安全問題研究会~鉄道を中心とした公共交通を通じて社会を考える~

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福島原発告訴団が行った検察審査会申し立てで「起訴相当」議決 告訴団団長声明

2014-07-31 16:21:58 | 原発問題/一般
 すでに各メディアで報道されていますが、福島原発事故に関して「福島原発告訴団」が申し立てていた不起訴処分を不当とする審査申し立てに対し、本日、東京第5検察審査会は、東京電力の勝俣恒久・元会長及び武藤栄、武黒一郎の両元副社長に対し「起訴を相当とする」旨の議決をしました。また、残る3名については、不起訴不当1名、不起訴相当2名との議決でした。

 東京第5検察審査会の議決書を緊急に掲載しましたので、こちらからダウンロード・閲覧できます。

 なお、福島原発告訴団の団長声明が発表されましたので、以下のとおりお知らせします。

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◆東京第五検察審査会の議決を受けて 福島原発告訴団団長の声明

 福島原発告訴団が申立を行った6人全員ではありませんでしたが、特に重大な責任を問われる3人に起訴相当、1人に不起訴不当の議決が出たことは、妥当な判断をして頂いたものと思っております。一般の東京都民からなる検察審査会が、被害者に寄り添った結論を出してくださったことを感謝いたします。

 検察庁はこの議決が、原発事故に対する国民の想いであることを理解し、直ちに強制捜査を含めた厳正なる捜査を開始して頂きたいと思います。

 福島の被害は今も形を変えながら拡大しています。一日も早く、この事故を引き起こした者が責任を取り、被害者が救済されることを願ってやみません。

 福島原発告訴団は、引き続き、責任追及を求める活動を続けます。

2014年7月31日
福島原発告訴団団長  武藤 類子

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女性蔑視ヤジ、「号泣会見」~サル以下の「選良」たちにつける薬はあるのか?

2014-07-25 22:17:05 | その他社会・時事
(当エントリは、当ブログ管理人が月刊誌「地域と労働運動」2014年8月号に発表した原稿を、一部修正・加筆して掲載しています。)

 東京都議会で、少子化対策について質問していたみんなの党の塩村文夏都議(35)に対し、自民党の鈴木章浩都議(51)から「自分が結婚しろ」という女性蔑視ヤジ(という名の暴言)が飛んだのに続き、兵庫県議会では男性議員が「号泣会見」するなど、地方議員の言動が相次いで論議を呼んでいる。いずれも日本人であることが恥ずかしくなるほどの低劣ぶりで、もはや地方議会など不要なのではないかとすら思えてくる。

 東京都議会に関して言えば、塩村都議に対する女性蔑視暴言は複数の議員が行っていたという証言もあり、他の議員の関与も噂されているが、都議会議長は塩村議員から出された暴言議員への「処分要求」を不受理にするなど真相究明どころか幕引きに動いた。自民党本部の石破茂幹事長が「関与した議員は自ら名乗り出るよう」促したにもかかわらず、鈴木都議以外の加害者が名乗り出ることはついになかった。

 積極的に真相を闇に葬り去ろうとする都議会自民党の自浄能力のなさを批判する声は多いが、そもそも自民党都議らが所属する自民党東京都連の代表は、福島における中間貯蔵施設問題を巡って「最後は金目でしょ」発言をした石原伸晃氏である。このような人物を都連トップに置いたまま、福島の被災者に対する罪の意識も良心の呵責も感じることなく平然としていられる都議会自民党に自浄能力など期待するほうが無理というものだろう。

 鈴木都議は、政府の制止を振り切って尖閣諸島への上陸を果たした人物であり、中国を「シナ」と呼ぶなど差別排外主義丸出しの下劣都議である。「中国、韓国、かかって来い。いつでも戦争だ!」とばかりに粋がる右翼都議が、自分より一回り以上年下の女性都議に謝罪するまで5日間も逃げ回り続けたのだから、尖閣上陸が聞いて呆れる。「弱い犬ほどよく吠える」ということわざがあるが、なるほどよく言ったものだ。

 いつまでも変わらない日本の政治「家」(という表現すら厚かましい政治屋)に対する絶望から、当コラム筆者も最近は「彼らにつける薬はない」となかば突き放し、放置してきた。しかし、そうした無関心こそが「女性蔑視暴言」議員や「号泣県議」を生み出したのだと批判されると、当コラム筆者も反論する言葉を見つけることができず反省せざるを得ない。こうしたサル以下の「選良」たちにつける薬は、果たしてあるのだろうか。

 ●議員を減らせばよいのか?

