安全問題研究会~鉄道を中心とした公共交通を通じて社会を考える~

公共交通と原発を中心に社会を幅広く考える。連帯を求めて孤立を恐れず、理想に近づくため毎日をより良く生きる。

当ブログのご案内

当サイトは列車の旅と温泉をメインに鉄道・旅行を楽しみ、また社会を考えるサイトです。

「あなたがすることのほとんどは無意味でも、あなたはそれをしなくてはなりません。それは世界を変えるためではなく、あなたが世界によって変えられないようにするためです」(マハトマ・ガンジーの言葉)を活動上の支えにしています。

<利用上のご注意>

当ブログの基本的な運営方針

●当ブログまたは当ブログ付属サイトのコンテンツの利用については、こちらをご覧ください。

●その他、当サイトにおける個人情報保護方針をご覧ください。

●当ブログ管理人に原稿執筆依頼をする場合は、masa710224*goo.jp(*を@に変えて送信してください)までお願いします。

●当ブログに記載している公共交通機関や観光・宿泊施設等のメニュー・料金等は、当ブログ管理人が利用した時点でのものです。ご利用の際は必ず運営事業者のサイト等でご確認ください。当ブログ記載の情報が元で損害を被った場合でも、当ブログはその責を負いかねます。

●管理人の著作(いずれも共著)
次世代へつなぐ地域の鉄道——国交省検討会提言を批判する(緑風出版)
地域における鉄道の復権─持続可能な社会への展望(緑風出版)
原発を止める55の方法(宝島社)

●管理人の寄稿
月刊『住民と自治』 2022年8月号 住民の足を守ろう―権利としての地域公共交通
核のない未来を願って 松井英介遺稿・追悼集(緑風出版)

●安全問題研究会が、JRグループ再国有化をめざし日本鉄道公団法案を決定!

●安全問題研究会政策ビラ・パンフレット
こんなにおかしい!ニッポンの鉄道政策
私たちは根室線をなくしてはならないと考えます
国は今こそ貨物列車迂回対策を!

整理解雇撤回求め、日航客室乗務員が「クリスマススト」へ

2010-11-30 22:54:17 | 鉄道・公共交通/交通政策
日航の客室乗務員、クリスマスにストの方針(読売新聞)

-----------------------------------------------------------------
 日本航空の一部の客室乗務員でつくる労働組合「日本航空キャビンクルーユニオン」(CCU)は29日、厚生労働省などに対し、12月24、25日にストライキを実施する方針などを通知した。

 CCUは11月22日、整理解雇に反発し、870人の組合員の約9割の賛成でスト権を確立したが、手続きは留保していた。しかし、経営側との交渉に進展が見られないことから、スト実施を決めた。

 今後の交渉によってはスト回避の可能性もあるが、実施に踏み切った場合は、管財人である企業再生支援機構の出資や、東京地裁による更生計画の認可に影響が出る恐れもある。
-----------------------------------------------------------------

当ブログは、日本航空を食い物にした歴代経営者や運輸行政関係者の責任を論ずることもなく、一方的な整理解雇だけが進められることには明確に反対である。「税金投入を受けている奴らがストなんてけしからん」という大手マスコミの俗論に与するつもりも毛頭ない。どうしても人員整理の方針が変わらないとするなら、あらゆる戦術を駆使すればいい。

「税金投入を受けている奴らがストなんてけしからん」と思っている人が読者の中にいるかもしれないから念のため指摘しておこう。かつて国鉄でもストライキは禁じられていたが、鉄道労働者は安全に問題があるときはためらわずストライキを含む多様な戦術を駆使して闘った。国鉄分割民営化を通じて、闘う労働組合は押さえ込まれ、切り崩されて少数派になってしまったが、彼らが闘わなくなった結果、人員整理と労働強化が進みすぎ、尼崎事故のような論評以前の事故が起きるようになったのである。

一方、2009年6月に墜落事故を起こしたエールフランスでは、落雷の他、速度計の異常が事故原因とされ、また事故機以外にも速度計異常のエアバスA330型、A340型が多数運行されていることがわかったことから、事故後、乗務員の労働組合が会社側に「(事故機と同型である)A330型、A340型の速度計が修理されない限り、この2機種の乗務に応じない」と乗務拒否を通告した。この安全闘争の結果、エールフランスは35機運行されているA330型、A340型の全機で速度計交換を行う措置をとった。

公共交通の職場では「闘いなくして安全なし」は疑いのない真実である。税金が投入されているかどうかなんて、どうでもよいのだ。

今のような強引な人員整理が続けば、日本航空の行き着く先は大事故だけであろう。当ブログと安全問題研究会が発表した11月16日付の声明に対しては、「JALにはもう二度と乗らない」というトラックバックも寄せられている。

人員整理はさらなる乗客離れを招き、日本航空を管財人と経営陣が望んでいた再建からかえって遠ざけることになる。当ブログと安全問題研究会は、不当な人員整理をやめるよう、改めて管財人と経営陣に強く警告する。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

未来の産業、工場野菜

2010-11-29 21:51:39 | その他社会・時事
「未来野菜」産地は工場 エコで手軽、価格も安定(産経新聞)

