安全問題研究会~鉄道を中心とした公共交通を通じて社会を考える~

公共交通と原発を中心に社会を幅広く考える。連帯を求めて孤立を恐れず、理想に近づくため毎日をより良く生きる。

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●安全問題研究会政策ビラ・パンフレット
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私たちは根室線をなくしてはならないと考えます
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皆さま、よいお年を!

2012-12-31 19:33:45 | 日記
皆さま、今年も後残すところ数時間となりました。

昨年に引き続き、内外ともに激動の1年でした。明るい未来となるか、かつてのように暗黒時代を迎えるのか。政治と市民の激しいせめぎ合いの1年だったように思います。

来年は、今年よりもさらに厳しい年となることと思いますが、引き続き、健康に気をつけ、激動の時代を乗り切っていきましょう。

では、少し早いですが、よいお年をお迎えください。

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2012年 当ブログ・安全問題研究会10大ニュース(今年も15大ニュースに拡大します)

2012-12-30 13:23:59 | その他社会・時事
さて、2012年も残すところあとわずかとなった。そこで、例年通り今年も2012年10大ニュースを発表する。

1位・2位以外は順位をつけず20大ニュースに拡大した昨年と異なり、今年は一昨年までの形式に戻すが、枠は引き続き15大ニュースに拡大する。また、今年から「当ブログ・安全問題研究会10大ニュース」にタイトルを変更する。

選考基準は、2012年中に起きた出来事であること。当ブログで取り上げていないニュースも含むものとし、できる限り「原稿アーカイブ」「福島原発事故に伴う放射能測定値」「日記」「運営方針・お知らせ」以外の全カテゴリから選定するものとする。記事タイトルの後の< >内はカテゴリを示す。

1位 首相官邸前に20万人が集まるなどデモ・集会続く。5月には一時、全原発が停止<原発問題>

2位 福島原発告訴団、第1次・第2次合計で1万5千人を集め政府・東電関係者ら33人を刑事告訴。市民による責任追及の動き本格化<原発問題>

3位 関越道高速バス事故で7人死亡。国交省、ツアーバスの規制強化に乗り出す<鉄道・公共交通安全問題>

4位 JR福知山線脱線事故で山崎正夫・JR西日本元社長に無罪判決。神戸地検が控訴断念し確定<鉄道・公共交通安全問題>

5位 中央道・笹子トンネルで天井版が崩落し9人死亡。高度成長期に建設された構造物の老朽化が社会問題に<鉄道・公共交通安全問題>

6位 沖縄に市民の反対押し切り「未亡人製造機」オスプレイ強行配備。米兵によるレイプなどの事件も続発、沖縄でも東京でも抗議の闘い続く<社会・時事>

7位 JAL解雇撤回訴訟、パイロット、客室乗務員いずれも請求棄却の不当判決。原告は控訴<航空問題、空の安全>

8位 当ブログの協力で福島県白河市にしらかわ・市民放射能測定所「ベク知る」がオープン。原発事故後の食への不安に応える測定開始<原発問題>

9位 世界的に「政治の年」~中国で習近平体制発足、韓国では初の女性大統領、米国はオバマ氏再選。日本では衆院解散・総選挙で自民「相対的」勝利~3年ぶり自公政権へ<社会・時事>

10位 消費税を段階的に増税する法案が成立。国民生活への直撃必至<社会・時事>

11位 福島で「原発いらない地球(いのち)のつどい」「原発いらない!福島県民大集会」開催。「原発いらない福島の女たち」はリレーハンストも実施<原発問題>

12位 「原発子ども・被災者支援法」成立~理念法に留まり今後の闘いに課題<原発問題>

13位 福島の子どもたちの「保養」、受け入れ先が全国的拡大~福島県内での情報伝達と参加拡大が課題<原発問題>

14位 LCC、日本にも登場。格安運賃とうらはらに無理な運行体制で安全性への懸念も<航空問題、空の安全>

15位 東日本大震災に伴う津波で被災したJR気仙沼線の一部区間が専用道路を走るBRT(バス高速輸送システム)により復旧。交通機関復旧で被災地の希望に応えるが長期的には鉄道廃止の懸念も<鉄道・公共交通政策>

こうしてみると、公共交通の分野で様々な事故が起きた反面、原発事故やオスプレイ配備を巡っては、市民による闘いがかつてなく高揚した1年だった。消費税増税法の成立や安倍自公政権の復活など情勢は厳しさを増すが、引き続き市民が今年のような非暴力・直接行動で闘うなら、2013年は決して暗くはないと思う。

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2012年 鉄道全線完乗達成状況まとめ

2012-12-28 21:57:26 | 鉄道・公共交通/趣味の話題
年の瀬を迎え、年内に新たな鉄道完乗はないので、ここで例年通り今年の鉄道全線完乗達成状況をまとめる。

【1月】京王線、京王高尾線、十和田観光電鉄
【3月】仙台市営地下鉄南北線、泉北高速鉄道、南海高師浜線
【4月】南海高野線、高野山ケーブル
【6月】阪急宝塚本線、神戸電鉄公園都市線、三田線、有馬線、北神急行電鉄
【8月】北近畿タンゴ鉄道宮津線、宮福線、和歌山電鉄
【9月】能勢電鉄妙見線、日生線、妙見ケーブル、京阪交野線、(参考記録)妙見リフト
【10月】富士急行大月線、河口湖線、JR石勝線、札幌市営地下鉄東西線、南北線、東豊線
【12月】九州新幹線(奪還)、くま川鉄道

