安全問題研究会~鉄道を中心とした公共交通を通じて社会を考える~

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問題は本当にジャニーズだけか? 日本企業に「行動変容」迫る「ビジネスと人権」の大波

2023-09-22 22:30:12 | その他社会・時事
(この記事は、当ブログ管理人が月刊誌「地域と労働運動」2023年10月号に発表した原稿をそのまま掲載しています。)

 ●「帝国」の落日

 所属タレントの絶大な人気と、それがもたらす巨大な経済効果によって芸能界をほしいままに支配し、「帝国」とまで評されたジャニーズ事務所の「落日」がはっきりしてきた。

 ジャニーズ事務所の綻びの兆候は、2016年、国民的な人気を誇っていた所属グループSMAPが事務所によってテレビ番組での公開謝罪を強いられ、事実上の空中分解に追い込まれたころから現れていた。

 この騒動の過程で、SMAPの育ての親とされるジャニーズ事務所の敏腕マネージャー飯島三智さんが、5人のうち事務所に残留した木村拓哉さんを除く4人のメンバーとともに事務所を去った。ジャニーズ事務所の「女帝」とされるメリー喜多川副社長(2021年死去)から、(自分に意見するなら)SMAPを連れて出ていくよう「勧告」を受けたためとされる。自分亡き後の後継者を娘の藤島ジュリー景子氏とすることで、この時すでにメリー副社長の意思は固まっていたようだ。

 事務所を去ったSMAPメンバー4人のうち3人(稲垣吾郎さん、香取慎吾さん、草彅剛さん)は、飯島さんが設立した新事務所に移籍し「新しい地図」を名乗っている。移籍当初は「新しい地図」のメンバーを使わないよう求めるジャニーズ事務所の有形無形の圧力により、なかなか活躍の機会が与えられなかった。だが、2021年に入り、これらの不当な「圧力」が、公正な競争を妨げる独占禁止法違反の疑いがあるとして公正取引委員会から勧告を受けたあたりから大きく潮目が変わり始めた。

 メリー副社長の弟で、ジャニーズ事務所社長を務めるジャニー喜多川氏が死去したのは、姉に先立つ2019年のことだった。ジャニー氏は、売れるタレントを見抜く「天賦の才能」があるとされ、またプロデューサーとして発掘したタレントの育成にも能力を発揮した。一方で芸術家肌の性格から、事務所の経営等、管理的な業務には無関心といわれており、事務所経営をメリー氏、タレント発掘・育成をジャニー氏がそれぞれ担当するという「適材適所」の役割分担の下で「帝国」を築いたとされる。

 ●没後に噴き出した「黒い過去」

 1980年代に青春時代を過ごした本稿筆者にとって、同世代のジャニーズタレントといえばシブがき隊、光GENJI、また藤島ジュリー景子氏の辞任を受け、今回社長に就任した東山紀之氏もメンバーだった「少年隊」などがある。だが、ジャニー氏の特殊な性的嗜好は、すでにそのころから芸能界はじめ公然の秘密であると同時に、触れてはならないタブーともなっていた。

 筆者が高校生の頃、同じクラスの女子生徒からこんなことを言われたことがある。「ジャニーズの社長のジャニー喜多川って人がいるんだけど、ホモで変態なんだって。デビューしたいって応募してきた男子を抱いてみて、抱き心地が良かったら採用、悪かったら不採用にしてるって聞いたんだけど、変態で最低だよね」。

 彼女がそんな根拠不明の話をどこで聞きつけてきたのかわからないが、おそらく週刊誌などの類だろう。話し相手に私を選んだ理由も不明だが、おそらく当時の私が「反論できなさそうなタイプ」に見えたことも、今思えば一因かもしれない。時は1980年代後半、すでにそのころからジャニー喜多川氏が行っていた所属タレントへの蛮行は、芸能界のみならず、多くの一般人でさえ知るところとなっていた。その内容も、普通の感覚を持つ女性はもちろん、多くの男性でさえ嫌悪感を抱くような悪質な性加害行為だった。

 抑え込まれていた性加害が公然と語られるようになったのは、メリー・ジャニー姉弟の相次ぐ死去でタブーが取り払われたことが大きい。とりわけ元所属タレントのカウアン・オカモト氏による今年4月12日、日本外国特派員協会での記者会見は内外に強い衝撃を与えた。ジャニー氏から受けた性被害の詳細が含まれていたからである。さらに、オカモト氏は記者会見の場に日本外国特派員協会を選んだ理由について「日本のメディアはおそらくこのことは報じないだろう。でも外国のメディアならば取り上げてくれるのではないかと言われた」と述べた。一般人でも知っているジャニー氏の性加害を、芸能関係者が知らなかったなどということはよもやあるまい。もちろんそれを知りながら、冒頭で記したように「所属タレントの絶大な人気と、それがもたらす巨大な経済効果」を前にして、日本の大手メディアは見て見ぬふりをするという共存共栄かつ「共犯」関係に長く浸かってきた。オカモト氏の会見には、日本のメディアに関する深い不信もにじんでいた。