 このような「不良議員」が論議を呼ぶたびに、決まって出てくるもののひとつに「こんな議員を税金で食べさせるのは無駄だ。議員定数を削減せよ」という議員削減論だ。このような議論を主導する人たちは「議員定数を減らせば不良議員から順に淘汰されていく」と無邪気に信じているようだが、こうした議論が間違っていることは、すでにこれまでの地方議員「削減」の結果が物語っている。議員定数削減で生き残るのは、決まって地域の業界団体などに強固な支持基盤がある「不良議員」のほうであり、その陰で、定数削減のあおりを受け落選して涙を流す「市民派議員」の実例を筆者は何度も見てきた。精神科医の斉藤環さんは、日本の選挙で当選者を決めるのは「握手と土下座の回数」だと指摘しており、こうした前近代的「ドブ板選挙」の実態が改まらない限り、「悪貨が良貨を駆逐する」状況は変わらないだろう。

 業界団体などの強固な支持基盤がある不良議員の当選を阻止する方法がない以上、さしあたっての解決策は世間の議論とは逆に議員の数を大幅に増やすことではないだろうか。女性、若者、シングルマザー、LGBTなど多様性を持った人たちを多数、議会に送り込んで不良議員を「包囲」するのである。不良議員に支払われる歳費は民主主義の「学習料」と割り切るしかない。

 政治が身近な存在になれば、首長や議員を「就職先」のひとつとして考える女性や若者が現れ、特に農村部では若者の都市への流出を防ぐ手段にもなりうる。いずれにしても、政治が「何か特別な人たちのやること」「政治業界」などと思われているうちは議会改革などあり得ない。

 ●呆れる「女性の社会進出後進国」

 女性の社会進出の状況に関しては、「世界経済フォーラム」(ダボス会議)が公表した「グローバル・ジェンダー・ギャップ」が、毎年明らかにしている。現在、公表されている最新のものは2013年版だが、その内容は日本にとって衝撃的だ。


(グローバル・ジェンダー・ギャップ2013。濃い緑色に近づくほどよく、赤に近づくほど悪い)

 女性の社会進出が最も進んでいるのがフィンランド・ノルウェーなど北欧諸国。多くの日本の市民が描いているイメージのとおりである。米国・英国・オーストラリアなどがこれに次ぐ。一方、最も進んでいないのは、東アジア地域では日本と韓国のみ。世界に目を転じても、女性の社会進出が最も進んでいないグループは、身分制の影響が色濃く残るインドや中東・アフリカ諸国だけだ。日本は、女性を公然と「2級市民」扱いするイスラム諸国と同レベルという厳しい評価が下されたことになる。

 今年5月、母の日を前に国際人権NGO「セーブ・ザ・チルドレン」が発表した「母の日レポート~母親指標・お母さんにやさしい国ランキング~ (Mother’s Index)」はさらに衝撃的だ。同団体は、保健・栄養(妊産婦死亡の生涯リスク、5歳未満児の死亡率)、教育(公教育の在籍年数)、経済(国民1人あたりの所得)、政治への女性参加(女性議員の割合)の各指標を基にして女性の地位を算出している。この報告書によれば、日本は178カ国中32位で、先進国では最下位となっている。

 日本が特に深刻なのは、「政治」以外の分野では他の先進国と変わらない水準であること(生まれてから社会に出るまでは女子が男子に比べて差別を実感する場面はほとんどない)。順位は各指標を「総合的に勘案」して算出されることから、日本を先進国レベルから逸脱させるほど「政治」の指標が際だって悪く、全体の順位を引き下げていることを意味している。実際、日本の女性議員の比率は11.3%から、2012年衆院選後はさらに低下して10.8%となり、なんと最下位のソマリアよりも低かった。

 ソマリアでは、内戦と干ばつにより2012年には周辺国へ脱出した難民が100万人を超えたとの報道もある。女性や子どもの人権が全く考慮されない紛争地域であるソマリアよりも日本のほうが女性議員の比率が少ないのだから、ここまでくるともはや悲劇というほかない。

 ●クオータ制導入やむなし

 それにしても、である。社会の半分は女性なのに、日本の議員の女性比率がソマリアより低い10.8%とは…。もはや、政治の場に女性を強制的に登場させるため、日本でもクオータ制を速やかに導入すべき時期に来ていると筆者は思う。ご存じない方のためにひとこと述べておくと、クオータ制とは、例えば「国会議員における女性の比率は○%以上でなければならない」など、女性の人数比を法律などで強制的に割り当てる制度のことである。

 そこまでの荒療治をすることには、なお反対論・慎重論もあろう。しかし、女性の社会進出を妨げている諸問題――例えば、「保育所の不足」「出産・育児のため本来は最も職業人生が充実しているはずの30代女性が労働市場にいない“M字カーブ”問題」「退職後、育児を終えた女性が仕事に復帰しようとしても、非正規しか職がない」「育児のため勤務時間を柔軟に運用できる制度の欠如」などの問題は、男女雇用機会均等法が制定・施行された四半世紀前から議論ばかり続いている。ずっと同じ議論が続いているということは、この間事態が全く進展しなかったことを意味しており、長年にわたる議論ですでに論点も解決策も出尽くした感がある。むしろ「わかっているのに行動できない」点こそ日本社会の最大の問題点なのだ。