奪還とは、いったん完乗を達成し、路線延長等で記録を喪失後、再び延長区間の全部に乗車して記録を奪還したもの。妙見リフトは索道区間のため、完乗達成数に含めない参考記録扱いとする。

参考記録を除いても合計で20社28線。すさまじい達成ぶりである。年間目標は5線区だったが比べものにならない。今年はよく頑張ったと思うが、これには出張が多かったという特殊事情もある。来年はこうはいかないだろう。

種類別では以下の通り。

【JR】2社2線(九州新幹線、石勝線)
【旧国鉄特定地方交通線転換第三セクター】2社3線(北近畿タンゴ鉄道宮津線、宮福線、くま川鉄道)
【その他第三セクター】1社1線(泉北高速鉄道)
【公営】2社4線(仙台市営地下鉄南北線、札幌市営地下鉄東西線、南北線、東豊線)
【大手私鉄】4社6線(京王線、京王高尾線、南海高師浜線、南海高野線、阪急宝塚本線、京阪交野線)
【準大手私鉄】1社3線(神戸電鉄公園都市線、三田線、有馬線)
【中小私鉄】8社9線(上記以外の会社・路線)

現・廃・新の別は以下の通り。

【廃止線】1社1線(十和田観光電鉄)
【新規開業線】1社1線(九州新幹線)
【その他】上記以外の路線

過去ログでもお知らせしたとおり、これで旧国鉄特定地方交通線転換第三セクターのうち、北海道ちほく高原鉄道(北海道、2006年廃止)を除く全路線に乗車したことになる。神岡鉄道、のと鉄道、三木鉄道、高千穂鉄道を合わせ5社5線がこの間、廃止となった。転換三セクと凍結解除線が合計で37社43線ある中で、5社5線の廃止を多いと見るか、それとも三セク各社はよく踏ん張っていると見るべきなのか。人により考え方に違いがあると思うが、これらがいずれも「国鉄に見放された路線」だったことを考えると、よく踏ん張っているとその健闘をたたえるべきだろう。

来年の完乗目標は、新年に改めて発表する。

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本日の放射能測定値

2012-12-27 23:05:49 | 福島原発事故に伴う放射能測定値
1.測定年月日、時間
 2012年12月27日(木) 午後9時50分~9時55分

2.測定時の気象条件(晴/曇/雨/雪の別及び風向、風速)
 天気:晴
 風向・風速:西南西 4m

3.測定場所及び測定結果(単位:マイクロシーベルト/時)
(1)福島県 JR新白河駅西口(高原口)
  ・新白河駅西口バス停横の土壌地
   大気中(高さ100cm)   -
   土壌(高さ10cm)    -

  ・新白河駅西口駐車場
   大気中(高さ100cm)   0.33
   舗装路面(高さ10cm)  0.35

(2)自宅室内(RC)    0.14

<放射線量測定に関するお知らせ>
前回もお知らせしましたが、放射線量測定は、年明け以降、月1回の実施とします。次の定期測定は、2012年1月24日(木)に実施します。以降、特段の支障がなければ、放射線量測定日は毎月第4木曜日とします。

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公務員の政治活動認める画期的最高裁判決~求められる「新たな公務員像」

2012-12-25 23:55:13 | その他社会・時事
(当エントリは、当ブログ管理人が月刊誌「地域と労働運動」2013年1月号に発表した原稿をそのまま掲載しています。)

 休日に職場と離れた場所で政党機関紙を配布した国家公務員が、国家公務員法(政治的行為の制限)違反に問われた2件の上告審判決で、12月7日、最高裁は1件を有罪としたものの、残る1件を無罪とする判決を出した。

 公務員の政治活動に関しては、1974年の猿払事件最高裁判決をきっかけに制限を合憲とする判断が確定して以来、初の実質的見直しといえるものである。

 ●事件の概要

 元社会保険庁職員の堀越明男被告(現・日本年金機構勤務)と元厚生労働省課長補佐の宇治橋真一被告(定年退職)の2名が休日に東京都内で日本共産党機関紙「しんぶん赤旗」を配布したとされる事件である。配布した場所は、堀越さんが東京都中央区のマンション、宇治橋さんは世田谷区内の警視庁職員住宅。配布時期は堀越さんが2003年10~11月、宇治橋さんは2005年9月とされる。事件当時、堀越さんは社会保険庁目黒社会保険事務所で年金相談や年金審査業務に携わっていた。また、宇治橋さんは厚生労働省課長補佐として課内業務のとりまとめに当たっていた。

 1審の東京地裁は2人とも罰金10万円の有罪としたが、堀越さんについては2審の東京高裁が逆転無罪とし、検察側が上告。宇治橋さんについては2審・東京高裁も1審の有罪判決を支持したため、宇治橋さん側が上告していたもの。2審判決を変更する際に通常開かれる弁論が開かれなかったことから、両方の事件とも2審判決を踏襲するものと見られていた。