 ジャニー氏が行った性加害の詳細については、あまりに品性下劣で、労働運動・社会運動をテーマとする本誌の趣旨にふさわしくない上、本稿の主題でもないため商業メディアに譲ることにし、ここでは問題の要点のみ列挙するにとどめたいと考える。(1)「帝国」と呼ばれるほどの絶大な影響力を誇る芸能事務所の経営幹部によって、所属タレントという圧倒的弱者に対し、日常的・継続的に行われた人権侵害であること、(2)日本政府、メディアを含む経済界が利益のために「黙認」という形で性加害に事実上加担してきたこと、(3)ファンも自分が「推し」活動(近年、芸能界隈で急速に使われるようになった用語で、好きな芸能人を応援する活動一般を指す)をしているジャニーズ所属タレントの「偶像」を維持するため性加害黙認の形で加担してきたこと――を指摘しておけば十分だろう。

 ●「ビジネスと人権」の「黒船」襲来

 ジャニーズ事務所所属タレントに対する喜多川氏による性加害問題は連日商業メディアを賑わせているが、ここ最近のこうした目まぐるしい動きの背景に大きな国際的潮流があることを指摘しておく必要がある。キーワードは「ビジネスと人権」だ。人権の視点から企業活動が適切かどうかを点検し、人権侵害につながるような不適切な経済活動を行う企業に対して「行動変容」を促そうという国際的な動きである。

 日本が東日本大震災・福島第1原発事故による混乱のさなかにあった2011年、国連人権理事会が「ビジネスと人権に対する指導原則」を採択した。これに呼応し、OECD(経済協力開発機構)も「多国籍企業行動指針」に人権の章を追加する改正を行う。児童労働、男女の差別的取り扱い、環境破壊など企業活動が与える負の影響を監視する国際的合意ができたのである。

 人権問題に敏感な欧米諸国の反応は早かった。英国政府は2013年、ビジネスと人権に関する行動計画(NAP)を策定。2014年には、非財務情報(経営状態にとどまらず、広範な企業活動全般に関する情報)の開示を義務付けるEU(欧州委員会)指令が発出された。英国、オーストラリアは奴隷労働禁止法を制定。ドイツは「サプライチェーン法」制定に動いた。サプライチェーンは、直訳すれば「供給網」のことで、生産から流通まで、企業が財・サービスを消費者に届けるまでにおける経済活動のあらゆる段階を意味する。日本でも流通業界などの現場では注釈なく使われる一般的な用語である。ドイツの法律に関して筆者は現段階では内容を確認していないが、サプライチェーンの語感から、経済活動のあらゆる段階における人権侵害に対し、網羅的に規制をかける内容であることは想像がつく。

 日本ではやや遅れて、2016年にNAP策定を行うことを決定。2022年、「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」が策定された。このガイドラインが「日本版NAP」と呼べるものかどうかははっきりしないが、少なくとも日本政府がそのように考えていることは、策定までの過程を示した一連の公文書を見るとうかがえる。あくまでもガイドライン(指針)であり、強制力を伴わないことから、企業がこのガイドライン通りに行動を変容させるかどうかは、企業・経済界の意識次第の部分が大きいといえよう。

 前述したように、欧米諸国では「ビジネスと人権」の精神を、強制力を持つ法律の形で実現しようという動きも活発になってきている。国際的には「人権デューディリジェンス(DD)法」と呼ばれ、EUは2022年2月、特定の企業に対して企業活動における人権や環境への悪影響を予防・是正する義務を課す「企業持続可能性デューディリジェンス指令案」を発表している(EUには、EU議会で制定され、加盟国を強制的に拘束する「法律」と、加盟国を拘束しないがこれに準じて国内事情に見合った立法措置を促す「指令」があり、これは後者に相当する)。近い将来、正式決定され指令となることは避けられない情勢だ。

 日本でも、人権DD法制定に向けた動きが出始めている。今年4月25日には、休眠状態だった「人権外交を超党派で考える議員連盟」が会合を開き、一定規模以上の企業に人権DDに基づいた行動を義務付ける法整備を目指すことを確認した。今年4月30日付け毎日新聞の報道によれば、この議員連盟は2021年秋までの人権DD法制定を目指していたが、前述のガイドラインが公表されたためにいったん休眠状態となったという。