-----------------------------------------------------------------
 施設内で効率的に野菜を栽培する植物工場が注目を集めている。店内で栽培した野菜を提供する“店産店消”の店も登場。栽培の手軽さから異業種の参入も増えているという。肥料や水などの資源を無駄なく使え、環境に配慮した「未来の産業」として期待が高まっている。(油原聡子)

 ◆店内で栽培、提供

 今春オープンしたイタリア料理店「ラ・ベファーナ汐留店」(東京)。店の中央に小型の植物工場が設置されている。高さ約2・3メートルのケース内には、幅約5・3メートル、奥行き70センチの棚が5段重ねられ、レタスなど4種類の葉物野菜が蛍光灯の光の下、水耕栽培されている。レタスの成長速度は露地栽培の3分の1の約30日。主な作業は週に1回程度、水を替えるだけという手軽さだ。店で使う半分を無農薬で栽培、毎朝約60株を収穫している。1年で2万株収穫可能だという。

 店内で栽培したレタスを使ったサラダを食べた千葉県柏市の男性会社員(31)は「工場で野菜を作るなんて未来のイメージ。柔らかい食感ですね」と満足げだ。マネジャーの大島力也さん(44)は「10月に野菜が高騰したとき、レタスの値段が3倍から4倍に上がったが、店で作っていたから影響は少なかった」と話す。光熱費などはかかるが「通年で見れば畑の無農薬野菜よりやや高いくらいでは」。

 植物工場に詳しい千葉大学の池田英男客員教授(62)=施設園芸学=は「生育環境をすべて制御するのが植物工場。少ない資源で効率よく生産でき、環境への負荷が少ない」と説明する。太陽光を使わずに完全人工制御する「完全人工光型」と、天候によって照明や室温制御も行う「太陽光利用型」があり、人工光の利用は日本が世界的にも進んでいるという。

 土壌を使わない水耕栽培が一般的で基本的には無農薬。葉物が中心で、汚れがほとんどないため捨てる部分も少ない。肥料を効率的に吸収させることが可能で、水も循環利用できる。

 ◆異業種も参入

 課題は採算性だ。施設建設費や運営費などがかかり、露地栽培より割高になることが多い。ただ、年間を通して安定供給できるため、「天候に左右されず、計画的に仕入れが行える」(飲食チェーン担当者)というメリットも。野菜が高騰すると工場野菜の方が安くなることもある。

 農林水産省によると、工場野菜が比較的多いレタスでも市場流通は1%に満たないという。しかし、新規事業や雇用の確保を求め、企業の参入も進んでいる。山梨県の運送会社「山梨通運」は今春から、社員の再雇用対策として、植物工場を始めた。担当者は「マニュアルがあるので失敗はない」と話す。

 矢野経済研究所(東京)によると、植物工場の平成20年度の新規工場建設市場の実績は16億8千万円だが、32年度には129億円の規模に拡大すると予測している。
-----------------------------------------------------------------

この「野菜工場」がどこまで伸びるか現時点では不明だが、かなり期待できることは確かだろう。去年や今年のような異常気象が今後も常態化するようであれば、工場野菜のほうが安い状態が固定化する可能性もある。

この生産方式の利点は記事にもあるとおり安定性だが、一方、デメリットは施設整備費や運転コスト(燃料費など)、輸送費などである。消費地から遠ければ、それだけ輸送費がかさみ、価格に跳ね返る。既存の参入者の多くが企業で、他業種からの参入が多いのも、元々あった遊休施設(空き工場など)を転用したため、初期投資が安くついたからだろう。外食産業などが、自分たちで消費する野菜を安定供給したくて参入するケースも目立っている。これなら「店産店消」とまではいかなくても、店の近くに工場を設けて輸送コストを最小限に抑えられる。

露地物の野菜を生産する農家の多くは高齢化しており、今後、引退が相次いでいく。農地も持たず、父母が農業者でなかった若い人たちが農地も持たずに身ひとつで参入してくるケースも増えるだろう。そのとき、畜産や果樹・花きのような「施設利用型農業」のひとつとして野菜生産を担う新規参入者が出てくることは容易に想像できる。そうした人たちに、施設での野菜生産を選択してもらえるように、今から制度的枠組みを整えておくことが必要だと思う。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

戸別所得補償制度元年 それでも続く米価崩壊~私たちはどうすれば?

2010-11-25 22:29:28 | その他社会・時事
(当エントリは、当ブログ管理人が月刊誌に発表した原稿をそのまま掲載しています。)

 自民党から民主党に政権が交代した2009年は自民党政権が編成した予算の大幅な組み替えができないまま暮れ、今年、2010年こそ民主党政権の予算編成元年となった。子ども手当と並ぶ民主党政権の目玉政策は、コメ農家に対する戸別所得補償制度であった。そのモデル対策が実施され、戸別所得補償制度元年となった2010年を振り返り、猫の目のようにクルクルと移り変わった農政の進むべき方向を再検証してみたい。