 「行動できない」が問題点である以上、法律で強制するのはひとつの有効な策である。法律で決まれば、「何もそこまでやらなくても」と思うほど律儀に守るのが日本人の国民性だ(逆に言えば、どんな悪法でも「守りすぎる」のが日本人の最大の欠点だとすらいえる)。さしあたり、議員や公務員に限り、25%~30%を目標として法律で義務化してみてはどうだろうか。議員の場合、女性候補者が増えても当選できなければ目標は達成できないから、例えば衆議院の選挙制度を小選挙区制から拘束名簿式比例代表制に改め、比例代表名簿に法で定められた比率以上の女性が搭載されていない政党は立候補できないようにする、などの方法も考えられる。女性の社会進出の推進が名目であれば誰も反対できないだろう。悪名高い小選挙区制を葬るチャンスでもある。

 近年、女性の社会進出が急速に進んだ国では、ほとんどクオータ制が導入されており、その効果は極めて高い。韓国でもクオータ制により議員の女性比率は13.4%とすでに日本を上回った。日本がこのまま何も手を打たなければ、東アジアで最後の「女性の社会進出が最も遅れた国」になるのは確実だ。

 こうした恥ずべき状況に日本が置かれていることを自覚し、まずは当コラムで筆者が示した改革案だけでも直ちに実行に移してもらいたい。

(2014.7.20 黒鉄好)

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「災害復旧費の国庫補助は赤字鉄道のみ」原則、撤回へ向け第一歩?

2014-07-17 22:22:49 | 鉄道・公共交通/交通政策
鉄道軌道法改正目指す JR只見線復旧へ方針確認 自民国会議員連盟(福島民報)

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 災害により運休している赤字ローカル鉄道の運行再開を目指す自民党の国会議員連盟は15日、東京都の党本部で会合を開き、豪雨被害で一部区間の不通が続くJR只見線の復旧に向け鉄道軌道法の改正を目指す方針を確認した。

 同法は鉄道事業者が赤字である場合に限り、自然災害で被害を受けた路線の復旧事業費のうち4分の1以内を国が助成するよう定めている。只見線を運営するJR東日本は黒字で適用対象外になるため、法改正により被災した赤字路線の復旧に取り組みやすい環境を整える。(以下略)
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当ブログと安全問題研究会が何度も国交省に要請してきた「黒字鉄道にも災害復旧費の国庫補助を」が、実現に向け最初の小さな一歩を踏み出した。自民党国会議員団が、災害復旧費の国庫補助を赤字事業者に限るとしてきた「鉄道軌道整備法」を、黒字鉄道事業者にも適用できるよう改正する方針を確認したのだ。

ちなみに、引用元の福島民報の記事は法律名を「鉄道軌道法」としているが、正しくは「鉄道軌道整備法」だ(ネットか六法全書で調べればわかる法律名すらきちんと調べて書かないところがこの新聞らしいし、何度も誤報をやらかして平然としている福島民報らしい)。その鉄道軌道整備法は、次のように定めている。

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(補助)
第八条 1~3 (略)
4 政府は、第三条第一項第四号〔注:洪水、地震その他の異常な天然現象により大規模の災害を受けた鉄道であつて、すみやかに災害復旧事業を施行してその運輸を確保しなければ国民生活に著しい障害を生ずる虞のあるもの〕に該当する鉄道の鉄道事業者がその資力のみによつては当該災害復旧事業を施行することが著しく困難であると認めるときは、予算の範囲内で、当該災害復旧事業に要する費用の一部を補助することができる。
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この規定が、「災害復旧費の補助は赤字鉄道事業者のみ」の根拠だが、自民党国会議員団は、これが黒字鉄道であるJRの路線の災害復旧を遅らせている要因と見て、今回、その改正を建議した。2011年7月の福島・新潟豪雨で不通となったまま再開のめどが立たない只見線の復旧を福島県側から強く求められたことがきっかけだが、政権与党である自民党が改正を建議したことで、法改正が実現する可能性が出てきたといえる。

当ブログと安全問題研究会は、黒字鉄道事業者にも災害復旧費を国庫補助するよう過去に何度も国交省へ要請してきた。これは、当ブログと安全問題研究会の独善的な要請などではない。国鉄を分割民営化するための関連法案が可決・成立した参議院国鉄改革に関する特別委員会で、1986(昭62)年11月28日に行われた附帯決議(国会会議録参照)で、次のように決議されているのだ。

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○委員長(山内一郎君) 安恒君から発言を求められておりますので、この際これを許します。安恒君。

○安恒良一君 私は、ただいま可決されました日本国有鉄道改革法案外七案に対しまして、自由民主党、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議、民社党・国民連合及び新政クラブの各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。案文を朗読いたします。

日本国有鉄道改革法案、旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社に関する法律案、新幹線鉄道保有機構法案、日本国有鉄道清算事業団法案、日本国有鉄道退職希望職員及び日本国有鉄道清算事業団職員の再就職の促進に関する特別措置法案、鉄道事業法案、日本国有鉄道改革法等施行法案並びに地方税法及び国有資産等所在市町村交付金及び納付金に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