 ガイドライン公表は「ビジネスと人権に関する行動計画の実施に係る関係府省庁施策推進・連絡会議」によって行われたが、省内に大臣官房ビジネス・人権政策調整室という担当部署が置かれている経産省が策定を主導したことは間違いない。そして、旧通産省時代から「経団連霞が関支店」と揶揄されてきた経産省にとっては、企業・経済界への強制力を伴う法律制定の動きが本格化する前に、強制力を伴わず企業の自主的行動にゆだねる形でのガイドライン策定で「機先を制する」狙いもあったことは間違いないと思われる。実際、この推測を裏付けるように日本政府の人権DD法制定への動きは今なお鈍い。

 だが、ある「官邸幹部」から議連に対し、議員立法での法制化に向けた働きかけがあったことが、議連再起動のきっかけとなった。「人権問題をめぐって国際社会の日本への視線が厳しさを増しており、どのような分野からでもいいので、取り組みを目に見える成果として示さないと持たない」との官邸幹部の危機感があると報道されている。

 ●「ジャニーズ問題の消費」で終わらせないために

 現在、国連人権理事会の下部組織として「ビジネスと人権に関する作業部会」が設置されている。この作業部会メンバーが7月24日から8月4日の日程で初めて来日し、日本政府や企業による人権DDへの取り組み状況を調査した。ジャニーズ問題に関しても聞き取りが行われた他、大阪、愛知、北海道、福島を訪問。東京電力に関しては、原発作業員の労働環境や多重下請け問題など、日本企業による人権侵害状況を直接現地で調査した。

 作業部会は日本に関して「三つの根本的問題」を指摘した。第1は、先進的なグローバル企業と家族経営を含む中小企業との間で、指導原則の理解と履行に大きなギャップがあること。第2は「人権を保護する国家の義務」を政府が十分に果たしていないこと。第3として、各企業に合わせた要求への対応能力の構築が必要だということだ。作業部会は、日本では「裁判所も人権意識が低い」として裁判官に対する人権研修の実施を促す声明を発表している。

 作業部会が調査対象とした企業のほとんどが、公正な競争の観点から、政府に対して人権DDの義務づけを望んでいると公表されたことは少し意外だった。作業部会がどのような企業を調査対象に選んだのかわからないが、調査本来の趣旨から見て、いわゆる「意識の高い」企業が選択的に対象とされたとは考えられない。そのような抽出の仕方をするのであれば、わざわざ訪日までして調査する意味に乏しいからだ。それだけに、義務化を望む声は経済界の主流とまでは言えないとしても、その少なくない意思だと見ておく必要はあろう。なにしろ、経団連ですら広報誌「月刊経団連」(2022年5月号)でビジネスと人権を巡る世界の動きを紹介し、加盟企業に取り組みを促しているくらいなのだ。背景には、望むと望まざるとにかかわらず、世界の潮流に合わせたビジネス展開をしなければ、日本企業が国際市場から締め出されるという経団連なりの強い危機感があるといえよう。

 むしろ、先行する企業・経済界に比べて、遅れているのが政府、消費者の意識改革である。政府は遅々として法制化に動かず、消費者は「安いニッポン」問題が深刻化する中で「供給される財・サービスの背景に多少の問題があっても、安ければ目をつぶる」長年の意識から抜け出せていない。ジェンダー問題に関しても、このところ法制度や仕組みより「アンコンシャス・バイアス」(男は/女はこうあるべきという無意識の偏見)に焦点が当たっているように、意識改革が求められる局面になっている。エシカル消費などというおおげさな言葉を使うまでもなく、「自分が今、買おうとしている財やサービスの背景に何があるのか」「自分が目をつぶってお金を払うことで誰かが苦しんでいないか」を意識することがますます重要になってきている。

 作業部会の調査メンバーが離日するにあたって行われた会見では、メディアの質問はジャニーズ問題1色になった。司会者がジャニーズ以外のことも質問するようメディアに促したにもかかわらず、参加した記者たちは無視してジャニーズ問題の質問を延々と続けるという醜態をさらした。そのこと自体が「数字が取れる=メディア企業として儲かる」のであればいいという、人権DDに真っ向から反する行為であることはいうまでもない。