●戸別所得補償制度の概要

 民主党政権が導入した戸別所得補償制度は、農林水産省の説明によれば、米のモデル事業(2010年度限り、2011年度からはモデル事業を本格実施に転換)と自給率向上事業の2つの政策から成る。モデル事業は、需給調整(いわゆる減反)に参加しているコメ農家に対して主食用米の作付け面積10アール当たり15,000円を直接支払により交付して、水田農業を担う農家の経営安定を図る事業である。自給率向上事業は、大半を輸入に頼る麦、大豆などや米粉用米、飼料用米といった自給率向上のポイントとなる作物の生産を行う農家に対して、主食用米を作った場合と同じ水準の所得が得られるよう、作物に応じた金額を直接支払により交付する事業である。

 とはいえ、自給率向上事業は、名称こそ違うものの、供給過剰基調が続くコメの生産を抑え、余った水田で米粉用米や資料用米、麦や大豆などの転作作物を作らせるという意味において、自民党政権下で2009年から本格的に始まった水田フル活用事業(水田最大活用推進緊急対策)と酷似しており、その延長線上に位置づけられる政策と見てよい。

 ただ、大きな違いがひとつある。自民党政権下での減反が主として米価維持政策であったのに対し、戸別所得補償制度の一環としての自給率向上事業は、農家への直接支払であることだ。水田フル活用政策は、あくまでも自民党政権が旧来から行ってきた減反の延長線上にあった。主食用米の生産量を政策的に抑えることによって供給を減らし、米価を維持しようとする。そのため、減反に参加する一部農家の努力によって主食用米の供給が減った結果、米価が維持され、その効果は減反に参加しない農家にも及ぶことになった。つまり、減反に協力する正直者が馬鹿を見るという側面があり、公平感という意味で無視できないものがあった。

 これに対し、戸別所得補償制度による直接支払は、減反に参加した農家だけを対象とするようにした結果、不公平感が解消することになった。これは、減反に実効性を持たせるという意味では、大きな前進といえるものだ。

●初年度から予算不足の危機

 しかし、結論から言うと、戸別所得補償制度はモデル対策が試行的に実施された2010年度から早くも大きなほころびを見せた。その要因は、農政側の制度設計がきわめて大ざっぱなものであったことのほか、110年に一度の猛暑という人知ではいかんともしがたい不可抗力の側面もあった。また、後述するコメの特殊性も背景にある。

 制度設計の問題とは、直接支払額を「標準的な生産コスト」と「標準的な販売価格」を基に面積単位の全国統一単価としたことである。これは、経営努力により生産コストを削減している農家の取り組みを一切評価しないことにつながる。

 また、品種の違いを考慮せず統一単価としたことは、高品種のコメ(つまり、高く売れるコメ)を生産している東北・北陸などの米どころほど、設定した単価では足りないということを意味する。こうした米どころの地方では、戸別所得補償制度の内容が周知されるにつれ「支払額が足りなくなるのではないか」と噂され始めた。しかも、そのような声は2010年の田植えが始まる前からすでに顕在化していたのである。

 しかし、制度のほころびは、農家が危惧していたのとは全く異なる方面からやってきた。110年に一度という、近代農業が経験したことのない異常な猛暑である。

 気象庁によれば、今年の猛暑は1898年の統計開始以来最悪となるもので、特に8月は、沖縄・奄美を除く全地域で平年の平均気温を2度以上上回った。真夏日(最高気温30度以上)は西日本のほぼ全域で9月末まで続いた。熱中症だけで400人を超える死者が出たことはまだ記憶に新しい。

 この猛暑は、2010年産米における1等米比率の極端な低下となって現れた。10月20日、農水省が発表した2010年産米の検査結果によれば、最も品質の良い1等米は64.4%。過去5年間では2008年産の77.5%をはるかに下回り、1999年(63.0%)以来11年ぶりの低水準となった。1等米比率を低下させた大きな要因は胴割れ(米粒の中央に横線のような亀裂が入ること)と呼ばれる高温障害にあった。

 この結果、2010年産米の1俵(60kg)当たり価格は、過去最低を記録した2009年産米よりもさらに2,000円程度下落すると見込まれる。農水省は、その年に生産されたコメの販売価格が過去3年の標準販売価格を下回った場合に上乗せ支給する「変動部分」の算定に入っているが、1等米比率の低下幅が大きすぎ、早くも予算不足となる懸念が出ている。

●根本原因は日本人のコメ離れ

 米価は、食糧管理制度が解体させられた20年ほど前から右肩下がりで低下を続けている。大半が農業生産法人でなく個人農である日本では、米価はイコール農家の所得であり、農水省も農家も、そして自民党も減反によってなんとか米価下落を食い止めようと努めてきた。しかし、減反を上回るスピードでコメ消費の減少が進み、生産を減らしても減らしても余るという状況は今日なお続いている。

 1920~30年代には、日本の人口は8000万人と現在の3分の2であったにもかかわらず、年間1600万トンものコメを消費してきた。現在は、当時と比べ人口は4000万人も増えたのに、日本の年間コメ消費量は800万トンに過ぎない。1990年頃と比べても、当時の年間コメ消費量は1000万トン前後だったから、20年で2割も低下したことになる。極端な日照不足と長雨により、作況指数が戦後最悪の75を記録、「100年に一度」「祖父母も経験したことのないほどの大冷害」といわれ、外国産米の緊急輸入に追い込まれた1993年のコメ生産量はおよそ780万トンに落ち込んだが、20年後の今日、この大冷害の年の生産量でも足りるほどコメ消費は減少してしまったのだ。