 政府は、本国鉄改革関連八法案の施行に当たり、次の事項について配慮すべきである。

1 (略)
2 各旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社の輸送の安全の確保及び災害の防止のための施設の整備・維持、水害・雪害等による災害復旧に必要な資金の確保について特別の配慮を行うこと。
3~13 (略)
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この附帯決議は、当時、この特別委員会で可決されており、橋本龍太郎運輸相、葉梨信行自治相(いずれも当時)はこの附帯決議の「趣旨を尊重する」と発言している。国民の足であり公共交通である旧国鉄を引き継いだJR線について、災害復旧がスムーズに行われるよう財政措置を行うことは国会が示した意思なのだ。

インターネットでは、(おそらく大都市部の住民が中心であろうが)只見線の国費での復旧など不要、廃線でいいとの意見が強いが、こうした主張は間違っている。国鉄を分割民営化する関連法案が審議されていた当時も、メディアを中心に「山手線の営業係数(100円の売上をあげるために必要な経費)は45、北海道のローカル線は3000」「毎日、ぎゅうぎゅう詰めの満員電車に耐えながら通勤している我々が、どうして北海道の熊しか乗らないようなローカル線を支えなければならないのか」などといった首都圏のサラリーマンの声を毎日放送するなど、国民を「国鉄分割やむなし」に誘導する世論操作、キャンペーンが行われた。

しかし、そうした世論操作に対し、当ブログは有力な反論を提出することができる。そのひとつが、農林水産省が毎年この時期に発表している都道府県別食料自給率だ。最新のデータ(平成22年度確定値、23年度概算値)はこちら(PDF)から確認することができる。23(2011)年度の数値は東日本大震災や福島原発事故の影響を含んでいる上に概算値なので、震災・原発事故の影響を受ける前の確定値である22年で比較すると、北海道が174%であるのに対し、東京はわずか1%(いずれもカロリーベース)である。この数値は、国鉄分割民営化が問題になっていた80年代末期から大きく変わっていないはずだ。

「毎日、ぎゅうぎゅう詰めの満員電車に耐えながら通勤している我々が、どうして北海道の熊しか乗らないようなローカル線を支えなければならないのか」と考えている東京都民に対し、地方はこう反論すればいい。「それでは、東京都民は誰のおかげで毎日、たらふく飯が食えているのか?」と。

JRが国鉄であった頃、東京は確かに「満員電車に耐えるサラリーマンの犠牲」で北海道や九州のローカル線を支えていた。しかし一方、北海道や九州は東京都民の食料を生産することで東京に「お返し」をしていた。こうした中央と地方との助け合いを破壊したのが国鉄分割民営化だったことは、これらのデータから明らかである。首都圏のネット民で「ローカル線など廃止でいい」と主張している人たちは、地方産の食料を一切食べず、東京産の食料だけを毎日食べていればよい。助け合いを拒否して暮らすとは、そういうことである。

当ブログと安全問題研究会は、以上のような理由から、ローカル線を廃止すべきだとは考えない。今回の自民党国会議員団の知恵を現実的な法改正につなげる努力をすべきである。国鉄「改革」以来四半世紀、問題を放置してきた政治が、ようやくその処理に取りかかろうとしているのだ。当ブログと安全問題研究会は、JRを初めとする黒字事業者にも災害復旧費の国庫補助が可能となるよう、法改正に向けた国交省要請等の行動を考えている。

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福島の鼻血「内部被ばくか」 神戸の医師、学会で発表

2014-07-16 23:09:29 | 原発問題/一般
福島の鼻血「内部被ばくか」 神戸の医師、学会で発表(神戸新聞)

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 東日本大震災による原発事故の後、福島県では、子どもを中心に鼻血が出る症状が相次いだ。漫画「美味(おい)しんぼ」で登場人物が鼻血を流す場面が「風評被害を招く」などと批判されたが、実際に放射性物質が結合した金属粒子が鼻の粘膜に付着し、内部被ばくを起こした可能性があることを、東神戸診療所(神戸市中央区)の郷地(ごうち)秀夫所長が12日に名古屋市で開かれた日本社会医学会で発表した。(三上喜美男)

 郷地所長は神戸大学医学部卒業。兵庫県内で約35年間、被爆者の治療を続け、福島などから避難している被災者の診断や健康相談にも当たっている。

 郷地所長によると、福島からの避難者の2人に1人ほどが家族などの鼻血を体験している。突然出血し、普段あまり鼻血を出さなかった子どもが多いのが特徴。避難後はほとんどの症状が治まっているという。

 500ミリシーベルト以上の放射線を全身に浴びれば、急性障害で鼻血が出る場合がある。だが福島ではそうした被ばく例はなく、放射線と鼻血の因果関係を疑問視する専門家もいる。

