安全問題研究会~鉄道を中心とした公共交通を通じて社会を考える~

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【訃報】武藤みちこ(推定年齢120歳)

2016-07-29 21:12:25 | 原発問題/一般
福島原発告訴団・武藤類子団長の飼い犬・みちこ(雌)が7月27日(水)、元喫茶店兼住宅「燦(きらら)」で亡くなった。推定年齢約20歳。人間に換算すれば120歳を超える大往生。2年ほど前からはほとんど動けなくなり、武藤団長とその連れ合いSさんによる介護を受けていた。

福島原発事故発生前から、「燦」で武藤類子さんと生活を共にした。その共同生活は10年以上に及び、Sさんよりも長いという。武藤さんが電力会社の電気をほとんど使わず、大部分を自然エネルギーだけで切り盛りしてきた「燦」の看板娘として、長らく店を見守った。

「みちこ」の「犬生」は原発事故で一変した。事故後は閉店、武藤さんの自宅となった「燦」とその周辺を駆け回りながら、歴史の「生き証犬」として放射能汚染された福島の激変ぶりを見守ってきた。波瀾万丈の「犬生」だった。

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【訃報】反原発学者・藤田祐幸さん死去

2016-07-20 21:59:27 | 原発問題/一般
物理学者の藤田祐幸さん死去 脱原発を訴える(朝日)

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 藤田祐幸さん(ふじた・ゆうこう=物理学者)が18日、がんで死去、73歳。葬儀は20日午後1時から長崎県西海市大瀬戸町雪浦下郷1217の真光寺で。喪主は妻弘子さん。

 元慶応大助教授で、脱原発を訴えた。86年に起きた旧ソ連のチェルノブイリ原発事故による放射能汚染の調査に携わった。03年のイラク戦争で米軍が使ったとみられる劣化ウラン弾による被曝(ひばく)の危険性を訴えた。07年に「全ての原発の風上に行こう」と神奈川県から長崎県西海市に移住していた。
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反原発の立場からさまざまな活動を続けてこられた物理学者の藤田祐幸さんが、18日に死去した。慶大を退職後は長崎に転居、表だった活動を控えてきたが、福島原発事故後は福島県内の放射能汚染の実態を調査するなどの活動をしていた。当ブログ管理人も、藤田さんの著書・著作には大変お世話になった。福島原発事故以前から反原発の活動をしてきた人たちにとって、その活動は藤田さんを抜きに語れないほどだ。

藤田さんの活動の一端は、当ブログ管理人が管理している「しらかわ・市民放射能測定所 ベク知る」サイトで掲載している資料「そもそも原発って必要なの?」で見ることができる。元々は“Yahoo!Japan”サイト内に特集として2007年4月頃から掲載されていたものだが、福島原発事故直後に理由も説明されることなく、ひっそりと消えてしまったものである。

死去に際し、改めて哀悼の意を表したい。

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【訃報】国労闘争団「最年長」・佐久間忠夫さん死去

2016-07-14 22:44:00 | 鉄道・公共交通/交通政策
国鉄分割民営化の際、JRに採用されず解雇となった国労組合員らで組織していた「国労闘争団」の最年長で、元国労東京闘争団の佐久間忠夫さんが、7月10日、入院先の大田区内の病院で死去しました。85歳でした。なお、詳しい情報はレイバーネット日本でも報道されています。

病魔に蝕まれて両脚がまったく動かなくなり、2年ほど前から入院して闘病を続けてきましたが、3日ほど前から容態が急変。延命治療は行わない方針だったため、苦しまずに息を引き取りました。

旧国鉄を解雇されてから、国労闘争団員などの被解雇者は解雇撤回・職場復帰を求めて20年以上闘い続けてきました。JR不採用問題は、民主党政権下の2010年に和解により解決しましたが、職場復帰できた人はいませんでした(動労千葉など一部の労働組合・被解雇者の中には、和解を拒否して現在も闘いを続けている人もいます)。過酷な生活を長く続けたため、闘争団員などの被解雇者1047名のうち、すでに百人近くが亡くなっています。50~60代の若さで死去した人も少なくありません。

当ブログでは、過去、国労闘争団員を初めとする被解雇者の訃報をお伝えすることはほとんどありませんでした。しかし、佐久間忠夫さんは当ブログ管理人にとって政治上の「師」であるとともに、親の次くらいにお世話になった方です。鉄道の安全問題、経営問題を追ってきた当ブログとしても、特例として、佐久間さんの訃報だけはお伝えすることにしました。

なお、通夜(・お別れ会)は7月12日、葬儀は13日に、それぞれ東京・江古田斎場で執り行われました。以下、当ブログ管理人が弔電の代わりに佐久間さんの通夜・葬儀に宛てたメッセージを掲載します。このメッセージは、佐久間さんへのお別れの言葉であると同時に、当ブログ管理人の今後の決意表明でもあります。

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<メッセージ>

 安倍政権による改憲発議を認めるかどうか、日本が戦後最も重要な岐路に立った参院選の投票の日に、戦後民主主義の象徴というべき佐久間忠夫さんが旅立ってしまったことに不思議な因縁を感じます。この間、楽しいことだけではなく、いろいろなことがあったはずなのに、今はただ、楽しかったことしか思い出せません。

