安全問題研究会~鉄道を中心とした公共交通を通じて社会を考える~

公共交通と原発を中心に社会を幅広く考える。連帯を求めて孤立を恐れず、理想に近づくため毎日をより良く生きる。

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当サイトは列車の旅と温泉をメインに鉄道・旅行を楽しみ、また社会を考えるサイトです。

「あなたがすることのほとんどは無意味でも、あなたはそれをしなくてはなりません。それは世界を変えるためではなく、あなたが世界によって変えられないようにするためです」(マハトマ・ガンジーの言葉)を活動上の支えにしています。

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●管理人の著作(いずれも共著)
次世代へつなぐ地域の鉄道——国交省検討会提言を批判する(緑風出版)
地域における鉄道の復権─持続可能な社会への展望(緑風出版)
原発を止める55の方法(宝島社)

●管理人の寄稿
ローカル鉄道に国・自治体・住民はどう向き合うべきか(月刊『住民と自治』 2022年8月号掲載)
核のない未来を願って 松井英介遺稿・追悼集(緑風出版)

●安全問題研究会が、JRグループ再国有化をめざし日本鉄道公団法案を決定!

●安全問題研究会政策ビラ・パンフレット
こんなにおかしい!ニッポンの鉄道政策
私たちは根室線をなくしてはならないと考えます
国は今こそ貨物列車迂回対策を!

本日の放射能測定値

2012-11-29 22:50:26 | 福島原発事故に伴う放射能測定値
1.測定年月日、時間
 2012年11月29日(木) 午後9時35分~9時40分

2.測定時の気象条件(晴/曇/雨/雪の別及び風向、風速)
 天気:曇
 風向・風速:北 3m

3.測定場所及び測定結果(単位:マイクロシーベルト/時)
(1)福島県 JR新白河駅西口(高原口)
  ・新白河駅西口バス停横の土壌地
   大気中(高さ100cm)   -
   土壌(高さ10cm)    -

  ・新白河駅西口駐車場
   大気中(高さ100cm)   0.40
   舗装路面(高さ10cm)  0.41

(2)自宅室内(RC)    0.17

<放射線量測定に関するお知らせ>
先週に引き続き、新白河駅前道路工事のため、測定場所1での測定が実施できませんでした。

なお、次の定期測定は、2012年12月6日(木)に実施します。

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市民を二分する論議の中、福島で市民診療所が開業へ

2012-11-28 22:52:48 | 原発問題/一般
<原発事故>福島に募金診療所が開院へ 住民の不安に応え(毎日)

この診療所の建設を巡っては、福島県民、市民を二分するほどの激しい論争があった。いや、今なお続いていると言ってもいいだろう。「そもそもなぜ市民が寄付まで集めてこのようなことをしなければならないのか」という建設そのものの是非に加え、建設委員会のあり方、どのような診療所を目指すのか、という疑問も提起された(診療所建設委員会のあり方に関しては、私は当事者ではないのでコメントする立場にないが…)。

記事中にも登場する呼びかけ人の方は私も知らないわけではないが、「子どもたちを放射能から守る福島ネットワーク」代表と診療所建設の呼びかけ人を兼務することを巡っても、大きな論争が今なお続いている。

「そもそもなぜ市民が寄付まで集めてこのようなことをしなければならないのか」という疑問に答えることは、そのまま福島県の今の医療のあり方を問うことにつながる。本当は、こんなことをしなくて済むならそれに超したことはなかったのだ。

「私は子どもを病院に連れて行っただけで、まだ何も言わないうちから“放射能は関係ないからね”と言われた」

「避難よりも、親子が離ればなれになるストレスのほうが身体に悪いですよ、と言われた」

「そんなに(放射能のことが)心配なら、心理カウンセラーを紹介しましょうか、と言われて絶望した」

「子どもが鼻血を出し、いつまでも止まらないので病院に連れて行ったら花粉症と言われた。『鼻血を出す花粉症がどこにあるんですか!』と言ったら『花粉症です!』と怒鳴られた」

これらはすべて、放射能の健康への影響を心配する人たち(その多くが女性や母親)が福島県の病院で経験したことだ。信じられないかもしれないがすべて実話である。福島県のほぼすべて(1人残らず、に近い)の医者が放射能の健康被害を心配する人たちを冷笑し蔑視してきた。3人目に紹介した人は、長野県に避難してしまった。健康被害が出なくても、福島のこうした「人に冷たい医療体制」に絶望して避難を決意した人は多いのだ。私はこうした医療従事者の姿勢を、福島の子どもを持つ母親に対する二次加害行為、「セカンドレイプ」だとすら思っている。福島の医療関係者はもはや若者、子供を持つ母親からは全く信頼されていない。

驚くことに、彼らのこの姿勢は県民健康管理調査検討委員会という公式の場で甲状腺がんが公表された後も全く変わっていない。彼らは県当局と一緒になって県民の健康被害を隠ぺいし否定する犯罪者、加害者だ。福島県医師会の幹部は数十年後、県とともに傷害罪(今後の展開によっては殺人罪)で断罪されるであろう。

市民が自分たちの手で、数千万円もの寄付を集めて診療所を建てなければならなかった背景にこうした理由がある。たとえ町医者に毛の生えた程度の貧弱な診療施設であっても、建設委員会にいかなる毀誉褒貶があっても、もはやこうでもしない限り、福島の子どもたちを健康被害から守ることはできないのである。

この診療所が福島県民から支持を獲得できるか、どの程度獲得できるかはまだわからない。しかし、一定程度の患者は獲得するのではないかと当ブログは見ている(本当はこんなところに診療を受けに来る暇があるなら避難すべきなのだが)。この診療所が、お先真っ暗の福島の医療に風穴を開ける灯台になってくれればいいと思っている。