 今回の判決の言い渡しは2件について一括して行われたが、政治的行為の制限には「中立性が損なわれる恐れが実質的に認められる」ことが必要、と従来より制限、禁止の範囲を限定的に解釈した。その上で、(1)管理職的地位の有無(2)職務内容や権限における裁量の有無(3)勤務時間内に行われたか(4)国や職場の施設を利用したか(5)公務員の地位を利用したか(6)公務員により組織される団体の活動として行ったか(7)公務員の行為と直接認識されるような状況だったか(8)行政の中立的運営と相反するような目的や内容があったか――を個別具体的に判断すべきとした。

 判決は、堀越さんについて、当時の業務が年金の相談や年金記録の調査で「業務上の裁量の余地がなかった」と指摘、管理職でもなかったことから無罪とした。一方の宇治橋さんについては、当時職場に8人いた課長補佐の中でも筆頭格(総括課長補佐)で、業務の総合調整を行うなどしていたこと、また、いわゆる管理職に該当し「業務や組織運営に影響を与える可能性があった」ことから有罪とした。

 ところで、国家公務員の仕事は省庁、所属部署、役職等によって多岐にわたる。1人の職員が管理職的業務とそうでない業務を兼務している場合もある。どの部署のどの役職が「管理職的業務」になるのかを、公務員制度に詳しくない人が判断することは困難である。そのため、誰が管理職に該当するかは人事院が決めることになっており、具体的には人事院規則17-0(管理職員等の範囲)により、省庁、部署、役職ごとに指定されている。この指定を受けた職員は「指定管理職」と呼ばれ、それ以外の一般職員と同一の職員団体を組織することができない(注)。

 厚労省の課長補佐(総括)は指定管理職だったことから、最高裁はそのポストに就きながら「しんぶん赤旗」を配布していた宇治橋さんを有罪とした。これに対し、須藤正彦裁判官は「2人とも無罪にすべき」との趣旨の反対意見を述べている。

注)職員団体とは、民間労働者でいう労働組合のことで、団体交渉権の一部、ストライキ権の全部に制限がある公務員の労働組合を民間の労働組合と区別する意味でこのように呼ぶ。また、厳密に言えば、指定管理職とそれ以外の職員の両方を組織する職員団体の結成自体は禁じられていないが、このような組織は人事院から適法な職員団体として登録を受けられる「登録職員団体」の資格を有しないとされている。登録職員団体でない組織から団体交渉の申し入れがあった場合、当局は団体交渉を拒否できる(国家公務員法第108条の5第1項)。公務員の職員団体にこのような登録制度が設けられ、非登録団体に対しては当局が団体交渉を拒否できる、との法の規定が置かれたのは、人事院による労働運動の動向の監視・把握を容易にするため、と考えられている。

 ちなみに、国家公務員法及び、その委任を受けて制定された人事院規則によれば、政治的行為の構成要件となる「政治的目的」は以下のように定義されている。

----------------------------------------------------------------------
<資料1>「政治的目的」の定義(人事院規則14-7(政治的行為)より)

1 公選による公職の選挙において、特定の候補者を支持し又はこれに反対すること。

2 最高裁判所の裁判官の任命に関する国民審査に際し、特定の裁判官を支持し又はこれに反対すること。

3 特定の政党その他の政治的団体を支持し又はこれに反対すること。

4 特定の内閣を支持し又はこれに反対すること。

5 政治の方向に影響を与える意図で特定の政策を主張し又はこれに反対すること。

6 国の機関又は公の機関において決定した政策(法令、規則又は条例に包含されたものを含む。)の実施を妨害すること。

7 地方自治法(昭和22年法律第67号)に基く地方公共団体の条例の制定若しくは改廃又は事務監査の請求に関する署名を成立させ又は成立させないこと。

8 地方自治法に基く地方公共団体の議会の解散又は法律に基く公務員の解職の請求に関する署名を成立させ若しくは成立させず又はこれらの請求に基く解散若しくは解職に賛成し若しくは反対すること。
----------------------------------------------------------------------

 その上で、「政治的目的」を持って、次の「政治的行為」をした場合に国家公務員法違反に当たる、としている。

----------------------------------------------------------------------
<資料2>禁止される政治的行為(人事院規則14-7(政治的行為)より)

1 政治的目的のために職名、職権又はその他の公私の影響力を利用すること。

2 政治的目的のために寄附金その他の利益を提供し又は提供せずその他政治的目的をもつなんらかの行為をなし又はなさないことに対する代償又は報復として、任用、職務、給与その他職員の地位に関してなんらかの利益を得若しくは得ようと企て又は得させようとすることあるいは不利益を与え、与えようと企て又は与えようとおびやかすこと。

3 政治的目的をもつて、賦課金、寄附金、会費又はその他の金品を求め若しくは受領し又はなんらの方法をもつてするを問わずこれらの行為に関与すること。

4 政治的目的をもつて、前号に定める金品を国家公務員に与え又は支払うこと。

5 政党その他の政治的団体の結成を企画し、結成に参与し若しくはこれらの行為を援助し又はそれらの団体の役員、政治的顧問その他これらと同様な役割をもつ構成員となること。

6 特定の政党その他の政治的団体の構成員となるように又はならないように勧誘運動をすること。

7 政党その他の政治的団体の機関紙たる新聞その他の刊行物を発行し、編集し、配布し又はこれらの行為を援助すること。

8 政治的目的をもつて、第五項第一号に定める選挙、同項第二号に定める国民審査の投票又は同項第八号に定める解散若しくは解職の投票において、投票するように又はしないように勧誘運動をすること。

