安全問題研究会~鉄道を中心とした公共交通を通じて社会を考える~

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我が家の危機管理~パスポート取得、そして福島県の危機的現状

2011-07-28 22:20:19 | 原発問題/一般
7月早々にパスポートを申請し、25日に取得した。すでに私のパスポートは3年前に期限切れ失効しており、再申請である。

別に近々海外に行く計画があるわけではないのだが、セシウム汚染牛問題が白河市産の稲わらから始まったことからもわかるように、ここは現在も南相馬市より高い放射線量が観測されるほどの厳しい汚染の中にある。にもかかわらず、福島市や郡山市と比べると2分の1~3分の1の放射線量であるせいか危機感がきわめて希薄である。むしろ、危機感が希薄であることこそが最大の危機と言っていい。

我が家は福島原発からわずか80kmしか離れていない。もし、たとえば福島原発4号機が余震で倒壊、大量の放射能飛散などという事態になったら、少なくともここは絶対に安泰ではない。仕事も何もかも捨てて緊急避難しなければならない事態に直ちに直面するだろう。そんな非常時に、パスポートがないため海外脱出できず急性被曝で死亡するなどという事態は絶対に避けねばならない。今の私たちにとって、パスポートを持っておくことは重要な危機管理のひとつである。そういう意味でのパスポート取得なので、使う機会がなく終わるのが一番いいと思っている。

ちなみに当ブログは福島市は全市避難が必要だと思っている。6月11日、降りしきる雨の中を福島市に行った際、不意にさしていた傘が傾き、傘の上に溜まっていた雨水が顔の上に落ちるとわずかだがピリッと皮膚に痛みを感じた。このとき、雨に濡れて皮膚が痛むなんて尋常ではないと思ったし、この放射能汚染はもはや人間の住めるレベルではないと確信した。

福島県の地図で第一原発から北西方向をたどっていくと、浪江町、葛尾村から飯舘村、川俣町、伊達市を経て福島市に至る。このうち浪江町、葛尾村は住民全員が避難、飯舘村も計画的避難区域となり全村避難に追い込まれた。川俣町も山木屋地区など一部が計画的避難区域となり、役場も閉鎖されている。さらに、伊達市でも局所的に放射線量が高いホットスポットを対象に特定避難勧奨地点が設定され、避難が呼びかけられているのが現在の福島県の情勢である。

特定避難勧奨地点となっている伊達市の一部地区は、福島原発から50km近く離れている。ここまで避難対象が拡大したことに当ブログは強い衝撃を受けた。ここから後10km北西に行けば、そこは福島市となる。このように考えるだけでも、福島市がいかに危険かおわかりいただけるだろう。

福島県発表の各地の放射線量を見る限り、福島市と郡山市の汚染度に大きな違いはないように見える。しかし、この汚染地図を見ると、福島市は赤、朱色に次ぐ3番目の汚染を示すオレンジ色の区域であるのに対し、郡山市はそれより下の薄いオレンジ色の区域になる。福島市のほうが汚染度が高いことははっきりしている。

このような結果になった原因について、当ブログは放射線の専門家でないから確定的なことは言えないが、それを推定する手がかりはある。NHKホームページで公表されている原発事故以降の各地の放射線量の推移を表す折れ線グラフを見ると、福島市は3月15日に25μSv/hという凄まじい数値が記録されている。これに対して、郡山市は3月15日の最高値でも8μSv/hを少し上回る程度、当ブログ管理人が住む白河では8μSv/hを少し下回る程度の放射線量である。結果的に、このときの放射線量の差がそれ以降の汚染度を決定づけたと言えそうである。

ちなみに、原発事故直後、南相馬市いわき市でも20μSv/hを超える激しい大気中放射線量が観測され、北茨城市でも最高で16μSv/hという高い放射線量を観測している。しかし、これらの地域では放射線量の高い時期に雨や雪が降らなかったこともあり、その後急速に放射線量が低下、現在は0.5μSv/hを下回る水準で推移している。これに対し、福島市だけは、25μSv/hを記録した後も放射線量が余り下がらず、現在もなお1.2~1.4μSv/hという高い放射線量を観測し続けている。

当ブログが何を主張したいか、既にお気付きの読者もいらっしゃるだろう。要するに、いまだに行政から避難が呼びかけられていない地域のうち最も危険な状態にあるのは福島市だということである。福島市も全市避難を真剣に考えなければならない段階に来ている。それは、敗戦の時でさえ経験しなかった、近代日本始まって以来初めての「県庁所在地放棄」を意味するが、現在の放射線量、深刻な汚染度、そして福島原発からの放射能漏れに収束の見通しが立たないことを考えるならやむを得ないと言えよう。国策として始まった原発の事故である以上、県庁所在地の全市避難は国家プロジェクトとして実行されなければならないと当ブログは考える。

こうしてみると、結果的には、事故直後の3月下旬の段階で福島第一原発から80km圏内に住む自国民に退避を勧告した米国政府の判断が正しかったことになる。しかし、考えてみればこれは少しもおかしなことではない。当ブログ管理人が市民団体「チェルノブイリのかけはし」の支援者を通じて入手した資料によれば、チェルノブイリ原発から南東に約70km離れたウクライナ共和国のナロジチでは、事故から21年後の2007年の時点でもなお、肉からは10000Bq/kg、野生のキノコからは60000Bq/kgを超える放射性物質が検出されている。

大変残念なことだが、福島市の放射能汚染が1~2年で収束するとは全く思えない。むしろ福島市はナロジチと同じ未来に向かってまっしぐらに進んでいるといえる。もはや議論をしているときではない。一刻も早く避難させるべきだ。

このブログを読んでいる人たちの中で避難に支障がない人、避難の準備が整った人から避難をすべきだと私は思う。あなたの最も大切な人、そして何よりもあなた自身の命と健康を守りたいなら、決断の時である。

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ケータイをスマホに変える

2011-07-27 21:42:25 | IT・PC・インターネット
原発事故で命も危険なこの非常時に何をやっているのかと思う読者諸氏もいるかと思うが、ケータイを3年使ったW53CAから念願のスマートフォン、IS03に変えた。