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初雪観測

2012-11-27 23:40:00 | 日記
明け方から降り始めたみぞれが、午前中になるとさらに気温が低下して雪に変わった。白河地方、初雪観測である。ここ数年の傾向からすれば平均的といったところだろう。

6年目の冬、体調管理には気をつけたい。

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【管理人よりお知らせ】アクセス解析を実施しました

2012-11-27 22:43:11 | 運営方針・お知らせ
管理人よりお知らせです。

11月11日から24日までの2週間にわたって、gooブログサービスによる無料アクセス解析お試しキャンペーンが行われたので、これを機会にアクセス解析を行いました。

当ブログへのアクセス数は、ページビューが最高で1日あたり476、最低が282。訪問者数(IP)が最高で1日あたり167、最低で125でした。前回のアクセス解析時(2011年7~8月)はページビューで400~800、訪問者数でも160~200人程度だったので、ページビュー、訪問者数とも明らかに落ち、3.11前の水準に戻ったと考えて良さそうです。

アクセス数が元に戻った理由としては、放射線量測定を毎日から週1回に変更したこと、原発事故への関心が薄れていることが大きな理由と言えるでしょう。そのことは、検索キーワード上位に原発、放射能関係の用語が少ないことからも窺えます。残念ながら、福島原発事故は風化しつつある…のかもしれません。

また、当ブログは、地震の解説・速報記事をひとつの売りにしていますが、アクセス解析期間中に大きな地震がなく、全体として大きな地震が減ってきたことも影響していると考えられます(もちろん、地震は少ないに超したことはありませんが)。

時間帯ごとのアクセス数を見ると、平日(11月16日)は8時台、12時台、19時台、21~23時台にアクセスが増えています。これは前回のアクセス解析時とほぼ同じ傾向です。8時に電車で通勤・通学し、12時台に昼休みがあり、19時台に電車で帰宅、20時台に夕食や入浴でいったんPCや携帯から離れた後、21時から23時にかけて再び自由時間となるような人たちが主に当ブログを見ていると推察されます。

今回は、アクセス解析期間中に3連休があったので、連休中のアクセス状況が平日と異なるかどうかも見ました。その結果、例えば3連休の真ん中の日である11月24日には、アクセスの多い時間帯が1~3時台、6時台、10時台、13時台、15時台、21時台、23時台と、平日と全く違う結果が出ました。それにしても、1~3時台にこんなにアクセスが多いとは…いくら連休中だからといって、皆さん、生活のリズム崩れすぎです。

地元、福島を初め、地方では人々の生活が早寝早起きの「農村型」であることが多いので、こんな時間に当ブログを見ている方はおそらく都市の方が多いと思います。「福島の実情を大都市に伝える」という当ブログの役割は一定程度、果たせていると言えそうです。

ページごとのアクセス数を見ると、トップページよりもキーワード検索から個別の記事に直接飛んでくる人のほうが多くなっています。前回のアクセス解析でも、検索からの来訪者が増えている傾向が見えていましたが、今回はその傾向がいっそうはっきりしました。トップページよりも検索からの来訪者のほうが多いということは、すなわち当ブログをブックマークに入れて定期的にウォッチする、いわゆる「固定客」はそれほど多くないことを意味します。

そして、検索からの来訪者が多いことと関係していますが、最新記事や新しい記事が必ずしも読まれているわけではなく、過去ログも最新記事に負けず劣らず良く読まれています。毎日、キーワード検索を通じて過去ログにも一定の閲覧があることは、すなわち当ブログにとって過去ログが大きな「資産」であることを意味しています。

当ブログに来訪するきっかけになった検索キーワードですが、最近の状況を反映して「福島原発告訴団」というキーワードからの来訪があります。「鉄道 タブレット」「記号」(車両記号のこと?)「輸送密度」「名古屋市営地下鉄 完乗」「長崎本線 上下分離」など、相変わらず多いのが鉄道がらみのキーワードですが、もともと当サイトは鉄道が本業ですのでこれは納得できる結果です。「岩泉線」「大湊線」など、廃止が取り沙汰されていたり、経営状態が悪化していると思われる路線名の検索もありました。「東海道新幹線 老朽化」というキーワードでの検索が2回あったのは気になりました。東海道新幹線の老朽化を心配する人が増えているのでしょうか。

前回のアクセス解析時から相変わらず検索が多いのが、地下鉄日比谷線事故がらみのキーワードです。「日比谷線 事故」「中目黒 ご記帳所」というキーワードのほか、具体名は控えますが、犠牲者の方の氏名による検索もありました。

「JR 雇用」というキーワード検索もありました。JR不採用問題が和解に達したとはいえ、この問題を追いかけている人は相変わらずいます。「ひとにやさしい都政」というキーワードでの検索は、都知事選がらみでしょう。

この他、「ホテル 倒産」「紅葉」「閉館」というキーワードでの検索も目立ちました。名門ホテル「びわ湖紅葉」の閉館決定は多くの人に衝撃を与えたようです。

「杉原千畝」「杉原幸子」というキーワードで何度も検索が行われています。いうまでもなく、日本政府の指示に背いてユダヤ人に通過ビザを発給し、ナチスによる虐殺から6千人のユダヤ人を救った外交官(駐リトアニア・カウナス総領事)とその妻ですが、昨年のアクセス解析時には全く出てこなかったキーワードです。この夫妻に関し、何か動きがあったのかもしれません。

「前兆すべり」「地震 ニュージーランド」「地震予知」などのキーワード検索も目立ちました。相変わらず地震は世間の一大関心事のようです。「総選挙」「選挙予測」などのキーワードは、16日の解散を過ぎてから急激に増えました。