 しかし、東日本大震災の被災地では、原発から飛散した放射性セシウムなどが金属粒子と結び付き拡散したことが気象庁気象研究所の観測などで確認された。東日本一円で医療機関のエックス線フィルムが粒子で感光する現象もみられ、当初から健康への影響を疑う声が聞かれていた。

 郷地所長は、金属粒子が鼻の粘膜に付着したのが引き金となった可能性を指摘する。金属粒子は直径数ミクロンで、人体のごく小さな範囲に1日100ミリシーベルトを超える放射線を出し、組織を損傷する。

 郷地所長は「もともと花粉症やアレルギーなどで粘膜が炎症していた人が出血を起こしても不思議はない」と話す。大量に吸い込んだ人も少なくないとみられ、内部被ばくの問題と捉え、早期に科学的な調査と分析をすべきだったと強調する。
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郷地所長のような良心的な医師が、まだ日本に残っていたことに一縷の希望を見る思いがする。同時に、被災地である関東・東北でこうした発表ができないことも、一面において日本社会の現実なのだ。

原発事故直後の時期、「東日本一円で医療機関のエックス線フィルムが粒子で感光する現象」については、「日経メディカル」2011年3月24日付の記事で報道されているし、フィルムメーカーの「富士フイルム」も福島原発事故が原因と「推察」する、との発表を当時、行っている。原子力ムラと利害関係がなく、原子力からの恩恵も受けていない企業のほうが客観的に事態を判断できるのである。

少数派であっても、こうした発表をする医師が増えることが必要だ。

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驕り高ぶる安倍政権に痛打 滋賀県知事選で与党敗北

2014-07-13 23:32:18 | その他社会・時事
<滋賀県知事選>前民主の三日月氏が初当選 自公が敗北(毎日)

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 任期満了に伴う滋賀県知事選は13日投開票され、無所属新人で前民主党衆院議員の三日月大造(たいぞう)氏(43)が、元経済産業省官僚の小鑓(こやり)隆史氏(47)=自民、公明推薦▽共産党県常任委員の坪田五久男(いくお)氏(55)=共産推薦=の無所属新人2人を破り、初当選した。集団的自衛権の行使を容認した閣議決定後初の大型選挙で与党推薦候補が敗北したことは、安倍政権に打撃となる。2期8年続いた嘉田由紀子知事(64)の路線は継承される。投票率は50.15%(前回は参院選との同日選で61.56%、前々回は44.94%)だった。

 集団的自衛権の閣議決定を巡って内閣支持率が低下する中、自民党の東京都議による女性蔑視のやじ問題も加わり、「1強」状態が続く政権への批判が直撃した。菅義偉官房長官や自民党の石破茂幹事長も応援に入ったが、及ばなかった。政権は原発再稼働や、消費税率10%への引き上げ判断などの課題を抱えており、敗北は今後の政権運営にも影響しそうだ。

 「もったいない」「卒原発」を掲げた嘉田県政の評価や安倍政権の経済政策、原発政策、集団的自衛権などが争点になった。

 三日月氏は5月、嘉田氏から後継指名を受けて議員辞職し、民主党を離党。段階的に原発を減らす「卒原発」を含む嘉田県政の継承を前面に掲げ、嘉田氏と二人三脚で無党派層への浸透を図った。

 小鑓氏は安倍政権の経済政策「アベノミクス」立案に携わった経験から、県の経済再生を掲げ、国とのパイプの太さを強調したが、支持を固めきれなかった。【加藤明子】
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滋賀県知事選で自公与党が敗北した。安倍政権発足後、沖縄・名護市長選を除けば、連戦連勝だった与党の大型選挙での敗北は初めてだろう。当ブログは、与党の敗因を以下の2つだと分析している。

1.驕る安倍政権への批判

最近の安倍政権の傲慢さには耐え難いものがあった。安倍首相はまるで全知全能の神にでもなったかのように、自分にできないことはないと暴走の限りを尽くした。集団的自衛権容認の閣議決定、消費増税、原発再稼働、NHKを初めとしてあらゆる組織・団体に「政治介入」し、周辺を「お友達」で固めるなどのやりたい放題に対し、ついに鉄槌が下ったのだ。

福井地裁で大飯原発運転差し止め判決が出され、反原発運動が活気づいているさなかに元経産官僚の小鑓氏を候補にした自民党の絶望的センスのなさも敗因として指摘できる。与党としては、元経産官僚の小鑓氏を当選させることで大飯判決の「悪影響」を打ち消し、原発再稼働に向け「中央突破」を図る戦略だったのかもしれないが、今回の敗北によってそのもくろみは挫折した。

東京都議会における女性蔑視ヤジにも適切な対応を取らず放置、女性「活用」の本質をさらけ出したことも大きかった。より端的に言えば、スカートを脱ぎ、女を捨て、男に率先して武器を取って戦場に赴く女性だけに「名誉男性」として人権をくれてやる、それ以外の「2級市民」の女性は黙って結婚して子どもだけ産んでいろ、というのが安倍政権の女性「活用」の本質であることがさらけ出されたのである。

