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検察審査会の議決に基づき、東電旧経営陣を起訴

2016-02-29 23:33:55 | 原発問題/一般
東電元3幹部を強制起訴 原発事故の責任追及「やっとここから」(東京)

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 東京電力福島第一原発事故で、検察官役の指定弁護士は二十九日、昨年七月の東京第五検察審査会の起訴議決に基づき、「大津波を予測できたのに対策を怠り、漫然と原発の運転を続けた過失がある」として、東電の勝俣恒久元会長(75)ら旧経営陣三人を、業務上過失致死傷罪で在宅のまま東京地裁に強制起訴した。発生から三月十一日で五年。甚大な被害をもたらした原発事故の刑事責任が、初めて裁判で問われる。 

 他に起訴された二人は、ともに原子力・立地本部長を務めた武藤栄元副社長(65)と武黒(たけくろ)一郎元副社長(69)。今後、事前に争点や証拠を絞り込む公判前整理手続きが行われる。公判で勝俣元会長らはいずれも無罪を主張するとみられる。

 強制起訴は二〇〇九年五月の改正検察審査会法施行後、九件目。

 起訴状では、勝俣元会長ら三人は、福島第一原発の敷地の高さ(海抜十メートル)を超える津波が襲来し、津波による浸水で重大な事故が起きる可能性を予測できたと指摘。原発の運転停止を含めた津波対策をすべき注意義務を怠り、東日本大震災に伴う津波で重大事故を引き起こし、四十四人を死なせ、十三人にけがを負わせたとした。

◆コメントは控える

 東京電力の話 刑事訴訟に関することであり、コメントは差し控える。損害賠償、廃炉・除染に全力を尽くし原発の安全性強化対策に不退転の決意で取り組む。

◆武藤類子・告訴団団長 進む再稼働「教訓学んでない」

 「やっとここまできた」。事故の責任追及を求めてきた「福島原発告訴団」の武藤類子団長(62)は、東京電力の旧経営陣が強制起訴されたことに感慨深げだ。「三人は真実を語り、なぜ事故が起きたかを明らかにしてほしい」

 放射能汚染で、日々の営みを奪われた一人だ。二〇〇三年に豊かな自然に囲まれた福島県田村市で喫茶店をオープン。裏山で摘んだ野草をお茶にしたり、ドングリを使った料理を振る舞ってきた。だが、約四十五キロ離れた東電福島第一原発で起きた事故によって、山の幸は汚染されドングリもキノコも食べられなくなり、薪(まき)も燃やせなくなった。店は一三年春に廃業した。

 「被害の大きさだけではなく、調べれば調べるほど、東電は津波対策を握りつぶしてきたことが分かってきた。想定外ではなかったのに、事故の責任を誰も負わないのはおかしい」

 一二年に告訴団を結成し、団長になった。福島県民約千三百人でスタートし、全国に共感が広がり、一万四千人超にまで膨らんだ。今年一月には、裁判で検察官役を務める弁護士にエールを送るため、「支援団」も発足させた。

 「原発事故は収束していないし、被災者はまだ困難な状況にある。責任をうやむやにしてはいけない。反省しなければ、また事故が起きる」と訴える。

 事故後、九州電力川内(せんだい)(鹿児島県)、関西電力高浜(福井県)の原発計四基が再稼働し、運転開始から四十年超の高浜1、2号機さえも、再稼働が近づく。「福島第一の1号機も、四十年になる直前で事故になった。老朽化も一つの原因かもしれない。福島から何も学んでいない。裁判を通じ、原発政策の問題点も明らかになれば」と期待する。 (荒井六貴)
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当ブログ管理人は、福島原発告訴団には結成からずっと関わってきた。結成集会で採択された「福島原発事故の責任をただす!告訴宣言」(福島原発告訴団サイト)は当ブログ管理人が起草したものだ。当時、福島県内に住んでいた私は2012年6月の第1次告訴の段階から告訴人に名を連ねている。JR福知山線脱線事故に関わる中で得た検察審査会や強制起訴についての私の予備知識を、ずいぶん役立ててもらえたと思っている。

それから4年、武藤団長と同様、今日の起訴は感無量であり、ひとつの区切りだ。ただ、あくまでゴールではなく、スタートラインに立ったに過ぎない。検察が不起訴にした事件だけに、有罪立証のハードルは高い。本当の困難は起訴とともに、これから始まるだろう。

しかし、それでも私たちはこの課題に取り組まなければならない。4年前、自分自身が起草した告訴宣言を久しぶりに読み直してみると、身が引き締まる思いだ。政府や巨大企業は何をやっても罰せられない、世界でもまれに見る「無責任大国ニッポン」を私たちの時代で終わりにしなければならない。

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予告通り、渡部恒三氏の過去の失言を「発掘」してきました

2016-02-27 22:46:31 | 原発問題/一般
昨年12月19日付の当ブログ記事、書き残しておきたい原発推進派の暴言 渡部恒三「原発作れば作るほど健康増進、国民長生き」でお知らせした渡部恒三元厚相(1984年当時)の発言を、予告通り、朝日新聞の縮刷版から発掘してきた。ここに紹介しておきたい。

「私はエネルギー問題を解決する最大の課題は原発の建設であるとの政治哲学を持っている。その私が国民の健康を守る厚相に就任したということは、原子力発電所の建設は国民の健康を守るものだということを皆さんに理解して頂いた結果だと思う。福島県には日本の原発の三〇%近くがあるが、そこで育って暮らしているこの私がこの通り元気一杯なのだから、原子力発電所をつくればつくるほど国民の健康は増進、長生きし、厚生行政は成功していくのではないかと思う」

当時の様子を伝える新聞紙面(1984(昭和59)年1月6日付)はサムネイル画像の通り(クリックで拡大)。原発推進各団体や電力業界が集まる日本原子力産業会議の新年名刺交換会での発言だ。もともと自身が原発推進派であった渡部氏が「お仲間」に囲まれ、さらに新年ということも加わって、ついつい「調子に乗りすぎて」このような発言に至ったのだろう(とはいえ、かなりの部分、そう思っていたからこそ言葉も滑ろうというものだ)。神道政治連盟の集会で、参加者へのリップサービスのつもりで調子に乗りすぎ、「日本は神の国」発言をしてしまった森喜朗元首相と同じ部類の、軽はずみな失言だと思う。

だが、3.11後の日本でさすがにこれは失言で済まされない。甲状腺がん検査も2巡目に入る中、がん確定・疑いが合わせて167人にも達する中で、今、渡部氏は同じ発言ができるか。自分の「甥っ子」である佐藤雄平・前福島県知事が、「年間20ミリシーベルトでの学校再開を認めたA級戦犯」として、今なお指弾され続けていることをどのように考えるのか(佐藤前知事は、違うというなら公の場で釈明すべきだが、一度もしていない)。そしてなにより、過去にこのような発言で原発を推進してきた自身の責任をどのように考えるのか。渡部恒三氏は、逃げ回ってばかりいないで、そろそろ、公の場で自身の今の考えを表明すべきだろう。

当ブログは、今回、32年も前の原発推進派の「暴言」の発掘に成功した。大多数の国民の反対の声を無視して、今後も原発再稼働を繰り返すなら、当ブログはいつでも、どんなに昔の原発推進派の「犯罪」でも発掘し、命ある限り告発し続ける。

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東電旧経営陣の強制起訴をめぐるNHKの報道について

2016-02-26 21:38:25 | 原発問題/一般
今日正午のNHKニュースで、突然、「東電旧経営陣3人 強制起訴へ」と題する報道が行われた。その報道の仕方が、あまりに誘導的・恣意的で、腹に据えかねたので、関係者のひとりとして、事実関係を明らかにしておきたい。

まず、正午のNHKニュースの報道は、東京第5検察審査会による強制起訴の議決が確定した東電の勝俣恒久元会長ら旧経営陣の起訴が本日にも行われるというもので、内容は以下の通りだった。

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東電旧経営陣3人 強制起訴へ(02月26日 12時01分)



福島第一原子力発電所の事故をめぐって、検察審査会に「起訴すべき」と議決された東京電力の勝俣恒久元会長ら旧経営陣3人について、検察官役の指定弁護士が26日にも業務上過失致死傷の罪で強制的に起訴する方針を固めたことが、関係者への取材で分かりました。

3人は無罪を主張するとみられ、原発事故を防げなかったことが罪にあたるかどうかが、初めて法廷で争われることになります。

福島第一原子力発電所の事故をめぐって、検察は東京電力の勝俣恒久元会長(75)、武黒一郎元副社長(69)、武藤栄元副社長(65)の3人を不起訴にしましたが、去年7月、検察審査会が「起訴すべき」と議決しました。

これを受けて裁判所から選任された指定弁護士が起訴に向けた手続きを進めていましたが、26日にも勝俣元会長ら3人を業務上過失致死傷の罪で強制的に起訴する方針を固めたことが関係者への取材で分かりました。

関係者によりますと、指定弁護士は3人が福島第一原発が津波で浸水する可能性について報告を受けていたのに必要な対策をとらず、事故で避難を余儀なくされた福島県大熊町の双葉病院の入院患者などを死傷させたとして、強制的に起訴するものとみられます。

3人は今後の裁判で「巨大な津波は予測できなかった」などと無罪を主張するとみられ、原発事故を防げなかったことが罪にあたるかどうかが初めて法廷で争われることになります。
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結論から言えば、このNHKの報道は完全に「寝耳に水」だった。多くのメディアが3月起訴、初公判は4月以降と見込んでおり、福島原発告訴団事務局の中にも「起訴が近い」との感触はあったものの、2月中に行われるとは予想もしていなかったからである。もちろん、告訴人に対し事実関係を告知する義務は指定弁護士にはないから、告訴団側が起訴の行われる日を事前に聞いていなかったとしても、そのこと自体は不思議ではない。

上記の記事では、強制起訴が26日中にも行われる見込みであることが「関係者への取材」で分かったとしているが、福島原発告訴団事務局の中に、最近NHKの事前取材を受けた人はおらず、仮にいたとしても「26日中」などと答えるはずがない。「関係者」とは福島原発告訴団ではない「誰か」としか考えられない。実際、NHKがニュースで報道した正午以降、告訴団事務局の電話は鳴りっぱなしの状態となったが、告訴団自体が「寝耳に水」でたいした情報提供はできなかった。連絡してきたメディアには、強制起訴となった場合の福島原発告訴団の会見予定を伝える程度だった。

今回の原発事故のように、検察審査会の「起訴相当」議決を受けた強制起訴事件の場合、あくまでも、起訴を行うのは検察官役の指定弁護士である(検察庁は、自分の手で不起訴にしたのだから原則的にはノータッチである)。NHKは、ずいぶん前から強制起訴の日時を探っていたようだが、いつまで経っても判然としないため、ついに「強硬手段」に出たようだ。自分たちが大々的に報道すれば、それが「既成事実」になり、指定弁護士が本当に今日中に起訴手続きを取らざるを得なくなる。結果的に自分たちの報道した通りになる――彼らはそう踏んだのだろう。

当ブログ管理人は、反原発デモが行われてもまともに報道せず、再稼働の報道ばかり大々的に行うNHKの偏向や「安倍さまの犬HK」化に強い不満を抱いていることもあり、今日正午過ぎ、告訴団事務局関係者に連絡。「今日の起訴は避けるようにすべきだ」と進言した。今日中の強制起訴が見送られれば、「26日にも強制起訴」としたNHKの報道は結果的に「誤報」となり、「安倍広報機関」化したNHKのメンツを潰すことができると考えたからである。告訴団事務局関係者からは「私たちが起訴するわけではないからどうしようもできない」との回答が返ってきたが、一方で、今日中の起訴は見送られそうだとの観測も伝わってきた。

そして、指定弁護士から午後4時過ぎ、各メディアに「本日の起訴はなし、週明けに持ち越し」の事実が伝えられると、NHKはこっそりと報道内容を「修正」した。その内容は以下の通りだ。

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東電旧経営陣29日強制起訴へ(02月26日 17時12分)



福島第一原子力発電所の事故をめぐる、東京電力の勝俣恒久元会長ら旧経営陣3人の強制起訴について、検察官役の指定弁護士が記者会見を行い、26日は手続きを取らず、週明けの月曜日、2月29日に業務上過失致死傷の罪で強制起訴することを明らかにしました。

裁判で3人は無罪を主張するとみられ、原発事故を防げなかったことが罪にあたるかどうかが初めて法廷で争われることになります。

福島第一原子力発電所の事故をめぐって検察は東京電力の勝俣恒久元会長(75)、武黒一郎元副社長(69)、武藤栄元副社長(65)の3人を不起訴にしましたが、去年7月、検察審査会が「起訴すべき」と議決しました。

これを受けて裁判所から選任された検察官役の指定弁護士が26日午後、強制起訴について記者会見を行いました。

この中で指定弁護士は26日は手続きを取らず、週明けの月曜日、2月29日に業務上過失致死傷の罪で在宅のまま強制起訴することを明らかにしました。

3人は今後の裁判で「巨大な津波は予測できなかった」などと無罪を主張するとみられ、原発事故を防げなかったことが罪にあたるかどうかが初めて法廷で争われることになります。
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NHKが「本日強制起訴」の報道を行うのになぜ今日の昼を選んだのかについてはあくまで推測の域を出ないが、金曜日の午後であれば「東電強制起訴ショック」による株価への影響を最小限にとどめられるとの思惑が働いたのだろう。上場企業が不祥事を起こしたとき、自社の株価への影響を最小限にとどめるため、記者会見はいつも金曜日の株式市場が閉まる午後3時以降に開くのが通例となっているからだ。どのみち東電の強制起訴が避けられないなら、株価が生命線である安倍政権への打撃を最小限にとどめたいとの「忖度」だったのだろう。

だが、結果的にはNHKの思い通りにはさせなかった。当ブログ読者の皆さまには、NHKがこのような組織――報道機関でも言論機関でもなく、特定の政治的意図をもって社会を「ある方向」に動かすため、時には政権の意を受けた誤報をも平然と垂れ流す組織であるということ、そして、時の政権や巨大企業と闘う市民団体にとって、メディア取材もまた闘いであるということを、知っておいてほしい。メディア取材とはただ単に「自分たちの主張をメディアに載せる」だけではない。最も効果的にメディアを使い、自分たちの望む方向へ社会を向けて行くには、取材を受ける側にもまた戦略的な姿勢・思考が求められるということを、忘れてはならないのである。

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いま改めて考える打倒自民の可能性

2016-02-25 21:54:43 | その他社会・時事
(当エントリは、当ブログ管理人が月刊誌「地域と労働運動」2016年3月号に発表した原稿をそのまま掲載しています。)

 今回の原稿を書くのは今までで一番気が重かった。できれば避けて通りたい話題だった。民主党政権の無残な失敗のおかげで、自民党に代わって日本国民が政権を託せる政党が登場するのは筆者の存命中はもう無理であり、この問題が解決されるのは、私たちの孫の世代まで待たなければならないだろうという諦めに近い感情も生まれていた。

 世界情勢に目を向けると、米国では民主党の大統領予備選で民主社会主義者を自称するバーニー・サンダース旋風が吹き荒れ、英国では鉄道国有化を大まじめに訴えるジェレミー・コービンが労働党首になった。ギリシャでもスペインでも、SYRIZAやポデモスといった新興左翼勢力が勃興し、既成政党に脅威を与えている。

 こうした国際的潮流とは裏腹に、日本では、――ひとり気を吐く日本共産党を除いて――左翼、リベラル勢力の多くが政治的には長い眠りについたままである。早ければ年内にも改憲派が衆参両院の3分の2を占め、いよいよ国会による改憲発議が現実になるかもしれない中で、いつまでも眠ってばかりはいられないし、何でもかんでも孫の世代に押しつけてばかりいたら、孫の世代から恨まれることにもなりかねない。改憲を阻止し、少なくとも孫の世代が再び、今日より明日はいい日になると信じられる未来が訪れるように、何らかの方向性だけでも示しておくべきではないだろうか。

 さしあたり、日本政治をめぐる最大の問題は、旧社会党―総評ブロックが崩壊させられた1990年代以降、20年以上にわたってリベラル勢力が安心して自分の1票を託せる政治勢力がないことであり、大胆に言えば日本政治の問題はこれに尽きるといっても過言ではない。平和・人権・民主主義・環境保護・脱原発――日本の市民の大多数を占める「普通の健全な人たち」を代表するリベラル勢力はなぜ育たないのか。リベラル勢力が長い眠りにつき、投票所から遠ざかることによって、何が見えなくさせられているのか。

 本稿がその最大の課題を解明する一助になることを期待する。下手をすると、来年の今頃は、安倍政権を批判するだけで政治犯収容所に連行され、ガス室で殺される――そんな時代になっているかもしれない。今が、自由な言論をできる最後の機会かもしれないのだから。

 ●55年体制健在を示す2つの調査結果

 ここに2つの調査結果がある。ひとつは、安倍政権成立後の2013年11月に境家史郎・首都大学東京准教授がウェブサイト「nippon.com」上に発表した論考「ポスト55年体制期における政策的対立構造」(注1)、もうひとつはNHK放送文化研究所が毎年発表している「NHK放送文化研究所年報」2015年版において、同研究所世論調査部の河野啓氏が発表した論考「2度の政権交代をもたらした有権者の政治意識」(注2)である。どちらも3.11東日本大震災・福島第1原発事故を経験後の日本の政治状況に焦点を当てたもので、筆者にとって興味深い論考となっている。なぜなら、前者は政党レベルにおいて、後者は有権者の政治意識レベルにおいて、ともに保革対立を前提とした55年体制的な政治構造の復活を示唆しているからだ(以下、特に断り書きがない限り、本稿では前者を「境家論考」、後者を「河野論考」と呼ぶことにする)。

 さっそく、まずは境家論考からその中身に入ろう。境家は、この論考を著した理由について『日本政治の政策的対立軸は、「55年体制」の下で保守/革新のイデオロギー対立を背景としていたが、1990年代半ばから様変わりした。この約20年間の対立軸の変化を振り返り、検証する』こと、また『1994年の選挙制度改革以降の「ポスト55年体制期」における日本政治の政策的対立構造を検討し、また今後の見通しを得ることである』としている。しかし、実際に得られた結果は境家の目的とは大きく異なり、現実の政党配置レベルで未だに55年体制の残滓が色濃く残っていることを示すものとなった。



 この表は、東京大学谷口研究室・朝日新聞社共同調査のデータを基に、境家が作成したものである。「安保・社会政策」「55年体制の評価」「新自由主義的経済政策への賛否」「民主党の目玉政策への賛否」の4つを軸とし、2010年参院選の時点で国会に議席を持つ各政党の立ち位置を示したものである(維新の党、おおさか維新の会は、この時点ではまだ国政に進出していなかったため、この表には登場していない)。

 「安保・社会政策」では、55年体制当時さながらに左右の隔たりが最も大きくなっている。保革両陣営の主要な争点・対決点であり続けており、賛成・反対双方が妥協点を見いだすことは不可能な状況にあった。安倍政権下での「戦争法案」強行採決という、4年後に訪れる事態を正確に予言していたといえる。境家も、『93年に自民党がいったん下野してから20年近く経過しているが、なお保革イデオロギー対立は日本政治の基底として存在している。政党配置もほぼ55年体制期さながらの状態が現在でも維持されている』と、「55年体制残存」を認めている。

 「55年体制に対する評価」では、一転して自民・社民・共産が肯定的、それ以外が否定的という結果であり、「既成政党対新党」の対決構図となっている。「新自由主義的経済政策に対する賛否」では、自民・民主の2大政党が否定的(「大きな政府」指向)、みんなの党が肯定的(「小さな政府」指向)という対立軸になっている。興味深いのは、議論するまでもなく「大きな政府」指向と思われていた社民・共産両党が真ん中に位置していることである。これに関して、境家は興味がないのか言及していないが、この両党が防衛費、公共事業などの「大企業向け大きな政府」には反対だが、社会保障などの「社会的弱者向け大きな政府」には賛成ということを示した結果であるというのが本稿筆者の評価である。大きな政府・小さな政府も時と場合と相手によるということであろう。

 最後に、農業者戸別所得補償や「子ども手当」、道路特定財源の一般財源化といった民主党の目玉政策に対する賛否では、民主党が最も賛成なのは当然として、好意的な方から順に国民新党、社民、公明・みんな、自民・共産という順になった。

 2009年に成立した民主党政権が、連立相手として社民党、国民新党を選んだのは、目玉政策に関する限り適切であったように思える。しかし、民主・社民両党は安全保障政策であまりに隔たりがありすぎた。民主党が、財源問題をきっかけに目玉政策でずるずると後退するにつれ、目玉政策での一致を根拠になんとか我慢して連立にとどまってきた社民党が、我慢できずに連立から離脱せざるを得なかったのは、歴史の必然であったことになる。

 境家は、これらの結果を基に、次のように結論づける――『政党配置の面では、自民党にせよ民主党にせよ、すべての軸において立場の近い他政党というのは存在しておらず、連立政権時代において各党が安定的なパートナーを得ることの難しさを示唆している』。

 同感だ。現在、参院選に向けて戦争法廃止のために野党共闘を求める声が高まっている。彼らは「最低限の基本政策さえ一致するなら野党には共闘してほしい」と願っている。しかし、その「最低限の基本政策」すら、完全に一致できる政党の組み合わせはどのようにしても実現し得ないことを境家論考は示している。やはり、有権者が感じているように、基本政策がそれぞれ違っているからこそのバラバラ野党なのだ。

 境家論考を見る限り、多様化する有権者の政治的要求に合わせて細分化の歴史が繰り返されてきた野党のほうが政治的には健全であり、むしろ、多様な政治的潮流がありながら、それらをめぐる政治的闘争を内部で抱え込み、議論ではなく政党の内部統制の問題として決着させようとする自民党のほうが間違っていると結論づけて差し支えないであろう。問題は、小選挙区制という極端な選挙制度によって、常に「誤っているほうが勝ち続ける」ことにある(注3)。

 次に河野論考に移ろう。民主党政権が成立した2009年以降の有権者の政治的意識とその変遷をていねいに追っており、境家論考と並んで本稿で取り上げるだけの価値はある。だが、PDFファイルにしてわずか4ページに過ぎない境家論考の概略を説明するのにさえこれだけの字数を要した。PDFで38ページもある河野論考について詳述しようとすると、紙幅はいくらあっても足りない。そこで、河野論考中、最も注目すべき3つの調査結果に関するデータだけを以下に示すことにする。



 民主党政権の失敗以降、日本の有権者はすっかり疲れ、もう政権交代なんてこりごりだと思っているに違いないと筆者は考えていた。実際、安倍政権のこれだけの悪政・暴走にもかかわらず、再度の政権交代を求める声はどこからも聞こえず、むしろ聞こえてくるのは政権交代を忌避する声ばかりだからだ。

 しかし、河野論考が明らかにしたのはそれとはまったく異なる有権者の姿であった。ここでは、民主党政権の失敗を経験した後にあっても政権交代それ自体は「良かった」「どちらかといえば良かった」が合計で66%を占めており、実に3分の2の有権者が政権交代に積極的な評価を与えたことを示している。民主党政権をめぐる評価でも、(民主党への政権交代で)「良くなった」「どちらかといえば良くなった」が33%(2009年)→22%(2010年)と急落しているものの、「変わらない」が半数以上を占め、メディアやインターネットを吹き荒れている民主党バッシングとは違う結果を示すものとなっている。一部ネトウヨなどの「ノイジーマイノリティ」が民主党を攻撃しているのが実際であろう。

 河野論考において最も注目すべきなのは、「日本の政党のあり方」に関する調査結果だ。自民一党支配を積極的に認める「1つの大政党」が一貫して1割を切っているのは当然として、「政策が近い2大政党」「政策に差がある2大政党」のうち、前者が33%(2012年)→29%(2013年)と減少しているのに対し、後者が28%(2010年)→32%(2012年)→34%(2013年)と、緩やかながら着実に増加していることである。2013年にはついに両者が逆転、「政策に差がある2大政党」を求める有権者のほうが多くなった。



 河野論考は2010年以前のデータを示していないため、この変化がどのような政治的事件をきっかけに始まったのか結論づけることは不可能である。だが、本稿筆者の皮膚感覚では、2008年のリーマンショックとそれに続く2008年暮れの衝撃的な「年越し派遣村」の誕生から始まり、2011年の福島第1原発事故がこの流れを決定的にしたように思える。

 ●民主党政権の崩壊要因と、新たなリベラル層の「受け皿」のあるべき姿

 これら2つの調査結果から見えてくることがある。1990年以降、盛んに宣伝された「55年体制崩壊は、東西冷戦の崩壊と総評―社会党ブロックの「敗戦」によって引き起こされ、資本主義か社会主義かの問題には決着がついた」「日本政治は、対決争点型から合意争点型(注4)に移行した」との言説が、(2000年代を中心に、一時的に正しいと思われる時代もあったものの)2010年代に入って以降は完全に誤っていること、崩壊したと思われていた55年体制が、政党配置レベルでも有権者の政治意識レベルでも今なお健在であることが示されたことである。

 このように考えると、短すぎた民主党政権の崩壊要因も見えてくる。年を追うごとにひどくなる一方の貧困・格差問題を前に「政策が近い2大政党」を求める有権者が減り、「政策に差がある2大政党」を求める有権者が増えつつある政治状況の中で民主党政権は生まれた。この事実から考えれば、この政権に対する期待、そしてこの政権の存在意義は「自民党とは違う新たなオルタナティブを示すこと」にこそあったといえよう。にもかかわらず、小沢一郎元民主党代表が示した保守2大政党にこだわるあまり、民主党政権が「第2自民党政権」として、事実上自民党と変わらない姿に落ちぶれてしまったことがこの政権の崩壊要因と結論づけてよさそうである。わずか3年で再び政権が自民党に戻ったのも、「せっかく生まれた民主党政権が自民党と変わらないなら、過去の政権担当実績がある自民党でいい」と有権者が考えた結果と分析すれば納得がいく。

 同時に、これら2つの調査結果は「投票したい政党がない」「どこに投票したらいいかわからない」と嘆き、投票所から遠ざかったまま長い眠りについているリベラル層の受け皿として、日本でどのような勢力なら登場が可能かについても重要な示唆を与えてくれる。本稿筆者は、2つの可能性を指摘したいと思う。

 ひとつは、旧社会党復活による55年体制の再構築である。「政策に差がある2大政党」を求める有権者の声を追い風に民主党がこのまま左傾化、旧社会党化し「しっかりとした自民党の監視・チェック役」として100~150議席程度の勢力をもって対峙するというものである。2015年安保闘争で民主党が得た市民との協働を基に、党内右派を追い出してリベラル勢力に特化するならこの可能性が大きく開けるであろう。同時に、支持母体である連合を再び旧総評のような左派優位にすることにも寄与するであろう。

 ただ、「基本政策がそれぞれ違っているからこそのバラバラ野党」となった歴史的経緯を考えると、この道を取ることが容易でないことは確かである。民主党政権のように、様々な政治的潮流を内部に抱え込んだ場合、毎日のように内紛が続き、再び空中分解することになりかねない。

 もうひとつは、民主党がこの道をとれなかった場合に想定すべきものである。野党各党が統一候補を立てて自民党政権を倒した後、それぞれの違いを前提にしながら「政策に差がある2大政党」を求める有権者の声を追い風に、自民に代わる新たなオルタナティブを示して政権につくことである。同一政党の内部に様々な潮流を抱えながら、内紛に明け暮れた民主党政権と異なり、初めからお互いに基本政策が違っていることが前提で連立を組むのだから、民主党政権よりは大人の対応が可能になるであろう。ここで留意すべきなのは、連立に関わる各政党が互いの立場を尊重することだ。閣僚を決めたら、その閣僚の出身政党の基本政策を連立各党が理解し、少なくとも政権担当中は連立与党が結束して支えることを事前にきちんと協定すべきだ。野党・自民から閣内不一致を攻撃されても決して動じてはならない。むしろ「なれ合い談合の自民党政権と異なり、こちらは不一致を前提に組閣する多党連立政権だ。閣内不一致で何が悪い」と違いを認めるくらいの度量が必要であろう。こちらはいわば、2大政党化を諦め、細川政権を生み出した1993年型の多党連立政権をめざすもので、日本共産党が提唱した選挙協力の後に来るべきものとしては最も現実的と考えられる。

 いずれの道を取るにせよ、60年近くも政権を独占してきた自民党政権の「最終的」打倒(二度と政権復帰できないような自民党の完全な粉砕)を私たちは実現しなければならないが、今回、野党がバラバラの状況の中、戦争法廃止のための国民連合政権構想を発表、野党共闘を訴えたのが日本共産党であったことはその困難さの象徴だと筆者は考えている。日本にとって「打倒自民」は政治革命にも匹敵する大事業であり、野党の中でその覚悟を持ち得たのは、戦前戦後を通じ、常に「革命政党」としての矜持と気概を持ちながら日常活動をしている日本共産党以外にはあり得なかったのである。

 だがそれでも私たちはこの道を進まなければならない。2016年が「自由、民主主義の死んだ年」として、後世の歴史家から指弾されることがないように。

注1)http://www.nippon.com/ja/features/c00407/

注2)https://www.nhk.or.jp/bunken/research/title/year/2015/pdf/003.pdf

注3)政党制の類型化によって現代政治学に大きな足跡を残したイタリアの政治学者ジョヴァンニ・サルトーリによれば、政党結成の自由が認められていない抑圧的政治体制の国では、政治的潮流の違いはいわゆるファクション(党内分派)間の闘争として現れる。一方、政党結成の自由が認められている国では、ある政党内部でイデオロギー型ファクションが生まれた場合、それは党外に押し出されて別政党となるが、金や人のつながりによって生まれ、イデオロギーの違いを基にしない「プラグマティズム型ファクション」は、政党結成の自由が認められている国でも必ずしも党外へ押し出されず、ファクションとして留まり得る場合があることを示唆している。サルトーリはそうした例として、日本の自民党やイタリア・キリスト教民主党の「派閥」の例を挙げた。

注4)対決争点型政策とは、その政策の実施自体に賛否が分かれるものをいい、合意争点型政策とは、その政策の実施自体には合意があり、実施時期や手法などが争点となるようなものをいう。米国の政治学者アーレンド・レイプハルトは、前者は多数決型民主主義、後者は合意形成型民主主義と親和性があるとした。

(黒鉄好・2016年2月21日)

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【転載記事】東電幹部を業務上過失致死傷の疑いで起訴へ!原発、大津波事故を予見しつつ対策先送り

2016-02-12 23:26:07 | 原発問題/一般
2月12日付「ビジネスジャーナル」サイトに、小石勝朗さんによる「東電幹部を業務上過失致死傷の疑いで起訴へ!原発、大津波事故を予見しつつ対策先送り」と題する記事が掲載された。筆者の小石さんは、ウェブマガジン「マガジン9」サイトで「強制起訴」のこれから~法廷に立つ東電元幹部」と題する記事を執筆した人でもある(昨年9月5日付当ブログ記事でも紹介)。福島原発告訴団とその活動を大変ていねいに取材している方で、内容は信頼できるので、以下、全文をご紹介する。

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「ビジネスジャーナル」2016年2月12日付記事より

東電幹部を業務上過失致死傷の疑いで起訴へ!原発、大津波事故を予見しつつ対策先送り

 福島第一原子力発電所で未曽有の事故を起こした東京電力の幹部に対して、刑事責任を問うことができないか。福島県の原発事故被災者らが検察に告訴・告発したのをきっかけに、勝俣恒久・元会長ら3人の東電元幹部が強制起訴されることが決まったのは昨年7月だった。

 検察官役を務める5人の指定弁護士は、東日本大震災から5年となる今年の3月11日をメドに3人を起訴する見通しだ。そこから始まる長い刑事裁判を後押ししようと、弁護士や文化人、市民運動家らが呼びかけた「福島原発刑事訴訟支援団」が1月30日に発足した。
 
 これまでの経緯をおさらいしておく。2012年6月、原発事故被災者らでつくる「福島原発告訴団」が東電幹部らを業務上過失致死傷罪などで検察に告訴・告発する。しかし、検察は翌年9月に全員を不起訴とした。これを不服とした告訴団の申し立てを受けた検察審査会は14年7月、3人について「起訴相当」と議決。再捜査した検察は翌年1月に再び不起訴としたが、再度の申し立てを受けた検察審査会が3人に2度目の「起訴相当」の議決をしたため強制起訴となることが決まった。

 起訴されるのは、勝俣元会長と、武藤栄・元副社長(原子力・立地本部長)、武黒一郎・元副社長(同)の3人。罪名は業務上過失致死傷だ。検察審査会の議決は、3人が福島第一原発を大きく超える津波が襲来して重大事故が発生する可能性のあることを予見できたのに、必要な安全対策を取ることなく運転を続けたため、大震災による津波で炉心損傷などの事故を起こし、避難を強いられた近くの双葉病院の入院患者44人の病状を悪化させて死亡させるなどした、と認定した。

 発足した刑事訴訟支援団は、この事件に対して「公正な裁判が行われ、真実が明らかになり、問われるべき罪がきちんと追及されるよう働きかけること」を目的に掲げている。福島の原発事故には「人災」との指摘があるにもかかわらず、これまで刑事責任が問われてこなかったためだ。

●事故対策を先送り

 活動としては、公判の傍聴・記録と社会への発信、証拠の収集・分析などを想定している。賛同する法律家やジャーナリストらのネットワークを形成したり各地で集会を開催したりして、息長く世論の関心を喚起していく方針だ。年会費1口1000円以上の個人会員も募集している。

 支援団の団長には、福島原発告訴団の中心メンバーだった佐藤和良・元福島県いわき市議が就いた。佐藤氏は東京都内で開いた発足集会で「原発事故は想定外でも天災でもなかった。刑事裁判を通じて民事訴訟では出てこない証拠を開示させ、事故原因を究明し、責任を明確にしたい。原発再稼働の路線にストップをかけ、事故の再発防止にもつなげたい」と力を込めた。

 発足集会では、原発告訴団や、東電の現・元取締役を相手取った株主代表訴訟で代理人を務める海渡雄一弁護士が講演。これまでに把握した「事故前の東電の対応」として以下の内容を解説した。

・08年3月:福島第一原発を15.7メートルの津波が襲う可能性があるとの試算を社内でまとめる
・同6月:担当部署が武藤氏に対し、上記試算結果とともに、原子炉建屋を津波から守るには海面から10メートルの地盤に高さ10メートルの防潮堤を築く必要があると説明。武藤氏は対策の検討を指示
・同7月:対策を先送りすることに方針転換
 
 刑事裁判ではこうした点も含めて、東電の幹部が大津波による事故の発生を予見できたか、また、対策を取っていれば被害を回避できる可能性があったかが争点になりそうだ。初公判は今年の夏以降になる見通しという。

●10年がかりの裁判

 検察官役を務める5人の指定弁護士のうち、石田省三郎氏と神山啓史氏は「東電女性社員殺害事件」で再審無罪を獲得しており、山内久光氏は2度目の「起訴相当」議決をした検察審査会で審査補助員(アドバイザー)だった。強制起訴による刑事裁判では小沢一郎氏のように無罪となるケースも多く、支援団に加わる弁護士からは「有罪にするのは強制起訴より大変だ」との状況分析が聞かれるが、海渡氏は「最高の布陣」と期待を込めた。

 海渡氏によると、この裁判における被害者となる双葉病院の入院患者の遺族から支援団の弁護士が委託を受け、被害者参加制度を利用して法廷で意見を述べたり被告に質問したりすることができないかも検討しているという。

 審理が最高裁まで続くのが確実で、10年がかりになるともみられる刑事裁判。支援団の発足集会には400人以上(主催者発表)が参加したが、「脱原発」一色で、年配の人の姿が目立った。広く社会の関心を集めるには、脱原発にとどまらない多様な立場からのアプローチと、より若い層への働きかけが不可欠だろう。

(文=小石勝朗/ジャーナリスト)

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【管理人よりお知らせ】戦争法廃止を求める2000万人署名にご協力ください

2016-02-11 13:21:56 | その他社会・時事
管理人よりお知らせです。

「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」の呼びかけで、現在、戦争法廃止を求める統一署名が呼びかけられています。

2014年の総選挙で、自民・公明両党が獲得した票数を上回る2000万の署名を集めることで、戦争法反対の世論を可視化し、廃止につなげるためのものです。

署名用紙は、こちらからダウンロードできますので、ぜひご協力をよろしくお願いします。なお、集めた署名は、以下まで郵送してください。

101-0063 
東京都千代田区神田淡路町1-15 塚崎ビル3F 戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会

以下、「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」からの呼びかけ文です。

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 憲法違反の戦争法(安全保障関連法)が、安倍自公政権のもと、大多数の世論を踏みにじり、国会内の多数の横暴で「成立」させられました。

 戦争法は、政府のこれまでの憲法解釈を180度転換した閣議決定(2014年7月1日)にもとづくもので、平和主義、立憲主義、民主主義を破壊するものであり、絶対に許せません。「戦争法は廃止せよ」の声は国内外に満ちています。

 戦争法を廃止するために、総がかり行動実行委員会は一緒に活動してきた諸団体とともに、「戦争法の廃止を求める統一署名」を2000万人以上集めることを呼びかけます。この2000万署名運動は、みなさんお一人ひとりのご協力がなければ成功しません。それぞれの知人・友人、地域、職場、学園などでの積極的な署名呼びかけをよろしくお願いします。

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