9 政治的目的のために署名運動を企画し、主宰し又は指導しその他これに積極的に参与すること。

10 政治的目的をもつて、多数の人の行進その他の示威運動を企画し、組織し若しくは指導し又はこれらの行為を援助すること。

11 集会その他多数の人に接し得る場所で又は拡声器、ラジオその他の手段を利用して、公に政治的目的を有する意見を述べること。

12 政治的目的を有する文書又は図画を国又は特定独立行政法人の庁舎(特定独立行政法人にあつては、事務所。以下同じ。)、施設等に掲示し又は掲示させその他政治的目的のために国又は特定独立行政法人の庁舎、施設、資材又は資金を利用し又は利用させること。

13 政治的目的を有する署名又は無署名の文書、図画、音盤又は形象を発行し、回覧に供し、掲示し若しくは配布し又は多数の人に対して朗読し若しくは聴取させ、あるいはこれらの用に供するために著作し又は編集すること。

14 政治的目的を有する演劇を演出し若しくは主宰し又はこれらの行為を援助すること。

15 政治的目的をもつて、政治上の主義主張又は政党その他の政治的団体の表示に用いられる旗、腕章、記章、えり章、服飾その他これらに類するものを製作し又は配布すること。

16 政治的目的をもつて、勤務時間中において、前号に掲げるものを着用し又は表示すること。

17 なんらの名義又は形式をもつてするを問わず、前各号の禁止又は制限を免れる行為をすること。
----------------------------------------------------------------------

 人事院は、<資料1>に示した政治的目的をもって<資料2>の政治的行為を行った場合に違法になる、としている。たとえば、今回の2人のように「公選による公職の選挙において、特定の候補者を支持し又はこれに反対」するため(政治的目的)、「政党その他の政治的団体の機関紙たる新聞その他の刊行物を発行し、編集し、配布し又はこれらの行為を援助」すれば(政治的行為)、違法行為が成立するということになる。

人事院は、<資料2>の5については、それ自体が政治的目的を持ってする行為なので、政治的目的の有無を問うまでもなく違法とする一方、他の項目に関しては、政治的目的と政治的行為の両方が揃わなければ違法ではない、と説明している。しかし、<資料2>の6以下の行為を政治的目的と切り離すことは事実上不可能であり、現実にはほとんどの政治活動が違法とされている状況だ。

 ●政治活動が制限に至る歴史的経過

 このように、日本では公務員の政治活動はほぼ全面的禁止と表現しても過言ではない状況にある(地方公務員についても罰則規定がないだけでほぼ同様)。このような状況を生み出したのは、激化する東西冷戦の中で、公務員の労働組合が白昼堂々と選挙で特定候補を支援し、影響力を発揮する事態を避けたいというGHQ(連合国軍総司令部)の思惑があった。国家公務員法はこうした占領行政の置き土産といえる。

 その後も激化する一方の労働運動の中で、国家公務員の政治活動の是非も活発に論じられてきたが、1967年1月に告示された第31回衆院総選挙の際、北海道猿払村の鬼志別郵便局に勤務する局員が、労働組合が推薦を決定した日本社会党公認候補の選挙ポスターを公営掲示板に掲出し摘発される(猿払事件)。この事件では、起訴された局員が1審・旭川地裁では無罪となったが、2審・札幌高裁で逆転有罪。1974年11月、最高裁は2審の有罪判決を支持、局員の上告を棄却した。

 この最高裁判決は、国家公務員の政治活動の制限を、その政治的中立性確保の見地から合憲としたもので、長年の論争に決着をつけるものといわれた。しかし、何が政治的中立性なのか、どのような公務員のどのような職務に、どのような政治的中立性が要求されているのかについての検証もないまま、公務員であるというだけで一律、無制限に政治活動を禁止するもので、学説はこの間、一貫してこの判例に批判的見解を持ち続けてきた。また国連自由権規約委員会は、公務員に対するこうした不合理な政治活動の制限を撤廃するよう日本政府に勧告を行っている。

 いうまでもなく、公務員も、公務員である前に日本国民であり、日本国憲法が保障する思想・信条の自由、集会・結社の自由は原則として保障される。その制限は彼ら・彼女らが公務員としての職務を執行する上で支障を及ぼす部分だけに限定すべきなのは当然だ。

 今回の2件の事件で、最高裁は、東西冷戦の時代に労働運動の抑圧という政治的野心をもって導入された「政治的行為の制限」について広範な検証を行った。その上で、政治的行為の制限には「中立性が損なわれる恐れが実質的に認められる」ことが必要、と政治活動の制限を極めて限定的に解釈した。明言こそしていないが、猿払事件の際の判例を事実上変更するものであり、公務員の市民的権利を日本国憲法に即して積極的に認めようとするものだ。指定管理職であった宇治橋さんを有罪とするなどの不当判決、不十分さを含みながらも、全体としては画期的判決と評価できる。