 それでも、性加害に加担した過去がなく「真っ白」なメディアがそのように振る舞っているにすぎないのであればまだ救いもあろう。だが、すでに述べたようにメディアもジャニーズタレントを起用して莫大な利益をあげることと引き換えに性加害を黙認し「共犯」関係だったのである。そのメディアが、「落日」を迎えたとたんにジャニーズ叩きで正義や知る権利など振りかざしたところで、しょせんは茶番劇に過ぎないことを視聴者は見透かしているに違いない。

 ジャニーズをめぐる一連の騒動を、メディアによる数字稼ぎのためのエンタメ的消費で終わらせてはならない。私たちは「その先」を見据えなければならない。メディアも同罪ではないのか。メディア自身の人権DDはどうなっているのか。厳しく追及していく必要がある。作業部会も指摘した「被曝作業員」に対する多重下請け構造に伴う賃金ピンハネ問題もほったらかしにして、原発は再稼働に向かっている。汚染水の海洋投棄という人類史上最悪の環境破壊が政府公認の下に白昼堂々と行われているが、メディアは見向きもしないどころか、「汚染水」の単語を使う者、海洋放出に反対する者は中国の手先だとでもいうべき差別排外主義的宣伝に手を貸している。そのことも徹底して問わなければならない。

 ともあれ、賽は投げられた。ビジネスと人権をめぐる潮流は、幾多の抵抗に直面しても、後退することはないと思う。無益な抵抗を続ける企業はいずれ国際市場から淘汰されることになる。本質的なことに目を向けられたくない資本主義とグローバル企業によって作り出される空騒ぎから距離を置き、企業に行動変容を促していくこと、「地球の裏側に住んでいる女性や子どもたち」のために何ができるか考え、微力でも世界市民として良識ある行動をとること――私たちに課せられた課題はこれに尽きる。

(2023年9月17日)

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〔週刊 本の発見〕『交通崩壊』

2023-09-08 21:53:38 | 書評・本の紹介
(この記事は、当ブログ管理人が「レイバーネット日本」の書評コーナー「週刊 本の発見」に寄稿した内容をそのまま転載したものです。)

公共交通の危うい姿と希望~『交通崩壊』(市川嘉一 著、新潮新書、820円+税、2023年5月)評者:黒鉄好

 地方の公共交通は今や青息吐息。自宅の前を走る鉄道やバスがいつ溶けてなくなってもおかしくない。コロナ禍があぶり出したのは、それ以前からとっくに「首の皮1枚」だけでつながる状態に陥っていた公共交通の危うい姿だった。

 本書は「第1章 統合的な交通政策の不在」「第2章 鉄道の役割を再定義する」「第3章 遠ざかる路面電車ルネサンス」「第4章 CASE革命時代のクルマの役割」「第5章 歩行者に安全な歩道を取り戻せ」から成る。第1章が指摘する統合的な交通政策の不在は今に始まったことではない。国交省には総合政策局があるが司令塔としては心許ない。

 第2章のタイトルは見るだけでも疲れる。鉄道を維持するためにそこまでしなければならないのかと溜息が出るが、半世紀の人生をすべて鉄道ファン稼業に捧げてきた私の目で見ると、決して大げさとはいえない。実際、ローカル線は生活手段としては地域住民の選択肢にすらなり得ていない。「通学の高校生が困る」をローカル線存続の根拠に訴えたところで「それならスクールバスを導入すればよい」と言われるだけ。最近は議論にさえならないまま、公共交通が抵抗もなくすんなり廃止されていく厳しい現実がある。

 だが希望もある。大型自動車運転手の不足に拍車をかける「2024年問題」に政府が有効な手を打てそうな気配はまったくないからだ。「運転手不足でバス転換ができない」を理由に存続を決める北陸鉄道(福井県)のような実例も、ここに来て出始めた。

 私の見るところ、地方を含め鉄道が生き残る鍵は3つの「K」にある。環境・観光・貨物である。コロナ禍最大の教訓は、観光「一本足打法」が危険であること、ステイホームでネット通販利用が増え、ただでさえ右肩上がりの貨物輸送量がさらに伸びたことにある。その影響をようやく脱したばかりなのに、コロナ禍など忘れたように、市川氏が観光中心の論調を展開し、環境や貨物にほとんど触れないのには違和感がある。貨物をメインに、次が環境、そして観光は3番目だと私なら考える。観光を第一に据えるのは楽しく取り組めるからに違いないが、公共交通の基本はやはり住民生活の役に立つことである。