 こんな状況だから、減反してもしてもコメが余り、米価が下落を続けていくのもうなずける。もはや日本人のコメ離れ、コメ消費の減少は、農政と農家の努力でどうにかなるレベルを超えてしまっている。

●コメの価格特殊性

 米価低落の背景に日本人のコメ離れがあるとしても、価格低下の幅があまりに大きすぎるのではないかという疑問は多くの読者が抱いているかもしれない。20年間で2割消費量が減少したとしても、1年では1%の減少に過ぎないのに対し、2010年産米は60kg当たり2,000円も下がり、11,000円となる見通しだというのである。仮に見通し通り下落すれば、13,000円のうちの2,000円は15%にも相当する。1等米比率の低下と年間1%の消費量の減少だけでは、15%もの極端な米価下落を説明できない。

 実は、米価は過去にも生産量のわずかな増減の割に大きく変動してきた。その背景には、コメが自給作物として、基本的に生産した国で消費され、国際貿易市場に出回る量がきわめて少ないという事情がある。国際貿易市場で取引されるコメの量は、生産量の3~5%程度といわれる。生産量の20~25%が輸出を想定して生産される大豆や小麦とはそもそも前提が全然違うのである。世界のコメ生産量は概ね年間5億トンと言われているから、国際貿易市場に出回るのはわずか1500万~2500万トンに過ぎない。

 この事実は、大量にコメを消費する日本のような国で、前述した93年のような大凶作が起きたとき、国際市場から不足したコメを買い付けるのがきわめて困難であるということを意味している。実際、日本が259万トンものコメを緊急輸入した93年には、わずか半年で1トン当たり235ドルだった取引価格が500ドルを超えるまでに高騰した。日本が輸入した量は、国際貿易市場に出回る量からすれば最大でも5分の1に過ぎないにもかかわらず、価格は2倍以上に跳ね上がったのである。

 生産量の変化に敏感なのは国内市場も同様で、93年の大凶作の直後、94年2月には60kg当たり60,000円を超える価格が付いた地域もあった。

 国際貿易市場に出回る量が少なく価格変動幅が大きいコメのような作物は、一攫千金を狙った投機筋が暗躍する場にもなり得る。日本国民の主食であるコメが、常にこうしたリスクにさらされている事実は、ほとんど知られていない。

●ミニアム・アクセス米の輸入は直ちに中止せよ

 世界各国のコメ生産が国内自給を前提として行われ、凶作により国際市場からコメを買い付けたい国があっても、出回る量が極端に少ないという状況の中で、日本は1995年のガット・ウルグアイラウンド農業合意により、必要もないミニマム・アクセス米(MA米)を毎年輸入するよう約束させられた。MA米の多くは主食用米として出回らないまま、政府の食料倉庫に眠るか、加工用米に転用されている。その加工用米の需要も、前述した水田フル活用や、自給率向上事業による転作米に今後は取って代わられるだろう。その一方で、コメを主食としながら経済的に貧しい発展途上国(その多くがアジア地域である)は、日本のMA米輸入によりさらに取引量が少なくなった国際市場で満足なコメ買い付けもできず、災害による大規模な凶作のたびに食糧不足に苦しんでいる。

 こんな愚かな農政を日本はいったいいつまで続けるつもりなのか。多くの識者が指摘しているように、ウルグアイラウンド協定のいかなる条項も日本にMA米の輸入義務など課してはいない。すべては日本の自主的な政策として行われてきた無駄な輸入に過ぎない。

 世界的に農産物が過剰基調にあるという認識の下で作られた農産物の貿易自由化という枠組みそのものが、今や全くの時代遅れとなった。世界人口は60億人に近づいており、その1割を超える9億が飢餓に直面している。今こそ日本は、途上国に災いだけをもたらす不要なMA米輸入などやめ、発展途上国のためにも、世界のコメ需給緩和に努めなければならない。

●今後の課題-価格維持政策か所得補償か

 本稿筆者は、かつて戸別所得補償制度は日本の農業を救わないが、生命維持装置としてその死をいくぶん先に延ばすことはできると指摘した。高齢化した個人農にできるだけ長く水田にとどまってもらう上で所得補償が一定の効果を発揮することは疑いないが、結局彼ら彼女らがリタイアすればその先はないという意味であり、筆者の戸別所得補償制度への態度はあくまでも「消極的容認」に過ぎない。

 戸別所得補償制度について、モデル事業もまだ終わっていない現段階で評価を下すのは早すぎることは承知しているものの、初年度に早くも顕在化したいくつかの問題を巡って、今後のコメ政策が価格維持政策中心であるべきか、所得補償中心であるべきかについて述べておくことは必要である。それは、長く日本を支配してきた自民党政権が前者を基本としてきたのに対し、2009年に政権を奪取した民主党が後者へと政策を一変させたことに見られるように、民主・自民両党の農業政策の鋭い(けれども、ほとんど唯一の)対決点ともなっている。