 14歳で敗戦を迎えた時、昨日まで軍国主義の旗を振っていた周囲の大人たちが、反省もせず、何食わぬ顔で民主主義の旗を振るのを見て、大人に対する信頼が崩れ、自分の頭で考えることの大切さを学んだという佐久間さんのお話は、今なお私の心に印象深く残っています。「敵の最も嫌がることをすれば勝てる」「敵よりも1日長く闘えば勝てる」という佐久間さんの言葉が、最も苦しいとき、いつも私を奮い立たせてくれました。その貴重なお話を、もう肉声で聞くことができないと思うと、寂しくて仕方がありません。

 残念ながら、私たちの力及ばず、佐久間さんが旅立った日の参院選では改憲派の3分の2獲得を許してしまいました。しかし、佐久間さんが種をまいた民主主義の花は、今、少しずつ咲き始めています。これから本当の民主主義が始まるのだと思います。

 今度は私たちが、佐久間さんの遺志を受け継いで、平和、自由、民主主義の守り手となり、再び日本国憲法に息を吹き込むときです。日本の市民は、必ずこの重要な任務を最後まで全うするでしょう。ほんの一握りの金持ちのために、底辺にいる人たちを苦しめる政治、そして戦争、貧困、原発がなくなる日まで、私はまだそちらの世界に行くつもりはありません。少なくとも原発に関しては、私がこちらの世界にいるうちに、最後の日を見届けることができるものと確信しています。

 最後にひとつだけお願いがあります。私も長い闘いの中で疲れること、落ち込むこともあります。そんなとき、時々でいいので、そちらの世界から私を励ましていただければありがたいです。

 いつも私を奮い立たせ、勇気づけてくれた佐久間忠夫さん、ありがとう。安らかにお眠りください。

2016.7.10

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参院選の結果に関する各団体の声明・談話

2016-07-12 22:36:44 | その他社会・時事
参院選の結果に関し、各団体が発表した声明・談話は以下の通り。

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参議院選挙の結果に関する見解(安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合)

 2016年7月10日の参議院選挙において、自民党、公明党、おおさか維新、こころの改憲4党は合わせて77議席を獲得、改憲発議に必要な78議席には至らなかったものの、非改選の改憲派無所属議員4名を加えると、戦後初めて、改憲勢力が衆参両院において3分の2を超える議席を占める事態となってしまいました。

 しかしながら、憲法改正が徹底的に争点から隠され、野党共闘と市民の結集そして参議院選挙そのものについてさえ報道が極端に少ない厳しい戦いのなか、私たち市民連合が各地の市民運動と連携しつつ、32の1人区全てにおいて野党統一・市民連合推薦候補の擁立を実現し、そのうち11名が当選を果たしたことは、全国規模で市民の後押しする野党が共闘するという新しい取り組みが一定の成果を上げたものと考えます。福島と沖縄という重要な選挙区においては、市民の力が、安倍政権の現職大臣2名を落選させました。さらにこれまで保守基盤の強かった1人区においても、善戦をはたした選挙区が少なくありませんでした。このことは3年前の参議院選挙において、野党候補が当時31あった1人区でわずか2議席しか獲得することができなかったことと比較すると明らかです。また複数区や比例区においても、広汎な市民が自ら選挙に参加し、野党候補を押し上げ、1人区も含めて3年前の参議院選挙(野党4党で28名)と比較して一定の前進(野党4党で44名)を獲得しました。

 残念ながら、私たちは今回の選挙で改憲勢力の膨張を阻止することができませんでしたが、市民と立憲野党(民進党、共産党、社民党、生活の党)が共闘する新しい政治の模索はまだ始まったばかりです。日本政治史上初めて、市民が主権者として連帯して野党の統一を促し、市民が政治を変える試みが実現したことの意義は大きいと思います。私たちは、この試みの成功と限界から教訓を学び、安倍政権の下におけるだまし討ちのような改憲の動きに毅然と反対し、個人の尊厳を擁護する政治の実現をめざして、ひきつづき安保法制の廃止と立憲主義の回復を求めてまいります。

2016年7月11日

安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合
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全労連談話 : 2016年参議院選挙の結果について

2016年参議院選挙の結果について(談話)

 7月10日投開票でたたかわれた参議院選挙は、改選121議席のうち、与党が過半数を上回る70議席(追加公認含めて自民56、公明14)を獲得し、参議院でも改憲勢力が3分の2の162議席を占める結果となった。改憲の発議も可能となる重大な事態といわざるを得ない。

 同時に、戦争法廃止・立憲主義擁護を掲げる野党勢力は44議席(民進32、共産6、社民1、生活1、無所属野党統一4)の獲得に止まったが、戦争法廃止を求める広範な市民と結んで、短期日に32の一人区すべてで「統一候補」を実現して追い上げ、11の一人区では勝利し、他の多くの選挙区でも接戦に持ち込んだ。市民と野党の共同の確かな可能性を示すものということができる。この選挙結果からも、切実な要求を基礎に市民と野党の共同をさらに前にすすめ、太くしていくならば、力関係の大きな変化を実現することは可能だと確信する。