 橋下徹・大阪市長率いる日本維新の会(旧「大阪維新の会」)によって、大阪市では公務員の政治活動の制限を国家公務員並みに拡大する時代遅れの条例が議会で可決された。自民党も、地方公務員の政治活動に罰則規定を設ける方向で地方公務員法の改正をもくろんでいる。今回の最高裁判決は、公務員に対する不当な制限を強化しようとするこれら勢力に対し、打撃となるだろう。

 ●求められる新たな公務員像

 猿払事件の最高裁判決は、法曹界が危惧したとおり、公務員による政治活動に萎縮をもたらした。選挙での投票以外のあらゆる行為が違法として断罪される。その上、国家公務員が禁錮以上の刑を受ければ失職となるのだ。いつしか「公務員たるもの、危ない橋は渡るべからず、火遊びするべからず」が不文律となり、公務員から政治活動は消えていった。

 その結果もたらされたのは、市民と公務員との分断だった。公務員はpublic servant(国民、公共の奉仕者)でありながら、いつしか国や自治体当局の決定した政策を市民「に対して」実行する存在となり、行政サービスの受益者であるべき国民、住民は行政の「客体」に貶められた。当局の決定を国民、住民に強制することが公務員本来の任務であるかのような倒錯した状況が生まれ、国民・住民には公務員と行政への不信感が募っていった。

 昨今の異様とも思える「公務員バッシング」の背景にはこうした相互不信がある。公務をリストラし「小さな政府」を目指す新自由主義者たちがこの状況につけ込み、公務員と国民・住民との相互不信をあおり立てながら「諸君の敵、公務員を打倒せよ!」と今日もラッパを吹き鳴らしている。

 宇治橋さんを有罪とする多数意見に異を唱えた須藤正彦裁判官の反対意見は、次のように指摘する。「…我が国の長い歴史を経ての国民の政治的意識の変化に思いを致すと、…(政治活動の制限の)あるべき規制範囲・制裁手段について立法的措置を含めて広く国民の間で一層の議論が行われてよいと思われる」。

 多くの政治的無関心層が存在し、ノンポリであっても幸せに生活できた「戦後日本の奇跡」。昨年の福島原発の事故は、名実ともにその終わりを内外に印象づけたできごとだった。政府は誰からも信用されなくなり、学者・マスコミは体制の支配の道具と意識されるようになった。このままではいけないと、多くの国民が政治に目覚め、首相官邸前にはデモの人並みができるのが日常風景となった。今や組織に所属しない一般市民こそが最も強硬な反対勢力として国家権力と対峙している。

 権力に囲い込まれ、奪われ、「バリケードの向こう側」に行ってしまった公務員を取り戻す必要性を、国民が今ほど明確に意識した時代はなかった。須藤裁判官が指摘した国民の政治的意識の変化の中で、私たちはいかなる公務員を持つべきなのか。そして今後の公務員はどのような人たちであるべきなのか。

 その答えは明確である。市民とともに考え、市民とともに汗をかき、市民と苦楽をともにする。市民とともに喜び合い、市民とともに泣く。国や自治体の政策が誤っているときは、市民とともに行動し改めさせる。そんな新しい時代の公務員像が提示される必要がある。

 そのためには、公務員が市民と同じ権利と義務を持たなければならないことは当然だ。今回の最高裁判決を、新しい公務員を作り上げる契機としなければならない。

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自民圧勝は本当か?~見えてきた「勝者なき選挙」

2012-12-20 21:44:24 | その他社会・時事
(この記事は、当ブログ管理人が「レイバーネット日本」向けに執筆したコラムをそのまま掲載したものです。)

 筆者が投票権を得てから20年以上の歳月が経つが、今回の選挙ほど投票所に向かうのを苦痛に感じたことはない。死票として無駄になることが初めからわかっている票を投じるため、「義務として」投票所に向かうのだから。

 人生いつも少数派である当コラム読者の皆さんは、今さら自分の票が生かされないくらいで落ち込んだりはしないのだろう。「義務だから行くべき」「権利は行使すべき」「棄権すると白紙委任したことになり、世の中はもっと悪くなる」…国民を投票所に向かわせるために使われる言説である。どれもよく理解できる。しかし、今回の選挙の空しさと来たら、こんな薄っぺらな言説ではどうしようもならないくらい酷いものだった。過去に1度も棄権したことがなく、模範有権者として総務省・中央選挙管理会から表彰の1つや2つ受けてもおかしくない当コラム筆者が、今回は投票日当日まで真剣に棄権を考えたほどだ。

 政党ばかり乱立しているのに投票したい候補者も政党も1つもないというのも今に始まったことではないが、自称「第3極」による票目当てのなりふり構わぬ離合集散が、筆者の投票意欲を大きく棄損していることは明らかだった。

 2009年の政権交代、「アラブの春」、2011年の大震災、福島原発事故、そして官邸前デモへの20万人大結集…2年前には誰ひとり予想もできないほどの「政治の季節」が訪れた日本で、投票率は「上がる」「下がる」の両方の予測があった。上がるほうの根拠は、さすがにここまで追い詰められて政治的無関心でいられる人はそうそう多くないはずで、誰もが無為無策の政治への怒りを込めて投票所に向かうだろう、というもの。一方、下がるほうの根拠は、怒りを持っている層ほどどこにも投票したくないし、できないのではないか、というものだった。