 最も危惧を感じたのは第5章だ。電動キックボードという新たなモビリティ(移動手段)の登場で歩行者にとって歩道が修羅場になりつつある。歩行者の安全を守りたい警察庁と電動キックボードビジネスを展開したい業界・経産省の攻防の結果、「特例特定小型原動機付自転車」という珍妙な名称のモビリティが生まれることになった。歩道走行ができる最高時速6km以下の電動キックボードの法律上の名称である。この調子だと「特別特例特定うんたら」なんて名称も遠からず生まれるのではないか。そもそも1989年に刊行された「市民と交通」(廣岡治哉・著、有斐閣選書)でも歩行者への「歩行権の回復」が主張されている。34年も前の本と同じ問題点が同じ形で指摘されているのだ! 日本の交通行政がいかに無策で進歩のかけらもないか、これほどよくわかる実例もなかろう。

 本来なら5つの章のどれもが1冊の独立した本になり得るほどの重要なテーマで、詰め込みすぎだと感じる。言いたいこともある。だが、公共交通(特に鉄道)に国の関与を求める結論はしっかりしている。公共交通の危機を理解しているものの、どうしたら復活させることができるか知りたい方への入門書としては自信を持ってお勧めできる。

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いつまでも続く「終わらない猛暑」と、当ブログのアクセス急増

2023-09-05 23:52:59 | 気象・地震
北海道に住むようになって丸10年。国連が「地球温暖化の時代は過ぎた。今は地球沸騰の時代」と言うように、2023年の夏はかつてなく異常だ。道内では、お盆を過ぎると朝晩は肌寒くなり、上着がほしいと思うのが普通だが、今年は9月に入ったのにまだ深夜に半袖でも汗がにじみ出てくる。北海道らしいカラッと乾燥した快晴の日は、7月上旬に一度くらいあったような気がするが、それを最後にもう2ヶ月以上、本州のような蒸し暑く寝苦しい毎日が続いている。

新型コロナ感染拡大以降、私は週1回のテレワークを続けてきたが、ここ数週間は取りやめている。冷房のない自宅よりも、冷房のある職場事務所のほうがはるかに能率が上がるからだ。いまはコロナより熱中症の危険のほうが高い。実際、冷房がないので窓を全開にして寝ていると(お盆を過ぎても窓を全開にして寝なければならないこと自体がかつてない異常事態なのだが)、一晩中救急車のサイレンが鳴りっぱなしで眠りが浅いまま目が覚めるということもある。8月21日~27日の1週間に限れば、熱中症搬送者は北海道が最多との報道もある。

日頃、低温で乾燥した気候に合わせて身体が調節されるようになっている北海道民にとって、サウナに入ったような高温多湿の日が2ヶ月以上も続くなどというのはかつてない事態だと思う。このままでは、北海道内の病院はコロナではなく熱中症患者でパンクしかねない。

とはいえ、個人の肌感覚なんて当てにならないので、このような場合はデータを当たるに限る。気象庁公式ホームページを見ると、今日、9月5日の最高気温は札幌市手稲区で平年より5.9度も高い。だが驚くのはまだ早い。同じ手稲区で、最低気温に至っては平年よりなんと6.2度も高いのだ。

昼間の暑さもさることながら、とにかく最低気温が下がらず、夜が異常に暑く寝苦しい。結果として体力を消耗し、疲労が取れない。一体この異常な夏はいつになったら終わるのだろうか。

そんな中、8月下旬から当ブログのアクセス数が急増している。増えだしたのは汚染水放出が決まった8月22日頃からで、8月27日に放送されたNHK「日曜討論」でこの問題が取り上げられてから急増した。特に、「日曜討論」に出演したNPO法人「福島ダイアログ」の安東量子理事長なる人物に関しては、大半の視聴者にとっては初めて聞く名前だっただろう。どんな人物か、そもそもNHKに出演するに値するのか。ネット検索をかけていたら、当ブログ2019年3月18日付記事「福島「エートス」首謀者を人物紹介に堂々登場させた北海道新聞」に行き着き、ここで彼女の「本当の姿」を知った、という人も多いようだ。

だが、この安東量子さんという人、「原発・放射能」界隈ではかなり早い段階から知る人ぞ知る存在だった。リンク先の記事でも書いているが、ICRP(国際放射線防護委員会)勧告の執筆者であり、同委員会第4委員長ジャック・ロシャール氏を日本に招請し、対話集会を開くなどということが、福島の「一介の植木屋」ふぜいにできるはずがなく、彼女の背後には明らかに「国際原子力ロビー」の強力な支援が付いているのである。