最後に、アクセスしてきているブラウザの種類ですが、これは前回のアクセス解析時から大きく変わりました。具体的には、前回、Googlebotに次いで2位だったezwebが20位にも入らずランキング圏外に去りました。1位は前回に続きGooglebotですが、2位にはてなアンテナ、3位にBingbotと、上位3位までをすべてbotが占めました。ネット検索はいよいよbotの時代に入ってきたと言えます。4位以下にIE7~9の各バージョンやSafari、Firefoxなど、おなじみのブラウザが入っています。IEでは相変わらず8が9を上回っています。9をインストールできないXPのユーザーがまだかなり残っているということかもしれません。IE6や5がまだ20位以内に入っているのは逆に驚きです。いい加減アップデートしましょうよ…

そして、私にとって最も衝撃的だったのが、Baidu(百度、中国系検索サービス)とnaver(まとめサイト)が20位以内に入っていたこと。当ブログのような弱小サイトにまでBaiduが及んでいるというのは、中国のネット人口の爆発的増加を意味していると思います(日本人でわざわざBaiduを使う人は多くないと思うので)。そりゃ、インターネット発で大規模な反日デモも起こるはずです。neverに関しては、当ブログの記事がどこかのまとめサイトに載っているということなんでしょう。

ezwebが前回の2位からいきなり「20位圏外」に去ったということは、auユーザーの間で急激にガラケーからスマホへの置き換えが進んでいる、と見て良さそうです。私が携帯をガラケーからスマホに変えたのは2011年6月、前回のアクセス解析期間は2011年7~8月なので、この急激な転換は私が原因ではありません。私以外にau携帯で当ブログを見ていた人がスマホに機種変していった、ということになります。

逆に、前回4位だったドコモは、今回、順位を落としながらも10位に入っています。iPhone進出ができないまま多くのドコモユーザーがガラケーを使い続けている実態がわかります。まぁ、最近のドコモはSPモードの通信障害しかニュースネタがないというお寒い状態なので、ドコモユーザーは今しばらくガラケーを使う方が賢明だと思います。

そういうわけで、今回のアクセス解析も大変興味深い結果が得られました。この結果を今後の当ブログの運営に生かしていきたいと思います。

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【管理人よりお知らせ】『100人の母たち~“原発”のない世界へ 私は子どもを守りたい』が刊行

2012-11-26 20:11:51 | 書評・本の紹介
管理人よりお知らせです。

このたび、『100人の母たち~“原発”のない世界へ 私は子どもを守りたい。』が刊行されました。出版元の「南方出版」は聞き慣れない名前ですが、九州を拠点とする地域出版社です。

我が夫婦には子どもがいないので、残念ながらこの本には「出場資格」がありませんでしたが、福島から九州に避難して活動する知人が母親の立場から登場しています。

内容は、お買い求めの上お読みいただきたいと思います。子どもと触れ合う母親100人の写真を中心に、それぞれの母親たちが自分の言葉で脱原発への思いを綴った好著となっています。

「こうした綺麗な形でいのちを脅かすものを告発するのは見たことがない。いい仕事だ」という報道写真家・福島菊次郎さんの短いコメントがこの本を紹介し尽くしていると思います。それぞれの母親と子どもとの日常の中から、強い決意が伝わってきます。元気な子どもと一緒にいられる幸せの他にいったい何が必要なのか、そしてその極上の幸せを奪われかけた母親たちが、いかに必死にこの間子どもを守ってきたか、その思いに本書を通じてぜひ触れていただきたいと思います。

当ブログ管理人は、これまで、アフガニスタンやイラクなどの写真展を開催してきた経験があります。そこで展示される写真には、戦火の中で傷ついた子どもを抱える母親、戦争への悲しみをたたえた母親たちが数多く登場し、来場者を引きつけました。

当ブログ管理人のそうした経験から言えば、命を産み育てる象徴的存在である「母」が大きくクローズアップされるときは、その社会にとって「生命の危機」と言えます。日本で次々とこのような写真集が生まれ、無名の母親が大きくクローズアップされている社会状況が、日本にとって何を意味するかはこれ以上説明の必要はないでしょう。

当ブログがこのような本を紹介しなくてすむ日が来ることを願っています。

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若者よ、福島を出よう~地元誌の貴重な提言

2012-11-25 23:18:00 | 原発問題/一般
巻頭言~ムダなことをしているのかもしれない(政経東北11月号)

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 環境放射線量は、県北保健福祉事務所(福島市御山町、10月23日9時)0・72μSv/時。近くの信夫山公園には「利用は1日1時間程度にして下さい」という案内板が設置してある。少し離れた小鳥の森駐車場(福島市岡部・渡利)に線量計が設置してあり、24日9時の数値は1・48μSv/時。ここにも信夫山と同じ案内板がある。

 これまで高い数値を示したのは、霊山・日枝神社の3~4μSv/時(5月17日)、磐梯山・弘法清水の6~7μSv/時(5月24日)。そこに注意を喚起する標識はなかった。おそらく、もっと数値の高いところが旧住地域内にたくさんあるに違いない。なぜ、国や自治体が詳しく調べて立ち入り禁止にしないのか分からない。

 大震災・原発事故から1年8カ月、環境や土壌や食べ物の放射能に、われわれは鈍感になっているような気がする。

 どうしようもない現実があるのは否めない。例えば、除染。昨年から今年にかけて柿の木を除染したものの、あんぽ柿の生産を自粛することになった。何年経ったら安心して生産できるのだろうか。除染しても再び数値が上がるという話もよく聞く。原因は分からないが、何らかの遮断効果や風による移動などが考えられるほか、除染の効果が低いことなども挙げられる。もしかすると、われわれはムダなことを繰り返しているのかもしれない。

 国・東京電力はそれを承知で、だらだら除染しているのではないかと疑っている。その理由は、金のかかる根本的な解決(すなわち移転に伴う保障)を避けるためである。

 ムダと言えば、農産物の輸出である。汚染されていなくても、外国人がフクシマ産を恒常的に買うとは考えにくい。おそらく、輸出額より関係者の渡航費など販促コストの方が上回っているはずだ。売れない農産物をつくり続けるのはむなしい。国・東京電力の対応を待っていたら勤労意欲を失い、貴重な人生を棒に振りかねない。