 減反や余剰米の政府買い上げといった価格維持政策は、すでに述べたように、減反に参加している一部農家の努力によって米価が維持され、その成果が減反に参加しない農家にも及ぶという意味で不公平感が出ることが問題である。一方、わずかな収穫量の増減が大幅な価格の変動につながることが多いコメの場合には、農家所得を金銭(直接補償)で調整するよりも、コメの市場への供給量で調整するほうが安く済む場合が多く、財政負担という点で優れた方式である。所得補償はその逆で、公平である反面、収穫量の増減がわずかである割には多額の財政負担を強いられる場合が多いというのが欠点である。

 結局のところ、どちらを選ぶかは農業を国民経済と国民生活の中でどのように位置づけるかによって決まるといえよう。コメは主食なのだから国民全体で支えるべきだという観点に立つなら、税金で所得補償を行うことは立派な農家支援策といえる。一方、コメ生産の維持はあくまで受益者=消費者の負担であるべきだと考えるなら、価格維持政策がその中心になるだろう。ただ、主食であるコメへの関わり方は濃淡があるとしても、日本国民のほとんどが毎日1回はコメを食べているに違いないから、コメに関する限り、受益者負担か税負担かというのはそれほど大きな問題にはならないのではないだろうか。

 2010年の戸別所得補償制度元年におけるモデル事業は、こうした事実を浮き彫りにし、再検討する機会を農政関係者に教えてくれただけでも有意義な経験だったといえそうだ。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

北朝鮮、韓国・延坪島を砲撃 民間人も2人死亡

2010-11-24 23:38:28 | その他社会・時事
<北朝鮮砲撃>100発着弾で兵士2人死亡 韓国側も応戦(毎日新聞)

-------------------------------------------------------------------
 【ソウル大澤文護、ニューヨーク山科武司】23日午後2時半(日本時間同)ごろ、韓国が黄海上の南北軍事境界線と定める北方限界線(NLL)まで約3キロの韓国領・延坪島(ヨンピョンド)に向け北朝鮮側から砲弾100発以上が発射され、このうち数十発が島内の韓国軍基地や民家に着弾した。韓国軍合同参謀本部によると兵士2人が死亡、兵士15人が重軽傷、民間人3人が軽傷。韓国軍は対岸約10キロに位置する北朝鮮黄海南道の海岸砲基地からの攻撃とみて約80発の砲撃で応戦し、日本政府関係者によると、北朝鮮側にも被害が出たとの情報がある。北朝鮮が韓国領土を砲撃し、人的被害が出たのは1953年の朝鮮戦争休戦以来初めてで、朝鮮半島情勢は緊迫の度を増している。

 北朝鮮による砲撃を受け、国連安全保障理事会は24日以降、緊急の会合を開いて対応を協議する見通しだ。

 延坪島はNLLの南側に位置し、島民約1660人のほか韓国軍兵士約600人が駐屯する。韓国メディアによると、北朝鮮の砲撃は約2時間断続的に行われ、約60~70軒の住宅が破壊された。島の各所で火災が発生し、住民は島内の防空壕(ごう)や、島の東約90キロの仁川港などに定期船や漁船で避難している。

 北朝鮮の朝鮮人民軍最高司令部は23日、韓国軍が先に砲撃してきたとする声明を発表。韓国軍が北朝鮮領海を侵犯したと主張し、「領海を0.001ミリでも侵犯するなら、今後もちゅうちょせず無慈悲な軍事的対応打撃を引き続き加える」と警告した。朝鮮中央通信が伝えた。

 北朝鮮は99年にNLLの「無効」を一方的に宣言し、NLLの南側に独自の「軍事統制水域」を設定して延坪島周辺海域を含む一帯を北朝鮮領海と主張してきた。韓国軍は22日から黄海で演習を実施しており、韓国メディアによると、北朝鮮は「北側海域で射撃をした場合、座視しない」との通知文を韓国側に送っていたという。

 韓国軍当局は「演習では北朝鮮の方角ではなく西に向けて砲撃していた」と主張しているが、北朝鮮側が自らの領海と主張する海域での演習に反発し、砲撃した可能性もある。

 李明博(イ・ミョンバク)大統領は直ちに招集した安保関係閣僚会議で「二度と挑発することができないよう対応措置を取る」と発言。大統領府の洪相杓(ホン・サンピョ)首席秘書官は「韓国に対する明白な武力挑発だ。追加挑発時には断固対応する」との声明を発表した。

 韓国政府は事態拡大の防止を呼びかける通信文を北朝鮮に送る一方、全軍に最高度の非常警戒態勢を発令し、戦闘機が上空で警戒。25日から南北軍事境界線に近い韓国・坡州(パジュ)で予定していた南北赤十字会談の無期延期を発表した。
-------------------------------------------------------------------

北朝鮮が突如、韓国の民間人居住地域を攻撃した。朝鮮戦争休戦以来、南北間の衝突は海上での正規軍同士の衝突や、軍事境界線を挟んだ正規軍同士の発砲など、民間人を巻き込まない形で限定的に行われてきた。それだけに、今回の事態は深刻であり、衝撃でもある。

