いーなごや極楽日記

極楽(名古屋市名東区)に住みながら、当分悟りの開けそうにない一家の毎日を綴ります。
専門である病理学の啓蒙活動も。

大どろぼうホッツェンプロッツ

2013年02月21日 | 極楽日記(読書、各種鑑賞)
 「大どろぼうホッツェンプロッツ」(原題はDer Räuber Hotzenplotzなので、大どろぼうではなく単にどろぼう)シリーズで知られる児童文学者のプロイスラーさんが亡くなられた、と各紙で報道されています。ちょうど極楽息子(小)に読んでやったところでした。ご冥福をお祈りします。

 大どろぼうと呼ばれながら、実はおばあさんのコーヒー挽きを盗んで逮捕され、焼きソーセージとザワークラウトを食い逃げしただけのホッツェンプロッツは、絵柄からもわかるようにちょっと間の抜けた男で、武器もこしょうピストルぐらいしか使いません。これを追いかける警官のディンペルモーザーもおっちょこちょいで、逆に捕まって監禁され、二人の少年に助けてもらいます。少年たちもヒーローと言うよりは素朴で欲のない田舎の子ですが、幸運や妖精の助けを借りて苦境を脱します。

 作者のプロイスラーさんが原書を発表したのは1962年。ヨーロッパではナチスドイツの爪痕も生々しく、軍靴で周辺国を蹂躙したドイツ軍人のステレオタイプ的なイメージも強く残っていたことでしょう。かつてドイツ陸軍兵として東部戦線で戦い、ソ連の捕虜となったプロイスラーさんは、戦後は教育に転じる中で、何とかして平和な時代のドイツ人像を構築したかったのではないでしょうか。伝統を守り、体は大きいがお人よしでぐずな田舎者(古い本などを見ると、ドイツ人よりは、どちらかと言えばスイス人をからかう際にこのような言い方がされるようですが)という登場人物の性格は、作者の平和を希求する気持ちの現れだったのだと思います。








Der Raeuber Hotzenplotz
Thienemann Verlag Gmbh
コメント
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