 期日前投票は、本投票の前哨戦として本投票の投票率を占う先行指標にもなる。その期日前投票率が15%近くも下がったと聞き、まずいと直感した。投票率が下がれば、固い組織票を持つ政党が圧倒的に有利になる。世界情勢は激動しているのに、20年前で時計の針が止まったかのような、「景気対策」にしか関心がない「命よりカネ」の「一部業界団体」にまた選挙が牛耳られるのか、と暗澹たる気持ちになった。

 ●「棄権」が第1党

 投票率は、戦後最低となる59.66%(小選挙区)に終わった。後述するとおり、比例区では約半分のブロックで自公両党合わせても得票率は40%に満たなかった。つまりほとんどのブロックでは「棄権」が第1党だったことになる。

 その上、12もの政党が乱立したため、「死票率」(落選した候補に投じられた票の、有効投票に占める割合)は56%と空前の規模に達した。

 当コラム筆者は、小泉郵政選挙で自民党が「大勝」した直後の2005年9月、次のように記したことがある。『3人が立候補してその3人にほぼ均等に票が分散した場合、理論上は34%の得票で1位となり当選する。同様に立候補者4人なら26%、5人なら21%で当選が可能になる。6人なら17%だ。…(中略)…この場合、実に83%の民意が切り捨てられるのだ。実際にはこんな極端な形になることはないだろうが、小選挙区制の下では、得票率の17%を議席率の100%に拡大することも理論上は可能なのだ。小選挙区制がいかに民意を反映しないシステムであるかがわかるというものだろう』(コラム「鉄ちゃんのつぶや記」第25号「小泉劇場の果てに」2005.9.12)。

 今回の選挙に関し、この記述に修正を加える必要はまったくない。4割の人が棄権した多くのブロックで、自公両党は合わせても4割程度の得票に過ぎなかった。6割の、さらに4割。つまり全有権者の4分の1の得票しか得ていないことになる。こんな状態で当選した連中が明日から「選良」「国民の代表」を名乗るのだ。いい加減にしてくれと言いたい。

 ●原発はやはり争点だった

 一般メディアは、脱原発を掲げた「第3極」が軒並み議席を減らしたのを見て、原発は争点にならなかった、と宣伝している。脱原発をあきらめさせようというメディア戦略なのだろうが、本当にそうだろうか。

 そこで筆者は、今回の選挙結果について詳しい分析を試みた。得られた結果は、メディアの宣伝とはまったく違うものだった。

 6人の候補者が乱立すれば得票率17%でも当選することができ、83%が死票となるような小選挙区は、あまりに制度としてデタラメ過ぎで、もはやデータ分析のためのサンプルにすらなり得ない。そこで筆者は、比例各ブロックにおける各党の得票数を基に、各党の得票率をブロックごとに割り出した。以下の資料を参照いただきたい。

<資料1>2012.12.16総選挙 各党の得票数(比例区のみ)と各ブロックの与野党得票率
 
<資料2>2012.12.16総選挙 原発推進勢力とそれ以外の勢力の比例ブロック別得票率
 
 資料1は、今後、自公政権ができるという想定で、新「与党」(自公)と新「野党」(自公以外)の得票数、得票率をまとめたものである。自公両党の得票率が低いのが東京(35%)、近畿と南関東(いずれも37%)、北海道と東北(いずれも38%)の各ブロック。東海も39%と比較的低い。一方、高いのは中国(49%)、四国と九州(いずれも46%)となっている。

 また、資料2は、原発推進勢力(自公+民主、維新、国民新党)とそれ以外の勢力の得票数、得票率をまとめたものである。原発推進勢力の得票率は北海道(69%)で特に低く、東京(70%)がこれに次いで低い。以下、東北と南関東(いずれも73%)、東海(76%)と続く。一方、高いのは中国と四国(いずれも83%)、次いで九州(80%)となる。

 この2つの分析結果から、「福島原発に近い地域、あるいは原発事故の被害を強く受けている地域ほど、自公両党、原発推進勢力が負けている」という明確な相関関係が確認された。得票率が議席に反映されない選挙制度がおかしいだけで、原発は明確に今回総選挙の争点だったと評価して差し支えないと思われる。

 ●院外での大衆闘争強化を

 すでに多くの識者・メディアが指摘しているように、自民党は、民主党に大敗し政権交代を許した前回(2009年)の得票数を下回った。投票率が前回より1割近く下がったことが得票減の背景にあると考えられるが、民主党が壊滅的惨敗を喫したこと、第3極が共倒れとなったことにより、相対的に自公両党が浮き上がっての勝利に過ぎない。国民が自公両党を信任したわけでないことは強調しておかなければならない。

 自公両党が参議院での議決を覆す3分の2の多数を衆議院で得たことで、脱原発、反TPP、オスプレイ・基地反対等の闘いを繰り広げる市民にとって極めて厳しい状況となったが、考えようによっては「2009年総選挙以前に戻っただけ」と割り切ることもできよう。

 むしろ、多くの市民が「政府もメディアも学者もみんなウソつき」「非暴力・直接行動で闘う以外に社会を前進させる方法はない」と知っていることは当時あり得なかった有利な材料といえる。敵は強大なふりをしているだけで実際は強大ではない。民意を反映しない選挙制度の下で選挙結果に一喜一憂するのではなく、全原発を一度は停止に追い込んだ私たちの政治的力量に自信を持って進んでいこう。どのみち世の中厳しいのだ。腹を据えて闘うならば、輝かしい明日への扉は必ず開かれると信じたい。

