昭和20年代の子供たちに絶大な支持を得た絵物語、「少年王者」の復刻版が手に入りました。復刻版自体が昭和50年代のものですから、それからでも30年以上たっていることになります。私の子供の頃は既に漫画が全盛だったので、こうした絵物語を愛読した世代はほぼ60代だと思います。
絵物語は要するに紙芝居を本にしたような構成で、戦前に紙芝居作家だった人たちが制作したものが多いはずです。「少年王者」の山川惣治さんも元は紙芝居作家だったのですね。私は絵物語作家としての山川さんをほとんど存じませんが、子供の時にテレビで見た「荒野の少年イサム」の原作者と言われれば、そうだったのかと思います。また1984年に角川が山川さんの絵物語「少年ケニヤ」をアニメ化しているので、大学生の頃に毎日のように宣伝を聞いた覚えがあります。
そんな昔の絵物語を極楽息子(大)に読んでやると、けっこう面白そうに聞いてくれます。いつの時代でも子供には冒険物語が必要だということでしょうか。
戦争直後の混乱期で絵を描こうにもろくな資料がなく、動物園からも動物が処分されていなくなった時代、山川さんはライオンを描くのに猫をデッサンして、乏しい資料からライオンのディテールを写し取って制作するなど、苦労を重ねたようです。近代兵器としてジープ(の改良型)が大活躍するのはもちろん進駐軍の影響でしょう。いろいろな意味で時代を感じさせてくれます。それでも作品には貧しさや乏しさの影すらなく、勇壮な少年王者の活躍は当時の子供を力づけたことでしょう。日本の児童書の歴史上、非常に重要な作品だと思います。