私は「日曜討論」はもとより、NHKの報道番組自体、最近はほとんど見ない。見るのは政府方針を知る必要があるときで、まさに政府広報としてしか用をなしていない。「中国人民なら党・政府の方針を知る上で見ておくべきで、この番組を見ずに政府方針の変更を知らなかったと主張しても通らない」と言われている中国の国営放送「中国中央テレビ」と最近は大して変わらない。総合テレビの画面右上には「NHK G」と表示されている。NHK GENERAL(総合)の略だが、最近の私にはNHK GIMIN(自民)の略に見えて仕方がない。そろそろ公共放送などという実態とかけ離れた看板は捨てて、NHKも「日本中央テレビ」にでも名称変更してはどうか。

安東量子さんのおかげでアクセスが急増したところに、汚染水放出開始が続いた。最初は「汚染水」という単語を検索して、ヒットした「非国民」「反日」サイト狩りが行われているのだろうと思っていた。だがアクセス解析をしてみると様子が異なる。2013年8月17日付記事「これは真夏の夜の怪談か?~「猛暑の後には大地震が来る」説について」が、もう10年も前の記事なのに異常に読まれているのだ。気象庁がこの8月を「観測史上最も暑い8月だった」と公式発表(「8月の天候」「夏(6~8月)の天候」)したことが原因らしい。

リンク先の記事をお読みいただくとわかるので、ここでは繰り返さないが、過去、記録的猛暑の翌年に大震災というケースがあり、注目が集まっているようだ。確かに、猛暑日続出の異常な暑さが9月になってもまったく収束する気配のない状況を見ていると、来年あたり、首都圏直下型地震か南海トラフ大地震、あるいはその両方が来るのではないかと思いたくなる心理状態はわからなくもない。因果関係が証明できるような性質のものでなく、あくまで都市伝説やオカルトの域を出ないので、この説を信じるのはほどほどにしておいていただきたいと思う。

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野村農水相「汚染水」発言は「言い間違い」などではない!

2023-09-03 17:33:03 | 原発問題/一般
(この記事は、当ブログ管理人が「レイバーネット日本」に投稿した記事をそのまま転載しています。)

野村哲郎農水相が、福島第1原発から海洋放出された、東電用語で「ALPS処理水」なるものを「汚染水」と正しく(?)発言したことに対し、「袋叩き」ともいうべき異様な状況になっている。原発事故を挟んで6年間を福島県で生活し、事故を身をもって体験するとともに、長く「霞ヶ関ウォッチング」を続けてきた1人として、私はこの発言を単なる「言い間違い」だとは思わない。あくまで推測に過ぎないが、野村氏の大臣就任までの経歴を考えると、彼が所管する農林水産業界隈に存在する「ある種の本音」を代弁したものではないか、という気がするのだ。

野村哲郎氏は岸田政権の閣僚の中では最高齢。農水省ホームページによると、1943年11月20日生まれで、まもなく80歳になる。地元・鹿児島県農協中央会常務理事を務め、農政の現場に明るいことは過去の記者会見を見れば明らかである。農水相を志して政治家になったと「解説」する事情通もいる。

自身が常務理事を務めた鹿児島県農協中央会や、傘下の県内各農協との間で、今でも頻繁に意見交換をしていることは、過去の記者会見をみれば明らかである。そうした地元農協との懇談の中で「あの福島の汚染水のことですが、大臣、何とかできませんか」「いや、気持ちはわかるんだけれども、政府方針としては、基準値以下に薄めて安全にして流すということになってるもんですから、今は内閣の一員という私の立場もちょっと考えていただかないと」というような会話が交わされているであろうことは想像に難くない。そうした「文脈」の中から、内輪の話の中で何気なく飛び交っている汚染水という用語を、記者会見が公の場だということを失念して、つい使ってしまった、というあたりが真相ではないだろうか。この推測が正しければ、農業者の中に汚染水という用語を使って先行きを心配するムードがかなりあるということの証左だろう。そしてその懸念は無理からぬものである。「心配ない」という人は、原発事故以降の12年、政府・東電がこの事故に対して一度でも「本当の情報」を率先して公表したことがあるかどうか調べてほしい。

こんな話をすると、私が頼んでもいないのに「汚染水ではない、処理水だ。言葉は正しく使え」などと「日の丸印」の帽子をかぶって偉そうに説教してくる連中が湧いてきそうだが、そもそも海は漁業者にとっては神聖な「職場」である。安全か安全でないかの議論以前の問題として「これ、何が入っているかわからない液体ですけど、危険はありませんので、ちょっとここに捨てさせてもらっていいでしょうか」などとのたまう人物が、明日あなたの職場に土足で踏み込んできたらどう思うかという話でもある。普通の感覚を持っている人だったら「失礼千万」だと追い返すだろう。そうした無礼が、なぜ原子力ムラに限って堂々と許されているのかというのは、どんなバッシングに遭おうと確認しておかなければならない重要なことである。