W53CAの優れたカメラ機能(操作性、撮影の安定性)には相変わらず全く不満はないが、そろそろ3年間使い倒したためボタン操作が怪しくなってきた。特に電源ボタンが強く押さないと反応しなくなってきたのは致命的である。

そんな折、妻の使っている機種が2012年7月以降、800MHz帯の周波数再編のあおりで使用できなくなるとのアナウンスがKDDIからあった。該当機種を使っている顧客には今なら無料で機種変更に応じるという。周波数再編までまだ1年あるとはいえ、24日の記事で紹介した地デジ同様、何事も直前になると店舗は混雑するし、操作性に優れた良い機種は直前になるほど入手しにくくなるから、機種変更するなら今のうちだと思い、ショップに行くことにした。そして、どうせなら私のほうも、電源ボタンが今にも死にそうなW53CAにこだわり続けることはないと思い、一緒に機種変更することにした。

数年前から料金制度が変わり、番号ポータビリティ制度による他社からの乗り換えを除けば機種変更が0円でできるプランはなくなり、機種変はずいぶん高くつくようになった。しかし先日ショップに行ったところ、端末購入費にも充当できるポイントが3万円分も貯まっていることがわかった。

思えば、名古屋勤務時代の2001年、金山駅前の路上で「ケータイが当たるクジ引きです」と言われてクジを引いたところ、ツーカー(懐かしい)ケータイが当たったので、それまで使っていたJ-PHONE(現在のソフトバンク)からツーカーに乗り換えた。この時以来、ポイントは一度も使わないまま、なんと10年分が貯まりっぱなしになっていたのだ。せっかくの機会なので、今回の機種変でこのポイントを使うことにした。

IS03は、auが送り込んだ初めての実用的なスマホだ。ドコモ、ソフトバンクに後れを取ったものの、それを挽回して余りある性能で登場時はずいぶん話題になった。

使ってみての感想だが、当初言われていたような「メモリ容量が少なく、すぐに動作が重くなる」という実感は全くない。近年のハイスペックPCのような感覚で次々とアプリをダウンロードしてはインストールするような一部の人たちがそう感じるだけだと思う。かつて、HDD容量がたったの810MB(GBではなくMBなので念のため)、メインメモリが16MB(繰り返すが単位はMBなので念のため)しかない東芝Libretto50というロースペックPCをメイン機として使っていた苦労を思えば、この程度で重いなどというのは贅沢な悩みだと断言できる(こんなマシンが給料1か月分の価格だったのだから、改めて日本の技術の進歩には恐ろしさすら覚える)。

最初、ガラケーとあまりに違いすぎる文字入力の方法に難儀したが、それにも次第に慣れ、今ではこの触感が当たり前になってきた。改めて、PC用のサイトをそのままの形で閲覧できるというのは便利だと思う。youtubeも見られるので、JNN福島第一原発情報カメラも閲覧できる。私の知っている範囲で、PCでできてIS03でできないことといえば、ふくいちライブカメラが見られないことくらいだろう(ここがIS03で見られない理由は、Windows Media Playerのプラグインが必要だからである)。

ただ、やはりネット上のレビュー等で言われていたとおり、電池の減りは恐ろしく速い。電源を入れているだけで全く使用しなくても、2日に1回は充電が必要だし、特に車や鉄道などで移動中の電池の減少スピードは尋常ではない。しかし考えてみればそれも当然で、AndroidはOSなのだからノートPCと同じだと考えるべきだと思う(実際、この記事にあるようにAndroidはPC上でも動作するらしい)。平たい言い方をすれば、スマートフォンとは「電話機能のついたモバイルPC」だという理解をすべきものである。ここまで来たらもはや電話機能はおまけにしか見えない。

カメラ性能は、画素数だけの比較ならW53CAよりIS03のほうが上回っている。しかし、操作性でははっきりW53CAに軍配を上げる。なによりもW53CAはカメラ機能を売りにしていただけにどのボタンがどのような操作につながるのか明確だったし、カメラとして構えやすい形状で撮影時の手ぶれもほとんど起きなかった。カメラ機能をメインに据えようという製作陣の「思想」が感じられる造りになっていた。

対して、IS03は(まだ慣れていないせいかもしれないが)ズームなどの操作もすべてディスプレイ上なので戸惑うことも多い。W53CAをIS03に乗り換えると、昔の機械式フィルムカメラからいきなり最新鋭のコンパクトデジカメに乗り換えたような違和感を覚える。この感覚に慣れるには、もうしばらく時間がかかるだろう。

しかし、私にとっては満を持して手に入れたIS03である。この機種も長い付き合いになるだろうと思う。

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ようやく届いたウォーターサーバーと我が家の放射能被曝対策

2011-07-26 23:18:09 | 原発問題/一般
4月に注文していた(株)ワンウェイウォーター社のウォーターサーバーが先日、ようやく我が家に届いた。原発事故以来注文が増え始め、3月下旬に東京・金町浄水場の水道水から放射性ヨウ素、セシウムが大量検出されてから各社とも爆発的に注文が増えた。結局、注文してから3か月以上かかったことになる。

この間、ワンウェイウォーター社は全力でウォーターサーバー本体の増産に努めてきたようだが、それでも間に合わない顧客に対して、水だけでも届けるというサービスをしてくれたのは本当に有り難かった。サーバー本体がないので、この間、2リットル入りミネラルウォーターのペットボトルにウォーターサーバー用の水を移し替えて使うという不便な形だったが、この不便もサーバー本体が届くことでようやく解消された。

私が業界最大手のアクアクララ社(温泉旅館などで最近よく見かける)にしなかったのは、別に同社が嫌いなわけではない。このような非常時にはみんなが安心・確実を求めて最大手の業者に注文を集中させると思ったから、その裏を行こうと思っただけのことである。実際、各社のサービスにそれほど大きな違いがあるわけではないから全く問題はない。

ワンウェイウォーター社の場合、水の調達先は京都・富士山・日田(大分県)から選択できるが、原発事故が長期化すれば西日本も汚染と無縁ではいられなくなるだろうと思い、最も遠い日田を選んでおいた。

我が家では、原発事故以降、地元の水道水は全く口にしていない。各自治体による水道水の放射能測定では、一定の数値(自治体によって1リットルあたり200ベクレルなど差がある)未満はすべてND(限界値未満)として表示される。だからNDイコールゼロとは言い切れないし、WHO(世界保健機関)が定めた「飲料水中の放射性核種のガイダンスレベル」によれば、原発事故で流出する放射性物質のうち代表的な核種である放射性ヨウ素131、放射性セシウム134、セシウム137についてはいずれも1リットルあたり10ベクレルが上限値とされている。自治体によって差はあるが、1リットルあたり200ベクレルはWHOガイダンスレベルの20倍であり、これ未満は放射性物質が含まれていないことにしますなどという基準が国民の健康を守る上で有効だとはとても思えないのだ。

そもそも放射性セシウム(放射性ヨウ素も同様)は非常に水に溶けやすい性質を持つ。しかも、NHKニュース(7月10日)によれば、私の住む西郷村の芝原浄水場の汚泥からは6月下旬の段階でも1キログラムあたり46,700ベクレルもの放射性セシウムが検出されたという。各自治体では、水道水に放射性セシウムは含まれていないと発表しているが、こんな状態で水道水から不検出といわれても全く安心できないし、こんな水道水、特に子どもには絶対に飲ませてはいけないと思う。

ウォーターサーバー用の水は、1リットルあたりに換算すると、スーパー等で売っているペットボトル入りミネラルウォーターに比べて2倍近く高い。ここに住み続ける限り支払い続けなければならないのも痛いが、健康と生命には代えられない。領収書を保管しておき、いつか東電に請求してやろうと思っている。

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ところで、原発事故が起きて以降、我が家で放射能被曝をできるだけ少なくするため、毎日欠かさず実行している「10か条」がある。福島周辺の県及び首都圏からはできることなら避難すべきと当ブログは考えるが、仕事、介護など生活上の理由でどうしても避難できないのであれば、自分の健康を守るため、実践して損はない対策である。

●放射能被曝を防ぐための10か条

1.風向きと放射線濃度(大気中、水道水)は毎日チェックする。

2.地元(汚染地域)産の食物は決して摂らない(外食はもちろん不可)。水道水も決して飲まない(米もミネラルウォーターで)。

3.ケガをしたときは、傷を露出したままにしない。

4.天気予報に注意し、雨や雪には絶対濡れない。濡れてしまった場合、できるだけ早めに全身をよく洗う。

5.植物、土、地面、建築物の外部には極力触れない。

6.洗濯物は外に干さない。

7.屋外ではマスクを必ず着用し、口と鼻を覆う。

8.不要不急の外出は控える。やむを得ず外出する時はできるだけ車を使用し、皮膚の露出を極力少なくする。

9.外部に接する窓やドアは開放しない。部屋の換気は、原発に対して風下となる時間帯を避け、短時間行う。

10.エアコンや換気扇の使用は最小限とする。

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この10か条は、10年ほど前に、イラク、アフガニスタン、コソボ戦争で米軍が使用した劣化ウラン弾による住民への影響について学習した経験をもとに考案したものである(内部被曝について初めて知ったのもこのときである)。特に2、3、7は内部被曝を防ぐための対策として大変重要であり、決して手を抜いてはならない。それ以外は外部被曝対策だが、被曝量とは結局は累積線量で見なければならないから、こちらも怠らないようにする必要がある。

一部の御用学者が、低線量被曝はかえって身体にいいなどと言う学説(「ホルミシス効果」と言うらしい)を唱えているが、このようなばかげた言説を信じてはならない。もし彼らの言うことが正しいとした場合、例えば風邪を引いて病院に来た患者に対し、医師は薬など処方するより低線量放射線を浴びさせた方が治りが早いということになりかねない。しかも、放射線に対する感受性は子どもほど高いから、そのような治療法があるなら最も効果の期待される小児科にこそ最初に導入されるはずである。

しかし、そのような治療が子どもたちに対して行われている実例を当ブログは知らないし、海外でも聞いたことがない。なにより、低線量被曝が本当に身体にいいのであれば、ホルミシス効果の存在を主張している御用学者たちが何を差し置いても福島に移住するはずだが、そんな学者を当ブログは全く知らない。

(この手の輩、自分は安全なところに身を置きながら、最前線で苦しんでいる人に向かって根拠もなく安全安全安全と繰り返す輩は当ブログが最も嫌いな連中である。はっきり言えば全員ぶちのめしてやりたいが、そうもいかないのが困りものだ。)

いずれにしても、どうしても福島、あるいはその周辺の汚染地域から避難したいのにどうしてもできない事情がある人は、上の10か条を実行するだけでも、長期的には大きく違ってくるはずである。

問題は、汚染地域の食材を平気で給食の材料にし、親が反対しているのに無理矢理にでも食べさせようとする学校の姿勢である。このことについては、また別の機会に述べたい。

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中国高速鉄道事故について

2011-07-25 22:37:11 | 鉄道・公共交通/安全問題
23日に発生した中国高速鉄道の事故については、鉄道ファンのひとりとして衝撃を受けている。中国でこれだけの規模の鉄道事故は、日本の修学旅行生らが多数犠牲になった1988年の上海列車事故以来ではないだろうか。鉄道ブログとして犠牲者のご冥福をお祈りする。

私は海外の鉄道事情には疎い上に情報も少なくて何とも言えないのだが、「推定される事故原因」「同種の事故は日本でも起こりうるか」「突貫工事は事故に影響したか」「設計・施工上の問題」「事故車両を埋却して1日半で運行を再開する中国鉄道省の姿勢」の5点についてのみ、報道の範囲内で言えることをコメントしておきたい。

参考記事

1.推定される事故原因について

中国当局は事故原因を落雷が原因と発表しているが、1年中自然災害だらけの日本の感覚では非常に違和感を覚える。鉄道というのは、たかが落雷ごときで事故を起こすようではいけないのである。

先行列車と追突した後続列車との車間距離がきちんと維持されていたか、また落雷で先行列車が停止したのに、後続列車にはなぜ非常ブレーキが自動でかからなかったのかが当面の焦点だと思う。高速鉄道は在来線と異なり、非常ブレーキをかけても実際に列車が停止するまで2~3kmも走ってしまう(運転時間にすると30秒弱)。それだけの車間距離が確保されていたかどうか。

また、日本の新幹線の場合、落雷によって停電した区間で列車が停止した場合、停電していない区間を走っている後続列車にもすべて自動で非常ブレーキがかかるように設計されている。このような設計がされていたかどうか、されていた場合は事故当日、なぜその設計通りに保安装置が動作しなかったのかが事故原因を解明する上で最大の焦点だ。

2.同種の事故は日本でも起こりうるか

1で述べたとおり、日本のシステムでは落雷によって停電した区間で列車が停止した場合、停電していない区間を走っている後続列車にもすべて自動で非常ブレーキがかかるように設計されているから、保安装置の故障、あるいは乗務員が故意に保安装置を切って走行するという重大な規定違反がない限り、このような事故の可能性はほぼない。

ただ、日本の新幹線もATC(自動列車制御装置)を切って走行することは可能であり、実際に2002年6月、山陽新幹線で「こだま」がATCを切ったまま40km近く走行するという事例が起きている。落雷による不意の停電で先行列車が停車しているときに、後続列車がATCを入れ忘れるという人為ミスが重なれば、日本でもこのような事故の可能性があり得ることは指摘しておく必要がある。

3.「突貫工事」は事故に影響したか

一般メディアでは、突貫工事が事故に影響したという見方が多いが、私は現状では何とも言えないと思っている。東海道新幹線も1959年に起工し、64年の開通まで工期は5年しかなかった。事前に入念なシステムの設計と技術力、そして手抜きをしない「生真面目さ」があれば、工期がある程度短くても安全な鉄道の建設は不可能ではない(もちろん、1~2年の工期ではさすがに無理だろう)。

4.設計・施工上の問題は

むしろ、各国の技術を寄せ集めて木に竹を接いだようなシステムにしたことが事故の最大の要因に挙げられそうだ。鉄道は車両だけでなく、線路や軌道、保安装置などが一体のシステムとして動くものだ。それを各国技術のつぎはぎという形にしたことが事故の最大の要因と考えられる。

車両には日本の川崎重工業製の他、カナダのボンバルディア製も使われている。ボンバルディアといえば、高知空港での胴体着陸事故などを起こし、世界一危険といわれる飛行機DHC8-Q400のメーカーとしても知られている。機体そのものも問題だが、トラブルが頻発するまで整備マニュアルも作成していなかったような会社だ。車両を外国に発注すること自体を否定はしないが、せめてもっと相手を選べと言いたくなる。

5.事故車両を埋却して1日半で運行を再開する中国鉄道省の姿勢

中国当局は運転記録やデータが収められたブラックボックス回収後に事故車両を埋めたと報道されているが、仮にそうだとしても、現場検証が終わるまでは現場を保存するのが先進国の事故調査の鉄則だ。いまこの時期に車両を埋めるという行為はこれに反するものであり、証拠隠滅と受け取られても仕方がない。事故犠牲者の遺族がこの事態を見たらどのように思うだろうか。

中国は昨年、ついにGDPで日本を抜いて世界第2位の経済大国になったが、社会を真の一流に成長させたければこのような無益な行動は慎むべきだ(福島原発事故を巡る見苦しい言い訳や隠蔽の数々を見せつけられ、日本も他国のことをとやかく言えないが)。むしろ、犠牲者をこの事故で最後とし、せっかく開業にこぎ着けた高速鉄道をより安全なものに変えていくための反省と再挑戦の機会と捉えることが必要である。犠牲者がこれで最後となるかどうかは、中国鉄道当局がこうした意識を持てるかどうかにかかっているといえよう。

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放射能被曝を防ぐための10か条

2011-07-25 22:12:18 | 原発問題/一般
●放射能被曝を防ぐための10か条

1.風向きと放射線濃度(大気中、水道水)は毎日チェックする。

2.地元(汚染地域)産の食物は決して摂らない(外食はもちろん不可)。水道水も決して飲まない(米もミネラルウォーターで)。

3.ケガをしたときは、傷を露出したままにしない。

4.天気予報に注意し、雨や雪には絶対濡れない。濡れてしまった場合、できるだけ早めに全身をよく洗う。

5.植物、土、地面、建築物の外部には極力触れない。

6.洗濯物は外に干さない。

7.屋外ではマスクを必ず着用し、口と鼻を覆う。

8.不要不急の外出は控える。やむを得ず外出する時はできるだけ車を使用し、皮膚の露出を極力少なくする。

9.外部に接する窓やドアは開放しない。部屋の換気は、原発に対して風下となる時間帯を避け、短時間行う。

10.エアコンや換気扇の使用は最小限とする。

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この10か条は、10年ほど前に、イラク、アフガニスタン、コソボ戦争で米軍が使用した劣化ウラン弾による住民への影響について学習した経験をもとに考案したものである(内部被曝について初めて知ったのもこのときである)。特に2、3、7は内部被曝を防ぐための対策として大変重要であり、決して手を抜いてはならない。それ以外は外部被曝対策だが、被曝量とは結局は累積線量で見なければならないから、こちらも怠らないようにする必要がある。

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地上波アナログ全面停波~58年の歴史に幕

2011-07-24 20:50:17 | IT・PC・インターネット
アナログテレビ放送が終了 58年の歴史に幕(ITmediaニュース)

58年間も人生を生きていない私にとっては、生まれたときからお茶の間にあるのが当たり前だったアナログテレビ。数年前から騒がれながら、どこか遠い世界の出来事のようで実感が持てなかった地上波テレビのデジタル化とアナログ停波。その日がついにやってきた。

…が、私の住んでいるのは福島県。宮城、岩手と並んでここはアナログ停波先送り3県のひとつ。私の一生のうちに二度とないせっかくの歴史的瞬間なのに、結局、見ることができなかった。

来年3月までここに住んでいれば、アナログ停波の瞬間を見ることのできるチャンスが訪れるはずだ(マニアの中には、来年3月、それを見るためだけにわざわざ東北3県入りする人もいるかもしれない)。だが、東日本大震災からの復興のもたつきぶりを見る限り、停波再延期もあり得るのではないか。

それにしても、「買い物客の小競り合いも チューナは品薄状態」とはあまりに酷い(リンク先の産経の記事のことではなく、記事中に登場する小競り合いを起こした客らのことである)。

地上波テレビの全面地デジ化、アナログ停波なんて10年も前からわかっていたにもかかわらず、事前にチューナーを準備する計画性もなければ「少し待てばいいや」と慌てずに待つ忍耐力もない。何事も尻に火がつかなければやらない人は私の周囲にも大勢いるが、こんなところで小競り合いを起こす客らはすべてが杜撰で行き当たりばったりの人生しか送っていないからこんなことになるのだ。こんな体たらくだから政府にいいようにやられるのだし、彼らに行き当たりばったりの菅政権を批判する資格はないと思う。

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もはや自発的辞任まで待てない~電力業界のために国民の命を差し出す海江田経産相を直ちに罷免せよ

2011-07-24 13:07:56 | 原発問題/一般
海江田万里・経産相の暴走がとどまるところを知らない。私もいろいろな経産相をこれまで見てきたが、自民党政権時代の歴代経産相ですら、ここまで露骨に業界擁護、人命軽視の姿勢をとり続け、国民に挑戦した人物はいなかった。

脱原発解散、海江田氏「署名できない」(朝日新聞)

菅直人首相が「脱原発」を争点に衆議院を解散する場合は、解散を決める閣議書に「署名できない」と明言。

菅首相からの「電力に関する情報開示要請」に反発、不快感示す(毎日新聞)

菅直人から経済産業省に対する電力需給などに関する情報開示要求に対し、海江田万里経産相は同日、東京都内で記者団に「なんでそういう文書になっているのかよく分からない」と述べ、不快感を示した。

そして、最も許し難いのがこの発言だ。

「線量計つけず作業、日本人の誇り」 海江田氏が称賛(朝日新聞)

「現場の人たちは線量計をつけて入ると(線量が)上がって法律では働けなくなるから、線量計を置いて入った人がたくさんいる」と明らかにした。「頑張ってくれた現場の人は尊いし、日本人が誇っていい」

違法行為を閣僚が公然と賞賛した上、日本人の誇りとはどういうことか。

首相の指示にも従わず、国民を無視して暴走を続ける経産省と海江田氏の現状は、まさに戦前の陸軍と同じだ。みずからの「作戦遂行」のため国民の命を平気で差し出し恥じるところもない。もはや「自発的辞任」など待っているときではない。菅首相は直ちに海江田氏を罷免しなければならない。

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復活したC61 20撮影と上毛電鉄~そして、ママ鉄新時代を実感

2011-07-23 23:52:28 | 鉄道・公共交通/趣味の話題
もう1週間経ってしまったが、復活したC61 20号機を撮影するとともに、未乗車路線に乗る目的で16日、高崎に行ってきた。今回は、6月で高速上限1,000円が打ち切られた上、愛車の調子も思わしくないので久しぶりに移動にJRを利用した(鉄なのにこんなことでいいのだろうか?)

午前9時過ぎ、高崎に着く。115系、485系などをしばし撮影。高崎地区が今さらながら千葉と並ぶ国鉄型王国であることを実感する。9時半を回る頃、ホーム上で手持ち無沙汰にしていた家族連れなどのライトな鉄たちがわらわらと走り出し、お目当てのC61登場。夏休み直前の3連休初日、SL、しかも復活したばかりのC61とあって、撮影できないほどの激しい人出を覚悟していたのだが…思いのほか人が少なく、あっさりと撮影できた(経験年数の浅いライトな鉄の人たちは人の多さに驚いたかもしれないが、1997年9月の碓氷峠のような地獄を経験している私の感覚ではこの程度は人の多いうちに入らない)。

もうじき夏休みなので子ども連れは夏休みにゆっくり行けばいいという感覚なのかもしれないし、東日本大震災が未だに影を落としているのかもしれない。

連結シーン(動画)


そして、列車を止めて警察沙汰になっても屁とも思っていない関西の悪質なファンに比べれば、ここ高崎のファンは本当にマナーがいい。駅員に黄色い線から出るなと言われたら本当に線から出ないし、それなりに譲り合っている。

むしろ、ここでも元気がいいのは女性、というよりママ鉄。旦那そっちのけでコンデジを持ち、子どもを抱いたまま黄色い線ぎりぎりまで突進。居並ぶ10~20代とおぼしき鉄どもに向かって「どけ~!」と言って退かせているから凄い。私の若い頃なんぞは、お目当ての列車が来たときに他人に向かって「どけ」「邪魔だ」なんて叫ぶのは鉄ヲタと相場が決まっていたものだが…。

おそらく多くのママ鉄たちは、子どものために一生懸命やっているのだと思うが、この元気なママ鉄の姿を見ていると新時代の到来を実感する。男性鉄ヲタたちはボヤボヤしているとここでも女性に追い抜かれてしまうかもしれないという危機感すら持ってしまう。

そして、定刻の9時56分、C61は高崎を発車。

発車シーン(動画)


発車後は上り「SLみなかみ」の到着まで時間があるので、またとない機会を生かして未乗車路線である上毛電鉄に出かけることにする。高崎から前橋まで両毛線で移動。中央前橋駅はJR前橋駅から徒歩5分程度離れており、汗だくになる。ここ数日、伊勢崎市で全国最高の38度を超える日が続いており、午前中からすでに猛暑日の勢いだ。

上毛電鉄は、以前乗車した上信電鉄より速度感があった。実際に運転速度も上信電鉄より速いのではないだろうか。地方私鉄としては健闘していると思うが、乗客は一桁という状況だった。

西桐生駅を出ると、両毛線桐生駅までは徒歩3分。途中、あまりの暑さにコンビニに駆け寄る。桐生駅で列車を待つ間も町全体が焼けている感覚がする。

両毛線で途中、伊勢崎を通ると駅前ロータリーには人がおらず、車もほとんど走っていない。あまりの暑さに町は死んでいた。

夕方、再び高崎に戻ったあと、対向式ホームで撮影向きだった高崎問屋町に電車で移動。ここで水上から上ってきたC61 20牽引の「SLみなかみ」を撮影(サムネイル写真)。

本当なら、撮影後は水上あたりでゆっくり温泉にでも浸かって1泊しようかと思っていた。しかし、実は水上温泉はこのような状況(早川由紀夫の火山ブログ)にあり、放射能汚染が白河と同レベル、下手をすると白河以上かもしれない。こんな状況では、放射能除けの保養の目的もあって来たのに全く意味がないと思ったから、水上泊はやめ日帰りとした。

<完乗達成>上毛電鉄

2011年初の完乗達成である。今年はもうあきらめているけれど、それでも一歩一歩、前に進むしかない。

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岩手・遠野で震度5強

2011-07-23 23:15:54 | 気象・地震
「平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震」について(第51報)(気象庁報道発表)

宮城県沖が震源なのに宮城県はあまり揺れず、強い揺れが岩手県内に集中するという変わった地震だった。

震源深さが47km。先日の茨城県の地震もそうだが、3.11直後に続いた浅い震源(深さ10km未満)の地震に代わって、このところ震源がやや深めの余震が増え始めたように思う。浅い場所の地殻の歪みがかなり修正され、今後はやや深い場所で3.11による歪みの修正が始まったのだろうか。

発震機構は東西方向に圧力軸を持つ逆断層型(速報)。震源の位置から見てプレート境界より西側、北米プレート内部の地震だ。プレートが引きずり込まれる方向に圧力軸があるから、3.11で逆転しすぎた地殻を元に戻す方向での揺れだということになる。3.11の余震と判定した気象庁の報道発表に、特に異論はない。

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被曝地フクシマで進行する戦慄の事態~ついに刑事告発された御用学者・山下俊一らの大罪を問う!

2011-07-19 23:33:10 | 原発問題/一般
(当エントリは、当ブログ管理人が月刊誌に発表した原稿をそのまま掲載しています。)

 福島原発直後から、メディアに出ては根拠もなく「安全」「直ちに健康に影響はない」との言説を垂れ流し続けながら浮かんでは消えた御用学者たち。その中でしぶとく生き残り、被曝地フクシマにおいて被曝者そっちのけでうごめくのが山下俊一だ。

 長崎大学医歯薬学総合研究科教授にして自身も長崎生まれの被爆二世だ。1991年からチェルノブイリ原発事故による被曝者治療にも関わった。本来なら、放射能の怖さを最もよく知り、福島で被曝者たちに正しい放射能対策をアドバイスしなければならない立場にある。

 ところが、佐藤雄平・福島県知事の委嘱を受け、福島原発事故直後の3月19日、県の放射線健康リスク管理アドバイザーに就任した山下が取った言動は全くの正反対だった。福島県各地で「年間100ミリシーベルトの被曝までは安全」と触れ回ったのだ。

 ●初めは安全と大見得

 4月1日、飯舘村で行われた講演でも「放射性物質は飯舘村まで届かない」ので安全だと主張した。IAEA(国際原子力機関)が「飯舘村は全村避難させるべき」と勧告したのはその前日、3月31日のことだった。飯舘村全域が計画的避難区域となったのは4月中旬。山下の明白なウソで騙された飯舘村民は避難が遅れ、無駄な高線量被曝をさせられることになった。

 5月、二本松市で開かれた講演会でも「安全というなら、あなたがお孫さんを連れて砂場で遊んではどうか」という市民に対し、山下は「みんなが信じてくれるのだったら、お安い御用だと思います」とまで大見得を切った。さらに、「(年間100ミリシーベルト以下の被曝は安全という)基準は日本の国が決めたこと。私たちは日本国民です。国の指針に従うのは国民の義務」と発言した。「君が代が流れ始めたら問答無用で立て、歌え」という石原慎太郎・東京都知事、橋下徹・大阪府知事並みのファシズム的恫喝だ。

 そもそも年間100ミリシーベルトの被曝とは、原発労働者が白血病を発症した場合に労災認定を受けられる基準・5ミリシーベルトの20倍にも当たる。一般市民が1年中そうした高線量の中で生活して無事でいられるはずがない。

 ●毎日言うことをコロコロ変え、ついにはデタラメな放言

 3月下旬、いったん地元に戻った山下は、長崎新聞社のインタビューで「子どもや妊婦を中心に避難させるべきだ」と福島県内とは正反対の主張をした。「長崎から来たというだけで歓迎され、現地の人たちは安心する」という発言には山下の本音が見え隠れする。福島県民の自主避難の動きを抑えるため、長崎出身の被爆二世という自分の立場を最大限、政治的に利用してやろうという狙いだ。

 山下は、講演会の会場で過去の発言との整合性を問われると「(100ミリ以下では)発ガンリスクは証明できない」「安全ではなく安心と言っただけ」などと突然、トーンダウン。「放射能の影響は実はニコニコ笑っている人には来ません。クヨクヨしている人に来ます」に代表される非科学的で無根拠な放言、「私は子どもたちより先に死にます」などという無責任な居直り発言もあった。

 くどいと言われるかもしれないが、「証拠保全」のために山下が放ってきた安全デマや放言・暴言をさらにいくつか拾ってみよう。

1.「ふくしま市政だより」(2011年4月21日号)から

Q.地域の環境放射線が一時間当たり数マイクロシーベルトとなっている。数週間、数カ月この環境に住み続けることで、蓄積したら数ミリシーベルトを超えることもあると思われるが大丈夫か?

A.報道されている値はあくまでも屋外での空間線量です。それが屋内では一般的には5~10分の1くらいに減りますので、実際の被ばく線量は少なくなります。もちろん、蓄積されてどうなるか、を心配されるのはごもっともですが、現在の状況が継続すれば、健康リスクが出ると言われる100ミリシーベルトまで累積される可能性は、ありません。そして、同じ100という線量でも、1回で100受けるのと、1を100回に分けて受けるのとでは影響が全く違います。少しずつならリスクは、はるかに少ないのです。

Q.結婚したばかりだが、近い将来赤ちゃんがほしいと思っている。今の状況がとても不安だが、出産に問題はない?

A.放射線について国際的なガイドラインを定めた国際放射線防護委員会(ICRP)の勧告によると、100ミリグレイを下回る被ばくであれば、生まれてくる赤ちゃんについて心配の必要はありません。県下に住むお母さんのおなかの中にいる赤ちゃんが、今回の原発事故で100ミリグレイを上回る被ばくをするとは考えられませんので、心配する必要は全くないと思います。

Q.現在妊娠している。飲み水もみそ汁にまでもミネラルウオーターを使っている。野菜を洗うのも怖いが、どう対応するべきか?

A.ミネラルウオーターがないから、水を飲ませない、ミルクをあげられないというのは、逆に乳幼児の健康によくありません。

2.講演会「放射線と私たちの健康との関係」(2011年3月21日)から

 「これから福島という名前は世界中に知れ渡ります。福島、福島、福島、何でも福島。これは凄いですよ。もう、広島・長崎は負けた。福島の名前の方が世界に冠たる響きを持ちます。ピンチはチャンス。最大のチャンスです。何もしないのに福島、有名になっちゃったぞ。これを使わん手はない。何に使う。復興です」

 この発言に至ってはもはや常人の感覚では全く理解できない。文面を読む限り、どう見てもフクシマが被曝して喜んでいるとしか思えない。「さあ、これから思う存分研究できるぞ。せいぜいがんばってもっともっと被曝してくれよ」と思っているようにしか見えないのである。ヒロシマ、ナガサキ、フクシマすべてのヒバクシャを貶める最も愚劣な発言であることは言うまでもない。

 そうかと思えば、山下は医師会の講演では、若者を中心に年10ミリシーベルト以上の被曝は危険という主張をしている。時と場所により自分の主張をコロコロ変える。学者としての信念のかけらも見られない。

 こうした事実が暴かれ、福島県民の間で批判が強まると、山下は驚くべき言動に出た。「飯舘や浪江、川俣の一部の数値が高いのを見て、自主避難ではダメだ、きちんと命令してあげないといけないと言ってきた」「30キロ圏内でも必要ならば避難させなきゃだめだとも言ってきました」などと、初めから自分が放射能の危険性を把握し、指摘してきたかのようなウソを言い始めた(「朝日ジャーナル」での発言)。それなら飯舘村民の避難が遅れたのは誰のせいなのだろう。

 あまりにデタラメすぎて、書いているこっちのほうが疲れてくる。

 ●師匠は「公害病の総合商社」

 こうした人間性や品性のかけらもない学者はどのようにすれば生まれてくるのか。そのルーツをたどっていくと、閉じられた原子力村という世界における特殊な人間関係に行き当たる。

 山下は、長崎大学で長瀧重信・長崎大学名誉教授の教えを受けた。山下の師というべき人物である。その長瀧の師に当たるのが重松逸造だ。重松、長瀧、山下は、チェルノブイリ原発事故後、IAEAの事故調査団に揃って加わり、事故の影響を最小限に見せるために非科学的な報告書を作成した事実が浮かび上がった。

 長瀧の発言も拾ってみよう。「チェルノブイリ事故の被ばくのために亡くなった方は…(中略)全部入れても50人くらい」「(子どもたちの)知能の遅れや白血病などが言われていますが、それに関しても(IAEAの報告書は)『科学的影響は全くない』としています」「めまいや、頭が痛い、力が入らない、働く気がない、疲れて働けないなど、アンケート方式で聞きますと、被ばく地に住んでいる方たちには、そういう病気が非常に多いということです。IAEAでは『それはすべて心理的影響であろう。明らかな被ばく量との相関、あるいは我々の現在までの知識の中で、そういうものは被ばくと関係があるとは言えない』としています」((財)日本原子力文化振興財団発行の月刊「原子力文化」1996年7月号における発言)。

 長瀧はあとで責任を問われないようにしたいらしく「IAEA」を主語にしている。だがその報告書は彼らがみずから作ったものだ。つまりそれは長瀧自身の思想であり発言だということに他ならない。

 重松に至っては「チェルノブイル(ママ)の事故が世界中に拡大し、反原発運動とか、主義、主張に利用されすぎているようですので、まず正しい情報ということですね。主義、主張はご自由ですが、チェルノブイルを変に利用してもらうのは困ると思います」(「原子力文化」1991年7月号)とまで語っている。放射能の危険を語る者に対し、自分の主義主張のためチェルノブイリ事故を利用しているだけだという悪罵を浴びせる人物についてこれ以上何を語る必要があろう。

 だがそれでも重松を追うことにする。そこからは戦後の公害病や薬害のほとんどにかかわっている重松の姿が見えてくる。

・「環境庁(当時)の水俣病調査中間報告「頭髪水銀値は正常」との見解を示す。水俣病の調査責任者として、水俣病被害者とチッソの因果関係はないと発表(1991年6月23日付け「読売新聞」)。

・広島県、広島市共同設置の「黒い雨に関する専門家会議」の座長として、1991年5月、「人体影響を明確に示唆するデータは得られなかった」との調査結果をまとめた(1991年5月14日付け「毎日新聞」)。

・環境庁の委託で原因を調査していた「イタイイタイ病およびカドミウム中毒に関する総合研究班」の班長として、カドミウムとの因果関係を認めず(1989年4月9日付け「読売新聞」)。

・厚生省スモン調査研究班班長として「結局は後で原因と判明したキノホルムに到達することができませんでした」と、キノホルムとの因果関係を否定。

・1993年1月13日、動力炉・核燃料開発事業団(当時)人形峠事業所が計画している大規模な回収ウラン転換試験の安全性を審査していた「環境放射線専門家会議」の議長として安全性に「お墨付き」を与え計画を承認。

 もうおわかりだろう。重松はすべての公害病や薬害について、住民を切り捨て政府・財界の利益を守るため露骨に策動してきたのだ。何が「結局は後で原因と判明したキノホルムに到達することができませんでした」だ。とぼけるのもいい加減にしてもらいたい。

 ●治療はせずにデータだけ取る~放射線影響研究所の恐るべき正体

 重松も長瀧も理事長を務めた(財)放射線影響研究所(放影研)という団体がある。ホームページの「設立の目的と沿革」を見ると「平和目的の下に、放射線の人体に及ぼす医学的影響およびこれによる疾病を調査研究し、被爆者の健康維持および福祉に貢献するとともに、人類の保健福祉の向上に寄与する」とみずからの高邁な理想を語っているが、彼ら自身が認めるように「前身は1947年に米国原子力委員会の資金によって米国学士院(NAS)が設立した原爆傷害調査委員会(ABCC)」である。その意思決定は「日米の理事で構成される理事会が行い、調査研究活動は両国の専門評議員で構成される専門評議員会の勧告を毎年得て」進められる。「経費は日米両国政府が分担」することになっており、負担比率は半々だ。

 いかに美辞麗句を並べようとも、「福島第一原子力発電所事故についてよくある質問Q&A」を見ると彼らの本質がよくわかる。例えば「放射線の種類にはどんなものがありますか?」というような当たり障りのない質問に彼らは実に饒舌に答える。一方で彼らにとって触れられたくない質問、例えば「内部被曝とはどういうことですか?」という質問に彼らはこう答えている。「放射性物質を体内に取り込んだ結果、体の内部から被曝することを指します。どういう元素であるかによって、体外に排出される速度が違います」。

 前半はよいとして、後半は何が言いたいのだろう。できるだけ被曝の影響を小さく見せたい。そうかといって事実に反する回答もできない。そうしたジレンマがこのような意味不明な回答として現れている。概して彼らの質疑応答をみると「都合のよい質問に対しては聞かれてもいないことまで答える。都合の悪い質問に対しては聞かれたことに答えず、聞かれてもいないことに対して意味不明な回答で返す」というレトリックが一貫して施されている。なるほど、重松や長瀧のような連中を理事長に迎える組織だけのことはある。ごまかしとはぐらかしだけは超一流だ。

 ●「良心的な学者は来ない」

 敗戦後の1945年9月19日、占領軍当局はプレスコードと称する情報・報道管制に関する方針を発表。原爆に関する報道などはとりわけ厳しく統制された。外国の記者が広島・長崎へ入るのを4カ月間も禁止するとともに、マンハッタン計画の副責任者は「広島・長崎では死ぬべきものは死んでしまい、9月上旬において原爆放射能のため苦しんでいるものは皆無である」と発表した。その一方で米国にとっては原爆症の調査研究の続行がどうしても必要だった。これがABCC~放影研設立の経緯である。当時の広島市長などは反対したが、ABCCの建設工事は強行された。

 そこでは、収集した数十万人の被爆者名簿から一定数が調査対象標本として抽出され、研究目的に従って該当する被爆者を呼びだして様々な検査を行い、集められたデータを解析する方法がとられた。やがて「調査研究の対象にはするが治療はしてくれない」ことが明らかになると被爆者によるABCC撤去運動も行われた。

 「良心的な学者だとか、研究者だったら、放影研へは来ないですよ。だから、あの人がチェルノブイリの調査責任者に選ばれたのは、最初から、ある結論を出させるためだったのではないか、と私は思います」。広島被爆者団体連絡会議事務局長だった近藤幸四郎さん(故人)はこう語っていた。「あの人」とはもちろん重松のことだ。ABCCの原爆被害調査は、初めから「加害者が被害者を調査研究する」ものとして始まり、その後も続けられてきた(被爆40日後に広島入りし、被爆者の診療と病理解剖に当たった杉原芳夫博士の指摘)。そこに医者としての倫理など望むべくもない。

 重松、長瀧、そして山下…。「治療はせずにデータだけ取る」人体実験主義者、戦後のすべての公害・薬害でことごとく被害者を切り捨て、政府・財界に奉仕してきた御用学者たちの師弟関係が日本の医療界を支配し歪めてきた。切り捨てられた被害者たちは、補償を勝ち取るためにその後の人生のほとんどを裁判闘争に費やさざるを得なかった。だが、4大公害裁判として知られる水俣病やイタイイタイ病を巡る訴訟では原告が勝訴、原爆症認定訴訟でも御用学者たちが否定しようとしてきた内部被曝との因果関係が認められ原告が勝訴した。歴史的に見れば政府・御用学者たちの策動は最後には粉砕され挫折してきた。

 歴史上最も新しい被曝地・フクシマでこれから何が起きるかは、こうした歴史上の事例を見れば明らかだ。被害者を切り捨て泣き寝入りさせるとともに、治療はせずデータだけ取る人体実験政策のための尖兵として山下俊一が送り込まれたことは、もはや説明するまでもないだろう。福島県は、県民全員に対して「健康調査」を実施する方針を明らかにしているが、筆者は調査票が配布されてもこれには協力しないと決めている。

 「放射線医学総合研究所(放医研)でホールボディーカウンター(内部被曝を検査する器具)による検査を受けたが、大丈夫だとだけ告げられ数値のデータはもらえなかった」。飯舘村で活動していた男性からすでにこうした訴えも聞こえている。フクシマでも人体実験の策動が始まろうとしている。

 だが私たちには強力な武器がある。敵は歴史に学ばないが私たちは学ぶことができるということだ。この国を覆い尽くした原子力ファシズムを突き破るフクシマの「母親民主主義」も展開され始めている。フクシマのヒバクシャたちは、おそらく広島・長崎のヒバクシャよりも短い期間で敵の策動を打ち破るだろう。

 福島県では、山下らの放射線リスク管理アドバイザー解任を求める署名が集められた。県議会でも与党会派の議員が解任を要求して県当局を追及している。一貫して反原発の立場から著作活動を続けてきた広瀬隆さんらによる山下らの刑事告発(業務上過失致傷罪)も行われた。彼らには今すぐすべての公職から去ってもらわねばならない。

<参考文献・資料>
・インタビュー/長崎大医歯薬学総合研究科・山下俊一教授(長崎新聞)

・「ふくしま市政だより」(2011年4月21日号)

・「100ミリ以下は安全」放射線アドバイザー山下俊一氏に苦言殺到(OurPlanet-TV)

・山下俊一(長崎大教授)のトンデモ発言(日刊ゲンダイ)

・山下俊一は、福島県民は朝日ジャーナルなんか読まないと思ってるのかもしれない。あなたが飯館村で話してきたことと矛盾してますが…。

・飯舘村山下教授「洗脳の全容」(田中龍作ジャーナル)

・本当に同じ人?! あるアドバイザー(医師)の発言と論文(武田邦彦さんのブログ)

・「福島原発のリスクを軽視している」「安全説」山下教授に解任要求署名(J-CAST)

・チェルノブイリから広島へ~重松逸造がどのようなことをしてきたか(磯野鱧男Blog)
 
・ABCC(現放射性影響研究所)(広島の原爆遺跡と碑)

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