の裁判は今後、高裁に舞台を移す。

●JR北海道から破たんする民営JR体制

 9月19日、函館本線で起きた貨物列車の脱線事故以降、JR北海道の事故、トラブル、検査・保守作業の手抜きは底なしの様相を見せている。2007年に相次いだレール破断から危険が表面化し、2011年には石勝線を走行中の特急列車がトンネル内で火災を起こし、乗客が避難。今年になって、車両からの出火、燃料漏れ、脱線事故が続発している。

 安全無視の実態も明らかになった。自社で決めた保守点検マニュアルすら守らず、線路は4センチ近くも広がったまま放置。歪みが見つかりながら1年も修理されない場所もあった。現場が本社に資材の更新を要求しても予算はつかず、人員も減らされた現場は疲弊。ついには運転士の覚せい剤使用や、ミスを起こした運転士が発覚を恐れてATS(自動列車停止装置)をハンマーで破壊する事件まで起きた。乗客の安全を守るべき鉄道の現場で、労働者が極限まで追い詰められている。

 北海道以外のJR各社も同じだ。JR東海は、会社発足以来、新幹線の保線を担当していた熟練労働者を外国人であることを理由に解雇。JR西日本でも、偽名で登録させられた下請労働者が、仕事で負傷したのに労災適用が受けられず訴訟で闘っている例がある。

 下請労働者の偽名による登録がまん延している理由について、ある労働者は次のように指摘する。「実際に現場に送り込まれているのは、昨日今日、来たばかりの未熟練労働者なのに、協力企業(下請け)の経営者は自分たちを熟練労働者の名前で登録させようとする。送り込んでいるのが熟練労働者であれば、JRからは高い請負契約料が支払われるので、協力企業の経営者にとってはうまみが大きいのです」。

 JR北海道の状況は筆者も未調査だが、JR西日本と同じ状態にあるのではないかと推測する。石勝線列車火災事故から2年以上も経つのにJR北海道がトラブルの原因さえ究明できずにいるのを見ると、現場で保線労働に従事しているのが熟練労働者だとJRは信じていたのに実際は未熟練労働者だった、ということはじゅうぶんにあり得るからだ。

 多重下請構造の中で労働者が誰に雇用されているのかわからないというのは、原発労働者と全く同じだ。JRでも原発でも、安全のため最も崇高な現場で働いている労働者をモノ扱いする企業の違法行為が、安全崩壊となって市民の生命を脅かしている。

●元凶は新自由主義

 危機的事態をもたらした根本的原因は、日本での新自由主義改革の先駆けである国鉄分割民営化にある。10万人もの労働者を新会社から締め出した国家的不当労働行為はあらゆる企業に波及し、「首切り自由」社会、経営者やりたい放題社会の入口になった。

安倍政権は、「日本を世界で一番企業が活動しやすい国にする」と公言し、「首切り特区」導入などグローバル資本の無法の公認さえ狙う。労働者を全くの無権利状態に突き落とし、カネのために市民の命を脅かす「アベノミクス―成長戦略」に退場を宣告するときだ。

 英国では、鉄道民営化後、線路の傷みが放置された結果、4人が死亡する脱線事故(ハットフィールド事故)が起き、政府が民営化の失敗を宣言。鉄道施設の保有と維持管理が非営利企業(レールトラック社)に移され、事実上再公有化された。日本でも、JRの責任追及を徹底し市民の厳しい監視と規制で再国有化を求める運動のうねりを作り出さなければならない。

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小泉元首相の「脱原発発言」をどう読むか

2013-10-06 22:02:05 | 原発問題/一般
その記事が出るまで、私は、小泉元首相が脱原発を発信している事実さえ知らなかった。他の多くの市民もそうではないか。しかし、8月26日、山田孝男・毎日新聞編集委員が担当するコラム「風知草」でそのことが報じられて以降、潮目が変わりつつあるように思う。

世界で唯一の高レベル放射性廃棄物処理場と言われるフィンランドのオンカロ。その視察を終えて帰国した小泉元首相が、このような発言を繰り返している、というのだ。

 「いま、オレが現役に戻って、態度未定の国会議員を説得するとしてね、『原発は必要』という線でまとめる自信はない。今回いろいろ見て、『原発ゼロ』という方向なら説得できると思ったな」

 「10万年だよ。300年後に考える(見直す)っていうんだけど、みんな死んでるよ。日本の場合、そもそも捨て場所がない。原発ゼロしかないよ」「今ゼロという方針を打ち出さないと将来ゼロにするのは難しいんだよ。野党はみんな原発ゼロに賛成だ。総理が決断すりゃできる」

