午後2時からクリプトン。PCオーディオ、デスクトップオーディオで伸びてきたメーカーなので、本格的なオーディオ機器にどう対応するのか興味がありました。小型スピーカーのKX-5PXと、低域を加えたKX-1000の試聴です。
KX-5PXでLivingston Taylor、ショスタコーヴィチの交響曲10番。細かい音はよく出ているようですが、どうもギターの音場が不自然な感じがします。巨大なギターが鳴っているような聴こえ方で、これはちょっと。フルオーケストラも荷が重いようで、金管が非常にやかましく聴こえます。聴き疲れのする音。
KX-1000でCarpenters, Don't go to Strangers (covered by JJ Cale)。女性ボーカルの口が巨大になるスピーカーは好きになれないです。ヘッドフォンやニアフィールドならこんな音像でも許容できますが、音楽に向き合いたい時にこの鳴り方は厳しいな。
クラシックでドビュッシー「月の光」。パゾリーニ製ピアノを使っているそうですが、このスピーカーは検出器的な音色の違いはよく出ても、どうも音楽に没頭できるステレオイメージを持っていない気がします。ソニーとクリプトンは構想から外しても良さそう。ベルリオーズは迫力があって、やはりKX-5PXよりは余裕を感じさせます。鐘はものすごく大きいのが鳴ってるように聴こえますね。
3時からハーマンのブースでJBL。さすが人気があって席がありません。新しいコンプレッションドライバーを装備したDD67000の試聴。ソースはすべてLPレコード。
Diana Krall "All or Nothing at all" さすがにジャズのJBLで、雰囲気は抜群。定位も立派ですが、非常に広い会場なので、一般的なリスニングルームで同じように鳴るかというと?
高橋達也, Nils LofgrenのLP。コンプレッションドライバーの鳴り過ぎじゃないかと感じましたが、少し屈んで座っている人に近い頭の高さになると、いいバランスになりました。視聴する時は高さに注意しないと。音圧が上がってもうるさく感じないのは魅力的ですね。ただし1台300万円、140kgのDD67000が普通の家庭に設置できるはずもなく、こういう機会に楽しませて頂くだけです。
北村英治、Count Basie、八城一夫、最後はDD67000の愛用者だったモンキー・パンチ氏の追悼でJames Bondのテーマ。音は大変魅力的でしたが、ヤマハと違って針雑音がぱちぱちと盛大だったのはどういう違いがあるのでしょう。LPはやっぱり面倒だなと昔のことを思い出しました。
4時からはダイヤトーンのスピーカー、DS-4NB70のデモ。大きなスピーカーではありませんが、ナノカーボンなどを混在して音速の非常に速いコーン素材を開発し、ウーファー背圧や振動がツイーターに干渉するのを排除するため、非常に凝ったエンクロージャー構造を採用。1台が60万円と高価に。
ソースはまずデジタル(ディスクからのコピー)で、
Avishai Cohen(イスラエルのジャズ ダブルベーシスト)
Calabria Foti(ジャズボーカル)I'm Home
Copland 市民のためのファンファーレ この鋭いティンパニー(特に止めるところ)でバスレフの能力がわかるそうです。
このスピーカーは背面に金属製のバスレフダクトを持っていますが、バスレフの欠点は空気の粘性で簡単な計算通りに空気が抜けてくれないことだそうで、結果として切れの悪い低音になってしまうことがあります。写真の黄色いパーツが粘り付く空気をうまく剥がしてくれるらしいです。実用新案も取れないほど簡単な付加物ですが、効果は絶大で、密閉式スピーカーしか認めない人でもこれなら音に納得できるはず、と。こういうマニアックな開発秘話は楽しいですね。写真はもちろん了解を頂いています。
Ligeti, Musica ricercata 「2001年宇宙の旅」に採用されたハンガリーの作曲家、リゲティのピアノ曲。ここではツイーターの余韻再生能力を味わいます。
次にLPで、
Anne-Sophie Mutter "Carmen Fantasie"
Erick Clapton "Unplugged"
最後にデジタルに戻って、
Michel Dalberto ドビュッシーの前奏曲より「花火」 筋肉質な演奏をスピーカーが描き切っているところを聴いて欲しいそうです。
技術解説を挟んで視聴を繰り返すと、機材の設計意図がよくわかります。これこそ実演の楽しみ。
DS-4NB70大きなスピーカーじゃないので設置も楽そうだし、再生能力は非常に高いと思います。ただ、DS-5000やDD67000に比べると、何だかゆったり聴けない感じがするのはなぜでしょうか。やっぱり大きさの余裕は無視できないのか、単なる視覚効果なのか、ハイスピード、ハイレンジのデジタルソースがそう思わせるのか。いい経験になりましたが、また新しい疑問が生まれるフェスタでした。関係者の皆様、ありがとうございました。