いーなごや極楽日記

極楽(名古屋市名東区)に住みながら、当分悟りの開けそうにない一家の毎日を綴ります。
専門である病理学の啓蒙活動も。

Q-Cells 破綻に思う家庭のソーラー発電

2012年04月05日 | たまには意見表明
 2001年からソーラーパネルの商業生産を開始した新興企業ながら、ヨーロッパの自然エネルギー優遇制度の波に乗って急成長を遂げ、一時は世界最大のソーラーパネルメーカーでもあったドイツのQ-Cellsが早くも破綻と報じられています。最近ではアメリカのSolyndraやEvergreenといった上場ベンチャーも破綻しており、日本ではソーラーパネルの代名詞だったシャープが業績不振により台湾企業の資本参加を受け入れています。

 これらのメーカーを押しのけてソーラー発電市場を制覇したのはサンテックやインリー・グリーンエナジーなどの中国企業。圧倒的な低価格によりソーラー需要に食い込み、最近では「自然エネルギー振興策は中国企業を潤すためのもの」という批判さえ起きています。

 この10年、ドイツは巨額のソーラー発電投資により、以前はソーラー発電の電力量が世界一だった日本を大きく抜いて一位になっています。この原動力となったのが「再生可能エネルギー法」によるソーラー発電電力の買取制度です。ソーラーで発電した電力なら、電力会社は政府の決めた値段で買い取らねばならないため、電力会社の大きな負担になり、電気料金も他国に比べて高いそうです。

 ドイツに追従してソーラー発電への支出を大幅に増やしていたイタリアやスペインでは、「中国からパネルを買ってメガソーラーを設置さえすれば、それだけで20年間利益が出る」おいしい商売と化した売電事業が盛んになり、高価で質の悪い電力の買取量が加速度的に増えたことによる国や電力会社の負担が大きくなり、これが経済破綻の一因とされました。さすがにドイツ政府も極端なソーラー発電振興策を撤回せざるを得なくなり、今月から稼動するソーラー発電装置では、電力の買い取り価格が今までより大幅に切り下げられます。

 こうした動きが、日本に波及しないはずはないでしょう。現状でソーラー発電の発電コストは「エネルギー白書2010」の図第122-3-2によれば、火力、水力、原子力と比較して大幅に高く、メガソーラーが商売になるほど買取価格を高く設定してしまえば、電力会社と消費者の負担が年々大きくなるのは自明だからです。そうなると、20年で元が取れることを当て込んで住宅にソーラーパネルを設置しても、赤字になる可能性を考えないといけません。

 それでは、設置費用についてはどうでしょう?今の状況では、設置に対する補助が昔のように手厚くなることは期待できません。設置費用の値下がりについては?これも望み薄だと思います。パネルについては中国企業主導でかなりの低水準まで価格が下落しており、これからは総設置費用を決めるのが製品価格と言うよりも、現場における工事費だからです。パネルがどんなに安くなったところで、屋根に設置するためには足場を組み、職人が屋根に上って作業するため、あまりコストダウンの余地がありません。

 こう考えると、住宅のソーラーパネル設置で損をしない条件というのは、かなり限られた場合のようです。まず新築時か屋根の吹き替え時に同時作業してもらって、工事費を低減すること。それから遅くなればなるほど売電価格は下がる傾向にあるということ。

 極楽家については、例えば300万円の投資でソーラーパネルを設置して20年間で回収するよりは、その300万円で断熱改修として窓の二重化や付加断熱を工事してもらえば同等の費用回収ができるはずですし、何より確実に住み心地が良くなるだけに得な気がします。今の状況では、屋根の改修時にソーラーパネルを設置する案は没ですね。
コメント
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