99年に北朝鮮が設定した軍事統制水域なるものは、国際社会の承認が得られていない。自分で勝手に設定した水域を根拠に、それより北側は自分たちの水域だと主張することには無理がある。もし、そのような主張が認められるなら、世界中の国々が、みんな自分勝手に国境を変更できることになる。そうなれば、世界は国境紛争だらけ、戦争だらけになるだろう。

一方、ではNLLが正しいかといえば、そうとも言い切れない。このNLLは、朝鮮戦争が休戦となった1953年に国連軍が設定したものだが、国連軍の実態は米軍であり、米軍の意向が強く反映していた。当時、国連に議席を持っていた「中国」は現在の台湾政府であり、朝鮮戦争当時、人民義勇軍を送って北朝鮮を援助した大陸政府はこの当時、国連に代表権がなかったのである(大陸政府が台湾に代わって国連加盟となるのは1971年)。

したがって、北朝鮮はもちろんのこと、中国政府も「俺たちの関与できないところで勝手に決められたNLLなんて知るか」が本音だろう。

しかし、どのような事情があれ、民間人に犠牲者を出す軍事行動に正当性はなく、北朝鮮はこうした危険な軍事行動をやめなければならない。NLLを変更させたければ、国連安保理なり、6カ国協議なり、正当な話し合いの場で持ち出して議論するのが筋である。

韓国・延坪島で民間人2遺体発見=砲撃受け兵力増強―黄海に米空母派遣へ(時事通信)

------------------------------------------------------------------
 【ソウル時事】韓国の海洋警察庁は24日、北朝鮮による砲撃を受けた延坪島で、民間人2人の遺体が発見されたと明らかにした。兵士に加え、民間人の死者が出たことで、韓国の北朝鮮に対する反発はさらに強まる見通しだ。

 海洋警察庁によると、遺体が見つかったのは海兵隊官舎の工事現場。2人とも60歳前後の男性で、島外から働きに来ていたとみられる。遺体は焼け焦げており、作業中に砲弾を受けたもようという。

 23日の砲撃では、韓国軍海兵隊員2人が死亡、隊員16人が重軽傷を負ったほか、民間人4人の負傷が確認されていた。今回の遺体発見で砲撃による死者は計4人となった。また、損壊した家屋は22軒に上った。

 李明博大統領は24日午前、首席秘書官会議を開き、延坪島など北朝鮮に近い黄海の5島の兵力を増強し、新たな挑発に備えるよう指示。また、今回のような局地的挑発に積極的に対応するため、北朝鮮との交戦規則を改定する必要があるか検討するよう求めた。

 統一省は同日、安全上の問題を理由に、北朝鮮の開城工業団地への韓国人の訪問を当面禁止すると発表。また、赤十字を通じた北朝鮮への水害支援を中断することを明らかにした。

 李大統領はこの日、オバマ米大統領、菅直人首相と相次いで電話会談し、連携して対応していく方針を確認。米韓は28日~12月1日に黄海で合同軍事演習を実施することで合意した。

 韓国軍合同参謀本部によると、演習には米原子力空母「ジョージ・ワシントン」も派遣される予定。同本部は演習は以前から予定されていたと説明するが、事実上、砲撃への対抗措置と言える。
------------------------------------------------------------------

米韓の軍事演習は、北朝鮮にさらなる攻撃の口実を与えるものだ。軍事力に対抗する軍事力の連鎖は、決して良い結果をもたらさない。ここは自重し、国際社会の北朝鮮非難が高まるのを待つべきだ。同時に、中国政府に対する働きかけを強めることも必要である。

今回のような無差別砲撃をすれば、民間人に死傷者が出かねないことを北朝鮮は十分知っていたはずである。それにもかかわらず無差別攻撃を実行したのは、金正日総書記の余命幾ばくもなく焦っているのか。あるいは軍にさえ十分な食糧配給が回らなくなり、不満を持った軍が暴走しているのか。いずれにしても、尋常でない事態であることは確かだ。

北朝鮮では、「金日成主席生誕100年である2012年に、強盛大国の大門が開かれる」などという宣伝が行われているようだが、こんな状況で2012年まで持つのだろうか。北朝鮮の崩壊は思いのほか早いのではないかという気がする。周辺諸国は、北朝鮮崩壊に備えた準備をしておく必要があるように思われる。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ローマ風呂の温泉旅館「大野屋」、経営破たん

2010-11-20 21:48:03 | 鉄道・公共交通/趣味の話題
「ローマ風呂」の熱海・大野屋、民事再生手続き申請(朝日新聞) - goo ニュース

----------------------------------------------------------------
 静岡県熱海市で大型旅館「ホテル大野屋」を経営する大野屋本店は19日、静岡地裁沼津支部に民事再生手続きの開始を申し立てた。1936年開業の老舗(しにせ)旅館で、300人が一度に入れる大浴場「ローマ風呂」で知られるが、客数減で経営が破綻(はたん)した。負債総額は約21億5千万円。事業を継続しながらスポンサーからの支援を得るなどして再建を目指す。

 帝国データバンクによると、大野屋本店は1980年に35億円を投じて本館を増改築。87年には20億円をかけて旧館を建て替えるなど積極的な設備投資を展開した。しかし、バブル期に好調だった団体客が景気低迷で減少する中、設備投資の大半を銀行借り入れに依存していたため、厳しい経営を強いられてきたという。

 ローマ風呂のほか、ゲーム会社コナミの人気恋愛ゲーム「ラブプラス+(プラス)」の舞台になり、訪れるファンも多かった。
----------------------------------------------------------------

この大野屋とローマ風呂は、2009年2月に1度利用したことがある。私が利用した日は結構な利用率だったのだが、やはり週末だけの利用率アップではダメなのだろう。

それにしても、自分が利用したことのある施設が経営破たんって、嫌だなぁ。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

平野綾、ついに事務所に反旗?