 安倍首相は選挙が終わったとたん、「憲法審査会で議論しながら、国民的な理解が高まるなかで、どういう条文か収斂していくことが期待される」などと、野党を巻き込んで改憲論議をすすめる強い意欲を示した。自民党改憲草案が示すとおり、安倍首相がねらう改憲の本丸は、9条の制約を外し海外で本格的に戦争できる国であり、また、そのための緊急事態条項の創設や基本的人権の制約であり、この国の在り方そのものが根底から問われることになる。

 安倍首相は、臨時国会に向けて大型補正予算の編成にも言及しており、格差と貧困をさらに拡大し、大企業と富裕層に富を集中させるアベノミクスの乱暴な推進がねらわれている。

 また、戦争法の具体化、沖縄名護市辺野古への米軍新基地建設、原発再稼働の推進、労働法制の改悪と雇用破壊など、世論の支持を得ていない政策の強権的な加速も確実である。

 危機感を持って反撃を強化する必要があるが、これらの政策の乱暴な推進はいずれも、安倍政権と国民各層との矛盾や亀裂をさらに深めることにならざるを得ない。

 全労連は、安倍政権の「暴走」に対抗し、全国で発展させてきた市民と野党の共同をさらに強化し、改憲策動と戦争する国づくりに反対し、暮らしと雇用をまもり改善するために、切実な要求を前面に掲げて、夏から秋のたたかいに力を集中してとりくむ。

 そのためにも、「市民が変える、政治を変える」のスローガンのもと、不断に情勢議論を深めて、経済闘争と政治闘争を一体的に強化していくことを心から呼びかける。

 日本国憲法と立憲政治、そして国民の日々の暮らしは、戦後最大の危機に直面している。そのことを改めて確認し、目前に迫った東京都知事選挙をはじめ、要求実現のとりくみだけでなく、さまざま段階の政治戦で立憲勢力の総結集を追求し続け、次の国政選挙、衆議院選挙で必ず政治の転換を実現するために、たたかいを発展させる決意である。

 2016年7月11日
全国労働組合総連合
  事務局長  井上 久
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戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会の声明 : 参議院選挙の結果を踏まえての、闘いの決意

参議院選挙の結果を踏まえての、闘いの決意
     戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会

1.7月10日投票が行われた参議院選挙の結果は、当選者は、改憲勢力が77(自民56、公明14、維新7)で、立憲勢力が44(民進32、共産6、社民1、生活1、無所属野党統一4)となりました。野党共闘で闘った32の1人区では11人が当選し、野党共闘としての一定の成果をだし、また福島、沖縄で選挙区の皆さんの奮闘によって、現職大臣を落選させたことなど、次の展開への期待と希望が見えました。しかしながら一方で自公与党に改選議席の過半数をとらせ、非改選の議席と合わせて、改憲勢力に3分の2をとらせてしまったことは、極めて残念な結果であり、引き続き今回の選挙戦を総括しながら、安倍自公政権の暴走に対して闘いを強化する必要があります。

2.安倍自公政権の路線は、「立憲主義をないがしろにする憲法改悪路線と格差・貧困を生み出すアベノミクス路線」であり、今回の選挙戦をつうじて民進・共産・社民・生活の野党は「改憲勢力に3分の2を与えない、アベノミクス路線ではなく、市民生活第1の経済政策を」と訴えてきました。
しかし野党の対抗政策が浸透せず、また様々な原因によって、安倍自公政権批判の受け皿に、十分なり切れませんでした。

3.総がかり行動実行委員会は、憲法を破壊しながら進む安倍自公政権に対抗する基本戦術として、「戦争法廃止を求める2000万人統一署名」を軸に、全国的な大衆的運動と選挙戦における前進を2本柱として取り組んできました。参議院選挙に向けては、12月末、他の4団体とともに「市民連合」を結成し、「選挙を変える・政治を変える」をスローガンに、「野党共闘」を求めて、「32のすべての1人区」で4野党統一候補実現の一翼を担いました。野党候補の統一は、国政選挙では初めてで、画期的であり、このことによって選挙戦で自公政権に対抗できる体制ができました。

市民連合、総がかり行動実行委員会、結集している個々の団体は、こうした経過を踏まえ、野党統一候補・野党の勝利のため、全力で取り組みました。結果は、野党共闘で次の展望を確実に切り開きました。もちろん、初めての経験であり、野党4党、市民団体、労働団体、市民連合などの選挙の具体的取組は、選挙区ごと多様であり、多くの成果と克服すべき課題は残しています。改憲勢力に3分の2を与える結果となったことをしっかりとうけとめながら、次につなげるたたかいとしていくための総括議論が求められています。

4.改憲勢力が、戦後初めて衆参で3分に2議席を獲得したことにより、今後、自公政権は「自民党の改憲草案」を基本としながら、憲法改悪へ踏み出すことは確実です。戦争法の具体化、沖縄名護市辺野古への基地建設、原発再稼働・推進政策などを加速させ、アベノミクス政策も強引に進めてきます。これらの政策は、世論・市民の支持を得ておらず、立憲主義・憲法を破壊するものです。私たちが直面しているのは戦後最大の平和と民主主義の危機にほかなりません。そのことから総がかり行動実行委員会は、引き続き、憲法改悪と戦争法の発動に反対し、暮らし、人権、平和を守るため、安倍政権の暴走に対抗する連帯の輪を拡大して、全力で闘いつづけることを宣言します。

 2016年7月11日

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「改憲発議」どころか、自公政権も支持されたとは言えない~参院選の結果について

2016-07-11 23:30:09 | その他社会・時事
(当エントリは、当ブログ管理人が「レイバーネット日本」に発表した内容をそのまま掲載しています。)

 参院選が終わった。野党共闘の成立、18歳~19歳への選挙権年齢引き下げという新たな変化もあり、最後まで結果を見通せない選挙だったと思う。改憲発議に賛成する勢力が戦後始めて3分の2を確保。これで終わりではないものの、戦後史の転換点がいよいよやってくると覚悟を決めざるを得ない局面を迎えた。

 ここまで来れば、今さらじたばたしても仕方ない。強権的な安倍政権、ふがいない野党、この期に及んでなお選挙に行かずパンケーキを食べたり、競馬をしている救いようのない無党派層、そして「大政翼賛」報道に明け暮れたメディア――言いたいことは山ほどある。だが、今さら誰かのせいにしたところでどうなるものでもない。戦後70年間、何度も自民党政権を倒すチャンスがありながら実現できず、よりいっそう自民一党優位体制を強化する形で復活を許してしまった自分たちの力不足を率直に認めることからしか始まらない。「最悪の事態=改憲」に備えて何ができるか、少しでも希望の持てる論評をしたいと思い、ここに思いを述べておくことにする。(以下、文中敬称略)

 ●象徴的な福島、沖縄での自民敗戦

 象徴的選挙区を挙げよともし聞かれれば、文句なく福島と沖縄だと答える。沖縄に関してはもはや多くの説明を要しない。「安倍政権応援団」の大手メディアは与党敗戦必至と見て、開票速報から早々と沖縄を消してしまったが、開票開始早々の野党統一候補(伊波洋一)当選は、基地の島の不屈の意志を示した。

 代わって「大手メディア的注目選挙区」に躍り出たのが北海道、そして福島だ。

 このうち北海道は、1票の格差「違憲」判決を受けた2015年7月の定数是正で、定数が4(改選2)→6(3)に増員となった。前回までは自民(長谷川岳)、民進(徳永エリ)が議席を分け合っていたが、今回は両党が新たな議席確保を狙って2人目の候補を擁立した。自民は新人・柿木克弘、民進は元職・鉢呂吉雄。鉢呂は旧社会党系で福島第1原発事故当時の経産相。「福島は死の町」発言で辞任に追い込まれ、2012年総選挙での落選後は政界引退を表明していたが、増員に伴って再び担ぎ出された。

 結果は長谷川が先行、2位に連合北海道の組織支援を受けた徳永エリがつけ、最後の3議席目を鉢呂、柿木で争った結果、大票田の札幌市を制した鉢呂が競り勝った。民進の「護憲派」が2議席を確保、増員に伴って2人目を担ぎ出した民進党の積極策が功を奏した。

 福島県は、北海道と対照的に、2013年選挙から定数が4(改選2)→2(1)に減員。前回(2010年)当選した2人の現職、岩城光英(法務大臣、自民党県連会長)と増子輝彦(民進、野党統一候補)が争った。共産党は前回までは岩渕友(党県委員会役員)を擁立していたが、今回は岩渕を比例に転出させ増子支援。社民も増子を支援した。結果は、夜10時半を回ってようやく増子に当確が出る激戦だった。安倍政権幹部が相次いで福島入りし、「岩城が負けたら復興予算が減る」と脅したが、福島県民は屈しなかった。

 福島、沖縄での自民、しかも現職閣僚の敗北は重要な意味を持つ。この2県は「県民総ぐるみ人権剥奪」といっても過言ではない状況で、誤解を怖れず言えば、政府がどこまで憲法、法律を無視して住民を強権支配できるかテストする「緊急事態特区」扱いにされている。その意味では支配層にとっての「モデルケース」だ。安倍政権を背後で操る日本会議の思うとおりに改憲すれば、日本全国が福島、沖縄のようになる。日本国憲法が「適用除外」になっているこの2県で自民の現職閣僚が敗北したことは、改憲否定の意思表示であるとともに、「他都道府県のみなさん、私たちと同じ目に遭いたくなかったら改憲を拒否して闘ってください」という両県民からのメッセージである。

 ●北海道、東北で2勝7敗の与党

 北海道(改選3)、東北6県(青森、岩手、秋田、宮城、山形、福島、改選各1)の1人区で、自民が確保したのは北海道の長谷川の他、秋田だけ。それ以外の東北各県はすべて野党統一候補(民進または無所属)が勝利し、野党が7勝2敗と圧勝した。TPP反対を公約しながら協定締結に踏み切った自民に対し、東北5県(青森・秋田・岩手・宮城・山形)の農政連は自主投票を決め、唯一、「復興には与党の力が必要」との理由で農政連が自民支持を打ち出した福島でも、会津地方を中心に農家が猛反発した。自民の相次ぐ敗北は、久しぶりの「農家の乱」だった。

 しかし、東北での自民の弱体化は昨日今日始まった話ではなく、過去の国政選挙では自民が全滅したこともある。小沢一郎・生活の党代表の地元である岩手では、現職の主浜了が介護を理由に直前に引退表明。後継者として知名度のない木戸口英司を急きょ擁立したが、それでも自民に勝利した。東北では、自民党農政はとっくに農家に見放されている。

 岩手では、古くは1987年3月に行われた参院補選で、小川仁一(社会党)が自民党候補を破る「岩手ショック」が起きたこともある。この与党の敗北が、当時、売上税導入を狙っていた中曽根政権を直撃。中曽根政権が売上税導入をいったんは断念するきっかけになった。政局の節目節目で、きちんと政府与党にお灸を据えることができるのが岩手という土地柄である。

 青森から太平洋沿岸を下っていくと、青森(東通、六ヶ所)、宮城(女川)、福島(福島第1、第2)、茨城(東海第2)にはすべて原発・核施設があるのに岩手だけ原発がないことに気づく。いかに自民が圧倒的多数でも「反対」の声を上げることは決して無駄ではないのだ。

 自民の優勢が伝えられ、勝てると思っていなかった大分でも野党候補が勝った。東日本大震災で大きな被害を受けた東北6県のうち5県、そして熊本地震で熊本に次いで大きな被害を受けた大分。大地震の被災地でことごとく与党が敗れているのを偶然と思えない。ゼネコンだけが儲かり、地元住民そっちのけの「復興」に、被災地は拒否の意思を示したと思う。

 ●「大金星」だった鹿児島県知事選での勝利

 参院選の影に隠れてほとんど報道されなかったが、同時に行われた鹿児島県知事選で、川内原発の再稼働に同意した伊藤祐一郎知事が新人、三反園訓に敗北した。三反園は川内原発をいったん止め、再検査するよう求めている。日本で唯一、稼働中の原発が停止、再び「原発ゼロ」になる可能性が出てきた。

 鹿児島で過去、4選した知事はいないこと、「女子に三角関数を勉強させてどうなる。植物の花や草の名前を教えた方がいい」という許しがたい女性差別発言などが続き、次第に伊藤知事への反発が高まっていた。そこに熊本地震が発生したが、伊藤知事は「原子力事故が起きても避難の必要がない。普通に生活してもいい」「もし福島みたいなことが起きても、もう命の問題なんか発生しない」と発言。国、薩摩川内市、九州電力と一体になって原発を運転し続けた。こうした姿勢が結果的に命取りになった。

 鹿児島県、薩摩川内市、九州電力が3者で結んだ安全協定の第10条は、「甲(鹿児島県)及び乙(薩摩川内市)は、……立入調査の結果、発電所周辺地域の住民の安全の確保及び環境の保全のために必要があると認めた場合には、丙(九州電力)に対して直接又は国を通じて適切な措置を講ずることを求める」「丙は、前項の規定による求めがあったときは、誠意をもって措置し、速やかにその結果を甲及び乙に文書で報告する」と規定している。鹿児島県が川内原発の安全性に疑問を持った場合、立入調査を経て直接原発停止を要求できる、と読める内容だ。熊本地震の余震は今なお続いている。三反園新知事は県民の「民意」を受け止め、速やかに川内原発の停止を求めるべきだ。

 ●市民派はずっと正念場、あきらめず改憲粉砕を

 今回、戦後初めて衆参両院で改憲派が発議に必要な3分の2を確保したことで、護憲派はいよいよ崖っぷち、正念場という声が強まっている。だが、小選挙区制が導入されたときから市民派はずっと正念場だったし、いつかこの日が来ることもわかっていた。今さら焦っても仕方ない。こうなったら、国民投票を正々堂々と受けて立ち、改憲策動をどうすれば粉砕できるか作戦会議を始めよう。堂々と国民投票で私たちが勝利すれば、今度こそ私たち日本国民ひとりひとりが自分で選び取って確定させた憲法ということになり、右翼・改憲派お決まりの「アメリカの押しつけ憲法」論を粉砕できる。

 敵はすでに走り出している。私たちも次の闘いに向かって走りだそう。大阪都構想をめぐる住民投票でも、EU離脱をめぐる投票でも、住民ひとりひとりが支配者たちに一泡吹かせた。この流れに乗って安倍自民最大の野望を阻止し、新しい朝を迎えよう。今日からまた闘いのスタートだ。

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【2016参院選】大阪市「ヘイトスピーチ対処条例」採決で唯一「反対」した自民党は差別排外主義・ヘイト推進政党だ!

2016-07-08 22:04:28 | その他社会・時事
7月1日、大阪市で「ヘイトスピーチへの対処に関する条例」が施行された。在日韓国・朝鮮人をはじめとして外国人が多く、他の大都市と比べても差別が深刻な関西地方。京都で「在特会」が朝鮮学校に対して行ったヘイトスピーチは刑事事件にまで発展した。

右翼団体の集会で「全国で生活保護受給者が最も多い大阪市は吹きだまり」というトンデモ発言をし、落選の憂き目に遭った札幌市長選候補者もいる。市民がさまざまな差別反対の声を上げる中でも、依然として差別はあちこちに存在する。

橋下徹・前市長と「おおさか維新の会」に言いたいことは、私も本が1冊書けるほどたくさんある。ただ、このヘイトスピーチ対処条例を最後に作ったことだけは、橋下市長と大阪維新を評価してもいいだろう。

もちろん、この条例には罰則規定がないなど不備も指摘されている。しかし、それに代わるものとして「氏名・名称公表規定」が盛り込まれた。ヘイトスピーチを行った者の氏名・団体名称を、大阪市が正式な手続きを経て公表できる規定は、正当に運用すれば罰則以上の制裁効果をもたらすことが期待できる。表現の自由を不当に制限することのないよう、氏名・名称公表前にヘイトスピーチ審査会による審査の手続きを経るなど、一定の歯止めをかける制度も盛り込まれている。

行政が主体となって、ヘイトスピーチに積極的に対処する条例を作る。これこそ少数者の市民的権利を守ろうとする地方自治体としてのあるべき姿だ。そんな条例案の採決で、まさか反対する会派があるとは思わなかった。反対した唯一の会派――それが自民党である。例によって、証拠を挙げておこう。


大阪市議会公式サイトから 自民だけが「反対」している)

こんなことを書くと、「自民党は、国会でヘイトスピーチ禁止法を作ったではないか」という反論が返ってきそうだ。しかし、すべての外国人に対する差別的言動を等しく取り締まろうという積極的な内容だった野党案に、「適法に居住している」外国人に限定して差別を禁止しようという後退した法案を対置して、野党案を事実上骨抜きにしたのは、ほかならぬ自民党だ。

これに対し、福島みずほ議員や山本太郎議員など、最も底辺で差別に苦しめられている人たちに日常的に寄り添ってきた議員ほど敏感に反応した。差別解消の名の下に、新たに差別と分断を持ち込むことになりかねなかった不十分な法案。採決で反対せざるを得なかった2人の気持ちは私にも理解できる。とりあえず法案を成立させてから不十分な部分を解消すべきと判断し、賛成した議員。差別解消の名の下に、新たな差別と分断を生みかねない危険な法案だとして反対した議員。どちらの対応が正しかったのかは、私にも今なお迷いがある。

許しがたいのは、参議院の委員会における法案審議の過程で自民党の委員が「表現行為を萎縮させ、表現の自由を害する」などと主張したことだ。安倍政権を批判するメディアを次々に恫喝し、放送法違反だ何だと脅しまくってきた自民党。政権に批判的な沖縄の2紙を潰せと声高に叫んだのが誰か、私たち市民は忘れていない。市民やメディアの表現の自由、批判的自由は取り上げながら、差別排外主義者、ヘイト主義者の「表現の自由」は最大限に認める。差別主義者に優しい政党、それが自民党だ。

今回の参院選は、改憲発議を認めるかどうかが最大の争点だ。安倍首相は、この日を迎えるためだけに首相になったのだから、改憲右翼政党と合わせて3分の2を確保したら、明日にでも改憲を提起してくるだろう。氏名公表規定を含み、ヘイトスピーチに積極的に対処しようとする大阪市の条例には唯一「反対」し、国会では「不法」滞在者を含むすべての外国人を差別から保護しようとする積極的な野党案を潰した自民党。市民やメディアの表現の自由に毎日のように難癖をつけながら、差別排外主義者の「表現の自由」にだけは優しく寄り添う自民党。改憲発議を自由にできる3分の2の議席を、こんな連中に渡したら、本当に私たちに未来はなくなってしまう。明日、あさって、投票に行く人たちは、本当にそれでいいのか考えて投票してほしい。

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「生長の家」、与党とその候補者を「不支持」と表明

2016-07-06 22:44:46 | その他社会・時事
すでに1ヶ月近く前のことだが、宗教法人「生長の家」が来たる参院選で与党とその候補者に対する「不支持」を表明したことが話題となった。これから投票に行くであろう多くの有権者のみなさまの参考となるように、生長の家が発表した声明文を掲載する。

なお、生長の家は、現在、安倍政権を事実上支配し、改憲運動の中心的存在となっている日本会議メンバーがかつて所属していた団体である。自民党の選挙運動を熱心に行っていた時代もあるが、現在は政治運動からは手を引いているとされている。

今年に入って「日本会議の研究」が出版され、日本会議の中心メンバーがかつての生長の家メンバーであると紹介されたことで、生長の家が改憲運動の司令塔と誤解される可能性が出てきた。生長の家があえてこのような声明を出した背景には、そうした誤解が生じるのを防ぎたいとの思惑がある。

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(以下引用--宗教法人「生長の家」公式サイトより)

今夏の参議院選挙に対する生長の家の方針

「与党とその候補者を支持しない」

来る7月の参議院選挙を目前に控え、当教団は、安倍晋三首相の政治姿勢に対して明確な「反対」の意思を表明するために、「与党とその候補者を支持しない」ことを6月8日、本部の方針として決定し、全国の会員・信徒に周知することにしました。その理由は、安倍政権は民主政治の根幹をなす立憲主義を軽視し、福島第一原発事故の惨禍を省みずに原発再稼働を強行し、海外に向かっては緊張を高め、原発の技術輸出に注力するなど、私たちの信仰や信念と相容れない政策や政治運営を行ってきたからです。