(黒鉄好・2012年12月19日)

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本日の放射能測定値

2012-12-20 00:42:42 | 福島原発事故に伴う放射能測定値
1.測定年月日、時間
 2012年12月19日(水) 午後11時50分~11時55分

2.測定時の気象条件(晴/曇/雨/雪の別及び風向、風速)
 天気:小雪
 風向・風速:北北西 4m

3.測定場所及び測定結果(単位:マイクロシーベルト/時)
(1)福島県 JR新白河駅西口(高原口)
  ・新白河駅西口バス停横の土壌地
   大気中(高さ100cm)   -
   土壌(高さ10cm)    -

  ・新白河駅西口駐車場
   大気中(高さ100cm)   0.30
   舗装路面(高さ10cm)  0.37

(2)自宅室内(RC)    0.16

<放射線量測定に関するお知らせ>
先週に引き続き、新白河駅前道路工事のため、測定場所1での測定が実施できませんでした。

なお、次の定期測定は、2012年12月27日(木)に実施します。

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【管理人よりお知らせ】放射線量測定について

2012-12-16 06:04:30 | 福島原発事故に伴う放射能測定値
管理人よりお知らせです。

当ブログで予告しておりました2012年12月16日(日)の放射線量測定は、管理人の都合により中止しました。測定できなくなり、誠に申し訳ありません。

次の測定は、2012年12月19日(水)に実施します。

なお、放射線量測定ですが、新年からはさらに回数を削減し、定期測定は1か月に1回の実施とします。

理由としては、当ブログ所在地である福島県南地方の放射線量に大きな変化が見られなくなってきたこと、管理人が公私ともにさらに忙しくなってきたことによるものです。測定による私自身への被曝量を低減することも大切と考え、思い切った削減をすることにしました。

ただし、この間、国や自治体のモニタリングポストの数値にごまかしがあったことが判明しています。市民測定自体はやめるべきではないと考えます。

また、震度5弱を超える地震の発生などにより、当ブログが放射線量測定の必要性があると判断した場合には、臨時測定を行うことがあります。

引き続き、よろしくお願いいたします。

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くま川鉄道を完乗~ついに転換三セクの完乗成る

2012-12-14 22:14:19 | 鉄道・公共交通/趣味の話題
6日間にわたった長い九州出張も今日が最終日。仕事のスケジュールを前倒しで進めた結果、昨日までに終わってしまい(しかも、出張用務に入っていない、やらなくてもいい仕事までやった上で)今日はやることがなくなってしまった。本当は早く帰りたいが、帰りの飛行機が職場から支給された「特割」(要するに変更不可)の便で、早い便に変えることもできない…

せっかく熊本まで来たので、未乗区間になっている第三セクター・くま川鉄道に乗ってみようかという考えが浮かんだのは昨夜のこと。夕食を早々に済ませ、ホテルに戻って時刻を調べると、朝8時にホテルを出れば、ダイヤ上も無理なく行けることがわかったからである。このところのJR在来線はちょっとした雨や風、「人身事故」で遅れることがよくある。遅れた場合は無理せず引き返そうと思ったが、一方で、何かあってもそのまま週末なので、なんとかなるという安心感もあった。

ホテルで朝6時に起床。温泉大浴場で一風呂浴びた後、朝7時過ぎに朝食を済ませ、身支度をする。8時前にホテルをチェックアウトし鹿児島本線で出発。8:28、熊本着。8:31、「くまがわ1号」で熊本発。九州新幹線の高架を見ながら八代まで鹿児島本線を下った後、肥薩線に入る。


拡大写真

「くまがわ1号」に使用されているキハ185系(上の写真)は、瀬戸大橋線の開通をにらみ、国鉄末期の1986年、四国に特急用として投入された車両だ。民営化後のJR四国の象徴的存在となったが、曲線が多い四国の路線条件のため所期の性能を発揮できなかった。そのため、振り子機構を備えた後継車種・2000系が実用化されるとキハ185系は余剰となった。一方、JR九州では気動車の老朽化が深刻化しており、キハ58・65系列気動車の置き換え車両の登場が待たれる状況にあった。こうして両社の利害が一致した結果、キハ185系は四国から九州に売却されることになり、1992年に九州入りした。

国鉄時代は、車両の広域配転は珍しいことではなく、首都圏の通勤電車が関西に転属したり、東北・北陸・九州の交流区間同士での広域配転もしばしば行われていたが、JR化後はこのような会社間の車両の移動は珍しい。

「くまがわ1号」は、その名の由来にもなった清流、球磨川に寄り添いながら肥薩線を走る。川幅は次第に狭くなり、下流から上流に入ってきた。10:00、人吉着。

くま川鉄道・人吉温泉駅まで歩き、10:20、人吉温泉発。いよいよくま川鉄道だ。この鉄道は、国鉄再建法に基づき第3次特定地方交通線に指定された湯前線を転換して発足した鉄道だ。転換は1989年と遅く、このため国鉄からではなくJRからの転換となった。