2010-11-18 21:33:27 | 芸能・スポーツ
平野綾が所属事務所を猛烈批判 「私の積み重ねを否定」(J-CASTニュース)

平野綾という声優に、今まで私はほとんど興味がなかったのだが、最近の騒動を見ていて、なんだかとても彼女が不憫に思えてきた。そもそも、この事務所は声優というものの世界を根本的に理解していないのではないかと思わざるを得ない。

平野綾が、声優以外でも活躍できるマルチな能力を持っているのをいいことに、マルチに活躍させようと目論んでいるのかもしれないが、過去、オタク界と一般芸能界を股にかけようとして成功した実例は残念ながらほとんどない。中途半端にその道を目指せば、椎名へきるのように両方とも実らず、消えていくことにもなりかねないが、平野綾は今、無理解な事務所によって、その最も危険な道に分け入っているように思える。しかも、形勢不利となると、突然、脳の病気をカミングアウトしての「お涙頂戴作戦」だ。

20歳代というのは、(他の職業もすべてそうだが)声優にとって最も伸び盛りの時期である。この業界で生き残れるか、消えていく運命になるかは20歳代で決まると言っても過言ではない。そんな大切な時期に、事務所の指示とはいえ本業そっちのけのスタンドプレーばかりでは伸びるものも伸びないに決まっている。

今、この最も大事な瞬間を、彼女は自分の本業での成長だけ考えて過ごすべきだ。精一杯頑張って、それでもだめなら仕方ないが、今のこの状況で、仮に声優界も芸能界も追われた場合、彼女にはおそらく後悔だけが残るだろう。

23歳という年齢は、この世界では決して若いほうではないが、かといってやり直しがきかないほどの高齢というわけでもない。声優業界に残って頑張るのか、芸能界に転身するか。事務所によって潰される前に、彼女には決断の時が迫っている。

厳しい言い方だが、声優業界の中ではマルチな能力でも、一般芸能界では彼女は「その他大勢」だろう。私自身としては、この業界を理解している事務所に思い切って移籍し、声優界に残る決断をして頑張るべきだと思っている。ただし移籍にはエネルギーが要る。事務所と闘うなら、それなりの覚悟で臨むべきだ。平野綾が腹をくくり、その決意をして闘うなら、当ブログは平野綾を支持する。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

赤松健、ネットで「ラブひな」無料公開へ

2010-11-17 21:20:35 | 芸能・スポーツ
「ラブひな」全巻無料公開へ 赤松健氏、ネット漫画の新ビジネスに挑戦(ITmediaニュース)

赤松健先生が、なにやらマンガビジネスに乗り出したようで。

商業ベースに乗らなかった幻のマンガをネットで復刊させようという試みは面白いかもしれないし、いずれ出る出ると言われながら各社、模様眺めで足踏み状態にある電子書籍の将来を占うひとつの試金石になるかもしれない。

「何をやってもどうせネットに流出しちゃうんだったら、広告入れてビジネスにしちゃえ」という発想が、いかにも赤松先生らしい。この人の商才には脱帽してしまう。マンガが売れなくなっても、実業家として十分やっていけそうな気がする。

いずれにしても、今でも大好きな作品であるラブひなが、ひと味違ったテイストで読めそうなのはうれしい。無料だし、外に出るのがおっくうな冬はPDF版ラブひなでも読んで過ごそうか。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

(声明)日本航空の「整理解雇決定」に強く抗議する

2010-11-16 21:40:52 | 鉄道・公共交通/交通政策
 会社更生手続き中の日本航空と管財人・企業再生支援機構は、11月15日、各労働組合の強い反対を押し切り、整理解雇の実施を決定した。安全問題研究会は、空の安全と労働者の生活を破壊するこの暴挙に強く抗議する。

 250人に上る整理対象者には、10月から白紙のフライトスケジュールと退職に向けた面談の通知書が渡されるなどの嫌がらせが始まっている。「会社から自分の机がなくなった」という訴えも相次いでいる。客室乗務員に対しては、高年齢者を中心に「残っても仕事はない」「整理解雇になったら、高齢のあなたは一番」などと、年齢を理由とした露骨な人権侵害まで行われている。

 日本航空の中でも戦闘的な労働組合のひとつである「日本航空キャビンクルーユニオン」は、わずか856人の小さな組織だが、50歳以上の組合員140人が退職強要を受けている。一方、多数派の「御用組合」では、50歳以上の多くが管理職になり、整理対象者がほとんど選定されないなど、明らかな組合差別も見られる。労働者への「乗務外し」や退職強要、闘う労働組合への差別がまかり通る日本航空の現状は、21世紀の国鉄清算事業団であり、人活センターそのものである。