 だから、あえて言う。若い人は福島を出よう。大人も仕事を求めて福島を出よう。残った人は放射能に注意しながら、悔いのない人生を送ろう。

 いつ戻れるか分からない中で、自治体の実態がないのに自治体を名乗り、選挙をやるのは違和感がある。首長、議員、職員の待遇が従前通りというのも理解できない。そこに住んでいるなら、そこの自治体に住民票を移し、庁舎などをつくるべきでない。もちろん、保障は一丸となって求めていく。
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「東北圏と中央を結ぶユニークな政治経済情報誌」と自分で標榜しているように、「政経東北」誌のスタンスは他誌とはかなり変わっている。宮城県内でも一部の書店で販売されているものの、実際には福島県内だけを購読対象エリアとして想定している雑誌が、福島県民の数を減らし、自分の存立基盤を脅かすことにもつながる避難を勧めるというのは極めて珍しい。しかし、福島県内の客観情勢から言えば、この指摘は正しい。中通りの大半の地域はチェルノブイリの基準を当てはめれば避難対象区域であり、本来、人など住んではいけないところなのだ。

『国・東京電力の対応を待っていたら勤労意欲を失い、貴重な人生を棒に振りかねない。だから、あえて言う。若い人は福島を出よう。大人も仕事を求めて福島を出よう。残った人は放射能に注意しながら、悔いのない人生を送ろう。』という指摘は、まさにこの間、当ブログが抱いていたモヤモヤ感をすっきりさせてくれるものだ。除染にしても、他地域の人たちから汚染食品を出荷する加害者呼ばわりされ、汚染を気にしながら行う農作業にしても、ほとんど人生の無駄遣いに近い。

『国・東京電力はそれを承知で、だらだら除染しているのではないかと疑っている。その理由は、金のかかる根本的な解決(すなわち移転に伴う保障)を避けるためである』というのはどうだろう。飯舘村では、除染に3000億円以上の経費がかかると試算されている。一方で、飯舘村は1700世帯しかない小さな村だから、移住のために1世帯1億円ずつ配っても除染の半額で済む上、効果が出るかどうかもわからない除染と比べて移住は確実に住民を被曝から守る効果がある。現状ですらそのような状態なのだから、今後、効果が上がらないとわかっているのにだらだら除染を続ければ、結果として福島県全体で見ても移住より高くついた、ということになりかねない。

『いつ戻れるか分からない中で、自治体の実態がないのに自治体を名乗り、選挙をやるのは違和感がある。首長、議員、職員の待遇が従前通りというのも理解できない』という指摘もその通りである。全域避難となった町村は住民サービスも公共事業も一切できないのに自治体を置き、選挙で首長や議員を選ぶ。避難で農家は農地を失い、サラリーマンは失業し、安定収入のない状態で日々の暮らしにも事欠く状態なのに、労働者の年収の何倍もの議員歳費を、ほとんど何もすることのない議員が当然のように受け取っている。仮設住宅に住んでいる住民からすればやりきれないだろう。「そんなことに使う無駄金があるなら被災者のために使え」と、被害を受けなかった当ブログでさえ叫びたくなる。

地方自治法第94条に、驚くべき条文がある。「町村は、条例で、…議会を置かず、選挙権を有する者の総会を設けることができる」という規定だ。市は議会を必ず置かなければならないが、町や村は、必要を認めなければ議会を置かなくていいのである。ロクに仕事もしていないのに、穀潰しのように税金を浪費する避難町村の議会などいっそ廃止してはどうか。代わりに有権者総会を置き、有権者にいくばくかの報酬を支払いながら、所属する自治体の予算や条例を直接決めてもらう。そのほうがはるかに有益で適切な決定を下せるのではないかと思う。

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福島原発告訴団、第2次告訴~この社会に当たり前の法と正義を

2012-11-24 10:32:20 | 原発問題/福島原発事故刑事訴訟
(当エントリは、当ブログ管理人が月刊誌「地域と労働運動」2012年12月号に発表した原稿をそのまま掲載しています。)

 長くて厳しい福島の冬がやってきた。最低気温4.3度。蒸し暑ささえ感じた6月11日の第1次告訴の日とは打って変わり、ピンと張り詰めた空気の中、前回より1ケタも多い1万3千262人の委任状を携えて、福島原発告訴団の横断幕は再び進む。

 11月15日、3か月に及ぶ告訴人集めの努力が結実した瞬間だ。

 ●奇妙な空気の中で

 「利用は1日1時間程度にしてください」――消費者金融の謳い文句ではない。福島地方検察庁からほど近いところにある信夫山公園に設置されている看板だ。福島原発事故前は、福島県内有数の桜の名所として多くの人に親しまれたこの公園は、事故後は高い放射線量の中にある。少し離れた小鳥の森公園駐車場では、今なお放射線量が1.48マイクロシーベルト(2012年10月24日9時現在)を示す。ここは、今からちょうど1年前、特定避難勧奨地点への指定をめぐって大揺れに揺れた、あの渡利地区からもほど近い場所なのだ。

 あれから1年――「避難は経済を縮小させるので、除染で対応したいと思います」。誰はばかることなく、白昼公然と「命よりカネ」優先を宣言した国・県・市挙げての棄民政策の中で、福島市内には、今、奇妙なまでの静けさと「平常」の空気が漂っている。まるであの事故などはじめから「なかったこと」ででもあるかのように。