これを象徴する「事件」が投票日直前に起きた。小鑓候補の応援に入った自民党女性市議・北村いすずさんに対し、街頭演説の際、同じ自民党の関係者が「お前がいたら勝てる選挙も勝てない」「議員は恥をかかせて育てるんだ」などと公衆の面前で罵倒する騒ぎがあったのだ(参考:こちら)。東京都議会に続く滋賀県知事選運動期間中の「公然パワハラ」は自民党のイメージを決定的に失墜させた。

「ケンカが弱くカネ持ちのせがれ、これがいじめられる」と、集団的自衛権行使容認論を子どものいじめになぞらえた麻生副総理・財務相の「失言」も、大津市でのいじめ自殺事件の記憶が生々しく残る滋賀県で住民感情を逆なでした。極論を言えば、「日本人」で「男」で「正規職」以外は人にあらずと言わんばかりの人権蹂躙、差別主義政党としての自民党が県民から拒絶されたのである。

この分析は、当ブログの「希望的観測」などではなくはっきりした根拠がある。朝日新聞が6月23日付で報道した世論調査の結果(こちら)だ。他メディアの世論調査と同様、ここでも安倍内閣支持率は急落したが、注目すべきは支持率の男女差である。男性の支持50%、不支持31%に対し、女性は36%対35%。特にこれまで安倍政権を支えていた50歳代女性の支持率が急落したとの非公式の分析もある。50歳代女性と言えば、10~30代の若者を子どもに持つ世代だ。福島を初めとする放射能汚染地では自分の子どもが甲状腺がんになるかもしれない。それ以外の地域でも、自分の子どもが「貧困の徴兵制」(他に就職がなく、生きていくためにやむを得ず自衛隊に入らざるを得ない状況に追い込まれること)により戦地に送られるかもしれないと、最も危険を感じている世代でもある。こうした世代を中心に「いのち」「子ども」を価値観の最上位に置く女性からの支持が事実上「崩壊」状態に至ったことは、「いのち」を滅ぼす戦争と原発に狂奔する安倍政治に対する女性からの明確な「拒否」回答である。

2.地域政党「対話の会」の三日月支援

これに対し、野党側が擁立、当選を果たした三日月氏も、小鑓氏ほどではないがお世辞にも適切な候補者とは言い難かった。嘉田由紀子前知事の後継指名を受けたとはいえ、元民主党国会議員で、原発輸出を可能とする原子力協定に賛成。「卒原発」を標榜する資格があるのかはかなり疑わしかった。出身はJR連合傘下の西日本旅客鉄道労働組合(JR西労組)。この労働組合には、JR西日本が福知山線脱線事故という重大事態を迎える中でも、安全対策で積極的な行動や提案はほとんど見られなかった。JR西日本では少数派組合である国労やJR総連系のJR西日本労働組合が安全問題で積極的に行動したのと対照的だった。

こうした状況の中でも三日月氏が当選できたのは、嘉田県政を2期8年にわたって支えた地域政党「対話でつなごう滋賀の会」(対話の会)が三日月氏を支援したことが大きい。1期目の嘉田知事が、県政最大の懸案だった新幹線「栗東新駅」建設を無駄な公共事業の象徴として公約通り「凍結」した後、県議会自民党が嘉田知事を支持するグループと不支持のグループに割れた。こうした経緯もあり、対話の会は保守からリベラルまでかなり幅広い層を含んでおり、その後の大津市長選で越直美氏を当選させるなど、隠然たる影響力を持っている。滋賀県にはこうした特殊な政治環境がある。

いずれにしても、安倍政権を支えていた追い風は今や完全に逆風に変わった。この「追い風から逆風へ」の転換の背後に、巨大な反原発運動、集団的自衛権行使「容認」策動に反対する反戦運動の力があることは言うまでもない。市民が自発的に参加した闘いの力が、国会の議席構成とは無関係に、現実の政治に影響力を及ぼす新しい段階に入ったと言うべきであり、今回の敗北が安倍政権の「終わりの始まり」を彩るものであることは疑いない。

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今度は福島県沖で地震、一時津波注意報発令

2014-07-12 21:54:30 | 気象・地震
平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震」について(第73報)-平成26年7月12日04時22分頃の福島県沖の地震-(気象庁報道発表)

このところ地震が連続しており、解説記事を書くのが全然追いつかない…

土曜日の早朝、ぐっすり寝ていたかったのに、叩き起こされたという方も多いだろう。M6.8はかなり大きいが、日本周辺では年に数回、起きているレベルの地震だ。阪神、淡路大震災がM7.2だから、エネルギーはその15分の1程度か。深さは10km程度と東日本大震災と同じ浅い所での地震。発震機構は東西方向に張力軸を持つ正断層型 (速報)。

津波注意報が出されたのは、この地震が正断層型だったこともあるだろう(一般的に逆断層型より正断層型のほうが津波は大きくなりやすい)。津波注意報は今年4月のチリ沖地震以来だ。

