2月2日に慶應大学で開催されたシンポジウムで、経済産業省の村上敬亮メディア・コンテンツ課長が、コンテンツ産業の著作権強化の姿勢を強く批判したことに対して、当然ながら業界から反論が出ています。特に同大学(大学院メディアデザイン研究科)の教授で、最も業界寄りの論客(どころかレコード会社の取締役であり業界の一員)である岸博幸さんが、早速「コンテンツへの愛が感じられない」と訴えています。お膝元の大学で業界をこっぴどく叩かれたものですから、相当にテンションが上がっています。
これを受けて、村上さん本人がCNET Japanのブログで釈明しています。ここで評価できるのは、お役人によくあるごまかしや言い逃れをせず、ご自身の発言をきちんと検証していることです。「勢いで言ってしまった」とか「真意は他にあった」ではなく、シンポジウムの発言がやや乱暴だったことを謝し、岸さんの反論のポイントを押さえながら、言うべきことはきちんと言っています。巧みですね。
これだけ頭の回転の速い人がシンポジウムで単純な「失言」などするはずがなく、準備万端の上でコンテンツ業界を叩いたものでしょう。コンテンツ産業を振興するのは通商産業省の業務だが、決して利権を貪ることを認めるわけではないぞ、と強い態度で出たものだと思います。わざわざ慶應大学のシンポジウムを選んで言われたことですから、これは岸さんに対する宣戦布告に近い意味があります。岸さんも旧通産省と経産省の元官僚で、このOBとしての立場が彼の発言力を増していたことを考えますと、今回の事件は親元からの勘当に近い感じがあり、岸さんは経産省の主流派から「切られた」と解釈するべきなのかもしれません。もっとも、村上さんの口調は「岸さんには、後輩として、これまでもいろいろな形で本分野について教えてきていただいてきました。」と丁寧ですけど。
従って、シンポジウムでの発言は本音と見るべきです。曰く「コンテンツ産業が儲かりたいから政府も支援しろと言うだけでは、その辺の兄ちゃんが“ボクは大事だから支援してよ”と言うのと同じ。制作の現場が本気で海外で成功しよう、成長しようと思っているのか極めて疑問。」これ、ユーザーとしては諸手を挙げて賛成ですよ。強いて言えば、制作の現場ではなく流通の現場ないし交渉の現場ですね。著作権を強化しようと活動、交渉している主体はクリエイターではなくレコード会社などの流通側ですから。
本稿で「関所ビジネスしかできないレコード会社は不要」に記載しましたように、本来は最も優遇されるべきクリエイターの多くは著作権の恩恵を十分に受けていません。録音機材やカッティングマシンなどの設備が極めて高価だった時代にはレコード会社に利益の大半が吸い上げられることにも合理性がありましたけど、今はデジタルレコーダーだってビデオカメラだって(もちろん程度はありますが)個人で何とかなる機材です。もはやコンテンツ流通会社が著作権を取り上げて独占する意味は薄れていますし、あまっさえ著作権を強化して古いコンテンツからも「年金」を貰おうなんて厚かましい!
村上さんの発言はコンテンツ業界の胡散臭さを簡潔に言い表した名言だと思いますし、私ならこう付け加えたい。著作権強化を画策するコンテンツ業界は、お婆ちゃんの年金に頼って生活しているニート君が、「ボクはお婆ちゃんを愛しているから年金を増額してよ」と言っているようなものです。飯の種を作ってくれるクリエイターを冷遇しておいて、長きに渡り(極端な人は永久に、と主張している)コンテンツから収入を得ようという感覚は「コンテンツへの愛」から最も遠いものだと感じます。
私は(コンテンツ業界のこじつけとは違い)コンテンツこそ重要だと思っていますので、今回のシンポジウムにおける村上課長の発言を支持するものです。
これを受けて、村上さん本人がCNET Japanのブログで釈明しています。ここで評価できるのは、お役人によくあるごまかしや言い逃れをせず、ご自身の発言をきちんと検証していることです。「勢いで言ってしまった」とか「真意は他にあった」ではなく、シンポジウムの発言がやや乱暴だったことを謝し、岸さんの反論のポイントを押さえながら、言うべきことはきちんと言っています。巧みですね。
これだけ頭の回転の速い人がシンポジウムで単純な「失言」などするはずがなく、準備万端の上でコンテンツ業界を叩いたものでしょう。コンテンツ産業を振興するのは通商産業省の業務だが、決して利権を貪ることを認めるわけではないぞ、と強い態度で出たものだと思います。わざわざ慶應大学のシンポジウムを選んで言われたことですから、これは岸さんに対する宣戦布告に近い意味があります。岸さんも旧通産省と経産省の元官僚で、このOBとしての立場が彼の発言力を増していたことを考えますと、今回の事件は親元からの勘当に近い感じがあり、岸さんは経産省の主流派から「切られた」と解釈するべきなのかもしれません。もっとも、村上さんの口調は「岸さんには、後輩として、これまでもいろいろな形で本分野について教えてきていただいてきました。」と丁寧ですけど。
従って、シンポジウムでの発言は本音と見るべきです。曰く「コンテンツ産業が儲かりたいから政府も支援しろと言うだけでは、その辺の兄ちゃんが“ボクは大事だから支援してよ”と言うのと同じ。制作の現場が本気で海外で成功しよう、成長しようと思っているのか極めて疑問。」これ、ユーザーとしては諸手を挙げて賛成ですよ。強いて言えば、制作の現場ではなく流通の現場ないし交渉の現場ですね。著作権を強化しようと活動、交渉している主体はクリエイターではなくレコード会社などの流通側ですから。
本稿で「関所ビジネスしかできないレコード会社は不要」に記載しましたように、本来は最も優遇されるべきクリエイターの多くは著作権の恩恵を十分に受けていません。録音機材やカッティングマシンなどの設備が極めて高価だった時代にはレコード会社に利益の大半が吸い上げられることにも合理性がありましたけど、今はデジタルレコーダーだってビデオカメラだって(もちろん程度はありますが)個人で何とかなる機材です。もはやコンテンツ流通会社が著作権を取り上げて独占する意味は薄れていますし、あまっさえ著作権を強化して古いコンテンツからも「年金」を貰おうなんて厚かましい!
村上さんの発言はコンテンツ業界の胡散臭さを簡潔に言い表した名言だと思いますし、私ならこう付け加えたい。著作権強化を画策するコンテンツ業界は、お婆ちゃんの年金に頼って生活しているニート君が、「ボクはお婆ちゃんを愛しているから年金を増額してよ」と言っているようなものです。飯の種を作ってくれるクリエイターを冷遇しておいて、長きに渡り(極端な人は永久に、と主張している)コンテンツから収入を得ようという感覚は「コンテンツへの愛」から最も遠いものだと感じます。
私は(コンテンツ業界のこじつけとは違い)コンテンツこそ重要だと思っていますので、今回のシンポジウムにおける村上課長の発言を支持するものです。