 事故のことを口にすると、「まだそんなことを言っているのか。覚えていてもいいことなどないのだから早く忘れなさい」という声が、どこからともなく聞こえるような気がする。そんなとき、私はガリレオと同じ気分になる。地動説が正しいとわかっているのに、誰からも相手にされず、天動説にしがみつく多数派の中で宗教裁判にかけられる。しかし、誰がなんと言おうと「それでも地球は回っている」のだ。

 ●当たり前の正義を社会に

 福島県民がいちるの望みをかけた除染は1年以上経った今なおどこからも成功の報を聞かない。長い年月をかけて築きあげてきたコミュニティを維持しながら、濃密な人間関係の中で生活したいという欲求が強い福島では避難も容易ではなく、被害者が泣きながら時だけが過ぎていくのが当たり前になってしまった。

 なぜこんなことが起きているのか。なぜ逮捕はおろか捜査すら行われないのか。破壊されたふるさとを元に戻すことが難しくとも、加害者の責任を取らせることがなぜこんなにも難しいのか。福島原発告訴団は、そうした数多くの「なぜ」に答えるために生まれた。『日本政府は、あらゆる戦争、あらゆる公害、あらゆる事故や企業犯罪で、ことごとく加害者・企業の側に立ち、最も苦しめられている被害者を切り捨てるための役割を果たしてきました。私たちの目標は、政府が弱者を守らず切り捨てていくあり方そのものを根源から問うこと、住民を守らない政府や自治体は高い代償を支払わなければならないという前例を作り出すことにあります。そのために私たちは、政府や企業の犯罪に苦しんでいるすべての人たちと連帯し、ともに闘っていきたいと思います』――告訴団の結成宣言は、絶望の中から立ちあがった福島県民による「法と正義の復興宣言」だ。

 6月11日に行われた第1次告訴に関しては、本誌141号(2012年7月号)をご覧いただきたいが、福島県民・福島からの避難者に参加資格を限定しながらも、1324人の告訴人を集めた。国、東京電力関係者や御用学者など33人を業務上過失致死傷罪、人の健康に係る公害犯罪の処罰に関する法律(公害犯罪法)違反の罪で告訴した(今回の第2次告訴では、水素爆発による原子炉建屋の破壊に対して、刑法第117条に規定する「業務上過失激発物破裂罪」を新たに加えている)。第1次告訴は、ジャーナリスト・広瀬隆さんらが昨年行った告訴、金沢市の市民団体が金沢地検で行った告訴とともに8月1日、受理された。

 この間の7月、検察当局は堺徹・東京地検特捜部長を福島地検検事正(地方検察庁トップ)とする幹部人事を実施。告訴受理後の8月には、東京・福島両地検で合同捜査態勢を取るべく、東京地検公安部に専従捜査班を設置した。すでに複数の東電幹部から任意で事情を聴いており、強制捜査もにらんだ攻防が続く。

 専従捜査班が東京地検の特捜部でも刑事部でもなく公安部に設置されたことから、最初は告訴運動つぶしが目的ではないかとの憶測も呼んだが、告訴団事務局の保田行雄弁護士は「業務量の少ない公安部に専従捜査班を置いたもので、実質的には特捜部の布陣」と見る。実際、検察公安部の主要な業務は「公務執行妨害」などの公安事件が警察から送検された場合における起訴・不起訴の判断と、起訴した場合の公判維持がほとんどを占めており、公安事件の少ない地方の検察の公安部は業務量の少ないことが多い。

 堺徹・福島地検検事正の経歴を見ても、公安部や法務本省の経験はほとんどなく、その検事人生のほとんどを特捜や刑事畑で過ごしてきた。検事でも公安部門のエースと目される人物は、法務本省、地検公安部、公安調査庁、在外公館勤務(大使館書記官に名を借りた「情報収集」)などを歴任することが普通だが、堺検事正にそのような経歴は全くなく、保田弁護士の見立てはある程度信憑性を持っていると言えよう。

 堺検事正は、東京地検特捜部長時代、オリンパス事件の摘発を手がけた。「手堅く実務をこなす能吏タイプ」との評価だが、オリンパス事件自体は会員制月刊誌「FACTA」のスクープにより初めて公になったもので、特捜部の捜査は後追いの感が否めなかった。いずれにせよ堺検事正にかかる期待には大きいものがある。「国民とともに泣く」検察の正義感をもって、ぜひ立件をしてほしいところだ。

 ●わずかな期間で1万人超え

 第2次告訴に向けた体制作りは第1次告訴終了後から始まった。告訴団は福島の本部の他、全国に10の事務局(北海道、東北、関東、甲信越、静岡、中部、関西、北陸、中四国、九州)を置く。立ち上がりと組織化には地域差も大きく、静岡のように中部ブロックとは別に屋上屋を架するような県事務局が置かれた例もある。静岡は、従来から浜岡原発反対運動の広いネットワークがあるためか、意識も高く動きも活発だった(注)。

 事務局による事前説明会の開催は、全国で延べ100回近くに及んだ。中には、2度にわたって説明会を開催した地域もある。多くの地域では立ち見が出たり、会場に収容できなくなったりするなど、説明会は盛況を極めた。現在、地域ブロックごとの告訴人数は最終集計の段階にあるが、おしなべて、事前説明会の参加者数が多かった地域は告訴人数も多いという相関関係があったように思われる。

 地域別に見ると、全告訴人の半数近い6千人あまりを関東事務局管内が占めた。首都圏には福島県内と変わらないほどの高濃度放射能汚染に見舞われた地域がある(千葉県柏市、埼玉県三郷市など)。一方で、福島原発で発電された電力を消費し、豊かな生活を享受してきた首都圏は、加害者性と被害者性の両方を併せ持つ中で、大きな責任を感じてきた。関東事務局で告訴人のとりまとめに当たってきた白崎朝子さんは「(電力消費地に住む)加害者としての責任を感じ、活動に取り組んだ。立件を心から祈っている。告訴が国を動かす力になってほしい」と話す。

 告訴人は、北海道から沖縄まで47都道府県のすべてに及んだ。福島から仕事を辞めて避難したインドネシア在住者からの告訴参加もあった。未成年者も多くが参加したが、今後の人生の長い人ほど原発事故の影響を強く長く受けるのだから、未成年者・若者ほど大きな悲しみと憤りを持つのは当然だ。

 告訴人のひとり、橘柳子さんは、浪江町を離れ今も本宮市の仮設住宅で暮らす。敗戦で天皇も軍部も誰ひとり責任を取らない日本を見て、私たちは棄てられたのだと思いながら生きてきた。福島原発事故でも、肝心な情報を何も知らされないまま、町内でも最も放射線量が高い津島地区の集会所に避難した。当時、津島地区の放射線量は30マイクロシーベルトを超えるところもあった。

 「人間関係も町も村もすべてバラバラにされた。戦争も原発も同じ。住民には一番肝心なことは知らされない。原発に反対した人、発言した人もちゃんといたのだということを伝えていきたい」と思いを語る。ひとりひとりの住民が大切にされる社会を作りたい――告訴人共通の思いだ。

 ●1人が10人とつながる

 第2次告訴当日。告訴人らは福島市内をデモ行進し、捜査・起訴の必要性を訴えた。デモには各地の事務局で告訴人集めをしてきた関係者が多数参加した。第1次告訴のちょうど10倍の告訴人が集まったことを背景に、告訴団の武藤類子団長は「福島の1人が全国の10人とつながった」と運動の広がりに自信を見せた。

 告訴状提出後の集会では、各地の事務局メンバーが、告訴人が自分の被害をしたためた陳述書のうち代表的なもの、印象的なものを読み上げた。九州・沖縄事務局からは、水俣病の原因企業・チッソに勤めていた熊本市の男性の陳述書が読み上げられた。「会社のやっていることを見て見ぬふりをしていた。しかし、金もうけのために地元の人々を後回しにするのは許されない。原発事故では声を上げようと思った」。

 中四国の事務局長を務める広島市の大月純子さんは被爆2世だ。「放射能の被害を繰り返してはならないと祈っていたのに、原発事故が起きてしまった。私にも責任があると感じて、告訴に参加した」と語る。北からも南からも、責任を取らない日本への怒りの声が続いた。主権者である市民が立ち上がり、国や企業に責任を取らせなければ、日本は震災でも原発でもなく「総無責任病」でやがて滅亡するだろう。

 第2次告訴団が短期間で目標の1万人を超える告訴人を集めたことは、敵を明らかにして闘うことが被災者の要求であること、告訴団運動が他の運動に比べて優位性を持っていることを示した。多くの市民が、権利は法文の上にあるのではなく、それを実体化しようとする営み、闘いの中にこそ存在するのだということを再認識したのではないだろうか。

 国や東電の立件には、因果関係の立証など越えるべきハードルも多いと見られる。しかし、1万人を超える大告訴団による告訴は「捜査をしなければただではすまない」空気を確実に作り出した。告訴人となった人々はもちろん、本誌読者をはじめとする支援者の皆さんが適正捜査を求める声を上げていくことが、起訴への道を切り開く。

 第2次告訴に参加いただいた多くの人に、この場をお借りして改めてお礼申し上げたい。

注)昨年3月の福島第1原発事故発生直後、本稿筆者は名古屋勤務時代に親しかった運動関係者から「意外」だと言われたことがある。その真意を問いただしたところ、事故発生のことではなく、日本初の原発過酷事故が浜岡でなかったことが意外というのだ。浜岡原発反対運動関係者の中に、自分たちが最初の被害者になるに違いないとの覚悟を持って生きてきた人たちが多いという事実を知らされたエピソードである。

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本日の放射能測定値

2012-11-22 21:31:59 | 福島原発事故に伴う放射能測定値
1.測定年月日、時間
 2012年11月22日(木) 午後8時30分~8時35分

2.測定時の気象条件(晴/曇/雨/雪の別及び風向、風速)
 天気:快晴
 風向・風速:西南西 2m

3.測定場所及び測定結果(単位:マイクロシーベルト/時)
(1)福島県 JR新白河駅西口(高原口)
  ・新白河駅西口バス停横の土壌地
   大気中(高さ100cm)   -
   土壌(高さ10cm)    -

  ・新白河駅西口駐車場
   大気中(高さ100cm)   0.34
   舗装路面(高さ10cm)  0.32

(2)自宅室内(RC)    0.16

<放射線量測定に関するお知らせ>
先々週に引き続き、新白河駅前道路工事のため、測定場所1での測定が実施できませんでした。

なお、次の定期測定は、2012年11月29日(木)に実施します。

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衆院解散・総選挙へ~日本の岐路となる重大な選挙

2012-11-20 01:34:37 | その他社会・時事
「16日に解散をします」。安倍晋三・自民党総裁と国会で党首討論に臨んだ野田首相は突然、何の前触れもなくこう宣言したが、その言葉通り、16日に衆院解散を断行した。民主党首相として解散権を行使するのは初めてだが、おそらくこれが最初で最後となるだろう。

総選挙の日程は12月16日に決まった。東京では都知事選とダブル選挙。都議補選とのトリプル選挙となる地域もある。衆院総選挙は選挙区と比例区の2票。これに加え、最高裁裁判官国民審査も行われる。都知事選、都議補選と重なる地域では、1つの投票所で5つの投票箱が必要となる地域もあるという。

それにしても、民主党政権の統治能力のなさは今さら指摘するまでもないが、去っていくときまで迷惑な政権だ。そもそも国の予算は8月に各省庁からの概算要求が締め切られ、9~11月にかけて財務省による査定、12月中旬頃に財務省原案の内示、復活折衝を経て予算案がクリスマス前後に決定するというのが通常の流れだ。この流れを断ち切り、予算要求、査定のやり直しにつながる12月総選挙は、国民生活に大きな影響を与えかねないため、歴代政権は極力避けるように努めてきた。最後に12月総選挙が行われたのは三木政権当時の1976年12月9日。ただしこれは任期満了による総選挙だから、解散による12月総選挙となると佐藤栄作政権当時の1969年12月2日まで歴史をさかのぼらなければならない。

今度の総選挙は、実に14もの政党が乱立する群雄割拠状態となる。さながら戦国時代の様相だが、これだけ政党ばかりたくさんあるのに投票したい政党はひとつもないのだから事態は相当深刻だ。どれもこれも似たり寄ったりで、魅力的な商品が何もない場末のジャンク品専門店のようだ。

そして、自民党以外のほとんどの政党は「形式的には」脱原発を掲げている。脱原発のバーゲンセール状態だが、私たちはこんな時代だからこそ彼らが「何を言ったか」ではなく「何を実行したか」を見なければならないと思うのだ。

「最低でも国外・県外」と言ったのに県内だったり、高速道路無料化をやると言ってやらなかったり、高校無償化をやると言ったのに朝鮮学校でやらなかったり、子ども手当を支給すると言ったのに児童手当に戻してしまったり、コンクリートから人へと言ったのに福島の子どもたちを放射能汚染の中に見捨てる一方、大間原発も整備新幹線も八ツ場ダムも建設を再開したりするような連中は論外だ。

彼らを批判しているように見える連中にしたって、大飯原発を夏が過ぎたら停止要請すると言っていたのにやらなかったり、太陽の党を結党してたったの4日で解党したりしている。こんな奴らに議員歳費を払うために増税なんて悪い冗談としか思えない。

公示日以降は、公選法により選挙がらみの話は書けなくなってしまうので、今のうちに書いておこう。今回の選挙は「脱原発か原発推進か」「TPP反対か推進か」「消費増税凍結か推進か」を争点にすべきである。心ある人なら、3つとも推進してはならないことは明らかであろう。口先だけの反対ではなく、真に反対を貫ける人を1人でも多く擁立し、国会に送ることが必要だ。

当ブログが見るところ、原発、TPP、消費増税ともに反対を貫き、選挙後も変節の心配がなさそうなのは日本共産党、社民党、「みどりの風」などごく一部にとどまる。これに次ぐのが「国民の生活が第一」で、当ブログが投票先として許容できるのはここまで。後はほとんど同じ穴のムジナだと思っている。

まだ総選挙が公示もされていないのに選挙後のことを予測することは難しいが、おそらく単独過半数を制する政党はない。自民+公明、民主、「第3極」のいずれも過半数に遠く及ばない「分極的多党制」が出現する。

分極的多党制というのは、少なくとも戦後では最も有能だったイタリア人政治学者、ジョヴァンニ・サルトーリが「政党制の類型」のひとつとして提唱したものだ。サルトーリによれば、政党制は以下のようにいくつかに分類できる。

・1党独裁制…制度的に1政党しか存在を許されない。(旧ソ連など)

・ヘゲモニー政党制…複数政党が存在を許されるが、制度上特定の1政党に支配的立場が与えられており、他の政党(衛星政党)が支配政党に挑戦したり、交代することが許されない。(8つの衛星政党(民主諸党派)が存在するが、共産党の支配が保障されている中国、2つの衛星政党が存在するが、朝鮮労働党の支配が保障されている北朝鮮など。スハルト政権時代のインドネシアも、与党「ゴルカル」に支配権が保障されていたという点で、これに該当する)

・1党優位政党制…制度上、特定の政党に支配権が保障されておらず、政党間の自由な競争、交代が許されているにもかかわらず、特定の1つの政党が長期間政権を担当し、政権交代が起こらない。(サルトーリは、インドの国民会議派政権と並んで、日本の自民党政権をこの典型的な例とした)

・2大政党制…2つの主要な政党が議席を分け合い、競争・交代を繰り返す。(米国、英国など)

・穏健な多党制…イデオロギー的に大きな差のない3~5の政党が競争しながら、時には単独で、時には連立で政権を担当する。(日米英以外の主要先進国)

そして、これらと並んでサルトーリが定義づけたのが「分極的多党制」である。これは、左右両極に強力な反体制政党が存在し、このどちらにも与しない「真ん中」の穏健な政党が離合集散しながら政権を担当する、というものだ。左右両極に位置する反体制政党は、極端なイデオロギーを持っているため、どちらも政権に関与できないというところが穏健な多党制と異なる。穏健な多党制か分極的多党制かは、政党グループが「右・左・真ん中」で3つに分けられるか、そうでないかで決まる。3つにきれいに分かれる場合が分極的多党制、そうでない場合が穏健な多党制である。

サルトーリは、1党優位政党制の崩壊直後に分極的多党制が生まれやすい、と説明している。

サルトーリのこの考察を日本の現在の政治状況に当てはめると、1党優位政党制として長期間自民党政権が続いた後、票の変動が極端な形に振れやすい小選挙区制のいたずらで「1党優位」の立場が一瞬だけ自民党から民主党に移動したのが現在の状態だということができる。今回の総選挙で民主党が1党優位を失うことはほぼ確実であり、自民党も1党優位に復帰できない可能性が高いから、1党優位政党制の典型例だった日本でその時代は終わり、多党制に移行する。

その際、政党グループが「右・左・真ん中」の3つにきれいに割れれば分極的多党制に、そうならなければ「穏健な多党制」に移行するが、現在、日本では真ん中(自民・民主)から見て右に強力な反体制政党(維新・太陽・みんなの党)が存在し、左にもそれほど強力ではないが反体制政党(共産・社民)が存在する(この場合の反体制とは、国民感情のレベルではなく、大企業・官僚などの支配階級から見て、彼らの利益に反するものを指す。「右」の3党は新自由主義政党だから大企業にとっては仲間であり反体制ではないが、官僚にとっては規制緩和主義者であるため、一部「反体制」となる。逆に「左」の2党は規制強化論者であるため官僚とは一部共闘できるが、大企業にとって完全な「反体制」となる)。