9月1日に放送された文化放送「大竹まことのゴールデンラジオ」で、ジャーナリスト神保哲生さん(ビデオ・ニュース・ドットコム)が興味深い指摘をしている。「12年間、政府は福島第1原発事故に関する重要な決定から逃げ続け、『不作為』『不決定』のまま12年間を過ごした。そうしているうちにタンクは一杯になり、本当に海洋放出するしかなくなってしまった。今さら国民に向けて『12年間、何も考えていませんでした』とは説明できないので、『何らかの形で処理』したことにしたいのだろう」。

さらに神保さんは、過去のBSE(狂牛病)問題などを引き合いに、こう付け加える。「その政策の所管省庁の記者クラブが決めた用語が『正式用語』となり、それ以外の用語は使えなくなる。従来、マスメディアしかなかった時代にはそうして記者クラブを抑え込めば『正式用語』で報道することができる一方、(政府には政府の立場があり、メディアも政府と申し合わせの上で『官製用語』を使うという一種の『やらせ』を)一般市民も理解していた。だがSNS時代の今は違う。政府が発信した情報を『信じたい』人たちがいて、それと異なる情報を発信する人々に対する憎しみの感情が生まれ、政府寄りの一般市民が自主的にヒートアップしている。政府による情報統制以上に怖いことで、時計の針がもう1周、2周、進んでしまったと思う」。

この神保さんの言葉には、全面的にではないが、頷ける点がいくつもある。福島原発事故以降の政府が当事者能力、適切な政策決定を行う能力を失っていて、解決ができないまま漂流し続け、追い詰められたらその場しのぎの場当たり的決定が繰り返される。その政府の場当たり的決定によって人災的に被害が拡大される--私がこの12年あまり福島を見てきた実感と一致する。政府がジタバタするたびに、本来なら生まれないですむはずの二次被害が生まれ、次々と拡大していく。その最大のものが今回の汚染水放出なのだという神保さんの指摘には非常に説得力がある。品のないたとえで申し訳ないが、自分の欲望の赴くままに飲み物を摂り続け、尿意を催してきたのに、誰にも相談できないまま、子どもがついに我慢できなくなって放尿してしまう--。私にはこの放出が、国力を衰退させる日本の末路に見えるのである。

メディアは中国から日本への「嫌がらせ電話」ばかり集中報道しているが、これには経済不振などで中国政府に不満を持つ若年層が、SNSなどで「電凸」(電話で突撃の略で、自分の主張を伝えたい関係機関に電話を集中させることを意味するネット用語)を煽り、政府もそれを黙認しているという側面もある。これらの報道が事実なら、日中両国の市民が政府の頭を越えて非難の応酬を続けていることになる。メディア、政府が振り上げた拳を下ろす機会を失い、このまま取り返しのつかない事態を招く恐れもある。原発事故を福島県内で経験した「元一県民」としては、海に流すくらいなら、ヒートアップした日中両国の市民の頭に、冷たい汚染水でもぶっかけて冷やしてやりたいという気持ちになる。

「中国人へ 当店の食材は全て福島産です」--こんな看板を都内の飲食店で見つけた日本在住と思われる中国人がみずから110番通報、出動した警察が説得に当たる中、出勤してきた店主に猛烈に抗議、看板を書き換えさせる動画が「X」(旧ツイッター)で拡散するという騒ぎも起きた。店主は「ジョークのつもりだった」「中国人だけを対象にしたものではない」ことが後にメディアの取材で判明したが、「それなら『お客様へ』と書けばよい」というこの中国人男性の主張が正当過ぎて、ジョークではすまされない。

一方でこの店主は汚染水放出日が決定した8月22日には「福島県で処理水放尿」と書いた看板を店頭に掲出もしている。道徳、倫理のかけらもない汚染水海洋放出を「放尿」と揶揄するセンスは悪くなく、一見するとふざけているようにしか思えない飲食店主のこのような看板にこそ、事態の本質が現れている。

言葉とは「現に存在する何か」を表現する必要から生まれてくる。言葉狩りによって汚染水という言葉を消し去ることに成功したからといって、汚染水そのものが消えてなくなるわけではない。汚染水に代わる新しい単語は必ず登場してくるであろう。

奇しくも9月1日は関東大震災からちょうど100年の節目の日だった。行政、市民がそれぞれの立場から関東大震災100年を振り返る行事を開いた。ちょうど100年前の震災では「朝鮮人が井戸に毒を入れた」という流言飛語が拡散され、自警団によって多くの朝鮮人が虐殺されるという許すことも忘れることもできない事件も起きた。その100年後の今日、流言飛語を流した日本人自身が太平洋にみずから毒をまく日が来るとは何という皮肉だろうか。しかも100年前と異なり、今回は流言飛語ではなく事実として行われている。「過去に目を閉ざすものは未来にも盲目となる」(ワイツゼッカー・元西独大統領)という言葉があるが、この事態を招いたのも、結局は日本人が100年前の悲劇から学ばなかったからではないか。「汚染水」という言葉に対するバッシングだけが一人歩きする日本国内の現状を見ると、改めて私たち日本人全員が歴史の法廷で裁かれているのだと思う。

(文責:黒鉄好)

<音声のみ>2023.9.1 大竹まこと ゴールデンラジオ!「汚染水」バッシングの背景(ゲスト:神保哲生)


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【転載記事】アリの一言:野村農水相「汚染水」発言を問題視する政府・与野党・メディアの異常(レイバーネット日本より)

2023-09-02 22:26:30 | 原発問題/一般
(この記事は、K・サトルさんがレイバーネット日本に寄稿した記事をそのまま転載しています。)

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 野村哲郎農水相(写真左)が8月31日の関係閣僚会議のあとで記者団に、「汚染水のその後の評価について意見交換した」と述べたことが大きな問題になっています。NHKは1日朝のニュースでトップで報じました(写真右)。

 岸田文雄首相は直ちに、「遺憾なことであり、全面的に謝罪するとともに撤回することを指示した」と釈明。それを受け野村氏は、「言い間違えたことについて謝罪して撤回する。関係者に不快な思いをさせて申し訳ない」と陳謝しました。自民党からは「風評被害を助長する」と野村氏非難の声が上がり、立憲民主などの野党は責任を追及し、野村氏の辞任を求める声も出ています。

 笑い話のような話ですが、これが日本の政治の中枢で起こっている現実です。軽視はできません。
 野村氏の発言には何の問題もありません。異常なのは「汚染水」発言を重大問題視している岸田政権と与野党、そしてメディアの方です。

 第1に、海洋放出した「ALPS処理水」を「汚染水」と呼ぶことは全く間違っていません。これまでも繰り返し述べてきたように、「(ALPSを通して)薄めても放射性物質がなくなるわけではない」(今中哲二・京都大複合原子力科学研究所研究員、8月24日付沖縄タイムス=共同)のです。

 第2に、政府・自民党は「汚染水」という言葉は「風評被害を助長する」と言っています。野村氏が「関係者」に陳謝したのはそのためです。
 それは、「汚染水」という用語を使って海洋放出に反対している市民・団体が「風評被害を助長している」といっているのと同じです。「汚染水放出」に反対しているすべての人々・団体に対する中傷・攻撃と言わねばなりません。

 第3に、野村発言を問題視することは、政権が決めた「処理水」という言葉を使わなければ責任を追及されるという見せしめです。これは政権(国家権力)による言葉狩りにほかなりません。野村氏は閣僚ですが、その責任追及は一般市民にも影響します。とりわけメディアへの圧力効果は小さくありません。
 「戦争反対」と言っただけで「非国民」のレッテルを貼られて弾圧された戦中の状況とどれほどの違いがあるでしょうか。

 第4に、岸田政権・自民党が上記のような対応をすることは予想の範囲内ですが、想定を超えているのは、野党第1党・立憲民主の態度です。

 泉健太代表は1日の記者会見で、「水産業を所管している大臣なので(発言は)不適切だ。言い間違いだとしても、一連の処理水放出への対応が『緩んでいる』『自覚が足りない』と言われても仕方がない」と述べて責任を追及しました(1日付朝日新聞デジタル、写真中)。

 泉氏自身が「処理水」と呼んでいる問題はここでは問いません。問題は、泉氏のこの発言は「汚染水」発言が「風評被害を助長する」という政府・自民党とまったく同じ立場に立って野村氏の責任を追及していることです。

 その誤りは上述の通りですが、より重大なのは、野党第1党の党首が政府・自民党と同じ立場から「言葉狩り」を行っていることです。これは国家権力との一体化、大政翼賛化の象徴的な表れと言わねばなりません。

 汚染水放出に反対している中国を悪者にして(「鬼畜米英」を彷彿)、国内の反政府勢力を黙らせ、ナショナリズムを煽る。今回表面化した国家権力の「言葉狩り」、野党の大政翼賛化。そして深化するメディアの体制順応。
 「汚染水放出問題」は、日本が日米軍事同盟の下で事実上すでに戦争国家になっていることと、けっして無関係ではありません。

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