戦後の一時期、東西冷戦下で国内が政治的に左右に分裂して社会的混乱に陥っている時、当教団の創始者、谷口雅春先生は、その混乱の根源には日本国憲法があると考えられ、大日本帝国憲法の復元改正を繰り返し主張されました。そして、その実現のために、当教団は生長の家政治連合(生政連)を結成(1964年)して、全組織をあげて選挙活動に取り組んだ時代がありました。しかし、やがて純粋な信仰にもとづく宗教運動が政治運動に従属する弊害が現れ、選挙制度の変更(比例代表制の導入)によって、政党と支持団体との力関係が逆転したことを契機に、1983年に生政連の活動を停止しました。それ以降、当教団は組織としては政治から離れ、宗教本来の信仰の純粋性を護るために、教勢の拡大に力を注いできました。

この間、私たちは、第二代総裁の谷口清超先生や谷口雅宣現総裁の指導にもとづき、時間をかけて教団の運動のあり方や歴史認識を見直し、間違いは正すとともに、時代の変化や要請に応えながら運動の形態と方法を変えてきました。特に、世界平和の実現など社会を改革する方法については、明治憲法の復元は言うに及ばず、現憲法の改正などを含め、教団が政治的力を持つことで“上から行う”のではなく、国民一人一人が“神の子”としての自覚をもち、それを実生活の中で表現し、良心にしたがって生きること。政治的には、自己利益の追求ではなく、良心(神の御心)の命ずることを、「意見表明」や「投票」などの民主的ルールにしたがって“下から行う”ことを推進してきました。

私たちは、社会の変革は、信徒一人一人が正しい行動を“下から”積み上げていくことで実現可能と考え、実践しています。その代表的なものは、地球環境問題への真剣な取り組みです。人間の環境破壊は、今日、深刻な気候変動を引き起こし、自然災害の頻発や、食糧や資源の枯渇、それにともなう国家間の奪い合いや国際紛争の原因となっています。この問題は、資源・エネルギーの消費を増やす経済発展によっては解決せず、各個人の信念とライフスタイルの変革が必要です。私たちはそれを実行することで、世界平和に貢献する道を選びました。

具体的には、私たちは宗教団体として初の環境マネージメントシステムISO14001の認証取得(2001年)をして、それを全国66の拠点に及ぼしました。また、莫大なエネルギーを消費する大都会・東京を離れ、国際本部の事務所を山梨県北杜市に移転し、そこに日本初のゼロ・エネルギー・ビル“森の中のオフィス”を建設して(2013年)、地球温暖化の最大の原因である二酸化炭素を排出しない業務と生活を実現しています。最近では、この生活法を全国に拡大する一助として、信徒からの募金により京都府城陽市にメガソーラー発電所(1700kW)を、福島県西白河郡西郷村に大規模ソーラー発電所(770kW)を建設し、稼働させています。これらの運動は、創始者・谷口雅春先生が立教当初から唱導してきた「天地の万物に感謝せよ」(大調和の神示)という教えの現代的展開であり、人類だけの幸福を追求してきた現代生活への反省にもとづくものです。

ところが安倍政権は、旧態依然たる経済発展至上主義を掲げるだけでなく、一内閣による憲法解釈の変更で「集団的自衛権」を行使できるとする”解釈改憲〟を強行し、国会での優勢を利用して11本の安全保障関連法案を一気に可決しました。これは、同政権の古い歴史認識に鑑みて、中国や韓国などの周辺諸国との軋轢を増し、平和共存の道から遠ざかる可能性を生んでいます。また、同政権は、民主政治が機能不全に陥った時代の日本社会を美化するような主張を行い、真実の報道によって政治をチェックすべき報道機関に対しては、政権に有利な方向に圧力を加える一方で、教科書の選定に深く介入するなど、国民の世論形成や青少年の思想形成にじわじわと影響力を及ぼしつつあります。

最近、安倍政権を陰で支える右翼組織の実態を追求する『日本会議の研究』(菅野完、扶桑社刊)という書籍が出版され、大きな反響を呼んでいます。同書によると、安倍政権の背後には「日本会議」という元生長の家信者たちが深く関与する政治組織があり、現在の閣僚の8割が日本会議国会議員懇談会に所属しているといいます。これが真実であれば、創価学会を母体とする公明党以上に、同会議は安倍首相の政権運営に強大な影響を及ぼしている可能性があります。事実、同会議の主張と目的は、憲法改正をはじめとする安倍政権の右傾路線とほとんど変わらないことが、同書では浮き彫りにされています。当教団では、元生長の家信者たちが、冷戦後の現代でも、冷戦時代に創始者によって説かれ、すでに歴史的役割を終わった主張に固執して、同書にあるような隠密的活動をおこなっていることに対し、誠に慚愧に耐えない思いを抱くものです。先に述べたとおり、日本会議の主張する政治路線は、生長の家の現在の信念と方法とはまったく異質のものであり、はっきり言えば時代錯誤的です。彼らの主張は、「宗教運動は時代の制約下にある」という事実を頑強に認めず、古い政治論を金科玉条とした狭隘なイデオロギーに陥っています。宗教的な観点から言えば“原理主義”と呼ぶべきものです。私たちは、この“原理主義”が世界の宗教の中でテロや戦争を引き起こしてきたという事実を重く捉え、彼らの主張が現政権に強い影響を与えているとの同書の訴えを知り、遺憾の想いと強い危惧を感じるものです。

当教団は、生政連の活動停止以来、選挙を組織的に行うなどの政治活動を一切行ってきませんでした。しかし、政治に触れる問題に関して何も主張してこなかったのではなく、谷口雅宣現総裁は、ブログや月刊誌を通して“脱原発”や“自然エネルギー立国”を訴え、また日米の外交政策を分析して、それに異を唱えたり、注文をつけたりしてきました。また、昨年は憲法を軽視する安保法案に反対する立場を明確に表明されました。

私たちは今回、わが国の総理大臣が、本教団の元信者の誤った政治理念と時代認識に強く影響されていることを知り、彼らを説得できなかった責任を感じるとともに、日本を再び間違った道へ進ませないために、安倍政権の政治姿勢に対して明確に「反対」の意思を表明します。この目的のため、本教団は今夏の参院選においては「与党とその候補者を支持しない」との決定を行い、ここに会員・信徒への指針として周知を訴えるものです。合掌。

2016年6月9日

宗教法人「生長の家」

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【2016参院選】福島県内土木・建設関係業界団体から国民政治協会へ3年間で1,700万円の巨額政治献金

2016-07-03 14:49:03 | 原発問題/一般
 安全問題研究会は、自民党の政治資金団体である「一般財団法人国民政治協会」への企業・団体献金について、公表されているものとしては直近の3年間(2012(平成24)年~2014(平成26)年)分の政治資金収支報告書を調査した。その結果、福島県内の土木・建設業界関連の29団体から、3年間で合計1,700万円もの巨額の献金が行われていることがわかった。とりわけ、2012年度は710万円、2013年度は832万円もの献金が行われている。福島県内団体の献金額一覧は以下の通りだ。(サムネイル写真は、福島県内某村での除染実施の案内看板)

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 この額は、他県の土木・建設業界関連団体からの献金額と比べても突出して多く、東日本大震災の主要被災三県(岩手・宮城・福島)の中でもこれほど巨額の献金を行っているのは福島県だけである(岩手県内団体は、国民政治協会への献金自体、行っていない)。同じ期間における全国の土木・建設業界関連団体からの献金額は3434万円(以下の表の通り)であり、福島県内団体からの献金だけでこの約半分を占める。

(クリックで拡大)


(クリックで拡大)


 いうまでもなく、2012~2014年度といえば、福島県内で「復興」事業が集中して行われた時期に当たる。2012年は、年末に自民党が政権復帰するまで、ほとんど野党であったにもかかわらず、自民党に対してこれだけの献金が行われていた事実に驚かされる。

 福島では、震災復旧、除染、復興公営住宅整備などの事業が、大量の税金を投入して行われてきた。2016年度の福島県当初予算案は一般会計で1兆8819億円だが、その55%に当たる1兆384億円が「震災・原子力災害対応分」に重点配分されている(福島県「避難地域の復興加速」 16年度当初予算案を発表(2016.2.4 日本経済新聞)。福島県内の土木・建設業界が自民党に巨額の政治献金をし、国・県の税金が福島県内の震災・原子力災害対策に「重点配分」されていく実態が浮かび上がった。

 福島県内では、放射能による健康被害を訴え、避難する人々も相次いだ。そうした人々に対し、「復興の妨げ」「風評被害の元凶」「避難者がいるから『復興』が進まない」などといわれなき中傷が浴びせられてきた。「復興」という言葉が出た瞬間、国・県・東京電力を批判してはならないかのような「空気」が作られ、原発事故に対する批判は徹底的に封じ込められてきた。子どもたちに100人を超える甲状腺がんが発生しても、福島の被災者たちは沈黙を強いられ、危険な高線量地域への「帰還事業」ばかりが加速してきた。「復興」の名の下に、あらゆる情報の隠蔽、ごまかしの嵐は今なお強烈に吹き荒れている。

 福島県民に沈黙を強いているものの正体が、業界によってカネで買われた「復興」だとするならば、今こそ、私たちはそうした「復興」を根本から問わなければならない。来る参院選は、このような「利権まみれ、カネまみれ」の汚れた復興の継続を許すのか、真に住民本位、健康・安全最優先の「人を中心とした復興」への転換を図るのかを問う絶好の機会である。自民党の議席増を許すようでは、今後、汚れた復興が加速するだけだ。いよいよ残り1週間。福島を、そして日本の市民を幸せにできる「本当の意味での復興」を掲げる野党候補に、あなたの1票を投じてほしい。

 なお、当研究会は一般マスメディアにも今回の献金の事実をプレスリリースした。明日以降、メディアがどのような取り上げ方をするのか、あるいは黙殺するのか。それにも注目してほしい。

<参考記事・資料>
本記事が参考にした2012(平成24)年~2014(平成26)年分の政治資金収支報告書は、総務省サイトの以下のページで見ることができる(いずれもPDF)。

2012(平成24年)分……平成25年11月29日付け官報(号外第259号)

2013(平成25年)分……平成26年11月28日付け官報(号外第265号)

2014(平成26年)分……平成27年11月27日付け官報(号外第268号)

(文責・黒鉄好)

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