 会社・管財人からは、全員解雇、選別採用方式の実施を求める声もある。23年前、「国鉄改革法23条」の下、はじめてこの方式が強行された国鉄では、大量の労働者が自殺に追い込まれた。JR6社のすべてで列車運行に当たる現場要員が3割以上削減された結果、信楽事故、尼崎事故、羽越線事故が引き起こされた。当局が強行した組合差別は、18年の時を経て不当労働行為として断罪された。日本航空経営陣・管財人が整理解雇を強行するなら、その罪は事故による悲劇とともに、いずれ断罪されるだろう。

 日本航空破たんの原因が労働者ではなく、会社を食い物にした航空行政と自民党政権、経営陣にあることを、改めて強調しておかなければならない。1991年、日本航空は和歌山市内の社宅用地を想定の3倍もの価格で購入させられたが、この土地の所有者は二階俊博元運輸相(自民党)の後援会幹部と報道された。日本航空経営陣は、一部の旅行社に対し、採算を度外視した常識外れの運賃キックバックを実施した。政・官・財を巻き込んだこのような救いがたい腐敗こそが、日本航空を破たんに追い込んだのである。

 今回の整理解雇決定に先立つ10月26日、最高裁は、管制ミスに伴う業務上過失致傷罪によって下級審で有罪とされた航空管制官の上告を棄却する決定を行ったが、国土交通省の安全軽視は管制官の現場に最も象徴的に現れている。国内の年間の管制取扱い件数は、1999年の396万機から2009年は491万機となり、10年間で24%増加したのに対し、管制官の数は1763人から1996人と13%増えたに過ぎない。「個々の管制の内容を別の管制官が100%チェックするのは現状では困難」とみずから認める状況にありながら、管制官の十分な増員を行わず、過重労働を放置してきた国土交通省の怠慢と不作為が日本の空の危険を高める結果につながった。航空業界の拡大のみに偏り、必要な人員確保を怠ってきた航空行政を直ちに転換する必要がある。

 退職強要を受けているある労働者は、1985年のジャンボ機墜落事故後、現場の御巣鷹山に登り、墓標に手を合わせる遺族の背を見て安全を誓ったという。このような安全意識の高い社員を大量に退職に追い込めば空の安全は崩壊する。求められているのは大量首切りではなく、増大する航空機に見合った航空労働者の増員である。

 利用者・国民に、当研究会は今こそ訴える。羽田空港新ターミナルの華やかな拡張の陰で何が起きているか見てほしい。日本航空破たんの原因を作った者たちが、何食わぬ顔で、何の責任もない労働者を差別・首切りしている。それは、自分の選挙区に鉄道を引くよう要求することによって破たんの原因を作り出した者たちが、何食わぬ顔で国鉄を解体し、労働者を首切りと差別の果てに死に追いやった悲劇と全く同じものである!

 当研究会は、日本航空を食い物にした関係者の責任を引き続き追及するとともに、航空労働者の首切り・差別に怒りを込めて抗議する。また、職種を超えて過重労働にあえぐ現場のためにも、航空労働者の増員を求めて行動する決意である。

 2010年11月16日
 安全問題研究会

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【管理人より】名称変更及び旧サイトの取り扱いについて

2010-11-13 23:25:51 | 運営方針・お知らせ
当ブログの親サイト「罪団法人 汽車旅と温泉を愛する会」消失に伴い、当ブログの名称を「人生チャレンジ20000km」から「罪団法人 汽車旅と温泉を愛する会」に変更することにしました。ただし、当ブログを来訪された方が誤解することがないよう、当分の間、旧ブログ名を併記します。

旧サイトのコンテンツのうち、「ノンセクションの部屋」に置いていたコンテンツを当ブログに移しました。内容に応じ、各カテゴリーに振り分けています。

これらの各コンテンツは、旧サイトに発表した日時での投稿としたため、新着順で記事が表示される当ブログでは最下層に沈んでしまっています。古い記事をご覧になりたい方は、記事一覧で投稿順に記事を並べていますので、こちらから飛んでください。投稿日が2005年以前の記事は、すべてサイトから移転したものです。

なお、消失してしまったサイトの取り扱いをどうすべきか考えましたが、旧サイトのコンテンツはテキスト、写真、動画だけで構成されており、当ブログとyoutubeの組み合わせにより全コンテンツの置き換えが可能であることから、旧サイトは復活させず、当ブログの中で旧サイトのコンテンツを復活させていくことにしたいと思います。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【管理人よりお知らせ】重要コンテンツ復活しました

2010-11-08 21:44:08 | 運営方針・お知らせ
取り急ぎ、昨日の記事でお知らせした国鉄車両記号一覧表と日本の鉄道全線乗車活動の記録を復活させました。画面左側の「ブックマーク」から飛べます。

また、「罪団法人 汽車旅と温泉を愛する会」時代のリンク先を画面左側の「ブックマーク」に登録しました。

ご迷惑をおかけし、申し訳ありません。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする