安全問題研究会~鉄道を中心とした公共交通を通じて社会を考える~

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核のない未来を願って 松井英介遺稿・追悼集(緑風出版)

●安全問題研究会が、JRグループ再国有化をめざし日本鉄道公団法案を決定!

●安全問題研究会政策ビラ・パンフレット
こんなにおかしい!ニッポンの鉄道政策
私たちは根室線をなくしてはならないと考えます
国は今こそ貨物列車迂回対策を!

根室本線の災害復旧と存続を求める新得の集い 発言内容

2019-11-30 11:56:41 | 鉄道・公共交通/交通政策
(以下は、2019年11月26日、新得町で開催された「根室本線の災害復旧と存続を求める新得の集い」での発言内容です。)

 みなさんこんばんは。今日は、せっかく札幌から参加しましたので、いくつか発言させていただきます。実は今日、札幌を出るときに雪が積もっていまして、新得はさぞ大雪だろうと思って滑り止め付きの長靴で来たのですが、新得駅に降りてみたらまったく雪がないので拍子抜けしました。

 さて、今すでに何人かの方がお話をされたように、今起きていることは「幹線」の廃止問題であって、決してローカル線問題ではありません。夕張支線や札沼線は別として、5線区の残りは根室本線、留萌本線、日高本線とすべて名称に「本線」が付いています。

 どのような路線が「本線」を名乗れるかについては、昔はちゃんとした基準がありました。国鉄がまだ鉄道院と呼ばれていた時代に、その鉄道院が定めた「国有鉄道線路名称」という告示があります。その線路名称で各路線名を決める際に、本線を名乗れる基準は「支線を持っていること」だったのです。今は各地で廃線が進み、支線を持たない本線があちこちにありますが、昔は全部支線があった。だからこその本線であり、今起きていることは本線、幹線の廃止問題なのです。

 植物、木に例えるなら支線は確かに枝に過ぎないかもしれません。しかし花はすべて枝に咲きます。国鉄分割民営化の時に北海道の鉄道は大量に「枝」が切られました。枝が切られた木には花が咲かなくなります。花も咲かない木なんて立っていても意味がない、だから幹まで切ってしまおうというのが、いま国、道、JR北海道が一体になってやってきていることです。しかし幹まで切れば木は再び枝を伸ばすこともできなくなり、今度こそ完全に死んでしまいます。札幌は確かに木で言えば幹かもしれませんが、北海道という木が美しい花を咲かせるには「枝」が必要です。枝、地方が元気にならなければ札幌も花を見ることはできません。

 今、お花見の問題がずいぶん騒がれているようですが、お花見にあんな莫大なお金が使われるのも、楽しみにしている人がいるからです。花を見たい気持ちに黒字も赤字もありません。であるならば、そのお金のほんの一部でもいいから日本、北海道という木に花を咲かせるための「枝」、地方のお手入れに使うべきではないかと私は思うのです。

 JR日高線を守る会として、日高本線の状況について少し報告したいと思います。バス転換が「多数決」で議決されたのは11/12の町長会議ですが、その直前、11/8の金曜日に急遽、沿線7自治体にバス転換に同意しないよう要請をしました。浦河町長、日高町長には直接要請書を手渡しました。浦河の池田町長は「町長会議のたびに自分だけが反対で針のむしろだが、針のむしろも長く座っていると痛くなくなる」とまったく動じていませんでした。日高町長もバス転換に同意こそしたものの「鉄道時代より良くなったと感じられるようなバス転換の案が出てこない限り同意はしない」と言っています。沿線のすべての自治体がバス転換に同意して、その後に廃止届が出されるというのが札沼線などの前例であり、日高本線もおそらくそうなるでしょう。しかし、バス転換自体に反対の自治体もある中で、100km以上もある長大「本線」の沿線7町すべてが「鉄道時代よりいい」と感じられるようなバス転換の案を作ることが本当にできるのでしょうか。日高町長も「今までよりもこれからのほうがずっと長いんじゃないか」と仰っています。廃止届が出されない限り、列車は走っていなくても法的には線路は残っています。まだまだ頑張れると思いますし、地元の住民団体も、町長方も頑張っています。

 要請行動の際には道新の取材も来たので、私も取材に対しそのように答えました。しかし、町長会議翌日の道新紙面を見ると見出しは「沿線、諦めムード」となっていて愕然とするとともに、はらわたが煮えくりかえりました。今日、この集会の取材にも道新さんは来られていて、だからこそ私は猛省を促す意味で「勝手に諦めムードにするな」とこの際、はっきり言わせてもらいます。地元地域が維持され発展していく。その方向に向かってペンを執ることが地域ジャーナリズムの使命であり、そのことを忘れた地域ジャーナリズムにどんな存在価値があるのでしょうか。道新には反省していただきたいと思います。

 いずれにしても、日高沿線はまだまだ長い闘いが続きます。もう一度、5線区が力を合わせて、8線区も含んだオール北海道で取り組むときだと思います。そのために日高でも、また札幌も頑張ります。よろしくお願いいたします。

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【管理人よりお知らせ】安全問題研究会が行った日高本線問題をめぐる緊急要請(11/8)の要請書をサイトにアップしました

2019-11-27 21:26:24 | 鉄道・公共交通/交通政策
管理人よりお知らせです。

11月8日、安全問題研究会がJR日高線を守る会、JR北海道研究会と連名で行った沿線自治体申入書をアップしました。こちらから見ることができます。

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JR北海道による「自社単独で維持困難」線区公表から3年 北海道JR鉄道路線の現状

2019-11-26 22:20:49 | 鉄道・公共交通/交通政策
(この記事は、当ブログ管理人が月刊誌「地域と労働運動」2019年12月号に発表した原稿をそのまま掲載しています。なお、管理人の判断で「鉄道・公共交通/交通政策」カテゴリでの掲載としました。)

 JR北海道が、宗谷本線名寄~稚内間など計10路線13区間について、同社単独では「維持が困難」になったことを公表(2016年11月)してから3年が経過した。今月は、JR北海道の現状を報告したい。

 ●抜本的解決にならない「利用促進と豪華列車運行」

 2018年7月、国は、JR会社法(旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社に関する法律)に基づいて「経営改善に関する監督命令」を出した。「徹底した経営努力によって収支を改善して、 経営自立を図る必要」があり、「関係者による相互の連携及び協力の下で、将来にわたって持続可能な交通体系を構築するとともに、他の輸送機関とも適切に役割を分担して、必要な輸送力の確保に努め」ることを求めるものだ。「特に経営状態の悪い5線区(深川~留萌、北海道医療大学~新十津川、富良野~新得、新夕張~夕張、鵡川~様似)は早急に切り捨てて経営自立せよ」を意味しているが、鉄道はレールがつながっていてこそ意味がある。北海道全体のネットワーク維持を展望せず、短期的な経営自立だけを求めているところにこの監督命令の根本的問題がある。そもそもJRグループが発足した初年度(1987年度)決算において、JR7社の営業収入全体に占めるJR北海道の割合はわずかに2.5%、JR北海道の営業収入は919億円で、この数字は当時の東京駅の収入より少なかったというデータもある。こんな状態の会社に自立を求めることは、事実上、儲からない鉄道事業からの全面撤退を求めるに等しい。

 2018年12月には「公共交通の利用促進のための道民キックオフフォーラム」が道庁主催で開催された。道と道内経済界一体となったJR北海道の利用促進運動だ。注目すべき動きだが、国鉄末期、特定地方交通線整理の際の「乗って残そう○○線」運動で実際にはほとんどの路線が残せなかったことを考えると、鉄道を道路、空港、港湾など他の交通と同じ公共財として位置づけ、赤字でも維持するという根本的政策転換が必要だ。しかし結局、このフォーラムでは最も重要なこの点が提起されなかった。

 豪華列車運行の動きも始まった。東急電鉄の観光専用車両「THE ROYAL EXPRESS」を道内で運行、JR北海道が運行会社から線路使用料を徴収する増収策である。この列車の運行はメディアでも取り上げられ話題になったが、もともとは「観光戦略実行タスクフォース」会議(2018年2月、首相官邸)で国交省が「豪華観光列車で増収」として提案したものである。その意味では国策といえるが、やはり線路使用料だけでは抜本的解決とはいえない。

 このように、現在、国・道・JR北海道から提起されている対策は、その場しのぎの弥縫策ばかりで鉄道政策を抜本的に見直すものとはなっていない。国のJR北海道に対する支援策も、資金ショートの危険が起きる都度、追加的に資金投入を行うにとどまっている。公共事業に対する融資審査に長年従事してきたある政府系金融機関OBは「戦力の逐次投入で犠牲者を増やすだけに終わった旧日本軍のインパール作戦と同じだ」と指摘する。

 ●値上げは運命の分かれ道か

 JR北海道は、2019年10月の消費増税に合わせ平均11%(増税2%分含む)もの大幅な運賃値上げを行った。7月1日、札幌で開催された公聴会では安全問題研究会代表を初め3人の公述人全員が値上げに反対したが、その意見はまったく考慮されず、申請通り認可された。

 値上げ後の新運賃を少し詳しく見よう。「幹線」の7~10km帯ではJR本州3社の200円に対し、JR北海道は290円で45%も高くなった。91~100km帯では本州3社1,690円に対し北海道2,100円(24%割高)。481~500km帯では本州3社8,030円に対し北海道8,800円(9%割高)。乗車距離が長くなるほど1km当たり運賃が低下する「遠距離逓減制」自体は旧国鉄からJR各社に継承されており、逓減率が同じならJR各社間の同じ距離帯を比較して差が出ることはあり得ないから、JR北海道では本州3社と比べ、乗車距離に応じた運賃逓減率が拡大していることを意味する。要するに「乗車距離の長い人ほど安く、短い人ほど高い」運賃体系がいっそうひどくなったということである。一概には言えないが、道外からの出張者や旅行者には乗車距離が長い人が多く、通勤通学の一般道民には乗車距離の短い人が多いことを考慮すると、JR北海道にとって最も大切にすべき一般道民に対し懲罰的な運賃体系ということになる。

 公聴会に出席した島田修JR北海道社長は、値上げに対する批判に対し、驚くことに「通学定期の割引率は今までと同様、高いままに維持している」と反論し理解を求めた。しかし、これは例えるならケーキ1個を500円、2個を1,000円で販売していた店が、1個を1,000円、2個を2,000円に値上げした後、「値上げ後も1個が2個の半額であることに変わりないのだから値上げではない」と言っているのと同じであり、詭弁に過ぎない。

 今回の値上げでは、区間によっては3割も値上げされた区間もある。筆者の知る限り、鉄道運賃でこれほどの大幅引き上げは、国鉄末期の1976年に行われた5割値上げ以来であろう。この前年、国労・動労に結集した労働者がみずからのスト権を賭けて実施したスト権ストでは、国鉄全線で丸8日間にわたってほぼ全線がストップ。その後、貨物部門での深刻な荷主離れに危機感を抱いた国鉄当局は5割値上げに踏み切った。「首都圏のすし詰め状態の国電で通勤しているサラリーマンは交通機関の選択権がない人たちだから、5割くらい値上げしてもどうせ国鉄に乗るだろう」との読みが当時はあったとされるが、結果的にこの読みは外れた。競合私鉄、営団(現在のメトロ)や都営地下鉄、都営バスに乗客は大幅に流れた。その後の国鉄がどのような運命をたどったかは改めて説明するまでもなかろう。分割民営化による国鉄消滅は1987年。5割値上げから11年後のことである。

 もしも歴史が繰り返すなら、今回のJR北海道による最大3割にも及ぶ値上げがこの会社の「命取り」になる可能性は十分にある。北海道には首都圏と違って競合交通機関は地下鉄とバスくらいだから心配がないという声もあるが、それは北海道の地域事情を知らないからである。北海道で鉄道の最大のライバルは「自家用車」だ。ただでさえ有利な車に乗客を奪われる可能性を甘く見てはならない。そう遠くない将来、JR北海道の経営破綻のニュースが流れたとき「今思えばあの大幅値上げが運命の分かれ道だった」との歴史的検証を受けるような転換点になるかもしれないのだ。

 現在、JR北海道は「令和12(注:2030)年度の北海道新幹線の札幌開業を機に……経営自立」を図るという到底実現不可能な目標を「グループ長期経営ビジョン」として掲げている。確かに新幹線自体は間接的なものまで含めると莫大な経済効果を生むかもしれない。しかしその大半は東京~新青森間を持つJR東日本のものになる。新青森~札幌の末端区間しか持たないJR北海道に落ちる効果は限定的なものにとどまらざるを得ない。にもかかわらず、JR北海道の現経営陣がこんな夢物語を平然と開陳できるのは、いざその時を迎えて責任を問われるのが彼ら自身でないから関係がないと考えているか、あるいはその時までにJR北海道という会社が存続している可能性を彼ら自身が信じていないかのどちらかだろう(あるいはその両方かもしれない)。筆者は後者の可能性も十分あると考えている。彼らも自分の後任者が「JR北海道幹部として」札幌駅新幹線ホームでのテープカットに臨めるとはもはや考えていないのではないだろうか。

 ●粘り強い闘いが続く日高、根室本線沿線

 JRが廃線を提案したいわゆる5線区のうち石勝線支線(新夕張~夕張)は今年春にバス転換された。札沼線一部区間(北海道医療大学~新十津川)も来年5月のバス転換が決まっている。札沼線はもともと札幌~石狩沼田を結んでいた(札沼線の名称は当時の名残である)が、1968年、国鉄諮問委員会が「歴史的使命を終えた」として廃止を勧告した83路線のひとつだった(この問題は、後の国鉄再建法につながる前哨戦として「赤字83線問題」と呼ばれるようになる)。これを受ける形で1972年に石狩沼田~新十津川が部分廃止され現在の形になった。今回の部分廃止で残る区間は札幌近郊の桑園~北海道医療大学のみとなる。廃止区間沿線の月形高校が「いじめが原因で札幌の高校に進学できない中学生の受け皿になっているのに、廃止で月形高校への進学の選択肢がなくなる」(地元の教育関係者)との証言もある。路線廃止は最も底辺の弱者にしわ寄せされる。

 日高本線に関してはつい先日、大きな動きがあった。日高町村会加盟沿線7町(日高、平取、新冠、新ひだか、浦河、様似、えりもの各町)の町長会議が11月12日に開催。(1)全線鉄道で災害復旧、(2)被災していない区間(鵡川~日高門別)を先行して運転再開し残り区間は継続協議、(3)鵡川~様似の全区間バス転換――のうちから1案に絞ることを「多数決ででも決める」としてきた坂下一幸会長(様似町長)の「予告」通り、採決に持ち込まれたのだ。結果は(1)が浦河町(池田拓町長)のみ、(2)がなく(3)が残り6町となり、バス転換同意が決められた。前回(2)を主張していた日高町、(1)を主張していた浦河町に対しては、坂下会長から「バス転換に同意しなかった自治体の区域内には、転換後はバス停を設けない」との執拗な恫喝が加えられたとの証言もある。それでも浦河町長は最後まで反対を貫いた。町長会議直前に安全問題研究会、JR日高線を守る会、JR北海道研究会が連名で行った緊急要請交渉では、池田町長は「針のむしろも長く座り続けていれば痛くなくなる」と孤立をまったく恐れていなかった。

 今後はJR北海道と各町との個別協議に入るが、バス転換や支援金などの提案に全町が合意後、初めて鉄道の廃止届が提出されるというのが過去の廃線手続の前例であり、札沼線でもこうした慎重な手続が行われた。バス転換にそもそも反対の浦河町に加え、「鉄道時代より良くなったと実感できるバス転換案でなければ同意しない」(大鷹千秋・日高町長)と明言している自治体もある。転換後にバス路線を担うとされる道南バスが、乗車率が高い路線まで「運転手不足」を理由に続々と休廃止している現状を見ると、転換バス事業者が見つからない可能性さえあり得る。この意味では、国鉄末期の特定地方交通線整理の時と異なり、鉄道維持を求める側に有利な情勢といえよう。