サルトーリは、分極的多党制が成立した場合、左右両極の反体制政党は「真ん中」の国民政党グループとの協力・連立を拒むことが多いので、その場合は多少のイデオロギーの差異に目をつぶり、中道右派・中道左派政党による「大連立」にならざるを得ないと分析している。実際、シュレーダー政権末期のドイツでは、中道右派のキリスト教民主同盟、中道左派の社会民主党が両方とも単独過半数を制しなかったにもかかわらず、左右両極の反体制政党(ネオナチ政党、左翼党)がどちらとも協力を拒んだため、キリスト教民主同盟と社会民主党の大連立政権が生まれた。

今度の総選挙後、民主、自公、第3極のどれも過半数に遠く及ばず、考え得るどのような政党の組み合わせによっても過半数を制する勢力がない場合、左右両極の反体制政党を除いた形での大連立にならざるを得ないだろう。自公に民主、場合によっては「国民の生活が第一」までも加えた、4~5党の連立政権という形にならざるを得ないかもしれない。そして、実際、当ブログはこのシナリオの可能性が最も高いと思っている。

ただし、このシナリオ通りになるには前提条件がある。

(1)自公+民主で180~200議席程度
(2)「国民の生活が第一」が自公、民主に次ぐ第3勢力となる
(3)第3極は全部合わせても100議席に満たない

具体的には、この3条件がそろえば上記のシナリオ通りになると思う。この前提条件の通りにならない場合は…神のみぞ知る、としか言いようがない。

いずれにせよ、今回の総選挙をめぐる事態は混沌としている。どのような結果になろうとも「勝者なき選挙」であることに変わりない。そして、どのような組み合わせの政権になろうとも、その先にはかつてない困難が待ち受けている。不安定な新政権は遠からず進退窮まるだろう。

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「放射能不感症」の医師に危険性を分からせるには~東京でヘレン・カルディコット医師講演会

2012-11-19 22:12:04 | 原発問題/一般
(この記事は、当ブログ管理人が「子どもたちを放射能から守る福島ネットワーク」会報「たんがら」向けに執筆した原稿をそのまま掲載しています。なお、「たんがら」とは福島の方言で「野菜を入れて背負う大きなかご」の意味です。)

 11月18日、東京都内でヘレン・カルディコット医師講演会(主催・みんなのカルテ/共催・放射能防御プロジェクト)が開かれ、約200人収容できる会場は満員の参加者で埋まった。

 ヘレン医師はオーストラリア出身。ノーベル平和賞を受賞したIPPNW(核戦争防止医師会議)の上部組織、PSR(社会的責任を果たす医師団)の創立会長。「狂気の核武装大国アメリカ」「原子力は温暖化への回答ではない」などの著書がある。

 ヘレン医師は、「英国でも汚染のため閉鎖される農場が出た。ドイツではイノシシの汚染が深刻になった」とチェルノブイリ原発事故当時のヨーロッパの汚染状況を報告。「チェルノブイリには脳の小さな子どもたちが多い」と、放射能が子どもたちに与える影響を具体的に指摘した。

日本でこれから市民を被曝から守るために何をすべきか、との会場からの問いに対しては、(1)土壌・水・食品の十分な測定(特に飲料水は毎日測定し、太平洋側で捕れた魚もすべて測定すること)、(2)汚染食品の流通禁止、(3)ゴミ・がれき焼却の禁止、(4)汚染地からの避難――が重要、とした。

 講演会の後半は、放射能問題に向き合おうとしない医師やメディアとどう対抗すべきかをヘレン医師と参加者が議論した。首都圏の開業医は「日本の専門家はよく訓練されているが同時によく組織化されている。組織化されすぎてひとりひとりが自由に考え発言・行動できないことが問題だ」と、医師会が医療従事者に対する抑圧機構となっている現状を報告。埼玉県の別の開業医は、フェイスブックに放射能による健康被害の可能性がある症例を書き込んだところ「世間の不安を煽るな」と福島県いわき市の医師から猛烈な抗議を受けたという。

 福島県内の医療従事者のこうした「隠ぺい、もみ消し加担」の動きに対し、ヘレン医師は「大変憂慮すべき事態。私に日本医師会で講演する機会を与えてください」と応じた。

 メディアが放射能問題を一切取り上げない現状に対しては、「医療従事者が数十人単位でまとまって行動し、社会の注目を集めることが必要だ。金曜日の官邸前行動で医療従事者が「白衣デモ」をしてはどうか。白衣で官邸前を占拠すればいい」といった具体的な行動提案が行われた。

 ヘレン医師は、みずからが身を投じてきた反核運動の経験から「レーガン米大統領に会って反核を訴えたら、その後、レーガンとゴルバチョフ・ソ連共産党書記長との会談で核軍縮が実現した。1人の医師にもできることがある」と参加者に行動するよう訴えた。

 ヘレン医師の夫はカメラマンとして、旧ソ連(現カザフスタン)にあるセミパラチンスク核実験場の取材を重ねてきた。そこで彼が聞いた話は衝撃的だ。「私の国では、子どもが生まれてもおめでとうといえない。なぜなら、赤ん坊が人間の形で生まれてきたことがないからだ」。

 究極の大量殺戮兵器である核。原発はその「転用」として生まれてきた。こうした原発の生い立ちを知れば、「平和利用」など絵空事に過ぎないと理解できる。反核運動に身を投じてきたヘレン医師の発言には重みがある。反核運動と反原発運動を今まで以上に結びつけていく必要性を改めて強く感じた。

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