気象庁は、この地震も先日と同様、東日本大震災の余震としている。今回の地震は正断層型だが、いわきの東、約140km付近というのは日本列島に近すぎて、アウターライズ地震との関係ははっきりしない。いずれにしても、今後1週間程度は余震に警戒してほしい。

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踏みにじられた福島から、それでも伝えたいこと

2014-07-11 21:49:46 | 原発問題/一般
(当記事は、当ブログ管理人がさっぽろ自由学校「遊」会報誌「ゆうひろば」向けに執筆した原稿をそのまま掲載したものです。)

 原発事故から3年。ここ最近、福島発のニュースで世間を賑わせたものと言えば「美味しんぼ」騒動、そして除染廃棄物の中間貯蔵施設問題を巡る石原伸晃環境相の「最後は金目でしょ」発言だ。いずれも、傷つき疲れている福島県民へ配慮のかけらもないものだ。

 「美味しんぼ」問題に関していえば、鼻血を出す人の話など事故直後は毎日のように聞いた。ティッシュペーパーの箱が空になっても止まらない鼻血に恐怖を感じ、着の身着のまま避難する人が現れた。今、政府、学会、メディア総力を挙げて「鼻血はデマ。あり得ない」と否定に躍起だが、愛郷心の強い福島県民が、住み慣れたふるさとも、家も、家財道具も、仕事も、学校も、地域の人間関係もすべて捨ててまで避難しなければならないとはよほどの事態に違いない。そうした事情を考慮せず「自主避難者がいなくなった後の福島」で取材をしても鼻血の証言など出るわけがない。あらかじめ決められた結論に沿って作為的に取材をしているメディアの報道に踊らされてはならない。

 最近の福島県民の健康被害は、鼻血など急性症状が中心だった事故直後と異なり「空咳が止まらない」「風邪を引きやすくなった」など、次第に慢性症状が中心の新しい段階に移行している。こうした慢性症状について、被曝との因果関係を証明するのは急性症状以上に難しいが、原爆症認定訴訟が勝ち取ってきた因果関係の証明などを根拠に粘り強く取り組まなければならない。

 石原環境相の発言は、政治家以前に人間としても弁明しようのない酷いものだ。確かに除染廃棄物を貯蔵する中間貯蔵施設の受け入れを表明した地域はないが、いくら設置候補地が帰還困難区域とはいえ、加害者である国・自治体・原子力ムラがひとことの謝罪もないまま「お前らはどうせ帰れないのだから、受け入れると言ってくれればカネはやる」では交渉がまとまるほうがおかしい。福島をあまりにバカにしている。

 中間貯蔵施設の運営を手がける計画の日本環境安全事業(株)は、元々「公害防止事業団」が母体で、猛毒のPCB処理を手がける特殊会社に看板を掛け替える形で発足した。取締役の1人、由田秀人氏は環境省の天下り官僚だ。この会社の発足時、PCB処理は2016年で終わる計画だったが、中間貯蔵施設を手がけることで会社の寿命は30年延びる。環境省にとって、30年後まで天下り先も安泰というわけだ。

 原発誘致にカネ、維持するにもカネ、後始末もカネ。福島原発事故さえ自分たちの天下り先の「延長」に利用する。そんな薄汚い連中に、最大の被害者の福島県民が「最後はカネ」などと言われてたまるか!

 さっぽろ自由学校講座「福島を遠く離れて」の最終回となる第5回では、こうした福島を巡る様々な問題を取り上げる。「カネの成る木」原発に群がって利益を得てきた者は誰か。無責任大国ニッポンを責任ある真の文明国に変えるために必要なことは何か。ぜひ、講座に足を運んでいただきたいと思う。

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7月8日夕方の北海道の地震について

2014-07-09 22:53:50 | 気象・地震
平成26年7月8日18時05分頃の石狩地方南部の地震について(気象庁報道発表)

夕食時の北海道を突如、襲った震度5弱の地震。北海道に来てから、緊急地震速報を聞くのは初めてだ。福島時代の悪夢をよみがえらせる嫌な音である。ただ、局地的な地震だったようで、私の住む地域では全く揺れを感じなかった。

地震の規模はM5.6と、日本付近では月に1回程度は発生している、それほど大きいとはいえないもの。震源は3kmと極めて浅い。発震機構(地震のメカニズム)は西北西-東南東方向に圧力軸がある逆断層型。

北米プレート内部で起きた地震で、東北地方で起きている一連の内陸型地震と同様のものと考えられる。気がかりなのは、北海道の南部でこのところ、プレート内部の逆断層型地震が増えてきていることだ。東日本大震災の直前数年間の東北地方と同様、ある種の「不気味さ」を感じる。東北でも、岩手・宮城内陸地震など、東日本大震災の直前2~3年は今回と同様の内陸型地震が続いた。

北海道・浦河沖でのM7を超える巨大地震は、2003年を最後に発生しておらず、それから10年以上経過している。プレート境界型地震には周期性があるため、今すぐ巨大地震が到来するなどと言うつもりはないが、「不気味さ」は感じる。北海道南部沿岸・東北北部沿岸地方では、備えをしておいて損はない状況といえる。

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大間原発差し止め訴訟 函館市長、堂々意見陳述

2014-07-06 23:18:33 | 原発問題/一般
大間凍結「函館市民の総意」 東京地裁で初弁論 市長が陳述、国側は却下求める(北海道新聞)

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 青森県大間町で建設中の大間原発をめぐり、函館市が国と事業者の電源開発を相手取り、建設差し止めや原子炉設置許可の無効確認などを求めた訴訟の第1回口頭弁論が3日、東京地裁(増田稔裁判長)で開かれた。国側は、函館市に原告適格(訴える資格)はないと却下を求めた。函館市側は工藤寿樹市長が意見陳述し、「最終的に住民の生命、安全を守らなければならないのは基礎自治体の市町村。大間原発の建設凍結は函館市民の総意だ」と訴えた。

 自治体が原発の差し止めを求めた訴訟は初めて。電源開発側も却下を求めた上で、函館市側が大間原発の問題点と指摘した「巨大活断層の見落とし」や「不十分なテロ対策」などについて争うとした。

 工藤市長は意見陳述で、函館市と大間原発は最短で23キロしか離れておらず、事故が起きた場合、人口が多い同市から市民が速やかに避難するのは困難と説明。「福島の事故を踏まえ、30キロ圏の自治体は避難計画の策定を義務付けられたが、原発建設の同意権は認められないままだ。手続きや手順を見直すこともなく建設を続けるのは、極めて横暴で強圧的なやり方だ」と主張した。

 被告側は答弁書で、函館市側が憲法の地方自治に関する規定から「地方自治体の存立を維持する権利(地方自治権)」を導き、訴えの根拠とした点に反論。「憲法は地方自治を制度として保障したもので、自治体の具体的な権利を保障したものではない」と述べた。<北海道新聞7月4日朝刊掲載>
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函館市が提訴した大間原発差し止め訴訟で、工藤壽樹・函館市長が堂々と意見陳述をした。陳述全文は、函館市サイトで読むことができる。

これに対し、国側は市の主張に全く反論できず、「市側に訴訟適格性がない」(訴える資格がない)として門前払いを求めることしかできなかった。地域と住民を守るため、堂々と原発の違法性を訴えた函館市に対し、情けない限りだ。

「憲法は地方自治を制度として保障したもので、自治体の具体的な権利を保障したものではない」という国側の主張は詭弁だ。日本国憲法に基づく権利をできるだけ具体化させず、抽象的な「概念」へと後退、空洞化させようとする企てを、自民党政府は戦後一貫して行ってきた。その行き着く果てが「閣議決定で戦争参加を可能とする」憲法破壊のクーデターだ。

これに対し、函館市の訴訟は「地域から住民とともに憲法に規定された権利を個別・具体化していく闘い・試み」のひとつとして重要な意味を持っていることを、いま一度確認しておきたい。

意見陳述全文を読むと、市側の主張には説得力に富んでおり、福島原発事故を教訓として地域と住民を原発災害から守ろうとする強い意志が感じられる。当ブログは函館市の訴訟を全面的に支持する。

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7月5日早朝の岩手県沖地震について

2014-07-06 22:11:19 | 気象・地震
「平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震」について(第72報)-平成26年7月5日07時42分頃の岩手県沖の地震-(気象庁報道発表、PDF)

東北で、久しぶりに震度5弱を観測する地震があった。報道発表によると、地震規模はM5.9、震源深さは49km、発震機構(地震のメカニズム)は東西方向に圧力軸を持つ逆断層型。これは、昨年8月4日の宮城県沖地震(資料)とほぼ同じだ。

東日本大震災は、震源深さが約10kmという浅い場所での地震だったが、最近、震源が40~50km程度のやや深めの場所での地震が増えてきている。昨年5月18日、福島県沖を震源とする地震(資料)も深さ46kmの震源の地震だ。逆に、最近は10km程度の浅い震源の地震は減少傾向にあり、興味深い。

報道発表の仕方からわかるように、気象庁はこの地震も東日本大震災の余震活動の一環と見ている。もちろん、地球的規模から見れば10kmか40~50kmかは誤差の範囲だろうから、これらの地震を東日本大震災の余震活動の一環とする気象庁の見解に、当ブログが正面から異議を唱えることは差し控えたいと思う。しかし一方、2012年頃までは、余震も10~20kmの比較的浅い震源に集中し、40~50km程度の深さで起こるものがほとんどなかったことを考えると、最近の地震は東日本大震災の余震活動の一環と捉えるとしても、以前のものと「毛色」が変わってきている。

数年後に再び東北沖を震源に巨大地震が起き、「いま考えれば、数年前の40~50km震源の地震は前震活動だった」などと振り返られることがないよう、最近の毛色の変わってきている地震活動については、少し丁寧に見ていく必要があると思う。

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