 「強行採決」後、坂下会長は実質的にはバス転換同意以外の何物でもない(3)を採択しながら、記者会見では「手続を後戻りさせてはならない」が「必ずしも鉄道廃止を容認したものではない」という苦しい説明に終始。メディアからは「矛盾していて意味がわからない」との追及を受けた。地元で鉄路存続運動を続ける「JR日高線を守る会」が発表した声明は、「(坂下会長が)廃止容認でないとしたのは、私たちJR日高線を守る会や、各地の全線復旧を要求するたたかいが影響」「全線復旧の主張を続ける池田町長のブレない姿勢の影響も大きい」とした上で「JR日高線を守る会は全道全国の仲間とともに、鉄路を守り抜くたたかいに引き続き力を注ぎます」としている。JR北海道による「自社単独では維持困難」10路線13線区公表から3年。公共交通としての鉄道維持を求める地元の闘いは、ついに最後まで廃線反対を貫く自治体を生み出すという新しい局面を作り出した。

 鉄道事業法が2002年に改悪された結果、鉄道路線の廃止は国の許可を経ることなく、鉄道会社による届出だけで1年後に可能となった。沿線自治体との間でどのような協議、同意の手続を経るべきかについて同法は何も定めていないが、これはそもそも沿線自治体の同意自体が廃線の要件とされていないためである。しかし実際には、鉄道が持つ公共性や、沿線同意なく廃線を強行した場合において、沿線との関係が悪化することを恐れる鉄道事業者によって改悪前とほぼ同様の手続が行われてきた。一方で、整備新幹線の建設に当たって、いわゆる並行在来線をJRの経営から分離し、第三セクター鉄道へ移行させる場合には、経営分離する区間について「当該区間に関する工事実施計画の認可前に、沿線地方公共団体及びJRの同意を得て確定する」と定めた政府与党合意が存在する。JRから第三セクターへ、単なる線路の譲渡に過ぎない「経営分離」に沿線自治体の同意を必要としながら、それより重大な結果を招く路線廃止に沿線自治体の同意が不要というのは交通政策として整合性も道理も欠いている。九州新幹線長崎ルートの建設認可に先立って、並行在来線の経営分離に同意しない自治体があったため、国とJR九州が並行在来線の事実上の切り捨てに失敗した例もある。こうしたことを考えると、今回、日高本線をめぐって最後まで廃線反対を貫く自治体が現れたことが今後に与える影響は大きいとみられる。

 5線区のうち残る2つ(根室本線・東鹿越~新得、留萌本線・深川~留萌)については協議入りさえしておらず、日高本線もバス転換に向かうため協議のテーブルが用意されると決まったに過ぎない。地元住民にとって死活問題である公共交通をめぐって、廃止を求める国、道、JR北海道と沿線自治体・住民の激しい闘いは今後も続く。当研究会も引き続き当事者として、積極的にこの問題に関わっていくことになる。

(2019年11月25日 「地域と労働運動」第230号掲載)

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【緊急告知】安全問題研究会ホームページの移転の中止について

2019-11-17 20:06:21 | 運営方針・お知らせ
管理人よりお知らせです。

安全問題研究会のホームページについて、いったん、移転の告知をしたところですが、元の場所に戻すことにしました。

作業を終えましたのでお知らせします。元通りこちらから見ることができます。PCで当ブログをご覧の方は、左のブックマーク一覧から「安全問題研究会」をリンクして飛ぶこともできます。

GMOインターネット社が12月2日限りで無料メーリングリストのサービスを打ち切ることに伴うものです(GMO社による告知)。当ブログ管理人が管理しているメーリングリストをさくらインターネットに移行させる予定でしたが、技術的理由によりさくらインターネットへの移転を中止しました。このため、ホームページも元の場所に戻すことにしたものです。

平たく言えば、メーリングリストの移行作業は白紙に戻りました。GMO社「freeml」サービスの打ち切りまであと2週間を切っています。はぁ、疲れた・・・

今のところ、「Google」グループ(無料)への以降か、jca-net(年会費16,500円)のどちらかを考えていますが、これ以外でお勧めのメーリングリストサービスをご存じの方は、aichi200410@yahoo.co.jp までお知らせください。

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日高町村会、日高本線のバス転換同意案を「多数決」で強行採決 浦河町は反対貫く JR日高線を守る会が声明を発表

2019-11-16 10:39:52 | 鉄道・公共交通/交通政策
11月12日、日高町村会は会合を開催、浦河町が反対する中、日高本線のバス転換同意案を「強行採決」した。鉄道のバス転換では、これまで沿線自治体協議会で全自治体の同意を得てから廃止届を提出する手続が曲がりなりにも行われてきた。今回の決定は、こうした過去の前例も覆す反民主主義的暴挙である。

JR日高線を守る会の声明をご紹介する。

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●町長会議は6対1で全線バス転換の方向打ち出す  
●守る会は鉄路守るたたかいを引き続き進めていきます

 11月12日、日高町村会の臨時町長会議が開催されました。『なぜ今、坂下町村会長は多数決をしてまで急ぎ日高線を廃止しバス転換するという方向に突き進もうとしているのか』JR日高線を守る会は坂下町村会長に公開質問状を提出して、多数決でバス転換・鉄路廃止を決めることのないよう要求してきました。

▼バス路線転換に絞るが、鉄路の廃止を容認したものではない
 この日、新ひだか町公民館には多くのテレビ・新聞の取材陣が集結し多数決決定の成り行きを注目しました。午後4時から行われた報道陣の囲み取材で坂下町村会長は次のように会議の結果を報告しました。
『最終的に多数決で決めることになった。その結果バス路線に転換が6町(日高町は一部復旧から全部バスに)、鉄路存続が浦河町1町となり、6対1の多数決でバス路線転換に絞った。しかし、鉄路の廃止を容認したものではない。バス路線についてそれぞれの町がJRと3月をめどに個別協議を行う。それぞれの町が結果的に(交渉が)ダメになる可能性も含まれている。バス路線を最終的に各町が合意できるように取り組んでいく』と坂下氏が説明。
〇バス路線に転換目指してJRとの協議を各町ごとに進めて合意をつくる。
〇しかし鉄路廃止容認ではない。
 この説明が記者団もわかりづらいと質問を繰り返していました。「廃止容認でない」としたのは、私たちJR日高線を守る会や、各地の全線復旧を要求するたたかいが影響を与えたものと思われます。全線復旧の主張を続ける池田町長のブレない姿勢の影響も大きかったでしょう。

▼JR=海岸復旧で廃線ありきの姿
 重大な問題が明らかになりました。記者から「バス転換の協議に入ったとき、護岸の復旧はどうするのか」と質問されて、JRの綿貫常務取締役は「護岸については道と一緒に色んな調査をしている。工法や、どういう範囲でできるのか話し合って進めていきたい」と述べたことです。JRは災害復旧で国の制度を使って直ちに工事すべきだったのに一切やらず、バス転換の方向が見えたら「進めていきたい」と言うなど、その廃線ありきの無責任な姿勢が浮き彫りになりました。

▼密室協議変える気なし
 また、記者から「町村会の議事録を公開しないのか」という質問に、「会議中罵声をあびている町長もいて面白おかしく書かれても困る」「議事録が公開されて、自由に発言できなくなると困る」など、民主主義とは異質な、会議の水準も地方自治の理解も疑われる説明に終わっていました。

▼バス転換協議はJRと道、国の責任を帳消しにする
 日高線の維持困難路線の問題は、「地方の問題」ではなく、JR北海道の経営危機の問題であり国の政策の失敗によるものです。国の政策の失敗は、国が責任を取るべきであり、地方の路線を廃止して「解決したことにする」べきものではありません。人口減少や不採算を理由にすれば、広大な北海道で公共インフラは何も維持できないことになり、地方住民の生活は成り立たなくなります。今回のバス転換協議はJRの護岸復旧工事一切やらなかった責任も道の海岸国土保全義務の責任も帳消しにする効果があります。

▼JR日高線を守る会の存在は増々重く
 温室効果ガスの排出削減対策で注目される鉄道、高齢者の運転免許証を自主返納で必要とされる鉄道、インバウンド増大に絶大な力を発揮する鉄道。今こそ鉄道の優位性を直視すべきです。何よりも鉄路を廃止した地域の衰退は確実で、そうなればバス事業者もやがては撤退縮小していきます。
 JR日高線を守る会は全道全国の仲間とともに、鉄路を守り抜くたたかいに引き続き力を注ぎます。

2019年11月13日
JR日高線を守る会

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