小泉政権下での格差社会の拡大や郵政民営化に恨みを持つ人は今も多い。私ももちろんそのひとりだ。貧困で年が越せなくなった派遣労働者を市民団体が炊き出しで救済した2008年暮れの「年越し派遣村」の衝撃は今も脳裏に焼き付いている。小泉政権下での規制緩和(派遣労働の原則自由化など)がこうした事態を招いたことを私は忘れていないし、許しもしない。しかし、だからといって、小泉元首相の一連の発言を「格差社会を招いた戦犯の戯言だから放っておけばよい」と見過ごしていいのだろうか。

小泉元首相は正直だ。メディアの取材に答えながら「3.11まで私は原発を推進していた。3.11で考えを変えたのだ」と語っている。首相在任中も「米百俵で痛みに耐え、構造改革を」と、小泉改革に痛みが伴うことを否定しなかった(だからこそ当時、自民党に投票し、後から「騙された」などと言っている人に当ブログは全く同情しない。この場合、騙される有権者にも問題があるからだ)。

みずからの原発推進の過去を問われ、あれこれと言い訳を繰り返す人々に比べれば、自分が過去、原発を推進していたことを認めた上で、考えを変えた、と表明する小泉元首相の姿勢には、ある種の潔さすら感じる。昔からいうではないか。過ちては改むるに憚ることなかれ、と。

政治的評価とは全く別だが、性格的には表裏のない小泉氏だけに、発言は本気だと当ブログは考える。しかも、原発推進から反対へ、考えを変える過程がいかにもこの人らしい。反原発運動がしきりに問題にしている放射能汚染や、被曝の危険や、健康被害などではなく、「廃棄物処理にいくらコストがかかるかわからないし、できない」が反対理由になっているからだ。費用対効果から検証していく新自由主義者らしい発想。このあたりは「みんなの党」の脱原発に考えが近いかもしれない。

ただ、小泉氏の名誉のために言っておくと、高レベル放射性廃棄物の最終処分に、日本で全くめどが立っていないことは事実である。六ヶ所村の再処理施設は当初の計画が10回以上延期され、いまだ見通しは全くない。日本の原発はどこも使用済み核燃料でいっぱいになりつつあり、3.11がなかったとしても、あと5~10年で原発が全停止に追い込まれるのは確実の情勢だったのだ。

政治闘争に勝つために、敵の最も弱いアキレス腱を集中して、徹底的に攻める。小泉氏らしいやり方だ。原子力ムラは平静を装ってはいるが、かつては権力の中枢に位置し、引退してなお政治的影響力の大きな人物が最大の弱点を攻め立ててくるのだから、穏やかでないだろう。

小泉政権時代、イラク戦争に反対し、外交官を追われた天木直人・元駐レバノン大使が「正しい政策の決定は権力者の内部からそれを主張する者が出て来てはじめて国民的支持を得た政策になる」と主張している(参考記事)が、これはある程度正しいと思う。実際、原発誘致の話が持ち上がりながら阻止できた地域は、例外なく保守系の地域有力者を巻き込んだ闘いがあった。地方議会でも、市民の脱原発の請願や陳情が可決・採択されるところではほとんど保守系議員の賛成を得ている。日本では保守系が多数派なのだから、彼らの支持を得なければ結果を得ることはできない。

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福島に住んでいた今年3月まで、当ブログ管理人は「福島の現状を話して欲しい」などと言われ、市民団体の招きで各地に講演(というほど大げさなものではないが)に行くことがあった。今年3月、関西での講演だっただろうか。一通りの話を終えた後、質疑応答の時間になり、私は、会場の人とのあいだでこんなやりとりをした。

質問者「今年夏に参院選があると思いますが、脱原発派を国会で多数にするためにはどうしたらいいと思いますか」

私「市民運動のやり方とかであればアドバイスできるのですが、政治だけはつける薬がないですね。というより、そんな方法があるならこっちが聞きたいですよ」

質問者「答えにくかったようなので質問の仕方を変えます。…野党を結集して多数派を作り脱原発を実現するのと、原発推進政党の自民党を変えることにより脱原発を実現するのでは、どちらが可能性が高いと思いますか」

いくぶん答えやすくなった。私はとっさにこう答えた。

「どちらも大変困難と思いますが、あえてどちらか選べ、といわれれば、自民党を変えることにより脱原発を実現するほうが、日本では可能性が高いと考えます。目指す方向は同じなのに、細かな違いにばかりこだわり、分裂に分裂を重ねてきた日本の野党の歴史を見ると、彼らが結集できる可能性は限りなく低いので、自民党を変える以外に方法がないのです。脱原発から最も遠い位置にあると思われていた保守政党が、実利的判断から脱原発を決断する、いわばドイツのメルケル政権型とでもいうのでしょうか。唯一の可能性があるのはそこだと思います」