人吉市の市街地はすぐに途切れ、田園地帯に入る。あさぎり駅は唯一の交換駅。タブレット交換が行われる(厳密に言えば、人吉温泉~あさぎり間がタブレット閉塞、あさぎり~湯前間はスタフ閉塞)。非自動閉塞方式も九州で今やここだけになった。

あさぎりを出た後も列車は淡々と進む。11:05、定刻通りレールバスは終点・湯前に到着した。

【完乗達成】くま川鉄道

この結果、当ブログ管理人は旧国鉄特定地方交通線転換第三セクター鉄道の全線完乗(乗らないうちに廃止となった北海道ちほく高原鉄道を除く)を達成した。89年の完乗開始から23年での達成はかなり遅い方であろう。

国鉄がJRとなってはや25年、特定地方交通線の転換が終わってから数えても22年が経過した。特定地方交通線転換第三セクターといってもどの鉄道のことかわからない新しい読者もいるかもしれないので、ここで対象全路線を挙げておく。鉄道名の後の〔 〕内は国鉄時代の路線名である。

北海道ちほく高原鉄道〔池北線〕(2006.4.21廃止、未乗車)
三陸鉄道〔久慈線・宮古線・盛線〕(現在、東日本大震災で一部区間運休)
秋田内陸縦貫鉄道〔阿仁合線・角館線〕
由利高原鉄道〔矢島線〕
阿武隈急行〔丸森線〕
山形鉄道〔長井線〕
会津鉄道〔会津線〕
真岡鉄道〔真岡線〕
わたらせ渓谷鉄道〔足尾線〕
いすみ鉄道〔木原線〕
天竜浜名湖鉄道〔二俣線〕
神岡鉄道〔神岡線〕(2006.12.1廃止)
樽見鉄道〔樽見線〕
長良川鉄道〔越美南線〕
明知鉄道〔明知線〕
愛知環状鉄道〔岡多線〕
伊勢鉄道〔伊勢線〕
のと鉄道〔能登線〕(2005.4.1廃止)
信楽高原鉄道〔信楽線〕
北近畿タンゴ鉄道〔宮津線〕
北条鉄道〔北条線〕
三木鉄道〔三木線〕(2008.4.1廃止)
若桜鉄道〔若桜線〕
錦川鉄道〔岩日線〕
土佐くろしお鉄道〔中村線〕
平成筑豊鉄道〔伊田線・糸田線・田川線〕
甘木鉄道〔甘木線〕
松浦鉄道〔松浦線〕
南阿蘇鉄道〔高森線〕
くま川鉄道〔湯前線〕
高千穂鉄道〔高千穂線〕(2005.9.6災害で休止~その後廃止)

以上が転換三セクの一覧である。このうち、乗車前に廃止になってしまったのは北海道ちほく高原鉄道のみ。ここを乗車していれば本当の完全乗車になるところだっただけに、廃止前に乗れなかったことが悔やまれる。

この際、ついでなので、転換線のほか、国鉄再建法成立に伴う工事凍結区間で、三セクが工事を再開させ開業した路線を示しておこう。これらの路線は、あと数年工事が早ければ、上記の転換三セク鉄道に入るはずだった路線である。これらの路線も、当ブログ管理人はすでに全線完乗している。

秋田内陸縦貫鉄道〔鷹角線(比立内~松葉間)〕
野岩鉄道〔野岩線〕
北越急行〔北越北線〕
鹿島臨海鉄道〔鹿島線〕
北近畿タンゴ鉄道〔宮福線〕
智頭急行〔智頭線〕
井原鉄道〔井原線〕
阿佐海岸鉄道〔阿佐東線〕
土佐くろしお鉄道〔阿佐西線、宿毛線(中村~宿毛間)〕

この他、異色の路線として以下の2線を加えておく。

東海交通事業〔瀬戸線〕
名古屋臨海高速鉄道〔西名古屋港線〕

この2線を旧国鉄の転換線に加えることには異論のある方もいるかもしれないが、東海交通事業は旧国鉄時代、貨物線として建設計画があったが凍結となっている。また名古屋臨海高速鉄道は、旧国鉄の貨物線・西名古屋港線をいったん廃止後に転換したものである。この路線も、当ブログ管理人は乗車済みである。

最後に、第三セクター鉄道会社が設立されず、地元私鉄の路線として転換した特定地方交通線を挙げる。これらの路線は未乗車であり、今から考えると惜しいと思う。

弘南鉄道〔黒石線〕(1998.4.1廃止)
下北交通〔大畑線〕(2001.4.1廃止)

こうしてみると、私鉄が国鉄特定地方交通線を引き取ったのはいずれも青森県である。青森県には当時、第三セクター鉄道を作れないような特殊事情でもあったのだろうか。

なお、いずれ機会を見て、「印象に残った第三セクター鉄道トップ5」の発表をしたいと思う。実施する際はあらかじめお知らせしたい。

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九州新幹線を完乗

2012-12-09 23:13:33 | 鉄道・公共交通/趣味の話題
今日から1週間、九州に出張となる。先の北海道出張と同様、朝から晩まで1日中現場という極めて過酷な業務だ。

滞在先の大阪から9:59、新大阪発鹿児島中央行き「さくら551号」で出発。14:05、鹿児島中央着。博多~新八代間開業後、完乗の記録を喪失していた九州新幹線を再び全線乗り、記録を奪還した。

【完乗達成】九州新幹線(奪還)

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