そのときの私に勝算があったわけではない。ただ何となく、野党に賭ける気にならなかったからそう答えたに過ぎない。自民党は(最近は怪しくなったが)きわめて統治能力に優れた政党で、結党以来、半世紀以上にわたって政権を維持してきた。少なくとも戦後では最も有能であり、優れた「政党制の類型化」に成功したイタリアの政治学者、ジョヴァンニ・サルトーリが「一党優位政党制」の代表例に、インドの国民会議派政権と並んで日本の自民党政権を挙げたほどだ。世界的にも類例のない長期政権を築いた自民党は、その時々の政治情勢に応じて、プラグマティックに政策を修正したり、変更したりする大胆な決断を、戦後政治の中で何度か下してきた。そうしたダイナミズムが、この危機的局面で発揮される可能性は大きくないものの、決してゼロではないように思われるからである。

一党優位政党制が続き、実質的に野党不在の日本で、自民党の中に脱原発勢力を育て、大きくしていくことがいかに大切かは言うまでもないだろう。その際、小泉元首相のような影響力のある人物が決定的役割を果たすことがある。政治的に成長した市民が声を上げ行動しながら、歴史の中で知恵を蓄えた保守政党との共同の中で脱原発を選択していく。そんな未来があってもいいし、実質的に野党不在の日本では、それ以外の道はあり得ないように思われる。

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献血と内部被曝

2013-10-04 20:08:29 | 原発問題/一般
先日、近くに移動献血車がやってきた。

深刻な血液不足の実態は知っているので、前から献血はできる限りするようにしているが、受付場所に行くと、こんな張り紙があった。

「東京電力福島第1原子力発電所の周辺で作業をしていた方は、お申し出ください」

私がその張り紙を読んでいると、係員が「何か気になりますか?」とひと言。私が「この作業をしていた人を知っているので…」と言うと、その日赤の係員は驚くべきことを言った。

「その作業をしていた人でも、半年経てば(献血を)できるんですよ」。

その日赤係員の言葉を聞いて、原発やその周辺で作業をしていた人が、福島県外では半年間、献血を制限されているという事実を知った。

それ以上は聞くのも野暮と思い、追求しなかったが、汚染された血液を、汚染されていない人の身体の中に入れてはいけないということを、医療従事者はやはりきちんと理解し行動している、という事実を示すものだろう。

(放射線作業従事者に対する特殊健康診断について定めた「電離放射線障害防止規則」では、放射線業務に就いていなかった人を就けるときは事前に特殊健康診断をすること、放射線業務従事後も半年ごとに特殊健康診断をするよう決められているので、半年が一応、ひとつの目安なのだろう。半年も経てば放射線の影響は消える、との政府サイドの考えが反映されていると思う。)

ちなみに、まだ福島県内にいた昨年秋、西郷村の某職場で献血を受けた際には、そのような張り紙、説明は一切なかった。

福島県内では、住民があちこちで自主的に除染作業(=被曝労働)をしているので、このような制限を設けた場合、県民は誰も献血ができなくなってしまう可能性がある。さらにいえば、福島県民は、ある程度防護をしながら生活している人でも、多かれ少なかれ内部被曝はしているから、汚染された血液を輸血されたとしても(推奨すべきことでないのは当然だが)やむを得ない、と許容せざるを得ない事情にあり、制限をかけていないのだと推測される。

昨年、群馬県桐生市議が「献血の車が止まっているけど、放射能汚染地域に住む人の血って、ほしいですか?」とツイッターに書き込み、除名される騒ぎがあったことをご記憶の方も多いだろう。当時、この市議の発言は「福島差別」としてバッシングを受けた。それから1年経ったが、私はこの市議を差別者だと思ったことはない。むしろ「東京は福島から250km離れているので大丈夫」などと公の場で宣言するIOC委員こそ本当の差別者だ。

表現方法が穏当でなかったため騒ぎになったが、結果的にはこの市議が正しかったことが証明されたと思う。もう少し表現に配慮があれば…と思うだけに残念だ。

私自身は、生きるか死ぬかの緊急事態に、輸血される血液が放射性物質に汚染されたものであったとしても、献血してくれた人に感謝することはあれ、恨むことはないと思う。その輸血を受けなければ、その場で死亡してしまうのだから。

原発は、こんなところにまで差別を生むのだと思うと、ますます脱原発に確信を持った。

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